防犯センサ
【課題】 広範囲に設置することができ、誤動作が少なく、侵入口構成部材の破損を確実に検出することのできる防犯センサを提供する。
【解決手段】 防犯センサ2を、エラストマーと、該エラストマー中に略単粒子状態でかつ高充填率で配合されている球状の導電性フィラーと、を有し、変形量が増加するに従って電気抵抗が増加する弾性変形可能なセンサ本体20と、センサ本体20に接続され、該電気抵抗を出力可能な電極21A、21Bと、を備えて構成し、外部からの侵入口を構成する侵入口構成部材90Lに配置する。防犯センサ2は、侵入口構成部材90Lの変形に伴うセンサ本体20の変形から、侵入口構成部材90Lの破損を検出可能である。
【解決手段】 防犯センサ2を、エラストマーと、該エラストマー中に略単粒子状態でかつ高充填率で配合されている球状の導電性フィラーと、を有し、変形量が増加するに従って電気抵抗が増加する弾性変形可能なセンサ本体20と、センサ本体20に接続され、該電気抵抗を出力可能な電極21A、21Bと、を備えて構成し、外部からの侵入口を構成する侵入口構成部材90Lに配置する。防犯センサ2は、侵入口構成部材90Lの変形に伴うセンサ本体20の変形から、侵入口構成部材90Lの破損を検出可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部からの侵入口を構成する侵入口構成部材の破損を検出し、建物等への不法侵入を抑制するための防犯センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空き巣等の不法侵入が多発しており、防犯に対する意識が高まっている。例えば、一戸建て住宅の場合には窓が侵入口となりやすく、侵入方法の約7割はガラス破りである。その手口は、窓ガラスをハンマーで打ち破る、ドライバーでこじ破る、バーナーで焼き破る等、様々である。このようなガラス破りに対する防犯対策として、窓ガラス自体の強度を高めたり、窓ガラスに防犯センサを取り付ける試みがなされている。
【0003】
防犯センサとしては、例えば、窓、扉等の開放を検出するマグネットセンサ、ガラス破損時の衝撃を検出する振動センサ、導線の切断によりガラスの破損を検出する導線センサ等が挙げられる(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2002−42255号公報
【特許文献2】特開2002−190069号公報
【特許文献3】特開平11−39575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、マグネットセンサは、固定部に取り付けたリードスイッチ部と、窓、扉等の開閉可能な移動部に取り付けられたマグネット部と、の位置関係の変化により、窓、扉等の開放を検出する。つまり、マグネットセンサは、閉められていた窓や扉が開いた時にしか動作しない。このため、窓の開放を伴わない窓ガラスの打ち破り等には対応できず、充分とはいえない。一方、加えられた衝撃の加速度を検出する振動センサは、風による振動や、ペットがぶつかる等の小さな振動で誤動作することがある。また、振動センサを設置できるガラスの種類、厚さ等が制限されていることもある。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、広範囲に設置することができ、誤動作が少なく、侵入口構成部材の破損を確実に検出することのできる防犯センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の防犯センサは、エラストマーと、該エラストマー中に略単粒子状態でかつ高充填率で配合されている球状の導電性フィラーと、を有し、変形量が増加するに従って電気抵抗が増加する弾性変形可能なセンサ本体と、該センサ本体に接続され、該電気抵抗を出力可能な電極と、を備えてなり、外部からの侵入口を構成する侵入口構成部材に配置され、該侵入口構成部材の変形に伴う該センサ本体の変形から、該侵入口構成部材の破損を検出可能なことを特徴とする(請求項1に対応)。
【0007】
例えば、住宅等の建物への侵入口としては、窓、玄関等が挙げられる。不法侵入者が、建物への侵入を試みる際、これら侵入口を構成する窓ガラス、扉、シャッター等の侵入口構成部材を破損する場合が多い。この場合、破損により侵入口構成部材は変形する。ここで、本発明の防犯センサは、侵入口構成部材に配置されている。そして、変形量が増加するに従って電気抵抗が増加するセンサ本体を備えている。したがって、不法侵入者が侵入口構成部材を破損して、建物等に侵入しようとした場合には、侵入口構成部材と共にセンサ本体が変形する。センサ本体の変形による電気抵抗の増加に基づいて、侵入口構成部材の破損が検出される。このように、本発明の防犯センサによると、建物等への不法侵入を早期に検出することができる。また、センサ本体の変形による電気抵抗の増加に基づいて、侵入口構成部材の破損を検出するため、センサ本体の変形を伴わない小さな振動により誤動作することが少ない。
【0008】
また、本発明の防犯センサにおけるセンサ本体(以下、適宜「本発明におけるセンサ本体」と称す。)は、弾性変形可能であり、エラストマーと球状の導電性フィラーとを有する。本明細書において、「エラストマー」は、ゴムおよび熱可塑性エラストマーを含む。また、導電性フィラーは、エラストマー中に、略単粒子状態で、かつ高充填率で配合されている。ここで、「略単粒子状態」とは、導電性フィラーの全重量を100重量%とした場合の50重量%以上が、凝集した二次粒子としてではなく、単独の一次粒子の状態で存在していることをいう。また、「高充填率」とは、導電性フィラーが最密充填に近い状態で配合されていることをいう。
【0009】
このように、導電性フィラーが、略単粒子状態で、かつ高充填率で配合されると、エラストマー分(皮膜)を介した導電性フィラー同士の接触により、三次元的な導電パスが形成される。したがって、本発明におけるセンサ本体は、荷重が印加されていない状態(以下、適宜「無荷重状態」と称す。)、言い換えると、変形していない自然状態で、高い導電性を有する。なお、本明細書における「弾性変形」には、圧縮、伸張、曲げ等による変形がすべて含まれる。
【0010】
例えば、従来からある感圧導電性樹脂は、非圧縮状態で電気抵抗が大きく、圧縮により変形すると電気抵抗が減少する。これは、感圧導電性樹脂の構成から次のように説明することができる。すなわち、感圧導電性樹脂は、樹脂と、該樹脂に配合された導電性フィラーと、からなる。ここで、導電性フィラーの充填率は低い。このため、無荷重状態において、導電性フィラー同士は離れている。つまり、無荷重状態では、感圧導電性樹脂の電気抵抗は大きい。一方、荷重が印加され感圧導電性樹脂が変形すると、導電性フィラー同士が接触して、一次元的な導電パスが形成される。これにより、電気抵抗が減少する。
【0011】
これに対して、本発明におけるセンサ本体は、変形量が増加するに従って電気抵抗が増加する。この理由は、次のように考えられる。図1、図2に、本発明におけるセンサ本体の、荷重の印加前後における導電パスの変化をモデルで示す。ただし、図1、図2に示すのは、センサ本体の一例であり、本発明におけるセンサ本体、導電性フィラーの形状、材質等を何ら限定するものではない。
【0012】
図1に示すように、センサ本体100において、導電性フィラー102の多くは、エラストマー101中に一次粒子の状態で存在している。また、導電性フィラー102の充填率は高く、最密充填に近い状態で配合されている。これにより、無荷重状態において、センサ本体100には、導電性フィラー102による三次元的な導電パスPが形成されている。よって、無荷重状態では、センサ本体100の電気抵抗は小さい。一方、図2に示すように、センサ本体100に荷重が印加されると、センサ本体100は変形する(図2中の点線枠は、図1の無荷重状態を示している。)。ここで、導電性フィラー102は最密充填に近い状態で配合されているため、導電性フィラー102が移動できるスペースはほとんどない。よって、センサ本体100が変形すると、導電性フィラー102同士が反発し合い、導電性フィラー102同士の接触状態が変化する。その結果、三次元的な導電パスPが崩壊し、電気抵抗が増加する。
【0013】
このようなセンサ本体を備えた本発明の防犯センサは、電極から出力されるセンサ本体の電気抵抗の増加に基づいて、侵入口構成部材に生じる圧縮、伸張、曲げ等の様々な変形を直接検出することができる。これにより、侵入口構成部材の破損を検出することができる。ここで、「電気抵抗を出力可能」とは、電気抵抗を直接あるいは間接的に出力可能なことをいう。すなわち、直接、電極から電気抵抗を出力する場合は勿論、電圧や電流など電気抵抗に関連する他の電気量を出力する場合を含む。
【0014】
また、センサ本体はエラストマーを母材とする。このため、本発明の防犯センサは、加工性に優れ、形状設計の自由度が高い。よって、侵入口構成部材の形状や大きさ等によらず、広範囲に配置することができる。例えば、本発明の防犯センサを、侵入口構成部材を網羅するよう面状に配置すれば、侵入口構成部材の破損をもれなく検出することができる。また、センサ本体に接続される電極の数、配置を調整することにより、より細かなセンシングが可能となり、破損位置の特定も可能となる。
【0015】
本発明の防犯センサでは、エラストマーや導電性フィラーの種類、導電性フィラーの充填率等を調整することにより、無荷重状態における電気抵抗値を所定の範囲に設定することができる。このため、検出可能な変形量の範囲、つまり、検出レンジを大きくすることができる。加えて、変形量に対する電気抵抗の増加挙動を調整することができるため、所望の応答感度を実現することができる。
【0016】
また、本発明の防犯センサは、無荷重状態において高い導電性を有する。つまり、本発明の防犯センサは、無荷重状態において導電状態にある。このため、無荷重状態において、導電性の低いセンサ(例えば、従来の感圧導電性樹脂を用いたセンサ)と比較して、作動診断が容易である。すなわち、無荷重状態において導電性の低いセンサの場合、無荷重状態のままでは、正常なのか異常なのか(例えば回路に断線等が生じているのか)判別し難い。このため、導電性が低いセンサに、敢えて、比較的高い電圧を印加して、通電させてみる必要がある。あるいは、センサを試験的に作動させて通電状態をチェックする必要がある。したがって、作動診断が煩雑である。これに対して、本発明の防犯センサの場合、無荷重状態において高い導電性を有している。このため、無荷重状態のままで、正常、異常の判別がし易い。したがって、作動診断が容易である。例えば、玄関の施錠等に連動させて、本発明の防犯センサを作動させ、同センサが組み込まれている回路に電流が流れるようにすることで、容易に作動診断を行うことができる。
