説明

防水栓および防水コネクタ

【課題】防水性能を確保しつつ端子収容室への挿入を容易にすることのできる防水栓を提供する。
【解決手段】収容室41内に挿入される密着部22と、密着部22よりも後ろ側に形成されて収容室41内に挿入される変形許容部26とを設け、密着部22に、内側に膨出して弾性変形することで電線1の外周面に密着する内側接触部23を含む内周面と、外側に膨出して弾性変形することで収容室41の内周面に密着する外側接触部24を含む外周面とを設けるとともに、変形許容部26を、その径方向の厚みが、密着部22のうち外側接触部24が形成された部分の径方向の厚みよりも小さく、かつ、後ろ側に向かうに従って小さくなる形状とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタハウジングの端子収容室等の収容室に挿入される防水栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、防水コネクタ等には、前記端子収容室への浸水を防止するために防水機能を有する防水栓が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電線が挿通可能な略筒状の防水栓であって、防水コネクタのコネクタハウジングに設けられた端子収容室に挿入されて、この端子収容室に挿通された電線の外周面と端子収容室の内周面との間に配置される防水栓が開示されている。この防水栓は、弾性部材からなり前記電線の外周面と端子収容室の内周面との間で弾性変形し、その内周面が前記電線の外周面に圧接することでその内周面と前記電線の外周面との隙間を密閉してこの隙間からの浸水を抑制するとともに、その外周面が前記端子収容室の内周面に圧接することでその外周面と前記端子収容室の内周面との隙間を密閉してこの隙間からの浸水を抑制する。また、この防水栓の端子収容室への挿入方向の後端部には、この挿入方向と反対方向に向かうに従って径方向の厚さが大きくなるシール用環状突起が設けられており、このシール用環状突起の内周面が電線の外周面に圧接し、このシール用環状突起の外周面が端子収容室の内周面に圧接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−307182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の防水栓では、肉厚な前記シール用環状突起が設けられることで端子収容室内に挿入された際の圧縮量が大きくなり防水栓全体の剛性が高くなる。そのため、防水栓から外側に延びる電線が曲げ変形し防水栓の後端部分が変形すると、これより前側の部分がその影響を受けて大きく変形してしまい、この前側の部分においても防水栓と端子収容室の内周面あるいは電線の外周面とが離間して、これら内周面あるいは外周面との隙間が十分に密閉されなくなるおそれがある。また、防水栓を前記収容室に挿入する場合、挿入が進行するに伴って挿入抵抗は増大するが、これに加えて前記従来の防水栓では後ろ側ほど外径が大きくなっており、前記挿入抵抗はより一層増加するという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、防水性能を確保しつつ端子収容室等の収容室への防水栓の挿入を容易にする防水栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、発明者等は、防水栓の後ろ側を比較的変形しやすくすることでこの後ろ側部分の変形がこれよりも前側の部分に与える影響を抑え、これにより防水栓の比較的前側部分において収容室の内周面および電線の外周面とのシール性を確保することに想到し、前記課題を解決するための手段として、電線が挿通可能な略筒状の弾性部材からなり、電線を特定の挿入方向に挿入可能な所定の収容室にこの挿入方向に沿って挿入されて、この収容室の内周面とこの収容室に挿入された前記電線の外周面との間に介在可能な防水栓であって、前記収容室内に挿入される密着部と、この密着部よりも前記挿入方向後ろ側に形成されて前記収容室内に挿入される変形許容部とを備え、前記密着部は、内側に膨出してこの密着部の内側に前記電線が挿通された状態で弾性変形することで前記電線の外周面に密着する内側接触部を含む内周面と、外側に膨出してこの密着部が前記収容室に挿入された状態で弾性変形することで前記収容室の内周面に密着する外側接触部を含む外周面とを有し、前記変形許容部は、その径方向の厚みが、前記密着部のうち前記外側接触部が形成された部分の径方向の厚みよりも小さく、かつ、前記挿入方向の後ろ側に向かうに従って小さくなる形状を有することを特徴とする防水栓を提供する。
【0008】
本発明によれば、防水性能を確保しつつ前記収容室へ防水栓を挿入する際の挿入抵抗を小さく抑えることができる。
【0009】
