説明

防振構造を有する電子機器の搭載筐体、及び該搭載筐体を着脱可能に装着する電子機器装着装置

【課題】電子機器の搭載筐体の外部に生じた振動及び衝撃を、内蔵する電子機器に伝えにくい防振構造を有する電子機器の搭載筐体、及び該搭載筐体を着脱可能に装着する電子機器装着装置を提供すること。
【解決手段】防振構造を有するハードディスク装置160のHDDユニット100であって、ハードディスク装置160は、その対向する一対の側面に備える複数個のダンパ140によってHDDユニット100に設けられているとともにハードディスク装置160とHDDユニット100とを電気的に接続するFPCハーネス部120を備えており、FPCハーネス部120は、FPCによって形成され、スリット121が形成されており、ハードディスク装置160とシャーシ110との距離よりも長く形成されており、ハードディスク装置160とシャーシ110とを波型に湾曲した形状で接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器ユニット外に生じた振動及び衝撃を内蔵する電子機器に伝えにくい構造を有する電子機器の搭載筐体、及び該搭載筐体を着脱可能に装着する電子機器装着装置に関するものであり、特に、着脱可能に設けられたハードディスク装置に外部の振動及び衝撃を伝えにくい搭載筐体及びそれを着脱可能に装着する装着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、精密な電子機器を振動や衝撃から保護して使用するための技術が開発されている。例えば、上記のような精密な電子機器として、記録容量が大きく、高速に大量のデータを読み書きすることのできる記録再生装置、例えばハードディスク装置を振動や衝撃から保護して使用するための需要が高まっている。
【0003】
ハードディスク装置は、大容量の記録容量を実現するために、極めて高密度に情報を記録・再生する記録再生手段を備えている。例えばハードディスクでは、円盤状のディスクに微細な記録領域を形成し、上記の記録再生手段をディスク上の記録領域に対して高精度に位置決めして情報を読み書きすることによって高密度な情報を記録し、再生している。また、大容量を実現するために、記録再生手段とディスクとは非常に小さな間隔を保持した状態で情報を記録再生している。つまり、ハードディスク装置などの大容量の記録再生装置では、動作中の記録再生手段の位置の再現性がきわめて重要であり、高精度の位置決め精度が要求されている。
【0004】
このため、ハードディスク装置などは外部からの振動や衝撃に弱いことが知られている。外部から振動や衝撃が加わると、記録再生手段の位置にぶれが生じ、正確な記録再生が行えなくなるためである。また、振動や衝撃が大きくなると、ディスク上に記録再生手段が接触し、記録再生手段やディスクなどを機械的に損傷し、記録再生が行えないようになる場合がある。そのため、今日では記録再生を行わない場合には、記録再生手段がディスクから離れた位置に移動するような機構も実現されている。また、ハードディスク装置が落下の重力や衝撃を感知した場合に、記録再生手段がディスクから離れた位置に移動するような機構も実現されている。
【0005】
また、ハードディスク装置の内部に生じる振動の影響を低減するための技術として、電気配線をFPC(Flexible Printed Circuit)によって接続し、さらにFPCに空洞(スリット)を設けることによって特定周波数の固有振動数を低減する技術(特許文献1)が知られている。特許文献1では、ハードディスクドライブ内に機械的に生じる振動エネルギーの特定周波数での固有振動数をFPCに設けたスリットの形状によって制御し、ハードディスク装置の動作を安定させる技術を開示している。
【0006】
一方、ハードディスク装置はその動作時において振動などに弱いのであるが、その大容量の記録容量を持ち運ぶ用途としても重宝されている。例えばノートパソコンなどの持ち運び型のコンピュータの記録再生装置や、車載型道路ナビゲーションシステムの記録再生装置など、現在では大容量の電子情報を持ち運ぶ手段として広く用いられている。このようにハードディスク装置を振動及び衝撃の発生する環境で使用する場合には、ハードディスク装置の周囲に振動及び衝撃を吸収するためのダンパを設け、ハードディスク装置自体に外部の振動及び衝撃が伝わりにくくする技術などが知られている。
【0007】
また、上記のようなハードディスク装置を従来の記録媒体、例えばコンパクトディスク(CD:Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)のように取り替え可能な大容量記録媒体として用いることも行われている。これは、例えば特許文献2に開示されている情報記憶装置のように、ハードディスク装置を備えるHDDユニットが着脱機構を備えており、ハウジングに着脱されるなどの方法によって実現されている。また特許文献3に開示されているハードディスク装置のように、着脱可能なHDDユニットが振動減衰手段を備えており、大容量の電子情報を着脱可能に持ち運ぶ技術も知られている。
