防水ケース及び車載電子機器
【課題】ケース内外の温度差によるケース内の負圧の発生を抑制し、ケース内への水分の吸い込みを低減することができる防水ケースを提供する。
【解決手段】開口部1aを有し、部品Bが実装された電子装置を収容するケース本体1と、ケース本体1に取り付けられて開口部1aを塞ぐ蓋体2とを備え、蓋体2は、内面に凸部2dを有している。その結果、外部の熱が空気に比べて熱伝導性が良い材料であるケース本体及び蓋体を経てケース内部に伝わり、ケース内部の温度がケース外部の温度上昇に追随し易くなるので、ケース内に負圧が発生する時間が短くなり、ケース内への気流によって吸い込まれる水分量が低減される。また、蓋体の内面に凸部が形成されている分、ケース内部の空隙が小さくなり、負圧によりケース内部に吸い込まれる空気の量が少なくなるので、気流とともにケース内へ吸い込まれる水分量が低減される。
【解決手段】開口部1aを有し、部品Bが実装された電子装置を収容するケース本体1と、ケース本体1に取り付けられて開口部1aを塞ぐ蓋体2とを備え、蓋体2は、内面に凸部2dを有している。その結果、外部の熱が空気に比べて熱伝導性が良い材料であるケース本体及び蓋体を経てケース内部に伝わり、ケース内部の温度がケース外部の温度上昇に追随し易くなるので、ケース内に負圧が発生する時間が短くなり、ケース内への気流によって吸い込まれる水分量が低減される。また、蓋体の内面に凸部が形成されている分、ケース内部の空隙が小さくなり、負圧によりケース内部に吸い込まれる空気の量が少なくなるので、気流とともにケース内へ吸い込まれる水分量が低減される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置を収容した防水ケース、及び、該防水ケースを備えた車載電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置を収容する防水ケースの技術分野では、ケース本体の一面の開口部の周縁に液状シール剤を塗布した後、導線が挿通されたゴム製のグロメットを開口部の周縁の一部に形成した凹部に嵌着し、次に開口部を塞ぐ蓋体を開口部の周縁に当接させてネジ止め固定する構造が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−369346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の防水ケース等では、周囲温度が常温から高温に急変したような場合、外気に触れているケース本体及び蓋体はケース内より先に温度が上昇して膨張する一方、ケース内の温度上昇は遅れるので、ケース内の圧力が外部より低くなり、負圧が発生する。その結果、ケース本体と蓋体とグロメットとの間の当接箇所を通して、ケースの外部から内部への気流が生じ、該気流とともに外部の水分がケース内に吸い込まれて、ケース内に収容された電子装置が故障するおそれがある。
【0005】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、ケース内外の温度差によるケース内の負圧の発生を抑制し、ケース内への水分の吸い込みを低減することができる防水ケース、及び、該防水ケースを備えた車載電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る防水ケースは、開口部を有し、部品が実装された電子装置を収容するケース本体と、前記ケース本体に取り付けられて前記開口部を塞ぐ蓋体とを備えた防水ケースであって、前記蓋体は、内面に凸部を有していることを特徴とする。
【0007】
本発明にあっては、内面に凸部を有している蓋体を部品が実装された電子装置を収容するケース本体の開口部を塞ぐようにケース本体に取り付ける。これにより、空気に比べて熱伝導性が良い材料であるケース本体及び蓋体を経て外部の熱がケース内部に伝わるので、ケース内部の温度がケース外部の温度上昇に追随し易くなる。そのため、ケースの外部温度がケース内より高くなる場合に、ケース内外の温度差によってケース内に負圧が発生する時間が短くなり、ケース内への気流によって吸い込まれる水分量が低減される。
また、蓋体の内面に凸部が形成されている分、ケース内部の空隙が小さくなるので、負圧によりケース内部に吸い込まれる空気の量が少なくなり、気流とともにケース内へ吸い込まれる水分量が低減される。
【0008】
本発明に係る防水ケースは、前記凸部は、前記ケース本体の内部に位置する部品の配置に対応した形状であることを特徴とする。