すなわち、本防水栓では、密着部の内周面に内側に膨出して前記電線の外周面に密着可能な内側接触部が設けられているとともに、密着部の外周面に外側に膨出して収容室の内周面に密着可能な外側接触部が設けられており、この内側接触部の電線との密着および外側接触部と収容室との密着によって前記収容室への浸水が抑制される。そして、密着部の後ろ側に設けられた変形許容部において、その径方向の厚みが、前記外側接触部が形成された部分の径方向の厚みよりも小さく、かつ、後端側に向かうほど小さく容易に変形できるようになっているため、防水栓に挿入された電線が曲げられた場合であっても、この電線の曲げに伴う変形許容部の変形がこの変形許容部の前側の前記密着部に与える影響は小さく抑えられ、密着部に設けられている前記内側接触部と電線との密着および外側接触部と収容室との密着はそれぞれ維持される。このことは防水栓の防水性能を確保する。
【0010】
しかも、変形許容部において、防水栓の径方向の厚みは後方に向かうほど小さく変形容易となっているため、収容室内への防水栓の挿入後期に、その挿入抵抗が増大するのを抑制することができ、その分防水栓の収容室への挿入が容易になる。
【0011】
また、本発明において、前記変形許容部は、前記挿入方向後ろ側に向かうに従って縮径する外周面を有するのが好ましい。
【0012】
このようにすれば、前記密着部のうち特に外周面側において前記変形許容部の変形に伴って生じる変形を小さく抑えることができ、前記外側接触部と前記収容室との密着を維持することができる。
【0013】
また、本発明において、前記変形許容部は、前記挿入方向後ろ側に向かうに従って拡径する内周面を有するのが好ましい。
【0014】
このようにすれば、前記密着部のうち特に内周面側において前記変形許容部の変形に伴って生じる変形を小さく抑えることができ、前記内側接触部と前記電線との密着を維持することができる。
【0015】
また、本発明は、電線の端末に接続される端子と、前記端子およびこの端子が接続された電線の端末が前記特定の挿入方向で挿入される端子収容室を有するとともに、当該端子収容室に挿入された前記端子をそれぞれ保持する端子保持部を有するコネクタハウジングと、前記防水栓とを備え、前記防水栓の密着部は、前記防水栓の内側に前記端子および電線の端末が挿通されるとともにこの防水栓が前記端子収容室に挿入された状態で、前記端子収容室の内周面と前記電線の外周面との間で弾性変形して、前記外側接触部の外周面が前記端子収容室の内周面に圧接するとともに前記内側接触部の内周面が前記電線の外周面に圧接した状態で前記端子収容室内に収容されており、前記防水栓の変形許容部は、前記防水栓の内側に前記端子および電線の端末が挿通されるとともにこの防水栓が前記端子収容室に挿入された状態で、前記防水栓から前記挿入方向の反対側に向けて延びる電線が曲げ変形した場合にこの電線に追従して変形可能なように前記端子収容室内に収容されていることを特徴とする防水コネクタを提供する。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、防水性能を確保しつつ収容室への挿入が容易になる防水栓を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る防水コネクタの概略断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る防水栓の概略断面図である。
【図3】図1の部分拡大である。
【図4】電線が曲げ変形したときの様子を説明するための説明図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る防水栓の概略断面図である。
【図6】図5に示す防水栓を端子収容室に挿入した状態を示す概略断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る防水栓の概略断面図である。
【図8】図7に示す防水栓を端子収容室に挿入した状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1に、本発明の第1の実施形態に係る防水コネクタ10を示す。この図に示すように、本防水コネクタ10は、コネクタハウジング40と、電線1が接続された端子6と、防水栓20とを有している。
【0020】
前記端子6は、図1に示すように、相手側端子金具と接続される電気接触部6aと、電線1に圧着されるバレル6cと、後述するコネクタハウジング40の端子保持部42と係合する被係止部6bとを有している。
【0021】
前記電線1は、導体2とこの導体2を被覆する絶縁被覆4とを備えている。この電線1は、前記バレル6cがこの絶縁被覆4に圧着されることで前記端子6に固定される。
【0022】