【0017】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記侵入口構成部材は、窓ガラス、扉、シャッターのうちのいずれか一つ以上である構成とするとよい(請求項2に対応)。
【0018】
上述したように、窓、玄関等は侵入口となりやすい。したがって、それらを構成する窓ガラス、扉、シャッターの破損を早期に検出することができれば、建物への不法侵入の防止に効果的である。したがって、本構成によると、建物への不法侵入の抑制効果をより高めることができる。
【0019】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記侵入口構成部材は、施錠可能な鍵部を備えており、該鍵部の近傍に配置されている構成とするとよい(請求項3に対応)。
【0020】
不法侵入者が窓や玄関から建物内に侵入する場合、鍵部を解錠するために、窓ガラスや扉における鍵部の近傍が破壊されやすい。この点、本構成によると、鍵部の近傍に本発明の防犯センサが配置されている。すなわち、本発明の防犯センサは、侵入時に最も破壊されやすい部分に配置されている。このため、より早期かつ確実に、侵入口構成部材の破損を検出することができる。
【0021】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記センサ本体は、温度が上昇するに従って電気抵抗が増加する構成とするとよい(請求項4に対応)。
【0022】
本発明者が検討した結果、本発明におけるセンサ本体は、ある温度以上において、温度が上昇するに従って電気抵抗が増加するという知見を得た。これは、所定の温度以上では、エラストマーが膨張することにより上述した三次元的な導電パスPが崩壊し、電気抵抗が増加するためと考えられる。これにより、例えば、急激な温度変化を伴う焼き破り等により侵入口構成部材が破損した場合には、変形による電気抵抗の増加に加えて、温度上昇による電気抵抗の増加により、より早期かつ確実に侵入口構成部材の破損を検出することができる。
【0023】
(5)好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、前記センサ本体は、弾性的に曲げ変形可能である構成とするとよい(請求項5に対応)。本構成によると、侵入口構成部材が曲げ変形した時の電気抵抗の変化を検出することができる。また、単なる圧縮変形、伸張変形と比較して、曲げ変形の方が大きな変形量を確保し易い。このため、本構成によると、侵入口構成部材の曲げ変形による破損を、高精度で検出することができる。
【0024】
(6)好ましくは、上記(2)ないし(5)のいずれかの構成において、前記侵入口構成部材は、窓ガラスであって、該窓ガラスは、ガラス板と、該ガラス板の少なくとも一部を被覆するフィルム部材と、を有し、前記センサ本体は、該ガラス板に固定される固定面と、該固定面に背向する背向面と、を有し、該フィルム部材で該背向面側から該ガラス板と共に被覆することにより、該ガラス板に固定されている構成とするとよい(請求項6に対応)。
【0025】
本構成によると、センサ本体の背向面の変形が、フィルム部材により規制される。これにより、固定面の変形量と、背向面の変形量と、の較差が大きくなる。その結果、センサ本体全体としての変形量が大きくなり、電気抵抗の増加量も大きくなる。したがって、本構成によると、侵入口構成部材の破損をより検出し易くなる。また、フィルム部材が耐候性を有し、かつセンサ本体の室外側に配置されている場合は、センサ本体の劣化を抑制することができる。
【0026】
また、防犯等を目的として、ガラス板自体を補強するための、いわゆる防犯フィルムが知られている。例えば、フィルム部材として防犯フィルムを用いた場合には、ガラス板自体の強度も向上するため、より防犯効果が高くなる。加えて、防犯フィルムをガラス板に貼着する際に、本発明の防犯センサをガラス板に固定することができるため、設置が容易である。なお、本構成において、「ガラス板に固定されている」とは、センサ本体がガラス板に直接固定されている態様と、何らかの固定部材を介して間接的に固定されている態様と、の両方を含む。
【0027】
(7)好ましくは、上記(2)ないし(6)のいずれかの構成において、前記侵入口構成部材は、窓ガラスであって、該窓ガラスは、二枚以上のガラス板が積層されてなり、積層された該ガラス板のうち、隣り合う該ガラス板間に介装されている構成とするとよい(請求項7に対応)。
【0028】
本構成において、積層されたガラス板のうち隣り合うガラス板間には、空気層、真空層、樹脂層等のいずれが配置されていてもよい。すなわち、本構成における窓ガラスとしては、二枚のガラス板が空気層、あるいは真空層を挟んで積層されている複層ガラス、二枚のガラス板が樹脂製の中間膜を挟んで積層されている合わせガラス、これらを組み合わせた複層合わせガラス等が挙げられる。本構成によると、防犯センサは、隣り合うガラス板間に介装されている。つまり、防犯センサは、窓ガラスの室内側あるいは室外側に表出していない。このため、窓ガラス表面の平坦性を維持することができ、窓の開閉を妨げるおそれはない。また、防犯センサは窓ガラスの室内側あるいは室外側に表出していないため、防犯センサが障害物に接触、変形して誤作動するおそれが小さい。
【0029】
(8)好ましくは、上記(1)ないし(7)のいずれかの構成において、前記センサ本体は、前記エラストマーと前記導電性フィラーとを必須成分とするエラストマー組成物からなり、該エラストマー組成物の、該導電性フィラーの配合量と電気抵抗との関係を表すパーコレーションカーブにおいて、電気抵抗変化が飽和する第二変極点の該導電性フィラーの配合量(飽和体積分率:φs)が35vol%以上である構成とするとよい(請求項8に対応)。
【0030】
一般に、絶縁性のエラストマーに導電性フィラーを混合してエラストマー組成物とした場合、エラストマー組成物の電気抵抗は、導電性フィラーの配合量によって変化する。図3に、エラストマー組成物における、導電性フィラーの配合量と電気抵抗との関係を模式的に示す。
【0031】
図3に示すように、エラストマー101に導電性フィラー102を混合していくと、エラストマー組成物の電気抵抗は、はじめはエラストマー101の電気抵抗とほとんど変わらない。しかし、導電性フィラー102の配合量がある体積分率に達すると、電気抵抗が急激に低下して、絶縁体−導電体転移が起こる(第一変極点)。この第一変極点における導電性フィラー102の配合量を、臨界体積分率(φc)と称す。また、さらに導電性フィラー102を混合していくと、ある体積分率から、電気抵抗の変化が少なくなり電気抵抗変化が飽和する(第二変極点)。この第二変極点における導電性フィラー102の配合量を、飽和体積分率(φs)と称す。このような電気抵抗の変化は、パーコレーションカーブと呼ばれ、エラストマー101中に導電性フィラー102による導電パスP1が形成されるためと考えられている。
【0032】
例えば、導電性フィラーの粒子径が小さい、導電性フィラーとエラストマーとの相溶性が悪い等の理由により、導電性フィラーが凝集し、凝集体が形成されている場合には、一次元的な導電パスが形成され易い。このような場合には、エラストマー組成物の臨界体積分率(φc)は、20vol%程度と比較的小さくなる。同様に、飽和体積分率(φs)も比較的小さくなる。言い換えると、臨界体積分率(φc)および飽和体積分率(φs)が小さい場合には、導電性フィラーは一次粒子として存在し難く、二次粒子(凝集体)を形成し易い。よって、この場合、導電性フィラーをエラストマー中に多量に配合することは難しい。つまり、導電性フィラーを最密充填に近い状態で配合することは難しい。また、粒子径の小さな導電性フィラーを多量に配合すると、凝集構造が三次元的に成長するため、変形に対する導電性の変化が乏しくなる。
【0033】
本構成によると、センサ本体は、飽和体積分率(φs)が35vol%以上であるエラストマー組成物からなる。飽和体積分率(φs)が35vol%以上と大きいため、導電性フィラーは、エラストマー中に略単粒子状態で安定に存在する。よって、導電性フィラーを、最密充填に近い状態で配合することができる。
【0034】
(9)好ましくは、上記(1)ないし(8)のいずれかの構成において、前記導電性フィラーの充填率は、前記センサ本体の全体の体積を100vol%とした場合の30vol%以上65vol%以下である構成とするとよい(請求項9に対応)。
【0035】
本構成によると、エラストマー中に導電性フィラーが最密充填に近い状態で配合される。よって、センサ本体に、導電性フィラーによる三次元的な導電パスが形成され易くなる。
【0036】
(10)好ましくは、上記(1)ないし(9)のいずれかの構成において、前記導電性フィラーは、カーボンビーズである構成とするとよい(請求項10に対応)。
【0037】
カーボンビーズは、導電性が良好で、比較的安価である。また、略真球状を呈しているため、高充填率で配合することができる。
【0038】
(11)好ましくは、上記(1)ないし(10)のいずれかの構成において、前記導電性フィラーの平均粒子径は、0.05μm以上100μm以下である構成とするとよい(請求項11に対応)。
【0039】
本構成によると、導電性フィラーは凝集し難く、一次粒子の状態で存在し易い。なお、平均粒子径は、一次粒子の状態で存在する導電性フィラーの平均粒子径を意味する。
【0040】
(12)好ましくは、上記(1)ないし(11)のいずれかの構成において、前記エラストマーは、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴムから選ばれる一種以上を含む構成とするとよい(請求項12に対応)。
【0041】
