防犯システム及び防犯プログラム
【課題】カメラの死角を気にすることなく、より簡易に盗難動作を監視することができる防犯システム及び防犯プログラムを提供すること。
【解決手段】この防犯システムは、木の枝に配されて枝の振動量を検知する加速度センサ(振動検出部)5と、互いにアドホックネットワークNを構成するための中継機能を有して振動量を送受信する通信部6と、を有する複数の無線通信端末装置2と、受信した振動量を処理する演算部7と、加工された振動量とこの振動量に関する所定の閾値との大小比較により、枝に生じる加速度の発生原因が人為動作又は自然状態かを判定する判定部8と、を有する判定装置3と、を備えている。
【解決手段】この防犯システムは、木の枝に配されて枝の振動量を検知する加速度センサ(振動検出部)5と、互いにアドホックネットワークNを構成するための中継機能を有して振動量を送受信する通信部6と、を有する複数の無線通信端末装置2と、受信した振動量を処理する演算部7と、加工された振動量とこの振動量に関する所定の閾値との大小比較により、枝に生じる加速度の発生原因が人為動作又は自然状態かを判定する判定部8と、を有する判定装置3と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果樹園における果実の防犯システム及び防犯プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
果樹園では、果実の売れ時を見計らった上で転売を目的とする果実の盗難行為が行われることがある。果樹園の被害の大きさを鑑みれば、このような犯罪行為を未然に防止することが求められている。そこで、複数のカメラを用いて果樹園内を監視する防犯システムが提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】深津時広,平藤雅之,“モニタリングのためのフィールドサーバの開発”,農業情報研究,12(1),pp,1-12,2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の防犯システムでは、葉が多い果樹園ではカメラの死角となる箇所が多く存在するため、また、通常カメラでは夜間には確認できないため、盗難行為に対して監視のもれが生じてしまう。また、常にカメラを駆動して画像データを取得する必要があり、データ処理が膨大になってしまう。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、カメラの死角を気にすることなく、より簡易に盗難動作を監視することができる防犯システム及び防犯プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係る防犯システムは、木の枝に配されて前記枝の振動量を検知する振動検出部と、互いにアドホックネットワークを構成するための中継機能を有して前記振動量を送受信する通信部と、を有する複数の無線通信端末装置と、受信した前記振動量を処理する演算部と、加工された前記振動量とこの振動量に関する所定の閾値との大小比較により、前記枝の振動発生原因が人為動作又は自然状態かを判定する判定部と、を有する判定装置と、 を備えていることを特徴とする。
【0007】
この発明は、木の枝の振動量を検出してその特徴を解析することによって、枝の揺れが自然状態による振動か人為動作による振動かを判定することができる。また、アドホックネットワークを介して振動量を送受信するので、山間部の畑にも設置することができる。
【0008】
また、本発明に係る防犯システムは、前記防犯システムであって、前記振動量が加速度とされ、前記演算部が、前記加速度の大きさのパワースペクトル密度を算出することを特徴とする。
【0009】
この発明は、枝が揺れるときの加速度の大きさに関する情報で判定するので、簡易な構成でも好適に自然状態による振動か人為動作による振動かを識別することができる。
【0010】
また、本発明に係る防犯システムは、前記防犯システムであって、前記閾値が、3Hz以上の周波数帯における前記パワースペクトル密度に対して設定されていることを特徴とする。
【0011】
この発明は、誤差の少ない範囲で比較判定することから、自然状態による振動か人為動作による振動かをより好適に識別することができる。
【0012】
また、本発明に係る防犯システムは、前記防犯システムであって、前記振動量が加速度とされ、前記閾値が、前記加速度の大きさに関する第一閾値と、設定期間における加速度の大きさが前記第一閾値を超える加速度の発生時間間隔及びその頻度に関する第二閾値と、を備え、前記演算部が、前記加速度の大きさを算出する第一演算部と、前記設定期間における前記第一閾値を超える大きさの加速度の発生時間間隔及びその発生頻度を算出する第二演算部と、を備え、前記判定部が、前記加速度の大きさと前記第一閾値との大小を比較する第一判定部と、前記第一閾値を超える大きさの加速度の発生時間間隔及びその発生頻度と前記第二閾値との大小を比較する第二判定部と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