前記コネクタハウジング40は、前記電線1が接続された端子6を相手方コネクタと接続可能なように保持するためのものである。このコネクタハウジング40には、端子収容室(収容室)41が設けられている。
【0023】
前記端子収容室41は、前記端子6を収容するためのものであり、この端子収容室41には、前記防水栓20内に挿通された端子6がその軸方向に沿って後方(図1の右側)から挿入される。この端子収容室41の下方には、端子保持部42が設けられている。そして、この端子収容室41に挿入された端子6は、その下方に設けられた前記被係止部6bと前記端子保持部42とが係合することによりこの端子収容室41内に保持される。
【0024】
前記防水栓20は、前記端子収容室41内への浸水を抑止するためのものである。この防水栓20は、略円筒状の弾性部材であって、その内側には中心軸に沿って貫通する電線挿通孔21が形成されている。この防水栓20は、前記電線挿通孔21に前記電線1が挿通された状態で前記端子収容室41内に挿入される。そして、防水栓20のうち後述する密着部22およびテーパ部26が電線1の外周面および端子収容室41の内周面に密着することで、端子収容室41への浸水を抑止する。
【0025】
前記防水栓20は、互いに一体に形成された密着部22とテーパ部26と取付け部27とフランジ部28とからなる。
【0026】
前記密着部22は、前述のように前記電線1の外周面および前記端子収容室41の内周面に密着する部分である。
【0027】
前記密着部22の内周面には、内側に膨出する複数の内側リップ部(内側接触部)23が形成されている。本実施形態では、防水栓20および端子6の挿入方向(以下端子挿入方向という)前側から順にこの端子挿入方向に沿って所定の間隔をおいて3つの内側リップ部23a,23b,23cが形成されている。これら内側リップ部23a,23b,23cは、環状を有し密着部22の内周面全周にわたって膨出している。
【0028】
前記密着部22の内径は電線1の外径よりも小さく、前記電線1が前記電線挿通孔21に挿通された状態においてこの密着部22は弾性変形し電線1の外周面に密着する。特に、前記内側リップ部23a,23b,23cの内径は電線1の外径よりも十分に小さく、これら内側リップ部23a,23b,23cは図3の鎖線で示した状態から大きく弾性変形して、その各内周面が電線1の外周面に圧接する。
【0029】
このようにして、前記密着部22は、その内周面、特に前記各内側リップ部23a,23b,23cの内周面がそれぞれ電線1の外周面に圧接してこの外周面と密着することで、各内周面と電線1の外周面との隙間を密閉して、この隙間から前記端子収容室41への浸水を抑止する。
【0030】
前記密着部22の外周面には、外側に膨出する複数の外側リップ部(外側接触部)24が形成されている。本実施形態では、密着部22のうち前記内側リップ部23a,23b,23cが形成されている部分とほぼ同じ部分の外周面に、端子挿入方向の前側から順にこの端子挿入方向に沿って所定の間隔をおいて2つの外側リップ部24a,24bが形成されている。これら外側リップ部24a,24bは、環状を有し密着部22の外周面全周にわたって膨出している。これら外側リップ部24a,24bの外径は前記端子収容室41の内径よりも大きく、前記電線1が前記電線挿通孔21に挿通された状態で防水栓20が前記端子収容室41内に挿入された状態においてこれら外側リップ部24a,24bは図3の鎖線で示した状態から弾性変形し、これら外側リップ部24a,24bの外周面は前記端子収容室41の内周面に圧接する。なお、前記内側リップ部23a,23b,23cと外側リップ部24a,24bとを同じ領域に設ける必要はなく、外側リップ部24a,24bを前記内側リップ23aよりも前方または後方に設けてもよい。そして、これら内側リップ部23a,23b,23cおよび外側リップ部24a,24bが設けられている部分が前記密着部22として機能する。
【0031】
このようにして、前記密着部22は、前記外側リップ部24a,24bの外周面と前記端子収容室41の内周面とが密着することで、この外周面と端子収容室41の内周面との隙間を密閉して、この隙間から前記端子収容室41への浸水を抑止する。本実施形態では、前側の外側リップ部24aの外径の方が後側の外側リップ部24bの外径よりも大きくなっており、より前側部分において密着部22と端子収容室41の内周面との密着力が高められている。
【0032】
前記テーパ部26は、前記密着部22の端子挿入方向の後ろ側に形成された部分であって、電線1の曲げに伴って容易に変形し、防水栓20に加えられた力を吸収する部分である。
【0033】