本構成によると、エラストマーと導電性フィラーとの相溶性が良好である。このため、導電性フィラーが一次粒子の状態で存在し易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の防犯センサの実施形態について説明する。まず、本発明の防犯センサの実施形態について説明し、次に、本発明の防犯センサを構成するセンサ本体について詳しく説明する。
【0043】
〈防犯センサ〉
以下に示す実施形態は、本発明の防犯センサを、建物の窓の防犯システムに組み込んだものである。
【0044】
(1)第一実施形態
まず、本実施形態の防犯センサが組み込まれた防犯システムの配置について説明する。図4に、本実施形態の防犯センサが配置された窓の正面図を示す。なお、図4において紙面表側が建物の室内側であり、紙面裏側が建物の室外側である。図4に示すように、窓9は、窓ガラス90L、90Rと、窓枠91L、91Rと、レール枠部92と、鍵部93と、を備えている。
【0045】
レール枠部92は、窓9の長方形状の開口部周縁に、上下、左右、各々一対づつ対向して配置されている。窓枠91L、91Rは、各々長方形状を呈している。窓枠91L、91Rは、開口部を左右に二分するよう、各々レール枠部92の内側に配置されている。窓枠91L、91Rは、レール枠部92に沿って左右に互いに引き違えて移動するよう配置されている。窓枠91L、91Rの枠内には、各々、窓ガラス90L、90Rが嵌め込まれている。窓ガラス90L、90Rは、各々一枚のガラス板(フロートガラス)からなり、長方形状を呈している。窓9の開閉時には、窓ガラス90Lが窓ガラス90Rの室外側を移動する。
【0046】
鍵部93は、可動部930と受け部(図略)とを備えている。可動部930は、室内外方向に揺動可能に、取付部931を介して、窓枠91Rの左縁側面に取り付けられている。受け部(図略)は、可動部930と係合するよう、窓枠91Lの室内側右縁に取り付けられている。可動部930と受け部(図略)との係合により、窓9は施錠されている。
【0047】
防犯システム1は、防犯センサ2と、制御装置3と、警報装置4と、を備えている。防犯センサ2は、窓ガラス90Lの室内側右縁に沿って、上下方向に延設されている。また、制御装置3と警報装置4とは、共に窓枠91Lの室内側左縁上方に配置されている。制御装置3と警報装置4とは、外見上単一の部品として形成されている。防犯センサ2と制御装置3とは、窓枠91Lの室内側上縁に沿って配策されている導線50により接続されている。
【0048】
次に、防犯センサ2の構成について説明する。図5に、防犯センサ2付近の斜視図を示す。なお、説明の便宜上、導線50を省略し、接着用フィルム51を半分剥がした状態を示す。図4、図5に示すように、防犯センサ2は、センサ本体20と電極21A、21Bとを備えている。センサ本体20は、上下方向に延びる長尺板状を呈している。センサ本体20、電極21A、21Bは、接着用フィルム51で被覆されている。接着用フィルム51は、ポリイミド製である。接着用フィルム51の一面(窓ガラス90L側の表面)には、接着剤が塗布されている。図5中白抜き矢印で示すように、接着用フィルム51が窓ガラス90Lに貼り付けられることにより、センサ本体20は、窓ガラス90Lの室内側表面に固定されている。
【0049】
センサ本体20は、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)中に、カーボンビーズ(日本カーボン社製「ニカビーズ(登録商標)ICB0520」、平均粒子径約5μm)が配合されたエラストマー複合材料からなる。カーボンビーズの充填率は、センサ本体20の体積を100vol%とした場合の48vol%である。また、EPDMにカーボンビーズを混合したエラストマー組成物のパーコレーションカーブにおいて、臨界体積分率(φc)は43vol%、飽和体積分率(φs)は48vol%である。
【0050】
センサ本体20の上端には電極21Aが、下端には電極21Bが、各々取り付けられている。詳しく説明すると、電極21A、21Bは、各々金属製であって、左右に延びる短冊状を呈している。電極21A、21Bは、センサ本体20と窓ガラス90Lとの間、および接着用フィルム51と窓ガラス90Lとの間に、介装されている。電極21A、21Bと制御装置3とは、各々導線50により接続されている。導線50は、センサ本体20と同様に、接着用フィルム51により被覆され、窓ガラス90L、窓枠91Lに固定されている。
【0051】
次に、本実施形態の防犯システム1の電気的構成について説明する。図6に、本実施形態の防犯システムのブロック図を示す。図6に示すように、本実施形態の防犯システム1は、防犯センサ2と、制御装置3と、警報装置4と、を備えている。ここで、制御装置3は、ブリッジ回路30と、増幅回路31と、入力回路32と、演算部33と、記憶部34と、出力回路35と、を備えている。
【0052】
ブリッジ回路30には、抵抗R1〜R3が配置されている。抵抗R1〜R3と、センサ本体20の抵抗Rとにより、ホイーストンブリッジ回路が構成されている。電源Vin(詳しくは制御装置3の内部電源)の電圧、抵抗R1〜R3の電気抵抗値は、各々既知である。このため、抵抗R2と抵抗R3との中間電位V1と、抵抗Rと抵抗R1との中間電位V2と、の電位差を測定することにより、実質的にセンサ本体20の抵抗Rを測定することができる。
【0053】
増幅回路31には、中間電位V1、V2が入力される。中間電位V1、V2の電位差ΔVは、増幅回路31により増幅され、アナログの電圧データとして、入力回路32に入力される。入力回路32は、入力されるアナログの電圧データを、デジタルデータに変換する。記憶部34には、予め警報作動用プログラムが格納されている。並びに、警報作動用電圧しきい値th1が格納されている。演算部33は、警報作動用電圧しきい値th1と、入力回路32から入力されるデジタルデータと、を比較する。出力回路35は、警報装置4に接続されている。出力回路35は、スイッチング素子(図略)を備えている。出力回路35は、警報装置4を作動させて、警報を鳴らす。
【0054】
次に、本実施形態の防犯システム1の動きについて説明する。まず、窓9の平常時について説明する。平常時においては、センサ本体20は、無荷重状態で自然状態にある。ここで、前出図1に示すように、導電性フィラー102は、最密充填に近い状態で充填されている。このため、平常時においては、多数の導電パスPが形成されている。したがって、センサ本体20の電気抵抗値は、最小値である。
【0055】
前出図6に示すように、中間電位V1、V2の電位差ΔVは、増幅回路31により増幅され、入力回路32に常時伝送されている。そして、入力回路32にてデジタル変換された後、演算部33に入力される。一方、記憶部34には、前述したように、警報作動用電圧しきい値th1が格納されている。演算部33は、電位差(詳しくは増幅かつデジタル変換後の電位差。以下本実施形態において同様。)ΔVと、警報作動用電圧しきい値th1と、を比較する。平常時には、電位差ΔV<警報作動用電圧しきい値th1となるように設定されている。
【0056】
次に、窓ガラス90Lの破損時について説明する。例えば、不法侵入者が、鍵部93付近の窓ガラス90Lをハンマーなどで打ち破った場合、窓ガラス90Lの破損に伴いセンサ本体20が室内側に凹むように湾曲変形する。センサ本体20が湾曲変形すると、その分抵抗Rの電気抵抗値が大きくなる。詳しく説明すると、窓ガラス90Lの破損時においては、前出図2に示すように、導電性フィラー102同士が反発し合う。このため、導電パスPが崩壊してしまう。したがって、抵抗Rの電気抵抗値は、平常時に対して大きくなる。
【0057】
加えて、前出図4、図5に示すように、センサ本体20の窓ガラス90Lとの固定面と背向する表面(背向面)には、接着用フィルム51が固定されている。このため、変形に伴うセンサ本体20背向面付近の伸張変形は、接着用フィルム51により拘束される。具体的には、接着用フィルム51により、センサ本体20背向面付近の伸張変形は規制され、センサ本体20は剪断変形する。したがって、より一層、平常時に対するセンサ本体20の変形量は大きくなる。このように、センサ本体20の両面が拘束されているため、大きな歪み集中が誘起され、より一層、抵抗Rの電気抵抗値は大きくなる。
【0058】
抵抗Rの電気抵抗値が大きくなると、その分抵抗Rを通過する際の、電源Vinの電圧降下量が大きくなる。したがって、平常時と比較して、中間電位V2が低くなる。中間電位V2が低くなり、電位差ΔV≧警報作動用電圧しきい値th1となった場合、出力回路35のスイッチング素子がオンになる。これにより、警報装置4の警報が鳴る。
【0059】
次に、本実施形態の防犯センサ2の作用効果について説明する。前出図1に示すように、防犯センサ2は、窓ガラス90Lに配置されている。このため、窓ガラス90Lの破損を検出することができる。すなわち、侵入経路のなかでも最も多い窓9からの不法侵入を検出することができる。また、防犯センサ2が、窓ガラス90Lの鍵部93近傍に配置されている。よって、最初に破損されやすい鍵部93近傍の破損を確実に検出することができる。これにより、窓9からの不法侵入を早期かつ確実に検出することができる。
【0060】
また、センサ本体20は、約80℃以上になると、温度が上昇するに従って電気抵抗が増加する。よって、例えば、バーナー等で窓ガラス90Lが焼き破られた場合には、変形による電気抵抗の増加に加えて、急激な温度上昇により電気抵抗が増加するので、より早期かつ確実に窓ガラス90Lの破損を検出することができる。
【0061】
本実施形態では、センサ本体20は上下方向に延びる長尺板状を呈している。このため、窓ガラス90Lの鍵部93近傍はもちろん、その上下方向に延びる広範囲における破損を検出することができる。なお、センサ本体20の厚さは薄いため、窓9の開閉時に、窓枠91Rおよび窓ガラス90Rと干渉することはない。
【0062】
