防汚材料
水環境に曝露された構造物の汚損を防止するのに有用な防汚材料は、殺生物側鎖および任意に汚損遊離側鎖を伴う炭素および/またはシリコーン骨格を有するブロックコポリマーを含む。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連特許出願に対する相互参照
本出願は、2003年9月25日提出の「防汚材料」なる標題の米国特許仮出願第60/506,077号、および2004年6月18日提出の「防汚材料」なる標題の米国特許仮出願第60/580,834号に対する優先権を主張し、これらはいずれもその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
背景
水中環境に曝露された表面の汚損は重大な問題である。例えば、船殻などの船の表面、石油掘削施設などの沖合の海洋構造物、海岸植物のための海水導管システム、ブイ、熱交換器、冷却塔、淡水化装置、ろ過膜、ドックなどはすべて、継続的に水に曝露されるとある程度の汚損を経験する可能性がある。船の場合、汚損は船の性能や機能を阻害することもある。例えば、汚損は燃料消費を実質的に増大させることもあれば、大規模で高頻度の整備を必要とすることもあり、これらはすべて操業の全般的コストを高める。汚損は船の速度、操作性、および航続距離も低下させ、性能の妨げとなる。別のレベルでは、地域に特異的な水生生物が世界を横断する船に付着すると、これらの生物が本来存在しない港に不必要に侵襲し、蔓延することになりうる。いくつかの場合には、このことが地域の水生生態系に重大な有害作用をもたらすこともある。
【0003】
長年にわたり、水中環境に曝露された構造物における汚損の影響を最小化しようとする多くの試みがなされている。例えば、そのような構造物上の水生生物の付着および/または成長を妨害するコーティング(例えば、塗料など)が開発されている。そのようなコーティングを形成するために用いることができる特定の材料が、米国特許仮出願第60/506,077号に記載されている。伝統的に、汚損の低減を目的とするコーティングの研究開発の二つの平行線が主体となっている。すなわち、殺生物剤含有コーティングと、低表面エネルギー「非付着(non-stick)」汚損遊離コーティングである。これらの取り組みの各々が成功の要素を生じているが、問題も引き続き存在する。
【0004】
残念ながら、特定の殺生物コーティングは環境問題に関連している(例えば、スズによる殺生物コーティングなど)。例えば、港に停泊中の塗料の細片および浸出は毒素の沈降集積につながり、標的としていない海洋生物(例えば、牡蠣)の損傷または破壊を引き起こしている。したがって、これらの殺生物コーティングの有効な代替物の開発が望まれている。
【発明の開示】
【0005】
概要
防汚材料として、または防汚材料中で用いるのに適したいくつかの化合物を本明細書において開示する。一般に、防汚材料とは、単独または他の材料もしくは物質との組み合わせで用いた場合に、殺生物および/または汚損遊離特性を提供しうる製品、薬剤、または組成物を意味する。本明細書に記載の防汚材料は、殺生物および/または汚損遊離特性を提供するいくつかの適当なコポリマー(例えば、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーなど)の一つまたは複数を含んでいてもよい。殺生物コーティングを形成するために用いることができる適当なポリマー材料の例を本明細書の図1〜2、4、7、および10〜16に示す。一つの態様において、コポリマーは炭素および/またはシリコーン骨格を有する一つまたは複数のゴム様ポリマー配列と、一つまたは複数の殺生物基を含む一つまたは複数のポリマー配列との組み合わせを含む。コポリマーは、コポリマーおよび/またはコポリマーを組み込む最終製品の構造(texture)または汚損遊離特性を増強する一つまたは複数のポリマー配列も含むことができる。コポリマーにおける架橋反応のための部位として役立ちうる官能基を含むことも望ましいと考えられる。コポリマーは5,000から100,000、または望ましくは10,000から75,000、または適宜10,000から50,000の分子量を有していてもよい。非常に一般的に、コポリマーは各ブロックが約10から100のサブユニットを含む複数のブロックを含む。
【0006】
一つの態様において、防汚材料は下記のコポリマーを含む:
(式中、mは0から100、0から65、10から75、またはより望ましくは20から50の整数であってもよく;
nは0から100、0から65、10から75、またはより望ましくは20から50の整数であってもよく;
mおよびnの少なくとも一つは≠0であり;
Inは開始基であり;
ECはエンドキャップ基であり;
xは1から200、10から150、25から100、またはより望ましくは35から75の整数であってもよく;
pは0から75、0から50、10から50、10から25、またはより望ましくは20から50の整数であってもよく;
R1は水素、メチル基、または他のアルキル基(例えば、低級アルキル基)であってもよく;
R2およびR3は独立に架橋基、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、またはいくつかの殺生物官能基の任意の一つであってもよく;
L1は連結基であってもよく;
R4は水中環境で汚損を引き起こす生物に対して毒性の殺生物基または切断されて(すなわち加水分解により)そのような殺生物基を生成することができる基であってもよく;
R5は汚損遊離基、アルキル基、または他の粘着防止(texturizing)基であってもよく;かつ
RxはHまたはMeである)。
【0007】
以下に示すもう一つの態様において、防汚材料は下記のコポリマーを含む:
(式中、mは0から100、0から65、またはより望ましくは0から50の整数であってもよく;
nは1から100、0から65、またはより望ましくは20から50の整数であってもよく;
xは1から200、1から150、またはより望ましくは1から100の整数であってもよく;
yは1から100、10から75、またはより望ましくは20から50の整数であってもよく;
Inは開始基であり;
ECはエンドキャップ基であり;
R1は水素または低級アルキル基(例えば、メチル基)であり;
R2は架橋基、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、またはフェニルであり;
L1は連結基であり;
R3は水中環境で汚損を引き起こす生物に対して毒性の殺生物基または切断されて(すなわち加水分解により)そのような殺生物基を提供することができる基であり;
R4およびR5は独立に架橋基、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、またはいくつかの殺生物官能基の任意の一つであってもよく;かつ
RxはHまたはMeである)。
【0008】
もう一つの態様において、殺生物組成物は下記の式を有するグラフトコポリマーを含んでいてもよい:
(式中、mは0から100、10から75、またはより望ましくは20から50の整数であってもよく;
yは1から100、10から75、またはより望ましくは20から50の整数であってもよく;
xは1から200、10から150、25から100、またはより望ましくは35から75の整数であってもよく;
Inは開始基であってもよく;
R1は水素またはメチル基であってもよく;
R2は架橋基、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、またはフェニルであってもよく;
L1は連結基であってもよく;
R4は水中環境で汚損を引き起こす生物に対して毒性の殺生物基または切断されて殺生物基を提供することができる基であってもよく;
RxはHまたはMeであり;かつ
ECはエンドキャップ基であってもよい)。
【0009】
下記の式を有するブロックコポリマーを含む殺生物組成物:
(式中、mは1から100、10から75、またはより望ましくは20から50の整数であってもよく;
xは1から200、10から150、25から100、またはより望ましくは35から75の整数であってもよく;
pは0から75、10から50、またはより望ましくは20から50の整数であってもよく;
Inは開始基であってもよく;
R1は水素またはメチル基であってもよく;
L1は連結基であってもよく;
R2は水中環境で汚損を引き起こす生物に対して毒性の殺生物基または切断されて殺生物基を提供することができる基であってもよく;
R3は汚損遊離基、アルキル基、または他の粘着防止基であってもよく;
RxはHまたはMeであり;かつ
ECはエンドキャップ基であってもよい)。
【0010】
もう一つの態様において、殺生物組成物は下記の式を有するブロックコポリマーを含んでいてもよい:
(式中、nは1から100、10から75、またはより望ましくは20から50の整数であってもよく;
xは1から200、10から150、25から100、またはより望ましくは35から75の整数であってもよく;
pは0から75、10から50、またはより望ましくは20から50の整数であってもよく;
Inは開始基であってもよく;
L1は連結基であってもよく;
R1およびR2は独立に架橋基、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、またはフェニルであってもよく;
R3は水中環境で汚損を引き起こす生物に対して毒性の殺生物基または切断されて殺生物基を提供することができる基であってもよく;
R4は汚損遊離基、アルキル基、または他の粘着防止基であってもよく;
RxはHまたはMeであり;かつ
ECはエンドキャップ基であってもよい)。
【0011】
もう一つの態様において、殺生物組成物は下記の式を有する構造を含んでいてもよい:
(式中、mは1から15、またはより望ましくは4から10の間の整数であってもよく;
nは2から50、5から25、またはより望ましくは10から16の間の整数であってもよく;
pは0から10、またはより望ましくは2から4の間の整数であってもよく;
xは5から25、またはより望ましくは10から15の間の整数であってもよく;
yは0から20、またはより望ましくは3から11の間の整数であってもよく;かつ
qは2から15、2から10、またはより望ましくは2から5の間の整数であってもよい)。
【0012】
本明細書において用いられる「架橋基」なる用語は、ポリマーを架橋するために別の化学部分と反応することができる官能基を含む置換基を意味する。本明細書において用いられる「開始基」(「In」)なる用語は、重合を開始するために用いた反応の結果、コポリマーの末端に付加された置換基を意味する。本明細書において用いられる「エンドキャップ基」(「EC」)なる用語は、重合を停止する反応の結果、コポリマーの末端に付加された置換基を意味する。開始基(「In」)および/またはエンドキャップ基はコポリマーの物理化学的性質および特徴を変える、または影響をおよぼす官能基を含んでいてもよい。しかし、ほとんどの場合、開始基およびエンドキャップ基は、これらがコポリマーの全般的な物理特性にいかなる著しい影響も持たないように選択される(例えば、水素原子、低級アルキル基またはトリメチルシリル基の導入)。
【0013】
詳細な説明