この発明は、所定の大きさを超える加速度の発生頻度によっても比較判定することができ、自然状態による振動か人為動作による振動かをより好適に識別することができる。
【0014】
また、本発明に係る防犯システムは、前記防犯システムであって、前記振動検出部が、亜主枝における側枝への分岐部近傍に配されていることを特徴とする。
【0015】
この発明は、自然状態による振動か人為動作による振動かの判定時の誤差を減らして信頼性を向上することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、樹木や葉が密集する果樹園や夜間であっても、カメラの死角を気にすることなく果実の盗難動作を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る防犯システムを示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る防犯システムを示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る防犯システムの使用状態を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る防犯システムの使用状態を示す説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る防犯システムにて1個の模擬果実を枝に吊るした状態から切り取ったときに枝に発生する加速度の大きさを示すグラフである。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る防犯システムにて3個の模擬果実を枝に吊るした状態から切り取ったときに枝に発生する加速度の大きさを示すグラフである。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る防犯システムにて5個の模擬果実を枝に吊るした状態から切り取ったときに枝に発生する加速度の大きさを示すグラフである。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る防犯システムにて自然状態のときに枝に発生する加速度の大きさのパワースペクトル密度を示すグラフである。
【図9】図8にて3Hzを超える周波数帯域のパワースペクトル密度を示すグラフである。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る防犯システムにて模擬果実を切り取ったときに枝に発生する加速度の大きさのパワースペクトル密度を示すグラフである。
【図11】図10にて3Hzを超える周波数帯域のパワースペクトル密度を示すグラフである。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る防犯システムにて5個の模擬果実を枝に吊るした状態から切り取ったときに枝に発生する加速度の大きさを示すグラフである。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る防犯システムにて自然状態のときに枝に発生する加速度の大きさを示すグラフである。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る防犯システムにて自然状態のときに枝に発生する加速度の大きさを示すグラフである。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る防犯システムにて20秒間で1020〜1100mGを超える加速度が検出された頻度を示すグラフである。
【図16】本発明の第2の実施形態に係る防犯システムにて5個の模擬果実を枝に吊るした状態から切り取ったときに、第一閾値を超える加速度が20秒間に発生した時間間隔とその頻度を示すグラフである。
【図17】本発明の第2の実施形態に係る防犯システムにて自然状態のときに、第一閾値を超える加速度が20秒間に発生した時間間隔とその頻度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
本発明に係る第1の実施形態について、図1を参照して説明する。
本実施形態に係る防犯システム1は、図1に示すように、無線通信端末装置2と、判定装置3と、を備えている。両者は、無線インターネットWを介して相互に接続されている。
【0019】
無線通信端末装置2は、果樹等の複数の木の枝に複数配されており、枝の振動時の加速度(振動量)を検知する加速度センサ(振動検出部)5と、互いにアドホックネットワークNを構成するための中継機能を有して、加速度センサ5が検出した加速度データを送受信する通信部6と、をそれぞれ有する。
【0020】
判定装置3は、コンピュータとして必要な処理を行うためのプログラム及びデータ等が記憶された不図示のROM(リードオンリーメモリ)、加速度に関するデータを一時的に保存するための不図示のRAM(ランダムアクセスメモリー)、ROM等に記憶された防犯プログラムP1に応じた処理を行う不図示のCPU(中央演算処理装置)と、を備えている。