【0008】
このような技術を用いることによって、CDやDVDでは実現が困難である大容量の記録容量を自由に着脱して取替え、高速に読み書きする記録再生装置が実現されている。
【特許文献1】特開2003−187537号公報(平成15年(2003年)7月4日公開)
【特許文献2】特開平11−149753号公報(平成11年(1999年)6月2日公開)
【特許文献3】特開2003−314613号公報(平成15年(2003年)11月6日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の構成では、筐体に搭載される電子機器は、その電子機器が電気的に接続されている配線によって電子機器の搭載筐体の外部に生じた振動及び衝撃を内蔵する電子機器に伝えてしまうという問題点を有している。
【0010】
図6は、特許文献3に開示されたHDDユニットの断面図である。図6に記載するHDDユニット500では、ハードディスク装置560はシャーシ510の底面に設けられた振動減衰手段540を介してHDDユニット500に設置されている。また、ハードディスク装置560は、複数のケーブルが可撓性を有する帯状または束状にまとめられたフレキシブルケーブル520によって電気的にHDDユニット500のシャーシ510に接続されている。
【0011】
上記フレキシブルケーブル520は、たるませた状態でハードディスク装置560とシャーシ510との間を接続している。このとき、図6に示すHDDユニット500が上下方向(図6に記載するz軸の方向)に動く振動及び衝撃に対してはスムーズに変形する。そのため、HDDユニット500が上下方向(図6に記載するz軸の方向)に動く場合には、HDDユニット500の動きがハードディスク装置560に伝わりにくいと考えられる。
【0012】
しかしながら帯状にまとめられたフレキシブルケーブル520は、フレキシブルケーブル520がなす面に設けられる方向のうち、フレキシブルケーブル520に設けられた複数の信号線を横断する方向(図6に記載するy軸の方向)には特に変形し難い。
【0013】
つまり、HDDユニット500がハードディスク装置560に設けられたフレキシブルケーブル520に設けられた複数の信号線を横断する方向(図6に記載するy軸の方向)に振動及び衝撃によって動くと、フレキシブルケーブル520がスムーズに変形し難い。この場合、HDDユニット500に生じた振動及び衝撃がフレキシブルケーブル520を介してハードディスク装置560に伝達する恐れがあった。
【0014】
また、フレキシブルケーブル520は複数の可撓性を有するケーブルによって形成されているため、ハードディスク装置560をHDDユニット500のシャーシ510に設置する度にフレキシブルケーブル520の形状及び可撓性が変化する。そのため、ハードディスク装置560をシャーシ510に設置する度にハードディスク装置560に伝達され易い振動及び衝撃の方向が変化し、ハードディスク装置560の振動及び衝撃対策を講じることが難しかった。
【0015】
さらに上記のようなフレキシブルケーブル520の変形によって、ハードディスク装置560とシャーシ510とを接続するフレキシブルケーブル520自体が有する固有振動数が変化するので、ハードディスク装置560に伝わる振動の周波数成分を制御することが難しかった。
【0016】
また、図6に示すHDDユニット500では、ハードディスク装置560がシャーシ510の底面に設けられた振動減衰手段540を介してシャーシ510に設置されている。そのためハードディスク装置560に作用する前後左右上下方向の振動及び衝撃に対して、ハードディスク装置560の動きを効果的に抑制することが難しかった。
【0017】
図7は、図6に記載された従来のHDDユニットを正面方向から見た平面図である。図6及び図7に記載するHDDユニット500では、ハードディスク装置560がシャーシ510の底面に設けられた振動減衰手段540によって設置されている。そのため、HDDユニット500が上下方向(図6及び図7に記載するz軸の方向)に動くと、ハードディスク装置560は上下方向に揺すられると共に振動減衰手段540の振動減衰効果によって動きが抑制される。しかしながら左右方向または前後方向(それぞれ図6及び図7に記載するy軸の方向及びx軸の方向)に揺すられた場合、ハードディスク装置560は振動減衰手段540を軸として左右または前後に振れながら揺れ動くことになる。図7では、上下および左右方向に振動が加えられた場合について記載した。そのため、図6及び図7に記載するような従来のHDDユニットでは、フレキシブルケーブル520に設けられた複数の信号線を横断する方向(図6及び図7に記載するy軸の方向であり、左右方向)やフレキシブルケーブル520をHDDユニットのコネクタに差し込む方向(つまり図6及び図7に記載するx軸の方向であり、前後方向)に内蔵されるハードディスク装置が動きにくかった。そのため、ハードディスク装置を効果的に振動及び衝撃から保護することが難しかった。