一般に、本明細書に記載の防汚材料は、コポリマーに殺生物および/または汚損遊離活性を提供するいくつかのブロック配列を含むコポリマーを含む。防汚材料の様々な態様を独立に(例えば、単一のコーティング層として)または他の材料(例えば、塗料色素など)との組み合わせで用いて、水中環境(例えば、海洋環境、淡水環境など)に曝露された構造物および他の表面が経験する汚損の量を低減することができる。多くの場合、防汚材料を含むコーティング材料の組成物は、硬化剤、架橋開始剤などの他の化合物を含んでいてもよい。
【0014】
本明細書に記載の対象は防汚の文脈で提供されるが、本明細書に記載の概念および特徴は当業者には認識されるとおり様々な材料、設定、および/または状況で用いうることが理解されるべきである。同様に、一つの態様の特徴、利点、特性などは、そうではないと述べられている場合を除き、任意の他の態様に適用して別の態様を形成しうることも理解されるべきである。
【0015】
多くのコポリマーの一つの特徴は異なるポリマー配列間の強い反発である。反発が十分に強い場合、ミクロ相分離が起こることがある。いくつかのコポリマーのこの特徴を利用して、防汚材料および防汚材料を組み込む製品を強化することができる。一つの態様において、コポリマー(例えば、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーなど)のミクロ相分離を用いて、コポリマーの表面に殺生物基を多く配置することにより、表面の殺生物活性を高めることができる。ミクロ相分離の程度は、全体のポリマーにおける様々なブロックポリマー配列の量を制御することにより制御することができる。
【0016】
図1〜3は防汚材料として用いることができるコポリマーの様々な態様を示す。図1に示すとおり、コポリマーは殺生物基(例えば、トリクロサン、4級アンモニウム、ピリジニウムなど)、汚損遊離基(例えば、ポリエーテル基などの親水性基、過フルロアルキル基などの疎水性基、重ベンゼン基などの液晶基、自己組織基など)などを含んでいてもよいいくつかのブロックポリマー配列を含んでいてもよい。他の態様において、コポリマーは汚損遊離特性を提供するポリマー配列(例えば、配列Aまたは配列C)と殺生物特性を提供するポリマー配列との組み合わせを含んでいてもよい。同様に、コポリマーにおいて用いる任意のポリマー配列は、一つまたは複数の架橋基(例えば、エポキシ、オレフィン、アミン、酸、アルデヒド、エステルなど)も含んでいてもよい。図1(および図11〜16)におけるポリマー配列の順は例示にすぎないことも理解されるべきである。例えば、図1において、ポリマー配列Aは配列BとCとの間に位置してもよく、または配列Cは配列AとBとの間に位置してもよく、他も同様である。図示したブロックはそれぞれ、コポリマー中に複数存在してもよい。
【0017】
一般に、配列Aはシリコーンまたは炭素骨格を含むゴム様ブロックである。配列Aはいかなる適当な直鎖または分枝炭素ポリマー配列またはポリシロキサンであってもよい。例えば、配列Aはイソプレン、ブタジエン、またはシリコーンモノマーを用いて調製することができる。多くの場合、配列Aはいかなる殺細胞または組織構造上の官能基も含まない。しかし、配列Aは、防汚材料の靭性に寄与することが多い(例えば、配列Aはポリシロキサンポリマーに対してさらなる強度または靭性を提供することができる)。他の態様において、配列Aは殺細胞および/または組織構造上の官能基を含むこともあり、得られるコポリマーに汚損遊離特性を提供しないこともある。
【0018】
図1の配列Bは一般に炭素ポリマー骨格および一つまたは複数の殺生物官能基を含む。配列Cは典型的には炭素ポリマー骨格と、コポリマーの防汚/汚損遊離特性を増強するために用いることができる一つまたは複数の組織構造上の官能基(例えば、メタクリル酸メトキシエチルなど)を含む。例えば、ブロック配列Cは、請求項4に示すとおり、ジメチルシロキサン、メチルヒドロシロキサン、ビニルメチルシロキサンをいかなる組み合わせで(例えば、ランダムまたはブロックなどで)含んでいてもよい。
【0019】
図2に関して、配列Bと配列Aとが一緒に接ぎ合わされているグラフトコポリマーを示している。図には示していないが、配列Cも配列Aおよび/またはBに接ぎあわされていてもよい(またはこれらのブロックの一つの末端に結合されていてもよい)。さらなる態様において、配列Aは配列Bに接ぎあわされていてもよく、または配列Bは配列Cに接ぎあわされていてもよく、他も同様である。ポリマー配列を並べてコポリマーを形成することができる様々な様式がある。図3は、組み合わせて本発明のコポリマーを形成することができるブロック配列を大まかに示している。一つの態様において、コポリマーは陰イオンおよび制御ラジカル重合の組み合わせを用いて合成することができる。
【0020】
前述のとおり、コポリマーを架橋してもよい。一つの態様において、架橋官能基を配列A上に提供する。もう一つの態様において、架橋官能基を配列Bおよび/またはC上に提供してもよい。もう一つの態様において、コポリマーを混合(すなわち、物理的に混ぜる)してもよい。当然のことながら、いかなる架橋コポリマーも他の架橋コポリマーと混合することができる。さらにもう一つの態様において、コポリマーを用いて相互浸透網目構造を形成してもよい。相互浸透網目構造は、一つまたは複数のモノマーを殺生物コポリマー、またはいくつかの場合にはコポリマーを調製するために用いる個々のポリマー(すなわち、ポリマーがコポリマーを形成するために他のポリマーに加えられていない)の周りで重合させて、コポリマーおよび/または個々のポリマーを緊密に保持するポリマー網目構造を形成することにより調製することができる。架橋官能基は、炭素骨格上の官能基(例えば、ビニル基など)、水素の官能性を持たせたシロキサンなどを用いて提供することができる。一つの態様において、架橋部分はプロピルグリシジルエーテル側鎖である。同様に、殺生物基はいくつかの適当な基のいずれであってもよい。例えば、一つの態様において、殺生物基はプロピル,2-(2',4'-ジクロロフェノキシ)-5-クロロフェニルエーテルである。
【0021】
本明細書に記載のコポリマーは、殺生物基の殺生物活性、ポリマー配列の汚損遊離活性、および/または両方の相乗的組み合わせにより、水性環境に曝露された表面の生物汚損を抑制することができる。本明細書において用いられる「殺生物」なる用語は単独または他の用語(例えば、基、活性など)との組み合わせで用いて、汚損を引き起こす水生生物に対して毒性の殺生物活性を意味する。「殺生物」なる用語の使用は生物が実際に死滅させられる必要はない。むしろ、「殺生物」は、活性が生物の表面への付着および汚損を防ぐのに十分である状況を含む。一つの態様において、殺生物官能性は、有機殺生物ブロックを用いて提供することができる。有機殺生物ブロックの使用は、いくつかの他のタイプの殺生物ブロック(例えば、heaving金属を含む殺生物基など)よりも一般に化学的見地から使用が容易であり、行政上の規制問題も少ないため、望ましいと考えられる。しかし、他の態様において、殺生物ブロックは金属などの一つまたは複数の無機殺生物剤など(例えば、カルボン酸の金属塩)を含んでいてもよい。
【0022】
コポリマーに結合された殺生物基の毒性は、これらの表面を汚損することになる水生生物の定着および/または成長を妨害または抑制するよう作用してもよい。「生物学的実体」または「生物」などは、水中環境(例えば、海洋環境)における汚損を引き起こす、または汚損に寄与する水生生物学的実体または生物を意味することに留意すべきである。コーティングされた表面上の生物学的実体の定着および/または成長の速度が、コーティングされていない表面上よりも低いように生物学的実体が殺生物ブロックを有するコポリマーと接触すると、成長が抑制されると考えられる。生物学的実体がコポリマーと接触すると、著しい数の生物学的実体が破壊されるか、または望ましくは実質的にすべて、もしくはすべての生物学的実体が破壊されると考えられる。当然のことながら、コポリマーは生物学的実体を実際に破壊することなく、単にコーティングされた表面上に沈着するのを防止してもよい。
【0023】
コポリマーの汚損遊離活性は、水生生物のコーティングされた表面への付着を妨害もしくは抑制する、および/または生物の表面からの容易な遊離を促進するよう作用することもできる。本明細書に記載のコポリマーは、コポリマーに付着した生物学的実体に外部ずり応力をかけることで、これらの実体が一部または完全に除去されうるように、十分に低い表面エネルギーおよび十分に低い弾性率を有すると考えられる。外部ずり応力は水流(例えば、加圧洗浄器など)により、またはブラシもしくはサンドブラスターとの物理的接触から提供することができる。汚損を引き起こし、開示されたコポリマーを用いて汚損を防止しうる例は、アオノリの胞子、 カサネカンザシ(棲管虫)、細菌(bacteria)、ばい菌(germs)、微生物(microbes)、生物膜、甲殻類、棲管虫、サイプリド(Cyprid)幼生、草、ハマグリ、カキ、および/またはフジツボなどである。
【0024】
殺生物コポリマーの有効量を含む組成物または製剤を、殺生物および/または汚損遊離活性を有する防汚コーティングとして適用することができる。本明細書に記載の一つまたは複数の殺生物コポリマーを含むコーティングの適当な量を適用することにより、表面を処理してもよい。一つの態様において、生物学的実体の定着および/または成長を抑制し、同じく外部ずり応力をかけることによりそれらの容易な遊離を可能にするために有効な量のコーティング組成物を投与することが望ましいと考えられる。当業者には公知のとおり、表面または表面環境の特定のタイプに応じて、コーティングの適用様式は変動しうる。いくつかの場合には、組成物をブラシまたは噴霧機を用いて表面に適用してもよい。他の場合には、表面をコーティングに浸漬、沈下する、またはコーティングを注入してもよい。
【0025】
前述のとおり、本発明のコポリマー組成物は直鎖および/または分枝官能基付加コポリマー(例えば、グラフト重合により生成した分枝コポリマー)を含んでいてもよい。官能基付加コポリマーにおける官能基付加サブユニットの平均数は変動しうる。例えば、官能基付加コポリマーの直鎖型は20から約2000サブユニットを含んでいてもよく、50から2000サブユニットを有する直鎖型がコーティング適用のために非常に適している。アルコキシポリシロキサン化合物の環状型は、典型的には3から約12シロキサンサブユニットを含み、3から6ユニットを有する環状型が本発明のコポリマーを形成する際に非常に適している。
【0026】
実施例
防汚組成物のいくつかの実例を以下に示す。下記の態様は、防汚材料として用いることができる多くの組成物の見本にすぎないと考えられるべきで、いかなる様式でも限定的であると考えられるべきではない。
【0027】
実施例1
