説明

防水扉装置

【課題】本発明は、装置の低背化に効果的で、シール圧が高い、簡単な構造からなる防水扉装置の提供を目的とする。
【解決手段】出入口の床面に設けた収納部に概ね水平状態にて収納し、起立状態になることで当該出入口を閉塞する防水扉装置であって、
防水扉は収納した水平状態から起立状態に回動する回動リンク装置と、起立回動に伴って防水扉の回動支点支持部が出入口を閉塞する方向に向けて水平移動するスライド支持カム装置を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大雨や洪水時等に、建築物内、地下道内、駐車場内等に雨水が浸入しないように、出入口を閉塞する防水扉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平常時には防水扉を出入口の床面に収納(埋設)しておき、大雨や洪水時に、起立して出入口を閉塞する防水扉の設置ニーズが高い。
出入口の床面に埋設施工することを考えると、防水扉の設置深さが浅いほど、即ち装置の低背化が好ましく、防水時の水圧等を考えると起立状態での建築物等とのシール圧が高い方が望ましい。
しかし、大きな水圧に耐えるために、防水扉には所定の厚みが必要であり、扉の下端部を支点にして単に起立させると、回動時に収納側壁等と干渉を避けるための隙間が必要になり、十分なシール圧が取れない。
そこで、例えば、特許文献1には、扉回転支点をカム機構で閉塞側に水平移動させ、扉の重量は揺動リンク機構で支える技術を開示する。
しかし、カムには摺動する隙間が必要であり、揺動リンクは回動方向にぐらつきがあり、扉の重量を支持しながら、シール圧を確保するのは難しい問題がある。
また、防水扉の傾倒収納する方向に水圧が掛かる場合には、扉の起立機構にはそれに耐えるだけの強度が必要になる。
例えば、特許文献2には、ウオーム及びウオームホイールからなる第1減速機と第2減速機とを扉の起立駆動伝達経路に配設した技術を開示するが、揺動アームを用いている点で扉起立開始時の力に大きなトルクが必要で装置が高価になり、低背化を図るのも難しい。
また、特許文献3には、扉起立状態で、回動アームが支持アームに対して直線状態になるようにした技術を開示するが、シリンダー機構を組み込んだものであり、装置が高価で低背化がやはり難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−257343号公報
【特許文献2】特開2007−308936号公報
【特許文献3】特開2005−325621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、装置の低背化に効果的で、シール圧が高い、簡単な構造からなる防水扉装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る防水扉装置は、防水扉を出入口の床面に設けた収納部に概ね水平状態に収納し、当該防止扉が起立状態になることで当該出入口を閉塞する防水扉装置であって、防水扉は収納した水平状態から起立状態に回動する回動リンク装置と、起立回動に伴って防水扉の回動支点支持部が出入口を閉塞する方向に向けて水平移動するスライド支持カム装置を有することを特徴とする。
ここで、防水扉の収納部は、平常時の通行の妨げにならないように、床面より下に埋設するように設けてあるのがよい。
【0006】
また、回動リンク装置は、略水平状態から起立状態を経由し出入口の閉塞方向に向けて回動する駆動リンクと、駆動リンクに軸連結し当該駆動リンクとは反対方向に回動する連動リンクと、連動リンクにより起立する従動リンクとを有し、従動リンクは下端部が底部に軸支し上端部が扉の裏面に軸支し上下端の間で連動リンクと軸連結してあってもよく、このようにすると、初期駆動トルクが小さくてすむとともに簡単なリンク構造で扉を起立回動でき、装置の低背化が容易である。
本発明においては、防水扉が起立した状態で、連動リンクの上下端部の軸支部と駆動リンクの駆動軸とが概ね直線状態になるように配設すると、起立状態の扉に大きな水圧が負荷されてもリンクが回動する方向に力が働きにくく、耐水圧性が向上する。
【0007】
本発明においては、スライド支持カム装置を、扉の回動支点を支持する水平方向移動自在のスライダーと、回動支点を出入口閉塞方向に移動するカムとで構成しても良い。