【0018】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、電子機器の搭載筐体の外部に生じた振動及び衝撃を内蔵する電子機器に伝えにくい防振構造を有する電子機器の搭載筐体、及び該搭載筐体を着脱可能に装着する電子機器装着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の電子機器の搭載筐体は、上記課題を解決するために、防振構造を有する電子機器の搭載筐体であって、上記電子機器は、上記電子機器の対向する一対の側面に備えられ、弾性を有する複数個の振動減衰手段によって上記搭載筐体に設けられているとともに上記電子機器に設けられた電子機器コネクタと上記搭載筐体に設けられた搭載筐体コネクタとを電気的に接続するシート状のFPCによって形成された配線手段を備えており、上記配線手段は、スリットが形成されており、上記電子機器と上記搭載筐体との距離よりも長く形成されており、上記配線手段のシート面が上記配線手段が差し込まれる方向に対して波型に湾曲した形状を形成していることを特徴としている。
【0020】
上記の構成によれば、搭載される電子機器はその一対の側面に備える複数個の振動減衰手段によって搭載筐体に設置されている。そのため、搭載筐体の外部から加えられた振動及び衝撃によって内蔵される電子機器が前後左右上下方向の何れの方向に揺すられた場合でも、振動減衰手段が揺すられたそれぞれの方向に対して直線的に伸縮を行うことができる。そのため、振動減衰手段は、その弾性によって振動及び衝撃を吸収、緩和する作用のみを行うことができ、効果的に振動及び衝撃による電子機器の動きを抑制することができる。
【0021】
また、電子機器と搭載筐体とがFPCによって形成されている配線手段によって電気的に接続されている。そのため、電子機器を搭載筐体に設置する度に配線手段の形状が変化することが少ない。そのため、配線手段が有する弾性の特性、例えば電子機器に接触していることによって作用する配線手段の弾性及び柔軟性の特性や、配線手段自体が有する固有振動数などが変化しにくい。そのため、搭載筐体の外部から伝達される振動及び衝撃を、常に同じように搭載する電子機器に伝達することができる。
【0022】
また、配線手段がFPCで一体に形成されているので、配線手段が有する弾性及び柔軟性の特性、例えば配線手段が搭載筐体に設置された電子機器に機械的に接触することによる配線手段の振動伝達作用や、配線手段自体が有する固有振動数などの影響を制御することが可能である。
【0023】
さらに、配線手段は、電子機器と搭載筐体との距離よりも長く形成されており、搭載筐体コネクタに配線手段が差し込まれる方向に対して波型に湾曲した形状で電子機器と搭載筐体とを接続している。また、この配線手段は、上記配線手段のシート面が上記配線手段が差し込まれる方向に対しても波型に湾曲した形状で接続されているため、電子機器を機械的に押したり、引っ張ったりする作用を抑えることができる。また配線手段にはスリットが設けられているため、上記の搭載筐体コネクタ平面上であり、搭載筐体コネクタの差込口に配線手段を接続する方向に垂直な方向、即ちFPCで形成される配線手段に設けられた複数の信号線を横断する方向に対してもスムーズに変形を行うことができる。そのため、搭載筐体の外部から伝達される振動及び衝撃を、配線手段が電子機器に伝達する作用が非常に少なくなる。つまり、電子機器は、振動減衰手段のみによって搭載筐体に設けられていると考えることができるので、振動減衰手段の弾性によって効果的に振動及び衝撃を吸収することができる。
【0024】
また、上記スリットが、上記配線手段に複数個設けられている構成であることが好ましい。
【0025】
上記の構成によれば、複数のスリットによって、配線手段が有する弾性の特性、例えば電子機器に接触していることによって作用する配線手段の弾性及び柔軟性や、配線手段自体が有する固有振動数などを調整することができる。
【0026】
また、上記スリットは、上記配線手段が上記電子機器から上記搭載筐体に向かって設けられている方向に沿って形成されている構成であることが好ましい。
【0027】
上記の構成によれば、FPCで形成されている配線手段には、電子機器から搭載筐体に向かって設けられている方向に沿ってスリットが形成されている。そのため、配線手段が有する弾性及び柔軟性の特性、例えば配線手段が電子機器に機械的に接触することによって作用する配線手段の振動伝達作用や、配線手段自体が有する固有振動数などを調整することができる。
【0028】
また、上記振動減衰手段が、上記電子機器の対向する一対の側面にそれぞれ2個ずつ設けられている構成であることが好ましい。
【0029】
上記の構成によれば、電子機器の対向する一対の側面に2個ずつ、合計4個の振動減衰手段によって電子機器が搭載筐体に設けられ、電子機器が前後上下左右に対して動く場合にしっかりと電子機器を保持することができる。