本実施例では、ポリビニルメチルシロキサン-b-ポリジメチルシロキサン-b-ポリ殺生物剤(PVMS-b-PDMS-b-ポリbio)を下記のとおりに合成した。無水1,3,5-トリビニル-1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサン(V3)およびヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)をシュレンク管に窒素パージ下で加え、続いて無水THFを加えた。次いでこの混合物にn-BuLiを加え、反応を周囲条件で6時間続けた。反応をクロロジメチルシランにより停止し、メタノール中で沈殿させた。溶媒をデカンテーションし、ポリマーを乾燥し、カールシュテット触媒(白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン複合体)を用いてトルエン中臭化アリルイソブチリルにより末端に官能基付加した。末端官能基付加ポリビニルメチルシロキサン-b-ポリジメチルシロキサンポリマーをシュレンクフラスコのトルエン中に加え、続いてメタクリル酸エステル官能基付加殺生物剤、トリクロサン(すなわち、図4に示すトリクロサンメタクリル酸エステル;「TRICL-MAE」)を加えた。触媒である臭化銅およびリガンドであるN,N,N',N',N''-ペンタメチル-ジエチレントリアミンをフラスコに加え、3回の凍結-解凍ポンプサイクルにかけた。凍結-解凍ポンプサイクルの後、温度を90℃に上げ、重合を48時間続けた。重合の後、ポリマーをメタノール中で沈殿させ、ろ過して回収した。ポリマーをトルエンに再度溶解し、中性アルミナカラムを通過させて触媒を除去し、メタノール中で沈殿させ、ろ過して乾燥した。
【0028】
図4は実施例1の合成戦略を示している。図5に示すとおり、コポリマーの構造をNMRで確認し、図6に示すとおり、分子量をゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で求めた。PVMS-b-PDMSとポリbioの比は約1:1から約1:4であった。
【0029】
実施例2
本実施例では、ポリイソプレン-b-ポリ殺生物剤(PI-b-ポリ殺生物剤;ただし「殺生物剤」はポリ-(TRICL-MAEである))を下記のとおりに合成した。無水イソプレンをシュレンク管に窒素パージ下で加え、続いて無水シクロヘキサンを加えた。次いでn-BuLiを加え、反応を周囲条件で4時間続けた。反応を臭化ブロモイソブチリルの添加により停止し、ポリマーをメタノール中で沈殿させた。溶媒をデカンテーションし、ポリマーを乾燥した。末端官能基付加ポリイソプレンをシュレンクフラスコのトルエン中に加え、続いてメタクリル酸エステル官能基付加殺生物剤、トリクロサン(TRICL-MAE)を加えた。触媒である臭化銅およびリガンドであるN,N,N',N',N''-ペンタメチル-ジエチレントリアミンをフラスコに加え、3回の凍結-解凍ポンプサイクルにかけた。凍結-解凍ポンプサイクルの後、温度を90℃に上げ、重合を48時間続けた。重合の後、ポリマーをメタノール中で沈殿させ、ろ過して回収した。ポリマーをトルエンに再度溶解し、中性アルミナカラムを通過させて触媒を除去し、メタノール中で沈殿させ、ろ過して乾燥した。
【0030】
図7は実施例2の合成戦略を示している。図8に示すとおり、コポリマーの構造をNMRで確認し、図9に示すとおり、分子量をゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で求めた。PIとポリ殺生物剤の比は約1:1から1:4、または望ましくは1:1から1:3であった。
【0031】
実施例3
本実施例では、ポリメチルヒドロシロキサン-コ-ポリジメチルシロキサン-g-ポリメタクリル酸エステル殺生物剤を下記のとおりに合成した。ポリメチルヒドロシロキサン-コ-ポリジメチルシロキサン(HMS501、Gelest)および臭化アリルイソブチリルをフラスコ中の無水トルエンに窒素下で加え、カールシュテット触媒をこの混合物に加えた。温度を90℃に上げ、反応を8時間続けた。反応後、溶媒を蒸発させ、イソブチリル官能基付加したHMS 501をシュレンク管に窒素パージ下で加え、続いて無水THFを加えた。触媒である臭化銅およびリガンドであるN,N,N',N',N''-ペンタメチル-ジエチレントリアミンをフラスコに加え、3回の凍結-解凍ポンプサイクルにかけた。凍結-解凍ポンプサイクルの後、温度を90℃に上げ、重合を48時間続けた。重合の後、ポリマーをメタノール中で沈殿させ、ろ過して回収した。ポリマーをトルエンに再度溶解し、中性アルミナカラムを通過させて触媒を除去し、メタノール中で沈殿させ、ろ過して乾燥した。図10は実施例3の合成戦略を示している。
【0032】
図11〜16は防汚材料として用いてもよい他の例示的コポリマーを示している。図11はポリイソプレン-b-PDMS-b-ポリ殺生物剤-コ-ポリメタクリル酸メトキシエチルを示している。図12はポリイソプレン-b-PDMS-b-ポリ殺生物剤を示している。図13はポリイソプレン-b-PDMS-b-ポリアクリル酸亜鉛-コ-ポリメタクリル酸メトキシエチルを示している。図13に示す亜鉛原子はClイオンなどの任意の適当なリガンドに結合してもよい。図14はポリイソプレン-b-ポリメタクリル酸シロキサン-コ-ポリ殺生物剤を示している。図15はポリブタジエン-b-ポリメタクリル酸シロキサン-コ-ポリ殺生物剤を示している。図16はポリブタジエン-b-PDMS-b-ポリ殺生物剤を示している。
【0033】
図11および13〜15において、ブロックFはランダムな殺生物剤ブロックおよび組織構造上のブロックのブロックであってもよく、または殺生物剤ブロックおよび組織構造上のブロックの規則正しいサブブロックを含んでいてもよい。殺生物剤ブロックおよび組織構造上のブロックを重合するために同じ基礎モノマー(メタクリル酸エステル)を用いると、このタイプのブロック配列が得られると考えられる。ブロックDはさらに強度および摩耗抵抗性をコポリマーに与えるゴム様ブロックであってもよい。ブロックEは所望の汚損遊離特性をコポリマーに与える別の組織構造上のブロックであってもよい。
【0034】
本明細書に開示された構造の多くはメタクリル酸エステルを用いて調製されるが、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの混合物も用いることができることが理解されるべきである。同様に、ブロックコポリマーにおけるブロックの組み合わせおよび順序は、いくつかの様式で変動しうる。例えば、本明細書に記載の構造は、ポリマーブロックを除去または付加して追加の構造を形成することにより、ブロックの配列を再度並べ替えることにより、または同じもしくは異なるポリマーの複数のブロックを任意の順に含むことにより、改変することもできる。
【0035】
実施例4
下記の構造を、臭化ウンデセニル(15g、52mmol)を、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)100ml中のトリクロサン(14.2g、61mmol)および炭酸カリウム(9g、61mmol)の溶液に加えることにより調製した。混合物を室温で終夜撹拌した。溶媒を蒸発により除去し、残渣をヘキサン100mlに溶解し、水で4回(4×100ml)洗浄した。有機層を分離し、無水MgSO4で乾燥し、蒸発させてウンデセニル官能基付加トリクロサンを無色の液体で得た。
【0036】
ウンデセニル官能基付加トリクロサン(18g、40mmol)およびメタクリルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(10g、10mmol)を無水トルエン100ml中のポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)(10g、5mmol)の溶液に加えた。カールシュテット触媒2〜3滴を混合物に加えた。反応を90℃で72時間続けた。反応後、混合物を中性アルミナカラムを通過させ、溶媒を蒸発により除去して、前述の構造(m=8、n=15、p=2、x=10から15、y=8、およびq=3)を有する無色粘稠材料を得た。粘稠材料をジビニル末端ポリジメチルシロキサン(Mn=700)によりカールシュテット触媒を用いて架橋した。
【0037】
実施例5
下記のグラフ1に示すいくつかの防汚材料について、汚損等級を調べた。汚損等級は以下に記載するとおり、Designation: D 3623-78a (Reapproved 1998), Standard Test Method for Testing Antifouling Panels in Shallow Submergence, American Society for Testing and Materialsを用いて調べた。藻類胞子および他の生物学的粘液以外の汚損がない各試験表面を100点とする。初期の汚損だけがある場合、汚損等級は95に下がる。熟成した汚損がある場合、汚損等級は95から個別に存在する数と、集落型によって覆われた表面積のパーセントとを差し引くことにより得られる。
グラフ1
【0038】
グラフ1に記載の防汚材料A〜Nを試験して、各材料の汚損等級を求めた。基準材料は市販の銅アブレーションコーティング(copper ablative coating)である。材料Aは実施例4で調製した架橋材料(m=8、n=15、p=2、x=10から15、y=8、およびq=3)である。材料Bは実施例4で調製した架橋材料(m=8、n=24、p=0、およびy=8)である。材料Cは商品名Interslick 425でInternational Paints UKから市販されている防汚コーティングである。材料Dは、2003年9月25日提出の「Antifouling Materials」なる標題の米国特許仮出願第60/506,077号の表1(ページ67〜70)からの架橋材料VI(以下、「架橋材料VI」と呼ぶ)(n=5およびp=3)である。架橋材料VIは第'077号特許出願の表1における隣接カラムに示された架橋剤を用いて架橋される。材料Eは架橋材料VI(n=6およびp=2)である。材料Fはy=0であることを除いて材料Aと同じである。材料Gはn=8であり、グリシジルエーテルを架橋剤として用いたことを除いて材料Fと同じである。材料Hはn=8およびp=0であることを除いて材料Fと同じである。材料Iは11炭素鎖を用いてトリクロサンをシロキサン骨格に結合する以外は材料Eと同じである。材料Jは架橋材料VI(n=7およびp=1)である。材料Kは架橋材料VI(n=4およびp=4)である。材料Lは3-アミノ-1-(2,4,6,-トリクロロフェニル)-2-ピラゾリン-5-オンで架橋する以外は材料Eと同じである。材料Mはプロピル基ではなくアクリル酸エステルを用いてトリクロサンをポリシロキサンに結合する以外は材料Eと同じである。材料Nは材料Mと10重量%遊離殺生物剤(トリクロサン)との混合物である。
【0039】
グラフ1に示す防汚材料A〜Nを用いて基質(金属)をコーティングし、海水(すなわち、フロリダ沖合のIndian River潟湖)中に80日間放置した。各コーティングの汚損等級を前述のとおりに計算した。
【0040】