【0021】
防犯プログラムP1は、機能手段(プログラムモジュール)として、演算部7と、判定部8と、を備えている。
【0022】
演算部7は、通信部6によって送信された加速度データから、無線通信端末装置2が配された枝の加速度の大きさとともに、そのパワースペクトル密度を算出する。
【0023】
判定部8は、算出されたパワースペクトル密度と、これに関する所定の閾値との大小を比較して、閾値を超える大きさの場合、加速度の発生原因が人為動作であると判定し、閾値以下の場合には、加速度の発生原因が風等による自然状態であると判定する。
【0024】
次に、本実施形態に係る防犯システム1による防犯方法について説明する。
まず、複数の木の枝に無線通信端末装置2を設置する。そして、無線通信端末装置2の通信部6間でアドホックネットワークNを形成する。
【0025】
加速度センサ5が所定のサンプリング周期にて取得した枝の加速度データを、通信部6がアドホックネットワークNを介して判定装置3の演算部7に送信する。そして、判定装置3内にて、演算部7が加速度の大きさとともに、そのパワースペクトル密度を算出する。
【0026】
そして、判定部8にて閾値との大小比較を行い、枝に発生した加速度が、所定の閾値を超えた場合には、果実等の盗難等の人為動作が発生したと判定する。一方、所定の閾値以下の場合には、風等による自然状態により振動していると判定する。
【0027】
この防犯システム1及び防犯プログラムP1によれば、木の枝の加速度を検出してその特徴を解析することによって、枝の揺れが自然状態による振動か人為動作による振動かを判定することができる。また、アドホックネットワークNを介して複数の無線通信端末装置2間で加速度データを送受信しながら判定装置3に送信するので、山間部の畑にも設置することができる。
【0028】
そのため、樹木や葉が密集する果樹園や夜間であっても、カメラの死角を気にすることなく果実の盗難動作を検知することができる。
【0029】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
なお、上述した第1の実施形態と同様の構成要素には同一符号を付すとともに説明を省略する。
第2の実施形態と第1の実施形態との異なる点は、図2に示すように、本実施形態に係る防犯システム10及び防犯プログラムP2において、判定装置11の演算部12が、第一演算部12Aと第二演算部12Bとを備え、判定部13が、第一判定部13Aと第二判定部13Bとを備えているとした点である。
【0030】
この場合の閾値は、加速度の大きさに関する第一閾値と、設定期間における加速度の大きさが第一閾値を超える加速度の発生時間間隔及びその頻度に関する第二閾値と、を備えている。第一演算部12Aは、加速度の大きさを算出する。第二演算部12Bは、上述の設定期間における第一閾値を超える大きさの加速度の発生時間間隔及びその発生頻度を算出する。第一判定部13Aは、加速度の大きさと第一閾値との大小を比較する。第二判定部13Bは、第一閾値を超える大きさの加速度の発生時間間隔及びその発生頻度と第二閾値との大小を比較する。
【0031】
次に、本実施形態に係る防犯システム10による防犯方法について説明する。
まず、第1の実施形態と同様に無線通信端末装置2を設置し、無線通信端末装置2の通信部6間でアドホックネットワークNを形成する。
【0032】
加速度センサ5が所定のサンプリング周期にて取得した枝の加速度データを、通信部6がアドホックネットワークNを介して判定装置11の演算部12に送信する。そして、判定装置11内にて、第一演算部12Aが加速度の大きさを算出する。
【0033】
第一判定部13Aは、算出された加速度の大きさと第一閾値とを比較する。そして、第一閾値を超える大きさの加速度が発生した時刻を不図示のRAM等に記憶する。
【0034】
第二演算部12Bは、記憶された加速度の大きさが第一閾値を越えた時刻の間隔を算出する。そして、第二判定部13Bは、設定期間内において、第一閾値を超える大きさの加速度が第二閾値未満の時間間隔で発生した場合、盗難等の人為動作であると判定する。
【0035】
この防犯システム10及び防犯プログラムP2によれば、第1の実施形態と同様に自然状態と人為動作とを識別することができる。この際、時間間隔によって判定するので、より好適に判別することができる。
【0036】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、振動量として加速度としているが、これに限らず、センサで検知できるものであれば構わない。
【実施例】
【0037】
(実施例1)
果実の盗難を考えた場合、複数の果実を盗むこともあることから、本発明の第1の実施形態に係る防犯システム1において、図3に示すように、実際の果実の代わりに模擬果実Dとして重りを木の枝に吊るした状態で、人為動作と自然状態との識別確認を実施した。無線通信端末装置2として、日立製wireless-T3軸加速度センサを使用し、木の枝のうち、亜主枝における側枝への分岐部近傍に配した。サンプリング周波数は50Hzとした。