本発明にあっては、蓋体の内面側の凸部がケース内部の電子装置に実装された部品の配置を阻害することがない状態で、ケース内部の空隙を極力小さくする。これにより、ケース内部の温度がケース外部の温度上昇に一層追随し易くなり、ケース内外の温度差によってケース内が負圧となる時間が短くなるので、ケース内部に吸い込まれる空気の量を一層少なくし、気流とともにケース内へ吸い込まれる水分量を低減することができる。
【0009】
本発明に係る防水ケースは、前記ケース本体及び蓋体は樹脂製であることを特徴とする。
本発明にあっては、樹脂製であるケース本体及び蓋体が外圧を受けた場合に容易に変形する。
【0010】
本発明に係る車載電子機器は、前記防水ケースを備えていることを特徴とする。
本発明にあっては、電子装置を内部に収容した前記防水ケースが車体に設置される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ケース内外の温度差によってケース内が負圧になる時間が短くなり、またケース内部の空隙を小さくして負圧によりケース内部に吸い込まれる空気の量を少なくするので、ケース内外の温度差によるケース内の負圧の発生を抑制し、ケース内への水分の吸い込みを低減することができる防水ケースが提供される。
【0012】
また、本発明によれば、内部への水分の吸い込みが低減された防水ケース内に電子装置を収容することにより、信頼性の高い車載電子機器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係る防水ケースを構成するケース本体の平面図である。
【図2】図1に示すケース本体の側面図である。
【図3】図1のIII−III線における断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る防水ケースを構成する蓋体の平面図である。
【図5】図4に示す蓋体の側面図である。
【図6】図4のVI−VI線における断面図である。
【図7】弾性ブッシュの正面図である。
【図8】図7に示す弾性ブッシュの平面図である。
【図9】図7のIX−IX線における断面図である。
【図10】蓋体を取り付ける前の防水ケースの平面図である。
【図11】蓋体を取り付けた状態の防水ケースの平面図である。
【図12】図11のXII−XII線における断面図である。
【図13】図11に示す防水ケースの側面図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係る蓋体の断面図である。
【図15】本発明の実施の形態3に係る蓋体の平面図である。
【図16】本発明の実施の形態4に係る蓋体の断面図である。
【図17】本発明の実施の形態5に係る蓋体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る防水ケースの実施の形態について図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係る防水ケースを構成するケース本体1の平面図、図2は図1に示すケース本体1の側面図、図3は図1のIII−III線における断面図である。
【0015】
ケース本体1は、略直方体の箱状をなし、一面に開口部1aを形成している。開口部1aの周縁に位置する側壁1bは平面視で1つの角部分が内側に直角状に屈曲し、側壁1bの上端部には、周方向と交差する溝状の凹部1b1,1b2が2つ形成されている。側壁1bの角部及び角部間の中間位置の9箇所に、側壁1bの壁面方向に沿った貫通孔を有し、側壁1bの上端面と同一高さの上面を有する取付部1dが外側に連設されている。側壁1bの内側に屈曲した部分には、貫通孔を有し、下面が側壁1bの下端面と同一高さである取付部1eが連設されている。ケース本体1の底部には、電子装置が搭載されたプリント基板を固定するためのネジ孔を有する複数のボス部1fが設けてある。
【0016】
図4は本発明の実施の形態1に係る防水ケースを構成する蓋体2の平面図、図5は図4に示す蓋体2の側面図、図6は図4のVI−VI線における断面図である。尚、図4は蓋体2を内面側から見たときの図である。
【0017】
蓋体2は平面視でケース本体1の側壁1bの外形と同一寸法の外形を有する板材である。蓋体2の周縁の角部及び角部間の中間位置の9箇所に、ケース本体1の取付部1dと対応させて、貫通孔を有する取付部2cが設けてある。蓋体2は、内面全体が同一高さで突出した凸部2dを有している。