【0030】
また、それぞれの上記振動減衰手段が、上記電子機器に対して対称となる位置に設けられている構成であることが好ましい。
【0031】
上記の構成によれば、電子機器を搭載筐体にさらに安定して設けることができ、電子機器が前後上下左右に対して動く場合にしっかりと電子機器を保持することができる。
【0032】
また、上記電子機器が、ハードディスク装置である構成であることが好ましい。
【0033】
また、さらに上記搭載筐体が該搭載筐体の外側の側面に設けられた信号接続手段を備えており、上記信号接続手段が上記配線手段に電気的に接続している構成であることが好ましい。
【0034】
上記の構成によれば、信号接続手段によって本発明の電子機器の搭載筐体を電気的に接続することによって、外部機器との電気的な接続が可能となる。また、信号接続手段が外部機器との接続を解除することによって、本発明の電子機器の搭載筐体を大容量の記録容量を持ち運ぶための記録媒体として用いることができる。
【0035】
本発明の電子機器装着装置は、上記課題を解決するために、信号接続部を備えており、上記に記載する電子機器の搭載筐体を着脱可能に装着するとともに上記信号接続手段が上記信号接続部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0036】
上記の構成によれば、本発明の電子機器装着装置は本発明の電子機器の搭載筐体を記録媒体として着脱可能に備えることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の電子機器の搭載筐体は、以上のように、上記電子機器は、上記電子機器は、上記電子機器の対向する一対の側面に備えられ、弾性を有する複数個の振動減衰手段によって上記搭載筐体に設けられているとともに上記電子機器に設けられた電子機器コネクタと上記搭載筐体に設けられた搭載筐体コネクタとを電気的に接続するシート状のFPCによって形成された配線手段を備えており、上記配線手段は、スリットが形成されており、上記電子機器と上記搭載筐体との距離よりも長く形成されており、上記配線手段のシート面が上記配線手段が差し込まれる方向に対して波型に湾曲した形状を形成している構成である。
【0038】
つまり、搭載される電子機器はその一対の側面に備える複数個の振動減衰手段によって搭載筐体に設置されている。そのため、搭載筐体の外部から加えられた振動及び衝撃によって内蔵される電子機器が前後左右上下方向の何れの方向に揺すられた場合でも、振動減衰手段が揺すられたそれぞれの方向に対して直線的に伸縮を行うことができる。そのため、振動減衰手段は、その弾性によって振動及び衝撃を吸収、緩和する作用のみを行うことができ、効果的に振動及び衝撃による電子機器の動きを抑制することができる。
【0039】
また、電子機器と搭載筐体とがFPCによって形成されている配線手段によって電気的に接続されている。そのため、電子機器を搭載筐体に設置する度に配線手段の形状が変化することが少ない。そのため、配線手段が有する弾性の特性、例えば電子機器に接触していることによって作用する配線手段の弾性及び柔軟性の特性や、配線手段自体が有する固有振動数などが変化しにくい。そのため、搭載筐体の外部から伝達される振動及び衝撃を、常に同じように搭載する電子機器に伝達することができる。
【0040】
また、配線手段がFPCで一体に形成されているので、配線手段が有する弾性及び柔軟性の特性、例えば配線手段が搭載筐体に設置された電子機器に機械的に接触することによる配線手段の振動伝達作用や、配線手段自体が有する固有振動数などの影響を制御することが可能である。
【0041】
さらに、配線手段は、電子機器と搭載筐体との距離よりも長く形成されており、搭載筐体コネクタに配線手段が差し込まれる方向に対して波型に湾曲した形状で電子機器と搭載筐体とを接続している。また、この配線手段は、上記配線手段のシート面が上記配線手段が差し込まれる方向に対しても波型に湾曲した形状で接続されているため、電子機器を機械的に押したり、引っ張ったりする作用を抑えることができる。また配線手段にはスリットが設けられているため、上記の搭載筐体コネクタ平面上であり、搭載筐体コネクタの差込口に配線手段を接続する方向に垂直な方向、即ちFPCで形成される配線手段に設けられた複数の信号線を横断する方向に対してもスムーズに変形を行うことができる。そのため、搭載筐体の外部から伝達される振動及び衝撃を、配線手段が電子機器に伝達する作用が非常に少なくなる。つまり、電子機器は、振動減衰手段のみによって搭載筐体に設けられていると考えることができるので、振動減衰手段の弾性によって効果的に振動及び衝撃を吸収することができる。
【0042】
また、本発明の電子機器装着装置は、以上のように、信号接続部を備えており、上記に記載する電子機器の搭載筐体を着脱可能に装着するとともに上記信号接続手段が上記信号接続部に電気的に接続されている構成である。