【0038】
まず、何もしない状態(自然状態)と、1個、3個、5個の模擬果実Dをそれぞれ枝に吊るした状態からそれらを切り取ったとき(人為動作時)と、の加速度データをそれぞれ取得した。このときのデータは、図4に示すように、無線通信端末装置2間に形成されたアドホックネットワークNを介して判定装置11に伝送される。こうして、模擬果実Dを切り取った時に加速度が増加する状態を検出した。1個の場合の取得結果を図5に、3個の場合の取得結果を図6に、5個の場合の取得結果を図7にそれぞれ示す。なお、図では、センサ軸にとらわれないノルムを用いて加速度を表示している。
【0039】
そして、取得した加速度の大きさに対して高速フーリエ変換を行い、パワースペクトル密度を算出した。自然状態のときの結果の例を図8に示す(3Hz以降の周波数帯を抜き出したものを図9に示す。)。また、模擬果実Dの切り取り時の結果の例を図10に示す(3Hz以降の周波数帯を抜き出したものを図11に示す。)。図9と図11とを比較した場合、3Hz以降の周波数帯で特に差異がみられることから、3Hz以降の周波数帯で閾値設定することにより、自然状態と人為動作とを識別することとした。なお、この閾値にて加速度センサと模擬果実Dとの距離を変化させたところ、2m以内であれば、再現率を90%以上とすることができた。また、閾値設定における周波数帯域は、必ずしも3Hz以降である必要はなく、算出結果に応じて適宜変動させても構わない。
【0040】
(実施例2)
次に、本発明の第2の実施形態に係る防犯システム10において、実施例1と同様にして人為動作と自然状態との識別確認を実施した。無線通信端末装置2は上述したものと同一のものを使用した。
【0041】
まず、5つの模擬果実Dを切り取ったときの加速度の大きさを図12に示す。また、自然状態ではあるものの強風時のときの加速度の大きさを図13、図14にそれぞれ示す。そして、第一閾値を求めるために、20秒間で1020〜1100mGを超える加速度が検出された頻度を算出した。結果を図15に示す。
【0042】
ここで、例えば、第一閾値を1030mGとすると、模擬果実Dの切り取り時には約11%が第一閾値以上になるのに対して、強風時であっても自然状態では約3%にすぎない。また、第一閾値値を1040mGとすると、切り取り時には約4%が第一閾値以上になるのに対して、強風時では0%となる。つまり、この間の加速度の大きさを第一閾値に設定すれば高い確率で人為動作を識別できることがわかった。
【0043】
これをふまえ、第一閾値を1030mGとしたときに、第二閾値を求めるために、この大きさを超える加速度が20秒間に発生した時間間隔の頻度を算出した。5つの模擬果実Dを切り取ったときと、強風時のときと、のそれぞれの時間間隔とその頻度とを図16、図17にそれぞれ示す。両者を比較すると、時間間隔が短い領域で頻度に有意な差があることがわかった。つまり、当該領域に第二閾値を設定することによって、人為動作を好適に識別できることがわかった。
【符号の説明】
【0044】
1,10 防犯システム
2 無線通信端末装置
3,11 判定装置
5 加速度センサ(振動検出部)
6 通信部
7,12 演算部
8,13 判定部
12A 第一演算部
12B 第二演算部
13A 第一判定部
13B 第二判定部
P1,P2 防犯プログラム
【技術分野】
【0001】
本発明は、果樹園における果実の防犯システム及び防犯プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
果樹園では、果実の売れ時を見計らった上で転売を目的とする果実の盗難行為が行われることがある。果樹園の被害の大きさを鑑みれば、このような犯罪行為を未然に防止することが求められている。そこで、複数のカメラを用いて果樹園内を監視する防犯システムが提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】深津時広,平藤雅之,“モニタリングのためのフィールドサーバの開発”,農業情報研究,12(1),pp,1-12,2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の防犯システムでは、葉が多い果樹園ではカメラの死角となる箇所が多く存在するため、また、通常カメラでは夜間には確認できないため、盗難行為に対して監視のもれが生じてしまう。また、常にカメラを駆動して画像データを取得する必要があり、データ処理が膨大になってしまう。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、カメラの死角を気にすることなく、より簡易に盗難動作を監視することができる防犯システム及び防犯プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係る防犯システムは、木の枝に配されて前記枝の振動量を検知する振動検出部と、互いにアドホックネットワークを構成するための中継機能を有して前記振動量を送受信する通信部と、を有する複数の無線通信端末装置と、受信した前記振動量を処理する演算部と、加工された前記振動量とこの振動量に関する所定の閾値との大小比較により、前記枝の振動発生原因が人為動作又は自然状態かを判定する判定部と、を有する判定装置と、 を備えていることを特徴とする。