また、防犯センサ2は、接着用フィルム51により窓ガラス90Lに固定されている。このように、既存の窓ガラス90Lに貼着するという簡便な作業で、防犯センサ2を設置することができる。ここで、接着用フィルム51は薄膜状を呈しているため、窓9の開閉時に、窓枠91Rおよび窓ガラス90Rと干渉することはない。同様に、防犯センサ2と制御装置3とを接続する導線50も、接着用フィルム51により固定されている。このため、導線50の固定も容易である。加えて、導線50の弛み等の不具合が生じにくく、検出精度が高い。また、窓9の開閉時にも、窓枠91Rおよび窓ガラス90Rと干渉しない。さらに、制御装置3および警報装置4は、窓枠91Lの左縁上方に配置されている。ここで、窓枠91L、91Rは、窓9の開放時に、窓枠91Rの左縁が窓枠91Lの左縁と重ならないよう配置されている。よって、制御装置3および警報装置4は、窓9の開放時に邪魔になることはない。
【0063】
本実施形態では、電位差ΔVそのものに基づいて、窓ガラス90Lの破損の有無を判別している。このため、電位差を一旦電気抵抗に変換してから判別を行う場合と比較して、破損から警報装置4が作動するまでの時間が短くて済む。また、防犯システム1を作動させると、防犯センサ2に電流が流れ、常時通電状態となる。これにより、容易に作動診断を行うことができる。
【0064】
また、加速度に基づいて破損を検出する場合と比較して、誤判別が少ない。すなわち、加速度は、風による振動や、ペットがぶつかる等の小さな振動でも生じるため、それらを破損として誤判別するおそれがある。これに対して、本実施形態の防犯センサ2は、破損という事象に対して、言わば不可避的に発生する窓ガラス90Lの変形を、確実に検出することができる。このため、加速度に基づいて破損を検出する場合と比較して、誤判別が少ない。また、誤判別が少ないので、誤判別抑制のために敢えて回路を複雑化する必要も少ない。
【0065】
(2)第二実施形態
本実施形態と第一実施形態との相違点は、防犯フィルムを貼着した窓ガラスに防犯センサが配置されている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0066】
図7に、防犯センサ2付近の斜視図を示す。なお、説明の便宜上、導線50を省略し、防犯フィルム941Lを一部剥がした状態を示す。また、図5と対応する部位については、同じ符号で示す。図7に示すように、防犯センサ2は、窓ガラス94Lに配置されている。窓ガラス94Lは、ガラス板940Lと、防犯フィルム941Lとからなる。防犯フィルム941Lは、ガラス板940Lの室内側表面全体を覆うよう貼着されている。防犯センサ2は、ガラス板940Lと防犯フィルム941Lとの間に介装されている。つまり、センサ本体20および電極21A、21Bは、防犯フィルム941Lでガラス板940Lと共に被覆されることにより、ガラス板940Lの室内側表面に固定されている。ここで、センサ本体20におけるガラス板940Lとの当接面は、本発明の固定面に相当する。また、センサ本体20における防犯フィルム941Lとの当接面は、本発明の背向面に相当する。
【0067】
本実施形態の防犯センサは、第一実施形態の防犯センサと、構成が共通する部分に関しては同様の作用効果を有する。また、本実施形態の防犯センサ2によると、防犯フィルム941Lをガラス板940Lに貼着する際に、防犯センサ2をガラス板940Lに固定することができる。このため、防犯センサ2を簡便に設置することができる。また、防犯フィルム941Lを貼着することにより、ガラス板940L自体の強度も向上している。よって、防犯効果がより高い。さらに、防犯フィルム941Lは、ガラス板940Lの表面全体を被覆しているので、別途接着用フィルムにより防犯センサ2を固定するより、見栄えがいい。
【0068】
(3)第三実施形態
本実施形態と第一実施形態との相違点は、窓ガラスとして合わせガラスを用いた点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0069】
図8に、防犯センサ2付近の斜視図を示す。なお、説明の便宜上、導線50を省略し、第二ガラス板951Lおよび中間膜952Lを一部除去した状態を示す。また、図5と対応する部位については、同じ符号で示す。図8に示すように、防犯センサ2は、窓ガラス95Lに配置されている。窓ガラス95Lは、第一ガラス板950Lと、第二ガラス板951Lと、中間膜952Lとからなる。第一ガラス板950Lと第二ガラス板951Lとは、室内外方向に対向して配置されている。すなわち、第一ガラス板950Lは室外側に、第二ガラス板951Lは室内側に、配置されている。第一ガラス板950Lと第二ガラス板951Lとの間には、中間膜952Lが介装されている。中間膜952Lは、ポリビニルブチラール(PVB)製であり、第一ガラス板950Lと第二ガラス板951Lとの間に熱圧着されている。
【0070】
防犯センサ2は、第一ガラス板950Lと中間膜952Lとの間に介装されている。つまり、センサ本体20および電極21A、21Bは、中間膜952Lで第一ガラス板950Lと共に被覆されるように、第一ガラス板950Lの室内側表面に固定されている。ここで、センサ本体20における第一ガラス板950Lとの当接面は、本発明の固定面に相当する。また、センサ本体20における中間膜952Lとの当接面は、本発明の背向面に相当する。
【0071】
本実施形態の防犯センサは、第一実施形態の防犯センサと、構成が共通する部分に関しては同様の作用効果を有する。また、本実施形態の防犯センサ2によると、窓ガラス95Lを製造する際に、具体的には、第一ガラス板950Lおよび第二ガラス板951Lと、中間膜952Lとを熱圧着させる際に、同時に防犯センサ2を第一ガラス板950Lに固定することができる。このため、防犯センサ2を簡便に設置することができる。また、窓ガラス95Lは、合わせガラスであるため破損しにくい。よって、防犯効果がより高い。
【0072】
また、防犯センサ2は、第一ガラス板950Lと中間膜952Lとの間に介装されている。つまり、窓ガラス95Lの室内側あるいは室外側に表出していない。このため、窓ガラス95Lの表面の平坦性を損なうことはない。よって、窓9の開閉を妨げるおそれはない(前出図4参照)。また、防犯センサ2は、第一ガラス板950L、第二ガラス板951L、および中間膜952Lにより保護されているため、外部からの接触等により破損しにくい。また、防犯センサ2は、障害物に直接接触しないため、誤作動するおそれが小さい。さらに、防犯センサ2は、窓ガラス95Lの内部に組み込まれているため、見栄えがいい。
【0073】
(4)第四実施形態
本実施形態と第一実施形態との相違点は、窓ガラスとして複層ガラスを用いた点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0074】
図9に、防犯センサ2付近の斜視図を示す。なお、説明の便宜上、導線50を省略し、第二ガラス板961Lを一部除去した状態を示す。また、図5と対応する部位については、同じ符号で示す。図9に示すように、防犯センサ2は、窓ガラス96Lに配置されている。窓ガラス96Lは、第一ガラス板960Lと第二ガラス板961Lとからなる。第一ガラス板960Lと第二ガラス板961Lとは、室内外方向に対向して配置されている。すなわち、第一ガラス板960Lは室外側に、第二ガラス板961Lは室内側に、配置されている。第一ガラス板960Lと第二ガラス板961Lとの間には、空気層962Lが区画されている。
【0075】
防犯センサ2は、第一ガラス板960Lの室内側表面に、接着用フィルム51で固定されている。詳しくは、センサ本体20および電極21A、21Bが、第一ガラス板960Lの一部と共に接着用フィルム51で被覆されることにより、第一ガラス板960Lの室内側表面に固定されている。
【0076】
本実施形態の防犯センサは、第一実施形態の防犯センサと、構成が共通する部分に関しては同様の作用効果を有する。また、本実施形態の防犯センサ2によると、防犯センサ2は、第一ガラス板960Lと第二ガラス板961Lとの間に介装されている。つまり、窓ガラス96Lの室内側あるいは室外側に表出していない。このため、窓ガラス96Lの表面の平坦性を損なうことはない。よって、窓9の開閉を妨げるおそれはない(前出図4参照)。また、防犯センサ2は、第一ガラス板960Lおよび第二ガラス板961Lにより保護されているため、外部からの接触等により破損しにくい。また、防犯センサ2は、障害物に直接接触しないため、誤作動するおそれが小さい。さらに、防犯センサ2は、窓ガラス96Lの内部に組み込まれているため、見栄えがいい。
【0077】
(5)その他
以上、本発明の防犯センサの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0078】
例えば、上記実施形態では、いずれも本発明の防犯センサを窓ガラスに配置した。しかし、配置場所は、窓ガラスに限定されるものではない。例えば、窓に配置する場合には、窓ガラスと窓枠との隙間に配置されるシール部材、窓シャッター、雨戸等でもよい。窓以外としては、玄関、勝手口等の扉、店舗、車庫等のシャッター、門扉等に配置してもよい。これらの複数箇所に配置すれば、より防犯効果を高めることができる。また、一つの侵入口構成部材において、本発明の防犯センサを複数個配置してもよい。例えば、上記実施形態で示した窓ガラスの場合には、窓枠に沿って窓ガラスの二〜四辺に防犯センサを配置してもよい。こうすると、より広範囲に亘って破損を検出することができる。
【0079】
本発明の防犯センサを配置する窓ガラスの種類、厚み等は、特に限定されるものではない。上記実施形態で示したフロートガラス、合わせガラス、複層ガラスの他、型板ガラス、強化ガラス、網入りガラス、複層合わせガラス等であってもよい。また、接着用フィルム、防犯フィルムの材質も特に限定されるものではない。
【0080】
上記実施形態では、接着用フィルム等により、センサ本体を窓ガラスの表面に直接固定した。しかし、窓ガラスに防犯フィルム等が貼着されている場合には、その上にセンサ本体を間接的に固定してもよい。また、侵入口構成部材の材質等によっては、基材フィルム等の固定部材を介してセンサ本体を固定してもよい。
【0081】
センサ本体の構成は、上記実施形態に限定されるものではない。これについては、後述する。また、センサ本体の形状は、特に限定されるものではない。上記実施形態の長尺板状の他、四角板状、円板状等であってもよい。また、センサ本体に接続される電極数も特に限定されない。例えば、本実施形態のような長尺状のセンサ本体の場合、長手方向の所定間隔ごとに電極を配置すると、隣接する電極の間隔ごとに破損を検出することができるので、破損箇所の特定が可能となる。なお、電極をセンサ本体に加硫接着により固定すると、センサ本体の加硫成形と同時に、電極を配置することができる。