特許請求の範囲において記載される用語は、以下の情報源の任意の一つまたは組み合わせによって付与された最も広い意味を特許請求の範囲の用語に与えるべきであることを理解して、辞書の関連する見出し項目を参考に決められるそれらの通常かつ慣例的な意味、当業者には一般に理解されている意味などを与えられるべきで、ただし以下だけは例外とする:(a)用語が本明細書においてその通常かつ慣例的な意味よりも広い様式で用いられる場合、その用語はその通常かつ慣例的な意味に加えて追加の広い意味を与えられるべきである、または(b)用語をその後に「本明細書において用いられる...は...を意味する」なる句、または同様の語句(例えば「本明細書において用いられる」、「本明細書においてこの用語は...を意味する」、「本明細書において定義されるとおり」、「本開示の目的のために、この用語は...を意味する」など)をつけて記載することにより、その用語が異なる意味を有すると明確に規定されている場合。特定の例への言及、「すなわち(i.e.)」の使用、「発明」なる用語の使用などは、例外(b)を引き起こす、またはそうではなく記載した特許請求の範囲の用語の範囲を限定することを意味するものではない。したがって、特許請求の範囲は、特定の特徴または特徴の組み合わせの一つの態様だけが本明細書において例示され、記載されているとしても、特許請求の範囲において明確に記載されているもの以外のいかなる特定の態様、特徴、または特徴の組み合わせに結びつけられておらず、また結びつけられていると解釈されるべきではない。したがって、添付の特許請求の範囲は先行技術および特許請求の範囲の用語の通常の意味を考慮してそれらの最も広い解釈を与えられると理解されるべきである。
【0041】
本明細書(すなわち、特許請求の範囲および明細書)において用いられる「the」、「a」および「an」などの冠詞は単数形または複数形を意味することができる。同様に、本明細書において用いられる「または(or)」なる用語は、先行する「いずれか(either)」(または「or」が排他的であると意味することを示す同様の語句;例えば、xまたはyの一つなど)を伴わずに用いられる場合、包括的であると解釈され、すなわち「or」が単独で出てくる場合は「and」および「or」の両方を意味する。同様に、本明細書において用いられる「および/または(and/or)」なる用語も、「and」および「or」の両方を意味するということで、包括的であると解釈される。「および/または」または「または」が3つ以上の項目群の接続詞として用いられる場合、この群は一項目のみ、項目すべて、または項目の任意の組み合わせもしくはいくつかを含むと解釈されるべきである。さらに、有する(have、having)、含む(include、including)などの明細書および特許請求の範囲中で用いられる用語は、含む(comprise、comprising)なる用語の類義語であると解釈されるべきである。
【0042】
そうではないことが示されている場合を除き、本明細書において用いられる寸法、物理的特性などを表しているものなどのすべての数または式は、すべての場合に「約」なる用語によって修飾されていることが理解される。少なくとも、等価物の理論の特許請求の範囲への適用を制限する意図はなく、「約」なる用語で修飾された、明細書または特許請求の範囲に記載の各数値パラメーターは、少なくとも記載された有効数字の数にてらし、また通常の丸め技術を適用することにより、解釈されるべきである。さらに、本明細書に開示されるすべての範囲は、その中に包含される任意およびすべての部分範囲を含むことが理解されるべきである。例えば、定められた範囲1から10は、最小値1から最大値10の間(両端を含む)の任意およびすべての部分範囲;すなわち、最小値1以上で始まり、最大値10以下で終わる(例えば、5.5から10)すべての部分範囲を含むと考えられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】防汚材料として、または防汚コーティングを形成するために用いるのに適したブロックコポリマーの一つの態様の概略図である。
【図2】防汚材料として、または防汚コーティングを形成するために用いるのに適したグラフトコポリマーの一つの態様の概略図である。
【図3】防汚材料として用いることができるコポリマーの様々な態様を形成するために合わせることができる、いくつかのオリゴマーの概略図である。
【図4】ポリビニルメチルシロキサン-b-ポリジメチルシロキサン-b-ポリ殺生物剤(「殺生物剤」はポリ-(TRICL-MAEである)を調製するための合成戦略の一つの態様を示す図である。
【図5】TRICL-MAE(5a);PVMS-b-PDMS(5b);および図4に示すとおりに調製したポリマー材料(5c)のNMR結果を示す図である。
【図6】図4に示すとおりに調製したポリマー材料のゲル透過クロマトグラフィ(GPC)結果を示す図である。
【図7】ポリイソプレン-b-ポリ殺生物剤を調製するための合成戦略のもう一つの態様を示す図である。
【図8】図7に示すとおりに調製した組成物のNMR結果を示す図である。
【図9】図7に示すとおりに調製した組成物のGPC結果を示す図である。
【図10】ポリメチルヒドロシロキサン-コ-ポリジメチルシロキサン-g-ポリ-(TRICL-MAE)を調製するための合成戦略を示す図である。
【図11】もう一つの態様に従い防汚材料として用いてもよいポリイソプレン-b-PDMS-b-ポリ-(TRICL-MAE)-コ-ポリメタクリル酸メトキシエチルを示す図である。
【図12】もう一つの態様に従い防汚材料として用いてもよいポリイソプレン-b-PDMS-b-ポリ-(TRICL-MAE)を示す図である。
【図13】もう一つの態様に従い防汚材料として用いてもよいポリイソプレン-b-PDMS-b-ポリアクリル酸亜鉛-コ-ポリメタクリル酸メトキシエチルを示す図である。
【図14】もう一つの態様に従い防汚材料として用いてもよいポリイソプレン-b-ポリ-(TRICL-MAE)-コ-ポリメタクリル酸シロキサンを示す図である。
【図15】もう一つの態様に従い防汚材料として用いてもよいポリブタジエン-b-ポリ-(TRICL-MAE)-コ-ポリメタクリル酸シロキサンを示す図である。
【図16】もう一つの態様に従い防汚材料として用いてもよいポリブタジエン-b-PDMS-b-ポリ-(TRICL-MAE)を示す図である。
【背景技術】
【0001】
関連特許出願に対する相互参照
本出願は、2003年9月25日提出の「防汚材料」なる標題の米国特許仮出願第60/506,077号、および2004年6月18日提出の「防汚材料」なる標題の米国特許仮出願第60/580,834号に対する優先権を主張し、これらはいずれもその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
背景
水中環境に曝露された表面の汚損は重大な問題である。例えば、船殻などの船の表面、石油掘削施設などの沖合の海洋構造物、海岸植物のための海水導管システム、ブイ、熱交換器、冷却塔、淡水化装置、ろ過膜、ドックなどはすべて、継続的に水に曝露されるとある程度の汚損を経験する可能性がある。船の場合、汚損は船の性能や機能を阻害することもある。例えば、汚損は燃料消費を実質的に増大させることもあれば、大規模で高頻度の整備を必要とすることもあり、これらはすべて操業の全般的コストを高める。汚損は船の速度、操作性、および航続距離も低下させ、性能の妨げとなる。別のレベルでは、地域に特異的な水生生物が世界を横断する船に付着すると、これらの生物が本来存在しない港に不必要に侵襲し、蔓延することになりうる。いくつかの場合には、このことが地域の水生生態系に重大な有害作用をもたらすこともある。
【0003】
長年にわたり、水中環境に曝露された構造物における汚損の影響を最小化しようとする多くの試みがなされている。例えば、そのような構造物上の水生生物の付着および/または成長を妨害するコーティング(例えば、塗料など)が開発されている。そのようなコーティングを形成するために用いることができる特定の材料が、米国特許仮出願第60/506,077号に記載されている。伝統的に、汚損の低減を目的とするコーティングの研究開発の二つの平行線が主体となっている。すなわち、殺生物剤含有コーティングと、低表面エネルギー「非付着(non-stick)」汚損遊離コーティングである。これらの取り組みの各々が成功の要素を生じているが、問題も引き続き存在する。
【0004】
残念ながら、特定の殺生物コーティングは環境問題に関連している(例えば、スズによる殺生物コーティングなど)。例えば、港に停泊中の塗料の細片および浸出は毒素の沈降集積につながり、標的としていない海洋生物(例えば、牡蠣)の損傷または破壊を引き起こしている。したがって、これらの殺生物コーティングの有効な代替物の開発が望まれている。
【発明の開示】
【0005】
概要
防汚材料として、または防汚材料中で用いるのに適したいくつかの化合物を本明細書において開示する。一般に、防汚材料とは、単独または他の材料もしくは物質との組み合わせで用いた場合に、殺生物および/または汚損遊離特性を提供しうる製品、薬剤、または組成物を意味する。本明細書に記載の防汚材料は、殺生物および/または汚損遊離特性を提供するいくつかの適当なコポリマー(例えば、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーなど)の一つまたは複数を含んでいてもよい。殺生物コーティングを形成するために用いることができる適当なポリマー材料の例を本明細書の図1〜2、4、7、および10〜16に示す。一つの態様において、コポリマーは炭素および/またはシリコーン骨格を有する一つまたは複数のゴム様ポリマー配列と、一つまたは複数の殺生物基を含む一つまたは複数のポリマー配列との組み合わせを含む。コポリマーは、コポリマーおよび/またはコポリマーを組み込む最終製品の構造(texture)または汚損遊離特性を増強する一つまたは複数のポリマー配列も含むことができる。コポリマーにおける架橋反応のための部位として役立ちうる官能基を含むことも望ましいと考えられる。コポリマーは5,000から100,000、または望ましくは10,000から75,000、または適宜10,000から50,000の分子量を有していてもよい。非常に一般的に、コポリマーは各ブロックが約10から100のサブユニットを含む複数のブロックを含む。
【0006】
一つの態様において、防汚材料は下記のコポリマーを含む:
(式中、mは0から100、0から65、10から75、またはより望ましくは20から50の整数であってもよく;
nは0から100、0から65、10から75、またはより望ましくは20から50の整数であってもよく;
mおよびnの少なくとも一つは≠0であり;
Inは開始基であり;
ECはエンドキャップ基であり;
xは1から200、10から150、25から100、またはより望ましくは35から75の整数であってもよく;
pは0から75、0から50、10から50、10から25、またはより望ましくは20から50の整数であってもよく;
R1は水素、メチル基、または他のアルキル基(例えば、低級アルキル基)であってもよく;
R2およびR3は独立に架橋基、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、またはいくつかの殺生物官能基の任意の一つであってもよく;
L1は連結基であってもよく;
R4は水中環境で汚損を引き起こす生物に対して毒性の殺生物基または切断されて(すなわち加水分解により)そのような殺生物基を生成することができる基であってもよく;
R5は汚損遊離基、アルキル基、または他の粘着防止(texturizing)基であってもよく;かつ
RxはHまたはMeである)。
【0007】
以下に示すもう一つの態様において、防汚材料は下記のコポリマーを含む:
(式中、mは0から100、0から65、またはより望ましくは0から50の整数であってもよく;
nは1から100、0から65、またはより望ましくは20から50の整数であってもよく;
xは1から200、1から150、またはより望ましくは1から100の整数であってもよく;
