説明

防火防煙システム

【課題】
遮煙性能・遮炎性能を有するものでありながら、火災時に機械排煙等で区画部位を挟んで差圧が発生するであろう場合において、シャッターカーテンを良好に降下させて開口部を閉鎖させる。
【解決手段】
シート体10とシート体10の下端に装着された座板5とからなり、火災時に降下して開口部を閉鎖するシャッターカーテン1と、シャッターカーテン1に散水する散水手段7と、火災時にシャッターカーテン1の降下及び散水手段7による散水を制御する制御手段8と、からなり、前記シート体10は、通気性を有し、散水を受けることで気密性・耐火性を奏するシートであり、制御手段8は、降下中のシャッターカーテン1は通気性を有する一方全閉状態のシャッターカーテン1に気密性・耐火性を付与するように、シャッターカーテン1の降下及び散水を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火防煙システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
防火・防煙用シャッターのシートとして耐火クロスを使用する場合において、遮煙性能を向上させるためにシートに樹脂コーティングを施している。しかしながら、遮煙性能を向上させることはシートに通気性がないこととなるため、機械排煙の現場(大型ビル等の建物では、火災時に排煙機を使用して煙を積極的に排出することが行われる)にこのようなシートからなるシャッターカーテンを使用するとシャッターカーテンにより区画しようとする区域間に差圧が発生し、シャッターカーテンが膨らんでしまって、シャッターカーテン端部とガイドレールとの間に摩擦が発生してシャッターカーテンの閉鎖ができずに防火区画を形成できないおそれがある。
【0003】
また、シャッターカーテンの降下時あるいは開口部全閉後に差圧が発生した場合にシャッターカーテンが膨らんで座板が持ち上がってしまう場合があり、シャッターカーテン下端と床面との間に隙間が生じてしまい防火区画を形成できないという不具合がある。かかる不具合を防止するために、より重量のある座板を用いる必要性がある。しかしながら、座板重量を重くすることは、万が一、シャッターカーテン降下時に人が挟まれた場合に危険となる。
【特許文献1】特公昭54−18874
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、遮煙性能・遮炎性能を有するものでありながら、火災時に機械排煙等で区画部位を挟んで差圧が発生するであろう場合において、シャッターカーテンを良好に降下させて開口部を閉鎖させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を達成するために本発明が採用した防火防煙システムは、シート体とシート体の下端に装着された座板とからなり、火災時に降下し、着床して開口部を閉鎖するシャッターカーテンと、シャッターカーテンに散水する散水手段と、火災時にシャッターカーテンの降下及び散水手段による散水を制御する制御手段と、からなり、前記シート体は、通気性を有し、散水を受けることで気密性・耐火性を奏するシートであり、前記制御手段は、降下中のシャッターカーテンは通気性を有する一方全閉状態のシャッターカーテンに気密性・耐火性を付与するように、シャッターカーテンの降下及び散水を制御する。「通気性」とは、シャッターカーテン降下時に、差圧が発生するような場合であっても、シートを通して空気を流動させることで、シャッターカーテンが膨らむことがなく、良好にシャッターカーテンを降下させることができる程度の通気性をいう。この場合において、シート体は全体として通気性を有していれば、一部に通気性を有しない部分を含んでいてもよい。シートの吊り元側(開口部全閉時にケース内にある部分)は通気性を有していなくてもよい。「耐火性」は、火災時に、火災の熱によってシートが燃えることなく防火区画を形成して開口部を閉鎖する防火システムとしての機能を担保できる程度の耐火性である。「耐火性」には、シート自体が耐火性を有する場合と、それ自体では耐火性を有しないシートが含水することで耐火性を有する場合とが含まれる。「耐火性を奏する」には、散水前の状態で所定の耐火性を有するシートが散水によりさらに耐火性が向上する場合を含む。シートが耐火性を備えることは、シートが遮熱性を備えることの前提条件である。ここで、「遮熱性」とは、空間を区画したシートが、一側の空間から他側の空間への熱の伝達を遮断する性能を意味するものである。本発明では、シートが含水することで遮熱性を奏するものである。