【0082】
本発明の防犯センサに接続される制御装置、警報装置の配置は、特に限定されるものではない。上記実施形態では、これらを導線で接続したが、センサ本体からの電圧データ等を無線で制御装置に電送してもよい。この場合は、配線が不要となるため、制御装置等の配置の自由度が高くなる。また、上記実施形態では、防犯センサから電圧データを出力したが、電気抵抗データを出力してもよい。また、警報装置の種類も特に限定されるものではない。警報を鳴らす他、警備会社や携帯電話等への通知を行うものでもよい。また、警報装置の代わりに、屋外に設置されたパトランプ等を制御装置に接続してもよい。
【0083】
また、侵入口構成部材の破損の判別方法も特に限定しない。例えば、センサ本体が窓ガラスに貼り付けられている場合、窓ガラスの破損により、センサ本体は破片と共に脱落する。この時、センサ本体には破片が貼り付いたままなので、破片の形状や重みなどに規制され、センサ本体が元の状態(無荷重状態)に、完全に復元しない場合がある。この点に着目して、一定時間経過後に、防犯センサの電気抵抗値が元の状態に復帰するか否かを基準にして、窓ガラスの破損の判別を行ってもよい。
【0084】
この点、加速度センサの場合、窓ガラスが風で撓んでも、あるいは破損しても、衝撃が無くなれば、加速度はゼロに復帰する。このため、窓ガラスが本当に割れたのか、あるいは単に撓んだだけなのか判別しにくい。これに対して、上記判別方法によると、電気抵抗値が一旦増加しても、速やかに元の状態に復帰すれば、窓ガラスは単に撓んだだけだと判別することができる。また、電気抵抗値が元の状態に復帰しなければ、窓ガラスは破壊されたと判別することができる。すなわち、破損と非破損とを明確に判別することができる。
【0085】
〈センサ本体〉
本発明の防犯センサを構成するセンサ本体は、エラストマーと導電性フィラーとを有する。エラストマーは、ゴムおよび熱可塑性エラストマーから適宜選択することができる。エラストマーは、絶縁性であることが望ましい。また、導電性フィラーとの混合物(エラストマー組成物)を調製した場合、パーコレーションカーブにおける飽和体積分率(φs)が35vol%以上となるものを用いることが望ましい。飽和体積分率(φs)が35vol%未満の場合には、導電性フィラーを略単粒子状態でかつ高充填率で配合することが難しいからである。また、飽和体積分率(φs)以上の領域においては、電気抵抗が低く、安定した導電性が発現される。よって、飽和体積分率(φs)が35vol%以上の場合には、変形した際の導電体から絶縁体への電気抵抗の変化範囲が広くなる。さらに、飽和体積分率(φs)が40vol%以上となるものを用いると、より好適である。なお、本明細書における「エラストマー組成物」は、エラストマーと球状の導電性フィラーとを必須成分とする。つまり、エラストマーと球状の導電性フィラーとの混合物でもよく、エラストマー、球状の導電性フィラー、および他の添加剤等の混合物であってもよい。
【0086】
また、導電性フィラーとの親和性を考慮して、次式(1)で表されるゲル分率が15%以下のエラストマーを用いるとよい。ゲル分率が10%以下であるとより好適である。
ゲル分率(%)=(Wg−Wf)/Wf×100・・・(1)
[式(1)中、Wgは、エラストマーに導電性フィラーを混合したエラストマー組成物を、エラストマーの良溶媒に溶解した際に得られる溶媒不溶分(導電性フィラーとエラストマーとからなるゲル分)の重量である。Wfは、導電性フィラーの重量である。なお、エラストマーの良溶媒としては、溶媒とエラストマーとのSP値(溶解度パラメータ)が近いものが望ましく、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン、クロロホルム等が挙げられる。]
【0087】
ゲル分率の値は、パーコレーションカーブにおける臨界体積分率(φc)の指標となる。すなわち、臨界体積分率(φc)が30vol%未満となる場合には、導電性フィラーの凝集体に吸着、結合したエラストマー分が多く存在するため、ゲル分率は比較的大きな値になる。反対に、臨界体積分率(φc)が30vol%以上となる場合には、導電性フィラーが略単粒子状態で存在するため、導電性フィラーの凝集体に吸着、結合したエラストマー分は少なく、ゲル分率は15%以下の比較的小さな値になる。
【0088】
エラストマーの具体例として、例えば、ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、エチレン−プロピレン共重合ゴム[エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)等]、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Cl−IIR、Br−IIR等)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(AR)、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム(CSM)、ヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、合成ラテックス等が挙げられる。また、熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、フッ素系等の各種熱可塑性エラストマー、およびこれらの誘導体が挙げられる。これらのうち、一種を単独で、あるいは二種以上を併せて用いればよい。なかでも、導電性フィラーとの相溶性が極めて良好なEPDMが好適である。また、導電性フィラーとの相溶性が良好なNBR、シリコーンゴムも好適である。
【0089】
導電性フィラーは、球状を呈する。なお、球状には、真球、略真球状は勿論、楕円球状、長円球状(一対の対向する半球を円柱で連結した形状)、部分球状、部分毎に半径の異なる球状、水滴形状等が含まれる。例えば、導電性フィラーのアスペクト比(短辺に対する長辺の比)は、1以上2以下の範囲が望ましい。アスペクト比が2より大きくなると、導電性フィラー同士の接触により一次元的な導電パスが形成され易いからである。この場合、上記飽和体積分率(φs)が35vol%未満となるおそれがある。また、エラストマー中における導電性フィラーの充填状態を、より最密充填状態に近づけるという観点から、導電性フィラーとして、真球あるいは極めて真球に近い形状(略真球状)の粒子を採用するとよい。
【0090】
導電性フィラーは、導電性を有する粒子であれば、特に限定されるものではない。例えば、炭素材料、金属等の微粒子が挙げられる。これらのうち、一種を単独で、あるいは二種以上を併せて用いることができる。
【0091】
導電性フィラーは、できるだけ凝集せず、一次粒子の状態で存在することが望ましい。よって、導電性フィラーを選択する際には、平均粒子径やエラストマーとの相溶性等を考慮するとよい。例えば、導電性フィラーの平均粒子径(一次粒子)は、0.05μm以上100μm以下であることが望ましい。0.05μm未満の場合には、凝集して二次粒子を形成し易い。また、上記飽和体積分率(φs)が35vol%未満となるおそれがある。好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。反対に、100μmを超えると、弾性変形による導電性フィラーの並進運動(平行運動)が、粒子径に比べて相対的に小さくなり、センサ本体の弾性変形に対する電気抵抗の変化が緩慢となる。好ましくは60μm以下、より好ましくは30μm以下である。なお、導電性フィラーとエラストマーとの組み合わせや、導電性フィラーの平均粒子径等を適宜調整することで、上記臨界体積分率(φc)および飽和体積分率(φs)を、所望の範囲内に調整することができる。
【0092】
また、導電性フィラーの粒度分布におけるD90/D10の値は、1以上30以下であることが望ましい。ここで、D90は、累積粒度曲線において積算重量が90%となる粒子径を、D10は、同積算重量が10%となる粒子径である。D90/D10の値が30を超えると、粒度分布がブロードになるため、センサ本体の変形量に対する電気抵抗の増加挙動が不安定になる。これにより、検出の再現性が低下するおそれがある。D90/D10の値が10以下であるとより好適である。なお、導電性フィラーとして、二種類以上の粒子を使用する場合には、D90/D10の値は100以下であればよい。
【0093】
このような導電性フィラーとしては、例えば、カーボンビーズが好適である。具体的には、大阪ガスケミカル社製のメソカーボンマイクロビーズ[MCMB6−28(平均粒子径約6μm)、MCMB10−28(平均粒子径約10μm)、MCMB25−28(平均粒子径約25μm)]、日本カーボン社製のカーボンマイクロビーズ:ニカビーズ(登録商標)ICB、ニカビーズPC、ニカビーズMC、ニカビーズMSB[ICB0320(平均粒子径約3μm)、ICB0520(平均粒子径約5μm)、ICB1020(平均粒子径約10μm)、PC0720(平均粒子径約7μm)、MC0520(平均粒子径約5μm)]、日清紡社製のカーボンビーズ(平均粒子径約10μm)等が挙げられる。
【0094】
導電性フィラーは、エラストマー中に高充填率で配合されている。所望の導電性を発現させるため、導電性フィラーは、パーコレーションカーブにおける臨界体積分率(φc)以上の割合で配合されていることが望ましい。導電性フィラーを略単粒子状態でかつ高充填率で配合するという観点から、臨界体積分率(φc)は30vol%以上であることが望ましい。35vol%以上であるとより好適である。したがって、例えば、導電性フィラーの充填率は、センサ本体の全体の体積を100vol%とした場合の30vol%以上65vol%以下であることが望ましい。30vol%未満の場合には、導電性フィラーが最密充填に近い状態で配合されないため、所望の導電性が発現しない。また、センサ本体の弾性変形に対する電気抵抗の変化が緩慢になり、電気抵抗の増加挙動を制御することが難しくなる。35vol%以上であるとより好適である。反対に、65vol%を超えると、エラストマーへの混合が困難となり、成形加工性が低下する。また、センサ本体が弾性変形し難くなる。55vol%以下であるとより好適である。