【0018】
ケース本体1及び蓋体2の材質は耐熱性の合成樹脂であり、ケース本体1及び蓋体2は夫々一体成形にて作製される。耐熱性の合成樹脂は、具体的には、ガラス繊維(GF)30%含有のポリブチレンテレフタレート(PBT)である。
【0019】
図7は弾性ブッシュ3の正面図、図8は図7に示す弾性ブッシュ3の平面図、図9は図7のIX−IX線における断面図である。
【0020】
弾性ブッシュ3は、凹部1b1,1b2の内形寸法と略同一寸法で、側壁1bの厚さより厚い直方体状の盤状部3aを有している。盤状部3aは、正面視で長方形の隣り合う2角部が丸められ、他の2角部が直角に形成してある。盤状部3aの直角である2角部を結ぶ辺以外の他の3辺に対応する周面には、外れ防止用の突部3bが厚さ方向の両端側に設けてある。両側の突部3bの内面間の距離が側壁1bの厚さと同一である。導線を挿通させる複数の挿通孔3cが盤状部3aを貫通して設けてある。弾性ブッシュ3は側壁1bの凹部1b1,1b2に嵌着される。図7〜図9には凹部1b2に嵌着される弾性ブッシュ3を示すが、凹部1b1に嵌着される弾性ブッシュ3の構成も同様である。
【0021】
弾性ブッシュ3の材質はゴムである。具体的には、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴムなどである。また、弾性ブッシュ3のゴム硬度は40度〜60度の範囲が好ましい。
【0022】
次に、本発明に係る防水ケースの組み立てについて説明する。図10は蓋体2を取り付ける前の防水ケースの平面図、図11は蓋体2を取り付けた状態の防水ケースの平面図、図12は図11のXII−XII線における断面図、図13は図11に示す防水ケースの側面図である。
【0023】
先ず、電子装置を構成する各種の部品Bが実装されたプリント基板Pをケース本体1の底部の各ボス部1fにネジ止めして固定し、複数の導線Sが各挿通孔3cに挿通された2つの弾性ブッシュ3を側壁1bの各凹部1b1,1b2に嵌着させる。尚、挿通孔3cの内周面と導線Sとの間はシール材でシールしている。プリント基板Pに実装する電子装置は車載用の通信機器である。尚、図10では、プリント基板Pに実装された部品Bの図示を省略している。複数の導線Sは外部機器からの給電線や信号線であり、各導線Sの先端はプリント基板Pの接続箇所に金具にてネジ止め等で固定されている。
【0024】
次に、側壁1bの上端部及び弾性ブッシュ3の上側周面にシール材を設置する。具体的には、シール材として、常温硬化型の接着剤、シリコン系ゴム等を均一に塗布する。
【0025】
最後に、凸部2dを設けた面を下にした蓋体2を側壁1bの上に載せ、蓋体2の周囲9箇所の取付部2cに挿通したネジ9を側壁1bの取付部1dにネジ込んで蓋体2をケース本体1に結合する。ここで、凸部2dはプリント基板Pに実装した各部品Bに当たらない高さにしてある。防水ケースは樹脂製であり、事故時に容易に壊れ易いので、車両の前部のクラッシャブルゾーンに配置することができる。尚、組み立てた防水ケースは、ケース本体1の底部に設けた取付部1e、及び図示しない取り付け部材によって、車両の筺体にネジ止め固定される。
【0026】
本発明に係る防水ケースにより、開口部1aの周縁において、蓋体2がシール材を間にして側壁1bの上端面の凹部1b1,1b2を除く部分と弾性ブッシュ3の上側周面とに接触し、また蓋体2で押圧された弾性ブッシュ3の周面が凹部1b1,1b2の内周面に当接し、ケース本体1と蓋体2と弾性ブッシュ3との間のシール性が確保される。
【0027】
本発明に係る防水ケースでは、空気に比べて熱伝導性が良い材料であるケース本体1及び蓋体2を経て外部の熱がケース内部に伝わり、特に蓋体2の内面に設けた凸部2dが内部に突出して内部の空気と接触するので、ケース内部の温度がケース外部の温度上昇に追随し易くなる。その結果、ケース内外の温度差によってケース内に負圧が発生する時間が短くなり、ケース内への気流によって吸い込まれる水分量が低減される。また、凸部2dを設けた分、ケース内部の空隙が小さくなるので、ケース内部に負圧が発生した場合でも、ケース内部に吸い込まれる空気の量が少なくなり、気流とともにケース内へ吸い込まれる水分量が低減される。
【0028】
(実施の形態2)
図14は本発明の実施の形態2に係る蓋体2の断面図である。
実施の形態2では、蓋体2は内面に互いに平行な複数条の凸部2d1を有している点が実施の形態1と異なる。その結果、複数条の凸部2d1の表面と内部の空気との接触面積が増え、放熱フィンの機能を果たすので、ケース内部の温度がケース外部の温度上昇に追随し易くなる。