前記テーパ部26は、端子挿入方向の後端側に向かうほど径方向の厚みが小さくなる形状を有している。本実施形態では、テーパ部26の内周面26bの径が一定に保たれている一方、テーパ部26の外周面26aが後端側に向かうほど縮径する形状を有しており、これにより前記径方向の厚みが後端側に向かうほど小さくなるよう構成されている。前記テーパ部26の外周面26aは、前端部においてその径が最も大きいが、その値は前記外側リップ部24a,24bの外径よりも小さく、テーパ部26は全体としてその厚みが前記外側リップ部24aが形成された部分の厚みよりも小さくなっている。ここで、このテーパ部26の外周面26aの径は、前記外側リップ部24a,24bの外径よりも小さく設定されているとはいえ前記端子収容室41の内径よりは大きく、テーパ部26は、防水栓20が前記端子収容室41内に挿入された状態において図3の鎖線で示す状態から弾性変形して、その外周面26aが端子収容室41の内周面に圧接する。ただし、前述のように、このテーパ部26の径方向の厚みは前記外側リップ24a,24bが形成された部分の厚みよりも小さく、防水栓20が前記端子収容室41に挿入された状態において弾性変形する量は前記外側リップ部24a,24bが形成された部分よりも小さい。そのため、このテーパ部26は、前記密着部22に比べて容易に変形することができる。
【0034】
ここで、本発明に係る「変形許容部」は、このテーパ部26のうち前記端子収容室41内に挿入される部分である。本実施形態ではこのテーパ部26のうち前記端子収容室41内に挿入される部分に加えて端子収容室41から外側にはみ出している部分も後ろ側に向かうほど径方向の厚みが小さい前記テーパ部26に含まれているが、この端子収容室41から外側にはみ出している部分の具体的形状は後述するように限定されない。また、この端子収容室41から外側の部分は省略も可能である。
【0035】
また、前記テーパ部26の内径は電線1の外径よりも小さく、前記電線1が前記電線挿通孔21に挿通された状態においてこのテーパ部22は図3の鎖線で示した状態から弾性変形し電線1の外周面に密着する。このようにして、このテーパ部26においても、その内周面が電線1の外周面に圧接してこの外周面と密着することで、各内周面と電線1の外周面との隙間は密閉され、この隙間から前記端子収容室41への浸水は抑止される。
【0036】
前記取付け部27は、前記密着部22の端子挿入方向前側の部分であって、前記端子6のバレル6cが圧着される部分である。この取付け部27には、図1および図4に示すように、その外周面に沿って前記バレル6cが圧着される。
【0037】
前記フランジ部28は、前記取付け部27の端子挿入方向前側に設けられた部分である。このフランジ部28は、前記取付け部27よりも外側に膨出する形状を有しており、前記バレル6cを取り付ける際のバレル6cの位置決めに用いられる。
【0038】
なお、前記取付け部27およびフランジ部28の内径も、前記電線1の外径より小さく、これら取付け部27およびフランジ部28の内周面も前記電線1の外周面に密着する。
【0039】
次に、以上の構成要素を組み付けて防水コネクタ10を組み立てる手順について説明する。
【0040】
まず、電線1を前記防水栓20の電線挿通孔21に挿入する。
【0041】
具体的には、電線1の前端部分で前記テーパ部26を拡径しつつ電線1を挿入する。ここで、前述のように、このテーパ部26は変形容易であり電線1の挿入に応じて容易に拡径する。そのため、電線1をこじ入れることによって防水栓20を傷つける可能性の高いこの挿入初期において、電線1をスムーズに挿入することができ、防水栓20の損傷が抑制される。電線1がテーパ部26を通過した後は、電線1の前端部分で前記各内側リップ部23a,23b,23cを拡径しつつ電線1をさらに前方に挿入する。そして、各内側リップ部23a,23b,23cを通過した後は、電線1の前端部分でさらに前記取付け部27およびフランジ部28を拡径しつつこの電線1を前方に挿入して、電線1の先端を防水栓20の前方に引き出す。
【0042】
この状態において、前記防水栓20は、その復元力により前記電線挿通孔21を縮径する方向に変形しており、防水栓20の内周面は前記電線1の外周面に密着している。特に、前記密着部22において、各内側リップ部23a,23b,23cの内周面が十分な密着力で電線1の外周面に密着している。
【0043】
次に、前記防水栓20の前方に引き出された電線1の先端部分において、前記絶縁被覆4の端末を除去して前記導体2の端末を露出させる。
【0044】
次に、前記端子6のバレル6cを前記電線1が挿通された防水栓20の前記取付け部27の外周面に巻きつけ、このバレル6cを取付け部27に圧着する。このとき、前記フランジ部28と前記密着部22との間に前記バレル6cを巻きつけるようにすれば、バレル6cの位置決めが容易になる。前記圧着により、電線1および防水栓20に端子6が圧着され、防水栓20には電線1が前記電線挿通孔21に挿通された状態で固定される。
【0045】