【0095】
センサ本体には、上記エラストマー、導電性フィラーに加え、各種添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、加硫促進剤、加硫助剤、老化防止剤、可塑剤、軟化剤、着色剤等が挙げられる。また、上記球状の導電性フィラーと共に、異形状(例えば、針状等)の導電性フィラーが配合されていても構わない。
【0096】
センサ本体は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、エラストマーに、加硫助剤、軟化剤等の添加剤を添加して、混練りする。続いて、導電性フィラーを加えて混練りした後、さらに、架橋剤、加硫促進剤を加えて混練りし、エラストマー組成物とする。次に、エラストマー組成物をシート状に成形し、それを金型に充填して、所定の条件下でプレス加硫する。
【実施例】
【0097】
以下、本発明の防犯センサを用いたガラス破損試験について説明する。
【0098】
(1)フロートガラス破損試験
〈試験方法〉
本試験には、以下のように作製したセンサ本体を使用した。まず、油展EPDM(住友化学社製「エスプレン(登録商標)6101」)85重量部(以下「部」と略称する)(85g)と、油展EPDM(住友化学社製「エスプレン601」)34部(34g)と、EPDM(住友化学社製「エスプレン505」)30部(30g)と、酸化亜鉛(白水化学工業社製)5部(5g)と、ステアリン酸(花王社製「ルナック(登録商標)S30」)1部(1g)と、パラフィン系プロセスオイル(日本サン石油社製「サンパー(登録商標)110」)20部(20g)と、をロール練り機にて素練りした。次に、カーボンビーズ(日本カーボン社製「ニカビーズICB0520」、平均粒子径約5μm、粒度分布におけるD90/D10=3.2)270部(270g)を添加して、ロール練り機にて混合し、分散させた。さらに、加硫促進剤として、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(大内新興化学社製「ノクセラー(登録商標)PZ−P」)1.5部(1.5g)、テトラメチルチウラムジスルフィド(三新化学社製「サンセラー(登録商標)TT−G」)1.5部(1.5g)、2−メルカプトベンゾチアゾール(大内新興化学社製「ノクセラーM−P」)0.5部(0.5g)と、硫黄(鶴見化学工業社製「サルファックスT−10」)0.56部(0.56g)と、を添加して、ロール練り機にて混合し、分散させ、エラストマー組成物を調製した。
【0099】
調製したエラストマー組成物中のカーボンビーズの体積分率は、エラストマー組成物全体の体積を100vol%とした場合の約48vol%であった。また、エラストマー組成物のパーコレーションカーブにおける臨界体積分率(φc)は、約43vol%、飽和体積分率(φs)は、約48vol%であった。また、エラストマー組成物を溶媒(トルエン)に溶解し、溶媒不溶分を測定したところ、ゲル分率は約3%であった。
【0100】
次に、エラストマー組成物を、所定の大きさの帯状に成形して成形体とした。その成形体を金型に充填し、長手方向両端に電極を配置して、170℃で30分間プレス加硫することにより、センサ本体を得た。得られたセンサ本体におけるカーボンビーズの充填率は、センサ本体の体積を100vol%とした場合の約48vol%であった。
【0101】
作製したセンサ本体を、フロートガラスの一方の表面(室内側表面)に取り付けて防犯センサを構成し、他方の表面(室外側表面)からの衝撃に対する防犯センサの応答性を評価した。図10に、防犯センサの配置図を示す。なお、各防犯センサの固定方法は、上記第一実施形態と同じとした(前出図5参照)。図10にハッチングで示すように、防犯センサ2は、フロートガラス80(縦425mm、横576mm)の周縁の五箇所に各々配置されている。防犯センサ2は、接着用フィルム(図略)によりフロートガラス80の表面に固定されている。防犯センサ2は、その配置により、第一下部:No.1、第二下部:No.5、上部:No.2、左部:No.3、右部:No.4、と番号付けされている。No.1〜4の防犯センサ2は、各々、窓枠81から約20mmだけ内側に離間して配置されている。また、No.5の防犯センサ2は、No.1の防犯センサ2から上方へ約10mm離間して配置されている。また、No.5の防犯センサ2の右端上方には、加速度センサ82が配置されている。
【0102】
防犯センサ2は、センサ本体20と、センサ本体20の両端に配置された電極(図略)と、を備えている。No.1〜4のセンサ本体20は、長さ50mm、厚さ0.5mmの長尺板状を呈している。No.5のセンサ本体20は、長さ145mm、厚さ0.5mmの長尺板状を呈している。センサ本体20は、電極および導線(共に図略)を介して外部回路に接続されている。フロートガラス80の室外側(紙面裏側方向)から衝撃が加わり、フロートガラス80が破損すると、防犯センサ2が変形する。防犯センサ2の電気抵抗値は、電極(図略)等から外部回路に出力される。また、衝撃の加速度は、加速度センサ82により測定される。
【0103】
試験は、次のようにして二種類行った。第一試験は、インパクトハンマでフロートガラス80の室外側表面(紙面裏側方向の面)の中央を叩いた。この時の衝撃の加速度、および各防犯センサ2の電気抵抗値の変化を測定した。なお、この時の衝撃では、フロートガラス80は破損していない。第二試験は、インパクトハンマでフロートガラス80の室外側表面の下方を叩き、フロートガラス80を破損させた。衝撃入力位置は、No.5の防犯センサ2の中央から上方に約50mm離間した位置(図10中点線円P)である。この時の衝撃の加速度、および各防犯センサ2の電気抵抗値の変化を測定した。
【0104】
〈試験結果〉
まず、第一試験の結果を図11に示す。図11は、第一試験におけるインパクトハンマの打力、衝撃の加速度、および各防犯センサの電気抵抗値の経時変化を示す。図11に示すように、インパクトハンマの衝撃に対して、加速度は大きく変化した。一方、電気抵抗値は、いずれの防犯センサにおいてもほとんど変化しなかった。これより、フロートガラスが破損しないような衝撃の場合には、本発明の防犯センサは応答しないことがわかる。つまり、本発明の防犯センサは、風などによる小さな振動で誤動作しにくい。
【0105】
次に、第二試験の結果を図12に示す。図12は、第二試験における衝撃の加速度、および各防犯センサの電気抵抗値の経時変化を示す。図12に示すように、フロートガラスを破損した衝撃に対して、加速度が変化すると共に、No.1、No.5の防犯センサの電気抵抗値が大きく増加した。一方、No.2〜4の防犯センサの電気抵抗値は、ほとんど変化しなかった。つまり、フロートガラスの破損位置に近い防犯センサ(No.1、5)のみが大きく応答した。このように、本発明の防犯センサによると、侵入口構成部材の破損を確実に検出することができると共に、破損位置の特定も可能である。
【0106】
〈加熱試験〉
上記No.1の防犯センサについて、加熱試験を行った。すなわち、No.1の防犯センサ付近を加熱して、センサ本体の温度と電気抵抗値との関係を調べた。結果を図13に示す。図13に示すように、約80℃以上において、電気抵抗値が急激に上昇した。これより、本発明の防犯センサは、変形による電気抵抗値の増加に加えて、温度上昇によっても電気抵抗値が増加することがわかる。このように、本発明の防犯センサは、侵入口構成部材の破損を検出すると共に、温度センサとしても機能する。
【0107】
(2)合わせガラス破損試験
〈試験方法〉
上記(1)の試験にて作製したセンサ本体を、合わせガラスの一方の表面(室内側表面)に取り付けて防犯センサを構成し、他方の表面(室外側表面)からの衝撃に対する防犯センサの応答性を評価した。合わせガラスにおける防犯センサの配置は、前出図10のNo.1およびNo.2の二箇所とした。各防犯センサは、上記(1)の試験と同様、接着用フィルムで固定した。また、加速度センサは、No.1の防犯センサの右側に配置した。
【0108】
試験は、衝撃の程度を変えて三種類行った。すなわち、インパクトハンマの打力を変えて、合わせガラスの室外側表面を叩き、衝撃の加速度、および各防犯センサの電気抵抗値の変化を測定した。衝撃入力位置は、No.1の防犯センサの中央から上方に約60mm離間した位置(前出図10中点線円P)とした。
【0109】
図14に、第一試験における衝撃入力時のモデル図を示す。図15に、第二試験における衝撃入力時のモデル図を示す。図16に、第三試験における衝撃入力時のモデル図を示す。図14〜図16に示すように、合わせガラス83は、第一ガラス板830と、第二ガラス板831と、中間膜832とからなる。第一ガラス板830は室外側に、第二ガラス板831は室内側に、各々対向して配置されている。第一ガラス板830と第二ガラス板831との間には、中間膜832が介装されている。中間膜832は、PVB製であり、第一ガラス板830と第二ガラス板831との間に熱圧着されている。防犯センサ2は、第二ガラス板831の室内側表面に固定されている。各試験において、インパクトハンマ84で合わせガラス83の室外側表面を叩き、衝撃の加速度、および各防犯センサ2の電気抵抗値の変化を測定した。第一試験では、図14に示すように、インパクトハンマ84による衝撃で、合わせガラス83は破損しなかった。第二試験では、図15に示すように、第一ガラス板830のみが破損した。第三試験では、図16に示すように、合わせガラス83、すなわち、第一ガラス板830および第二ガラス板831が破損し、これに伴いセンサ本体20も変形した。
【0110】
〈試験結果〉
まず、第一試験の結果を図17に示す。図17は、第一試験における衝撃の加速度、および各防犯センサの電気抵抗値の経時変化を示す。図17に示すように、インパクトハンマの衝撃に対して、加速度は大きく変化した。一方、電気抵抗値は、No.1、No.2のいずれの防犯センサにおいてもほとんど変化しなかった。これより、合わせガラスが破損しないような衝撃の場合には、本発明の防犯センサは応答しないことがわかる。したがって、本発明の防犯センサは、風などによる小さな振動では誤動作しにくい。