【0029】
(実施の形態3)
図15は本発明の実施の形態3に係る蓋体2の平面図である。
実施の形態3では、蓋体2は内面に碁盤目状に配置された複数の小径の凸部2d2を有している点が実施の形態1と異なる。その結果、複数の小径の凸部2d2の表面と内部の空気との接触面積が増え、放熱フィンの機能を果たすので、ケース内部の温度がケース外部の温度上昇に追随し易くなる。
【0030】
(実施の形態4)
図16は本発明の実施の形態4に係る蓋体2の断面図である。
実施の形態4では、蓋体2は部品Bの配置に合わせて段部を設けた凸部2d3を有している点が実施の形態1と異なる。部品Bの高さが高い箇所では凸部2d3の高さを低くし、部品Bの高さが低い箇所では凸部2d3の高さを高くしている。その結果、ケース内部の部品Bの配置に対応して、空隙を更に小さくすることができる。
【0031】
(実施の形態5)
図17は本発明の実施の形態5に係る蓋体2の断面図である。
実施の形態5では、部品Bの配置に加えて部品Bの形状に合わせて斜め状の段部を設けた凸部2d4を有している点が実施の形態4と異なる。その結果、ケース内部の部品Bの配置及び形状に対応して、ケース内部の空隙を更に小さくすることができる。
【0032】
上記の実施の形態では、ケース本体1に嵌着した弾性ブッシュ3により導線Sをケースの内外に配線するようにしたが、これ以外に、例えばケース本体1又は蓋体2に設けた貫通孔を通して導線Sをケースの内外に配線するようにしてもよい。
【0033】
上記の実施の形態では、本発明に係る防水ケースを車載電子機器に適用したが、車載電子機器以外の各種の電子機器等に適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 ケース本体
1a 開口部
2 蓋体
2d 凸部
2d1 凸部
2d2 凸部
2d3 凸部
2d4 凸部
B 部品
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置を収容した防水ケース、及び、該防水ケースを備えた車載電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置を収容する防水ケースの技術分野では、ケース本体の一面の開口部の周縁に液状シール剤を塗布した後、導線が挿通されたゴム製のグロメットを開口部の周縁の一部に形成した凹部に嵌着し、次に開口部を塞ぐ蓋体を開口部の周縁に当接させてネジ止め固定する構造が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−369346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の防水ケース等では、周囲温度が常温から高温に急変したような場合、外気に触れているケース本体及び蓋体はケース内より先に温度が上昇して膨張する一方、ケース内の温度上昇は遅れるので、ケース内の圧力が外部より低くなり、負圧が発生する。その結果、ケース本体と蓋体とグロメットとの間の当接箇所を通して、ケースの外部から内部への気流が生じ、該気流とともに外部の水分がケース内に吸い込まれて、ケース内に収容された電子装置が故障するおそれがある。
【0005】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、ケース内外の温度差によるケース内の負圧の発生を抑制し、ケース内への水分の吸い込みを低減することができる防水ケース、及び、該防水ケースを備えた車載電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る防水ケースは、開口部を有し、部品が実装された電子装置を収容するケース本体と、前記ケース本体に取り付けられて前記開口部を塞ぐ蓋体とを備えた防水ケースであって、前記蓋体は、内面に凸部を有していることを特徴とする。
【0007】
本発明にあっては、内面に凸部を有している蓋体を部品が実装された電子装置を収容するケース本体の開口部を塞ぐようにケース本体に取り付ける。これにより、空気に比べて熱伝導性が良い材料であるケース本体及び蓋体を経て外部の熱がケース内部に伝わるので、ケース内部の温度がケース外部の温度上昇に追随し易くなる。そのため、ケースの外部温度がケース内より高くなる場合に、ケース内外の温度差によってケース内に負圧が発生する時間が短くなり、ケース内への気流によって吸い込まれる水分量が低減される。
