防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンク
【課題】 地震や津波、洪水などタンク防液堤の外部からの災害に対して、座屈変形や浮上がりを防止し流されたりすることがなく、火災や液漏洩などに対しても安全性を向上させた構造の防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクを提供する。
【解決手段】 地中へ打込んだ複数の杭2と、該杭2上に打設した平版状基礎のコンクリート底版3と、該底版3外周に立設した筒体状の防液堤兼用のコンクリート側壁4とを一体化形成し、前記底版内面3aおよび前記側壁内面4aにライニング材6、7を設け、前記側壁4の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板5を設けたことを特徴とする。
【解決手段】 地中へ打込んだ複数の杭2と、該杭2上に打設した平版状基礎のコンクリート底版3と、該底版3外周に立設した筒体状の防液堤兼用のコンクリート側壁4とを一体化形成し、前記底版内面3aおよび前記側壁内面4aにライニング材6、7を設け、前記側壁4の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板5を設けたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、石油など危険物の液体を貯蔵する防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な平底円筒形鋼製の各種常圧タンク1は、従来例の図7に示すように、鋼製の底板2と鋼製の側板3と鋼製の屋根板4とからなり、そのタンクヤード5の周囲は矩形の防液堤6で囲われている。貯蔵液の出入管などの付属配管7は、側板3の下部から防液堤6を乗越えるように敷設されている。
このタンクヤード5の広さと防液堤6の高さは、地震などの災害や事故などによって貯蔵液が漏出する場合に備えて、タンク1内の貯蔵液全量を収容できるように設計されている。
【0003】
コンクリート製貯槽に関する従来の出願特許がある。
例えば本出願による特許文献1(特開平08−60894号公報)「PC貯槽の頂部構造」には、従来例1の図8に示すように、コンクリート側壁内部の鉛直方向と円周方向にPC鋼材7、8をそれぞれ配設するとともに、側壁内面にシールプレート11を設けたPC構造の側壁2と、該側壁上方に接続する鋼製屋根5を設けたPC貯槽1において、上記側壁内面上縁部に側リング部材4を設け、該側リング部材4全体の外周側に位置するコンクリート側壁内部にPC鋼材7、8を配設するとともに、該側リング部材4に屋根5を直接取付けて形成する構成が開示されている。
【0004】
さらに、本出願人による特許文献2(特開平09−12089号公報)「タンク防液堤の保護構造」には、従来例2の図9に示すように、リング状のフロート11と該フロート11から上方に向かって設けた壁材12とで防護堤3を形成し、該防護堤3を防液堤2の内側全周に隔接して非固定状態で地盤6に据え置いて設け、かつ上記防護堤3は、タンクから漏れた貯蔵液に対しては上記壁材12であふれさせることなく受け止めた状態で沈み、水又は液状化した水を含む土砂等の流体に対しては浮かぶ浮力を生じるように、フロート11の体積と防護堤3の重量を考慮して形成する構成が開示されている。
【0005】
特許文献3(特開2002−80091号公報)「地上タンクの防液堤」には、従来例3の図10に示すように、地上タンクの周囲に配置して地上タンクを囲む防液堤1の堤部2の全周の平面配置形状を略円状にし、かつ全周の堤部2を底板3と筒壁4とで一体に形成して連続させた構成が開示されている。
【0006】
特許文献4(特開2004−44712号公報)「地上タンクの補強構造」には、従来例4の図11(a)に示す地上タンク1、および図11(b)に示す高床式の地上タンク14に関して、地上タンク本体の側壁3の外周面に増し杭12と補強底版13に支持されたPC防液堤16を配置する構成が開示されている。
【0007】
特許文献5(特開2007−302281号公報)「地上構造物の津波対策工」には、従来例5の図12に示すように、地上に設置された構造物1の外側に、自立式の津波防護柵2を、高さH1、H2に設定して設置することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平08−60894号公報
【特許文献2】特開平09−12089号公報
【特許文献3】特開2002−80091号公報
【特許文献4】特開2004−44712号公報
【特許文献5】特開2007−302281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図7に示す従来一般的な鋼製タンク1のタンクヤード5の回りを囲う矩形の防液堤6は、漏出する貯蔵液の収容を想定してタンクヤード5の広さに応じて防液堤6の高さが定められているが、地震による地盤の液状化現象、豪雨や洪水などの災害、地震による津波で防液堤への災害は配慮が十分ではない。そのため、洪水や津波による防液堤の損傷や、タンク側板の変形や座屈、或いはタンクが浮いたり流されたりするなどの被害を生ずる心配があった。
【0010】
図8に示す特許文献1(特開平08−60894号公報)「PC貯槽の頂部構造」は、コンクリート側壁内部の鉛直方向と円周方向にPC鋼材7、8をそれぞれ配設したPC構造の側壁2の頂部構造について、構造が簡単で施工が容易で効率良く経済的に構築でき、かつ屋根等の荷重やモーメントに対して強い構造のPC貯槽であるが、基礎底版から側壁全体、および配管設備まで全体の震災耐用性についての開示はない。
