説明

防湿段ボール箱

【課題】防湿性が確保された収納空間で収納物が収納でき、しかも収納物との擦れによりその防湿性が低下しないようにした、防湿性に優れる防湿段ボール箱の提供を目的とする。
【解決手段】プラスチックフィルム上に無機酸化物の蒸着薄膜層が少なくとも積層されている蒸着プラスチックフィルムが段ボールの少なくとも片面にそのプラスチックフィルム側を外側にして積層されていると共に、そのプラスチックフィルム表面の静摩擦係数が0.8以上である段ボール積層体を使用し、その蒸着プラスチックフィルムのプラスチックフィルム面が内面に位置するようにして製函されたものであることを特徴とする防湿段ボール箱。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防湿性が確保された収納空間で収納物が収納でき、しかも収納物との擦れによりその防湿性が低下しないようにした、防湿性に優れる防湿段ボール箱に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、板紙や段ボールなどの紙類は通気性があり、防湿性がない。従って、このような紙類を利用して製函される紙箱や段ボール箱はその収納空間で防湿性を確保することができない。
【0003】
紙箱や段ボール箱に収納される収納物には種々のものがあり、その中には防湿性が確保された環境の下での収納を要求されるものが数多くある。
【0004】
このような状況に対処するため、段ボール原紙を防湿紙にしたり、ポリエチレンフィルムをラミネートする方法(例えば、特許文献1参照。)や、段数の多い段ボールとしたり、生分解性層(PLA層)を設ける方法(例えば、特許文献2参照。)などが提案され、防湿性を確保するための試みが種々なさてれている。
【0005】
しかしながら、このような提案に係る段ボール箱ではその収納空間で満足した防湿性を確保することができなかった。また、防湿性が段ボール箱の収納空間である程度確保てきるようになったとしても、その内面と収納物との擦れにより防湿性が低下してしまうことがある。
このような状況の下、より優れた防湿性がその収納空間で確保でき、しかも収納物との擦れによりその防湿性が低下しないようにした段ボール箱の開発が強く望まれている。
【特許文献1】登録実用新案第3130190号公報
【特許文献2】登録実用新案第3132777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような状況に鑑みなされたものであり、防湿性が確保された収納空間で収納物が収納でき、しかも収納物との擦れによりその防湿性が低下しないようにした、防湿性に優れる防湿段ボール箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような課題を解決するためになされ、請求項1に記載の発明は、プラスチックフィルム上に無機酸化物の蒸着薄膜層が少なくとも積層されている蒸着プラスチックフィルムが段ボールの少なくとも片面にそのプラスチックフィルム側を外側にして積層されていると共に、そのプラスチックフィルム表面の静摩擦係数が0.8以上である段ボール積層体を使用し、その蒸着プラスチックフィルムのプラスチックフィルム面が内面に位置するようにして製函されたものであることを特徴とする防湿段ボール箱である。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、プラスチックフィルム上に無機酸化物の蒸着薄膜層が少なくとも積層されている蒸着プラスチックフィルムに第2のプラスチックフィルムがさらに積層されている積層フィルムが段ボールの少なくとも片面にその第2のプラスチックフィルム側を外側にして積層されていると共に、第2のプラスチックフィルム表面の静摩擦係数が0.8以上である段ボール積層体を使用し、その積層フィルムの第2のプラスチックフィルム面が内面に位置するようにして製函されたものであることを特徴とする防湿段ボール箱である。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の防湿段ボール箱において、前記無機酸化物の蒸着薄膜層はアンカーコート層を介してプラスチックフィルムの上に設けられていると共に、無機酸化物の蒸着薄膜層上には、水酸基含有高分子のみであるか、水酸基含有高分子と、1種以上の金属アルコキシド及び加水分解物を主剤とするガスバリア性コーティング剤からなるガスバリア性被膜層が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の防湿段ボール箱は、プラスチックフィルム上に無機酸化物の蒸着薄膜層が少なくとも積層されている蒸着プラスチックフィルムが段ボールの少なくとも片面にそのプラスチックフィルム側を外側にして積層されていると共に、そのプラスチックフィルム表面の静摩擦係数が0.8以上である段ボール積層体を使用し、その蒸着プラスチックフィルムのプラスチックフィルム面が内面に位置するようにして製函されたもの、あるいは、プラスチックフィルム上に無機酸化物の蒸着薄膜層が少なくとも積層されている蒸着プラスチックフィルムに第2のプラスチックフィルムがさらに積層されている積層フィルムが段ボールの少なくとも片面にその第2のプラスチックフィルム側を外側にして積層されていると共に、第2のプラスチックフィルム表面の静摩擦係数が0.8以上である段ボール積層体を使用し、その積層フィルムの第2のプラスチックフィルム面が内面に位置するようにして製函されたものなので、優れた防湿性が確保でき、その収納空間に収納される収納物における湿度劣化を確実に防止することができるようになると共に、収納物との擦れによりその防湿性が低下しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。図1〜図3には本発明の防湿段ボール箱を構成する段ボール積層体の概略の断面構成が示してある。