【0006】
特許文献1には、水供給手段による布地への水膜の形成、流れ落ちる水を貯留する桶状手段、が開示されている。しかしながら、特許文献1では、桶状手段に貯留される水の重量により布地の自動的な降下を行うものであって、降下中の布地に水幕を形成するものであって、降下時のシート体が通気性を有する本発明とは異質の技術思想である。
【0007】
1つの好ましい態様では、前記制御手段は火災検知によってシャッターカーテンを降下させ、シャッターカーテンの着床後に、散水手段による散水を開始する。また、他の態様では、前記制御手段は火災検知によってシャッターカーテンを降下させ、シャッターカーテンの着床前に、散水手段による散水を開始する。後者の態様では、例えば、シャッターカーテンの下端の座板が床面近傍まで降下した時点で散水を開始する。あるいは、散水手段による散水量をシャッターカーテンが降下するにつれて増量させていくように制御することで、シャッターカーテンの降下と同時に散水を開始してもよい。
【0008】
1つの好ましい態様では、前記座板は散水された水を貯留可能に構成されており、開口部閉鎖後において前記座板に貯留された水の重量によって座板と床面との間に隙間が形成されることを防止するように構成されている。1つの好ましい態様では、前記座板は、長さ方向に分割された複数の部分から構成されており、各部分が水を貯留可能である。好ましくは、前記各部分は、互いに重なり部を形成するような形状を有している。また、1つの好ましい態様では、シートの少なくとも下端部位は、互いに重なり部を形成する複数のシート部分から構成されており、該重なり部が脱出開口を形成する。座板が長さ方向に分割され、互いに重なり部を形成する複数の部分から構成される場合には、好ましくは、シートの重なり部は座板の部分の重なり部に対応している。
【発明の効果】
【0009】
通気性を有し、散水を受けることで気密性・耐火性を奏するシートを採用することで、シャッターカーテン降下時に、機械排煙等で差圧が発生するであろう場合であっても、降下するシートが通気するので、閉鎖完了まで差圧の発生を抑え、良好にシャッターカーテンを降下させることができる。気密性能・耐火性能が無いシートであっても、シートに散水することで気密性・耐火性をもたせることができ、遮煙性能・遮炎性能を出すことができる。
【0010】
座板が散水した水を貯留するように構成することで、シャッターカーテンが降下して開口部を閉鎖するまでは、比較的軽い座板が降下するので、挟まれの危険を防止する一方、開口部閉鎖後は、座板に散水した水を貯留することで、座板に水の重量を加えて座板の持ち上がりを防止する。
【0011】
座板を長さ方向に分割した複数の部分から構成するものでは、各部分はさらに軽量となるので、より安全性が向上する。また、座板を分割することで、開口が広い場合における施工性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る防火防煙システムの構成について説明する。防火防煙システムはシートシャッター装置から構成されており、建物開口部を開閉するシート状のシャッターカーテン1と、建物開口部の両端に立設されており、シャッターカーテン1の幅方向両端部をそれぞれ受け入れて案内する一対のガイドレール2と、シャッターカーテン1の上端が連結してあり、開口部幅方向に延出する巻取シャフト3と、建物開口部の上方に配設され、巻取シャフト3を内装するシャッターケース4と、を有する。シャッターカーテン1は、シート体10と、シート体10の幅方向左右両端に上下方向に間隔を存して設けた複数の抜け止めガイド体11と、シート体10の下端に設けた鋼製の座板部5と、からなる。
【0013】
防火防煙システムは、さらに、火災検知手段6、散水手段7と、火災検知に基づくシャッターカーテン1の下降、散水手段7による散水を制御する制御手段8、とを備えている。火災検知手段6として例示される煙感知器が火災時の煙を感知すると、火災検知信号が制御手段8に送信され、制御手段8は、所定の手順に従って、シャッターカーテン1の下降、散水手段7による散水を行う。制御手段8は、シャッターカーテン1の下降、散水手段7による散水を個別に制御する複数の制御手段から構成されていてもよい。