【0011】
図9に示す特許文献2(特開平09−12089号公報)「タンク防液堤の保護構造」は、リング状のフロート11と壁材12とで防護堤3を形成することによって、地震発生時のタンクヤード地盤の液状化現象によって防液堤が沈下や傾斜、転倒、若しくは亀裂等損傷が生じても、タンクより漏洩した貯蔵液を外部に流出させないタンク防液堤の保護構造にしているが、地震による津波など防液堤外部からの災害に対応したものではなかった。
【0012】
図10に示す特許文献3(特開2002−80091号公報)「地上タンクの防液堤」は、地上タンクを囲む防液堤1の堤部2で、地上タンクが破壊されて流れ出てくる貯蔵液を受け止めるようにして杭基礎による支持をなくし、防液堤の構築に係るコストを下げるようにしたものであるが、地震による津波など防液堤外部からの災害に対応したものではなかった。
【0013】
図11の(a)、(b)に示す特許文献4(特開2004−44712号公報)「地上タンクの補強構造」は、地上タンク本体2の側壁3の外周面に増し杭12と補強底版13に支持されたPC防液堤16を配置して地上タンク1および高床式の地上タンク14を改築もしくは耐震補強するものであって、低温液体を貯蔵する二重殻低温タンクからの低温液体の漏洩防止構造に関するものである。
【0014】
図12に示す特許文献5(特開2007−302281号公報)「地上構造物の津波対策工」には、地上に設置された構造物1の外側に、高さH1、H2に設定されて設置される自立式の津波防護柵2、及びグランドアンカー、桁材、補強リブなどが開示されているが、タンク側面を覆うコンクリート壁体構造ではない。
【0015】
このように、従来の技術は、いずれも貯蔵液の漏洩に対応し、貯蔵液を受け止める安全性を主体とするタンク防液堤の構造としたものであって、地震や津波、洪水などによるタンク防液堤外部からの災害に対してタンクを保護する構造としては充分ではなかった。
【0016】
この発明は上述のような従来技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、地震や津波、洪水などタンク防液堤の外部からの災害に対して、タンクの座屈変形の防止や浮上がりの防止を図り、タンクが浮いたり流されたりすることがなく、さらに火災や液漏洩などに対しても安全性を向上させた構造の防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1の発明に係る防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、地中へ打込んだ複数の杭と、該杭上に打設した平版状基礎のコンクリート底版と、該底版外周に立設した筒体状の防液堤兼用のコンクリート側壁とを一体化形成し、前記底版内面および前記側壁内面にライニング材を設け、前記側壁の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板を設けたことを特徴とする。
【0018】
請求項2の発明に係る防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、請求項1記載のコンクリート側壁の内面に溝条を設け、この溝条に沿ってライニング材の溶接部を設けたことを特徴とする。
【0019】
請求項3の発明に係る防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、請求項1記載のコンクリート側壁の内面に内外二重張りのライニング材を設けたことを特徴とする。
【0020】
請求項4の発明に係る防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、請求項2記載の溝条の下部、または請求項3記載の二重張ライニング材の間隙の下部に、タンク外部に至る漏洩検出口を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明に係る防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、地中へ打込んだ複数の杭と、該杭上に打設した平版状基礎のコンクリート底版と、該底版外周に立設した筒体状の防液堤兼用のコンクリート側壁とを一体化形成し、前記底版内面および前記側壁内面にライニング材を設け、前記側壁の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板を設けたので、
地震による津波、洪水で浮いたり流されたりする移動によって、タンク側板が変形や座屈、象脚型座屈などで損傷を生じることがなく、海岸、埋め立て地、低地、河川、湖沼など、地盤が良くない場所においても、地震や津波、洪水などによって災害を受けることがない。
【0022】
請求項2の発明に係る防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、請求項1記載のコンクリート側壁の内面に溝条を設け、この溝条に沿ってライニング材の溶接部を設けたので、溝条内に溶接の裏当て材を設けたり、シールドガスを通したりして液密に確りとライニング形成することができる。
【0023】
請求項3の発明に係る防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、請求項1記載のコンクリート側壁の内面に内外二重張りのライニング材を設けたので、内側のライニング材は貯蔵液を収容し、外側のライニング材はコンクリート内壁面の液密性を確保して、二重安全のライニング構造となる。
【0024】
