説明

防曇反射防止光学物品

【課題】 防曇効果と反射防止効果を備えつつ、耐水性および吸水時膜強度に優れた光学物品を提供すること。
【解決手段】 光学物品の基材上に、基材側から順に第一吸水性層、金属アルコキシドの加水分解物の重縮合体を有する高屈折率層、第二吸水性層を設けてなる防曇反射防止光学物品であって、第一及び第二吸水性層が、(a)シランカップリング基を含有する親水性ポリマー、(c)金属錯体触媒、を含む組成物を硬化させてなる層であることを特徴とする防曇反射防止光学物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ、フィルター、ミラー等の光学物品に関し、特に防曇性および反射防止性の優れた光学物品に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルム表面を有する製品・部材は、幅広い分野で用いられ、目的に応じ加工され機能を付与した上で使用されている。但しそれらの表面は、樹脂本来の特性から、疎水性・親油性を示すものが一般的である。従って、これらの表面に汚れ物質として、油分等が付着した場合、容易に除去することができず、また蓄積することにより、該表面を有する製品・部材の機能・特性を著しく低下させることがあった。また高湿度の条件や降雨下に曝される製品・部材では、水滴が付着することにより、透明な機能を有する製品・部材において、光の乱反射により光の透過性が阻害される問題があった。ガラスや金属等の無機表面を有する製品・部材においても、油分等の汚れ物質の付着に対する防汚性は十分とは言えず、水滴の付着による防曇性についても十分ではなかった。特に自動車用ガラス、建材用ガラスでは、都市媒塵、自動車等の排気ガスに含有されるカーボンブラック等の燃焼生成物、油脂、シーラント溶出成分等の疎水性汚染物質が付着する場合や、水滴の付着によりガラスを透して(鏡の場合は反射して)視界を確保することが妨げられる場合が多く、防汚性や防曇性の機能付与が強く求められていた。
【0003】
防汚性の観点から、汚れ物質を油分等の有機系物質と想定すると、汚れ防止の為には材料表面との相互作用を低減する、即ち親水化するか、撥油化する必要がある。また防曇性に対しても、付着水滴を表面に一様に拡げる拡張濡れ性(即ち親水性)を付与するか、付着水滴を除去し易くさせる撥水性を付与することが必要となる。従って、現在検討されている防汚材料や防曇材料は、親水化や撥水・撥油化に依拠しているものが多い。
従来提案されている親水化するための表面処理方法、例えば、エッチング処理、プラズマ処理等によれば、高度に親水化されるものの、その効果は一時的であり、親水化状態を長期間維持することができない。また、親水性樹脂の一つとして親水性グラフトポリマーを使用した表面親水性塗膜も提案されている(非特許文献1)。この報告によればこの塗膜はある程度の親水性を有するものの、基材との親和性が充分とはいえず、より高い耐久性が求められている。
【0004】
その他の表面親水性機能を有する部材として、従来から光触媒として酸化チタンの利用が知られている。これは、光照射による有機物の酸化分解機能と親水化機能に基づくもので、例えば、特許文献1において、基材表面に光触媒含有層を形成すると、光触媒の光励起に応じて表面が高度に親水化されることが開示されており、この技術をガラス、レンズ、鏡、外装材、水回り部材等の種々の複合材に適用すれば、これら複合材に優れた防曇、防汚等の機能を付与できることが報告されている。酸化チタンをガラス表面にコーティングした部材は、セルフクリーニング材料として、建材用窓ガラスや自動車用フロントガラスに使用されているが、防汚性や防曇性の機能発現には、長時間太陽光の下に曝すことが必要であり、長期経時での汚れの蓄積により、その性質が劣化することは避けられなかった。また膜強度が十分とは言えず、耐久性の向上が必要であった。またプラスチック基板上に酸化チタン層を設けたセルフクリーニングフィルムも自動車用サイドミラー等に使用されているが、同じく十分な膜強度を有さず、より良好な耐摩耗性を有する親水性材料が求められていた。
【0005】
一方、撥水・撥油性に基づく防汚・防曇性材料としては、主にシリコーン化合物やフッ素化合物が使用されている。例えば、基板表面を末端シラノール有機ポリシロキサンで被覆した防汚材料が特許文献2に、ポリフルオロアルキル基を有するシラン化合物を有する材料が特許文献3に、二酸化珪素を主成分とする光学薄膜とパーフルオロアクリレートとアルコキシシラン基を有するモノマーとの共重合体との組合せが特許文献4に開示されている。しかしながらこれらのシリコーン化合物やフッ素化合物を用いた防汚材料は、防汚性が不十分であり、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れを除去し難く、フッ素やシリコーン等の表面エネルギーの低い化合物による表面処理は、経時による機能の低下が懸念され、耐久性の優れた防汚性や防曇性部材の開発が望まれていた。
【0006】
特許文献5には、光学物品の基材上に、PVAやポリアクリル酸等の吸水性高分子を有する第1吸水性膜と、その外側に位置する金属アルコキシドの加水分解物の重縮合体を有する高屈折率薄膜と、さらにその外層に位置するPVAやポリアクリル酸等の吸水性高分子を有する第2吸水性膜とを積層した防曇反射防止光学物品が開示されているが、防曇効果と反射防止効果には優れるものの、耐水性および吸水時膜強度が不十分であり、改良が望まれていた。
【特許文献1】国際公開第96/29375号パンフレット
【特許文献2】特開平4−338901号公報
【特許文献3】特公平6−29332号公報
【特許文献4】特開平7−16940号公報
【特許文献5】特開平11−109105号公報
【非特許文献1】化学工業日報、1995年1月30日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、防曇効果と反射防止効果を備えつつ、耐水性および吸水時膜強度に優れた光学物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来技術の問題点を鑑み、吸水性層に含まれる吸水性高分子の特性に着眼し研究を進めた結果、本発明者らは、シランカップリング基を含有する親水性ポリマーを含む吸水性層、または、シランカップリング基を含有する親水性ポリマーと金属アルコキシドを加水分解、縮重合することにより形成された架橋構造を含む吸水性層(以下、「吸水性膜」ともいう)により、防曇効果と反射防止効果を備えつつ従来技術の問題点(耐水性および吸水時膜強度)を解決できることを見出した。また、金属錯体触媒を用いた場合には、前記加水分解・重縮合が生起されるとともに、吸水性層形成用塗布液の保存安定性が向上することを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は以下のとおりである。
【0009】
1. 光学物品の基材上に、基材側から順に第一吸水性層、金属アルコキシドの加水分解物の重縮合体を有する高屈折率層、第二吸水性層を設けてなる防曇反射防止光学物品であって、第一及び第二吸水性層が、(a)シランカップリング基を含有する親水性ポリマー、(c)金属錯体触媒、を含む組成物を硬化させてなる層であることを特徴とする防曇反射防止光学物品。
2. 前記第一及び第二吸水性層が、さらに(b)Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の防曇反射防止光学物品。
3. 前記(c)金属錯体触媒が、周期律表の2A、3B、4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ―ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素化合物から構成されるものであることを特徴とする前記1又は2に記載の防曇反射防止光学物品。
4. 前記シランカップリング基を含有する親水性ポリマーが、ポリマー末端または側鎖にシランカップリング基を含有することを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の防曇反射防止光学物品。
5. 前記ポリマー末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマーが、少なくとも下記一般式(1)で表される構造を有する化合物であることを特徴とする前記4に記載の防曇反射防止光学物品。
【化1】