【0012】
図1に示す段ボール積層体10は、プラスチックフィルム11の一方の面に、アンカーコート層12を介して無機酸化物からなる蒸着薄膜層13と、ガスバリア性のオーバーコート層14とが順次積層されてなる蒸着プラスチックフィルム15が、段ボール16の片面に積層されていると共に、そのプラスチックフィルム11表面の静摩擦係数が0.8以上となっている構成のものである。
【0013】
一方、図2に示す段ボール積層体20は、プラスチックフィルム21の一方の面に、アンカーコート層22を介して、無機酸化物からなる蒸着薄膜層23と、ガスバリア性のオーバーコート層24とが順次積層されてなる蒸着プラスチックフィルム25が、段ボール26の片面にオーバーコート層24を介して積層されていると共に、蒸着プラスチックフィルム25のプラスチックフィルム21の他方の面に第2のプラスチックフィルム27が積層されていると共に、その第2のプラスチックフィルム27表面の静摩擦係数が0.8以上となっている構成のものである。
【0014】
そして、図3に示す段ボール積層体30は、プラスチックフィルム基材31の一方の面に、アンカーコート層32を介して無機酸化物からなる蒸着薄膜層33と、ガスバリア性のオーバーコート層34と、プラスチックフィルム層38とが順次積層されてなる蒸着プラスチックフィルム35が、段ボール36の片面にプラスチックフィルム38が接するようにして積層され、さらに蒸着プラスチックフィルム35のプラスチック基材31の上に第2のプラスチックフィルム37がさらに積層されていると共に、その第2のプラスチックフィルム37表面の静摩擦係数が0.8以上となっている構成のものである。
【0015】
本発明の防湿段ボール箱は、このような構成の段ボール積層体10、20、30を使用し、その蒸着プラスチックフィルム15、25、35のプラスチックフィルム11側、あ
るいは第2のプラスチックフィルム27、37側が内面に位置するようにして製函することにより得ることができる。
【0016】
蒸着プラスチックフィルム15、25、35を構成するプラスチックフィルム11、21、31は、後述する蒸着薄膜層13、23、33の透明性を生かすために透明であることが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどからなるポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどからなるポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ乳酸フィルムなどの生分解性プラスチックフィルムなどを挙げることができる。これらは、延伸されていても、未延伸であってもよいが、機械的強度や寸法安定性に優れるものが好ましい。これらの中では、耐熱性などの面から二軸方向に任意に延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく用いられる。またこのプラスチックフィルム11、21、31の表面には、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などからなる薄膜を設けておいてもよいし、薄膜との密着性をよくするために、前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、さらには薬品処理、溶剤処理などを施しておいてもよい。
【0017】
さらに、プラスチックフィルム11、21、31として用いられるポリエステルフィルムとしては、例えば、そのジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ナフタレンカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキシンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、シュウ酸、琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸などのオキシカルボン酸などを有するものが挙げられる。また、そのアルコール成分としてエチレングリコール、プロパンジオール、1,4ブタンジオール、1,6ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4シクロヘキサンジメタノールなどのポリオキシアルキレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族グリコールおよびそれらの誘導体などを有するものも挙げられる。