請求項4の発明に係る防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、請求項2記載の溝条の下部、または請求項3記載の二重張ライニング材の間隙の下部に、タンク外部に至る漏洩検出口を設けたので、タンク供用中であっても貯蔵液の漏洩を検出してメンテナンスを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクの全体側面説明図である。
【図2】常圧タンクに津波の荷重が働く状況を示す説明図である。
【図3】コンクリート防液堤の概要を示す一部を欠除した説明図である。
【図4】側壁下部近傍の第1の事例を示す一部を欠除した説明図である。
【図5】側壁下部近傍の第2の事例を示す一部を欠除した説明図である。
【図6】側壁上部近傍を示す一部を欠除した説明図である。
【図7】従来一般の常圧タンクを示す説明図である。
【図8】従来例1を示す説明図である。
【図9】従来例2を示す説明図である。
【図10】従来例3を示す説明図である。
【図11】従来例4を示す説明図である。
【図12】従来例5を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクの実施形態例について図1から図6を参照しながら説明する。本発明は下記の実施形態にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記の実施形態に変更(例えば構成要素の省略または付加、構成要素の形状の変更等)を加えることが出来るのはもちろんである。なお、図は概略を示すもので、一部のみを描き詳細構造は省略した。また、この構造は、新規のタンクに形成した場合を示すが、既設のタンクに採用しても良い。
【0027】
図1は防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンク1の全体側面説明図で、2は杭、3は底版、4は側壁、5は屋根板を示す。
複数の杭2を地中へ打込み、この杭2上に平版状基礎のコンクリート底版3を打設し、この底版3外周に筒体状の防液堤兼用のコンクリート側壁4を立設して一体化形成する。
底版3の内面3aに底部ライニング材6を張設し、側壁4の内面4aに側部ライニング材7を設けて液密構造とする。この側壁4の上端縁に、上部を気密に被覆する屋根板5を接続して設ける。
【0028】
貯蔵液8は石油などの危険物であるため、屋根板5には放爆構造5aを設けて、タンク内圧が上昇した時に爆発が生じないように、屋根板5の一部が開口する構造とする。
また、払い出すポンプ10はサブマージドポンプなどを使用し、側壁4を開口することなく屋根5から液を払い出し、異状時のサイホン化現象を防止するための緊急遮断弁11を設ける。
【0029】
図1に示したように、付属配管9は屋根5からとり、石油類の貯蔵液8は、タンク内に設置された油払出装置、例えばサブマージドポンプ10で屋根5より排出する。
このように、配管類は屋根5から立上げてとり、コンクリート側壁4には一切開口部を設けないようにするため、コンクリート側壁4には一切開口部がなく、側壁4の防液堤からの石油類、危険物の流出がない。
さらに、屋根5より立上がった配管6には、貯蔵液8がサイホン現象によって流出することがないように緊急遮断弁11を設置する。或いはサイホン切れをさせるための遠隔操作可能な開放弁を設置する。
【0030】
常圧タンクに隣接させる防液堤兼用側壁4は、内外からの荷重に強く、耐火性能を有するコンクリートを使用する。
コンクリート製の防液堤兼用側壁4は強度部材となり、その内面に鋼製側板ライニング材7、例えば厚さ3.2ミリメートル以上の鋼板を取り付け、液密及び気密機能を持たせる。
このように、鋼製のライニング材7とコンクリート構造の側壁4とで貯蔵液に対する気密性と液密性と耐久性を確保するとともに、内外からの荷重に対する防液堤としての機能をも確保させる。
従来のタンクの防液堤を、タンク側板に隣接する防液堤兼用の側壁4に形成したことで、石油類が直接に外部大気中へ漏洩することがない。
【0031】
さらに、杭2、基礎の底版3、側壁4を内部荷重に強いプレストレスト・コンクリートを使用して一体化した場合には、貯蔵液の荷重を支持するとともに、津波や洪水、風圧などの外圧を受けても耐久性があり、被害を防止することができる。
プレストレスト・コンクリート構造の側壁4は強度部材で貯蔵液を収容する機能を有するとともに、漏洩時の防液堤としての貯油機能を兼務しているため、周囲の保有空き地、タンクヤードを少なくすることができる。さらに、耐火性能として、例えば耐火時間2時間程度を有するので、隣接火災に対しても有効である。
【0032】
図2は、常圧タンクに津波の荷重が働く状況、地震による津波と側壁への水平波力の関係を示す。
12は津波、13は水平波力、14は鉛直波力である。
図の実線矢印のように、外部荷重として、例えば津波12が側壁4へ働いた場合、津波高さ(ηmax)が、タンク側壁正面で数倍に増幅され外圧、水平波力13(αηmax)として作用する。さらに、図の破線のように、タンクにかかる外圧は、津波高さ(ηmax)が、タンク側壁正面で数倍に増幅され、タンクを真上に引き上げる鉛直波力14(βηmax)が作用する。
この津波12による外圧、水平波力13(αηmax)と鉛直波力14(βηmax)によって、タンクが滑動、転倒、浮き上がり、座屈などの事例が報告されている。
【0033】
プレストレスト・コンクリート側壁の常圧タンクでは、側壁部に導入されたPC鋼材の緊張力によって外圧に強いコンクリート強度部材となっているので、津波12の被害を防止することができる。