【0111】
次に、第二試験の結果を図18に示す。図18は、第二試験における衝撃の加速度、および各防犯センサの電気抵抗値の経時変化を示す。図18に示すように、第一ガラス板を破損した衝撃に対して、加速度が変化すると共に、No.1の防犯センサの電気抵抗値が僅かに増加した。一方、No.2の防犯センサの電気抵抗値は、ほとんど変化しなかった。
【0112】
次に、第三試験の結果を図19に示す。図19は、第三試験における衝撃の加速度、および各防犯センサの電気抵抗値の経時変化を示す。図19に示すように、合わせガラスを破損した衝撃に対して、加速度が変化すると共に、No.1の防犯センサの電気抵抗値が大きく増加した。一方、No.2の防犯センサの電気抵抗値は、ほとんど変化しなかった。つまり、合わせガラスの破損位置に近い防犯センサのみが大きく応答した。このように、本発明の防犯センサによると、侵入口構成部材の破損を確実に検出することができると共に、破損位置の特定も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明におけるセンサ本体の荷重印加前の導電パスを示す模式図である。
【図2】同センサ本体の荷重印加後の導電パスを示す模式図である。
【図3】エラストマー組成物におけるパーコレーションカーブの模式図である。
【図4】本発明の第一実施形態の防犯センサが配置された窓の正面図である。
【図5】同防犯センサ付近の斜視図である。
【図6】第一実施形態の防犯システムのブロック図である。
【図7】本発明の第二実施形態の防犯センサ付近の斜視図である。
【図8】本発明の第三実施形態の防犯センサ付近の斜視図である。
【図9】本発明の第四実施形態の防犯センサ付近の斜視図である。
【図10】フロートガラス破損試験における防犯センサの配置図である。
【図11】同試験における第一試験のインパクトハンマの打力、衝撃の加速度、および各防犯センサの電気抵抗値の経時変化を示すグラフである。
【図12】同試験における第二試験の衝撃の加速度、および各防犯センサの電気抵抗値の経時変化を示すグラフである。
【図13】センサ本体の温度と電気抵抗値との関係を示すグラフである。
【図14】合わせガラス破損試験における第一試験の衝撃入力時のモデル図である。
【図15】同試験における第二試験の衝撃入力時のモデル図である。
【図16】同試験における第三試験の衝撃入力時のモデル図である。
【図17】同試験における第一試験の衝撃の加速度、および各防犯センサの電気抵抗値の経時変化を示すグラフである。
【図18】同試験における第二試験の衝撃の加速度、および各防犯センサの電気抵抗値の経時変化を示すグラフである。
【図19】同試験における第三試験の衝撃の加速度、および各防犯センサの電気抵抗値の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0114】
1:防犯システム
2:防犯センサ 20:センサ本体 21A、21B:電極
3:制御装置 30:ブリッジ回路 31:増幅回路 32:入力回路 33:演算部
34:記憶部 35:出力回路
4:警報装置 50:導線 51:接着用フィルム
80:フロートガラス 81:窓枠 82:加速度センサ
83:合わせガラス 830:第一ガラス板 831:第二ガラス板 832:中間膜
84:インパクトハンマ
9:窓 90L、90R:窓ガラス 91L、91R:窓枠 92:レール枠部
93:鍵部 94L:窓ガラス 940L:ガラス板 941L:防犯フィルム
95L:窓ガラス 950L:第一ガラス板 951L:第二ガラス板
952L:中間膜 96L:窓ガラス 960L:第一ガラス板
961L:第二ガラス板 962L:空気層
100:センサ本体 101:エラストマー 102:導電性フィラー
ΔV:電位差 R1〜R3:抵抗 V1、V2:中間電位 Vin:電源
P:導電パス P1:導電パス
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部からの侵入口を構成する侵入口構成部材の破損を検出し、建物等への不法侵入を抑制するための防犯センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空き巣等の不法侵入が多発しており、防犯に対する意識が高まっている。例えば、一戸建て住宅の場合には窓が侵入口となりやすく、侵入方法の約7割はガラス破りである。その手口は、窓ガラスをハンマーで打ち破る、ドライバーでこじ破る、バーナーで焼き破る等、様々である。このようなガラス破りに対する防犯対策として、窓ガラス自体の強度を高めたり、窓ガラスに防犯センサを取り付ける試みがなされている。
【0003】
防犯センサとしては、例えば、窓、扉等の開放を検出するマグネットセンサ、ガラス破損時の衝撃を検出する振動センサ、導線の切断によりガラスの破損を検出する導線センサ等が挙げられる(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2002−42255号公報
【特許文献2】特開2002−190069号公報
【特許文献3】特開平11−39575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、マグネットセンサは、固定部に取り付けたリードスイッチ部と、窓、扉等の開閉可能な移動部に取り付けられたマグネット部と、の位置関係の変化により、窓、扉等の開放を検出する。つまり、マグネットセンサは、閉められていた窓や扉が開いた時にしか動作しない。このため、窓の開放を伴わない窓ガラスの打ち破り等には対応できず、充分とはいえない。一方、加えられた衝撃の加速度を検出する振動センサは、風による振動や、ペットがぶつかる等の小さな振動で誤動作することがある。また、振動センサを設置できるガラスの種類、厚さ等が制限されていることもある。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、広範囲に設置することができ、誤動作が少なく、侵入口構成部材の破損を確実に検出することのできる防犯センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の防犯センサは、エラストマーと、該エラストマー中に略単粒子状態でかつ高充填率で配合されている球状の導電性フィラーと、を有し、変形量が増加するに従って電気抵抗が増加する弾性変形可能なセンサ本体と、該センサ本体に接続され、該電気抵抗を出力可能な電極と、を備えてなり、外部からの侵入口を構成する侵入口構成部材に配置され、該侵入口構成部材の変形に伴う該センサ本体の変形から、該侵入口構成部材の破損を検出可能なことを特徴とする(請求項1に対応)。
【0007】
例えば、住宅等の建物への侵入口としては、窓、玄関等が挙げられる。不法侵入者が、建物への侵入を試みる際、これら侵入口を構成する窓ガラス、扉、シャッター等の侵入口構成部材を破損する場合が多い。この場合、破損により侵入口構成部材は変形する。ここで、本発明の防犯センサは、侵入口構成部材に配置されている。そして、変形量が増加するに従って電気抵抗が増加するセンサ本体を備えている。したがって、不法侵入者が侵入口構成部材を破損して、建物等に侵入しようとした場合には、侵入口構成部材と共にセンサ本体が変形する。センサ本体の変形による電気抵抗の増加に基づいて、侵入口構成部材の破損が検出される。このように、本発明の防犯センサによると、建物等への不法侵入を早期に検出することができる。また、センサ本体の変形による電気抵抗の増加に基づいて、侵入口構成部材の破損を検出するため、センサ本体の変形を伴わない小さな振動により誤動作することが少ない。
【0008】
また、本発明の防犯センサにおけるセンサ本体(以下、適宜「本発明におけるセンサ本体」と称す。)は、弾性変形可能であり、エラストマーと球状の導電性フィラーとを有する。本明細書において、「エラストマー」は、ゴムおよび熱可塑性エラストマーを含む。また、導電性フィラーは、エラストマー中に、略単粒子状態で、かつ高充填率で配合されている。ここで、「略単粒子状態」とは、導電性フィラーの全重量を100重量%とした場合の50重量%以上が、凝集した二次粒子としてではなく、単独の一次粒子の状態で存在していることをいう。また、「高充填率」とは、導電性フィラーが最密充填に近い状態で配合されていることをいう。
【0009】
このように、導電性フィラーが、略単粒子状態で、かつ高充填率で配合されると、エラストマー分(皮膜)を介した導電性フィラー同士の接触により、三次元的な導電パスが形成される。したがって、本発明におけるセンサ本体は、荷重が印加されていない状態(以下、適宜「無荷重状態」と称す。)、言い換えると、変形していない自然状態で、高い導電性を有する。なお、本明細書における「弾性変形」には、圧縮、伸張、曲げ等による変形がすべて含まれる。
【0010】
例えば、従来からある感圧導電性樹脂は、非圧縮状態で電気抵抗が大きく、圧縮により変形すると電気抵抗が減少する。これは、感圧導電性樹脂の構成から次のように説明することができる。すなわち、感圧導電性樹脂は、樹脂と、該樹脂に配合された導電性フィラーと、からなる。ここで、導電性フィラーの充填率は低い。このため、無荷重状態において、導電性フィラー同士は離れている。つまり、無荷重状態では、感圧導電性樹脂の電気抵抗は大きい。一方、荷重が印加され感圧導電性樹脂が変形すると、導電性フィラー同士が接触して、一次元的な導電パスが形成される。これにより、電気抵抗が減少する。
【0011】
これに対して、本発明におけるセンサ本体は、変形量が増加するに従って電気抵抗が増加する。この理由は、次のように考えられる。図1、図2に、本発明におけるセンサ本体の、荷重の印加前後における導電パスの変化をモデルで示す。ただし、図1、図2に示すのは、センサ本体の一例であり、本発明におけるセンサ本体、導電性フィラーの形状、材質等を何ら限定するものではない。
【0012】
