説明

防水型コネクタ、防水型コネクタの実装構造及び実装方法

【課題】組み付け性を損なうことなく、シール部材に適切な密着状態を与えることのできる防水型コネクタを提供することを目的とする。
【解決手段】防水型のオスコネクタ20は、コネクタ配置窓5の周囲から立ち上るシール壁6を備える筐体カバー4のコネクタ配置窓5に配置されると、シール壁6にシールゴム35が密着されることでコネクタ配置窓5との間に封止部を形成する。シールゴム36を挟む両側に、コネクタ配置窓5にオスコネクタ20のハウジング21を挿通する際に、シール壁6に干渉することで、コネクタ配置窓5に対するハウジング21の相対的な位置を誘導する誘導突起32,37を備える

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水のかかる可能性のある場所に設けられる防水型コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンルームのように水のかかる可能性のある場所に設けられる電子機器に使用される電気コネクタには防水構造が採用されている。この防水型コネクタは、環状のシール部材を用い封止部を形成することで水が浸入するのを阻止する。
【0003】
例えば、特許文献1は、回路基板に組み付けられる基板コネクタとケースに組み付けられるアウターハウジングとにコネクタが分割されている。アウターハウジングは、基板コネクタのコンタクトを保持するコネクタハウジングが収容される受容部を有している。そして、コネクタハウジングとアウターハウジングの受容部との間、およびアウターハウジングとケースとの間に所定のクリアランスを有する状態にケース、ハウジング、および基板コネクタが組み付けられている。このため、基板コネクタとハウジングの間の組付公差と、ハウジングとケースの間の組付公差とによって、ケースとコネクタ間の組付公差を吸収できる。
また、特許文献2は、ゴム製のグロメットを電子機器の筐体カバーに固定し、電子機器側の回路基板に実装される電気コネクタ(基板コネクタ)と筐体カバーの間の防水性を確保する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−9845号公報
【特許文献2】特開2007−128715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シール部材が押し潰されて相手側のシール面に密着される防水型コネクタにおいて、押し潰される量が小さすぎる部分が環状のシール部材のいずれかの位置に生じていると防水性を確保できないおそれがある。また逆に、押し潰される量が大きすぎる部分が生じるとシール部材にねじれが生じてしまい、シール部材が定位置から離脱するおそれがあり、この場合も防水性を確保できないおそれがある。したがって、防水型コネクタは、必要な量だけシール部材が押し潰されて相手側のシール面に密着されること、つまり、適切な密着状態を得ることが防水性を確保する上で重要である。ところが、相互に位置ずれを起すことなく防水型コネクタと筐体とを組み付けることは容易ではない。また、上述した特許文献1、特許文献2は、シール部材に適切な密着状態を与えることを示唆していない。
そこで本発明は、組み付け性を損なうことなく、かつ、別部材を必要としないシール部材に適切な密着状態を与えることのできる防水型コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもとなされた本発明の防水型コネクタは、相手側コネクタとの電気的接続を担うコンタクトを保持するハウジングと、ハウジングに装着される環状のシール部材と、を備えており、コネクタ配置窓の周囲から立ち上るシール壁を備える筐体カバーのコネクタ配置窓に配置されると、シール壁にシール部材が密着されることでコネクタ配置窓との間に封止部を形成する防水型コネクタに関する。
そして本発明の防水型コネクタは、シール部材を挟む両側に、コネクタ配置窓にハウジングを挿通する際に、シール壁に干渉することで、シール壁に対するハウジングの相対的な位置を誘導する誘導体を備える、ことを特徴とする。
本発明の防水型コネクタは、シール壁に対するハウジングの相対的な位置を誘導する誘導体を、シール部材を挟む両側に備えることで、コネクタ配置窓にハウジングを挿通する際に、格別な作業を行なうことなく、シール部材に適切な密着状態を与えることができる。したがって、封止部における防水性を安定して確保できる。
【0007】
本発明の防水型コネクタにおいて、誘導体は、シール部材を挟む一方の側に設けられる第1誘導体と、シール部材を挟む他方の側に設けられる第2誘導体と、からなるものとする。この場合、第1誘導体及び第2誘導体の両者をハウジングに一体的に形成することもできるし、第1誘導体は、ハウジングに一体的に形成する一方、第2誘導体は、シール部材をハウジングに固定する環状のシール固定部材に形成することができる。