【0043】
つまり、本発明の電子機器の搭載筐体を記録媒体として着脱可能に備えることができる。
【0044】
それゆえ、電子機器の搭載筐体の外部に生じた振動及び衝撃を内蔵する電子機器に伝えにくい防振構造を有する電子機器の搭載筐体、及び該搭載筐体を着脱可能に装着する電子機器装着装置を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明の実施の形態について図1〜図5に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0046】
以下の実施の形態としては、内蔵する電子機器の一実施形態としてハードディスク装置を用いる場合について記載するが、内蔵する電子機器は外部からの振動及び衝撃を伝達することが好ましくない電子機器全般について適用することができる。
【0047】
図1(a)〜(d)は、本実施の形態のHDDユニット100を示す平面図及び断面図である。本実施の形態のHDDユニット100は、直方体形状である場合について記載するが、HDDユニットは他の形状で形成することも可能である。
【0048】
図1(a)は本実施の形態のHDDユニット100を上方から見た平面図であり、HDDユニット100を装着する電子機器装着装置200と共に記載されている。また図1(b)は、本実施の形態のHDDユニット100の側面図である。また図1(c)は、図1(a)のA−A’断面図であり、図1(d)は本実施の形態のHDDユニット100を正面から見た平面図である。また、図2は、本実施の形態のHDDユニット100を示す斜視図である。
【0049】
本実施の形態の電子機器装着装置200は、本実施の形態のHDDユニット100を装着する装置であり、本実施の形態のHDDユニット100を電気的に接続するためのコネクタ230を備えている。コネクタ230は、後述するコネクタ接続部130に電気的に接続するコネクタであり、周知の構造のコネクタを用いることができる。
【0050】
本実施の形態のHDDユニット100は、例えば大容量の記録容量を持ち運ぶ記録媒体として用いることができる。そのため、電子機器装着装置200はその記録媒体としてのHDDユニット100を取り付け、取り外しできる装置であればよい。このような装置は、例えば設置型、またはノートパソコンなどの持ち運び型のコンピュータの外部記録再生装置や、車載型道路ナビゲーションシステムの記録再生装置などの周知の装置に用いることができる。またHDDユニット100と電子機器装着装置200との接続方法もネジ止めなどの周知の方法を用いて接続、固定を行うことができる。
【0051】
本実施の形態のHDDユニット100は、シャーシ110、FPCハーネス部120、コネクタ接続部130、ダンパ140、フロントグリル150、及びハードディスク装置160を備えている。
【0052】
シャーシ110は、コネクタ接続部130及びフロントグリル150とともに本実施の形態のHDDユニット100の基本骨格構造を形成している。シャーシ110は、周知のハードディスクマウンタなどと同様に形成することができる。例えば鉄やアルミなどを含有する合金で形成しても良い。またその外形などは、後述するように用いるハードディスク装置160などに合わせて形成しても良いし、HDDユニット100を装着する電子機器装着装置200の形状に合わせて形成しても良い。
【0053】
コネクタ接続部130は、本実施の形態のHDDユニット100を電子機器装着装置20に電気的に接続するためのコネクタ131(搭載筐体コネクタ)を備えている。本実施の形態のコネクタ131は、シート状に形成されたFPC(Flexible Printed Circuit)によって形成されたFPCハーネス部120に接続している。FPCハーネス部120についての詳細は後述するが、本実施の形態のコネクタ131では、FPCハーネス部120のシート状のFPCが平面的にコネクタ131に接続している。また本実施の形態のコネクタ131は、平面形状の基板として形成されている。
【0054】
尚、本実施の形態では、コネクタ131の平面形状の基板表面と、コネクタ131及びFPCハーネス部120の接合面とは、ハードディスク装置160のディスクの回転軸の方向に垂直な平面に平行になるように設けられている。言い換えると、ハードディスク装置160のディスクのなす平面に平行であり、一般的にハードディスク装置160に設けられる図示しない制御基板が形成されている面に平行な面にコネクタ131の表面と、コネクタ131及びFPCハーネス部120の接合面とが設けられている。この面は、HDDユニット100の外部の表面であり、最も大きな面積を備える面に平行な面と表現することもできる。
【0055】
コネクタ131はまた、FPCハーネス部120を介してハードディスク装置160に設けられているコネクタ161(電子機器コネクタ)に電気的に接続している。
【0056】