また、蓋体の内面に凸部が形成されている分、ケース内部の空隙が小さくなるので、負圧によりケース内部に吸い込まれる空気の量が少なくなり、気流とともにケース内へ吸い込まれる水分量が低減される。
【0008】
本発明に係る防水ケースは、前記凸部は、前記ケース本体の内部に位置する部品の配置に対応した形状であることを特徴とする。
本発明にあっては、蓋体の内面側の凸部がケース内部の電子装置に実装された部品の配置を阻害することがない状態で、ケース内部の空隙を極力小さくする。これにより、ケース内部の温度がケース外部の温度上昇に一層追随し易くなり、ケース内外の温度差によってケース内が負圧となる時間が短くなるので、ケース内部に吸い込まれる空気の量を一層少なくし、気流とともにケース内へ吸い込まれる水分量を低減することができる。
【0009】
本発明に係る防水ケースは、前記ケース本体及び蓋体は樹脂製であることを特徴とする。
本発明にあっては、樹脂製であるケース本体及び蓋体が外圧を受けた場合に容易に変形する。
【0010】
本発明に係る車載電子機器は、前記防水ケースを備えていることを特徴とする。
本発明にあっては、電子装置を内部に収容した前記防水ケースが車体に設置される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ケース内外の温度差によってケース内が負圧になる時間が短くなり、またケース内部の空隙を小さくして負圧によりケース内部に吸い込まれる空気の量を少なくするので、ケース内外の温度差によるケース内の負圧の発生を抑制し、ケース内への水分の吸い込みを低減することができる防水ケースが提供される。
【0012】
また、本発明によれば、内部への水分の吸い込みが低減された防水ケース内に電子装置を収容することにより、信頼性の高い車載電子機器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係る防水ケースを構成するケース本体の平面図である。
【図2】図1に示すケース本体の側面図である。
【図3】図1のIII−III線における断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る防水ケースを構成する蓋体の平面図である。
【図5】図4に示す蓋体の側面図である。
【図6】図4のVI−VI線における断面図である。
【図7】弾性ブッシュの正面図である。
【図8】図7に示す弾性ブッシュの平面図である。
【図9】図7のIX−IX線における断面図である。
【図10】蓋体を取り付ける前の防水ケースの平面図である。
【図11】蓋体を取り付けた状態の防水ケースの平面図である。
【図12】図11のXII−XII線における断面図である。
【図13】図11に示す防水ケースの側面図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係る蓋体の断面図である。
【図15】本発明の実施の形態3に係る蓋体の平面図である。
【図16】本発明の実施の形態4に係る蓋体の断面図である。
【図17】本発明の実施の形態5に係る蓋体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る防水ケースの実施の形態について図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係る防水ケースを構成するケース本体1の平面図、図2は図1に示すケース本体1の側面図、図3は図1のIII−III線における断面図である。
【0015】
ケース本体1は、略直方体の箱状をなし、一面に開口部1aを形成している。開口部1aの周縁に位置する側壁1bは平面視で1つの角部分が内側に直角状に屈曲し、側壁1bの上端部には、周方向と交差する溝状の凹部1b1,1b2が2つ形成されている。側壁1bの角部及び角部間の中間位置の9箇所に、側壁1bの壁面方向に沿った貫通孔を有し、側壁1bの上端面と同一高さの上面を有する取付部1dが外側に連設されている。側壁1bの内側に屈曲した部分には、貫通孔を有し、下面が側壁1bの下端面と同一高さである取付部1eが連設されている。ケース本体1の底部には、電子装置が搭載されたプリント基板を固定するためのネジ孔を有する複数のボス部1fが設けてある。
【0016】
図4は本発明の実施の形態1に係る防水ケースを構成する蓋体2の平面図、図5は図4に示す蓋体2の側面図、図6は図4のVI−VI線における断面図である。尚、図4は蓋体2を内面側から見たときの図である。