【0008】
本発明の防水型コネクタにおいて、シール部材の相手側コネクタとの嵌合方向の寸法が、シール壁の前記嵌合方向の寸法よりも小さいことが好ましい。筐体カバーが嵌合方向に位置ずれを起して配置されたとしても、シール部材をシール壁に密着させることができる。
【0009】
本発明の防水型コネクタにおいて、シール部材は、シール壁に向けて突出する複数のリブを備えることが好ましい。一つのリブに捻れのような支障が生じても、他のリブが健全なままであれば、防水性を確保できるからである。
【0010】
本発明の防水型コネクタにおいて、複数の誘導体が、ハウジングの周方向に間隔をあけて配置されていることが好ましい。
複数の誘導体を設ける位置を任意に調整すれば、シール壁に対してハウジングをより適切な位置に誘導できることになる。
【0011】
本発明の防水型コネクタにおいて、相手側コネクタがスカートを備え、防水型コネクタに相手側コネクタが接続されると、封止部がスカートにより覆い隠されることが、防水性を向上する上で好ましい。
【0012】
また、本発明は、筐体内に配置される回路基板に接続され、筐体に組み付けられる防水型コネクタの実装構造であって、防水型コネクタが以上のいずれかからなるものであり、筐体カバーが筐体の一部を構成するものを提供する。
本発明の防水型コネクタの実装構造によれば、シール部材に適切な密着状態を与えることができるので、筐体内に対する高い防水性を確保できる。
【0013】
また、本発明は、以上のいずれかからなる防水型コネクタを回路基板に接続する工程と、回路基板に接続された防水型コネクタに対して、コネクタ配置窓の周囲から立ち上るシール壁を備える筐体カバーを、コネクタ配置窓に防水型コネクタが配置されるように装着する工程と、を備える防水型コネクタの実装方法を提供する。
本発明の防水型コネクタの実装方法によれば、防水型コネクタおよび回路基板が内部に固定された状態の筐体に、コネクタ配置窓を通して筐体カバーを装着して筐体に組み付けるだけでシール部材に適切な密着状態が得られるので、実装作業が容易である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の防水型コネクタによれば、シール壁に対するハウジングの相対的な位置を誘導する誘導体を、シール部材を挟む両側に備えることで、コネクタ配置窓にハウジングを挿通する際に、シール部材に適切な密着状態を与えることができる。したがって、本発明の防水型コネクタによれば、封止部における防水性を安定して確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態におけるコネクタ組立体を示す斜視図である。
【図2】本実施の形態におけるコネクタ組立体を示し、(a)は平面図,(b)は(a)の2b−2b矢視断面図、(c)は(b)の部分拡大図である。
【図3】本実施の形態におけるオスコネクタを示し、(a)は斜視図、(b)は(a)の3b−3b矢視断面図である。
【図4】本実施の形態におけるオスコネクタの平面図である。
【図5】本実施の形態におけるオスコネクタを電子機器に組み付ける手順を示し、(a)はオスコネクタを回路基板に組み付けた状態を示し、(b)は筐体カバーを挿入し始めた状態を示す。
【図6】本実施の形態におけるオスコネクタを電子機器に組み付ける手順を示し、(a)は筐体カバーがシールゴムに達した状態を示し、(b)は筐体カバーが奥まで押し込まれた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
本実施の形態によるコネクタ組立体10は、図1および図2に示すように、電子機器1に組み付けて使用される防水型コネクタである。電子機器1は、筐体ケース3の外周に回路基板2が設けられるとともに、さらに回路基板2よりも外周を覆う金属製の筐体カバー4と、を備えている。コネクタ組立体10は、回路基板2と電気的に接続されるオスコネクタ20と、オスコネクタ20に対して相手側のコネクタとなるメスコネクタ40と、が嵌合されることで構成される。そして、筐体カバー4には、オスコネクタ20が配置される矩形状のコネクタ配置窓5が形成されている。オスコネクタ20は、このコネクタ配置窓5を貫通して、一部が筐体カバー4内に収容され、筐体カバー4内に配置される回路基板2と接続され、一部は筐体カバー4の外部に露出する。筐体カバー4は、コネクタ配置窓5に沿って筐体カバー4の外周に立設するフランジ状のシール壁6を備えている。なお、回路基板2には、図示しない各種の電子素子、配線パターンが実装されている。