最後に、電線1と防水栓20とが圧着された端子6を、前記端子6の被係止部6bと前記端子収容室41内の端子保持部42とが係合するまで前記コネクタハウジング40の端子収容室41に挿入し、この被係止部6bと端子保持部42とを係合することで端子6をコネクタハウジング40に固定する。
【0046】
具体的には、前記防水栓20を前記端子収容室41に挿入する際には、防水栓20の外径を端子収容室41の内周面によって徐々に縮径しつつ挿入していく。ここで、防水栓20の挿入が進行していくと防水栓20と端子収容室41の内周面との接触面積が大きくなることで、挿入抵抗は増大する。しかしながら、本防水栓20では、前記テーパ部26において防水栓20の径方向の厚みが後端に向かうほど小さく変形容易となっているため、このテーパ部26を変形させつつ挿入することで挿入抵抗の増大が抑制されるので、防水栓20は前記端子収容室41にスムーズに挿入される。
【0047】
この状態において、防水栓20は、その復元力によりその外周面が前記端子収容室41の内周面に密着している。特に、前記密着部22の外側リップ部24a,24bの外周面が十分な密着力で前記端子収容室41の内周面に密着している。そして、このように防水栓20の外周面と端子収容室41の内周面との間の隙間が密閉されると、この隙間から前記端子収容室41への浸水が抑止される。一方、防水栓20の内周面は電線1の外周面に密着しており、この防水栓20の内周面と電線1の外周面との隙間が密閉されているので、この隙間から前記端子収容室41への浸水が抑止される。
【0048】
以上のようにして組み立てられた防水コネクタ10に対して、図1および図4に示すように、電線1に曲げ方向の力が作用すると、電線1はこの曲げ方向において端子収容室41の内周面41と近接する方向に変位し、防水栓20は電線1と端子収容室41との間で圧縮変形する。ここで、前述のように、防水栓20は、前記テーパ部26の径方向の厚みが前記外側リップ24a,24bが形成された部分の厚みよりも小さいことで、このテーパ部26において比較的容易に変形する。特に、前記電線1の変位量は、コネクタハウジング40の外側すなわち端子挿入方向の後方に向かうに従って大きい。これに対して、本防水栓20は、前述のように前記テーパ部26においてその径方向の厚みが端子挿入方向の後方に向かうに従って小さく設定されている。そのため、このテーパ部26では、端子挿入方向の後方に向かうに従って増大する電線1の変位量に伴って防水栓20の圧縮量が増大するのが抑制され、電線1の変位量が大きい後端においても容易に変形する。このようにして、本防水コネクタ10では、テーパ部26が容易に変形し、電線1に加えられた力がこのテーパ部26の変形によって吸収されることで、電線1の曲げ変形が前記密着部22へ与える影響は小さく抑えられる。そして、これにより、前記密着部22の前記電線1の外周面および前記端子収容室41の内周面への密着は維持され、この密着部22と電線1の外周面および端子収容室41の内周面との隙間からの浸水は抑止される。本実施形態では、テーパ部26の外周面26aが後端側に向かうほど縮径しており、この外周面26a側において特に前記圧縮量の増大が抑制され容易に変形するので、前記密着部22の外周面ひいては前記外側リップ部24a,24bへの影響が小さく抑えられてこれら外側リップ24a,24bの外周面と端子収容室41の内周面との隙間からの浸水がより確実に抑止される。
【0049】
ここで、前記テーパ部20の径方向の厚みを後端側に向かうほど小さくするための具体的構造は前記に限らない。
【0050】
例えば、図5および図6に示すような防水栓120でもよい(第2の実施形態)。この防水栓120では、テーパ部126の外周面126aの外径が一定に保たれている一方、テーパ部126の内周面126bが後端側に向かうほど拡径する形状を有しており、これによりテーパ部126の径方向の厚みが後端側に向かうほど小さくなるよう構成されている。この防水栓120では、電線1の曲げ変形時に、特に内周面126b側においてその圧縮量の増大が抑制されるので、テーパ部126の前側に設けられた密着部122の内周面ひいてはこの密着部122に設けられる内側リップ部123a,123b、123cへの影響が小さく抑えられて、これら内側リップ部123a,123b、123cの内周面の電線1の外周面への密着力がより確実に確保される。
【0051】
また、この防水栓120では、前記内側リップ部123a,123b,123cの内径も後端側に向かうに従って大きくなっており、前記テーパ部126に加えて前記密着部122の後側部分が変形することで、密着部122の前側部分すなわち内側リップ部123a,123b、123cのうちより前側の内側リップ部123aおよび外側リップ部124a,124bのうちより前側の外側リップ部124aと電線1および端子収容室41とのシール性が確保される。
【0052】
