説明

防汚コーティング剤がハードコート層に固着された複合ハードコート層を有する基材及びその形成方法

【課題】 本発明は簡単な方法でハードコート層の上に防汚層を形成できる方法に関する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる基材表面に設けられたハードコート層表面に設けられた防汚表面層を含む複合ハードコート層が付与された基材であり、ハードコート層はシリコーン系及び/又は多官能アクリル系化合物を含む硬化物からなり、前記防汚表面層が一般式(ZQ)βRf(QZα2−β(Rfは2価のパーフルオロポリエーテル含有基、Qは2価の基、Zはシロキサン結合を有する2〜9価の基、Zはトリオルガノシリル基で封鎖された1価の基、Aはケイ素含有基であり、αは1〜8の整数、βは0、1又は2。)で示されるパーフルオロポリエーテル変性シラン及び/又はその加水分解縮合物を主成分とする化合物からなる防汚コーティング剤が前記ハードコート層に固着されていることを特徴とする複合ハードコート層が付与された基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる基材表面に設けられたハードコート層表面に設けられた防汚表面層を含む複合ハードコート層が付与された基材に関するものであって、防汚表面層がフッ素系表面処理剤からなる防汚コーティング剤が前記ハードコート層に固着されていることを特徴とする基材及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐摩耗性が必要とされる種々の物品、例えば、メガネレンズ、サングラス、携帯電話、電子手帳、音楽プレーヤーなどの携帯用電子機器、及び液晶ディスプレー、CRTディスプレー、プラズマディスプレー、ELディスプレー等の各種表示素子の表面、またはCD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)などの光記録媒体には通常傷つきなどを防止するためのハードコート層が付与されている。
【0003】
これらの物品はまた、指紋、皮脂、汗、化粧品、食品等の汚れの付着することが多い。このような汚れは、メガネレンズの場合は良好な視界を妨げ、また見栄えも悪くなる。光記録媒体においては信号の記録及び再生に障害が発生することがある。したがって、汚れが付着しにくく、また汚れが付着しても容易に除去できるような特性を付与することが望ましい。それ故、このような物品については多くの場合、ハードコート層の上にさらに防汚層を設けることが行われている。
【0004】
一方、ガラスや布などの基材表面と有機化合物とを結合させるものとしては、シランカップリング剤が良く知られている。シランカップリング剤は、1分子中に有機官能基と反応性シリル基(一般にはアルコキシシリル基)を有する。アルコキシシリル基は、空気中の水分などによって自己縮合反応をおこしてシロキサンとなり被膜を形成する。それと同時に、ガラスや金属などの表面と化学的・物理的に結合することによって、耐久性を有する強固な被膜となる。シランカップリング剤はこの性質を利用して各種基材表面のコーティング剤として幅広く利用されている。
【0005】
ところで、防汚層は通常0.1μm以下の極めて薄い膜であり、この皮膜は使用時の摩擦やふき取り等に十分耐えるように、ハードコート層の表面と強固に密着していることが必要である。ハードコート層との密着性を向上させるための試みとしてはつぎの例を挙げることができる。
【0006】
たとえば、再公表特許WO2006−81296には、物体表面に、まず硬化性ケイ素化合物(加水分解重合性ケイ素化合物及び/又はその縮合化合物、又はシラザン化合物)を含むハードコート剤組成物を塗布してハードコート剤組成物層を形成し、さらに防汚コーティング剤を塗布して防汚コーティング剤組成物層を形成し、そして加熱することにより、前記両層を同時に硬化させてハードコート層および防汚層を形成する方法が記載されている。
【0007】
また、特開平9−137117には、ハードコート層の表面にコロナ処理またはプラズマ処理を行い、その処理表面に、防汚コーティング剤として加水分解によりシラノール基となる基を有するシラン化合物を塗布、硬化することによって、樹脂表面に耐久性に優れた防汚層を形成する方法が記載されている。
【0008】
しかしながら、前者の方法ではハードコート剤の塗布、防汚コーティング剤の塗布、加熱硬化が連続した工程の中で行わなければならず、応用できる物品の種類が限られてしまう。後者の場合は、表面処理に大掛かりな設備が必要になってしまう。
【0009】
【特許文献1】再公表特許WO2006−81296号公報
【特許文献2】特開平9−137117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記要望に応えるべく、撥水撥油性、離型性、防汚性、指紋拭き取り性等に優れ、特に潤滑性が良く基材との密着性に優れたなパーフルオロポリエーテル変性シラン及びこれを主成分とする多官能加水分解性基を有するフッ素系防汚表面層が固着された複合ハードコート層を有する基材及びその形成方法に関する。すなわち、本発明は、特別な装置を必要とせず、簡単な方法でハードコート層の上に防汚層を形成できる方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は、上記要望に応えるために鋭意検討を行った結果、一般式(1)で示される新規なパーフルオロポリエーテル変性シランの塗布膜が、種々のハードコート層に強固に密着し、撥水撥油性に優れており表面が汚れにくく、指紋等の汚れが拭き取りやすいことを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
従って本発明は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる基材表面に設けられたハードコート層表面に設けられた防汚表面層を含む複合ハードコート層が付与された基材であって、ハードコート層は、シリコーン系及び/又は多官能アクリル系化合物を含む表面材料の硬化物からなり、前記防汚表面層が下記一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル変性シラン及び/又はその加水分解縮合物を主成分とする化合物からなる防汚コーティング剤が前記ハードコート層に固着されていることを特徴とする複合ハードコート層が付与された基材及び上記化合物を塗布することを特徴とする防汚コーティング層の形成方法である。
(ZQ)βRf(QZα2−β (1)
[式中、Rfは2価のパーフルオロポリエーテル含有基、QはRf基とZ基とを連結する2価の基、Zはシロキサン結合を有する2〜9価の基、Zは下記式(2)で示されるトリオルガノシリル基で封鎖された1価の基、Aは下記式(3)で示されるケイ素含有基であり、αは1〜8の整数、βは0、1又は2である。
【0013】
【化1】