【0018】
このような成分を有するポリエステルの中では、二軸延伸特性などの成膜性、湿度特性、耐熱性、耐薬品性、低コスト性などを考慮し、ポリエチレンテレフタレートを主体としたものが好ましく用いられる。また、ポリエチレンテレフタレートの優れた諸物性を保てる範囲内で、他のアルコール成分を重合段階で主鎖に取り込むように制御して共重合させることにより、分子鎖内に回転障害の小さいセグメント(ソフトセグメント)を形成させ、外部からの衝撃や折り曲げによる力を分子鎖内のソフトセグメントにより吸収し、耐衝撃性、屈曲性に優れるものとしたものも好ましく用いられる。さらに、ポリエステルのカルボン酸成分およびアルコール成分の各々の50モル%以上がテレフタル酸、エチレングリコール、およびそれらの誘導体である共重合ポリエステルも好ましく用いられる。
【0019】
このようなプラスチックフィルム11、21、31の厚さは1μm以上であることが好ましい。より具体的には、段ボール箱を構成する段ボール積層体としての適性、さらには他の層を積層する場合も在ること、また、後述する無機酸化物からなる蒸着薄膜層13、23、33やガスバリア性のオーバーコート層14、24、34を構成する場合の加工性などを考慮すると、実用的には5〜200μm程度の厚さが好ましい。また、蒸着プラスチックフィルムの製造に係る量産性を考慮すれば、連続的に各層を形成できるように長尺状とすることが望ましい。
【0020】
アンカーコート層12、22、32は、プラスチックフィルム11、21、31と無機酸化物からなる蒸着薄膜層13、23、33との間の密着性を高め、高温高湿下でのデラミや段ボール箱を製函する時の罫線部分でのデラミが発生しないように設ける層である。
【0021】
このアンカーコート層12、22、32の構成材料としては、例えば、ポリオール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、イソシアネート樹脂、ポリオール樹脂、エーテル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂や、アルキルチタネートなどの接着剤などとして用いられる一般的な高分子樹脂が挙げられる。
上記したポリオール樹脂としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールなどの一般的なポリオール樹脂を用いることが可能である。
【0022】
そして、ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの低分子量ジオールの1種または2種以上と、例えば、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、酒石酸、ピメリン酸、セバチン酸、シュウ酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、ダイマー酸、トリメリット酸などの多価カルボン酸またはその誘導体との反応により生成されるポリエステルポリオール、ε−カプロラクトンなどの開環重合により生成するポリエステルポリオールなどを挙げることができる。
【0023】
また、ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのエーテル結合を含む多価アルコールを挙げることができる。
【0024】
さらに、アクリルポリオールとしては、アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られる高分子化合物もしくは、アクリル酸誘導体モノマーおよびその他のモノマーとを共重合させて得られる高分子化合物のうち、末端にヒドロキシル基をもつものである、エチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートなどのアクリル酸誘導体モノマーを単独で重合させたものや、スチレンなどのその他のモノマーを加え共重合させたアクリルポリオールを挙げることができる。
【0025】
アンカーコート層の構成材料中には、このようなポリオール樹脂と反応させてウレタン結合によりプラスチックフィルム11、21、31や無機酸化物からなる蒸着薄膜層13、23、33との密着性を高めるために、イソシアネート化合物を添加してもよい。
このイソシアネート化合物は、主に架橋剤もしくは硬化剤として作用する。このような作用をなすイソシアネート化合物としては、芳香族系のトリレンジイソシアネート(TDI)やジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、脂肪族系のキシレンジイソシアネート(XDI)やヘキサレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などのモノマー類や、これらの重合体、誘導体が用いられる。これらは単独で、または混合して用いればよい。
