説明

防汚性ガードレール

【課題】 ガードレールのビーム1の凸部平坦部11および凹部13ともに汚れ付着しにくいガードレールを提供する。
【解決手段】 ガードレールのビーム1の凸部平坦部11表面が親水性を示し、且つ、凹部13表面が撥水性とする防汚性ガードレールとした。
親水性樹脂を被覆したビーム1の凹部13表面に撥水性処理剤を塗布することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の側部に設けられるガードレールとして、汚れが付着しにくい防汚性ガードレールに関する。
【背景技術】
【0002】
走行中の自動車や歩行者を保護するために、道路の側部には支柱にビームを取り付けたガードレールが設置されている。車道に面するビームには、運転者からの視認性を高めるために白色塗装が施されている。しかし、自動車の排気ガスや塵埃などによりビームが汚染され、比較的短期間のうちに汚れが目立つようになっている。
【0003】
一方、屋外での汚れ付着を低減する塗料として、有機塗料組成物にオルガノシリケートの縮合物を配合した塗料が提案されている(特許文献1〜3)。この種の塗料では、配合したオルガノシリケートの縮合物によって塗膜表面に親水性が付与される。塗膜表面が親水性になると、自動車の排気ガスや塵埃が雨水で洗い流され、汚染物質が定着しにくい表面となる。
【特許文献1】WO94/6870公報
【特許文献2】特開平7-331136公報
【特許文献3】特開平8-12921公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガードレールの断面構成を図1に示す。ガードレールのビーム1には、ガードレール全体の強度を高めるために凹凸状の加工が施される。かかるビーム1に防汚性を付与するために塗膜表面を親水性にした樹脂被覆鋼板を適用した場合、ビーム1の凸部平坦部11は雨水で汚染物質が洗い流され、美麗な状態を維持できるが、凹部13は防汚効果が十分に発揮されず、筋状の汚れが付着するという問題があった。降雨時にビーム1上の雨水の流れを観察した結果、ビーム1の凸部平坦部11を流下した雨水の一部は、凸部平坦部下端12で落下するが、一部は凹部13を伝わり流下した。凹部13を伝わり流下した雨水には凸部平坦部11に付着していた汚染物質が含まれており、凹部13の表面に筋状の汚れが付着したと推察された。凸部平坦部11は、降雨時全面に雨水が当たり汚染物質が洗われるが、凹部13は直接雨水が当らないため、筋状の汚れが残り易いと考えられる。このことから、凹部13の汚れを防止するためには、凸部平坦部下端12から凹部13表面へ雨水が流下しないようにすることが有効と考えられた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、このような問題を解決すべく案出されたものであり、ガードレールのビーム1の凸部平坦部11表面の対水接触角が60度以下の親水性を示し、且つ、凹部13表面の対水接触角が70度以上の撥水性であることを特徴とする防汚性ガードレールを提供することを目的とする。
【0006】
ガードレールのビーム1は、その目的を達成するために、親水性樹脂を被覆したビームの凹部13の表面に撥水性処理剤を塗布することにより、凸部平坦部11表面を親水性に、凹部13表面を撥水性にすることができる。このように、ガードレールのビーム1の凸部平坦部11表面を親水性に、凹部13表面を撥水性にすることにより、凸部平坦部11、凹部13共に汚れが付着しにくく、美麗な状態を維持することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ガードレールのビーム1の凸部平坦部11は表面を親水性にしているため、汚染物質が雨水で洗い流され、美麗な状態が維持される。凹部13の表面が親水性の場合は、凸部平坦部11から雨水が凹部13にも伝わりやすく、平坦部から洗い出された汚染物質が筋状に付着して汚染されてしまう。一方、本発明どおり凹部13表面を撥水性にすれば、凸部平坦部下端12で雨水が撥き、水滴状になって凹部13を伝わることなく落下するため、凹部13を汚染することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ガードレールは図1に示すとおり、鋼板を成形したビーム1と支柱2から構成される。ビーム1は、強度を高めるために凹凸状に成形される。ビーム1の汚染を防止するために、凸部平坦部11の表面は、対水接触角が60度以下の親水性とし、より好ましくは50度以下とする。ビーム1の凹部13の表面は耐水接触角が70度以上の撥水性とし、より好ましくは80度、さらに好ましくは90度以上とする。
【0009】
ビーム1の素材は、白色に着色した樹脂を被覆した鋼板が使用される。樹脂の種類は限定されることはなく、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩ビ樹脂、フッ素樹脂等が用いられる。親水性樹脂を被覆する手法としては、塗料に親水性化合物を添加した塗料を塗装、焼き付ける方法や、鋼板に樹脂被覆した後、親水性化合物を塗布、乾燥して親水層を形成する方法がある。
【0010】
塗料に添加または樹脂皮膜に塗布する親水性化合物としては、オルガノシリケート系化合物が代表的であり、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等及びこれらの部分加水分解縮合物を挙げることができる。オルガノシリケート化合物を添加した有機樹脂塗料から形成された塗膜の表面は、オルガノシリケート化合物の配向によりSi−OH,Si−OR(R:Cnn+1)等の親水基を有し、親水性を示す。なお、Si−OR自体は親水性を示さないが、空気中の湿気や雨水等で容易に加水分解してSi−OHに変化するため、屋外での使用時には親水基として作用する。
【0011】