yは1から100、10から75、またはより望ましくは20から50の整数であってもよく;
Inは開始基であり;
ECはエンドキャップ基であり;
R1は水素または低級アルキル基(例えば、メチル基)であり;
R2は架橋基、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、またはフェニルであり;
L1は連結基であり;
R3は水中環境で汚損を引き起こす生物に対して毒性の殺生物基または切断されて(すなわち加水分解により)そのような殺生物基を提供することができる基であり;
R4およびR5は独立に架橋基、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、またはいくつかの殺生物官能基の任意の一つであってもよく;かつ
RxはHまたはMeである)。
【0008】
もう一つの態様において、殺生物組成物は下記の式を有するグラフトコポリマーを含んでいてもよい:
(式中、mは0から100、10から75、またはより望ましくは20から50の整数であってもよく;
yは1から100、10から75、またはより望ましくは20から50の整数であってもよく;
xは1から200、10から150、25から100、またはより望ましくは35から75の整数であってもよく;
Inは開始基であってもよく;
R1は水素またはメチル基であってもよく;
R2は架橋基、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、またはフェニルであってもよく;
L1は連結基であってもよく;
R4は水中環境で汚損を引き起こす生物に対して毒性の殺生物基または切断されて殺生物基を提供することができる基であってもよく;
RxはHまたはMeであり;かつ
ECはエンドキャップ基であってもよい)。
【0009】
下記の式を有するブロックコポリマーを含む殺生物組成物:
(式中、mは1から100、10から75、またはより望ましくは20から50の整数であってもよく;
xは1から200、10から150、25から100、またはより望ましくは35から75の整数であってもよく;
pは0から75、10から50、またはより望ましくは20から50の整数であってもよく;
Inは開始基であってもよく;
R1は水素またはメチル基であってもよく;
L1は連結基であってもよく;
R2は水中環境で汚損を引き起こす生物に対して毒性の殺生物基または切断されて殺生物基を提供することができる基であってもよく;
R3は汚損遊離基、アルキル基、または他の粘着防止基であってもよく;
RxはHまたはMeであり;かつ
ECはエンドキャップ基であってもよい)。
【0010】
もう一つの態様において、殺生物組成物は下記の式を有するブロックコポリマーを含んでいてもよい:
(式中、nは1から100、10から75、またはより望ましくは20から50の整数であってもよく;
xは1から200、10から150、25から100、またはより望ましくは35から75の整数であってもよく;
pは0から75、10から50、またはより望ましくは20から50の整数であってもよく;
Inは開始基であってもよく;
L1は連結基であってもよく;
R1およびR2は独立に架橋基、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、またはフェニルであってもよく;
R3は水中環境で汚損を引き起こす生物に対して毒性の殺生物基または切断されて殺生物基を提供することができる基であってもよく;
R4は汚損遊離基、アルキル基、または他の粘着防止基であってもよく;
RxはHまたはMeであり;かつ
ECはエンドキャップ基であってもよい)。
【0011】
もう一つの態様において、殺生物組成物は下記の式を有する構造を含んでいてもよい:
(式中、mは1から15、またはより望ましくは4から10の間の整数であってもよく;
nは2から50、5から25、またはより望ましくは10から16の間の整数であってもよく;
pは0から10、またはより望ましくは2から4の間の整数であってもよく;
xは5から25、またはより望ましくは10から15の間の整数であってもよく;
yは0から20、またはより望ましくは3から11の間の整数であってもよく;かつ
qは2から15、2から10、またはより望ましくは2から5の間の整数であってもよい)。
【0012】
本明細書において用いられる「架橋基」なる用語は、ポリマーを架橋するために別の化学部分と反応することができる官能基を含む置換基を意味する。本明細書において用いられる「開始基」(「In」)なる用語は、重合を開始するために用いた反応の結果、コポリマーの末端に付加された置換基を意味する。本明細書において用いられる「エンドキャップ基」(「EC」)なる用語は、重合を停止する反応の結果、コポリマーの末端に付加された置換基を意味する。開始基(「In」)および/またはエンドキャップ基はコポリマーの物理化学的性質および特徴を変える、または影響をおよぼす官能基を含んでいてもよい。しかし、ほとんどの場合、開始基およびエンドキャップ基は、これらがコポリマーの全般的な物理特性にいかなる著しい影響も持たないように選択される(例えば、水素原子、低級アルキル基またはトリメチルシリル基の導入)。
【0013】
詳細な説明
一般に、本明細書に記載の防汚材料は、コポリマーに殺生物および/または汚損遊離活性を提供するいくつかのブロック配列を含むコポリマーを含む。防汚材料の様々な態様を独立に(例えば、単一のコーティング層として)または他の材料(例えば、塗料色素など)との組み合わせで用いて、水中環境(例えば、海洋環境、淡水環境など)に曝露された構造物および他の表面が経験する汚損の量を低減することができる。多くの場合、防汚材料を含むコーティング材料の組成物は、硬化剤、架橋開始剤などの他の化合物を含んでいてもよい。
【0014】
本明細書に記載の対象は防汚の文脈で提供されるが、本明細書に記載の概念および特徴は当業者には認識されるとおり様々な材料、設定、および/または状況で用いうることが理解されるべきである。同様に、一つの態様の特徴、利点、特性などは、そうではないと述べられている場合を除き、任意の他の態様に適用して別の態様を形成しうることも理解されるべきである。
【0015】
多くのコポリマーの一つの特徴は異なるポリマー配列間の強い反発である。反発が十分に強い場合、ミクロ相分離が起こることがある。いくつかのコポリマーのこの特徴を利用して、防汚材料および防汚材料を組み込む製品を強化することができる。一つの態様において、コポリマー(例えば、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーなど)のミクロ相分離を用いて、コポリマーの表面に殺生物基を多く配置することにより、表面の殺生物活性を高めることができる。ミクロ相分離の程度は、全体のポリマーにおける様々なブロックポリマー配列の量を制御することにより制御することができる。
【0016】
図1〜3は防汚材料として用いることができるコポリマーの様々な態様を示す。図1に示すとおり、コポリマーは殺生物基(例えば、トリクロサン、4級アンモニウム、ピリジニウムなど)、汚損遊離基(例えば、ポリエーテル基などの親水性基、過フルロアルキル基などの疎水性基、重ベンゼン基などの液晶基、自己組織基など)などを含んでいてもよいいくつかのブロックポリマー配列を含んでいてもよい。他の態様において、コポリマーは汚損遊離特性を提供するポリマー配列(例えば、配列Aまたは配列C)と殺生物特性を提供するポリマー配列との組み合わせを含んでいてもよい。同様に、コポリマーにおいて用いる任意のポリマー配列は、一つまたは複数の架橋基(例えば、エポキシ、オレフィン、アミン、酸、アルデヒド、エステルなど)も含んでいてもよい。図1(および図11〜16)におけるポリマー配列の順は例示にすぎないことも理解されるべきである。例えば、図1において、ポリマー配列Aは配列BとCとの間に位置してもよく、または配列Cは配列AとBとの間に位置してもよく、他も同様である。図示したブロックはそれぞれ、コポリマー中に複数存在してもよい。
【0017】
一般に、配列Aはシリコーンまたは炭素骨格を含むゴム様ブロックである。配列Aはいかなる適当な直鎖または分枝炭素ポリマー配列またはポリシロキサンであってもよい。例えば、配列Aはイソプレン、ブタジエン、またはシリコーンモノマーを用いて調製することができる。多くの場合、配列Aはいかなる殺細胞または組織構造上の官能基も含まない。しかし、配列Aは、防汚材料の靭性に寄与することが多い(例えば、配列Aはポリシロキサンポリマーに対してさらなる強度または靭性を提供することができる)。他の態様において、配列Aは殺細胞および/または組織構造上の官能基を含むこともあり、得られるコポリマーに汚損遊離特性を提供しないこともある。
【0018】
図1の配列Bは一般に炭素ポリマー骨格および一つまたは複数の殺生物官能基を含む。配列Cは典型的には炭素ポリマー骨格と、コポリマーの防汚/汚損遊離特性を増強するために用いることができる一つまたは複数の組織構造上の官能基(例えば、メタクリル酸メトキシエチルなど)を含む。例えば、ブロック配列Cは、請求項4に示すとおり、ジメチルシロキサン、メチルヒドロシロキサン、ビニルメチルシロキサンをいかなる組み合わせで(例えば、ランダムまたはブロックなどで)含んでいてもよい。
【0019】
図2に関して、配列Bと配列Aとが一緒に接ぎ合わされているグラフトコポリマーを示している。図には示していないが、配列Cも配列Aおよび/またはBに接ぎあわされていてもよい(またはこれらのブロックの一つの末端に結合されていてもよい)。さらなる態様において、配列Aは配列Bに接ぎあわされていてもよく、または配列Bは配列Cに接ぎあわされていてもよく、他も同様である。ポリマー配列を並べてコポリマーを形成することができる様々な様式がある。図3は、組み合わせて本発明のコポリマーを形成することができるブロック配列を大まかに示している。一つの態様において、コポリマーは陰イオンおよび制御ラジカル重合の組み合わせを用いて合成することができる。
【0020】
前述のとおり、コポリマーを架橋してもよい。一つの態様において、架橋官能基を配列A上に提供する。もう一つの態様において、架橋官能基を配列Bおよび/またはC上に提供してもよい。もう一つの態様において、コポリマーを混合(すなわち、物理的に混ぜる)してもよい。当然のことながら、いかなる架橋コポリマーも他の架橋コポリマーと混合することができる。さらにもう一つの態様において、コポリマーを用いて相互浸透網目構造を形成してもよい。相互浸透網目構造は、一つまたは複数のモノマーを殺生物コポリマー、またはいくつかの場合にはコポリマーを調製するために用いる個々のポリマー(すなわち、ポリマーがコポリマーを形成するために他のポリマーに加えられていない)の周りで重合させて、コポリマーおよび/または個々のポリマーを緊密に保持するポリマー網目構造を形成することにより調製することができる。架橋官能基は、炭素骨格上の官能基(例えば、ビニル基など)、水素の官能性を持たせたシロキサンなどを用いて提供することができる。一つの態様において、架橋部分はプロピルグリシジルエーテル側鎖である。同様に、殺生物基はいくつかの適当な基のいずれであってもよい。例えば、一つの態様において、殺生物基はプロピル,2-(2',4'-ジクロロフェノキシ)-5-クロロフェニルエーテルである。