【0007】
この発明は、木の枝の振動量を検出してその特徴を解析することによって、枝の揺れが自然状態による振動か人為動作による振動かを判定することができる。また、アドホックネットワークを介して振動量を送受信するので、山間部の畑にも設置することができる。
【0008】
また、本発明に係る防犯システムは、前記防犯システムであって、前記振動量が加速度とされ、前記演算部が、前記加速度の大きさのパワースペクトル密度を算出することを特徴とする。
【0009】
この発明は、枝が揺れるときの加速度の大きさに関する情報で判定するので、簡易な構成でも好適に自然状態による振動か人為動作による振動かを識別することができる。
【0010】
また、本発明に係る防犯システムは、前記防犯システムであって、前記閾値が、3Hz以上の周波数帯における前記パワースペクトル密度に対して設定されていることを特徴とする。
【0011】
この発明は、誤差の少ない範囲で比較判定することから、自然状態による振動か人為動作による振動かをより好適に識別することができる。
【0012】
また、本発明に係る防犯システムは、前記防犯システムであって、前記振動量が加速度とされ、前記閾値が、前記加速度の大きさに関する第一閾値と、設定期間における加速度の大きさが前記第一閾値を超える加速度の発生時間間隔及びその頻度に関する第二閾値と、を備え、前記演算部が、前記加速度の大きさを算出する第一演算部と、前記設定期間における前記第一閾値を超える大きさの加速度の発生時間間隔及びその発生頻度を算出する第二演算部と、を備え、前記判定部が、前記加速度の大きさと前記第一閾値との大小を比較する第一判定部と、前記第一閾値を超える大きさの加速度の発生時間間隔及びその発生頻度と前記第二閾値との大小を比較する第二判定部と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
この発明は、所定の大きさを超える加速度の発生頻度によっても比較判定することができ、自然状態による振動か人為動作による振動かをより好適に識別することができる。
【0014】
また、本発明に係る防犯システムは、前記防犯システムであって、前記振動検出部が、亜主枝における側枝への分岐部近傍に配されていることを特徴とする。
【0015】
この発明は、自然状態による振動か人為動作による振動かの判定時の誤差を減らして信頼性を向上することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、樹木や葉が密集する果樹園や夜間であっても、カメラの死角を気にすることなく果実の盗難動作を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る防犯システムを示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る防犯システムを示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る防犯システムの使用状態を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る防犯システムの使用状態を示す説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る防犯システムにて1個の模擬果実を枝に吊るした状態から切り取ったときに枝に発生する加速度の大きさを示すグラフである。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る防犯システムにて3個の模擬果実を枝に吊るした状態から切り取ったときに枝に発生する加速度の大きさを示すグラフである。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る防犯システムにて5個の模擬果実を枝に吊るした状態から切り取ったときに枝に発生する加速度の大きさを示すグラフである。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る防犯システムにて自然状態のときに枝に発生する加速度の大きさのパワースペクトル密度を示すグラフである。
【図9】図8にて3Hzを超える周波数帯域のパワースペクトル密度を示すグラフである。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る防犯システムにて模擬果実を切り取ったときに枝に発生する加速度の大きさのパワースペクトル密度を示すグラフである。