(bは1〜10の整数、Rは炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基である。)
Aは、下記式(3)で示される1価の基である。
【0014】
【化2】


(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基、Xは加水分解性基である。aは2又は3、cは1〜6の整数である。)]
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プラスチック等の基材に施したハードコート層に防汚コーティング剤を塗布して硬化させるだけで、ハードコート層に強固に密着した防汚層を形成することができ、種々の用途に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明は、物品にまずハードコート処理を施しハードコート層を形成させ、そして防汚コーティング剤として一般式(1)にて示されるパーフロロポリエーテル変性シラン化合物を適当な方法にて塗布して硬化させることによって防汚層を形成するものである。
【0017】
上記表面処理剤で処理される物品の材質(基材)は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる基材であって、具体的には次のものがよい。セルロイド、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、6−ナイロン、6,6−ナイロン、12−ナイロンなどの脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ABS、AS樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン(低密度又は高密度)、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの飽和ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリメチルペンテン、アイオノマー、液晶ポリマー、ポリイミド、ポリアミドイミド、フッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド、(変性)ポリフェニレンオキサイド、熱可塑性ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、或いは、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、熱硬化性ポリウレタン、ポリイミド、ジエチレングリコールビスアリルカ−ボネート(通称CR−39)の重合物、(ハロゲン化)ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレートの(共)重合物、(ハロゲン化)ビスフェノールAのウレタン変性ジ(メタ)アクリレートの(共)重合物、ジアクリレート化合物やビニルベンジルアルコールと不飽和チオール化合物等との共重合物などの熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0018】
ハードコート剤としてはシリコーン系または多官能アクリル系が好適である。
<シリコーン系ハードコート剤>
シリコーン系のハードコート剤はテトラアルコキシシラン類またはトリアルコキシシラン類、ジアルコキシシラン類またはそれらの加水分解部分縮合物を有効成分とするものである。テトラアルコキシシラン類としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシランが挙げられる。
【0019】
トリアルコキシシラン類の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルジメトキシエトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、N−β(アミノメチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリアセトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランがあげられる。
【0020】
ジアルコキシシラン類としてはジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、アミノメチルエチルジメトキシシラン、N−β(アミノメチル)−γ−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシランがあげられる。
【0021】
これらは単独または複数の成分からなる混合物として使用しても良い。これらの化合物は、1種で使用してもよいが、目的に応じて2種以上を混合して使用してもよい。反応速度を増し、硬化温度を下げる目的で加水分解物として使用することが好ましい。2種以上を併用する場合、加水分解後に併用してもよいし、加水分解前に併用して共加水分解を行なってもよい。
【0022】
上記各種基材乃至物品表面に形成されるハードコート硬化皮膜の膜厚は、基材の種類により適宜選定されるが、通常0.1μm〜20μm、特に1〜10μmである。
ハードコート層の特性を改良するため、或いは屈折率を向上させて所定値にするため、これらの樹脂の中に1〜200nmの無機微粒子を含有させてもよい。このような無機粒子としては二酸化ケイ素酸化チタンが好ましい。
【0023】
また、触媒を添加して使用することもできる。このような触媒としては、アミン類、有機酸の金属塩、ルイス酸、金属アルコキシド、金属キレート化合物、金属のハロゲン化物などが挙げられる。必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、熱重合防止剤などの安定剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、顔料、染料、分散剤、帯電防止剤、防曇剤などの界面活性剤類、酸、アルカリおよび塩類などから選ばれる硬化触媒等を適宜配合して用いてもよい。