外圧に強いプレストレスト・コンクリート側壁を、通常設置されている高さ、例えば1メートルより高く貯蔵液高さ10メートル程度とすることで、津波高さ(ηmax)が増幅された外圧、水平波力13(αηmax)にも耐えられる。この水平波力13(αηmax)によって、タンクには転倒モーメントが発生するが、杭2、基礎3、プレストレスト・コンクリート製側壁4が一体化された構造であるため、津波12に耐えられる。
さらに、従来の鋼製で小規模な常圧タンクでは、底板には浮き上がり防止用固定アンカーボルトを取り付けていないので簡単に浮いてしまい大きな災害となる恐れがあるが、プレストレスト・コンクリート製常圧タンクでは、杭2、基礎3、プレストレスト・コンクリート製側壁4が一体化された構造であるため、津波による鉛直波力14(βηmax)に十分耐えることができる。
【0034】
図3は、コンクリート防液堤の概要を示す。
コンクリート製よりなる側壁4は、内外の荷重に強い強度部材であると同時に、例えば耐火時間2時間程度の耐火性能を有する。このため、隣接火災及び万が一発生する自己火災に対しても十分の耐用性を有する。
コンクリート側壁の内面には、図のように、例えば垂直方法に隔離して複数本の溝条15を設け、この溝条15の下端部近傍には漏洩検出口16を設ける。
【0035】
図4は、側壁下部近傍の第1の事例を示す。
コンクリート側壁4の内面4aの溝条15に沿って側部ライニング材7を溶接する。溝条15の内部には、側部ライニング材7、7を突合せ溶接するための裏当材を収容させる。この溶接部17の下端部で底版3より上方位置に、側壁4を貫通してタンク外部に至る漏洩検出口16を設ける。
【0036】
図5は側壁下部近傍の第2の事例を示す。
コンクリート側壁4の内面4aに内外二重張りの側部ライニング材7a、7bを設け、枠部材18を介して内側の側部ライニング材7aを溶接部17で接続する。この内外二重張りのライニング材7a、7bの間隙下部の底版3より上方位置に、側壁4を貫通してタンク外部に至る漏洩検出口16を設ける。
【0037】
図6は側壁上部近傍を示す。
タンク屋根板5の要所に、タンク内圧によって開放させる扉状、或いは昇圧で一部開口する当て板状に形成した放爆構造5aを設ける。この放爆構造5aを設けることによって、貯槽内の圧力が急激に上昇した異状時に、圧力を速やかに逃がして、タンクの爆発や急激な火災、タンクの崩壊を防止する。
また、側壁4の頂部に消火剤配管19を設け、タンク屋根5の内部に向けて消火剤の放出口20を設ける。
手摺り21には堰板22を設け、その下部には雨水を排出するための排水口24を設ける。火災の際には、堰板22によって泡消火剤や消火放水は内側へ堰き止められるため、屋根板5上部に燃え上がる火炎に対して、消火を促進することができる。
さらに、コンクリート製の側壁4は、耐火性能を有し、自己火災に対しても周囲に拡大することなく垂直方向の火炎となるため、消防車が周囲に近づくことが可能なため消防放水による消火活動もやり易くなる。
【0038】
コンクリート側壁4の内面に取付けられる鋼製のライニング材7は、コンクリート打設前に、自立させて組み立て施工するため、板材同士の溶接部に対しては放射線透過試験などの非破壊検査を実施して溶接部の健全性を確認することができる。
コンクリート側壁4の外面の目視確認、ひび割れや油跡の検査によって、メンテナンス、修復対応を適宜行うことができる。
また、図4および図5に示した漏洩検出口16を使用した漏洩検査により、円周方向に区分された範囲について、タンク供用中に貯蔵液の漏洩の有無を検査することが可能となる。
さらに、タンク内部状態の確認は、貯蔵液を抜いて開放検査を行う。この際には、タンク底部及び側部の板厚測定や溶接部の磁粉探傷試験などを行い、タンク使用の安全性を確認する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
上記防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、従来の常圧タンクの防液堤に替えて採用するばかりでなく、地震時のタンクの耐震性能の向上、殊に外部からの津波対策などが望まれる貯蔵庫などの構築物にも適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1タンク
2杭
3底版
4側壁
5屋根板
6底部ライニング材
7側部ライニング材
8貯蔵液
9配管
10ポンプ
11緊急遮断弁
12津波
13水平波力
14鉛直波力
15溝条
16漏洩検出口
17溶接部
18枠部材
19消火剤配管
20消火剤放出口
21手摺り
22堰板
23雨水
24排水口
【技術分野】
【0001】
この発明は、石油など危険物の液体を貯蔵する防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な平底円筒形鋼製の各種常圧タンク1は、従来例の図7に示すように、鋼製の底板2と鋼製の側板3と鋼製の屋根板4とからなり、そのタンクヤード5の周囲は矩形の防液堤6で囲われている。貯蔵液の出入管などの付属配管7は、側板3の下部から防液堤6を乗越えるように敷設されている。
このタンクヤード5の広さと防液堤6の高さは、地震などの災害や事故などによって貯蔵液が漏出する場合に備えて、タンク1内の貯蔵液全量を収容できるように設計されている。
【0003】
コンクリート製貯槽に関する従来の出願特許がある。