なお、各図において、シールゴム35は、その形状を理解できるようにするために、押し潰されていない状態で示されている。後述するシールゴム46についても同様である。
【0017】
[オスコネクタ20]
本発明の防水型コネクタであるオスコネクタ20は、図3、図4にも示すように、オスハウジング21と、オスハウジング21に収容される複数のオス型のコンタクト22と、を備えている。なお、オスコネクタ20において、相手側のメスコネクタ40と接続される側を前、その逆側で図示しない電線が引き出される側を後と定義する。のメスコネクタ40についても同様で、相手側となるオスコネクタ20と接続される側を前とする。
【0018】
オスハウジング21は、絶縁性の樹脂の射出成形品であり、基部23と、基部23の前方側に設けられる2つの受容部24と、受容部24よりも後端側に位置し、オスコネクタ20を筐体ケース3に固定する3つの固定台座38と、を備えている。
【0019】
図3に示すように、基部23は、楕円形状の外形を有しており、後述する受容部24よりも径方向の外側に張り出して形成されている。
基部23は、ゴム配置部30と、ゴム配置部30よりも後方側に設けられるゴム支持部31と、ゴム配置部30よりも前方側に設けられるホルダ配置部33と、を周方向に沿って備えている。なお、ホルダ配置部33には、図3(b)に示すように、基部23の長径方向に沿って保持溝33aが形成されており、シールホルダ36の末端側を保持する。
ゴム配置部30の外周面は周方向の全長に亘って平坦面とされており、その周囲にその周囲にシールゴム35(シール部材)が嵌合される。
ゴム支持部31は、ゴム配置部30よりも径が大きく外側に張り出して形成されている。したがって、シールゴム35をゴム配置部30に嵌合させると、ゴム支持部31は後方側からシールゴム35を支持するとこで、シールゴム35の後方側への位置ずれを防ぐ。ゴム支持部31の外周面には、周方向に間隔をあけて6つの誘導突起32(第1誘導体)が形成されている。ゴム支持部31の外周面は、誘導突起32を除く部分は、周方向に亘って平坦面とされている。
【0020】
誘導突起32は、ゴム支持部31の長径方向(図3のx方向)の両端に1つずつ設けられている。この誘導突起32を誘導突起32xと称する。また、他の4つの誘導突起32は、ゴム支持部31における曲率の大きい部分と曲率の小さい部分の境界に設けられている。この誘導突起を誘導突起32yと称する。
誘導突起32xは、オスコネクタ20を筐体カバー4のコネクタ配置窓5に挿入する際に、シール壁6の内周面と干渉することにより、オスコネクタ20と筐体カバー4(シール壁6)との長径方向の相対的な位置を規制する。また、誘導突起32yは、同様に、シール壁6の内周面と干渉することにより、オスコネクタ20と筐体カバー4(シール壁6)との短径方向(図3のy方向)の相対的な位置を規制する。
【0021】
基部23のゴム支持部31(シールゴム35)よりも前方側には、シールホルダ36が設けられている。シールゴム35をゴム配置部30に嵌合させると、シールホルダ36は前方側からシールゴム35を支持するとこで、シールゴム35の前方側への位置ずれを防ぐ。シールホルダ36は、オスコネクタ20とは別体として作製され、シールゴム35をゴム支持部31の周囲に配置した後に、所定の位置に設けられる。
【0022】
シールホルダ36の外周面には、周方向に間隔をあけて6つの誘導突起37(第2誘導体)が形成されている。シールホルダ36の誘導突起37も、ゴム支持部31の誘導突起32と同様の位置に設けられている。つまり、誘導突起37は、シールホルダ36の長径方向の両端に1つずつ設けられている。この誘導突起37を誘導突起37xと称する。また、他の4つの誘導突起37は、ゴム支持部31における曲率の大きい部分と曲率の小さい部分の境界に設けられている。この誘導突起を誘導突起37yと称する。
誘導突起37xは、オスコネクタ20を筐体カバー4のコネクタ配置窓5に挿入する際に、シール壁6の内周面と干渉することにより、オスコネクタ20と筐体カバー4(シール壁6)との長径方向の相対的な位置を規制する。また、誘導突起37yは、同様に、シール壁6の内周面と干渉することにより、オスコネクタ20と筐体カバー4(シール壁6)との短径方向の相対的な位置を規制する。
【0023】
誘導突起37(37x,37y)は、対応する誘導突起32(32x、32y)と周方向の同じ位置に設けられている。このように、シールゴム35を挟んで、前後方向(図の上下方向)の両側に誘導突起32と誘導突起37が間隔を空けて設けることにより、オスコネクタ20を筐体カバー4のコネクタ配置窓5に挿入する際に、オスコネクタ20と筐体カバー4(シール壁6)との前後方向(図4のz方向)の相対的な位置を規制する。なお、ここでは対応する誘導突起32と誘導突起37を前後方向の同じ位置に設ける例を示したが、本発明はこれに限定されず、誘導突起32と誘導突起37を位置をずらして設けることもできる。