【0024】
ハードコート層は、上記構成成分の溶液又は低分子量であればそれ自身が液状を呈するので無溶剤の形で、処理液とし、浸漬法、ハケ塗り、スピンコート法、スプレー塗装、流し塗りなどの方法で塗布し、常温又は加熱下(120℃以下が好ましい)で乾燥させる。乾燥後、更に熱処理(120℃以下が好ましい)して硬化させても良い。
【0025】
<多官能アクリル系ハードコート剤>
ひとつの分子中に複数の(メタ)アクリロイル基もつ多官能化合物を含有するラジカル反応性のハードコート剤である。[なお、ここではアクリロイル基およびメタクリロイル基を総称して(メタ)アクリロイル基という。(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート等も表現も同様とする。
【0026】
多官能化合物として好ましい化合物は(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物である。特に多価アルコールなどの2個以上の水酸基を有する化合物と(メタ)アクリル酸とのエステル化物が好ましい。このような化合物としては次のものが例示される。1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン−EO付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン−PO付加物のトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール−カプロラクトン付加物のヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート−カプロラクトン付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート−カプロラクトン付加物のトリ(メタ)アクリレート。
【0027】
多官能アクリル系ハードコート剤には多官能化合物とともに反応性希釈剤として次のような化合物も混合して使用することができる。メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート。
【0028】
上記各種基材乃至物品表面に形成されるハードコート硬化皮膜の膜厚は、基材の種類により適宜選定されるが、通常0.1μm〜20μm、特に1〜10μmである。
ハードコート層の特性を改良するため、或いは屈折率を向上させて所定値にするため、これらの樹脂の中に1〜200nmの無機微粒子を含有させてもよい。このような無機粒子としては二酸化ケイ素酸化チタンが好ましい。
【0029】
多官能アクリル系ハードコート剤には通常、硬化させるための光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤としては、公知〜周知のものを使用できる。特に入手容易な市販のものが好ましい。透明硬化物層において複数の光重合開始剤を使用してもよい。光重合開始剤としては、アリールケトン系光重合開始剤(たとえば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アルキルアミノベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール類、ベンゾイルベンゾエート類、α−アシロキシムエステル類など)、含イオウ系光重合開始剤(たとえば、スルフィド類、チオキサントン類など)、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、その他の光重合開始剤がある。特に、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤の使用が好ましい。また、光重合開始剤はアミン類などの光増感剤と組み合わせて使用することもできる。
【0030】
具体的な光重合開始剤としては、たとえば以下のような化合物がある。4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルホリノプロパン−1−オン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、9,10−フェナントレンキノン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアントラキノン、4’,4”−ジエチルイソフタロフェノン、α−アシロキシムエステル、メチルフェニルグリオキシレート、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、チオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド。
【0031】
また、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、熱重合防止剤などの安定剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、顔料、染料、分散剤、帯電防止剤、防曇剤などの界面活性剤類、酸、アルカリおよび塩類などから選ばれる触媒等を適宜配合して用いてもよい。
【0032】
ハードコート剤は、浸漬法、ハケ塗り、スピンコート法、スプレー塗装、流し塗りなどの方法で塗布し、紫外線や電子線、そのほかのエネルギー線を照射することにより硬化させることができる。
【0033】
次に形成したハードコート層に防汚コーティング剤を塗布して防汚層を形成させる。防汚コーティング剤は下記平均組成式(1)で示されるものである。
(ZQ)βRf(QZα2−β (1)
[式中、Rfは2価のパーフルオロポリエーテル含有基、QはRf基とZ基とを連結する2価の基、Zはシロキサン結合を有する2〜9価の基、Zは下記式(2)で示されるトリオルガノシリル基で封鎖された1価の基、Aは下記式(3)で示されるケイ素含有基であり、αは1〜8の整数、βは0、1又は2である。
【0034】
【化3】