【0017】
蓋体2は平面視でケース本体1の側壁1bの外形と同一寸法の外形を有する板材である。蓋体2の周縁の角部及び角部間の中間位置の9箇所に、ケース本体1の取付部1dと対応させて、貫通孔を有する取付部2cが設けてある。蓋体2は、内面全体が同一高さで突出した凸部2dを有している。
【0018】
ケース本体1及び蓋体2の材質は耐熱性の合成樹脂であり、ケース本体1及び蓋体2は夫々一体成形にて作製される。耐熱性の合成樹脂は、具体的には、ガラス繊維(GF)30%含有のポリブチレンテレフタレート(PBT)である。
【0019】
図7は弾性ブッシュ3の正面図、図8は図7に示す弾性ブッシュ3の平面図、図9は図7のIX−IX線における断面図である。
【0020】
弾性ブッシュ3は、凹部1b1,1b2の内形寸法と略同一寸法で、側壁1bの厚さより厚い直方体状の盤状部3aを有している。盤状部3aは、正面視で長方形の隣り合う2角部が丸められ、他の2角部が直角に形成してある。盤状部3aの直角である2角部を結ぶ辺以外の他の3辺に対応する周面には、外れ防止用の突部3bが厚さ方向の両端側に設けてある。両側の突部3bの内面間の距離が側壁1bの厚さと同一である。導線を挿通させる複数の挿通孔3cが盤状部3aを貫通して設けてある。弾性ブッシュ3は側壁1bの凹部1b1,1b2に嵌着される。図7〜図9には凹部1b2に嵌着される弾性ブッシュ3を示すが、凹部1b1に嵌着される弾性ブッシュ3の構成も同様である。
【0021】
弾性ブッシュ3の材質はゴムである。具体的には、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴムなどである。また、弾性ブッシュ3のゴム硬度は40度〜60度の範囲が好ましい。
【0022】
次に、本発明に係る防水ケースの組み立てについて説明する。図10は蓋体2を取り付ける前の防水ケースの平面図、図11は蓋体2を取り付けた状態の防水ケースの平面図、図12は図11のXII−XII線における断面図、図13は図11に示す防水ケースの側面図である。
【0023】
先ず、電子装置を構成する各種の部品Bが実装されたプリント基板Pをケース本体1の底部の各ボス部1fにネジ止めして固定し、複数の導線Sが各挿通孔3cに挿通された2つの弾性ブッシュ3を側壁1bの各凹部1b1,1b2に嵌着させる。尚、挿通孔3cの内周面と導線Sとの間はシール材でシールしている。プリント基板Pに実装する電子装置は車載用の通信機器である。尚、図10では、プリント基板Pに実装された部品Bの図示を省略している。複数の導線Sは外部機器からの給電線や信号線であり、各導線Sの先端はプリント基板Pの接続箇所に金具にてネジ止め等で固定されている。
【0024】
次に、側壁1bの上端部及び弾性ブッシュ3の上側周面にシール材を設置する。具体的には、シール材として、常温硬化型の接着剤、シリコン系ゴム等を均一に塗布する。
【0025】
最後に、凸部2dを設けた面を下にした蓋体2を側壁1bの上に載せ、蓋体2の周囲9箇所の取付部2cに挿通したネジ9を側壁1bの取付部1dにネジ込んで蓋体2をケース本体1に結合する。ここで、凸部2dはプリント基板Pに実装した各部品Bに当たらない高さにしてある。防水ケースは樹脂製であり、事故時に容易に壊れ易いので、車両の前部のクラッシャブルゾーンに配置することができる。尚、組み立てた防水ケースは、ケース本体1の底部に設けた取付部1e、及び図示しない取り付け部材によって、車両の筺体にネジ止め固定される。
【0026】
本発明に係る防水ケースにより、開口部1aの周縁において、蓋体2がシール材を間にして側壁1bの上端面の凹部1b1,1b2を除く部分と弾性ブッシュ3の上側周面とに接触し、また蓋体2で押圧された弾性ブッシュ3の周面が凹部1b1,1b2の内周面に当接し、ケース本体1と蓋体2と弾性ブッシュ3との間のシール性が確保される。
【0027】
本発明に係る防水ケースでは、空気に比べて熱伝導性が良い材料であるケース本体1及び蓋体2を経て外部の熱がケース内部に伝わり、特に蓋体2の内面に設けた凸部2dが内部に突出して内部の空気と接触するので、ケース内部の温度がケース外部の温度上昇に追随し易くなる。その結果、ケース内外の温度差によってケース内に負圧が発生する時間が短くなり、ケース内への気流によって吸い込まれる水分量が低減される。また、凸部2dを設けた分、ケース内部の空隙が小さくなるので、ケース内部に負圧が発生した場合でも、ケース内部に吸い込まれる空気の量が少なくなり、気流とともにケース内へ吸い込まれる水分量が低減される。