【0024】
次に、各々の受容部24には、表裏を貫通する保持孔26が形成された保持壁25と、保持壁25の周縁から前方に向けて立ち上がるフード27と、を備えている。コンタクト22は、保持孔26に圧入されることで保持壁25に保持され、保持壁25よりも前方側がフード27内に収容され、保持壁25よりも後方側は筐体カバー4の内部に収容される。
保持壁25には、図2に示すように、後方に向けて突出する突出部28が形成されており、この突出部28には、後方に開口するねじ孔29が形成されている。オスコネクタ20は、固定台座38を介して筐体ケース3にボルト(図示省略)により固定されるとともに、回路基板2を貫通するボルトBが突出部28のねじ孔29に捩じ込まれることにより、電子機器1に組み付けられる。
【0025】
オスコネクタ20は、固定台座38を介して筐体ケース3にボルトにより固定されるとともに、回路基板2を貫通するボルトBが突出部28のねじ孔29に捩じ込まれることにより、電子機器1に組み付けられる。
電子機器1に組み付けられると、オスコネクタ20のシールゴム35の先端が筐体カバー4のシール壁6の内周面(シール面)に密着されることにより、筐体カバー4とオスコネクタ20の間が封止され、筐体カバー4内の防水性が確保される。
本実施形態において、シールゴム35の前後方向の寸法(高さ)が、シール壁6の高さより小さく設定されている。これは、筐体カバー4が前後(嵌合)方向に位置ずれを起して配置されたとしても、オスコネクタ20の基部23とシール壁6の間にシールゴム35をより確実に収めるためである。ただし、これは本発明にとって好ましい実施形態にすぎない。
【0026】
[メスコネクタ40]
次に、オスコネクタ20と嵌合されるメスコネクタ40は、図1、図2に示すように、オスコネクタ20の受容部24に対応するメスハウジング41と、メスハウジング41に保持されオスコネクタ20のコンタクト22に電気的に接続されるメス型のコンタクト42と、コネクタ挿抜時の力を緩衝するリテーナ43と、メスハウジング41の周囲に設けられ、相互に嵌合されるオスコネクタ20とメスコネクタ40の抜け止めを担うレバー係合部44と、を備えている。
【0027】
メスハウジング41には、オスコネクタ20のコンタクト22が挿入されるコンタクトキャビティ45が形成されている。コンタクトキャビティ45には、コンタクト42に導通される図示しない電線が挿入される。
このメスハウジング41は、メスコネクタ40とオスコネクタ20が接続されると、受容部24に収容される。メスハウジング41の後端側の外周には全周に亘って保持溝47が設けられており、この保持溝47に環状のシールゴム46が配置される。
メスコネクタ40がオスコネクタ20と嵌合されると、シールゴム46がフード27の内周面に密着されることでオスコネクタ20とメスコネクタ40の間が封止され、オスコネクタ20とメスコネクタ40の間からの水の侵入を防止できる。
また、メスハウジング41の外周には、レバー係合部44の回動軸44aが形成されている。
【0028】
レバー係合部44は、メスハウジング41の外周に形成された支持軸48を軸として回動され、フード27の外周に形成された係止突起39と互いに係合する係止突起49を備えている。これにより、オスコネクタ20とメスコネクタ40の抜け止めが図られている。
【0029】
メスハウジング41は、スカート50を備えている。スカート50は、メスハウジング41の前端側に設けられており、その内部にオスコネクタ20の前端側を収容する収容空隙51(図2)を有する。メスコネクタ40をオスコネクタ20に嵌合させると、オスコネクタ20の基部23がスカート50の収容空隙51に収容される。つまり、スカート50は、シールホルダ36、シールゴム35(ゴム配置部30)及びゴム支持部31を覆い隠す。また、スカート50は、シールゴム35とともに封止部を構成する筐体カバー4のシール壁6も併せて覆い隠す。
【0030】
スカート50は、以上の機能を果たすために、その収容空隙51の間口がシール壁6の外形よりも大きく設定されている。ただし、シール壁6とスカート50の間の隙間が大きすぎると水の浸入の可能性が増える。一方、この隙間が小さすぎると寸法公差によりスカート50がシール壁6に干渉して、メスコネクタ40とオスコネクタ20の嵌合に支障を来たすおそれがある。これらの点を考慮して、スカート50の間口の寸法を定めるのがよい。また、スカート50の前後方向の寸法(高さ)は、メスコネクタ40をオスコネクタ20に嵌合させたときに、その前端と筐体カバー4との間に隙間ができるように設定することが好ましい。嵌合スカート50の前端が筐体カバー4に干渉することを回避することによって、メスコネクタ40とオスコネクタ20の完全な嵌合を保障するためである。もちろん、水の浸入の可能性を低くすることも考慮するとともに、コネクタの位置ずれを考慮し、この隙間、つまりスカート50の高さが決定されるべきである。