(bは1〜10の整数、Rは炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基である。)
Aは、下記式(3)で示される1価の基である。
【0035】
【化4】


(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基、Xは加水分解性基である。aは2又は3、cは1〜6の整数である。)]
【0036】
ここで、Rfは2価のパーフルオポリロエーテル含有基であり直鎖型であるか分岐型であるかは問わない。該パーフルオロポリエーテル構造としては、−C2gO−(式中、各単位のgは独立に1〜6の整数である。)の多数の繰り返し単位を含むもので、例えば一般式(C2gO)で示されるものなどが挙げられる。ここで、hは1〜500、好ましくは2〜400、より好ましくは10〜200の整数である。
【0037】
上記式で示される繰り返し単位−C2gO−としては、例えば下記の単位等が挙げられる。なお、上記パーフルオロアルキルエーテル構造は、これらの繰り返し単位の1種単独で構成されていてもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
−CFO−
−CFCFO−
−CFCFCFO−
−CF(CF)CFO−
−CFCFCFCFO−
−CFCFCFCFCFCFO−
−C(CFO−
【0038】
パーフルオロポリエーテル基の場合、各種鎖長のパーフルオロエーテル基が含まれるが、これらの中では、特に下記単位で示される炭素数1〜4程度のパーフルオロエーテル基を繰返し単位とするパーフルオロポリエーテルである。
−CFO−
−CFCFO−
−CFCFCFO−
−CF(CF)CFO−
【0039】
また、上記式(1)において、2価のパーフルオロエーテル含有基としては、下記一般式(5)、(6)、(7)で示される基から選ばれるものが好ましい。
【0040】
【化5】


(式中、Yはそれぞれ独立にF又はCF基、rは2〜6の整数、dは1〜3の整数、m、nはそれぞれ0〜200の整数でm+nは2〜200、sは0〜6の整数である。該一般式中の繰り返し単位の配列はランダムである。)
【0041】
【化6】


(式中、lは1〜200の整数、dは1〜3の整数である。)
【0042】
【化7】


(式中、YはF又はCF基、dは1〜3の整数、m、nはそれぞれ0〜200の整数でm+nは2〜200である。該一般式中の繰り返し単位の配列はランダムである。)
【0043】
上記したパーフルオロポリエーテル含有基の場合、各種鎖長のパーフルオロエーテル基が含まれるが、好ましくは炭素数1〜4程度のパーフルオロエーテル基を繰返し単位とするパーフルオロポリエーテル含有基である。上記化学構造式中のm、p及びqはそれぞれ1以上の整数を示す。具体的には1〜50、より好ましくは10〜40の範囲が好ましい。また、なお、パーフルオロポリエーテルの分子構造は、これら例示したものに限定されるものではない。
【0044】
さらに式(1)において、Rfが下記一般式(4)で示される基から選ばれるパーフルオロポリエーテル含有基であることが、滑り性の点で好ましい。
【0045】
【化8】


