説明

防水型携帯無線機のアンテナ構造、及びこれを備えた防水型携帯無線機。

【課題】アンテナ収納時に他のアンテナへの影響を確実に回避できる防水型携帯無線機のアンテナ構造、及び防水型携帯無線機を提供する。
【解決手段】無線回路部22を内部に防水可能に収容する筐体16と、筐体16の内外を伸縮可能とされるホイップアンテナ43とを備える防水型携帯無線機1のアンテナ構造において、ホイップアンテナ43の周囲を覆う切欠き部防水パッキンと、筐体16の内部に防水可能に収容されるインピーダンス回路部21と、ホイップアンテナ43の収縮時にホイップアンテナ他端部43bとインピーダンス回路部21とを接続する第一接続部13と、ホイップアンテナ43の伸張時にホイップアンテナ他端部43bと無線回路部22とを接続する第二接続部15とを備え、さらに、第一接続部13は切欠き部防水パッキンの外周に設けられ、ホイップアンテナ43に電気的に接続されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水機能を有する携帯無線機及のアンテナ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば携帯電話等の携帯無線機は小型化、薄型化されると共に様々なアプリケーション機能を備えており、日常生活に不可欠なものとなっている。このため、雨天時における屋外での使用等、実生活の様々な場面における使用に対して需要者の要求に対応すべく、防水機能を備えた携帯無線機が開発されている。
【0003】
そして、上記携帯無線機には、種々の上記アプリケーションに対応して複数のアンテナが設けられている。ここで、例えば電話通信用のアンテナについては携帯無線機へ内蔵化されている場合が多いが、デジタルTVのアンテナ等については受信性の問題から内蔵化が難しく、例えば特許文献1にあるような伸縮自在に設けられるホイップアンテナが用いられている。そして、このホイップアンテナ収容時(不使用時)には、上記電話通信用アンテナ等の他のアンテナの通信帯域で動作しないように調節され、これら他のアンテナの使用に影響を及ぼさないように設定するインピーダンス回路を備えた携帯無線機も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−004113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の伸縮式ホイップアンテナ及びインピーダンス回路を備える携帯無線機においては、ホイップアンテナは携帯無線機に対して摺動可能に設けられるが、その構造上、上記インピーダンス回路とホイップアンテナとの接触部を形成することが難しく接触不良の発生の懸念があった。
また、この摺動部の防水は困難であるため、防水型の携帯無線機に設けられる場合でも上記ホイップアンテナは非防水エリアに実装されることが一般的であった。従って、インピーダンス回路との接触部が浸水し接触不良を起こす等のおそれもあった。
このような理由から、インピーダンス回路とホイップアンテナとの間において安定した接触ができず、ホイップアンテナ不使用時に電話通信用のアンテナ等の他のアンテナへの影響を十分に回避できていなかった。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、アンテナ収納時に他のアンテナへの影響を確実に抑制できる防水型携帯無線機のアンテナ構造、及び防水型携帯無線機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
即ち、本発明に係る防水型携帯無線機のアンテナ構造は、無線回路部を内部に防水可能に収容する筐体と、前記筐体内外を伸縮可能とされる第一アンテナとを備える防水型携帯無線機のアンテナ構造において、前記第一アンテナの周囲を覆う防水パッキンと、前記筐体の内部に防水可能に収容されるインピーダンス回路部と、前記第一アンテナの収縮時に、該第一アンテナの前記筐体内部側の先端部と前記インピーダンス回路部とが対向する第一接続部と、前記第一アンテナの伸張時に、該第一アンテナの前記先端部と前記無線回路部とを接続する第二接続部とを備え、さらに、前記第一接続部は、前記防水パッキンの外周側に設けられるとともに前記防水パッキンを介して前記第一アンテナ部に電気的に接続されることを特徴とする防水型携帯無線機のアンテナ構造。
【0008】