例えば本出願による特許文献1(特開平08−60894号公報)「PC貯槽の頂部構造」には、従来例1の図8に示すように、コンクリート側壁内部の鉛直方向と円周方向にPC鋼材7、8をそれぞれ配設するとともに、側壁内面にシールプレート11を設けたPC構造の側壁2と、該側壁上方に接続する鋼製屋根5を設けたPC貯槽1において、上記側壁内面上縁部に側リング部材4を設け、該側リング部材4全体の外周側に位置するコンクリート側壁内部にPC鋼材7、8を配設するとともに、該側リング部材4に屋根5を直接取付けて形成する構成が開示されている。
【0004】
さらに、本出願人による特許文献2(特開平09−12089号公報)「タンク防液堤の保護構造」には、従来例2の図9に示すように、リング状のフロート11と該フロート11から上方に向かって設けた壁材12とで防護堤3を形成し、該防護堤3を防液堤2の内側全周に隔接して非固定状態で地盤6に据え置いて設け、かつ上記防護堤3は、タンクから漏れた貯蔵液に対しては上記壁材12であふれさせることなく受け止めた状態で沈み、水又は液状化した水を含む土砂等の流体に対しては浮かぶ浮力を生じるように、フロート11の体積と防護堤3の重量を考慮して形成する構成が開示されている。
【0005】
特許文献3(特開2002−80091号公報)「地上タンクの防液堤」には、従来例3の図10に示すように、地上タンクの周囲に配置して地上タンクを囲む防液堤1の堤部2の全周の平面配置形状を略円状にし、かつ全周の堤部2を底板3と筒壁4とで一体に形成して連続させた構成が開示されている。
【0006】
特許文献4(特開2004−44712号公報)「地上タンクの補強構造」には、従来例4の図11(a)に示す地上タンク1、および図11(b)に示す高床式の地上タンク14に関して、地上タンク本体の側壁3の外周面に増し杭12と補強底版13に支持されたPC防液堤16を配置する構成が開示されている。
【0007】
特許文献5(特開2007−302281号公報)「地上構造物の津波対策工」には、従来例5の図12に示すように、地上に設置された構造物1の外側に、自立式の津波防護柵2を、高さH1、H2に設定して設置することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平08−60894号公報
【特許文献2】特開平09−12089号公報
【特許文献3】特開2002−80091号公報
【特許文献4】特開2004−44712号公報
【特許文献5】特開2007−302281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図7に示す従来一般的な鋼製タンク1のタンクヤード5の回りを囲う矩形の防液堤6は、漏出する貯蔵液の収容を想定してタンクヤード5の広さに応じて防液堤6の高さが定められているが、地震による地盤の液状化現象、豪雨や洪水などの災害、地震による津波で防液堤への災害は配慮が十分ではない。そのため、洪水や津波による防液堤の損傷や、タンク側板の変形や座屈、或いはタンクが浮いたり流されたりするなどの被害を生ずる心配があった。
【0010】
図8に示す特許文献1(特開平08−60894号公報)「PC貯槽の頂部構造」は、コンクリート側壁内部の鉛直方向と円周方向にPC鋼材7、8をそれぞれ配設したPC構造の側壁2の頂部構造について、構造が簡単で施工が容易で効率良く経済的に構築でき、かつ屋根等の荷重やモーメントに対して強い構造のPC貯槽であるが、基礎底版から側壁全体、および配管設備まで全体の震災耐用性についての開示はない。
【0011】
図9に示す特許文献2(特開平09−12089号公報)「タンク防液堤の保護構造」は、リング状のフロート11と壁材12とで防護堤3を形成することによって、地震発生時のタンクヤード地盤の液状化現象によって防液堤が沈下や傾斜、転倒、若しくは亀裂等損傷が生じても、タンクより漏洩した貯蔵液を外部に流出させないタンク防液堤の保護構造にしているが、地震による津波など防液堤外部からの災害に対応したものではなかった。
【0012】
図10に示す特許文献3(特開2002−80091号公報)「地上タンクの防液堤」は、地上タンクを囲む防液堤1の堤部2で、地上タンクが破壊されて流れ出てくる貯蔵液を受け止めるようにして杭基礎による支持をなくし、防液堤の構築に係るコストを下げるようにしたものであるが、地震による津波など防液堤外部からの災害に対応したものではなかった。
【0013】
図11の(a)、(b)に示す特許文献4(特開2004−44712号公報)「地上タンクの補強構造」は、地上タンク本体2の側壁3の外周面に増し杭12と補強底版13に支持されたPC防液堤16を配置して地上タンク1および高床式の地上タンク14を改築もしくは耐震補強するものであって、低温液体を貯蔵する二重殻低温タンクからの低温液体の漏洩防止構造に関するものである。
【0014】
図12に示す特許文献5(特開2007−302281号公報)「地上構造物の津波対策工」には、地上に設置された構造物1の外側に、高さH1、H2に設定されて設置される自立式の津波防護柵2、及びグランドアンカー、桁材、補強リブなどが開示されているが、タンク側面を覆うコンクリート壁体構造ではない。
【0015】
このように、従来の技術は、いずれも貯蔵液の漏洩に対応し、貯蔵液を受け止める安全性を主体とするタンク防液堤の構造としたものであって、地震や津波、洪水などによるタンク防液堤外部からの災害に対してタンクを保護する構造としては充分ではなかった。
【0016】