樹脂を被覆する鋼板は特に限定されることはなく、冷延鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、溶融5%Al−Zn合金めっき鋼板、溶融55%Al−Zn合金めっき鋼板、溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板、溶融アルミニウムめっき鋼板、ステンレス鋼板等を使用することができる。基材には、塗料の塗布に先立って塗膜密着性及び耐食性を向上させるため、必要に応じ、脱脂、表面調整処理、クロメート処理、リン酸塩処理等の塗装前処理や、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等の下塗りを施される。
【0012】
樹脂被覆したビーム1の凹部13に塗布する撥水性処理剤は、シリコーン樹脂系やフッ素樹脂系が好ましい。シリコーン樹脂系の撥水処理剤は、Siに結合するメチル基が多いほど撥水性が高くなるため、メチル基が多いシリコーン樹脂を選ぶことが好ましい。熱硬化や湿気硬化など架橋タイプの樹脂が好ましい。フッ素樹脂系の撥水処理剤は、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ四フッ化エチレン等の熱可塑性フッ素樹脂やフルオロオレフィン/ビニルエーテル共重合体をイソシアネート、メラミン等で架橋する熱硬化型フッ素樹脂の単独または2種類以上の混合物を主成分とし、必要に応じてアクリル樹脂、ウレタン樹脂等の他の樹脂とのブレンド物を使用することができる。撥水性処理剤は、通常はクリアー処理とするが、必要に応じてつや消し剤、骨材や着色顔料を添加しても良い。
【0013】
ビームの作製方法には、予め樹脂を被覆した鋼板を成形加工するプレコート方式と鋼板を成形加工後塗装するポストコート方式がある。鋼板の成形加工は、ロールフォーミングやベンダー曲げ等により行われる。親水性樹脂を被覆後、ビーム1の凹部13に撥水性処理剤を刷毛、ローラー等により塗布し乾燥させる。撥水性処理剤は、凹部13全面に塗布してもよいが、凸部平坦部下端12付近にのみ塗布することが好ましい。
【実施例】
【0014】
樹脂被覆鋼板の作製:
クロメート処理を施した板厚2.3mmの溶融亜鉛めっき鋼板に膜厚が10μmとなるようにエポキシ樹脂系塗料を塗装・焼き付けしプライマーを設けた後、ポリエステル樹脂系の白色塗料に、親水化剤としてテトラメトキシシランの部分加水分解縮合物を塗料の固形分に対して10質量%添加した上塗り塗料を膜厚が20μmとなるように塗装・焼付けし、親水性樹脂被覆鋼板を作製し、実施例および比較例2に使用した。親水化剤を添加しないポリエステル樹脂系白色塗料を用いて同様に作製したポリエステル樹脂被覆鋼板を、比較例1に使用した。
【0015】
ガードレールのビーム1の作製:
ポリエステル樹脂被覆鋼板をロールフォーミングにより凹凸形状のビーム1に成形した。その後、親水性ポリエステル樹脂被覆鋼板の凹部13の凸部平坦部下端12付近に湿気硬化型シリコーン樹脂系撥水剤を刷毛塗りし、乾燥させたものを実施例とした。また、親水化剤を添加していないポリエステル樹脂被覆鋼板および親水性ポリエステル樹脂被覆鋼板の凹部13に撥水性処理剤を塗布しないものをそれぞれ比較例1および比較例2とした。
【0016】
親水性および撥水性の評価:
ビーム1の凸部平坦部11および凹部13を切り出し、静置式対水接触角により表面の親水性および撥水性を評価した。
防汚性の評価:
ガードレールの防汚性は、屋外暴露試験による汚れ付着状態により評価した。千葉県市川市の屋外にガードレールを取り付け、6ヶ月経過後のガードレールのビーム1の汚れ付着状況を目視判定した。雨水が流下した跡に黒色の筋状汚れが濃く付着した場合を×、雨水が流下した跡に黒色の筋状汚れが薄く付着した場合を△、筋状汚れが確認されない場合を○と評価した。
【0017】
対水接触角および屋外暴露試験による防汚性評価結果を表1に示す。親水化していないポリエステル樹脂被覆鋼板を用い、凹部13に撥水化処理剤を塗布しなかった比較例1は、凸部平坦部11、凹部13共に筋状の汚れが付着していた。凸部平坦部11、凹部13共に親水化した比較例2は、凸部平坦部11は汚れが付着しなかったが、凹部13には筋状汚れが認められた。これに対し、凸部平坦部11は親水化、凹部13は撥水化した実施例は、凸部平坦部11、凹部13共に汚れの付着は確認されず、良好な防汚性を示した。
【0018】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明では、ガードレールに使用されるビーム1の凸部平坦部11を親水性、凹部13を撥水性とする。このことにより、凸部平坦部11は雨水で汚れが洗い流され汚れが付着しにくい。凹部13には雨水が流下しないため、筋状の汚れが付着せず、美麗な状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に従ったガードレールの断面図
【符号の説明】
【0021】
1:ビーム 2:支柱
11:ビームの凸部平坦部 12:ビームの凸部平坦部下端 13:ビームの凹部





【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱2および鋼板を凹凸状に成形したビーム1からなるガードレールにおいて、ビームの凸部平坦部11の対水接触角が60度以下の親水性を示し、且つ、凹部13の対水接触角が70度以上の撥水性であることを特徴とする防汚性ガードレール。
【請求項2】
親水性樹脂を被覆したビーム1の凹部13の表面に撥水性皮膜を形成したことを特徴とする請求項1記載の防汚性ガードレール。



【図1】
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【公開番号】特開2007−85052(P2007−85052A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273722(P2005−273722)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【Fターム(参考)】