【図11】図10にて3Hzを超える周波数帯域のパワースペクトル密度を示すグラフである。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る防犯システムにて5個の模擬果実を枝に吊るした状態から切り取ったときに枝に発生する加速度の大きさを示すグラフである。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る防犯システムにて自然状態のときに枝に発生する加速度の大きさを示すグラフである。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る防犯システムにて自然状態のときに枝に発生する加速度の大きさを示すグラフである。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る防犯システムにて20秒間で1020〜1100mGを超える加速度が検出された頻度を示すグラフである。
【図16】本発明の第2の実施形態に係る防犯システムにて5個の模擬果実を枝に吊るした状態から切り取ったときに、第一閾値を超える加速度が20秒間に発生した時間間隔とその頻度を示すグラフである。
【図17】本発明の第2の実施形態に係る防犯システムにて自然状態のときに、第一閾値を超える加速度が20秒間に発生した時間間隔とその頻度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
本発明に係る第1の実施形態について、図1を参照して説明する。
本実施形態に係る防犯システム1は、図1に示すように、無線通信端末装置2と、判定装置3と、を備えている。両者は、無線インターネットWを介して相互に接続されている。
【0019】
無線通信端末装置2は、果樹等の複数の木の枝に複数配されており、枝の振動時の加速度(振動量)を検知する加速度センサ(振動検出部)5と、互いにアドホックネットワークNを構成するための中継機能を有して、加速度センサ5が検出した加速度データを送受信する通信部6と、をそれぞれ有する。
【0020】
判定装置3は、コンピュータとして必要な処理を行うためのプログラム及びデータ等が記憶された不図示のROM(リードオンリーメモリ)、加速度に関するデータを一時的に保存するための不図示のRAM(ランダムアクセスメモリー)、ROM等に記憶された防犯プログラムP1に応じた処理を行う不図示のCPU(中央演算処理装置)と、を備えている。
【0021】
防犯プログラムP1は、機能手段(プログラムモジュール)として、演算部7と、判定部8と、を備えている。
【0022】
演算部7は、通信部6によって送信された加速度データから、無線通信端末装置2が配された枝の加速度の大きさとともに、そのパワースペクトル密度を算出する。
【0023】
判定部8は、算出されたパワースペクトル密度と、これに関する所定の閾値との大小を比較して、閾値を超える大きさの場合、加速度の発生原因が人為動作であると判定し、閾値以下の場合には、加速度の発生原因が風等による自然状態であると判定する。
【0024】
次に、本実施形態に係る防犯システム1による防犯方法について説明する。
まず、複数の木の枝に無線通信端末装置2を設置する。そして、無線通信端末装置2の通信部6間でアドホックネットワークNを形成する。
【0025】
加速度センサ5が所定のサンプリング周期にて取得した枝の加速度データを、通信部6がアドホックネットワークNを介して判定装置3の演算部7に送信する。そして、判定装置3内にて、演算部7が加速度の大きさとともに、そのパワースペクトル密度を算出する。
【0026】
そして、判定部8にて閾値との大小比較を行い、枝に発生した加速度が、所定の閾値を超えた場合には、果実等の盗難等の人為動作が発生したと判定する。一方、所定の閾値以下の場合には、風等による自然状態により振動していると判定する。
【0027】
この防犯システム1及び防犯プログラムP1によれば、木の枝の加速度を検出してその特徴を解析することによって、枝の揺れが自然状態による振動か人為動作による振動かを判定することができる。また、アドホックネットワークNを介して複数の無線通信端末装置2間で加速度データを送受信しながら判定装置3に送信するので、山間部の畑にも設置することができる。
【0028】
そのため、樹木や葉が密集する果樹園や夜間であっても、カメラの死角を気にすることなく果実の盗難動作を検知することができる。
【0029】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
なお、上述した第1の実施形態と同様の構成要素には同一符号を付すとともに説明を省略する。
第2の実施形態と第1の実施形態との異なる点は、図2に示すように、本実施形態に係る防犯システム10及び防犯プログラムP2において、判定装置11の演算部12が、第一演算部12Aと第二演算部12Bとを備え、判定部13が、第一判定部13Aと第二判定部13Bとを備えているとした点である。
【0030】
この場合の閾値は、加速度の大きさに関する第一閾値と、設定期間における加速度の大きさが第一閾値を超える加速度の発生時間間隔及びその頻度に関する第二閾値と、を備えている。第一演算部12Aは、加速度の大きさを算出する。第二演算部12Bは、上述の設定期間における第一閾値を超える大きさの加速度の発生時間間隔及びその発生頻度を算出する。第一判定部13Aは、加速度の大きさと第一閾値との大小を比較する。第二判定部13Bは、第一閾値を超える大きさの加速度の発生時間間隔及びその発生頻度と第二閾値との大小を比較する。