上記一般式(1)で表される構造を有する親水性ポリマーは、構造単位(i)、(ii)で表されるポリマーユニットの少なくとも一方の末端に、構造単位(iii)で表されるシランカップリング基を有する。
一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表し、mは0、1または2を表し、x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100であり、x+y=100となる数を表す。L1、L2、L3はそれぞれ独立に単結合又は有機連結基を表し、Y1、Y2はそれぞれ独立に−N(R7)(R8)、−OH、−NHCOR7、−CONH2、−CON(R7)(R8)、−COR7、−CO2M又は−SO3Mを表し、ここで、R7、R8はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表す。
6. 前記ポリマー側鎖にシランカップリング基を有する親水性ポリマーが、少なくとも下記一般式(2)で表される構造を有する化合物である前記4に記載の防曇反射防止光学物品。
【化2】

一般式(2)で表される化合物は、一般式(I−a)及び(I−b)で示される構造単位を有する。
一般式(I−a)及び(I−b)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。Lは単結合又は多価の有機連結基を表す。Lは単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。x、yは一般式(I−a)で表される構造単位と一般式(I−b)で表される構造単位の組成比を表し、0<x<100、0<y<100であり、x+y=100となる数を表す。Xは−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
7.さらに、第一吸水性層および/または第二吸水性層に、d)コロイダルシリカを含有することを特徴とする前記1〜6のいずれかに記載の防曇反射防止光学物品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、防曇効果と反射防止効果を備えつつ、耐水性および吸水時膜強度に優れた光学物品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(1)本発明の防曇反射防止光学物品は、光学物品の基材上に、基材側から順に第一吸水性層、金属アルコキシドの加水分解物の重縮合体を有する高屈折率層、第二吸水性層を設けてなる防曇反射防止光学物品であって、第一及び第二吸水性層が、(a)シランカップリング基を含有する親水性ポリマー、(c)金属錯体触媒、を含む組成物を硬化させてなる層であることを特徴とする。
また、(2)本発明の防曇反射防止光学物品は、光学物品の基材上に、基材側から順に、第一吸水性層、金属アルコキシドの加水分解物の重縮合体を有する高屈折率層および第二吸水性層を設けてなる防曇反射防止光学物品であって、第一及び第二吸水性層が、(a)シランカップリング基を含有する親水性ポリマー、(b)Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物、(c)金属錯体触媒、を含む組成物を硬化させてなる層であることを特徴とする。
前記(1)の形態によれば、従来技術に比べ、高い膜強度を維持したまま吸水性をさらに向上できる。
前記(2)の形態によれば、シランカップリング基を有する親水性ポリマー(好ましくは、末端または側鎖にシランカップリング基を有する親水性ポリマー)と、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシドの加水分解、縮重合により形成された架橋構造を有する吸水性層は、高密度の架橋構造を有する有機無機複合体皮膜が形成されているため、高強度の皮膜となる。具体的には、親水性ポリマーを、適当な溶媒に溶解させ、金属錯体触媒の存在下で攪拌することで、系中で加水分解・重縮合が進行し、ゾル状の吸水性膜組成物が得られ、それを基材あるいは下層に被膜し、乾燥することにより基材あるいは下層表面上に親水性の官能基を有し、金属アルコキシドとそれと反応しうる官能基が反応して形成される架橋構造を有する有機無機複合体皮膜が形成される。この架橋構造を有する高密度で強固な有機無機複合体皮膜により、得られる吸水性層の塗膜は優れた耐摩耗性が発現し、高い表面親水性を長期間保持しうるものと考えられる。また、本発明における吸水性層は、層を形成する親水性ポリマーがシランカップリング基を含有するため、共有結合によりゾルゲル膜中に取り込まれ、水浸漬においても親水性ポリマーが層表面から抜け出ることがなく、耐水性に優れ、吸水時膜破壊が少ない。
さらに、第2の吸水性膜に吸収された大気中の水分は、金属アルコキシドの加水分解物の重縮合体を主成分とする高屈折率薄膜を通過して、第1の吸水性膜に吸収されていく。これとは逆に第1の吸水性膜に吸収された水分が膜外部に放出される際には、高屈折率薄膜を通過して、一旦第2の吸水性膜に吸収された後、大気に放出される。このようなプロセスにより高屈折率薄膜内部、と第1、第2、の吸水性膜との界面に、水分および水分中の物質が残留するような現象は発生しなくなる。
【0012】
〔第一および第二吸水性層〕
本発明において、第一及び第二吸水性層は、(a)シランカップリング基を含有する親水性ポリマー、(c)金属錯体触媒、を含む組成物を硬化させてなる層であり、所望により、(b)Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物が用いられる。
【0013】
(a) シランカップリング基を含有する親水性ポリマー
本発明における(a)シランカップリング基を含有する親水性ポリマー(以下、「(a)シラン変成親水性ポリマー」とも称する)はその構成単位であるモノマーのlogPが−3〜2であるのが好ましく、−2〜0であるのがより好ましい。この範囲において、良好な親水性が得られる。
ここでlogPとは、Medicinal Chemistry Project, Pomona College, Claremont, Californiaで開発され、Daylight Chemical Information System Inc. より入手できるソフトウェアPCModelsを用いて算出した化合物のオクタノール/水分配係数(P)の値の対数である。
シランカップリング基としては特に限定されることはないが、下記式で表されることが好ましい。
(R1m(OR23-m−Si−
上記式中、R1、R2、mは、後述の一般式(I)中のR1、R2、mとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同じである。
本発明においては、吸水性膜の特性のさらなる向上の観点からは、シランカップリング基が親水性ポリマーの末端または側鎖に導入されることが好ましい。
親水性ポリマーの分子量は、1,000〜100,000が好ましく、1,000〜50,000がさらに好ましく、1,000〜30,000が最も好ましい。
【0014】
<(a-1)ポリマー末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマー(以下「(a-1)末端シラン変性親水性ポリマー」と称する)>
本発明においては、(a-1)末端シラン変性親水性ポリマーとして、少なくとも下記一般式(1)で表される構造を有する親水性ポリマーを含有することが好ましい。
【0015】
【化3】

【0016】
一般式(1)で表される構造を有する親水性高分子化合物は、構造単位(i)、(ii)で表されるポリマーユニットの両末端の少なくとも一方に、構造単位(iii)で表されるシランカップリング基を有していればよく、他の末端にもこの官能基を有していてもよく、水素原子、または重合開始能を有する官能基を有していてもよい。
上記一般式(1)において、mは0、1または2を表し、R1、R2、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基(好ましくは炭素数1〜8)を表す。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数8以下)が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
1〜R6は、効果及び入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0017】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。
アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いらる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、
【0018】
N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、
【0019】
アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO32)及びその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスフォノ基(−PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスフォノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−PO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−PO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO32)及びその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0020】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル2基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO-)におけるG1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0021】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0022】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチルと、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチルル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0023】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0024】
1およびL2は、単結合又は有機連結基を表す。ここで、有機連結基とは非金属原子からなる多価の連結基を示し、具体的には、0個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、0個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位またはこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0025】
【化4】