【0014】
巻取シャフト3は開閉機9によって回転駆動されるようになっているが、1つの態様では、シャッターカーテン1の下降はシャッターカーテン1の座板5の自重で行い、シャッターカーテン1の上昇を開閉機9で行うようになっている。シャッターカーテン1が巻取シャフト3に巻装されてシャッターケース4内に収納されている時には巻取シャフト3の回動は規制されており、火災検知手段6により火災検知信号が制御手段8に送信されると、制御手段8から開閉機9への信号によって、巻取りシャフト3の回動規制を解除することで、シャッターカーテン1が座板5の自重で降下するようにしている。尚、シャッターカーテン1の下降を電動駆動で行うようにしてもよい。
【0015】
散水手段7は、図示しない水供給源と、水の供給パイプ70と、供給パイプ70の先端に形成された散水口(ノズル)71と、からなり、散水口71は、天井面からシャッターカーテン1の降下経路に仕向けられている。供給パイプ70の途中にはバルブ72が設けてあり、バルブ72は通常時は閉状態にあり、制御手段8からの信号によってバルブ72が開状態となって、散水口71から散水が行われる。散水手段7は、シャッターカーテン1の長さ方向に沿って配設された複数の散水口を有しており、シャッターカーテン1全体に水を散水するようになっている。散水口の数、配置態様、仕向け方向、形状等は最適なものから適宜選択される。図示の例では、シャッターカーテン1の降下経路の前後に散水口71が設けてあり、シャッターカーテン1の両側面に散水を行うようにしているが、散水口71を一側に設けたものでもよい。シャッターカーテン1全体が通気性を有し、散水を受けることで気密性・耐火性を奏するシート(このようなシートは散水前には耐火性が低いものが多いと考えられる)から構成される場合には、シャッターケース4内においても散水手段7Aを設けることが望ましい。また、煙感知器によって火災が発生した側を検知し、火災が発生した側のみ散水するようにしてもよい。シャッターカーテン1の上端部位(全閉状態でもケース4内に位置している)を耐火クロスから構成することで、ケース4内の散水手段を省略することも可能である。バルブ72は水量可変バルブであってもよく、例えば、制御手段に内蔵されたタイマによって、所定時間毎に散水口71から散水される水量を増加させてもよい。
【0016】
シート体10は、通気性を有し、散水を受けることで気密性・耐火性を奏するシートから形成されている。このようなシートの構造や材料は限定されず、構造としては、不織布、編物、織物、その他のシートであってもよく、材料としては、ポリアクリレート系繊維、ポリエステル、これらの混合繊維、が例示される。通気性を有し、散水を受けることで気密性・耐火性を奏するシートは、通気性・吸水性(含水性、保水性)を有するシートである。通気性・吸水性を有するシートには、吸水ポリマー等で積極的に吸水するシートが含まれる。通気性・吸水性のあるシートとしては、吸水繊維として市場で入手可能な繊維からなるシートを採用することができる。
【0017】
シートの耐火性・遮熱性の確認試験を行ったところ、吸水性の高い材料は、散水することで良好な耐火性・遮熱性が得られることが判った。また、散水を停止したとしても、試験体が含水している間は耐火性・遮熱性を有することも確認された。さらに、散水を継続して行うことでより確実な耐火性・遮熱性を奏することができる。本発明では、吸水性の高い材料を用いてシートを構成することで、散水をして含水させることで、特殊なコーティング等を施すことなく、耐火性・遮熱性を確保することができる。
【0018】
シート気密性(遮煙性)確認試験を行ったところ、吸水性の高い材料は、散水することで良好な気密性が得られることが判った。本発明における「気密性」とは、防火規定関連告示に基づく遮煙性能を満たす程度の気密性を意味する。具体的には、建設省告示第2564号の別記に規定された遮煙性能試験方法において、合格基準(圧力差が1平方メートル当たり2キログラムの場合における遮煙性能試験の結果、測定値のいずれについても、毎分1平方メートル当たり0.2立方メートル以下である)を満たすような気密性である。通気性を有するシートが気密性を有するようになる機構については、幾つか考えられ、シートがシート表面の通気孔に水膜を形成するように吸水する場合、シートが吸水することで膨張するような構造を有しており、膨張によって通気孔が塞がれる場合、等がある。