このようにすると、スライダーは上下に移動しないから扉の重量を安定して支えつつ、カムにより扉を閉塞側に水平移動できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る防水扉装置にあっては、回動リンク装置により防水扉を収納した水平状態から起立状態に回動し、スライド支持カム装置により起立回動に伴って防水扉の回動支点支持部が出入口を閉塞する方向に向けて水平移動するようにしたので、構造が簡単で、装置の低背化(薄型化)が可能になり、回動リンク装置を、略水平状態から起立状態を経由し出入口の閉塞方向に向けて回動する駆動リンクと、駆動リンクに軸連結し当該駆動リンクとは反対方向に回動する連動リンクと、連動リンクにより起立する従動リンクとで構成すると、防水扉が起立した状態で、連動リンクの上下端部の軸支部と駆動リンクの駆動軸とが概ね直線状態になるように配設することができ、起立状態の扉に大きな水圧が負荷されてもリンクが回動する方向に力が働きにくく、耐水圧性が向上する。
【0009】
また、スライド支持カム装置を、扉の回動支点を支持する水平方向移動自在のスライダーと、回動支点を出入口閉塞方向に移動するカムとで構成すると、スライダーにて扉の重量を支えることができるので、カムによる扉の水平移動調整が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る防水装置において防水扉を起立させた状態を示す。
【図2】駆動部の拡大図を示す。
【図3】(a)は防水扉を収納した状態の回動リンク装置とスライド支持カム装置を示す。(b)は防水扉を少し持ち上げた状態を示す。
【図4】防水扉を約45度回動した状態を示す。
【図5】防水扉を起立させ、出入口を閉塞した状態を示す。
【図6】スライド支持カム装置の拡大図を示す。
【図7】防水扉が水平状態から約45度まで回動する際のスライド支持カム装置の動きを示す。
【図8】防水扉が約45度から起立状態に回動する際のスライド支持カム装置の動きを示す。
【図9】スライダーの動きを示す。
【図10】スライダー支持カム装置の部品構成例を示す。
【図11】防水扉を手動で起立動作させる場合の安全装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る防水扉装置10の全体構成例を図1に示す。
防水装置10は建築物等の出入口の床面に埋設する略箱形の収納部12と、この収納部に水平状態で収納し、起立状態になると出入口を閉塞する防水扉(以下、扉と称する)11を有する。
収納部12は駆動部とを仕切る仕切縦壁12a、扉起立側の縦壁12b、及び左右の側壁12c、12dで形成され、扉11が収納された状態(平常時)では、図11に示すように、収納部12の開口部を扉11が塞ぎ、駆動部の開口部はカバー部材19a、19bで塞ぎ、これらの上を通行できるようになっている。
図1に示すように、駆動モーター13の伝達経路に、停電時等に手動操作できる手動ハンドル軸18、減速機14、平歯車等によるギヤボックス16を有し、この駆動モーター13により駆動シャフト17が回転する。
駆動シャフト17の回転により、回動リンク装置20が図3〜図5に示すように動き、スライド支持カム装置30が図6〜図10に示すように動く。
本実施例では、減速機14を2台、同期シャフト15にて連結した例を示すが、これは、防水扉の長さが比較的長い場合に2台を直列配置したものであり、配置数はこの防水扉の長さにより、適宜設定される。
【0012】
回動リンク装置20の構造例を図3に基づいて説明する。
回動リンク装置20は、駆動シャフト17の回転により略水平状態から起立状態を経由し出入口の閉塞方向に向けて回動する駆動リンク21と、この駆動リンク21に一端を軸21aで軸連結し、当該駆動リンクとは反対方向に回動する連動リンク22と、連動リンクにより起立する従動リンク23とを有する。
この従動リンク23は収納状態で略「へ」状に折り曲がり、下端部が、底部に固定したブラケット24に設けた軸23aに軸支し、折り曲がり部から扉の裏面に沿って延在する部分の上端部が、扉の裏面に設けた補強縦バー部材11bと軸部23bで軸支し、上下端の間で水平部分に連動リンク22の他端に設けた軸22aと軸連結してある。
従動リンク23をこのように、「へ」字状に折り曲げたことにより、下端部を収納部の底部側に軸支しつつ、この従動リンクの下側に駆動リンク21及び連動リンク22を配設することができる。
なお、扉11は必要に応じて裏面に補強板11aを張り合わせてある。
このようなリンク構造を採用したことにより、図3(b)に示すように、扉の持ち上げ初期には、扉の先端部が収納部12の仕切縦壁12aに干渉することなく持ち上がる。
【0013】
扉11の裏面で下端部bより少し上部部分をカム34に連結したスライド支持カム装置30に固定してある。