【0026】
3は、単結合又は有機連結基を表す。ここで、有機連結基とは、非金属原子からなる多価の連結基を示し、具体的には、上記L1およびL2と同様のものを挙げることができる。中でも、特に好ましい構造としては、−(CH2n−S−である(nは1〜8の整数)。
【0027】
また、Y1およびY2は、−NHCOR7、−CONH2、−CON(R7)(R8)、−COR7、−OH、−CO2M又は−SO3Mを表し、ここで、R7、R8はそれぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表す。また、−CON(R7)(R8)についてR7、R8がお互い結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R7、R8はさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R1〜R6がアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0028】
7、R8としては具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
Mとしては、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、又は、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。
また、Y1、Y2としては具体的には、−NHCOCH3、−CONH2、−COOH、−SO3-NMe4+、モルホリノ基等が好ましい。
【0029】
x及びyは組成比(モル比)を表し、xは0<x≦100、yは0≦y<100であり、x+y=100となる数を表す。xは50<x≦100、yは0≦y<50であることがより好ましく、xは70<x≦100、yは0≦y<30であることが更に好ましい。
【0030】
(a-1)末端シラン変性親水性ポリマーの分子量としては、1,000〜100,000が好ましく、1,000〜50,000がさらに好ましく、1,000〜30,000が最も好ましい。
【0031】
本発明に好適に用い得る(a-1)末端シラン変性親水性ポリマーの具体例1〜12を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
【化5】

【0033】
<合成方法>
本発明におけるポリマー末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマーとして、例えば(a-1)末端シラン変性親水性ポリマーは、下記構造単位(i)及び(ii)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記構造単位(iii)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。シランカップリング剤が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基が導入されたポリマーを合成することができる。
この反応様式は特に制限されるものではないが、ラジカル重合開始剤の存在下、或いは、高圧水銀灯の照射下、バルク反応、溶液反応、懸濁反応などを行えばよい。
【0034】
また、重合反応において、(iii)で表される構造単位の導入量を制御し、これと構造単位(i)又は(ii)との単独重合を効果的に抑制するため、不飽和化合物の分割添加法、逐次添加法などを用いた重合法を行うことが好ましい。
構造単位(iii)に対する構造単位(i)、(ii)の反応比率は特に制限されるものではないが、構造単位(iii)1モルに対して、構造単位(i)、(ii)が0.5〜50モルの範囲内とすることが、副反応の抑制や加水分解性シラン化合物の収率向上の観点から好ましく、1〜45モルの範囲がより好ましく、5〜40モルの範囲であることが最も好ましい。
【0035】
【化6】

【0036】
上記構造単位(i)、(ii)及び(iii)において、R1〜R6、L1〜L3、Y1、Y2、mは、上記一般式(1)と同義である。また、これらの化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。
【0037】
(a-1)末端シラン変性親水性ポリマーを合成するためのラジカル重合法としては、従来公知の方法の何れをも使用することができる。具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3、高分子の合成と反応1(高分子学会編、共立出版)、新実験化学講座19、高分子化学(I)(日本化学会編、丸善)、物質工学講座、高分子合成化学(東京電気大学出版局)等に記載されており、これらを適用することができる。
【0038】
また、上記(a-1)末端シラン変性親水性ポリマーは、前記した各構造単位と、後述するような他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリルエステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
【0039】
アクリル酸エステル類の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n−又はi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−又はt−)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ヒドロキシフェネチルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート等が挙げられる。
【0040】
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−又はi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−又はt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0041】
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−トリルアクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0042】
メタクリルアミド類の具体例としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−トリルメタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0043】
ビニルエステル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート等が挙げられる。
スチレン類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン等が挙げられる。
【0044】
共重合体の合成に使用されるこれら、他のモノマーの割合は、諸物性の改良に十分な量である必要があるが、割合が大きすぎる場合には、吸水性膜としての機能が不十分となり、(a-1)末端シラン変性親水性ポリマーを添加する利点を十分に得られない懸念がある。従って、(a-1)末端シラン変性親水性ポリマー中の、他のモノマーの好ましい総割合は80重量%以下であり、さらに好ましくは50重量%以下である。
【0045】
(a-1)末端シラン変性親水性ポリマーは、単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0046】
また、組成物中、(a-1)末端シラン変性親水性ポリマーと併用して、下記の親水性ポリマーを添加することも好ましい。
アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニル類或いはその加水分解物、スチレン類、アクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、アクリルニトリル、無水マレイン酸類、マレイン酸イミド類などのモノマーを原料とするポリマーが挙げられる。
特に上記のモノマーでもアミノ基、アンモニウム基、水酸基、スルホンアミド基、カルボキシル基又はその塩、リン酸基又はその塩、スルホン酸基又はその塩、エーテル基特にエチレンオキシ基を有するモノマーが好ましい。
また、上記以外に主鎖にウレタン結合、或いはアミド結合、或いはウレア結合を有する親水性ポリマーも使用することが可能である。
【0047】
アクリル酸エステル類の具体例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート、ジエチレングリコールエチルエーテルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート等が挙げられる。
【0048】
メタクリル酸エステル類の具体例としては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート、ジエチレングリコールエチルエーテルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、メトキシテトラエチレングリコールモノメタクリレート等が挙げられる。
【0049】
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0050】
メタクリルアミド類の具体例としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0051】
ビニル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルピロリドン等が挙げられる。
スチレン類の具体例としては、トリメトキシスチレン、カルボキシスチレン、スチレンスルホン又はその塩等が挙げられる。
【0052】
(a-1)末端シラン変性親水性ポリマーは、被膜性と親水性のバランスをとるといった観点から、本発明において吸水性膜の形成に用いられる組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは0〜50質量%、更に好ましくは0〜20質量%の範囲で使用される。
【0053】
<(a-2)ポリマー側鎖にシランカップリング基を有する親水性ポリマー(以下「(a-2)側鎖シラン変性親水性ポリマー」と称する)>
本発明においては、(a-2)側鎖シラン変性親水性ポリマーとして、下記一般式(2)で表される親水性ポリマーを有することが好ましい。一般式(2)で表されるポリマーは、一般式(I−a)、(I−b)で示される構造単位を有する。
【0054】
【化7】

【0055】
一般式(I−a)及び(I−b)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。Lは単結合又は多価の有機連結基を表す。Lは単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。x、yは0<x<100、0<y<100であり、x+y=100となる数を表す。Xは−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【0056】
〜Rが炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
〜Rは、効果および入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基またはエチル基である。
【0057】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−リールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、
【0058】
アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)およびその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO)およびその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスフォノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスフォノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−POH(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−POH(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO)およびその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPOH(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPOH(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0059】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、R〜Rにおいて挙げたアルキル基が同様に挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO−)におけるG1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0060】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0061】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては好ましくは炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、より好ましくは炭素原子数1から12まで、更に好ましくは炭素原子数1から8の直鎖状、より好ましくは炭素原子数3から12までの、更に好ましくは炭素原子数3から8までの分岐状ならびにより好ましくは炭素原子数5から10まで、更に好ましくは炭素原子数5から8までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0062】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0063】
は単結合又は多価の有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とXが連結鎖なしに直接結合していることを表す。さらに、有機連結基とは非金属原子からなる連結基を示し、具体的には、0個から200個までの炭素原子、0個から150個までの窒素原子、0個から200個までの酸素原子、0個から400個までの水素原子、および0個から100個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位またはこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0064】
【化8】