【0019】
シート体10の略下半部は、互いに重なり部100を形成するように部分的に重なり合う複数のシート部分10A,10B,10C,10Dから構成されている。重なり部100の幅方向の各端部を規定する各シート部分10A,10B,10C,10Dの自由端101を介して重なり部100を開くことでシート体10に脱出口が形成されるようになっている。
【0020】
座板5は水を溜めることができる形状ないし構造を有している。より具体的には、座板5は、底壁50と側壁51とを有し、上方が開口状であり、座板内部が貯留部52を形成することで、水を貯留可能に構成されている。底壁50及び側壁51を比較的薄板から構成すれば、座板5の全体重量は比較的軽量となる。より具体的には、座板5の重量は、火災時にシャッターカーテン1を自重降下させるものにおいては、少なくともかかる自重降下を可能とする程度の重さであると同時に、万が一降下するシャッターカーテン1の下端に人が当接して挟まれそうになった場合であっても、簡単に抜け出せることができる程度の挟まれ荷重となるような重さである。具体的な1つの態様では、座板5は、シート体10と座板5との重量による挟まれ荷重(圧迫荷重)が150N以下であるような重さである。
【0021】
図示の態様では、座板5は、長さ方向に複数に分割されており、分割された各部分5A,5B,5C,5Dは、それぞれ底壁50と側壁51とを有し、内部空間が貯留部52として水を貯留可能に構成されている。1つの態様では、座板の部分5A,5B,5C,5Dは、座板5の長さ方向に延出する垂直板状部53(図4及び図5の平面図では省略されている)によって前後に区画されており、シート部分10A,10B,10C,10Dの下端が各垂直板状部53に連結されている。このものにおいて、垂直板状部53に貫通孔を貫設することで、垂直板状部53によって前後に区画された一方の区画から他方の区画へ貯留水が移動できるようにしてもよい。こうすることで、散水口71を一側に設けた場合でも前後区画で均等に水を貯留することができる。座板5は、比較的薄肉の壁体のみから構成されているので、比較的軽量である一方、内部の貯留部52に水を溜めることで十分な重量を提供することが可能である。さらに、座板5を長さ方向(開口幅方向)に分割することで、開口幅が大きい開口部にシャッターカーテンを設置する場合であっても、座板の分割された各部分の重量とシート重量の合計による挟まれ荷重が150Nを超えない構造とすることができ、下降するシャッターカーテンの下端に人が当接した場合であっても、大きな衝撃を与えず、また、挟まれるような場合であっても容易に脱出することができるようになっている。
【0022】
図4に示す分割型座板の第1の態様では、座板5は、それぞれが貯留部52を構成する4つの部分5A,5B,5C,5Dから構成されている。分割された部分の数は4個に限定されず、開口幅等によって適宜数の部分に分割することができる。分割された各座板5A,5B,5C,5Dは、座板5の長さ方向(開口幅方向)に延出する複数の見付壁と座板を横切る方向(開口幅に直交する方向)に延出する複数の見込壁とからなる側壁51と、底壁50とを有し、側壁51と底壁50とから上方が開口状の貯留部52が形成されている。分割された座板5A,5B,5C,5Dの互いに近接する側に段部50A,50B,51B,50C,51C,50Dが形成されており、段部同士があいじゃくり状となって重なり部を形成している。部分5A,5B,5C,5Dの段部50A,50B,51B,50C,51C,50Dは、隣り合う部分との間で、互いに対向近接する一対の見付壁及び二対の見込壁を介して、隣接している。部分5A,5Dの段部50A,50Dと反対側の端部には、垂直板状部53と略同一直線状に延出するように垂直板状部51A,51Dが設けてある。
【0023】
分割された座板の部分5A,5B,5C,5Dの重なり部とシート体10に形成された重なり部100とが対応している。より具体的には、シート体10の第1部分10Aの下端は、座板の第1部分5Aの垂直板状部51Aと段部50A間で垂直板状部51A、53に接続されている。シート体の第2部分10Bの下端は、座板の第2部分5Bの段部50B,51B間で垂直板状部53に接続されている。シート体の第3部分10Cの下端は、座板の第3部分5Cの段部50C,51C間で垂直板状部53に接続されている。シート体の第4部分10Dの下端は、座板の第4部分5Dの段部50Dと垂直板状部51D間で垂直板状部53、51Dに接続されている。