(式中、e=0〜50、f=1〜50及びe+f=2〜60の整数である。)
【0046】
式中、QはRf基とZ基との連結基であり、アミド、エーテル、エステル、ビニル結合を含む基などが挙げられる。
【0047】
具体例としては下記式
【0048】
【化9】

【0049】
【化10】

などが挙げられる。
【0050】
上記式中、Zは酸素原子、窒素原子、ケイ素原子及び硫黄原子から選ばれる1種または2種以上を含有しても良いが、好ましくはケイ素官能基でありシロキサン結合を有することがより好ましい。
【0051】
具体的には下記のものがあげられる。
【0052】
【化11】

【0053】
【化12】

【0054】
【化13】

【0055】
【化14】

【0056】
【化15】

【0057】
式中、Xは加水分解性基を表し、末端に3個以上有するがそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数1〜10のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基などの炭素数2〜10のオキシアルコキシ基、アセトキシ基などの炭素数1〜10のアシロキシ基、イソプロペノキシ基などの炭素数2〜10のアルケニルオキシ基、クロル基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基などが挙げられる。中でもメトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基、クロル基が好適である。
【0058】
Rは、炭素数1〜4の低級アルキル基又はフェニル基で、具体的にはメチル基、エチル基、フェニル基などであり、中でもメチル基が好適である。aは2又は3であり、反応性、基材に対する密着性の観点から、3が好ましい。bは2以上であり、基材への密着性と防汚性能との両立から2〜5が好ましいがこれに限定されるものではない。
【0059】
また、防汚コーティング剤は、適当な溶剤で希釈して用いてもよい。このような溶媒としては、フッ素変性脂肪族炭化水素系溶剤(パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタンなど)、フッ素変性芳香族炭化水素系溶剤(m−キシレンヘキサフロライド、ベンゾトリフロライドなど)、フッ素変性エーテル系溶剤(メチルパーフルオロブチルエーテル、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)など)、フッ素変性アルキルアミン系溶剤(パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミンなど)、炭化水素系溶剤(石油ベンジン、ミネラルスピリッツ、トルエン、キシレンなど)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)を例示することができる。これらの中では、溶解性、濡れ性などの点で、フッ素変性された溶剤が望ましく、特には、m−キシレンヘキサフロライド、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、パーフルオロトリブチルアミンなどである。
【0060】
上記溶媒はその1種を単独に用いても2種以上を混合するようにしてもよく、いずれにしても上記成分を均一に溶解させることが好ましい。なお、この溶媒に溶解させ示した式(1)のシラン及び/又はその部分加水分解縮合物の濃度は処理方法により最適濃度は異なるが、0.01〜50重量%、特に0.05〜20重量%であることが好ましい。
【0061】
このように溶媒に希釈した防汚コーティング剤の処理方法としては、刷毛塗り、ディッピング、スプレー、蒸着処理など公知の方法で処理できる。また、処理温度は処理方法によって最適な温度は異なるが、例えば刷毛塗りやディッピングの場合は、室温から120℃の範囲が望ましい。処理湿度としては、加湿下で行うことが反応を促進する上で望ましい。
【0062】
なお、使用するシラン化合物や他の添加剤によって処理条件は異なるため、その都度最適化することが望ましい。
【0063】
また、防汚コーティング剤は予め加水分解したものを用いることもできる。これによって加水分解性のケイ素官能基は相当するシラノール(SiOH)になる。シラノールは、複数分子の間で脱水縮合してシロキサン結合(−Si−O−)を生成する。脱水縮合は速やかに進み、オリゴマーが生成する。脱水縮合が十分に進むように、加水分解後、1〜24時間放置(養生)してもよい。このように加水分解、部分縮合したオリゴマーを用いることにより、防汚コーティング剤の密着性を高め、また硬化時間を短縮することができる。
【0064】
防汚コーティング剤には必要に応じて、縮合触媒、例えば、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の有機チタン酸エステル;ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等の有機チタンキレート化合物;アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等の有機アルミニウム化合物;ジルコニウムテトラ(アセチルアセトナート)、ジルコニウムテトラブチレート等の有機ジルコニウム化合物;ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジオクトエート等の有機スズ化合物;ナフテン酸スズ、オレイン酸スズ、ブチル酸スズ、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛等の有機カルボン酸の金属塩;ヘキシルアミン、燐酸ドデシルアミン等のアミン化合物、およびその塩;ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の4級アンモニウム塩;酢酸カリウム、硝酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩;ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン;テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン等のグアニジル基含有有機ケイ素化合物;有機酸(酢酸、メタンスルホン酸など)、無機酸(塩酸、硫酸など)を添加してもよい。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用できる。
これらの中では、特に酢酸、テトラn−ブチルチタネート、ジブチルスズジアセテートなどが望ましい。添加量は触媒量であり、通常シラン及び/又はその部分加水分解縮合物100重量部に対して0.01〜20重量部、特に0.1〜10重量部である。
【0065】
本発明は、以下の物品に適用することができる。すなわち、眼鏡レンズ、サングラス、反射防止フィルター、液晶ディスプレー、CRTディスプレー、プラズマディスプレー、ELディスプレー等の各種表示素子の表面、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)などの光記録媒体、携帯電話、電子手帳、音楽プレーヤーなどの携帯用電子機器、自動車、電車、航空機などの窓ガラス、ヘッドランプカバー、浴槽、洗面台のようなサニタリー製品、外壁用建材、台所用建材、美術品、など。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。また、下記例において、表中の物性は、下記の試験法により測定されたものである。
【0067】
[合成例1]
下記式(I)で示される両末端にα・ω−不飽和結合を有するパーフルオロポリエーテル50gと、
【0068】
【化16】