【0065】
また、Lはポリマー又はオリゴマーから形成されていてもよく、具体的には不飽和二重結合系モノマーからなるポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニル、ポリスチレンなどを含むことが好ましく、その他の好ましい例として、ポリ(オキシアルキレン)、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミノ酸、ポリシロキサン等が挙げられ、好ましくは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニル、ポリスチレンが挙げられ、より好ましくは、ポリアクリレート、ポリメタクリレートである。
これらポリマー及びオリゴマーに用いられる構造単位は1種類でもよく、2種類以上であってもよい。また、Lがポリマーまたはオリゴマーの場合は構成する元素数に制限は特になく、分子量は1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0066】
は単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。ここで、単結合とはポリマー主鎖とSi原子が連結基なしに直接結合していることを表す。また、L中に、前記構造は2つ以上存在してもよく、その場合には、互いに同じものでも、異なるものであってもよい。前記構造を1つ以上含むのであれば、他の構造はLで挙げられたものと同様の構造を有することができる。
【0067】
また、Xは親水基であって、−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、R、Rは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。また、−CON(R)(R)、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SON(R)(R)−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、−PO(R)(R)、−N(R)(R)(R)又は−N(R)(R)(R)(R)についてR〜Rがお互い結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R〜Rはさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R〜Rがアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0068】
、R又はRとしては具体的には水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
としては具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
、Rとしては具体的には、R〜Rで挙げられるアルキル基の他に、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、または、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。
としては具体的には、R〜Rで挙げられるアルキル基の他に、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;硝酸アニオン、硫酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン等の無機アニオン、メタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン等の有機アニオンが挙げられる。
また、このようなXとしては具体的には、−CONa、−CONH、−SONa、−SONH、−PO等が好ましい。
【0069】
x及びyは一般式(2)で表される一般式(I−a)で表される構造単位と一般式(I−b)で表される構造単位の組成比を表す。x及びyは0<x<100、0<y<100であり、x+y=100となる数を表す。xは50<x<100の範囲であることが好ましく、70<x<100の範囲であることが更に好ましい。yは0<y<50の範囲であることが好ましく0<y<30の範囲であることが更に好ましい。
なお、ここで、ポリマー鎖を構成する構造単位である(I−a)及び(I−b)は、それぞれすべて同じものであっても、異なる複数の構造単位を含むものであってもよく、その場合、一般式(I−a)に相当する構造単位と一般式(I−b)に相当する構造単位の組成比が上記範囲であることが好ましい。
【0070】
(a-2)側鎖シラン変性親水性ポリマーの分子量としては、1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0071】
以下に、(a-2)側鎖シラン変性親水性ポリマーの具体例〔例示化合物(1)〜(20)〕をその質量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは、記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体であることを意味する。
【0072】
【化9】

【0073】
【化10】

【0074】
本発明の(a-2)側鎖シラン変性親水性ポリマーを合成する前記各化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。
(a-2)側鎖シラン変性親水性ポリマーを合成するためのラジカル重合法としては、従来公知の方法の何れをも使用することができる。具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3、高分子の合成と反応1(高分子学会編、共立出版)、新実験化学講座19、高分子化学(I)(日本化学会編、丸善)、物質工学講座、高分子合成化学(東京電気大学出版局) 等に記載されており、これらを適用することができる。
【0075】
また、上記特定親水性ポリマーは、後述するような他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
【0076】
アクリル酸エステル類の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n−またはi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ヒドロキシフェネチルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート等が挙げられる。
【0077】
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−またはi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0078】
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−トリルアクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0079】
メタクリルアミド類の具体例としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−トリルメタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0080】
ビニルエステル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート等が挙げられる。
スチレン類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン等が挙げられる。
【0081】
共重合体の合成に使用されるこれらの他のモノマーの割合は、諸物性の改良に十分な量である必要があるが、吸水性膜としての機能が十分であり、(a-2)側鎖シラン変性親水性ポリマーを添加する利点を十分得るために、割合は大きすぎないほうが好ましい。従って、(a-2)側鎖シラン変性親水性ポリマー中の他のモノマーの好ましい総割合は80質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0082】
本発明に係る(a-2)側鎖シラン変性親水性ポリマーは、本発明の吸水性膜組成物の不揮発性成分に対して、硬化性と親水性の観点から、好ましくは5〜95質量%、更に好ましくは15〜90質量%、最も好ましくは20〜85質量%の範囲で含有される。これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。ここで、不揮発成分とは、揮発する溶媒を除いた成分をいう。
【0083】
(b) Si,Ti,Zr,Alから選択される元素を含む金属アルコキシド化合物
本発明において好ましく用いられることができる(b)Si,Ti,Zr,Alから選択される元素を含む金属アルコキシド化合物(以下、「(b)金属アルコキシド」と称する)は、好ましくは、下記一般式(3)で表される化合物であり、吸水性膜を硬化させるために、架橋構造を形成するにあたっては、(a)シラン変性親水性ポリマーと、(b)下記一般式(3)で表される架橋成分と、(c)後述の金属錯体触媒とを混合した組成物を基材表面に塗布・乾燥することが好ましい。下記一般式(3)で表される架橋成分は、その構造中に重合性の官能基を有し、架橋剤としての機能を果たす化合物であり、前記(a)シラン変性親水性ポリマーと、又は、(b)金属アルコキシド成分同士で、縮重合することで、架橋構造を形成することができる。
【0084】
【化11】