【0031】
[組み付け手順]
以下、図5〜図6を参照してオスコネクタ20を電子機器1に組み付ける手順を説明する。
始めに、図5(a)に示すように、オスコネクタ20を筐体ケース3、回路基板2に組み付ける。
この組み付けは、前述した通り、固定台座38を介して筐体ケース3にボルト(図示省略)により固定するとともに、回路基板2を貫通するボルトBを突出部28のねじ孔29にねじ込むことにより行なわれる。
【0032】
次いで、図5(b)に示すように、筐体カバー4を設置する。
筐体カバー4のコネクタ配置窓5に対して位置決めしながら、筐体カバー4を回路基板2に向けて押込むことで、オスコネクタ20をコネクタ配置窓5に挿通させる。この過程で、誘導突起32、誘導突起37は、筐体カバー4のシール壁6との間で、オスコネクタ20のシールゴム35が適切な密着状態を確保するのに役立つ。
つまり、シール壁6がシールホルダ36まで達すると、誘導突起32がシール壁6の内周面に干渉するので、筐体カバー4は、誘導突起32がシール壁6と干渉するのを超えてオスコネクタ20に対して位置ずれを起すことがない。例えば、オスコネクタ20に対して筐体カバー4が傾いて挿通されたとしても、図4(b)に示すように、誘導突起37(32)がシール壁6の内周面に干渉することにより、それ以上に筐体カバー4が傾くのを規制しながら、オスコネクタ20をコネクタ配置窓5に挿通させることができる。したがって、図6(a)に示すように、筐体カバー4をシールゴム35に達するまで押込むと、シールゴム35は、周方向の全域に亘り、防水性を確保するのに必要な密着代が得られるように、シール壁6の内周面に密着される。
【0033】
筐体カバー4をさらに押込むと、図6(b)に示すように、シール壁6はシールゴム35を越えて、ゴム支持部31に達する。そうすると、ゴム支持部31の周囲に設けられている誘導突起32がシール壁6の内周面に干渉することにより、上記と同様にして、筐体カバー4が傾くのを規制できる。この筐体カバー4の傾きは、シールゴム35を挟んで、前後方法に誘導突起32、37を設けたことにより、平面方向(図3のx方向、y方向)のみならず、前後方向(図3のz方向)についても規制される。こうして、筐体カバー4を奥まで押し込むだけで、防水性を確保するのに必要な密着代がシールゴム35に与えられることにより、本実施形態のコネクタ組立体10は、筐体カバー4とオスコネクタ20の間に高い防水性を付与することができる。
【0034】
仮に、誘導突起32、37を設けなければ、筐体カバー4が平面方向及び前後方向に相当に傾いたままで、筐体カバー4が奥まで押し込まれてしまう。そうすると、シールゴム35の密着代が大きくすぎる部分と小さすぎる部分か混在する片あたり現象が生じてしまう。この密着代が小さすぎる部分は防水性が不十分になる。また、密着代が大きすぎる部分では、シールゴム35とシール壁6が強く干渉しすぎると、シールゴム35が捻れてしまい、又は、ゴム支持部31から外れることも懸念される。この場合も、防水性を害することになる。
【0035】
筐体カバー4を奥まで押し込んだ後に、メスコネクタ40をオスコネクタ20に嵌合させる。そうすると、図1に示すように、オスコネクタ20はメスコネクタ40に覆われる。特に、シールゴム35とシール壁6による封止部分がメスコネクタ40のスカート50の内部に完全に覆い隠されるため、外部から当該封止部分への直接的な水の到来を防ぐことができる。また、防水性にダメージを与える要因が、外部からシールゴム35に直接的に与えられることもないので、当該封止部分の防水性のさらなる向上を図ることができる。
【0036】
以上のコネクタ組立体10において、誘導突起32、37を、各々、ゴム支持部31、シールホルダ36の周囲の6箇所に設けることは、筐体カバー4とオスコネクタ20の相互の中心が一致するように誘導するのに好適である。しかし、本発明は、他の配置で誘導突起32、37を設けることを許容する。ただしこの場合も、シールゴム35の密着代が、平面方向及び前後方向に均等になることを前提とすべきである。また、誘導突起32、37の長さ(平面方向の寸法)を本発明は限定するものではない。しかし、極端に長くなりすぎると、突出高さの精度を長さ方向に亘って確保するのが難しくなる場合もあるので、この点を考慮して長さを設定する必要がある。
【0037】