フロントグリル150は、コネクタ接続部130が設けられている側に対向するシャーシ110の側面に設けられている。本実施の形態のHDDユニット100において、フロントグリル150には内部に設けられるハードディスク装置160に冷却用の空気を送ることのできる換気スリット151が設けられている。
【0057】
本実施の形態のHDDユニット100は、現在市場に流通している形状のハードディスク装置を用いることが可能である。また、専用に製作されたハードディスク装置を用いることもできる。上記のシャーシ110は、これらのハードディスク装置を後述するダンパ140を介して固定することができる形状であればよく、周知の方法で形成することができる。
【0058】
本実施の形態のHDDユニット100に装着されるハードディスク装置160は、例えば現在市場に流通している1.8インチ型、2.5インチ型、3.5インチ型などの規格品を装着することも可能であるし、さらに専用に製造されたハードディスク装置などを自由に装着することができる。
【0059】
本実施の形態のHDDユニット100では、ハードディスク装置160に設けられているコネクタ161とコネクタ部130に設けられているコネクタ131とがFPCハーネス部120によって物理的に接続されているとともに、電気的に接続されている。本実施の形態のHDDユニット100では、FPCハーネス部120はシート状に形成されたFPC(Flexible Printed Circuit)によって形成されている。FPCは周知の方法で形成されている部材を用いることができる。
【0060】
本実施の形態のFPCハーネス部120は、コネクタ161とコネクタ131との間に1個または複数個のスリット121を備えている。図3は、本実施の形態のFPCハーネス部120を示す平面図である。
【0061】
このスリット121は、例えばコネクタ161からコネクタ131に延びる方向に沿って設けられていても良い。このようにFPCハーネス部120に形成されているスリット121によって、FPCハーネス部120が有する弾性及び柔軟性の特性、例えばFPCハーネス部120がハードディスク装置160に機械的に接触することによって作用する配線手段の振動伝達作用や、FPCハーネス部120自体が有する固有振動数などを調整することができる。
【0062】
そして、本実施の形態のFPCハーネス部120は、十分な長さでハードディスク装置160及びコネクタ131を接続しており、FPCハーネス部120がハードディスク装置160とコネクタ131との間で緩やかに山なりに接続していることが好ましい。例えばコネクタ161とコネクタ131との間であり、コネクタ131にFPCハーネス部120が差し込まれる方向に対して波型に湾曲した形状で接続されていると共にコネクタ131の表面に対しても波型に湾曲した形状で接続されていてもよい。本実施の形態のFPCハーネス部120はこのようにコネクタ161とコネクタ131との間に接続されているため、外部からの振動や衝撃によってFPCハーネス部120がハードディスク装置160を機械的に押したり、引っ張ったりする作用を抑えることができる。
【0063】
尚、FPCハーネス部120は、コネクタ131にFPCハーネス部120が差し込まれる方向に沿って延設されていても良いし、コネクタ131にFPCハーネス部120が差し込まれる方向からずれた方向に向かって延設されていても良い。FPCハーネス部120は、コネクタ161とコネクタ131との位置関係に依存して延設することができる。
【0064】
また、本実施の形態のダンパ140は、シャーシ110とハードディスク装置160とを物理的に接続している部材である。本実施の形態のHDDユニット100では、ダンパ140はハードディスク装置160の側面に形成されている。
【0065】
図4は、本実施の形態のHDDユニット100を上方から見た平面図であり、図1(a)に示すシャーシ110の一部を透視するように記載している。本実施の形態のダンパ140は、図4に記載するように、コネクタ131の平板形状の基板表面に対して垂直なハードディスク装置160の側面であり、コネクタ131及びフロントグリル150に対向しない側面にそれぞれ2個ずつ、合計4個設けられている。つまり、ハードディスク装置160の対向する一対の側面にそれぞれ2個ずつ、合計4個のダンパ140が設けられている。
【0066】
これらのダンパ140は、ハードディスク装置160の上記の側面の任意の位置に設けてもよいが、例えばハードディスク装置160が固定用として備えている周知の図示しない取り付けネジ部に固定されていても良い。またこれらの4個のダンパ140は、ハードディスク装置160の側面の対称的な位置に設けても良い。一方の側面に設けられた2個のダンパ140に対して、ハードディスク装置160を介して対向する位置の他方の側面、即ちコネクタ131にFPCハーネス部120を差し込む方向に対して線対称な位置に2個のダンパ140が設けられていても良い。このようにハードディスク装置160がシャーシ110に設置されることによって、安定して設置することができる。