【0024】
図5(A)に示す分割型座板の第2の態様では、シートの部分の重なりの態様、及び、分割された座板の形状(重なり部を形成する部分の形状)がそれぞれ異なる。第3の態様では、段部が互いに重なる点では第1の態様と共通するが、部分5B,5Cにおいて段部51B,50Cの形成位置が異なる。図5(A)において、第1の態様における要素と同一あるいは類似の要素には同一の参照番号が付してあり、当該参照番号に関する記載を援用することが可能である。
【0025】
図5(B)に示す分割型座板の第3の態様では、分割された座板の部分5A,5B,5C,5Dの形状(重なり部を形成する部分の形状)が異なる。第1の態様、第2の態様では、段部が互いに重なることで重なり部を構成しているが、第2の態様では、部分5Aが凸部50A´、部分5Bが凹部50B´、凸部51B´、部分5Cが凹部50C´、凸部51C´、部分5Dが凹部50D´をそれぞれ有しており、凸部と凹部が対向近接して互いに嵌り合うことで重なり部を構成している。凸部と凹部は、それぞれ、2つの見付壁及び3つの見込壁から形成されている。第3の態様におけるシートの部分の重なりの態様は、第1の態様と同じである。図5(B)において、第1の態様における要素と同一あるいは類似の要素には同一の参照番号が付してあり、当該参照番号に関する記載を援用することが可能である。
【0026】
分割された各座板の部分5A,5B,5C,5Dは、複数の見付片と複数の見込片とからなる側壁と、底壁とを有し、側壁と底壁とから上方が開口状の貯留部52が形成されており、分割された座板の部分5A,5B,5C,5Dが隣り合う部分同士で重なり部を形成するものであれば、その形状や構成は図示の態様に限定されない。1つの態様では、シート部分10A,10B,10C,10Dの下端を、幅方向両端部のみにおいて座板の部分5A,5B,5C,5Dに接続し、シート部分10A,10B,10C,10Dの下端に隙間が形成されたものでもよい。座板の部分5A,5B,5C,5Dには散水された水が貯留するので、かかる隙間は水によって充填されて、防火性能を確保できる。また、1つの態様では、座板の部分5A,5B,5C,5Dの重なり部同士を、座板5を横切る方向に延出するピンで連結し、当該ピンを介して各部分が回動できるようにしてもよい。
【0027】
制御手段8は、火災検知手段6による火災検知に基づいてシャッターカーテン1の降下及び散水手段7による散水を制御する。図6に、火災検知に基づくシャッターカーテンの降下及び散水手段による散水の流れ図を示す。火災が発生すると、煙感知器によって火災が検知され、火災検知信号が制御手段8に送信される。制御手段8は煙感知器からの火災検知信号を受信すると、開閉機9のブレーキ手段(図示せず)を解放することで、シャッターカーテン1を降下させる。散水のタイミングは制御手段8によって制御される。制御手段8は、シャッターカーテン1の降下完了後(開口部全閉後)に、散水手段7によってシャッターカーテン1に散水を開始する。シャッターカーテン1が着床したことの検知は、着床を直接検知する手法、下降開始から着床までの時間をタイマで計測する手法、降下するシャッターカーテンの位置検出(例えば下限リミット)による手法等が挙げられる。座板5の貯留部52に散水された水が貯留することで座板5へ水の重量が付加される。散水によって開口部を閉鎖するシートに気密性・耐火性が付与される。
【0028】
シャッターカーテン降下時には、座板は長さ方向に分割されているので、万が一座板に人が当接した場合であっても、座板全重量が作用することがなく、しかも、分割された各部分は貯留可能な形状なので、比較的軽量であり、安全性が高い。座板を分割したものでは、シートと座板重量の合計の挟まれ荷重を150N以下に押さえることができる。シャッターカーテン降下後は、座板5の貯留部52に水が溜まるので、座板5に水の重量が付加され、シャッターカーテンによる区画域間で差圧が発生してシャッターカーテンが膨らもうとしても座板5が持ち上がることがなく、座板と床面との間に防火上問題となるような隙間の発生を防止し、良好な防火・防煙性能を維持することができる。
【0029】