この発明は上述のような従来技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、地震や津波、洪水などタンク防液堤の外部からの災害に対して、タンクの座屈変形の防止や浮上がりの防止を図り、タンクが浮いたり流されたりすることがなく、さらに火災や液漏洩などに対しても安全性を向上させた構造の防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1の発明に係る防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、地中へ打込んだ複数の杭と、該杭上に打設した平版状基礎のコンクリート底版と、該底版外周に立設した筒体状の防液堤兼用のコンクリート側壁とを一体化形成し、前記底版内面および前記側壁内面にライニング材を設け、前記側壁の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板を設けたことを特徴とする。
【0018】
請求項2の発明に係る防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、請求項1記載のコンクリート側壁の内面に溝条を設け、この溝条に沿ってライニング材の溶接部を設けたことを特徴とする。
【0019】
請求項3の発明に係る防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、請求項1記載のコンクリート側壁の内面に内外二重張りのライニング材を設けたことを特徴とする。
【0020】
請求項4の発明に係る防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、請求項2記載の溝条の下部、または請求項3記載の二重張ライニング材の間隙の下部に、タンク外部に至る漏洩検出口を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明に係る防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、地中へ打込んだ複数の杭と、該杭上に打設した平版状基礎のコンクリート底版と、該底版外周に立設した筒体状の防液堤兼用のコンクリート側壁とを一体化形成し、前記底版内面および前記側壁内面にライニング材を設け、前記側壁の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板を設けたので、
地震による津波、洪水で浮いたり流されたりする移動によって、タンク側板が変形や座屈、象脚型座屈などで損傷を生じることがなく、海岸、埋め立て地、低地、河川、湖沼など、地盤が良くない場所においても、地震や津波、洪水などによって災害を受けることがない。
【0022】
請求項2の発明に係る防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、請求項1記載のコンクリート側壁の内面に溝条を設け、この溝条に沿ってライニング材の溶接部を設けたので、溝条内に溶接の裏当て材を設けたり、シールドガスを通したりして液密に確りとライニング形成することができる。
【0023】
請求項3の発明に係る防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、請求項1記載のコンクリート側壁の内面に内外二重張りのライニング材を設けたので、内側のライニング材は貯蔵液を収容し、外側のライニング材はコンクリート内壁面の液密性を確保して、二重安全のライニング構造となる。
【0024】
請求項4の発明に係る防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、請求項2記載の溝条の下部、または請求項3記載の二重張ライニング材の間隙の下部に、タンク外部に至る漏洩検出口を設けたので、タンク供用中であっても貯蔵液の漏洩を検出してメンテナンスを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクの全体側面説明図である。
【図2】常圧タンクに津波の荷重が働く状況を示す説明図である。
【図3】コンクリート防液堤の概要を示す一部を欠除した説明図である。
【図4】側壁下部近傍の第1の事例を示す一部を欠除した説明図である。
【図5】側壁下部近傍の第2の事例を示す一部を欠除した説明図である。
【図6】側壁上部近傍を示す一部を欠除した説明図である。
【図7】従来一般の常圧タンクを示す説明図である。
【図8】従来例1を示す説明図である。
【図9】従来例2を示す説明図である。
【図10】従来例3を示す説明図である。
【図11】従来例4を示す説明図である。
【図12】従来例5を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクの実施形態例について図1から図6を参照しながら説明する。本発明は下記の実施形態にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記の実施形態に変更(例えば構成要素の省略または付加、構成要素の形状の変更等)を加えることが出来るのはもちろんである。なお、図は概略を示すもので、一部のみを描き詳細構造は省略した。また、この構造は、新規のタンクに形成した場合を示すが、既設のタンクに採用しても良い。
【0027】
図1は防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンク1の全体側面説明図で、2は杭、3は底版、4は側壁、5は屋根板を示す。
複数の杭2を地中へ打込み、この杭2上に平版状基礎のコンクリート底版3を打設し、この底版3外周に筒体状の防液堤兼用のコンクリート側壁4を立設して一体化形成する。
底版3の内面3aに底部ライニング材6を張設し、側壁4の内面4aに側部ライニング材7を設けて液密構造とする。この側壁4の上端縁に、上部を気密に被覆する屋根板5を接続して設ける。
【0028】