【0067】
尚、ダンパ140はハードディスク装置160にネジ止めなどの周知の方法で固定することができる。
【0068】
本実施の形態のダンパ140は、外部からシャーシ110に与えられた振動及び衝撃を吸収、緩和する部材であり、弾性を有する部材で形成されている。例えばシリコンゴムなどの弾性部材で形成されていても良いし、オイルなどの流体で支えられている弾性部材で形成されていても良い。このようなダンパとして、例えばPioneer material Precision Techが、材質及び硬度としてIIR10°と表記する商品として供給しているダンパなどを用いることができる。またダンパ140は上記の部材に限られず、周知のものを用いることができる。
【0069】
次に、図5を用いて本実施の形態のHDDユニット100に振動及び衝撃が作用した場合の動作について説明する。
【0070】
図5は本実施の形態のHDDユニット100の正面方向から見た平面図であり、説明のためにフロントグリル150を取り外している。
【0071】
本実施の形態のHDDユニット100では、ハードディスク装置160は上記のように設けられたダンパ140によってシャーシ110に設置されている。そのため、本実施の形態のHDDユニット100が上下方向(図5に記載するz軸の方向であり、コネクタ131の平板形状の基板表面に垂直な方向)に動くと、ハードディスク装置160は上下方向に揺すられると共にダンパ140の振動減衰効果によって動きが抑制される。同様に、左右方向(図5に記載するy軸の方向であり、即ちコネクタ131の平板形状の基板表面に平行かつコネクタ131にFPCハーネス部120を差し込む方向に対して垂直な方向)及び前後方向(図5に記載するx軸の方向であり、コネクタ131にFPCハーネス部120を差し込む方向)に揺すられる場合でも、ダンパ140の振動減衰効果によって動きが抑制されることがわかる。
【0072】
ダンパ140は、上述のようにハードディスク装置160の対向する側面上に2箇所ずつ、合計4箇所に設けられているため、上記のように前後左右上下の3次元方向の動きに対してそれぞれ直線的に伸縮を行うことができる。そのため、ダンパ140は、その弾性によって振動及び衝撃を吸収、緩和する作用のみを行えば良いのでハードディスク装置160を効果的に振動及び衝撃から保護することができる。
【0073】
また、本実施の形態のHDDユニット100では、ハードディスク装置160とコネクタ131とはFPCハーネス部120によって物理的に接続されているとともに、電気的に接続されている。このFPCハーネス部120は上述のようにFPCで一体に形成されている。そのため、ハードディスク装置160をHDDユニット100に設置する場合に、フラットケーブルを用いる従来の構成と比較してFPCハーネス部120の形状が変化することが少ない。そのため、HDDユニット100の外部から伝達される振動及び衝撃を、常に同じようにハードディスク装置160に伝達するようにすることができる。
【0074】
また、FPCハーネス部120がFPCで一体に形成されているので、FPCハーネス部120が有する弾性及び柔軟性の特性、例えばFPCハーネス部120がシャーシ110に設けられたハードディスク装置160に機械的に接触することによるFPCハーネス部120の振動伝達作用や、FPCハーネス部120自体が有する固有振動数などの影響を制御することが可能である。そのため、FPCハーネス部120が及ぼす振動伝達作用やFPCハーネス部120自体が有する固有振動数を調整することができる。
【0075】
また、FPCハーネス部120は、十分な長さでコネクタ161及びコネクタ131を緩やかに山なりに接続しているため、ハードディスク装置160を機械的に押したり、引っ張ったりする作用を抑えることができる。またFPCハーネス部120にはスリット121が設けられているため、FPCハーネス部120に設けられた複数の信号線を横断する方向に対してもスムーズに変形を行うことができる。そのため、シャーシ110に与えられた振動及び衝撃を、FPCハーネス部120がハードディスク装置160に伝達する作用が非常に少なくなる。つまり、ハードディスク装置160は、ダンパ140のみによってシャーシ110に設けられていると考えることができるので、ダンパ140の弾性によって効果的に振動及び衝撃を吸収することができる。