ポリオール樹脂とイソシアネート化合物の配合比は特に制限されるのもではないが、イソシアネート化合物が少なすぎると硬化不良になる場合があり、またそれが多すぎるとブロッキングなどが発生して加工上問題になることがある。従って、ポリオール樹脂とイソシアネート化合物の配合比は、イソシアネート化合物由来のイソシアネート基がポリオール由来の水酸基の50倍以下とすることが好ましい。特に好ましいのはイソシアネート基と水酸基が等量で配合される場合である。混合方法は、周知の方法が使用可能であり、特に限定されるものではない。
またこの複合物中に、任意の有機官能基を含むシランカップリング剤を添加して用いてもよい。例えばエチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどのシランカップリング剤或いはその加水分解物の1種ないしは2種以上を適宜加えてもよい。
【0026】
これらの中では、ポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基を持つものが特に好ましい。例えば、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランのようなイソシアネート基を含むもの、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−フェニルアミノプロピルトリメトキシシランのようなアミノ基を含むもの、さらにγ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシランやβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのようにエポキシ基を含むものなどで、これらを単独でまたは2種以上混合して用いればよい。
【0027】
これらのシランカップリング剤の添加は、一端に存在する有機官能基がポリオールとイソシアネート化合物からなる複合物中で相互に作用したり、ポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基を含むシランカップリング剤を用いることで共有結合をもたせることとなり、さらに強固なプライマー層を形成し、アルコキシ基などの加水分解によって生成したシラノール基が無機酸化物の蒸着薄膜層中の表面活性の高い水酸基などと強い相互作用を示して蒸着薄膜層とのより高い密着性の発現を可能とする。よって上記シランカップリング剤を金属アルコキシドとともに加水分解反応させたものを用いても構わない。また上記シランカップリング剤のアルコキシ基がクロロ基、アセトキシ基などになっていても何ら問題はなく、これらのアルコキシ基、クロロ基、アセトキシ基などが加水分解し、シラノール基を形成するものであれば添加して用いることができる。
ポリオール樹脂とシランカップリング剤の配合比は、重量比で1/1から100/1の範囲であることが好ましい。
また、溶解および希釈溶媒としては、上記した各構成成分を溶解および希釈できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、メチルエチルケトンなどのケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などを単独で、あるいは任意に配合させて用いることができる。しかし、シランカップリング剤を加水分解するために塩酸や酢酸などの水溶液を用いることがあるため、共溶媒としてイソプロピルアルコールなどと極性溶媒である酢酸エチルを任意に混合した溶媒を用いることがより好ましい。
またシランカップリング剤の配合時に反応を促進させるために反応触媒を添加しても一向に構わない。添加する触媒としては、反応性および重合安定性の点から塩化錫(SnCl2、SnCl4)、オキシ塩化錫(SnOHCl、Sn(OH)2Cl2)、錫アルコキシドなどの錫化合物が好ましい。これらの触媒は、配合時に直接添加してもよく、またメタノールなどの溶媒に溶かして添加してもよい。添加量は、少なすぎても多すぎても触媒効果が得られないため、シランカップリング剤に対してモル比で1/10〜1/10000程度の範囲が好ましいが、1/100〜1/2000の範囲であればより好ましい。
アンカーコート層12、22、32を形成するためのアンカーコート剤の調製法としては、例えば、シランカップリング剤とポリオール樹脂を混合し、溶媒、希釈剤を加えて任意の濃度に希釈した後、イソシアネート化合物と混合して複合溶液を調製する方法、または予めシランカップリング剤を溶媒中に混合した後にポリオール樹脂を混合させたものを溶媒、希釈剤を加え任意の濃度に希釈し、さらにイソシアネート化合物を加えて複合溶液を調製する方法などがある。
アンカーコート剤の調製に際しては、各種添加剤、例えば、3級アミン、イミダゾール誘導体、カルボン酸の金属塩化合物、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩などの硬化促進剤や、フェノール系、硫黄系、ホスファイト系などの酸化防止剤、レベリング剤、流動調整剤、触媒、架橋反応促進剤、充填剤などを必要に応じて添加することも可能である。
アンカーコート層12、22、32の厚さは、均一に塗膜が形成することができれば特に限定しない。しかし、乾燥膜厚は0.01〜2μm程度の範囲にあることが好ましい。厚さが0.01μmより薄いと均一な塗膜が得られ難くなって密着性が低下する場合がある。また厚さが2μmを越える場合は塗膜にフレキシビリティを保持させることができ難く、外力が加わることにより塗膜に亀裂を生じる恐れがあるため好ましくない。