【0028】
(実施の形態2)
図14は本発明の実施の形態2に係る蓋体2の断面図である。
実施の形態2では、蓋体2は内面に互いに平行な複数条の凸部2d1を有している点が実施の形態1と異なる。その結果、複数条の凸部2d1の表面と内部の空気との接触面積が増え、放熱フィンの機能を果たすので、ケース内部の温度がケース外部の温度上昇に追随し易くなる。
【0029】
(実施の形態3)
図15は本発明の実施の形態3に係る蓋体2の平面図である。
実施の形態3では、蓋体2は内面に碁盤目状に配置された複数の小径の凸部2d2を有している点が実施の形態1と異なる。その結果、複数の小径の凸部2d2の表面と内部の空気との接触面積が増え、放熱フィンの機能を果たすので、ケース内部の温度がケース外部の温度上昇に追随し易くなる。
【0030】
(実施の形態4)
図16は本発明の実施の形態4に係る蓋体2の断面図である。
実施の形態4では、蓋体2は部品Bの配置に合わせて段部を設けた凸部2d3を有している点が実施の形態1と異なる。部品Bの高さが高い箇所では凸部2d3の高さを低くし、部品Bの高さが低い箇所では凸部2d3の高さを高くしている。その結果、ケース内部の部品Bの配置に対応して、空隙を更に小さくすることができる。
【0031】
(実施の形態5)
図17は本発明の実施の形態5に係る蓋体2の断面図である。
実施の形態5では、部品Bの配置に加えて部品Bの形状に合わせて斜め状の段部を設けた凸部2d4を有している点が実施の形態4と異なる。その結果、ケース内部の部品Bの配置及び形状に対応して、ケース内部の空隙を更に小さくすることができる。
【0032】
上記の実施の形態では、ケース本体1に嵌着した弾性ブッシュ3により導線Sをケースの内外に配線するようにしたが、これ以外に、例えばケース本体1又は蓋体2に設けた貫通孔を通して導線Sをケースの内外に配線するようにしてもよい。
【0033】
上記の実施の形態では、本発明に係る防水ケースを車載電子機器に適用したが、車載電子機器以外の各種の電子機器等に適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 ケース本体
1a 開口部
2 蓋体
2d 凸部
2d1 凸部
2d2 凸部
2d3 凸部
2d4 凸部
B 部品
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有し、部品が実装された電子装置を収容するケース本体と、
前記ケース本体に取り付けられて前記開口部を塞ぐ蓋体と
を備えた防水ケースであって、
前記蓋体は、内面に凸部を有していることを特徴とする防水ケース。
【請求項2】
前記凸部は、前記ケース本体の内部に位置する部品の配置に対応した形状であることを特徴とする請求項1に記載の防水ケース。
【請求項3】
前記ケース本体及び蓋体は樹脂製であることを特徴とする請求項1又は2に記載の防水ケース。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の防水ケースを備えていることを特徴とする車載電子機器。
【請求項1】
開口部を有し、部品が実装された電子装置を収容するケース本体と、
前記ケース本体に取り付けられて前記開口部を塞ぐ蓋体と
を備えた防水ケースであって、
前記蓋体は、内面に凸部を有していることを特徴とする防水ケース。
【請求項2】
前記凸部は、前記ケース本体の内部に位置する部品の配置に対応した形状であることを特徴とする請求項1に記載の防水ケース。
【請求項3】
前記ケース本体及び蓋体は樹脂製であることを特徴とする請求項1又は2に記載の防水ケース。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の防水ケースを備えていることを特徴とする車載電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−90482(P2012−90482A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236820(P2010−236820)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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