シャッターカーテン降下時には、シートは通気性を備えているので、機械排煙等によって、区画しようとする区域間に差圧が発生しようとしても、シートが空気を通すことで、良好にシャッターカーテンを降下させて開口部を閉鎖することができる。シャッターカーテン降下後は、散水によってシートが吸水あるいは含水することで、気密性が向上して遮煙性能が良好となる。また、シートが吸水あるいは含水することで耐火性能も良好となる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
火災時に建物開口部を閉鎖する防火設備に利用することができる。より具体的には、駐車場、工場生産ライン、倉庫等の広いスペースにおける区画形成に利用することができ、さらに、病院や福祉施設などにおいて、避難が困難な弱者対策として、火災時に部屋内の所定部分にカーテンを降下させて散水することで篭城区画(退避スペース)を形成することに利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】防火防煙システムを構成するシートシャッター装置の正面図及びシート下半部位の横断面図である。
【図2】防火防煙システムを構成するシートシャッター装置の正面図及びシート下半部位の横断面図である。図1とは、シート下半部位を構成する各部分の重なりの態様が異なる。
【図3】左図は、シートシャッター装置の縦断面図、右図は、シートシャッター装置が組み込まれた防火防煙システムの縦断面図である。
【図4】分割された座板の第1の態様を示す平面図、縦断面図、正面図である。シート下半部位を構成する各部分の重なりの態様は図1のものに対応している。
【図5】(A)分割された座板の第2の態様を示す平面図、縦断面図、正面図である。シート下半部位を構成する各部分の重なりの態様は図2のものに対応している。(B)分割された座板の第1の態様を示す平面図、縦断面図、正面図である。シート下半部位を構成する各部分の重なりの態様は図1のものに対応している。
【図6】火災検知に基づくシャッターカーテンの降下及び散水手段による散水の流れ図である。
【図7】防火防煙システムの作用説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 シャッターカーテン
10 シート体
5 座板
5A,5B,5C,5D 分割された座板の部分
52 貯留部
6 火災検知手段(煙感知器)
7 散水手段
8 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート体とシート体の下端に装着された座板とからなり、火災時に降下し、着床して開口部を閉鎖するシャッターカーテンと、
シャッターカーテンに散水する散水手段と、
火災時にシャッターカーテンの降下及び散水手段による散水を制御する制御手段と、
からなり、
前記シート体は、通気性を有し、散水を受けることで気密性・耐火性を奏するシートであり、
前記制御手段は、降下中のシャッターカーテンは通気性を有する一方全閉状態のシャッターカーテンに気密性・耐火性を付与するように、シャッターカーテンの降下及び散水を制御する、
防火防煙用システム。
【請求項2】
前記制御手段は火災検知によってシャッターカーテンを降下させ、シャッターカーテンの着床後に、散水手段による散水を開始する、
請求項1に記載の防火防煙用システム。
【請求項3】
前記制御手段は火災検知によってシャッターカーテンを降下させ、シャッターカーテンの着床前に、散水手段による散水を開始する、
請求項1に記載の防火防煙用システム。
【請求項4】
前記座板は散水された水を貯留可能に構成されており、開口部閉鎖後において前記座板に貯留された水の重量によって座板と床面との間に隙間が形成されることを防止するように構成されている、請求項1乃至3いずれかに記載の防火防煙システム。
【請求項5】
前記座板は、長さ方向に分割された複数の部分から構成されており、各部分が水を貯留可能である、請求項4に記載の防火防煙システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−209634(P2007−209634A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−34596(P2006−34596)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【出願人】(000177302)三和シヤッター工業株式会社 (173)
【Fターム(参考)】