【0028】
このアンカーコート層12、22、32の形成方法としては、例えばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法などや、ロールコート法、ナイフエッジコート法、グラビアコート法などの周知の薄膜形成方法を用いることができる。乾燥条件については、一般的に使用される条件が採用される。
【0029】
一方、無機酸化物からなる蒸着薄膜層13、23、33は、例えばイットリウムタンタルオキサイド、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム或いはそれらの混合物などの蒸着薄膜からなり、酸素、水蒸気などに対して優れたガスバリア性を示す層であればよい。
【0030】
無機酸化物からなる蒸着薄膜層13、23、33の厚さは、5〜300nm程度の範囲にあることが望ましい。厚さが5nm未満であると均一な膜が得られなかったり、膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア層としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また厚さが300nmを越える場合には薄膜にフレキシビリティを保持させることが難しくなり、成膜後に加わる折り曲げや引っ張りなどにより薄膜に亀裂を生じるおそれがある。より好ましくは、5〜100nm程度の厚さであればよい。
【0031】
このような無機酸化物からなる蒸着薄膜層13、23、33を形成する方法としては、真空蒸着法や、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを挙げることができる。但し生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。この際に使用する真空蒸着装置の加熱手段としては、電子線加熱方式、抵抗加熱方式、誘導加熱方式などが好ましい。また、薄膜と基材の密着性及び薄膜の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いることも可能である。また、蒸着薄膜の質を変えるために蒸着の際、酸素ガスなどを吹き込んだりする反応蒸着を行っても一向に構わない。
【0032】
オーバーコート層14、24、34は、より高度なガスバリア性を付与するために、また蒸着薄膜層13、23、33を物理的に保護するためにその上に設けるものである。
オーバーコート層14、24、34の構成材料としては、一般にガスバリア性があると言われている、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、ベントナイトなどを主成分としたガスバリア性のコーティング剤が用いられる。この中では、付与しようとするガスバリア性のレベルや加工適正、環境適正を考慮すると、PVAを主成分としたものが好ましく用いられる。
【0033】
より具体的には、水酸基含有高分子のみ、またはそれと、1種以上の金属アルコキシド及び加水分解物を主剤とするガスバリア性のコーティング剤を用いて形成される。以下、このガスバリア性のコーティング剤に含まれる各成分について更に詳細に説明する。
【0034】
水酸基含有高分子としてはPVAが好ましく用いられる。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものである。PVAとしては、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVAなどを含む。
【0035】
金属アルコキシドには種々のものがあるが、取り扱い性、コストなどを考えれば珪素のアルコキシドが好ましく用いられる。また、薄膜の柔軟性向上、密着性改善などの要求があれば、テトラアルコキシドに限ることなく、いわゆるシランカップリング剤を適宜選定して添加するようにしてもよい。
【0036】
上記したガスバリア性のコーティング剤の調製に際しては、加水分解したSi(OR14と水酸基をもつ水溶性高分子、R2Si(OR33をどの順番で混合してもガスバリア性などが発現するようになるが、特にSi(OR14とR2Si(OR33を別々に加水分解してから水溶性高分子に添加する方法は、SiO2の微分散およびSi(OR14の加水分解効率を考慮すると望ましい混合方法である(OR1、OR3は加水分解性基、R2は有機官能基)。
【0037】
この際、インキや接着剤との密着性、濡れ性、収縮によるクラック発生防止などを考慮して、イソシアネート化合物、コロイダルシリカやスメクタイトなどの粘土鉱物、安定化剤、着色剤、粘度調整剤などの公知の添加剤などを、ガスバリア性や耐水性の発現を阻害しない範囲で添加してもよい。
【0038】
また、オーバーコート層の形成方法としては、通常のコーティング方法を用いることができる。例えばディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット印刷法などであり、これらにより蒸着薄膜層の上にガスバリア性のコーティング剤からなる薄膜を設け、しかる後に乾燥させればよい。