また、図7および図8に示すような防水栓220でもよい(第3の実施形態)。この防水栓220では、テーパ部126の外周面226aが後端側に向かうほど縮径するとともに、テーパ部126の内周面126bが後端側に向かうほど拡径する形状を有しており、これによりテーパ部126の径方向の厚みが後端側に向かうほど小さくなるよう構成されている。
【0053】
また、この防水栓220では、前記外側リップ部223a,223bの外径も後端側に向かうに従って小さくなっており、前記テーパ部126に加えて前記密着部122の後側部分が容易に変形することで、密着部122の前側部分すなわち内側リップ部123a,123b、123cのうちより前側の内側リップ部123aおよび外側リップ部124a,124bのうちより前側の外側リップ部124aと電線1および端子収容室41とのシール性が確保される。
【0054】
また、前述のように、本発明に係る変形許容部は、前記テーパ部26のうち前記密着部22の後側であって前記端子収容室41内に挿入される部分であり、本発明では前記テーパ部26のうち前記端子収容室41から外側の部分の形状は限定されない。また、端子収容室41から外側の部分が省略されていてもよい。例えば、前記図7に示す防水栓220のように、前記テーパ部226の後端に端子収容室41の内径よりも大きな外径をもつ、つば部229が設けられていてもよい。
【0055】
また、前記防水栓20は前記のような防水コネクタ10以外にも適用可能である。
【0056】
また、前記内側リップ部23の個数や具体的形状は前記に限らない。
【0057】
さらに、防水コネクタ10の組み付け方法は前記に限らない。
【符号の説明】
【0058】
1 電線
6 端子
10 防水コネクタ
20 防水栓(第1実施形態)
21 電線挿通孔
22 密着部
23 内側リップ部(内側接触部)
24 外側リップ部(外側接触部)
26 テーパ部
40 コネクタハウジング
41 端子収容室(収容室)
120 防水栓(第2実施形態)
220 防水栓(第3実施形態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が挿通可能な略筒状の弾性部材からなり、電線を特定の挿入方向に挿入可能な所定の収容室にこの挿入方向に沿って挿入されて、この収容室の内周面とこの収容室に挿入された前記電線の外周面との間に介在可能な防水栓であって、
前記収容室内に挿入される密着部と、この密着部よりも前記挿入方向後ろ側に形成されて前記収容室内に挿入される変形許容部とを備え、
前記密着部は、内側に膨出してこの密着部の内側に前記電線が挿通された状態で弾性変形することで前記電線の外周面に密着する内側接触部を含む内周面と、外側に膨出してこの密着部が前記収容室に挿入された状態で弾性変形することで前記収容室の内周面に密着する外側接触部を含む外周面とを有し、
前記変形許容部は、その径方向の厚みが、前記密着部のうち前記外側接触部が形成された部分の径方向の厚みよりも小さく、かつ、前記挿入方向の後ろ側に向かうに従って小さくなる形状を有することを特徴とする防水栓。
【請求項2】
請求項1に記載の防水栓であって、
前記変形許容部は、前記挿入方向後ろ側に向かうに従って縮径する外周面を有することを特徴とする防水栓。
【請求項3】
請求項1または2に記載の防水栓であって、
前記変形許容部は、前記挿入方向後ろ側に向かうに従って拡径する内周面を有することを特徴とする防水栓。
【請求項4】
電線の端末に接続される端子と、
前記端子およびこの端子が接続された電線の端末が前記特定の挿入方向で挿入される端子収容室を有するとともに、当該端子収容室に挿入された前記端子をそれぞれ保持する端子保持部を有するコネクタハウジングと、
請求項1から3のいずれかに記載の防水栓とを備え、
前記防水栓の密着部は、前記防水栓の内側に前記端子および電線の端末が挿通されるとともにこの防水栓が前記端子収容室に挿入された状態で、前記端子収容室の内周面と前記電線の外周面との間で弾性変形して、前記外側接触部の外周面が前記端子収容室の内周面に圧接するとともに前記内側接触部の内周面が前記電線の外周面に圧接した状態で前記端子収容室内に収容されており、
前記防水栓の変形許容部は、前記防水栓の内側に前記端子および電線の端末が挿通されるとともにこの防水栓が前記端子収容室に挿入された状態で、前記防水栓から前記挿入方向の反対側に向けて延びる電線が曲げ変形した場合にこの電線に追従して変形可能なように前記端子収容室内に収容されていることを特徴とする防水コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−225380(P2010−225380A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70320(P2009−70320)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】