【0021】
本明細書に記載のコポリマーは、殺生物基の殺生物活性、ポリマー配列の汚損遊離活性、および/または両方の相乗的組み合わせにより、水性環境に曝露された表面の生物汚損を抑制することができる。本明細書において用いられる「殺生物」なる用語は単独または他の用語(例えば、基、活性など)との組み合わせで用いて、汚損を引き起こす水生生物に対して毒性の殺生物活性を意味する。「殺生物」なる用語の使用は生物が実際に死滅させられる必要はない。むしろ、「殺生物」は、活性が生物の表面への付着および汚損を防ぐのに十分である状況を含む。一つの態様において、殺生物官能性は、有機殺生物ブロックを用いて提供することができる。有機殺生物ブロックの使用は、いくつかの他のタイプの殺生物ブロック(例えば、heaving金属を含む殺生物基など)よりも一般に化学的見地から使用が容易であり、行政上の規制問題も少ないため、望ましいと考えられる。しかし、他の態様において、殺生物ブロックは金属などの一つまたは複数の無機殺生物剤など(例えば、カルボン酸の金属塩)を含んでいてもよい。
【0022】
コポリマーに結合された殺生物基の毒性は、これらの表面を汚損することになる水生生物の定着および/または成長を妨害または抑制するよう作用してもよい。「生物学的実体」または「生物」などは、水中環境(例えば、海洋環境)における汚損を引き起こす、または汚損に寄与する水生生物学的実体または生物を意味することに留意すべきである。コーティングされた表面上の生物学的実体の定着および/または成長の速度が、コーティングされていない表面上よりも低いように生物学的実体が殺生物ブロックを有するコポリマーと接触すると、成長が抑制されると考えられる。生物学的実体がコポリマーと接触すると、著しい数の生物学的実体が破壊されるか、または望ましくは実質的にすべて、もしくはすべての生物学的実体が破壊されると考えられる。当然のことながら、コポリマーは生物学的実体を実際に破壊することなく、単にコーティングされた表面上に沈着するのを防止してもよい。
【0023】
コポリマーの汚損遊離活性は、水生生物のコーティングされた表面への付着を妨害もしくは抑制する、および/または生物の表面からの容易な遊離を促進するよう作用することもできる。本明細書に記載のコポリマーは、コポリマーに付着した生物学的実体に外部ずり応力をかけることで、これらの実体が一部または完全に除去されうるように、十分に低い表面エネルギーおよび十分に低い弾性率を有すると考えられる。外部ずり応力は水流(例えば、加圧洗浄器など)により、またはブラシもしくはサンドブラスターとの物理的接触から提供することができる。汚損を引き起こし、開示されたコポリマーを用いて汚損を防止しうる例は、アオノリの胞子、 カサネカンザシ(棲管虫)、細菌(bacteria)、ばい菌(germs)、微生物(microbes)、生物膜、甲殻類、棲管虫、サイプリド(Cyprid)幼生、草、ハマグリ、カキ、および/またはフジツボなどである。
【0024】
殺生物コポリマーの有効量を含む組成物または製剤を、殺生物および/または汚損遊離活性を有する防汚コーティングとして適用することができる。本明細書に記載の一つまたは複数の殺生物コポリマーを含むコーティングの適当な量を適用することにより、表面を処理してもよい。一つの態様において、生物学的実体の定着および/または成長を抑制し、同じく外部ずり応力をかけることによりそれらの容易な遊離を可能にするために有効な量のコーティング組成物を投与することが望ましいと考えられる。当業者には公知のとおり、表面または表面環境の特定のタイプに応じて、コーティングの適用様式は変動しうる。いくつかの場合には、組成物をブラシまたは噴霧機を用いて表面に適用してもよい。他の場合には、表面をコーティングに浸漬、沈下する、またはコーティングを注入してもよい。
【0025】
前述のとおり、本発明のコポリマー組成物は直鎖および/または分枝官能基付加コポリマー(例えば、グラフト重合により生成した分枝コポリマー)を含んでいてもよい。官能基付加コポリマーにおける官能基付加サブユニットの平均数は変動しうる。例えば、官能基付加コポリマーの直鎖型は20から約2000サブユニットを含んでいてもよく、50から2000サブユニットを有する直鎖型がコーティング適用のために非常に適している。アルコキシポリシロキサン化合物の環状型は、典型的には3から約12シロキサンサブユニットを含み、3から6ユニットを有する環状型が本発明のコポリマーを形成する際に非常に適している。
【0026】
実施例
防汚組成物のいくつかの実例を以下に示す。下記の態様は、防汚材料として用いることができる多くの組成物の見本にすぎないと考えられるべきで、いかなる様式でも限定的であると考えられるべきではない。
【0027】
実施例1
本実施例では、ポリビニルメチルシロキサン-b-ポリジメチルシロキサン-b-ポリ殺生物剤(PVMS-b-PDMS-b-ポリbio)を下記のとおりに合成した。無水1,3,5-トリビニル-1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサン(V3)およびヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)をシュレンク管に窒素パージ下で加え、続いて無水THFを加えた。次いでこの混合物にn-BuLiを加え、反応を周囲条件で6時間続けた。反応をクロロジメチルシランにより停止し、メタノール中で沈殿させた。溶媒をデカンテーションし、ポリマーを乾燥し、カールシュテット触媒(白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン複合体)を用いてトルエン中臭化アリルイソブチリルにより末端に官能基付加した。末端官能基付加ポリビニルメチルシロキサン-b-ポリジメチルシロキサンポリマーをシュレンクフラスコのトルエン中に加え、続いてメタクリル酸エステル官能基付加殺生物剤、トリクロサン(すなわち、図4に示すトリクロサンメタクリル酸エステル;「TRICL-MAE」)を加えた。触媒である臭化銅およびリガンドであるN,N,N',N',N''-ペンタメチル-ジエチレントリアミンをフラスコに加え、3回の凍結-解凍ポンプサイクルにかけた。凍結-解凍ポンプサイクルの後、温度を90℃に上げ、重合を48時間続けた。重合の後、ポリマーをメタノール中で沈殿させ、ろ過して回収した。ポリマーをトルエンに再度溶解し、中性アルミナカラムを通過させて触媒を除去し、メタノール中で沈殿させ、ろ過して乾燥した。
【0028】
図4は実施例1の合成戦略を示している。図5に示すとおり、コポリマーの構造をNMRで確認し、図6に示すとおり、分子量をゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で求めた。PVMS-b-PDMSとポリbioの比は約1:1から約1:4であった。
【0029】
実施例2
本実施例では、ポリイソプレン-b-ポリ殺生物剤(PI-b-ポリ殺生物剤;ただし「殺生物剤」はポリ-(TRICL-MAEである))を下記のとおりに合成した。無水イソプレンをシュレンク管に窒素パージ下で加え、続いて無水シクロヘキサンを加えた。次いでn-BuLiを加え、反応を周囲条件で4時間続けた。反応を臭化ブロモイソブチリルの添加により停止し、ポリマーをメタノール中で沈殿させた。溶媒をデカンテーションし、ポリマーを乾燥した。末端官能基付加ポリイソプレンをシュレンクフラスコのトルエン中に加え、続いてメタクリル酸エステル官能基付加殺生物剤、トリクロサン(TRICL-MAE)を加えた。触媒である臭化銅およびリガンドであるN,N,N',N',N''-ペンタメチル-ジエチレントリアミンをフラスコに加え、3回の凍結-解凍ポンプサイクルにかけた。凍結-解凍ポンプサイクルの後、温度を90℃に上げ、重合を48時間続けた。重合の後、ポリマーをメタノール中で沈殿させ、ろ過して回収した。ポリマーをトルエンに再度溶解し、中性アルミナカラムを通過させて触媒を除去し、メタノール中で沈殿させ、ろ過して乾燥した。
【0030】
図7は実施例2の合成戦略を示している。図8に示すとおり、コポリマーの構造をNMRで確認し、図9に示すとおり、分子量をゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で求めた。PIとポリ殺生物剤の比は約1:1から1:4、または望ましくは1:1から1:3であった。
【0031】
実施例3
本実施例では、ポリメチルヒドロシロキサン-コ-ポリジメチルシロキサン-g-ポリメタクリル酸エステル殺生物剤を下記のとおりに合成した。ポリメチルヒドロシロキサン-コ-ポリジメチルシロキサン(HMS501、Gelest)および臭化アリルイソブチリルをフラスコ中の無水トルエンに窒素下で加え、カールシュテット触媒をこの混合物に加えた。温度を90℃に上げ、反応を8時間続けた。反応後、溶媒を蒸発させ、イソブチリル官能基付加したHMS 501をシュレンク管に窒素パージ下で加え、続いて無水THFを加えた。触媒である臭化銅およびリガンドであるN,N,N',N',N''-ペンタメチル-ジエチレントリアミンをフラスコに加え、3回の凍結-解凍ポンプサイクルにかけた。凍結-解凍ポンプサイクルの後、温度を90℃に上げ、重合を48時間続けた。重合の後、ポリマーをメタノール中で沈殿させ、ろ過して回収した。ポリマーをトルエンに再度溶解し、中性アルミナカラムを通過させて触媒を除去し、メタノール中で沈殿させ、ろ過して乾燥した。図10は実施例3の合成戦略を示している。
【0032】
図11〜16は防汚材料として用いてもよい他の例示的コポリマーを示している。図11はポリイソプレン-b-PDMS-b-ポリ殺生物剤-コ-ポリメタクリル酸メトキシエチルを示している。図12はポリイソプレン-b-PDMS-b-ポリ殺生物剤を示している。図13はポリイソプレン-b-PDMS-b-ポリアクリル酸亜鉛-コ-ポリメタクリル酸メトキシエチルを示している。図13に示す亜鉛原子はClイオンなどの任意の適当なリガンドに結合してもよい。図14はポリイソプレン-b-ポリメタクリル酸シロキサン-コ-ポリ殺生物剤を示している。図15はポリブタジエン-b-ポリメタクリル酸シロキサン-コ-ポリ殺生物剤を示している。図16はポリブタジエン-b-PDMS-b-ポリ殺生物剤を示している。
【0033】
図11および13〜15において、ブロックFはランダムな殺生物剤ブロックおよび組織構造上のブロックのブロックであってもよく、または殺生物剤ブロックおよび組織構造上のブロックの規則正しいサブブロックを含んでいてもよい。殺生物剤ブロックおよび組織構造上のブロックを重合するために同じ基礎モノマー(メタクリル酸エステル)を用いると、このタイプのブロック配列が得られると考えられる。ブロックDはさらに強度および摩耗抵抗性をコポリマーに与えるゴム様ブロックであってもよい。ブロックEは所望の汚損遊離特性をコポリマーに与える別の組織構造上のブロックであってもよい。
【0034】
本明細書に開示された構造の多くはメタクリル酸エステルを用いて調製されるが、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとの混合物も用いることができることが理解されるべきである。同様に、ブロックコポリマーにおけるブロックの組み合わせおよび順序は、いくつかの様式で変動しうる。例えば、本明細書に記載の構造は、ポリマーブロックを除去または付加して追加の構造を形成することにより、ブロックの配列を再度並べ替えることにより、または同じもしくは異なるポリマーの複数のブロックを任意の順に含むことにより、改変することもできる。