【0085】
一般式(3)中、Raは水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Rbはアルキル基又はアリール基を表し、XはSi、Al、Ti又はZrを表し、mは0〜2の整数を表す。
a及びRbがアルキル基を表す場合、アルキル基の炭素数は好ましくは1から4である。
a及びRbがアリール基を表す場合、アリール基の炭素数は好ましくは6〜14である。
アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。
なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量1000以下であることが好ましい。
【0086】
以下に、一般式(3)で表される架橋成分の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
XがSiの場合、即ち、加水分解性化合物中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、γ−クロロプリピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
これらのうち特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトルイメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
【0087】
また、XがAlである場合、即ち、加水分解性化合物中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等を挙げることができる。
XがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。
XがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
【0088】
(b)金属アルコキシドは、本発明に係る吸水性膜形成用の組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは20〜70質量%の範囲で使用される。また、(b)金属アルコキシドは、単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0089】
<その他の架橋剤>
本発明においては、前記(b)金属アルコキシドに加え、本発明の効果を損なわない限りにおいて、吸水性膜の特性向上のため、(b)金属アルコキシド以外の、公知の熱、酸又はラジカルにより架橋を形成する架橋剤を併用することができる。
本発明に併用可能な「その他の架橋剤」としては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載されているものが挙げられる。本発明に用いうる架橋剤の官能基数は2個以上で、且つ、前記(a)シラン変性親水性ポリマーと、及び/又は(b)金属アルコキシド成分と有効に架橋可能ならば特に制限はない。但し、アルデヒドケトンは、官能基数が少なくとも1個あれば、本発明に係る架橋剤として使用することができる。
具体的な熱架橋剤としては、1,2−エタンジカルボン酸、アジピン酸といったα,ω−アルカン若しくはアルケンジカルボン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、トリメリット酸、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸、1,2−エタンジアミン、ジエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン、等のポリアミン化合物、エチレンまたはプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレンチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物、
【0090】
エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のオリゴアルキレンまたはポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ポリビニルアルコール等のポリヒドロキシ化合物、グリオキザル、テレフタルアルデヒド、アセトルデヒド、ベンズアルデヒドなどのポリアルデヒド化合物、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物などのポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、テトラアルコキンシランなどのシランカップリング剤、アルミニウム、銅、鉄(III)のアセチルアセトナートなどの金属架橋剤、トリメチロールメラミン、ペンタエリスリトールなどのポリメチロール化合物、ジチオエリスリトール、1,2,6−ヘキサントリオールトリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)などのポリチオール化合物などが挙げられる。これらの熱架橋剤のなかでも、塗布溶液の調液のしやすさ、作製した吸水性膜の親水性低下を防止するという観点から水溶性の架橋剤であることが好ましい。
【0091】
その他の架橋剤は、本発明において吸水性膜の形成に用いられる組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは0〜30質量%、更に好ましくは0〜15質量%の範囲で使用される。また、このような架橋剤は、単独で用いても2種以上併用してもよいが、本発明の主たる架橋成分である(b)金属アルコキシドに対しては、50質量%以下であることが好ましい。
【0092】
(c)金属錯体触媒
本発明の吸水性膜の形成において使用する金属錯体触媒は、前記(1)の形態(第一及び第二吸水性層が、(a)シランカップリング基を含有する親水性ポリマー、(c)金属錯体触媒、を含む組成物を硬化させてなる層である形態)では、親水性ポリマー中のシランカップリング基の加水分解、重縮合を促進し、親水性ポリマー同士の結合を生起させる役割を果たし、前記(2)の形態(第一及び第二吸水性層が、(a)シランカップリング基を含有する親水性ポリマー、(b)Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物、(c)金属錯体触媒、を含む組成物を硬化させてなる層である形態)では、Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物の加水分解、重縮合を促進し、親水性ポリマーとの結合を生起することができる。特に好ましい金属錯体触媒としては、周期律表の2A,3B,4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物から構成される金属錯体である。
構成金属元素の中では、Mg,Ca,St,Baなどの2A族元素、Al,Gaなどの3B族元素,Ti,Zrなどの4A族元素及びV,Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得られる錯体が優れており、好ましい。
【0093】
上記金属錯体の配位子を構成するオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明においては、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸,酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ヘプタタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
【0094】
好ましい配位子はアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本発明においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のカルボキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
【0095】
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、アセチルアセトン、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1―アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。中でも、アセチルアセトン及びジアセチルアセトンがとくに好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
【0096】
好ましい金属錯体の例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性及び、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0097】
上記した金属錯体の対塩の記載を本明細書においては省略しているが、対塩の種類は、錯体化合物としての電荷の中性を保つ水溶性塩である限り任意であり、例えば硝酸塩、ハロゲン酸塩、硫酸塩、燐酸塩などの化学量論的中性が確保される塩の形が用いられる。金属錯体のシリカゾルゲル反応での挙動については、J.Sol-Gel.Sci.and Tec. 16.209(1999)に詳細な記載がある。反応メカニズムとしては以下のスキームを推定している。すなわち、塗布液中では、金属錯体は、配位構造を取って安定であり、塗布後の加熱乾燥過程に始まる脱水縮合反応では、酸触媒に似た機構で架橋を促進させるものと考えられる。いずれにしても、この金属錯体を用いたことにより塗布液経時安定性及び皮膜面質の改善と、高親水性、高耐久性の、いずれも満足させるに至った。
【0098】
また、上記の金属錯体触媒の他に、Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物の加水分解、重縮合を促進し、親水性ポリマーとの結合を生起することができるものを併用してもよい。このような触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などの酸性を示す化合物、あるいは、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などの塩基性化合物が挙げられる。
上記の金属錯体触媒は、市販品として容易に入手でき、また公知の合成方法、例えば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
金属錯体触媒は、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは0〜50質量%、更に好ましくは5〜25質量%の範囲で使用される。また、(c)金属錯体触媒は、単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0099】
第一吸水性層および第二吸水性層の組成は同じであっても異なっていてもよい。
【0100】
<界面活性剤>
本発明においては、前記吸水性膜形成用組成物の塗布面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0102】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
【0103】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
【0104】
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0105】
更に好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号および同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
【0106】
界面活性剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の含有量は、前記組成物の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
【0107】
<無機微粒子>
本発明の吸水性膜形成用の組成物には、吸水性膜の硬化皮膜強度向上及び親水性、保水性向上のために、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。これらは光熱変換性でなくても、皮膜の強化、表面粗面化による界面接着性の強化等に用いることができる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5μm〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、吸水性膜中に安定に分散して、膜強度および親水性を十分に保持でき好ましい。
上述したような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、吸水性膜形成用組成物の全固形分に対して、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
【0108】
<紫外線吸収剤>
本発明においては、吸水性膜の耐候性向上、耐久性向上の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0109】
<酸化防止剤>
本発明の組成物および吸水性膜の安定性向上のため、吸水性膜形成用塗布液に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0110】
<溶剤>
本発明の吸水性膜形成用組成物には、基材または下層に吸水性膜を形成する際に、基材または下層に対する均一な塗膜の形成性を確保するため、適度に有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、VOC(揮発性有機溶剤)の関連から問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量は吸水性膜形成時の塗布液全体に対し0〜50質量%が好ましく、より好ましくは0〜30質量%の範囲である。
【0111】
<高分子化合物>
本発明の吸水性膜形成用組成物には、吸水性膜の膜物性を調整するため、親水性を阻害しない範囲で各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0112】
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、基板への密着性を改善するために、親水性を阻害しない範囲でタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0113】
〔吸水性膜の形成〕
本発明における吸水性膜は、必要な上記各成分を溶剤に分散、又は、溶解して塗布液を調製し、適切な基材上に塗布してなる被膜を、熱により硬化させて形成することができる。
【0114】