(p/q=0.9 p+q≒45)
1,3トリフルオロメチルベンゼン75g、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.0442g(Pt単体として1.1×10−7モルを含有)を入れて90℃に加熱撹拌した。ペンタメチルジシロキサン1.85gを滴下して90℃で2時間熟成し、その後、下記式(II)に示すテトラメチルジシロキサン(HM)とビニルトリメトキシシラン(VMS)との1:1付加反応物(HM−VMS)7.5gを滴下して90℃で2時間熟成し、1H−NMRで原料のアリル基が消失したのを確認した後、溶剤や未反応のペンタメチルジシロキサン及びHM−VMSを減圧溜去した後、白濁の液体パーフルオロポリエーテル(化合物1)50.5g(比重:1.63 屈折率1.319)を得た。
【0069】
【化17】


(但し、Yは−CHCH−及び−CH(CH)CH−が61:39の比率で混在する。)
【0070】
得られた化合物1のNMR及びIRチャートを図1、2に示す。H−NMR(TMS基準、ppm)のデータを次に示す。
【0071】
【化18】

【0072】
以上の結果から、得られた化合物の構造式は下記であることがわかった。
【0073】
【化19】


(p/q=0.9 p+q≒45)
【0074】
ここでXは、下記(a)と(b)が38:62の割合で混在する。
【0075】
【化20】

【0076】
【化21】


(但し、Yは−CHCH−及び−CH(CH)CH−が61:39の比率で混在する。)
【0077】
[合成例2]
下記式(I)で示される両末端にα・ω−不飽和結合を有するパーフルオロポリエーテル50gと、
【0078】
【化22】


(p/q=0.9 p+q≒45)
1,3トリフルオロメチルベンゼン75g、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.0442g(Pt単体として1.1×10−7モルを含有)を入れて90℃に加熱撹拌した。ペンタメチルジシロキサン1.85gを滴下して90℃で2時間熟成し、その後、下記式(III)に示す化合物(H4Q)20.5gを滴下して90℃で3時間熟成し、1H−NMRで原料のアリル基が消失したのを確認した後、溶剤や過剰のH4Qを減圧溜去した後、活性炭処理を行った後無色透明の液体パーフルオロポリエーテル46.8gを得た。
【0079】
【化23】

【0080】
さらに、上記したパーフルオロポリエーテル25gと、1,3トリフルオロメチルベンゼン30g、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.0225g(Pt単体として.2.2×10−6モルを含有)を入れて90℃に加熱撹拌した。トリメトキシシラン4.63gを滴下して80℃で3時間熟成し、溶剤を減圧溜去した後、無色透明の液体(化合物2)26.8g(比重:1.65 屈折率1.313)を得た。
【0081】
得られた化合物2のNMR及びIRチャートを図3、4に示す。H−NMR(TMS基準、ppm)のデータを次に示す。(含ベンゼン)
【0082】
【化24】