また、本発明に係る防水型携帯無線機は、上記のアンテナ構造を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防水型携帯無線機のアンテナ構造、及び防水型携帯無線機によれば、第一アンテナの伸張時には第一アンテナを動作可能とするとともに、第一アンテナ収縮時においては、防水パッキンを介した非接触の電気的接続を用いることによって、第一接続部における接触不良及び浸水を回避でき、第二アンテナへの影響を抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第一実施形態に係る防水型携帯無線機の全体を示す透視図であって、第一アンテナ収縮時の図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る防水型携帯無線機の全体を示す透視図であって、第一アンテナ伸張時の図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る防水型携帯無線機内部の回路構成を簡略化して示すブロック図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る防水型携帯無線機の全体を示す透視図であって、第一アンテナ収縮時の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1から図3を参照して、本発明の第一実施形態に係る防水型携帯無線機1について説明する。
防水型携帯無線機1は、例えば、電話通信用アンテナ部(第二アンテナ)11と共にデジタルTVアンテナ部(第一アンテナ)12を備える携帯電話等である。
【0012】
そして、この防水型携帯無線機1(以下、単に携帯無線機1と称する)は、通信電波を送受信する電話通信用アンテナ部11と、TV放送を受信するデジタルTVアンテナ部12と、デジタルTVアンテナ部12に第一接続部13及び第二接続部15を介して接続される回路基板14とを備える。そしてこれらの構成部品全ては筐体16に収容されている。
【0013】
筐体16は、プラスチックや金属等よりなる内部に空洞を有する箱部材である。またこの筐体16は、上底面31と、この上底面31に平行な下底面32と、これら上底面31と下底面32とによって挟まれる四つの側面とを外面とする直方体状をなしている。
【0014】
さらに、この筐体16は、上底面31と上記四つの側面のうちの一つである第一側面33とに開口する切欠き部35を有しており、この切欠き部35を第一側面33に直交する方向から見た時、上底面31及び下底面32に直交する方向、即ち、第一の方向Aを長手方向とし、第一の方向Aに直交する第二の方向Bを短手方向とする略矩形状をなしている。
【0015】
ここで、第一側面33に直交する方向、即ち、第一の方向A及び第二の方向Bに直交する方向を第三の方向Cとする。
そして、切欠き部35は、第三の方向Cから見た場合、第二の方向一方側B1に寄った位置に形成されている。
さらに、筐体16は第三の方向Cに、第一側面33と第一側面33に平行な第二側面34との間の中途において、第一筐体16aと第二筐体16bとの二つに分割されており、筐体防水パッキン44を間に挟んだ状態で、この第一筐体16aと第二筐体16bとが結合されている。なお、上記切欠き部35は第二筐体16bに位置していることになる。
【0016】
また、この切欠き部35の内部には、切欠き部35の内面を覆うように切欠き部防水パッキン42が設けられている。この切欠き部防水パッキン42は、切欠き部35と第二筐体16bとの間の止水を行うものである。
【0017】
電話通信用アンテナ部11は、基地局との間で電話通信の電波の送受信を行なうアンテナ装置である。この電話通信用アンテナ部11は、直方体の箱状の部材に収容されており、第三の方向Cから見た際には、第二筐体16bにおいて、第一の方向一方側A1及び第二の方向他方側B2に寄った位置に第二の方向Bを延在方向として配置されている。
【0018】
デジタルTVアンテナ部12は、棒状のホイップアンテナ43と、ホイップアンテナ43の一端部43aの先端に設けられる平板状のストッパ41を有している。そして、ホイップアンテナ一端部43aが第一の方向一方側A1に位置するように、第二筐体16bの切欠き部35に設けられた切欠き部防水パッキン42内に挿入されている。ホイップアンテナ43が切欠き部防水パッキン42に挿入された状態においては、ストッパ41の第一の方向一方側A1を向く端面は上底面31と同一面上に位置している。
【0019】
また、このホイップアンテナ43は、第一の方向Aに沿って、第二筐体16bの内外をスライド移動可能とされている。
【0020】
回路基板14は、第一の方向A及び第二の方向Bに延在する略平板状の電子基板である。この回路基板14はインピーダンス回路部21と無線回路部22とを有しており、第二筐体16b内部において、筐体防水パッキン44と切欠き部35との間に設けられている。
【0021】
無線回路部22は、ホイップアンテナ43が第一の方向一方側A1にスライド移動した状態、即ち、ホイップアンテナ43の伸張時に、ホイップアンテナ他端部43bと第二接続部15を介して接続される。また、この無線回路部22は、ホイップアンテナ43との整合を取る整合回路23と、整合回路23に接続され受信信号の制御を行う無線回路24とを有している。
【0022】