【0031】
次に、本実施形態に係る防犯システム10による防犯方法について説明する。
まず、第1の実施形態と同様に無線通信端末装置2を設置し、無線通信端末装置2の通信部6間でアドホックネットワークNを形成する。
【0032】
加速度センサ5が所定のサンプリング周期にて取得した枝の加速度データを、通信部6がアドホックネットワークNを介して判定装置11の演算部12に送信する。そして、判定装置11内にて、第一演算部12Aが加速度の大きさを算出する。
【0033】
第一判定部13Aは、算出された加速度の大きさと第一閾値とを比較する。そして、第一閾値を超える大きさの加速度が発生した時刻を不図示のRAM等に記憶する。
【0034】
第二演算部12Bは、記憶された加速度の大きさが第一閾値を越えた時刻の間隔を算出する。そして、第二判定部13Bは、設定期間内において、第一閾値を超える大きさの加速度が第二閾値未満の時間間隔で発生した場合、盗難等の人為動作であると判定する。
【0035】
この防犯システム10及び防犯プログラムP2によれば、第1の実施形態と同様に自然状態と人為動作とを識別することができる。この際、時間間隔によって判定するので、より好適に判別することができる。
【0036】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、振動量として加速度としているが、これに限らず、センサで検知できるものであれば構わない。
【実施例】
【0037】
(実施例1)
果実の盗難を考えた場合、複数の果実を盗むこともあることから、本発明の第1の実施形態に係る防犯システム1において、図3に示すように、実際の果実の代わりに模擬果実Dとして重りを木の枝に吊るした状態で、人為動作と自然状態との識別確認を実施した。無線通信端末装置2として、日立製wireless-T3軸加速度センサを使用し、木の枝のうち、亜主枝における側枝への分岐部近傍に配した。サンプリング周波数は50Hzとした。
【0038】
まず、何もしない状態(自然状態)と、1個、3個、5個の模擬果実Dをそれぞれ枝に吊るした状態からそれらを切り取ったとき(人為動作時)と、の加速度データをそれぞれ取得した。このときのデータは、図4に示すように、無線通信端末装置2間に形成されたアドホックネットワークNを介して判定装置11に伝送される。こうして、模擬果実Dを切り取った時に加速度が増加する状態を検出した。1個の場合の取得結果を図5に、3個の場合の取得結果を図6に、5個の場合の取得結果を図7にそれぞれ示す。なお、図では、センサ軸にとらわれないノルムを用いて加速度を表示している。
【0039】
そして、取得した加速度の大きさに対して高速フーリエ変換を行い、パワースペクトル密度を算出した。自然状態のときの結果の例を図8に示す(3Hz以降の周波数帯を抜き出したものを図9に示す。)。また、模擬果実Dの切り取り時の結果の例を図10に示す(3Hz以降の周波数帯を抜き出したものを図11に示す。)。図9と図11とを比較した場合、3Hz以降の周波数帯で特に差異がみられることから、3Hz以降の周波数帯で閾値設定することにより、自然状態と人為動作とを識別することとした。なお、この閾値にて加速度センサと模擬果実Dとの距離を変化させたところ、2m以内であれば、再現率を90%以上とすることができた。また、閾値設定における周波数帯域は、必ずしも3Hz以降である必要はなく、算出結果に応じて適宜変動させても構わない。
【0040】
(実施例2)
次に、本発明の第2の実施形態に係る防犯システム10において、実施例1と同様にして人為動作と自然状態との識別確認を実施した。無線通信端末装置2は上述したものと同一のものを使用した。
【0041】
まず、5つの模擬果実Dを切り取ったときの加速度の大きさを図12に示す。また、自然状態ではあるものの強風時のときの加速度の大きさを図13、図14にそれぞれ示す。そして、第一閾値を求めるために、20秒間で1020〜1100mGを超える加速度が検出された頻度を算出した。結果を図15に示す。
【0042】
ここで、例えば、第一閾値を1030mGとすると、模擬果実Dの切り取り時には約11%が第一閾値以上になるのに対して、強風時であっても自然状態では約3%にすぎない。また、第一閾値値を1040mGとすると、切り取り時には約4%が第一閾値以上になるのに対して、強風時では0%となる。つまり、この間の加速度の大きさを第一閾値に設定すれば高い確率で人為動作を識別できることがわかった。
【0043】
これをふまえ、第一閾値を1030mGとしたときに、第二閾値を求めるために、この大きさを超える加速度が20秒間に発生した時間間隔の頻度を算出した。5つの模擬果実Dを切り取ったときと、強風時のときと、のそれぞれの時間間隔とその頻度とを図16、図17にそれぞれ示す。両者を比較すると、時間間隔が短い領域で頻度に有意な差があることがわかった。つまり、当該領域に第二閾値を設定することによって、人為動作を好適に識別できることがわかった。
【符号の説明】