【0083】
以上の結果から、得られた化合物の構造式は下記であることがわかった。
【0084】
【化25】


(p/q=0.9 p+q≒45)
【0085】
ここでXは、下記(c)と(d)が57:43の割合で混在する。
【0086】
【化26】

【0087】
【化27】


(但し、Yは−CHCH−及び−CH(CH)CH−が79:21の比率で混在する。)
【0088】
[合成例3]
合成例1で示した両末端にα・ω−不飽和結合を有するパーフルオロポリエーテル(I)50gと、1,3トリフルオロメチルベンゼン75g、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.0442g(Pt単体として1.1×10−7モルを含有)を入れて90℃に加熱撹拌した。上記式(II)に示す付加反応物(HM−VMS)8.4gを滴下して90℃で2時間熟成し、1H−NMRで原料のアリル基が消失したのを確認した後、溶剤や未反応のHM−VMSを減圧溜去した後、白濁の液体パーフルオロポリエーテル(化合物3)56.3g(比重:1.63 屈折率:1.319)を得た。
【0089】
得られた化合物3のNMR及びIRチャートを図5、6に示す。H−NMR(TMS基準、ppm)のデータを次に示す。
【0090】
【化28】

【0091】
以上の結果から、得られた化合物の構造式は下記であることがわかった。
【0092】
【化29】


(p/q=0.9 p+q≒45)
【0093】
ここでXは、下記式で示される。
【0094】
【化30】


(但し、Yは−CHCH−及び−CH(CH)CH−が61:39の比率で混在する。)
【0095】
[試験片の作成]
ジエチレングリコールビスアリルカ−ボネート(通称CR−39)の重合物からなる厚さ2mm、幅25mm、長さ100mmの試験片(Riken Optech Corporation社製)をシリコーンハードコート剤(KP−64:信越化学工業株式会社製)に浸し、150mm毎分の速度で試験片を引き上げ、室温にて10分間風乾した後、120℃にて1時間加熱硬化した。こうすることによって試験片の表面にシリコーンハードコート層を設けた。
【0096】
[実施例1〜3]
合成例1〜3で合成された化合物1〜3を、ノベックHFE−7200(住友スリーエム社製)に溶解させ0.2%溶液とし、ここにジブチル錫ジアセテートを100ppmの濃度になるように添加して処理液とした。次に、上記方法にて作成したシリコーンハードコート層を設けた試験片(2mm×25mm×100mm)を前記処理液に浸し、150mm/分の速度で引き上げ、25℃、湿度45%の雰囲気下で48時間放置し、硬化皮膜を形成させた。この試験片を用いて、下記の評価を行った。
【0097】
[実施例4]
合成例3にて合成された化合物3の1.0gを、イソブチルアルコール2.3gおよびノベックHFE−7200の6.7gの混合物を調整し、そこに0.1規定の塩酸水溶液50mgを添加した。この混合物を室温にて3日間熟成させることによって、化合物3のアルコキシシリル基の部分加水分解を行った。次にこの混合物10.0gをノベックHFE−7200にて50倍に希釈して処理液とした。この処理液を用いて実施例1〜3と同様の方法にて試験片に処理を行ない、硬化皮膜を形成させた。この試験片を用いて、下記の評価を行った。
【0098】
[比較例1、2]
実施例で用いた化合物1〜3のパーフルオロ変性シランのかわりに、下記化合物4及び5を用いた他は実施例1〜3と同様の方法で試験片を作成し、評価を行った。
【0099】
化合物4
【0100】
【化31】