【0035】
実施例4
下記の構造を、臭化ウンデセニル(15g、52mmol)を、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)100ml中のトリクロサン(14.2g、61mmol)および炭酸カリウム(9g、61mmol)の溶液に加えることにより調製した。混合物を室温で終夜撹拌した。溶媒を蒸発により除去し、残渣をヘキサン100mlに溶解し、水で4回(4×100ml)洗浄した。有機層を分離し、無水MgSO4で乾燥し、蒸発させてウンデセニル官能基付加トリクロサンを無色の液体で得た。
【0036】
ウンデセニル官能基付加トリクロサン(18g、40mmol)およびメタクリルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(10g、10mmol)を無水トルエン100ml中のポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)(10g、5mmol)の溶液に加えた。カールシュテット触媒2〜3滴を混合物に加えた。反応を90℃で72時間続けた。反応後、混合物を中性アルミナカラムを通過させ、溶媒を蒸発により除去して、前述の構造(m=8、n=15、p=2、x=10から15、y=8、およびq=3)を有する無色粘稠材料を得た。粘稠材料をジビニル末端ポリジメチルシロキサン(Mn=700)によりカールシュテット触媒を用いて架橋した。
【0037】
実施例5
下記のグラフ1に示すいくつかの防汚材料について、汚損等級を調べた。汚損等級は以下に記載するとおり、Designation: D 3623-78a (Reapproved 1998), Standard Test Method for Testing Antifouling Panels in Shallow Submergence, American Society for Testing and Materialsを用いて調べた。藻類胞子および他の生物学的粘液以外の汚損がない各試験表面を100点とする。初期の汚損だけがある場合、汚損等級は95に下がる。熟成した汚損がある場合、汚損等級は95から個別に存在する数と、集落型によって覆われた表面積のパーセントとを差し引くことにより得られる。
グラフ1
【0038】
グラフ1に記載の防汚材料A〜Nを試験して、各材料の汚損等級を求めた。基準材料は市販の銅アブレーションコーティング(copper ablative coating)である。材料Aは実施例4で調製した架橋材料(m=8、n=15、p=2、x=10から15、y=8、およびq=3)である。材料Bは実施例4で調製した架橋材料(m=8、n=24、p=0、およびy=8)である。材料Cは商品名Interslick 425でInternational Paints UKから市販されている防汚コーティングである。材料Dは、2003年9月25日提出の「Antifouling Materials」なる標題の米国特許仮出願第60/506,077号の表1(ページ67〜70)からの架橋材料VI(以下、「架橋材料VI」と呼ぶ)(n=5およびp=3)である。架橋材料VIは第'077号特許出願の表1における隣接カラムに示された架橋剤を用いて架橋される。材料Eは架橋材料VI(n=6およびp=2)である。材料Fはy=0であることを除いて材料Aと同じである。材料Gはn=8であり、グリシジルエーテルを架橋剤として用いたことを除いて材料Fと同じである。材料Hはn=8およびp=0であることを除いて材料Fと同じである。材料Iは11炭素鎖を用いてトリクロサンをシロキサン骨格に結合する以外は材料Eと同じである。材料Jは架橋材料VI(n=7およびp=1)である。材料Kは架橋材料VI(n=4およびp=4)である。材料Lは3-アミノ-1-(2,4,6,-トリクロロフェニル)-2-ピラゾリン-5-オンで架橋する以外は材料Eと同じである。材料Mはプロピル基ではなくアクリル酸エステルを用いてトリクロサンをポリシロキサンに結合する以外は材料Eと同じである。材料Nは材料Mと10重量%遊離殺生物剤(トリクロサン)との混合物である。
【0039】
グラフ1に示す防汚材料A〜Nを用いて基質(金属)をコーティングし、海水(すなわち、フロリダ沖合のIndian River潟湖)中に80日間放置した。各コーティングの汚損等級を前述のとおりに計算した。
【0040】
特許請求の範囲において記載される用語は、以下の情報源の任意の一つまたは組み合わせによって付与された最も広い意味を特許請求の範囲の用語に与えるべきであることを理解して、辞書の関連する見出し項目を参考に決められるそれらの通常かつ慣例的な意味、当業者には一般に理解されている意味などを与えられるべきで、ただし以下だけは例外とする:(a)用語が本明細書においてその通常かつ慣例的な意味よりも広い様式で用いられる場合、その用語はその通常かつ慣例的な意味に加えて追加の広い意味を与えられるべきである、または(b)用語をその後に「本明細書において用いられる...は...を意味する」なる句、または同様の語句(例えば「本明細書において用いられる」、「本明細書においてこの用語は...を意味する」、「本明細書において定義されるとおり」、「本開示の目的のために、この用語は...を意味する」など)をつけて記載することにより、その用語が異なる意味を有すると明確に規定されている場合。特定の例への言及、「すなわち(i.e.)」の使用、「発明」なる用語の使用などは、例外(b)を引き起こす、またはそうではなく記載した特許請求の範囲の用語の範囲を限定することを意味するものではない。したがって、特許請求の範囲は、特定の特徴または特徴の組み合わせの一つの態様だけが本明細書において例示され、記載されているとしても、特許請求の範囲において明確に記載されているもの以外のいかなる特定の態様、特徴、または特徴の組み合わせに結びつけられておらず、また結びつけられていると解釈されるべきではない。したがって、添付の特許請求の範囲は先行技術および特許請求の範囲の用語の通常の意味を考慮してそれらの最も広い解釈を与えられると理解されるべきである。
【0041】
本明細書(すなわち、特許請求の範囲および明細書)において用いられる「the」、「a」および「an」などの冠詞は単数形または複数形を意味することができる。同様に、本明細書において用いられる「または(or)」なる用語は、先行する「いずれか(either)」(または「or」が排他的であると意味することを示す同様の語句;例えば、xまたはyの一つなど)を伴わずに用いられる場合、包括的であると解釈され、すなわち「or」が単独で出てくる場合は「and」および「or」の両方を意味する。同様に、本明細書において用いられる「および/または(and/or)」なる用語も、「and」および「or」の両方を意味するということで、包括的であると解釈される。「および/または」または「または」が3つ以上の項目群の接続詞として用いられる場合、この群は一項目のみ、項目すべて、または項目の任意の組み合わせもしくはいくつかを含むと解釈されるべきである。さらに、有する(have、having)、含む(include、including)などの明細書および特許請求の範囲中で用いられる用語は、含む(comprise、comprising)なる用語の類義語であると解釈されるべきである。
【0042】
そうではないことが示されている場合を除き、本明細書において用いられる寸法、物理的特性などを表しているものなどのすべての数または式は、すべての場合に「約」なる用語によって修飾されていることが理解される。少なくとも、等価物の理論の特許請求の範囲への適用を制限する意図はなく、「約」なる用語で修飾された、明細書または特許請求の範囲に記載の各数値パラメーターは、少なくとも記載された有効数字の数にてらし、また通常の丸め技術を適用することにより、解釈されるべきである。さらに、本明細書に開示されるすべての範囲は、その中に包含される任意およびすべての部分範囲を含むことが理解されるべきである。例えば、定められた範囲1から10は、最小値1から最大値10の間(両端を含む)の任意およびすべての部分範囲;すなわち、最小値1以上で始まり、最大値10以下で終わる(例えば、5.5から10)すべての部分範囲を含むと考えられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】防汚材料として、または防汚コーティングを形成するために用いるのに適したブロックコポリマーの一つの態様の概略図である。
【図2】防汚材料として、または防汚コーティングを形成するために用いるのに適したグラフトコポリマーの一つの態様の概略図である。
【図3】防汚材料として用いることができるコポリマーの様々な態様を形成するために合わせることができる、いくつかのオリゴマーの概略図である。
【図4】ポリビニルメチルシロキサン-b-ポリジメチルシロキサン-b-ポリ殺生物剤(「殺生物剤」はポリ-(TRICL-MAEである)を調製するための合成戦略の一つの態様を示す図である。
【図5】TRICL-MAE(5a);PVMS-b-PDMS(5b);および図4に示すとおりに調製したポリマー材料(5c)のNMR結果を示す図である。
【図6】図4に示すとおりに調製したポリマー材料のゲル透過クロマトグラフィ(GPC)結果を示す図である。
【図7】ポリイソプレン-b-ポリ殺生物剤を調製するための合成戦略のもう一つの態様を示す図である。
【図8】図7に示すとおりに調製した組成物のNMR結果を示す図である。
【図9】図7に示すとおりに調製した組成物のGPC結果を示す図である。
【図10】ポリメチルヒドロシロキサン-コ-ポリジメチルシロキサン-g-ポリ-(TRICL-MAE)を調製するための合成戦略を示す図である。
【図11】もう一つの態様に従い防汚材料として用いてもよいポリイソプレン-b-PDMS-b-ポリ-(TRICL-MAE)-コ-ポリメタクリル酸メトキシエチルを示す図である。
【図12】もう一つの態様に従い防汚材料として用いてもよいポリイソプレン-b-PDMS-b-ポリ-(TRICL-MAE)を示す図である。
【図13】もう一つの態様に従い防汚材料として用いてもよいポリイソプレン-b-PDMS-b-ポリアクリル酸亜鉛-コ-ポリメタクリル酸メトキシエチルを示す図である。
【図14】もう一つの態様に従い防汚材料として用いてもよいポリイソプレン-b-ポリ-(TRICL-MAE)-コ-ポリメタクリル酸シロキサンを示す図である。
【図15】もう一つの態様に従い防汚材料として用いてもよいポリブタジエン-b-ポリ-(TRICL-MAE)-コ-ポリメタクリル酸シロキサンを示す図である。
【図16】もう一つの態様に従い防汚材料として用いてもよいポリブタジエン-b-PDMS-b-ポリ-(TRICL-MAE)を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式を有するブロックコポリマーを含む殺生物組成物:
式中、mは0から100の整数であり;
nは0から100の整数であり;
mおよびnの少なくとも一つは≠0であり;
Inは開始基であり;
aは0または1であり;
bは0または1であり;
xは1から200の整数であり;