例えば、(a)シラン変性親水性ポリマー、好ましくは(b)金属アルコキシドなどの架橋成分を溶媒に溶解し、よく攪拌することで、これらの成分が加水分解し、縮重合して、有機無機複合体ゾル液が形成され、このゾル液が本発明に係る吸水性膜形成用塗布液となり、これによって、高い親水性と高い膜強度を有する吸水性層が形成される。有機無機複合体ゾル液の調製において、加水分解及び縮重合反応を促進するために、前述の(c)金属錯体触媒を併用するが、実用上好ましい反応効率を得ようとする場合、触媒は必須である。また、酸性触媒または塩基性触媒を併用することも好ましい。
【0115】
吸水性膜塗布液の調製は、(a)シラン変性親水性ポリマー、及び好ましくは(b)金属アルコキシドなどの架橋成分、をエタノールなどの溶媒に溶解後、金属錯体触媒を含む上記触媒を加え、攪拌することで実施できる。反応温度は室温〜80℃であり、反応時間、即ち攪拌を継続する時間は1〜72時間の範囲であることが好ましく、この攪拌により両成分の加水分解・縮重合を進行させて、有機無機複合体ゾル液を得ることができる。
【0116】
前記吸水性膜塗布液組成物を調製する際に用いる溶媒としては、これらを均一に、溶解、分散し得るものであれば特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、水等の水系溶媒が好ましい。
【0117】
以上述べたように、本発明の吸水性膜を形成するための有機無機複合体ゾル液(吸水性膜塗布液組成物)の調製はゾルゲル法を利用している。ゾルゲル法については、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島硯「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述され、それらに記載の方法を本発明に係る吸水性膜塗布液組成物の調製に適用することができる。
【0118】
本発明に係る吸水性膜塗布液組成物には、先に述べたように、本発明の効果を損なわない限りにおいて、種々の添加剤を目的に応じて使用することができる。例えば、先に詳述したように、塗布液の均一性を向上させるため界面活性剤を添加することができる。
【0119】
上記のようにして調製した吸水性膜塗布液組成物を、基材表面に塗布、乾燥することで親水性表面を形成することができる。本発明の吸水性膜は、同一又は異なる上記各成分を同一又は異なる溶剤に分散、又は溶解した塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成することも可能である。
【0120】
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
【0121】
また第1の吸水性膜の膜厚は1〜20μmの範囲内にあることが好ましい。好ましくは2〜15μm、特に好ましくは5〜15μm、最も好ましくは5〜10μmである。吸水性膜の厚みが1μm未満では十分な防曇効果は得られない。また、20μmを超えると密着不良や均一な膜質な膜が得られない問題が生じる。
第1の吸水性膜の屈折率は1.0〜1.6であることが好ましい。この範囲であれば良好な反射防止効果が得られる。
【0122】
さらに第2の吸水性膜の膜厚は1〜20μmの範囲内にあることが好ましい。好ましくは2〜15μm、特に好ましくは5〜15μm、最も好ましくは5〜10μmである。吸水性膜の厚みが1μm未満では十分な防曇効果は得られない。また、20μmを超えると密着不良や均一な膜質な膜が得られない問題が生じる。
第2の吸水性膜の屈折率は1.0〜1.6であることが好ましい。この範囲であれば良好な反射防止効果が得られる。
【0123】
〔高屈折率薄膜〕
本発明に用いる高屈折率層(以下「高屈折率薄膜」と称する場合がある)は、第1の吸水性膜と、第2の吸水性膜を接着する役割も同時に果たすことができる。また、一般の無機薄膜に比べ柔軟性があるため、吸水性膜の水分吸収による膨張に追従することが可能で、吸水性膜の膨張により高屈折率薄膜に亀裂が生ずるようなことはない。
【0124】
高屈折率薄膜の膜厚は0.01〜0.05μmの範囲内にあることが好ましい。高屈折率薄膜の厚みが0.01μmより厚いと十分な反射防止効果が得られ、また0.05μm以下とすることで、均一な高屈折率薄膜を容易に得られる。
【0125】
第1吸水性膜の外層として形成される高屈折率薄膜は、金属アルコキシドの加水分解物の重縮合物を有する。この金属アルコキシドの好適な化合物としては、下記式(I)および式(II)に示される化合物が用いられる。
M(OR)a …(I)およびM(OR)n (X)a-n…(II)
【0126】
ここでMは、Si,Al,Ti,Zr,Ca,Fe,V,Sn,Li,Be,BおよびPからなる群から選択される原子であり、Rは、アルキル基であり、Xは、アルキル基、官能基を有するアルキル基、またはハロゲンであり、aは、Mの原子価であり、そしてnは、1からaまでの整数である。
【0127】
上記Xとしては、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、ビニル基、またはエポキシ基を有するアルキル基が好適である。
【0128】
特に良好な金属アルコキシドとしては、Al(OC253 およびAl(OCH(CH323 などのアルミニウムアルコキシド類、Ti(OC253およびTi(OCH(CH323 などのチタンアルコキシド類、Zr(OC253およびZr(OCH(CH323などのジルコニウムアルコキシド類、Ca(OC252 ,Fe(OC253 ,V((O−iso−C374,Sn(O−t−C494 ,Li(OC25),Be(OC252 ,B(OC253,P(OC253 ,P(OCH33などが用いられる。
【0129】
高屈折率薄膜は、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物およびその加水分解物の低分子量縮合物のいずれか1つまたは2つ以上を含有する溶液を第1吸水性膜上に塗布することによって形成できる。
【0130】
また、上記金属アルコキシドまたは金属アルコキシドと無機物との複合体から高屈折率薄膜の屈折率(n1 )は、第1および第2吸水性膜の屈折率より高いことが好ましく、特に1.7以上であることが好ましい。
【0131】
高屈折率薄膜の光学膜厚(n11 )は高屈折率薄膜を通じて水分の吸水性膜への移動が容易に生ずる点で300nm以下が好適である。
【0132】
また、良好な反射防止作用を生じさせる点から、高屈折率膜の光学膜厚n11 は下記式(3)または式(4)
0.8×kλ1 /2≦n11 ≦1.2×kλ1 /2 (3)
0.8×kλ1 /4≦n11 ≦1.2×kλ1 /4 (4)
(kは正の奇数、n1 は高屈折率層の屈折率、d1 は高屈折率層の膜厚、λ1 は400〜900nmの範囲で選ばれる設計波長)を満たすように設定するのが好適である。
【0133】
また、第2吸水性膜の厚さ光学膜厚(n22 )は、良好な反射防止作用を生じさせる点から、下記式0.8×kλ2/4≦n22 ≦1.2×kλ2 /4 (5)
(kは正の奇数、n2 は第2の吸水性膜の屈折率、d2 は第2の吸水性膜の膜厚、λ2 は400〜900nmの範囲で選ばれる設計波長)を満たすように設定するのが好適である。
【0134】
また、第1および第2吸水性膜および高屈折率薄膜には、各々、必要に応じて、屈折率(n)の制御のために、Ti,Ce,Zr,Sn,Sb,TaおよびSiから選ばれる金属酸化物およびMgF2 等の金属フッ化物の無機微粒子を添加してもよい。
【0135】
〔基材〕
本発明の防曇反射防止光学物品の基材としては、防曇効果・反射防止効果が必要とされる透明な基材等であり、その材質はガラス、プラスチック等が好適に利用できる。
本発明の防曇反射防止光学物品が適用可能な用途としては、車両用バックミラー、浴室用鏡、洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡のような鏡;眼鏡レンズ、光学レンズ、写真機レンズ、内視鏡レンズ、照明用レンズ、半導体用レンズ、複写機用レンズのようなレンズ;プリズム;建物や監視塔の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船のような乗物の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、スノーモービル、オートバイ、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船のような乗物の風防ガラス;防護用ゴーグル、スポーツ用ゴーグル、防護用マスクのシールド、スポーツ用マスクのシールド、ヘルメットのシールド、冷凍食品陳列ケースのガラス;計測機器のカバーガラス、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムを含む。
【0136】
基材は、ガラス、セラミックなどの無機基材でも、高分子樹脂からなる表面を有する基材のいずれも好ましく用いられ、樹脂基材は、樹脂自体、表面に樹脂が被覆されている基材、表面層が樹脂層からなる複合材のいずれをもを含む。樹脂自体としては、飛散防止フィルム、意匠性フィルム、耐蝕性フィルム等のフィルム基材;看板、高速道路の防音壁等の樹脂基材などが代表例として挙げられる。表面に樹脂が被覆されている基材としては、自動車筐体、塗装建材等の塗装板、表面に樹脂フィルムが貼着された積層板、プライマー処理した基材、ハードコート処理した基材などが代表例として挙げられる。表面層が樹脂層からなる複合材としては、裏面に接着剤層が設けられた樹脂シール材、反射ミラー、などが代表例として挙げられる。
【0137】
〔下塗り層〕
さらに吸水性膜と基材との密着を高める目的で一層以上の下塗り層を設けることができる。下塗り層の素材としては、親水性樹脂や水分散性ラテックスを用いることができる。
親水性樹脂としては、たとえば、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、等〕等が挙げられる。また、カルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
上記の中でも、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ゼラチン類が好ましい。
【0138】
水分散性ラテックスとしては、アクリル系ラテックス、ポリエステル系ラテックス、NBR樹脂、ポリウレタン系ラテックス、ポリ酢酸ビニル系ラテックス、SBR樹脂、ポリアミド系ラテックス等が挙げられる。中でも、アクリル系ラテックスが好ましい。
上記の親水性樹脂及び水分散性ラテックスは、各々一種単独で用いるほか二種以上を併用してもよく、親水性樹脂と水分散性ラテックスとを併用してもよい。
また、上記親水性樹脂や水分散性ラテックスを架橋する架橋剤を用いても良い。
本発明に適応可能な架橋剤としては、公知の熱により架橋を形成する架橋剤を用いることができる。一般的な熱架橋剤としては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載されているものがある。本発明に用いられる架橋剤の官能基数は2個以上で、且つ、親水性樹脂や水分散性ラテックスと有効に架橋可能ならば特に制限はない。具体的な熱架橋剤としては、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸、ポリエチレンイミン等のアミン化合物、エチレンまたはプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレンチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物、グリオキザル、テレフタルアルデヒドなどのポリアルデヒド化合物、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、イソプロピルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、ポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物などのポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、テトラアルコキンシランなどのシランカップリング剤、アルミニウム、銅、鉄(III)のアセチルアセトナートなどの金属架橋剤、トリメチロールメラミン、ペンタエリスリトールなどのポリメチロール化合物、などが挙げられる。これらの熱架橋剤のなかでも、塗布溶液の調液のしやすさ、作製した吸水性層の親水性低下を防止するという観点から水溶性の架橋剤であることが好ましい。
前記親水性樹脂及び/又は水分散性ラテックスの、下塗り層中における総量としては、0.01〜20g/m 2 が好ましく、0.1〜10g/m 2 がより好ましい。
【0139】
〔表面自由エネルギー〕
本発明における吸水性層は、親水性ポリマーを含んで形成されるため、親水性にも優れる。
吸水性層表面の親水性度は、汎用的に、水滴接触角で測定される。しかし、本発明のような非常に親水性の高い表面においては、水滴接触角が10°以下、さらには5°以下になることがあり、親水性度の相互比較を行うには、限界がある。一方、固体表面の親水性度をより詳細に評価する方法として、表面自由エネルギーの測定がある。種々の方法が提案されているが、本発明では、一例として、Zismanプロット法を用いて表面自由エネルギーを測定した。具体的には、塩化マグネシウムなどの無機電解質の水溶液が濃度とともに表面張力が大きくなる性質を利用し、その水溶液を用いて空中、室温条件で接触角を測定した後、横軸にその水溶液の表面張力、縦軸に接触角をcosθに換算した値をとり、種々の濃度の水溶液の点をプロットして直線関係を得、cosθ=1すなわち、接触角=0°になるときの表面張力を、固体の表面自由エネルギーと定義する測定方法である。水の表面張力は72mN/mであり、表面自由エネルギーの値が大きいほど親水性が高いといえる。
このような方法で測定した表面自由エネルギーが好ましくは70mN/m〜95mN/m、より好ましくは72mN/m〜93mN/m、さらに好ましくは75mN/m〜90mN/mの範囲にある吸水性層が、親水性に優れ、良好な性能を示す。
【0140】
本発明の吸水性膜は、吸水性膜形成用塗布液組成物を、適切な基材または下層上に塗布し、加熱、乾燥して親水性の層を形成することで得ることができる。吸水性層形成のための加熱温度と加熱時間は、ゾル液中の溶媒が除去され、強固な皮膜が形成できる温度と時間であれば特に制限はないが、製造適性などの点から加熱温度は150℃以下であることが好ましく、加熱時間は1時間以内が好ましい。
【実施例】
【0141】
〔実施例1〕
第1吸水性膜の作成
最も一般的な透明の板ガラスであるフロート板ガラス(厚み2mm)を準備し、該板ガラスの表面をグロー処理により親水化した後、下記組成の吸水性層塗布液をバー塗布し、100℃、10分でオーブン乾燥して、第1の吸水性膜を製膜した。得られた吸水性膜は透明で、膜厚は約5μmであった。また、上記吸水性膜の屈折率は1.45であった。
【0142】
<第1吸水性層塗布液>
・下記ゾルゲル調製液 500g
・コロイダルシリカ分散物20質量%水溶液(スノーテックC)
100g
・下記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液
30g
・精製水 450g
【0143】
アニオン系界面活性剤
【化12】