貯蔵液8は石油などの危険物であるため、屋根板5には放爆構造5aを設けて、タンク内圧が上昇した時に爆発が生じないように、屋根板5の一部が開口する構造とする。
また、払い出すポンプ10はサブマージドポンプなどを使用し、側壁4を開口することなく屋根5から液を払い出し、異状時のサイホン化現象を防止するための緊急遮断弁11を設ける。
【0029】
図1に示したように、付属配管9は屋根5からとり、石油類の貯蔵液8は、タンク内に設置された油払出装置、例えばサブマージドポンプ10で屋根5より排出する。
このように、配管類は屋根5から立上げてとり、コンクリート側壁4には一切開口部を設けないようにするため、コンクリート側壁4には一切開口部がなく、側壁4の防液堤からの石油類、危険物の流出がない。
さらに、屋根5より立上がった配管6には、貯蔵液8がサイホン現象によって流出することがないように緊急遮断弁11を設置する。或いはサイホン切れをさせるための遠隔操作可能な開放弁を設置する。
【0030】
常圧タンクに隣接させる防液堤兼用側壁4は、内外からの荷重に強く、耐火性能を有するコンクリートを使用する。
コンクリート製の防液堤兼用側壁4は強度部材となり、その内面に鋼製側板ライニング材7、例えば厚さ3.2ミリメートル以上の鋼板を取り付け、液密及び気密機能を持たせる。
このように、鋼製のライニング材7とコンクリート構造の側壁4とで貯蔵液に対する気密性と液密性と耐久性を確保するとともに、内外からの荷重に対する防液堤としての機能をも確保させる。
従来のタンクの防液堤を、タンク側板に隣接する防液堤兼用の側壁4に形成したことで、石油類が直接に外部大気中へ漏洩することがない。
【0031】
さらに、杭2、基礎の底版3、側壁4を内部荷重に強いプレストレスト・コンクリートを使用して一体化した場合には、貯蔵液の荷重を支持するとともに、津波や洪水、風圧などの外圧を受けても耐久性があり、被害を防止することができる。
プレストレスト・コンクリート構造の側壁4は強度部材で貯蔵液を収容する機能を有するとともに、漏洩時の防液堤としての貯油機能を兼務しているため、周囲の保有空き地、タンクヤードを少なくすることができる。さらに、耐火性能として、例えば耐火時間2時間程度を有するので、隣接火災に対しても有効である。
【0032】
図2は、常圧タンクに津波の荷重が働く状況、地震による津波と側壁への水平波力の関係を示す。
12は津波、13は水平波力、14は鉛直波力である。
図の実線矢印のように、外部荷重として、例えば津波12が側壁4へ働いた場合、津波高さ(ηmax)が、タンク側壁正面で数倍に増幅され外圧、水平波力13(αηmax)として作用する。さらに、図の破線のように、タンクにかかる外圧は、津波高さ(ηmax)が、タンク側壁正面で数倍に増幅され、タンクを真上に引き上げる鉛直波力14(βηmax)が作用する。
この津波12による外圧、水平波力13(αηmax)と鉛直波力14(βηmax)によって、タンクが滑動、転倒、浮き上がり、座屈などの事例が報告されている。
【0033】
プレストレスト・コンクリート側壁の常圧タンクでは、側壁部に導入されたPC鋼材の緊張力によって外圧に強いコンクリート強度部材となっているので、津波12の被害を防止することができる。
外圧に強いプレストレスト・コンクリート側壁を、通常設置されている高さ、例えば1メートルより高く貯蔵液高さ10メートル程度とすることで、津波高さ(ηmax)が増幅された外圧、水平波力13(αηmax)にも耐えられる。この水平波力13(αηmax)によって、タンクには転倒モーメントが発生するが、杭2、基礎3、プレストレスト・コンクリート製側壁4が一体化された構造であるため、津波12に耐えられる。
さらに、従来の鋼製で小規模な常圧タンクでは、底板には浮き上がり防止用固定アンカーボルトを取り付けていないので簡単に浮いてしまい大きな災害となる恐れがあるが、プレストレスト・コンクリート製常圧タンクでは、杭2、基礎3、プレストレスト・コンクリート製側壁4が一体化された構造であるため、津波による鉛直波力14(βηmax)に十分耐えることができる。
【0034】
図3は、コンクリート防液堤の概要を示す。
コンクリート製よりなる側壁4は、内外の荷重に強い強度部材であると同時に、例えば耐火時間2時間程度の耐火性能を有する。このため、隣接火災及び万が一発生する自己火災に対しても十分の耐用性を有する。
コンクリート側壁の内面には、図のように、例えば垂直方法に隔離して複数本の溝条15を設け、この溝条15の下端部近傍には漏洩検出口16を設ける。
【0035】
図4は、側壁下部近傍の第1の事例を示す。
コンクリート側壁4の内面4aの溝条15に沿って側部ライニング材7を溶接する。溝条15の内部には、側部ライニング材7、7を突合せ溶接するための裏当材を収容させる。この溶接部17の下端部で底版3より上方位置に、側壁4を貫通してタンク外部に至る漏洩検出口16を設ける。
【0036】
図5は側壁下部近傍の第2の事例を示す。
コンクリート側壁4の内面4aに内外二重張りの側部ライニング材7a、7bを設け、枠部材18を介して内側の側部ライニング材7aを溶接部17で接続する。この内外二重張りのライニング材7a、7bの間隙下部の底版3より上方位置に、側壁4を貫通してタンク外部に至る漏洩検出口16を設ける。
【0037】
図6は側壁上部近傍を示す。
タンク屋根板5の要所に、タンク内圧によって開放させる扉状、或いは昇圧で一部開口する当て板状に形成した放爆構造5aを設ける。この放爆構造5aを設けることによって、貯槽内の圧力が急激に上昇した異状時に、圧力を速やかに逃がして、タンクの爆発や急激な火災、タンクの崩壊を防止する。
また、側壁4の頂部に消火剤配管19を設け、タンク屋根5の内部に向けて消火剤の放出口20を設ける。