pは0から75の整数であり;
R1は水素またはメチル基であり;
R2およびR3は独立に架橋基、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、またはフェニルであり;
L1は連結基であり;
R4は水中環境で汚損を引き起こす生物に対して毒性の殺生物基または切断されて殺生物基を提供することができる基であり;
R5は汚損遊離基、アルキル基、または他の粘着防止(texturizing)基であり;
RxはHおよび/またはMeであり;かつ
ECはエンドキャップ基である。
【請求項2】
R4が下記である、請求項1記載の殺生物組成物:
式中、cは0または1であり、かつアルキレンは2から20炭素原子を有する。
【請求項3】
L1が下記である、請求項1記載の殺生物組成物:
式中、R6およびR7は独立に水素または低級アルキルである。
【請求項4】
R5が下記で表される式を有するブロックまたはランダムポリマーユニットである、請求項1記載の殺生物組成物:
式中、dは1から100の整数であり;
zは0から50の整数であり;
vは0から50の整数である。
【請求項5】
下記の式を有するグラフトコポリマーを含む殺生物組成物:
式中、mは0から100の整数であり;
yは1から100の整数であり;
xは1から200の整数であり;
Inは開始基であり;
R1は水素またはメチル基であり;
R2は架橋基、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、またはフェニルであり;
L2は連結基であり;
R4は水中環境で汚損を引き起こす生物に対して毒性の殺生物基または切断されて殺生物基を提供することができる基であり;
RxはHおよび/またはMeであり;かつ
ECおよびEC'はエンドキャップ基である。
【請求項6】
下記の式を有するブロックコポリマーを含む殺生物組成物:
式中、mは1から100の整数であり;
xは1から200の整数であり;
pは0から75の整数であり;
Inは開始基であり;
R1は水素またはメチル基であり;
L3は連結基であり;
R2は水中環境で汚損を引き起こす生物に対して毒性の殺生物基または切断されて殺生物基を提供することができる基であり;
R3は汚損遊離基、アルキル基、または他の粘着防止基であり;
RxはHおよび/またはMeであり;かつ
ECはエンドキャップ基である。
【請求項7】
R2が下記である、請求項6記載の殺生物組成物:
式中、cは0または1であり、かつアルキレン基は2から20炭素原子を有する。
【請求項8】
L1が下記である、請求項6記載の殺生物組成物:
式中、R6およびR7は独立に水素または低級アルキルであり;かつL2は連結基である。
【請求項9】
R3が下記で表される式を有するランダムまたはブロックポリマーユニットである、請求項6記載の殺生物組成物:
式中、dは1から100の整数であり;
zは0から50の整数であり;
vは0から50の整数である。
【請求項10】
下記の式を有するブロックコポリマーを含む殺生物組成物:
式中、nは1から100の整数であり;
xは1から200の整数であり;
pは0から75の整数であり;
Inは開始基であり;
L1は連結基であり;
R1およびR2は独立に架橋基、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、またはフェニルであり;
R3は水中環境で汚損を引き起こす生物に対して毒性の殺生物基または切断されて殺生物基を提供することができる基であり;
R4は汚損遊離基、アルキル基、または他の粘着防止基であり;
RxはHまたはMeであり;かつ
ECはエンドキャップ基である。
【請求項11】
下記を含む防汚組成物:
式中、nは1から1,000の整数であり;
mは2から1,000の整数であり;
R1、R2およびR3は独立にC1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリルまたはフェニルであり;
R4およびR14は独立に水素、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリルまたはフェニルであり;
R5はC1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、架橋基、水中環境で汚損を引き起こす生物に対して毒性の殺生物基、または汚損遊離基であり;
R15は水中環境で汚損を引き起こす生物に対して毒性の殺生物基であり;かつ
殺生物基は加水分解不可能な結合によってシリコーン骨格に結合されている。
【請求項12】
下記を含む殺生物組成物:
式中、mは1から15の間の整数であり;
nは2から50の間の整数であり;
pは0から10の間の整数であり;
xは5から25の間の整数であり;
yは0から20の間の整数であり;かつ
qは2から15の間の整数である。
【請求項1】
下記の式を有するブロックコポリマーを含む殺生物組成物:
式中、mは0から100の整数であり;
nは0から100の整数であり;
mおよびnの少なくとも一つは≠0であり;
Inは開始基であり;
aは0または1であり;
bは0または1であり;
xは1から200の整数であり;
pは0から75の整数であり;
R1は水素またはメチル基であり;
R2およびR3は独立に架橋基、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、またはフェニルであり;
L1は連結基であり;
R4は水中環境で汚損を引き起こす生物に対して毒性の殺生物基または切断されて殺生物基を提供することができる基であり;
R5は汚損遊離基、アルキル基、または他の粘着防止(texturizing)基であり;
RxはHおよび/またはMeであり;かつ
ECはエンドキャップ基である。
【請求項2】
R4が下記である、請求項1記載の殺生物組成物:
式中、cは0または1であり、かつアルキレンは2から20炭素原子を有する。
【請求項3】
L1が下記である、請求項1記載の殺生物組成物:
式中、R6およびR7は独立に水素または低級アルキルである。
【請求項4】
R5が下記で表される式を有するブロックまたはランダムポリマーユニットである、請求項1記載の殺生物組成物:
式中、dは1から100の整数であり;
zは0から50の整数であり;
vは0から50の整数である。
【請求項5】
下記の式を有するグラフトコポリマーを含む殺生物組成物:
式中、mは0から100の整数であり;
yは1から100の整数であり;
xは1から200の整数であり;
Inは開始基であり;
R1は水素またはメチル基であり;
R2は架橋基、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、またはフェニルであり;
L2は連結基であり;
R4は水中環境で汚損を引き起こす生物に対して毒性の殺生物基または切断されて殺生物基を提供することができる基であり;
RxはHおよび/またはMeであり;かつ
ECおよびEC'はエンドキャップ基である。
【請求項6】
下記の式を有するブロックコポリマーを含む殺生物組成物:
式中、mは1から100の整数であり;
xは1から200の整数であり;
pは0から75の整数であり;
Inは開始基であり;
R1は水素またはメチル基であり;
L3は連結基であり;
R2は水中環境で汚損を引き起こす生物に対して毒性の殺生物基または切断されて殺生物基を提供することができる基であり;
R3は汚損遊離基、アルキル基、または他の粘着防止基であり;
RxはHおよび/またはMeであり;かつ
ECはエンドキャップ基である。
【請求項7】
R2が下記である、請求項6記載の殺生物組成物:
式中、cは0または1であり、かつアルキレン基は2から20炭素原子を有する。
【請求項8】
L1が下記である、請求項6記載の殺生物組成物:
式中、R6およびR7は独立に水素または低級アルキルであり;かつL2は連結基である。
【請求項9】
R3が下記で表される式を有するランダムまたはブロックポリマーユニットである、請求項6記載の殺生物組成物:
式中、dは1から100の整数であり;
zは0から50の整数であり;
vは0から50の整数である。
【請求項10】
下記の式を有するブロックコポリマーを含む殺生物組成物:
式中、nは1から100の整数であり;
xは1から200の整数であり;
pは0から75の整数であり;
Inは開始基であり;
L1は連結基であり;
R1およびR2は独立に架橋基、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、またはフェニルであり;
R3は水中環境で汚損を引き起こす生物に対して毒性の殺生物基または切断されて殺生物基を提供することができる基であり;
R4は汚損遊離基、アルキル基、または他の粘着防止基であり;
RxはHまたはMeであり;かつ
ECはエンドキャップ基である。
【請求項11】
下記を含む防汚組成物:
式中、nは1から1,000の整数であり;
mは2から1,000の整数であり;
R1、R2およびR3は独立にC1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリルまたはフェニルであり;
R4およびR14は独立に水素、C1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリルまたはフェニルであり;
R5はC1-C10アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、トルイル、キシリル、フェニル、架橋基、水中環境で汚損を引き起こす生物に対して毒性の殺生物基、または汚損遊離基であり;
R15は水中環境で汚損を引き起こす生物に対して毒性の殺生物基であり;かつ
殺生物基は加水分解不可能な結合によってシリコーン骨格に結合されている。
【請求項12】
下記を含む殺生物組成物:
式中、mは1から15の間の整数であり;
nは2から50の間の整数であり;
pは0から10の間の整数であり;
xは5から25の間の整数であり;
yは0から20の間の整数であり;かつ
qは2から15の間の整数である。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2007−521381(P2007−521381A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528148(P2006−528148)
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/031140
【国際公開番号】WO2005/030405
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(506102042)エヌディーエスユー リサーチ ファウンデーション (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/031140
【国際公開番号】WO2005/030405
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(506102042)エヌディーエスユー リサーチ ファウンデーション (2)
【Fターム(参考)】
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