【0144】
<ゾルゲル調製液>
エチルアルコール200g、アセチルアセトン10g、オルトチタン酸テトラエチル10g、精製水100g中に、テトラメトキシシラン(東京化成工業(株)製)8gと下記の末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマー(例示化合物1(末端型))4gを混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
【0145】
<末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマーの合成>
三口フラスコにアクリルアミド25g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.5g、ジメチルホルムアミド51.3gを入れて窒素気流下、65℃まで加熱し、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を0.25g添加し、反応を開始した。6時間攪拌した後、室温まで戻して酢酸エチル1.5L中に投入したところ固体が析出した。その後、濾過を行い、充分酢酸エチルで洗浄し、乾燥を行った(収量21g)。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により、4000の質量平均分子量を有するポリマーであることを確認した。5%水溶液粘度は2.5cPs、親水性基の官能基密度は、13.4meq/gであった。
【0146】
高屈折率膜の作成
吸水性膜を製膜したガラス基板に、下記組成の高屈折率膜塗布液をバー塗布し、100℃、10分でオーブン乾燥して、高屈折率膜を製膜した。得られた高屈折率膜の光学膜厚は30nm、屈折率は1.75であった。
【0147】
チタンテトライソプロポキシド 200g
酢酸イソブチル 800g
【0148】
第2吸水性膜の作成
末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマーを例示化合物3(末端型)に変えたこと以外は第1吸水性膜と同じ組成の吸水性層塗布液を高屈折率膜上にバー塗布し、100℃、10分でオーブン乾燥して、第2の吸水性膜を製膜した。得られた吸水性膜の、光学膜厚(吸水性膜の屈折率nと膜厚dとの積)は135nmに調整した。また、上記第2の吸水性膜の屈折率は1.45であった。
【0149】
上記のように作成した光学物品に対し、下記性能試験を行った。結果を表4に示す。
(1)反射防止性:550nmの光の透過率測定(透過率96%以上で○、96%未満で×)
(2)防曇性:昼間、室温25℃の条件下、60℃のお湯を張ったポリカップ上に、光学物品を載せ、水蒸気を当てたときの、曇り具合及びその変化を下記基準により四段階で官能評価した。
◎:5h以上でも曇りが観察されない。
○:5h以内では曇りが観察されない。
△:5minで曇りが見られる
×:曇っている
(3)耐水性:水中でスポンジ往復10回こすり処理を行い、その前後の重量変化から残膜率を測定した。
(4)吸水時膜破壊:60℃、90%環境下に500時間放置後の膜破壊の有無を評価した。膜破壊の有無は防曇性で判定した。
◎:曇りが観察されない。
○:一部曇っているが、5秒以内に回復し、曇りが見られなくなる。
△:曇っており、回復するのに1分以上かかる。
×:曇っている
【0150】
〔比較例1〕
第1および第2吸水性膜の親水性ポリマーをポリアクリル酸に変えたこと以外は実施例1と同様の方法で光学物品を作成した。
【0151】
〔実施例2〜5〕
第1および第2吸水性膜の親水性ポリマーを表1に示す化合物に変えたこと以外は実施例1と同様の方法で光学物品を作成した。
【0152】
【表1】