【0039】
薄膜の厚さは、ガスバリア性のコーティング剤の組成や加工機の種類や加工条件などによって異なる。乾燥後の厚さが0.01μm未満の場合は、均一な塗膜が得られ難く十分なガスバリア性を得られない場合があるので好ましくない。また厚さが50μmを超える場合は膜にクラックが生じ易くなるため問題となる場合がある。好ましくは0.01〜50μmの範囲、より好ましくは0.1〜10μmの範囲にあればよい。特に、薄膜の乾燥が電子線の照射による場合は、オーバーコート層の膜厚と電子線エネルギーの度合、加工速度および除電とのバランスが重要となる。過度のエネルギー供給は帯電を引き起こし、その結果として起こる放電によりガスバリア性が損なわれる場合があるため注意を要する。
【0040】
ガスバリア性のコーティング剤からなる薄膜は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射などにより薄膜に熱をかけて、水分子をとばす方法で乾燥すればよい。
【0041】
本発明の防湿段ボール箱を構成する段ボール積層体は、例えば図1に示すように、上述したような構成になる蒸着プラスチックフィルム15が段ボール16の片面にそのプラスチックフィルム15側を外側にして積層されてなるものである。本発明の防湿段ボール箱を構成する段ボール積層体は、このような構成のもの(段ボール積層体10)に限定されるものではなく、例えば図2に示すような、プラスチックフィルム21上にアンカーコート層22と無機酸化物の蒸着薄膜層23とオーバーコート層24が順次積層されてなる蒸着プラスチックフィルム25が、蒸着薄膜層23が内側に位置するようにして第2のプラ
スチックフィルム27がさらに積層されている積層フィルムが段ボール26の片面にその第2のプラスチックフィルム27側を外側にして積層された構成のもの(段ボール積層体20)や、図3に示すような、プラスチックフィルム基材31上にアンカーコート層32と金属酸化物の蒸着薄膜層33とオーバーコート層34が順次積層されて、さらにオーバーコート層34上にプラスチックフィルム38が積層されてなる蒸着プラスチックフィルム35が、蒸着薄膜層33が内側に位置するようにして第2のプラスチックフィルム37がさらに積層されている積層フィルムが段ボール36の片面にその第2のプラスチックフィルム37側を外側にして積層された構成のもの(段ボール積層体30)であってもよい。
【0042】
段ボール積層体10、20、30の外側に位置するプラスチックフィルム11、第2のプラスチックフィルム27、37は、その静摩擦係数が0.8以上である必要がある。具体的には防滑処理されているプラスチックフィルムを用いる。
【0043】
防滑処理を行い、その静摩擦係数を0.8以上とすることによって、段ボール箱に収納されている収納物と段ボール箱の内面との過度の擦れを防ぎ、延いては蒸着プラスチックフィルム15、25、35でのピンホールやクラックの発生を防ぐことができ、ガスバリア性の劣化を防止することができるようになる。
【0044】
防滑処理には、大別して防滑剤をコーティングする方法とフィルム中の滑剤の混入割合を減少もしくは無くす方法などがある。
【0045】
防滑剤をコーティングする方法としては、例えば、アクリル共重合体エマルジョンを用いて所定の塗工手段で薄膜を形成する方法や、エチレン/酢酸ビニル系共重合体の固形樹脂を加熱溶融して樹脂の薄膜を形成する方法、さらには、アクリル/酢酸ビニル系共重合体、石油樹脂、ロジン(またはそのロジン誘導体)などの粘接着付与性樹脂などにより薄膜を形成する方法が採用できる。
【0046】
また、コーティングではなく、プラスチックフィルム成膜時に防滑剤を混練する方法も採用できる。この場合の防滑剤としては、天然ゴム、ラテックス、樹脂エマルジョンなどや、シリカ粉末やコロイダルシリカなどの無機粒子を挙げることができる。これらはプラスチックフィルム中に分散させて存在させればよい。
【0047】
プラスチックフィルムは滑り性を上げるために滑剤を入れることが一般的であるので、プラスチックフィルム成膜時に入れる滑剤を減らしたり、あるいは滑剤を全く入れないようにしてもよい。
【0048】
防滑性付与の程度は、表面の静摩擦係数を測定することによって判別することができる。防滑性が大きければ、静摩擦係数の値も大きくなる。一般的に段ボール原紙の静摩擦係数は0.60である。
【0049】
本発明の防湿段ボール箱を構成する段ボール積層体10、20、30は、前述のように、このような構成になる蒸着プラスチックフィルム15、25、35が段ボール16、26、36の少なくとも片面に積層されてなるものである(図1〜図3参照)。
【0050】
一般に段ボールは、「ライナー」と呼ばれる表裏側に位置する紙と、「中しん」と呼ばれる段をつける波型の部分が組み合わされてなるものである。そして、「ライナー」と「中しん」の組合せにより段ボールの種類が決定され、また、フルート(段)の数や重ね方によって厚さや強度が変わるが、蒸着プラスチックフィルム15、25、3を積層する段ボール16、26、36としてはいずれのものも用いることができる。
【0051】