【0101】
化合物5
【0102】
【化32】


(p/q=0.9 p+q≒45)
【0103】
[皮膜の撥水性撥油性の評価方法]
接触角計(協和界面科学社製A3型)を用いて、硬化皮膜の水及びオレイン酸に対する後退接触角を測定し、撥水性撥油性の評価とした。
【0104】
[皮膜の耐摩耗性の評価]
ラビングテスターを用いて、以下の条件で擦りテストを行ない、布による耐摩耗性の評価を行った。
評価環境条件:25℃、湿度40%
擦り材:試料と接触するテスターの先端部(1.5cm×1.5cm)に不織布を8枚重ねて包み、輪ゴムで固定した。荷重を1kgかけ、2000往復回摩耗した。摩耗試験後に硬化被膜の水接触角の測定をし、耐摩耗性の指標とした。
【0105】
評価結果を表1に示す。
【0106】
【表1】

化合物3*:化合物3の部分加水分解物
【0107】
以上のように実施例1〜4では比較例1,2よりも磨耗試験後の水接触角が大きく、密着性の高いことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】化合物1のNMRチャートである。
【図2】化合物1のIRチャートである。
【図3】化合物2のNMRチャートである。
【図4】化合物2のIRチャートである。
【図5】化合物3のNMRチャートである。
【図6】化合物3のIRチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる基材表面に設けられたハードコート層表面に設けられた防汚表面層を含む複合ハードコート層が付与された基材であって、ハードコート層は、シリコーン系及び/又は多官能アクリル系化合物を含む表面材料の硬化物からなり、前記防汚表面層が下記一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル変性シラン及び/又はその加水分解縮合物を主成分とする化合物からなる防汚コーティング剤が前記ハードコート層に固着されていることを特徴とする複合ハードコート層が付与された基材。
(ZQ)βRf(QZα2−β (1)
[式中、Rfは2価のパーフルオロポリエーテル含有基、QはRf基とZ基とを連結する2価の基、Zはシロキサン結合を有する2〜9価の基、Zは下記式(2)で示されるトリオルガノシリル基で封鎖された1価の基、Aは下記式(3)で示されるケイ素含有基であり、αは1〜8の整数、βは0、1又は2である。
【化1】

(bは1〜10の整数、Rは炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基である。)
Aは、下記式(3)で示される1価の基である。
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基、Xは加水分解性基である。aは2又は3、cは1〜6の整数である。)]
【請求項2】
式(1)において、Rfが−C2gO−(式中、各単位のgは独立に1〜6の整数である。)の直鎖型又は分岐型パーフルオロエーテル基の繰り返し単位からなる、一般式(C2gO)(式中、hは1〜500の整数である。)で示されるパーフルオロポリエーテル変性シラン及び/又はその加水分解縮合物を主成分とする防汚コーティング剤を含むことを特徴とする請求項1記載の複合ハードコート層が付与された基材。
【請求項3】
式(1)において、Rfが下記一般式(5)、(6)、(7)で示される基から選ばれるパーフルオロポリエーテル変性シラン及び/又はその加水分解縮合物を主成分とする防汚コーティング剤を含むことを特徴とする請求項1記載の複合ハードコート層が付与された基材。
【化3】

(式中、Yはそれぞれ独立にF又はCF基、rは2〜6の整数、dは1〜3の整数、m、nはそれぞれ0〜200の整数でm+nは2〜200、sは0〜6の整数である。該一般式中の繰り返し単位の配列はランダムである。)
【化4】

(式中、lは1〜200の整数、dは1〜3の整数である。)
【化5】

(式中、YはF又はCF基、dは1〜3の整数、m、nはそれぞれ0〜200の整数でm+nは2〜200である。該一般式中の繰り返し単位の配列はランダムである。)
【請求項4】
式(1)において、QはRf基とZ基とを連結する2価の基であり、アミド、エーテル、エステル、ビニル結合を含む基であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の複合ハードコート層が付与された基材。
【請求項5】
加水分解性基Xがアルコキシ基であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複合ハードコート層が付与された基材。
【請求項6】
熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる基材表面に接するハードコート層とハードコート層に接する防汚表面層を含む複合ハードコート層を形成する方法であって、ハードコート層が形成された基材表面に、前記一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル変性シラン及び/又はその加水分解縮合物を主成分とする化合物を、前記ハードコート層表面に塗布することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の複合ハードコート層の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−297543(P2007−297543A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127984(P2006−127984)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】