【0153】
尚、以下に本実施例で使用した親水性ポリマーのLogP値(ここでは構成単位であるモノマーのLogP値)を示す。
例示化合物1(末端型)LogP=-0.61
例示化合物2(末端型)LogP=-0.30
例示化合物3(末端型)LogP=-0.17
例示化合物5(末端型)LogP=-0.23
例示化合物9(末端型)LogP=-1.55
【0154】
〔実施例6〕
第1吸水性膜の作成
最も一般的な透明の板ガラスであるフロート板ガラス(厚み2mm)を準備し、該板ガラスの表面をグロー処理により親水化した後、下記組成の吸水性層塗布液をバー塗布し、100℃、10分でオーブン乾燥して、第1の吸水性膜を製膜した。得られた吸水性膜は透明で、膜厚は約5μmであった。また、上記吸水性膜の屈折率は1.47であった。
【0155】
<第1吸水性膜塗布液>
・下記ゾルゲル調製液 500g
・下記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液 30g
・精製水 450g
【0156】
【化13】

【0157】
<ゾルゲル調製液>
エチルアルコール200g、アセチルアセトン10g、オルトチタン酸テトラエチル10g、精製水100g中に、テトラメトキシシラン(東京化成工業(株)製)8gと側鎖にシランカップリング基を有する親水性ポリマー(例示化合物1(側差型))4g、を混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
【0158】
高屈折率膜の作成
吸水性膜を製膜したガラス基板に、下記組成の高屈折率膜塗布液をバー塗布し、100℃、10分でオーブン乾燥して、高屈折率膜を製膜した。得られた高屈折率膜の光学膜厚は30nm、屈折率は1.60であった。
【0159】
アルミニウムイソプロポキシド 200g
酢酸イソブチル 800g
【0160】
第2吸水性膜の作成
側鎖にシランカップリング基を有する親水性ポリマーを例示化合物11(側鎖型)に変えたこと以外は第1吸水性膜と同じ組成の吸水性層塗布液を高屈折率膜上にバー塗布し、100℃、10分でオーブン乾燥して、第2の吸水性膜を製膜した。得られた吸水性膜の、光学膜厚(吸水性膜の屈折率nと膜厚dとの積)は135nmに調整した。また、上記第2の吸水性膜の屈折率は1.40であった。
【0161】
〔比較例2〕
第1および第2吸水性膜の親水性ポリマーをポリビニルアルコールに変えたこと以外は実施例6と同様の方法で光学物品を作成した。
【0162】
〔実施例7〜10〕
第1および第2吸水性膜の親水性ポリマーを表2に示す化合物に変えたこと以外は実施例6と同様の方法で光学物品を作成した。
【0163】
【表2】

【0164】
尚、以下に本実施例で使用した親水性ポリマーのLogP値(ここでは構成単位であるモノマーのLogP値)を示す。
例示化合物1(側鎖型)LogP=-0.64
例示化合物11(側鎖型)LogP=-0.66
例示化合物4(側鎖型)LogP=-1.4
例示化合物5(側鎖型)LogP=-0.32
例示化合物10(側鎖型)LogP=-0.64
例示化合物19(側鎖型)LogP=-1.4
【0165】
〔実施例11〜15〕
ゾルゲル調製液中のオルトチタン酸テトラエチル、アセチルアセトンを表3に示す化合物に変えたこと以外は実施例1と同様の方法で光学物品を作成した。
【0166】
【表3】

【0167】
【表4】

【0168】
〔実施例16〕
上記実施例1で作成した防曇反射防止光学物品を望遠鏡の接眼レンズとして組み込み、−5℃から30℃、湿度80%の部屋に移動させ、その際の望遠鏡の性能をチェックした。その結果、通常の望遠鏡で観察される、接眼レンズの曇りによる観察の際の不具合は発生しなかった。
【0169】
〔実施例17〕
第1吸水性膜の作成
最も一般的な透明の板ガラスであるフロート板ガラス(厚み2mm)を準備し、該板ガラスの表面をグロー処理により親水化した後、下記組成の吸水性層塗布液をバー塗布し、150℃、30分でオーブン乾燥して、第1の吸水性膜を製膜した。得られた吸水性膜は透明で、膜厚は8μmであった。また上記吸水性膜の屈折率は1.45であった。
【0170】
<第1吸水性層塗布液>
・下記ポリマー調製液(1) 500g
・下記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液 10g
【0171】
【化14】

【0172】
<ポリマー調製液(1)>
エチルアルコール9g、アセチルアセトン0.4g、オルトチタン酸テトラエチル0.5g、精製水450g中に、末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマー(例示化合物(1))50gを混合し、室温で2時間攪拌して、ポリマー調製液(1)を調製した。
【0173】
高屈折率膜の作成
吸水性を製膜したガラス基板に、下記組成の高屈折率膜塗布液をバー塗布し、100℃、10分でオーブン乾燥して、高屈折率膜を製膜した。得られた高屈折率膜の光学膜厚は30nm、屈折率は1.75であった。
【0174】
アルミニウムイソプロポキシド 200g
酢酸イソブチル 800g
【0175】
第2吸水性膜の作成
末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマーを例示化合物(3)に変えたこと以外は第1吸水性膜を同じ組成の吸水性層塗布液を高屈折率膜上にバー塗布し、150℃、30分でオーブン乾燥して、第2の吸水性膜を製膜した。得られた吸水性膜の光学膜厚(吸水性膜の屈折率nと膜厚dとの積)は135nmに調製した。また、上記第2の吸水性膜の屈折率は1.45、膜厚は6μmであった。
【0176】
評価は実施例1と同様の評価を行った。結果を表8に示す。
【0177】
〔実施例18〜20〕
第1の吸水性膜の膜厚を表5に示した膜厚に変更した以外は実施例17と同様の方法で光学物品を作成した。結果を表8に示す。
【0178】
【表5】

【0179】
〔実施例21〜23〕
第1、及び第2の吸水性膜の親水性ポリマーを表6に示す化合物、膜厚に変えたこと以外は実施例17と同様の方法で光学物品を作成した。
【0180】
【表6】

【0181】
〔実施例24〜26〕
ポリマー調製液(1)中のオルトチタン酸テトラエチル、アセチルアセトンを表7に示す化合物に変えたこと以外は実施例22と同様の方法で光学物品を作成した。
【0182】
【表7】

【0183】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学物品の基材上に、基材側から順に第一吸水性層、金属アルコキシドの加水分解物の重縮合体を有する高屈折率層、第二吸水性層を設けてなる防曇反射防止光学物品であって、第一及び第二吸水性層が、(a)シランカップリング基を含有する親水性ポリマー、(c)金属錯体触媒、を含む組成物を硬化させてなる層であることを特徴とする防曇反射防止光学物品。
【請求項2】
前記第一及び第二吸水性層が、さらに(b)Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の防曇反射防止光学物品。
【請求項3】
前記(c)金属錯体触媒が、周期律表の2A、3B、4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ―ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素化合物から構成されるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の防曇反射防止光学物品。
【請求項4】
前記シランカップリング基を含有する親水性ポリマーが、ポリマー末端または側鎖にシランカップリング基を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防曇反射防止光学物品。
【請求項5】
前記ポリマー末端にシランカップリング基を有する親水性ポリマーが、少なくとも下記一般式(1)で表される構造を有する化合物であることを特徴とする請求項4に記載の防曇反射防止光学物品。
【化1】

上記一般式(1)で表される構造を有する親水性ポリマーは、構造単位(i)、(ii)で表されるポリマーユニットの少なくとも一方の末端に、構造単位(iii)で表されるシランカップリング基を有する。
一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表し、mは0、1または2を表し、x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100であり、x+y=100となる数を表す。L1、L2、L3はそれぞれ独立に単結合又は有機連結基を表し、Y1、Y2はそれぞれ独立に−N(R7)(R8)、−OH、−NHCOR7、−CONH2、−CON(R7)(R8)、−COR7、−CO2M又は−SO3Mを表し、ここで、R7、R8はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表す。
【請求項6】
前記ポリマー側鎖にシランカップリング基を有する親水性ポリマーが、少なくとも下記一般式(2)で表される構造を有する化合物である請求項4に記載の防曇反射防止光学物品。
【化2】

一般式(2)で表される化合物は、一般式(I−a)及び(I−b)で示される構造単位を有する。
一般式(I−a)及び(I−b)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。Lは単結合又は多価の有機連結基を表す。Lは単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。x、yは一般式(I−a)で表される構造単位と一般式(I−b)で表される構造単位の組成比を表し、0<x<100、0<y<100であり、x+y=100となる数を表す。Xは−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【請求項7】
さらに、第一吸水性層および/または第二吸水性層に、d)コロイダルシリカを含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の防曇反射防止光学物品。

【公開番号】特開2008−225466(P2008−225466A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34766(P2008−34766)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】