このような段ボール16、26、36に蒸着プラスチックフィルム15、25、35を貼り合せるための接着剤としては、特に制限はないが、防湿性付与のための貼り合わせであることより、耐水性がありグラビアコーティング法などでコーティング可能である、ポリウレタン樹脂(溶剤系・エマルジョン系)接着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂エマルジョン接着剤、アクリル樹脂エマルジョン接着剤、α−オレフィン系接着剤などを適宜用いることができる。
【0052】
また蒸着プラスチックフィルムの積層に当たっては、蒸着プラスチックフィルムの無機酸化物の蒸着薄膜層の物理的な保護や機械適正の付与などを目的として、前述したように段ボール16、26、36以外に、1枚以上のプラスチックフィルム27、37を貼り合わせるようにしても構わない(図2、図3参照)。この場合、このようにして積層されてなる段ボール積層体20、30を用いて製函した時に、箱の内面に位置する第2のプラスチックフィルム27、37の静摩擦係数が0.8以上である必要がある。
【0053】
この貼り合わせに用いるプラスチックフィルム27、37として、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどからなるポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどからなるポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ乳酸フィルムなどの生分解性プラスチックフィルムなどが用いられる。これらは、延伸されたものでも、未延伸のものでもよい。
【0054】
また熱によって溶融して相互に融着する、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンもしくはポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂などの樹脂からなるフィルムを使用することもできる。厚さは用途によって適宜決められるが、好ましいのは10〜100μm程度である。
【0055】
本発明の防湿段ボール箱は、以上のような構成になる段ボール積層体を使用し、製函することにより得られる。
【0056】
以下、本発明の防湿段ボール箱を具体的な実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0057】
まず、下記のようにしてアンカーコート剤を調製した。
<アンカーコート剤の調製>
希釈溶媒(酢酸エチル)中に、γ−イソシアネートプロピルトリメチルシラン1重量部に対し、アクリルポリオールが10重量部となるようにそれぞれを混入させて攪拌した。ついでイソシアネート化合物としてXDIとIPDIの7対3混合物をアクリルポリオールの水酸基に対してイソシアネート化合物のイソシアネート基が等量となるように加えた。そしてこの混合溶液を添加化合物の総濃度として2重量%となるように希釈したものをアンカーコート剤とした。
【0058】
次に、下記のようにしてガスバリア性のオーバーコート剤を調製した。
<オーバーコートの調製>
下記A液とB液を重量%で60/40となるように混合したものをオーバーコート剤とした。
【0059】
(A液)
テトラエトキシシラン10.4gに0.1N塩酸89.6gを加え、30分間攪拌し加水分解させた固形分3重量%(SiO2換算)の加水分解溶液。
【0060】
(B液)
水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソピロピルアルコール=90:10、重量比)。
<実施例1>
プラスチックフィルムとして、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用い、その片面に、上記したアンカーコート剤からなる薄膜をグラビアコート法により塗布し、しかる後に乾燥させ、厚さ0.1μmのアンカーコート層を形成した。次いで電子線加熱方式による真空蒸着装置により、金属アルミニウムを蒸発させ、そこに酸素ガスを導入して、厚さ15nmの酸化アルミニウムからなる蒸着薄膜層をアンカーコート層の上に設けた。次いで上述したオーバーコート剤からなる薄膜をグラビアコート法により塗布し、しかる後に乾燥さ、厚さ0.4μmのオーバーコート層を形成し、ガスバリア性の蒸着プラスチックフィルムを得た。
【0061】
以上のようにして得られたガスバリア性の蒸着プラスチックフィルムのオーバーコート層と段ボールを、ポリウレタン樹脂溶剤系接着剤を介して貼り合わせ、段ボール積層体Aを得た。段ボールとしては、Aフルートの両面段ボールを用いた。
【0062】
そして、段ボール積層体Aを用い、第2のプラスチックフィルム側が内側に位置するようにして製函し、50cm四方の防湿段ボール箱Aを得た。
<実施例2>
蒸着プラスチックフィルムのプラスチックフィルム側に、滑剤の含有割合を減少させた厚さが60μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(第2のプラスチックフィルム)を貼り合せた後、オーバーコート層と段ボールの貼り合せた以外は実施例1と同様にして、段ボール積層体Bを得た。