【0076】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、上記の発明で説示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明では、ハードディスク装置の側面に形成されたダンパによってハードディスク装置がHDDユニットのシャーシに固定され、かつハードディスク装置がFPCで形成されたハーネスを介してHDDユニットの外部に設けられた各種の機器に電気的に接続される構成であるため、HDDユニットに外部から加えられた振動及び衝撃を内蔵するハードディスク装置に伝達しにくく、ダンパによって効果的に振動及び衝撃を吸収、緩和することができる。そのため、本発明は、設置型、またはノートパソコンなどの持ち運び型のコンピュータの外部記録再生装置や、車載型道路ナビゲーションシステムの記録再生装置などの周知の大容量記録再生装置、またはその大容量記録再生装置を着脱可能に持ち運ぶ用途に利用することができるだけでなく、さらには、振動及び衝撃に弱い電子機器を着脱可能に持ち運ぶ用途に広く応用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】(a)〜(d)は本発明における電子機器ユニットの実施の一形態を示す図であり、(a)は本発明における電子機器ユニットを上方から見た平面図であり、(b)は側面図、(c)は(a)のA−A’断面図、(d)は正面から見た平面図である。
【図2】本発明における電子機器ユニットの実施の一形態を示す図であり、図1の電子機器ユニットの斜視図である。
【図3】図1(a)に示すFPCハーネス部を示す平面図である。
【図4】図1の電子機器ユニットを上方から見た平面透視図であり、シャーシの一部を透視するように記載した平面透視図である。
【図5】図1の電子機器ユニットを正面方向から見た平面図であり、説明のためにフロントグリルが取り外されている平面図である。
【図6】従来のHDDユニットを示す断面図である。
【図7】従来のHDDユニットを示す平面図である。
【符号の説明】
【0079】
100 HDDユニット(搭載筐体)
110 シャーシ
120 FPCハーネス部(配線手段)
121 スリット
130 コネクタ接続部(信号接続手段)
131 コネクタ(搭載筐体コネクタ)
140 ダンパ(振動減衰手段)
150 フロントグリル
151 換気スリット
160 ハードディスク装置(電子機器)
161 コネクタ(電子機器コネクタ)
200 電子機器装着装置
230 コネクタ接続部(信号接続部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防振構造を有する電子機器の搭載筐体であって、
上記電子機器は、
上記電子機器の対向する一対の側面に備えられ、弾性を有する複数個の振動減衰手段によって上記搭載筐体に設けられているとともに上記電子機器に設けられた電子機器コネクタと上記搭載筐体に設けられた搭載筐体コネクタとを電気的に接続するシート状のFPCによって形成された配線手段を備えており、
上記配線手段は、
スリットが形成されており、
上記電子機器と上記搭載筐体との距離よりも長く形成されており、
上記配線手段のシート面が上記配線手段が差し込まれる方向に対して波型に湾曲した形状を形成していることを特徴とする電子機器の搭載筐体。
【請求項2】
上記スリットが、上記配線手段に複数個設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器の搭載筐体。
【請求項3】
上記スリットは、上記配線手段が上記電子機器から上記搭載筐体に向かって設けられている方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器の搭載筐体。
【請求項4】
上記振動減衰手段が、上記電子機器の対向する一対の側面にそれぞれ2個ずつ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器の搭載筐体。
【請求項5】
それぞれの上記振動減衰手段が、上記電子機器に対して対称となる位置に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の電子機器の搭載筐体。
【請求項6】
上記電子機器が、ハードディスク装置であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器の搭載筐体。
【請求項7】
さらに上記搭載筐体が該搭載筐体の外側の側面に設けられた信号接続手段を備えており、上記信号接続手段が上記配線手段に電気的に接続していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子機器の搭載筐体。
【請求項8】
信号接続部を備えており、請求項7に記載する電子機器の搭載筐体を着脱可能に装着するとともに上記信号接続手段が上記信号接続部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器装着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−210454(P2008−210454A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46240(P2007−46240)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000134109)株式会社デジタル (224)
【Fターム(参考)】