また、以上説明した実施形態では、2つのリブ35aを備えたシールゴム35の例を示したが、これは、一方のリブ35aに捻れのような支障が生じても、もう一方のリブ35aが健全なままであれば、防水性を確保できるからである。したがって、リブ35aを備えるシールゴム35を用いる場合には、複数のリブ35aを設けることが好ましい。
もっとも、本発明に使用できるシールゴムはリブを備えるものに限定されず、例えば、リップシールゴム、又は、グロメットシールゴムを使用することができる。
【0038】
本発明は実施の形態に基づいて説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択し、あるいは他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 電子機器
2 回路基板
3 筐体ケース
4 筐体カバー
5 コネクタ配置窓
6 シール壁
10 コネクタ組立体
20 オスコネクタ
21 オスハウジング
22 コンタクト
23 基部
24 受容部
25 保持壁
26 保持孔
27 フード
30 ゴム配置部
31 ゴム支持部
32,32x,32y,37,37x,37y 誘導突起
33 ホルダ配置部
35 シールゴム
35a リブ
36 シールホルダ
40 メスコネクタ
41 メスハウジング
42 コンタクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側コネクタとの電気的接続を担うコンタクトを保持するハウジングと、
前記ハウジングに装着される環状のシール部材と、を備え、
コネクタ配置窓の周囲から立ち上るシール壁を備える筐体カバーの前記コネクタ配置窓に配置されると、前記シール壁に前記シール部材が密着されることで前記コネクタ配置窓との間に封止部を形成する防水型コネクタであって、
前記シール部材を挟む両側に、前記コネクタ配置窓に前記ハウジングを挿通する際に、前記シール壁に干渉することで、前記コネクタ配置窓に対する前記ハウジングの相対的な位置を誘導する誘導体を備える、
ことを特徴とする防水型コネクタ。
【請求項2】
前記誘導体は、
前記シール部材を挟む一方の側に設けられる第1誘導体と、
前記シール部材を挟む他方の側に設けられる第2誘導体と、からなり、
前記第1誘導体は、前記ハウジングに一体的に形成され、
前記第2誘導体は、前記シール部材を前記ハウジングに固定する環状のシール固定部材に形成される、
請求項1に記載の防水型コネクタ。
【請求項3】
前記シール部材の前記相手側コネクタとの嵌合方向の寸法が、前記シール壁の前記嵌合方向の寸法よりも小さい、
請求項1又は2に記載の防水型コネクタ。
【請求項4】
前記シール部材は、前記シール壁に向けて突出する複数のリブを備える、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の防水型コネクタ。
【請求項5】
複数の前記誘導体が、前記ハウジングの周方向に間隔をあけて配置されている、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の防水型コネクタ。
【請求項6】
前記相手側コネクタはスカートを備え、
前記防水型コネクタに前記相手側コネクタが接続されると、前記封止部が前記スカートにより覆い隠される、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の防水型コネクタ。
【請求項7】
筐体内に配置される回路基板に接続され、前記筐体に組み付けられる防水型コネクタの実装構造であって、
前記防水型コネクタが請求項1〜6のいずれか一項に記載の防水型コネクタであり、
前記筐体カバーが前記筐体の一部を構成することを特徴とする防水型コネクタの実装構造。
【請求項8】
請求項7の防水型コネクタの実装構造を得るにあたり、
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の防水型コネクタを前記回路基板に接続する工程と、
前記回路基板に接続された前記防水型コネクタに対して、コネクタ配置窓の周囲から立ち上るシール壁を備える筐体カバーを、前記コネクタ配置窓に前記防水型コネクタが配置されるように装着する工程と、
を備えることを特徴とする防水型コネクタの実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−114830(P2013−114830A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258530(P2011−258530)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000227995)タイコエレクトロニクスジャパン合同会社 (340)
【Fターム(参考)】