【0063】
そして、段ボール積層体Bを用い、第2のプラスチックフィルム側が内側に位置するようにして製函し、50cm四方の防湿段ボール箱Bを得た。
<実施例3>
段ボールとの貼り合わせを、延伸ポリアミドフィルム(厚さ:15μm)を介して行った以外は実施例2と同様にして、段ボール積層体Cを得た。
【0064】
そして、段ボール積層体Cを用い、第2のプラスチックフィルム側が内側に位置するようにして製函し、50cm四方の防湿段ボール箱Cを得た。
<比較例1>
Aフルートの両面段ボール(段ボールD)を用い、50cm四方の段ボール箱Dを製函した。
<比較例2>
Aフルートの両面段ボールの片面に、厚さが60μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを貼り合せて、段ボール積層体Eを得た。
【0065】
そして、段ボール積層体Eを用い、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム側が内側に位置するようにして製函し、50cm四方の防湿段ボール箱Eを得た。
【0066】
得られた段ボール箱A〜Eに対して、ガスバリア性と静摩擦係数を測定し、さらにピンホールの発生状況をチェックし比較評価を行った。
<評価1>
ガスバリア性を評価するため、各段ボール箱を構成する段ボール積層体A、B、C、Eと段ボールDの水蒸気透過度(g/m2・day)を測定した。用いた装置は、Permatran−W(MOCON社製)である。測定結果を表1に示す。
<評価2>
滑り性を評価するため、各段ボール箱を構成する段ボール積層体A、B、C、Eと段ボールDの静摩擦係数を測定した(JIS K7125準拠)。用いた装置は、テンシロン万能試験機(ORIENTEC製)である。測定結果を表1に示す。
<評価3>
段ボール箱A〜Eに、塩化カルシウムが入った一般的なポリエチレン製の小袋を10袋入れ、振動装置に乗せて24時間振動させ、輸送テストを行った。その後、箱を開け、段ボール箱の内面側に位置する蒸着プラスチックフィルムにおけるピンホールの発生状況をチェックした。そのチェック結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

表からも分かるように、本発明に係る防湿段ボール箱は、防湿性に優れ、しかもその防湿性は収納物との擦れにより低下することがない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】段ボール積層体の概略の断面構成を示す説明図である。
【図2】他の段ボール積層体の概略の断面構成を示す説明図である。
【図3】さらに他の段ボール積層体の概略の断面構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0069】
11、21、31 プラスチックフィルム
12、22、32 アンカーコート層
13、23、33 無機酸化物からなる蒸着薄膜層
14、24、34、 オーバーコート層
15、25、35 蒸着プラスチックフィルム
16、26、36 段ボール
27、37 第2のプラスチックフィルム
38 プラスチックフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルム上に無機酸化物の蒸着薄膜層が少なくとも積層されている蒸着プラスチックフィルムが段ボールの少なくとも片面にそのプラスチックフィルム側を外側にして積層されていると共に、そのプラスチックフィルム表面の静摩擦係数が0.8以上である段ボール積層体を使用し、その蒸着プラスチックフィルムのプラスチックフィルム面が内面に位置するようにして製函されたものであることを特徴とする防湿段ボール箱。
【請求項2】
プラスチックフィルム上に無機酸化物の蒸着薄膜層が少なくとも積層されている蒸着プラスチックフィルムに第2のプラスチックフィルムがさらに積層されている積層フィルムが段ボールの少なくとも片面にその第2のプラスチックフィルム側を外側にして積層されていると共に、第2のプラスチックフィルム表面の静摩擦係数が0.8以上である段ボール積層体を使用し、その積層フィルムの第2のプラスチックフィルム面が内面に位置するようにして製函されたものであることを特徴とする防湿段ボール箱。
【請求項3】
前記無機酸化物の蒸着薄膜層はアンカーコート層を介してプラスチックフィルムの上に設けられていると共に、無機酸化物の蒸着薄膜層上には、水酸基含有高分子のみであるか、水酸基含有高分子と、1種以上の金属アルコキシド及び加水分解物を主剤とするガスバリア性のオーバーコート層が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の防湿段ボール箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−120646(P2010−120646A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293114(P2008−293114)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】