手摺り21には堰板22を設け、その下部には雨水を排出するための排水口24を設ける。火災の際には、堰板22によって泡消火剤や消火放水は内側へ堰き止められるため、屋根板5上部に燃え上がる火炎に対して、消火を促進することができる。
さらに、コンクリート製の側壁4は、耐火性能を有し、自己火災に対しても周囲に拡大することなく垂直方向の火炎となるため、消防車が周囲に近づくことが可能なため消防放水による消火活動もやり易くなる。
【0038】
コンクリート側壁4の内面に取付けられる鋼製のライニング材7は、コンクリート打設前に、自立させて組み立て施工するため、板材同士の溶接部に対しては放射線透過試験などの非破壊検査を実施して溶接部の健全性を確認することができる。
コンクリート側壁4の外面の目視確認、ひび割れや油跡の検査によって、メンテナンス、修復対応を適宜行うことができる。
また、図4および図5に示した漏洩検出口16を使用した漏洩検査により、円周方向に区分された範囲について、タンク供用中に貯蔵液の漏洩の有無を検査することが可能となる。
さらに、タンク内部状態の確認は、貯蔵液を抜いて開放検査を行う。この際には、タンク底部及び側部の板厚測定や溶接部の磁粉探傷試験などを行い、タンク使用の安全性を確認する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
上記防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンクは、従来の常圧タンクの防液堤に替えて採用するばかりでなく、地震時のタンクの耐震性能の向上、殊に外部からの津波対策などが望まれる貯蔵庫などの構築物にも適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1タンク
2杭
3底版
4側壁
5屋根板
6底部ライニング材
7側部ライニング材
8貯蔵液
9配管
10ポンプ
11緊急遮断弁
12津波
13水平波力
14鉛直波力
15溝条
16漏洩検出口
17溶接部
18枠部材
19消火剤配管
20消火剤放出口
21手摺り
22堰板
23雨水
24排水口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中へ打込んだ複数の杭と、該杭上に打設した平版状基礎のコンクリート底版と、該底版外周に立設した筒体状の防液堤兼用のコンクリート側壁とを一体化形成し、前記底版内面および前記側壁内面にライニング材を設け、前記側壁の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板を設けたことを特徴とする防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンク。
【請求項2】
コンクリート側壁の内面に溝条を設け、この溝条に沿ってライニング材の溶接部を設けたことを特徴とする請求項1記載の防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンク。
【請求項3】
コンクリート側壁の内面に内外二重張りのライニング材を設けたことを特徴とする請求項1記載の防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンク。
【請求項4】
溝条の下部、または二重張ライニング材の間隙の下部に、タンク外部に至る漏洩検出口を設けたことを特徴とする請求項2または3記載の防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンク。
【請求項1】
地中へ打込んだ複数の杭と、該杭上に打設した平版状基礎のコンクリート底版と、該底版外周に立設した筒体状の防液堤兼用のコンクリート側壁とを一体化形成し、前記底版内面および前記側壁内面にライニング材を設け、前記側壁の上端縁に接続して上部を被覆する鋼製の屋根板を設けたことを特徴とする防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンク。
【請求項2】
コンクリート側壁の内面に溝条を設け、この溝条に沿ってライニング材の溶接部を設けたことを特徴とする請求項1記載の防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンク。
【請求項3】
コンクリート側壁の内面に内外二重張りのライニング材を設けたことを特徴とする請求項1記載の防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンク。
【請求項4】
溝条の下部、または二重張ライニング材の間隙の下部に、タンク外部に至る漏洩検出口を設けたことを特徴とする請求項2または3記載の防液堤一体型鋼板ライニング常圧コンクリートタンク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−43688(P2013−43688A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184480(P2011−184480)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000147729)株式会社石井鐵工所 (67)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000147729)株式会社石井鐵工所 (67)
【Fターム(参考)】
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