【0044】
1,10 防犯システム
2 無線通信端末装置
3,11 判定装置
5 加速度センサ(振動検出部)
6 通信部
7,12 演算部
8,13 判定部
12A 第一演算部
12B 第二演算部
13A 第一判定部
13B 第二判定部
P1,P2 防犯プログラム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木の枝に配されて前記枝の振動量を検知する振動検出部と、互いにアドホックネットワークを構成するための中継機能を有して前記振動量を送受信する通信部と、を有する複数の無線通信端末装置と、
受信した前記振動量を処理する演算部と、加工された前記振動量とこの振動量に関する所定の閾値との大小比較により、前記枝の振動発生原因が人為動作又は自然状態かを判定する判定部と、を有する判定装置と、
を備えていることを特徴とする防犯システム。
【請求項2】
前記振動量が加速度とされ、
前記演算部が、前記加速度の大きさのパワースペクトル密度を算出することを特徴とする請求項1に記載の防犯システム。
【請求項3】
前記閾値が、3Hz以上の周波数帯における前記パワースペクトル密度に対して設定されていることを特徴とする請求項2に記載の防犯システム。
【請求項4】
前記振動量が加速度とされ、
前記閾値が、前記加速度の大きさに関する第一閾値と、
設定期間における加速度の大きさが前記第一閾値を超える加速度の発生時間間隔及びその頻度に関する第二閾値と、
を備え、
前記演算部が、前記加速度の大きさを算出する第一演算部と、
前記設定期間における前記第一閾値を超える大きさの加速度の発生時間間隔及びその発生頻度を算出する第二演算部と、
を備え、
前記判定部が、前記加速度の大きさと前記第一閾値との大小を比較する第一判定部と、
前記第一閾値を超える大きさの加速度の発生時間間隔及びその発生頻度と前記第二閾値との大小を比較する第二判定部と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の防犯システム。
【請求項5】
前記振動検出部が、亜主枝における側枝への分岐部近傍に配されていることを特徴とする請求項1から4の何れか一つに記載の防犯システム。
【請求項6】
コンピュータを請求項1から5の何れか一つに記載の判定装置として機能させることを特徴とする防犯プログラム。
【請求項1】
木の枝に配されて前記枝の振動量を検知する振動検出部と、互いにアドホックネットワークを構成するための中継機能を有して前記振動量を送受信する通信部と、を有する複数の無線通信端末装置と、
受信した前記振動量を処理する演算部と、加工された前記振動量とこの振動量に関する所定の閾値との大小比較により、前記枝の振動発生原因が人為動作又は自然状態かを判定する判定部と、を有する判定装置と、
を備えていることを特徴とする防犯システム。
【請求項2】
前記振動量が加速度とされ、
前記演算部が、前記加速度の大きさのパワースペクトル密度を算出することを特徴とする請求項1に記載の防犯システム。
【請求項3】
前記閾値が、3Hz以上の周波数帯における前記パワースペクトル密度に対して設定されていることを特徴とする請求項2に記載の防犯システム。
【請求項4】
前記振動量が加速度とされ、
前記閾値が、前記加速度の大きさに関する第一閾値と、
設定期間における加速度の大きさが前記第一閾値を超える加速度の発生時間間隔及びその頻度に関する第二閾値と、
を備え、
前記演算部が、前記加速度の大きさを算出する第一演算部と、
前記設定期間における前記第一閾値を超える大きさの加速度の発生時間間隔及びその発生頻度を算出する第二演算部と、
を備え、
前記判定部が、前記加速度の大きさと前記第一閾値との大小を比較する第一判定部と、
前記第一閾値を超える大きさの加速度の発生時間間隔及びその発生頻度と前記第二閾値との大小を比較する第二判定部と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の防犯システム。
【請求項5】
前記振動検出部が、亜主枝における側枝への分岐部近傍に配されていることを特徴とする請求項1から4の何れか一つに記載の防犯システム。
【請求項6】
コンピュータを請求項1から5の何れか一つに記載の判定装置として機能させることを特徴とする防犯プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−178059(P2012−178059A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40908(P2011−40908)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(397038037)学校法人成蹊学園 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(397038037)学校法人成蹊学園 (13)
【Fターム(参考)】
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