スライド支持カム装置30はその部品構成図を図10に示すように、底部側に固定するベース部31から左右対向して立設したスライダー支持部32を有し、このスライダー支持部32の対向面にスライド溝部32aを形成し、このスライド溝32aに沿って、水平方向にスライダー33が移動自在になっている。
左右のスライダー33,33はピン孔33aでカム34のピン33bと回動自在に連結してあり、カム34は扉が収納された状態「図10(a)」にてカムの上辺が扉の裏面に固定した取付部11cと固定されていて、略斜め「へ」字状のカム溝34aを形成し、このカム溝34aに挿通したシャフト35を介してスライダー支持部32の連結孔35aで連結してある。
扉の重量は主にスライダー33にて支持し、扉の回動支点はピン33bとなる。
これにより、扉が約45度起立するまでは、図4に示すように駆動リンク21が回動し、連動リンク22により扉が起立する際に、図7に示すように、カム溝34aが扉の回動支点33b側に向けて斜め下方に形成してあるので、扉11がカム溝34aに沿って、出入口の閉塞とは反対方向に移動する。
この動きにより、扉の端部bが収納部の縦壁12bより離れるように動き、縦壁と扉端部bが干渉するのを防止する。
【0014】
扉11が約45度以上に起立すると、図8に示すように、カム溝34aが上記とは逆に、扉11の回動支点33bとは離れるように斜め下方に向けて形成してあるので、扉11の重量をスライダー33にて支えながらカム溝34aに沿って、閉塞側に水平移動する。
これにより、扉11が立設した図5に示す状態では、扉11の表面が出入口に設けた建築物1側の縦方向シール部材2及び横方向シール部材3に圧接するようになる。
また、この状態では、連動リンク22の上下端部の軸支部21a、22aと駆動リンクの駆動軸17とが概ね直線状態になり、扉11に傾倒方向の力が加わってもリンクに回動方向の力が働きにくくなっている。
【0015】
本実施例においては、図11に示すように、駆動部の点検ができるように、カバー部材19a,19bを脱着自在に取り付けてあるとともに、停電等にて駆動モーターを作動できないときには、ハンドル40をハンドル軸18に連結し、手動操作ができるようになっている。
この場合に、誤って、駆動モーターが作動しないように、保護スライドスイッチ41を設けてある。
即ち、保護スライドスイッチ41が後退し、電源が切れないとハンドル40がハンドル軸18に連結できないようになっている。
【符号の説明】
【0016】
10 防水扉装置
11 防水扉
12 収納部
13 駆動モーター
14 減速機
15 同期シャフト
16 ギヤボックス
17 駆動シャフト
18 手動ハンドル軸
20 回動リンク装置
30 スライド支持カム装置
33 スライダー
34 カム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水扉を出入口の床面に設けた収納部に概ね水平状態に収納し、当該防水扉が起立状態になることで当該出入口を閉塞する防水扉装置であって、
防水扉は収納した水平状態から起立状態に回動する回動リンク装置と、起立回動に伴って防水扉の回動支点支持部が出入口を閉塞する方向に向けて水平移動するスライド支持カム装置を有することを特徴とする防水扉装置。
【請求項2】
回動リンク装置は、略水平状態から起立状態を経由し出入口の閉塞方向に向けて回動する駆動リンクと、駆動リンクに軸連結し当該駆動リンクとは反対方向に回動する連動リンクと、連動リンクにより起立する従動リンクとを有し、従動リンクは下端部が底部に軸支し上端部が扉の裏面に軸支し上下端の間で連動リンクと軸連結してあることを特徴とする請求項1記載の防水扉装置。
【請求項3】
防水扉が起立した状態で、連動リンクの上下端部の軸支部と駆動リンクの駆動軸とが概ね直線状態にあることを特徴とする請求項2記載の防水扉装置。
【請求項4】
スライド支持カム装置は、扉の回動支点を支持するスライダーと、回動支点を出入口閉塞方向に移動するカムを有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防水扉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−64016(P2011−64016A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216213(P2009−216213)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000154495)株式会社福井鉄工所 (6)
【Fターム(参考)】