インピーダンス回路部21は、並列共振回路及び直列共振回路等から構成されており、第一の方向他方側A2にスライド移動した状態、即ち、ホイップアンテナ43の収縮時には第一接続部13を介してホイップアンテナ他端部43bが対向することによって高周波結合され、電話通信用アンテナへの影響を回避するように制御する電気回路である。
また、このインピーダンス回路部21は、電話通信用アンテナ部11の使用帯域でデジタルTVアンテナ部12が動作しないように、インピーダンス調整され、GNDへ接続されている。
【0023】
第一接続部13は、上記切欠き部防水パッキン42の外周側から切欠き部防水パッキン42を覆うように設けられた金属よりなる円筒型の結合金具51aと、この結合金具51aに一端が接続されるとともに、他端がインピーダンス回路部21に接続されるピン状の終端金具52とを有している。
この結合金具51aは、ホイップアンテナ43の収縮時にホイップアンテナ他端部43bと対向するように、上記切欠き部35内の第一の方向一方側A1に設けられている。
【0024】
第二接続部15は、固定金具53と給電金具54とを有している。固定金具53は、上記切欠き部防水パッキン42の第一の方向他方側A2において、上記切欠き部防水パッキン42の内部に挿入、固定される金属からなる円筒型の部材である。また、給電金具54は、この固定金具53に一端が接続されるとともに、切欠き部防水パッキン42を貫通し、他端が整合回路23を介して無線回路24に接続されるピン状の部材である。
【0025】
この固定金具53は、ホイップアンテナ43が挿通されており、ホイップアンテナ43の伸張時には、ホイップアンテナ他端部43bと接触するとともに、ホイップアンテナ43が第一の方向一方側A1に脱落しないように嵌め合わされている。
一方、ホイップアンテナ43の収縮時には、ホイップアンテナ43が第一の方向他方側A2に脱落しないように、この固定金具53の第一の方向一方側A1を向く面がストッパ41の第一の方向他方側A2を向く面と接触している。
即ち、この固定金具53は、ホイップアンテナ43と無線回路部22とを接続するとともに、ホイップアンテナ43のストッパーとしても作用する部材である。
【0026】
このような携帯無線機1においては、ホイップアンテナ43伸張時には、ホイップアンテナ43が固定金具53及び給電金具54を介して無線回路部22と接続されるため、TV電波の受信が可能となる。さらに、ホイップアンテナ43は固定金具53へ脱落しないよう嵌められているため、第一方向一方側へ抜け落ちることはない。
【0027】
ここで、ホイップアンテナ43は指向性のないアンテナであるため、一般的には携帯電話や携帯ラジオ等の移動性の高いものに設けられる。
【0028】
一方で、ホイップアンテナ43収縮時には、結合金具51a及び終端金具52によってインピーダンス回路部21とホイップアンテナ43とが対向する。即ち、インピーダンス回路部21とホイップアンテナ43とが静電容量を形成し高周波結合され、この結果、ホイップアンテナ43収縮時には、ホイップアンテナ43が、インピーダンス回路部21を介してGNDへ接続されることによって動作しないように制御される。
【0029】
このとき、結合金具51aはホイップアンテナ43の延在方向に直交する方向、即ち、第二の方向B及び第三の方向Cから、切欠き部防水パッキン42の外周側を囲むように配置されており、非接触の高周波結合によってホイップアンテナ43とインピーダンス回路部21が電気的に接続されている。このため、ホイップアンテナ43伸張時には、切欠き部防水パッキン42の内部に水等の液体が浸入した場合であっても、ホイップアンテナ他端部43bと結合金具51aとの接続が遮断されることはない。
【0030】
また、結合金具51aと終端金具52の接続部分においても、この切欠き部防水パッキン42によって、水等の液体の浸入が回避されるため、接触不良が発生することがない。
【0031】
本実施形態に係る携帯無線機1においては、ホイップアンテナ43伸張時には無線回路部22とホイップアンテナ他端部43bとが接続され、確実にTVの電波を受信することができる。さらに、切欠き部防水パッキン42とこれを外周側から覆う円筒型の結合金具51aとによって、ホイップアンテナ43収縮時にはインピーダンス回路部21とホイップアンテナ他端部43bとが浸水等の影響を受けず確実に高周波結合される。この結果、電話通信用アンテナ部11の使用時に、デジタルTVアンテナ部12からの影響を抑制することができ、電話通信への影響を回避できる。
【0032】
さらに、切欠き部防水パッキン42によって、結合金具51aと終端金具52との接続部への浸水を防止するとともに、切欠き部35から第二筐体16b内部への浸水も防止でき、回路基板14を浸水から保護することも可能となる。
【0033】
次に、図4を参照して、本発明の第二実施形態に係る防水型携帯無線機1について説明する。なお、第一実施形態と同様の構成要素には同様の符号を付して詳細説明を省略する。第二実施形態においては、防水型携帯無線機1を第一の方向Aから見た場合に、結合金具51bの形状がコの字型となっている点で、第一実施形態と異なっている。
【0034】
このような、コの字型の結合金具51bを採用することで、ホイップアンテナ他端部43bとインピーダンス回路部21との間で十分な高周波結合を維持できるとともに、円筒型の結合金具51aと比較し製作が容易となり、コストダウンにも繋がる。
【0035】
従って、コストダウンを達成しながら、ホイップアンテナ43伸張時には無線回路部22とホイップアンテナ他端部43bとの接続によって、確実にTVの電波を受信することができる。さらに、ホイップアンテナ43収縮時にはインピーダンス回路部21とホイップアンテナ他端部43bとが浸水等の影響を受けず確実に高周波結合される。従って、電話通信用アンテナ部11の使用時に、デジタルTVアンテナ部12からの影響を抑制し、電話通信への影響を回避できる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について詳細説明を行なったが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、多少の設計変更も可能である。
例えば、上記結合金具51a、51bの形状は、第一実施形態の円筒型及び第二実施形態のコの字型に限定されず、ホイップアンテナ他端部43bとの間で電気的に十分に接続できる形状であればよい。
【0037】
また、筐体16は箱形状である場合について説明を行なったが、これに限定されることはなく、スライド構造や折畳み機構等を有する携帯電話の筐体にも本発明のアンテナ構造を適用できる。
【0038】
さらに、デジタルTVアンテナは本実施形態で説明した位置だけでなく、筐体16の様々な位置に配置可能である。
【符号の説明】
【0039】
1…(防水型)携帯無線機、11…電話通信用アンテナ部、12…デジタルTVアンテナ部、13…第一接続部、14…回路基板、15…第二接続部、16…筐体、16a…第一筐体、16b…第二筐体、21…インピーダンス回路部、22…無線回路部、23…整合回路、24…無線回路、31…上底面、32…下底面、33…第一側面、34…第二側面、35…切欠き部、41…ストッパ、42…切欠き部防水パッキン、43…ホイップアンテナ、43a…ホイップアンテナ一端部、43b…ホイップアンテナ他端部、44…筐体防水パッキン、51a…結合金具、51b…結合金具、52…終端金具、53…固定金具、54…給電金具、A…第一の方向、B…第二の方向、C…第三の方向、A1…第一の方向一方側、A2…第一の方向他方側、B1…第二の方向一方側、B2…第二の方向一方側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線回路部を内部に防水可能に収容する筐体と、
前記筐体内外を伸縮可能とされる第一アンテナとを備える防水型携帯無線機のアンテナ構造において、
前記第一アンテナの周囲を覆う防水パッキンと、
前記筐体の内部に防水可能に収容されるインピーダンス回路部と、
前記第一アンテナの収縮時に、該第一アンテナの前記筐体内部側の先端部と前記インピーダンス回路部とが対向する第一接続部と、
前記第一アンテナの伸張時に、該第一アンテナの前記先端部と前記無線回路部とを接続する第二接続部とを備え、
前記第一接続部は、前記防水パッキンの外周側に設けられるとともに前記防水パッキンを介して前記第一アンテナ部に電気的に接続されることを特徴とする防水型携帯無線機のアンテナ構造。
【請求項2】
前記第一接続部が、円筒型の金属部材とされることを特徴とする請求項1に記載の防水型携帯無線機のアンテナ構造。
【請求項3】
前記第一接続部が、コの字型の金属部材とされることを特徴とする請求項1に記載の防水型携帯無線機のアンテナ構造。
【請求項4】
前記筐体が、第二アンテナをさらに備え、
前記第一アンテナ収縮時には、該第一アンテナが動作しないように前記インピーダンス回路部が設定されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の防水型携帯無線機のアンテナ構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のアンテナ構造を備えることを特徴とする防水型携帯無線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−257008(P2012−257008A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128008(P2011−128008)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】