図1に示すように、センサ本体100において、導電性フィラー102の多くは、エラストマー101中に一次粒子の状態で存在している。また、導電性フィラー102の充填率は高く、最密充填に近い状態で配合されている。これにより、無荷重状態において、センサ本体100には、導電性フィラー102による三次元的な導電パスPが形成されている。よって、無荷重状態では、センサ本体100の電気抵抗は小さい。一方、図2に示すように、センサ本体100に荷重が印加されると、センサ本体100は変形する(図2中の点線枠は、図1の無荷重状態を示している。)。ここで、導電性フィラー102は最密充填に近い状態で配合されているため、導電性フィラー102が移動できるスペースはほとんどない。よって、センサ本体100が変形すると、導電性フィラー102同士が反発し合い、導電性フィラー102同士の接触状態が変化する。その結果、三次元的な導電パスPが崩壊し、電気抵抗が増加する。
【0013】
このようなセンサ本体を備えた本発明の防犯センサは、電極から出力されるセンサ本体の電気抵抗の増加に基づいて、侵入口構成部材に生じる圧縮、伸張、曲げ等の様々な変形を直接検出することができる。これにより、侵入口構成部材の破損を検出することができる。ここで、「電気抵抗を出力可能」とは、電気抵抗を直接あるいは間接的に出力可能なことをいう。すなわち、直接、電極から電気抵抗を出力する場合は勿論、電圧や電流など電気抵抗に関連する他の電気量を出力する場合を含む。
【0014】
また、センサ本体はエラストマーを母材とする。このため、本発明の防犯センサは、加工性に優れ、形状設計の自由度が高い。よって、侵入口構成部材の形状や大きさ等によらず、広範囲に配置することができる。例えば、本発明の防犯センサを、侵入口構成部材を網羅するよう面状に配置すれば、侵入口構成部材の破損をもれなく検出することができる。また、センサ本体に接続される電極の数、配置を調整することにより、より細かなセンシングが可能となり、破損位置の特定も可能となる。
【0015】
本発明の防犯センサでは、エラストマーや導電性フィラーの種類、導電性フィラーの充填率等を調整することにより、無荷重状態における電気抵抗値を所定の範囲に設定することができる。このため、検出可能な変形量の範囲、つまり、検出レンジを大きくすることができる。加えて、変形量に対する電気抵抗の増加挙動を調整することができるため、所望の応答感度を実現することができる。
【0016】
また、本発明の防犯センサは、無荷重状態において高い導電性を有する。つまり、本発明の防犯センサは、無荷重状態において導電状態にある。このため、無荷重状態において、導電性の低いセンサ(例えば、従来の感圧導電性樹脂を用いたセンサ)と比較して、作動診断が容易である。すなわち、無荷重状態において導電性の低いセンサの場合、無荷重状態のままでは、正常なのか異常なのか(例えば回路に断線等が生じているのか)判別し難い。このため、導電性が低いセンサに、敢えて、比較的高い電圧を印加して、通電させてみる必要がある。あるいは、センサを試験的に作動させて通電状態をチェックする必要がある。したがって、作動診断が煩雑である。これに対して、本発明の防犯センサの場合、無荷重状態において高い導電性を有している。このため、無荷重状態のままで、正常、異常の判別がし易い。したがって、作動診断が容易である。例えば、玄関の施錠等に連動させて、本発明の防犯センサを作動させ、同センサが組み込まれている回路に電流が流れるようにすることで、容易に作動診断を行うことができる。
【0017】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記侵入口構成部材は、窓ガラス、扉、シャッターのうちのいずれか一つ以上である構成とするとよい(請求項2に対応)。
【0018】
上述したように、窓、玄関等は侵入口となりやすい。したがって、それらを構成する窓ガラス、扉、シャッターの破損を早期に検出することができれば、建物への不法侵入の防止に効果的である。したがって、本構成によると、建物への不法侵入の抑制効果をより高めることができる。
【0019】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記侵入口構成部材は、施錠可能な鍵部を備えており、該鍵部の近傍に配置されている構成とするとよい(請求項3に対応)。
【0020】
不法侵入者が窓や玄関から建物内に侵入する場合、鍵部を解錠するために、窓ガラスや扉における鍵部の近傍が破壊されやすい。この点、本構成によると、鍵部の近傍に本発明の防犯センサが配置されている。すなわち、本発明の防犯センサは、侵入時に最も破壊されやすい部分に配置されている。このため、より早期かつ確実に、侵入口構成部材の破損を検出することができる。
【0021】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記センサ本体は、温度が上昇するに従って電気抵抗が増加する構成とするとよい(請求項4に対応)。
【0022】
本発明者が検討した結果、本発明におけるセンサ本体は、ある温度以上において、温度が上昇するに従って電気抵抗が増加するという知見を得た。これは、所定の温度以上では、エラストマーが膨張することにより上述した三次元的な導電パスPが崩壊し、電気抵抗が増加するためと考えられる。これにより、例えば、急激な温度変化を伴う焼き破り等により侵入口構成部材が破損した場合には、変形による電気抵抗の増加に加えて、温度上昇による電気抵抗の増加により、より早期かつ確実に侵入口構成部材の破損を検出することができる。
【0023】
(5)好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、前記センサ本体は、弾性的に曲げ変形可能である構成とするとよい(請求項5に対応)。本構成によると、侵入口構成部材が曲げ変形した時の電気抵抗の変化を検出することができる。また、単なる圧縮変形、伸張変形と比較して、曲げ変形の方が大きな変形量を確保し易い。このため、本構成によると、侵入口構成部材の曲げ変形による破損を、高精度で検出することができる。
【0024】
(6)好ましくは、上記(2)ないし(5)のいずれかの構成において、前記侵入口構成部材は、窓ガラスであって、該窓ガラスは、ガラス板と、該ガラス板の少なくとも一部を被覆するフィルム部材と、を有し、前記センサ本体は、該ガラス板に固定される固定面と、該固定面に背向する背向面と、を有し、該フィルム部材で該背向面側から該ガラス板と共に被覆することにより、該ガラス板に固定されている構成とするとよい(請求項6に対応)。
【0025】
本構成によると、センサ本体の背向面の変形が、フィルム部材により規制される。これにより、固定面の変形量と、背向面の変形量と、の較差が大きくなる。その結果、センサ本体全体としての変形量が大きくなり、電気抵抗の増加量も大きくなる。したがって、本構成によると、侵入口構成部材の破損をより検出し易くなる。また、フィルム部材が耐候性を有し、かつセンサ本体の室外側に配置されている場合は、センサ本体の劣化を抑制することができる。
【0026】
また、防犯等を目的として、ガラス板自体を補強するための、いわゆる防犯フィルムが知られている。例えば、フィルム部材として防犯フィルムを用いた場合には、ガラス板自体の強度も向上するため、より防犯効果が高くなる。加えて、防犯フィルムをガラス板に貼着する際に、本発明の防犯センサをガラス板に固定することができるため、設置が容易である。なお、本構成において、「ガラス板に固定されている」とは、センサ本体がガラス板に直接固定されている態様と、何らかの固定部材を介して間接的に固定されている態様と、の両方を含む。
【0027】
(7)好ましくは、上記(2)ないし(6)のいずれかの構成において、前記侵入口構成部材は、窓ガラスであって、該窓ガラスは、二枚以上のガラス板が積層されてなり、積層された該ガラス板のうち、隣り合う該ガラス板間に介装されている構成とするとよい(請求項7に対応)。
【0028】
本構成において、積層されたガラス板のうち隣り合うガラス板間には、空気層、真空層、樹脂層等のいずれが配置されていてもよい。すなわち、本構成における窓ガラスとしては、二枚のガラス板が空気層、あるいは真空層を挟んで積層されている複層ガラス、二枚のガラス板が樹脂製の中間膜を挟んで積層されている合わせガラス、これらを組み合わせた複層合わせガラス等が挙げられる。本構成によると、防犯センサは、隣り合うガラス板間に介装されている。つまり、防犯センサは、窓ガラスの室内側あるいは室外側に表出していない。このため、窓ガラス表面の平坦性を維持することができ、窓の開閉を妨げるおそれはない。また、防犯センサは窓ガラスの室内側あるいは室外側に表出していないため、防犯センサが障害物に接触、変形して誤作動するおそれが小さい。
【0029】
(8)好ましくは、上記(1)ないし(7)のいずれかの構成において、前記センサ本体は、前記エラストマーと前記導電性フィラーとを必須成分とするエラストマー組成物からなり、該エラストマー組成物の、該導電性フィラーの配合量と電気抵抗との関係を表すパーコレーションカーブにおいて、電気抵抗変化が飽和する第二変極点の該導電性フィラーの配合量(飽和体積分率:φs)が35vol%以上である構成とするとよい(請求項8に対応)。
【0030】
一般に、絶縁性のエラストマーに導電性フィラーを混合してエラストマー組成物とした場合、エラストマー組成物の電気抵抗は、導電性フィラーの配合量によって変化する。図3に、エラストマー組成物における、導電性フィラーの配合量と電気抵抗との関係を模式的に示す。
【0031】
図3に示すように、エラストマー101に導電性フィラー102を混合していくと、エラストマー組成物の電気抵抗は、はじめはエラストマー101の電気抵抗とほとんど変わらない。しかし、導電性フィラー102の配合量がある体積分率に達すると、電気抵抗が急激に低下して、絶縁体−導電体転移が起こる(第一変極点)。この第一変極点における導電性フィラー102の配合量を、臨界体積分率(φc)と称す。また、さらに導電性フィラー102を混合していくと、ある体積分率から、電気抵抗の変化が少なくなり電気抵抗変化が飽和する(第二変極点)。この第二変極点における導電性フィラー102の配合量を、飽和体積分率(φs)と称す。このような電気抵抗の変化は、パーコレーションカーブと呼ばれ、エラストマー101中に導電性フィラー102による導電パスP1が形成されるためと考えられている。
【0032】
例えば、導電性フィラーの粒子径が小さい、導電性フィラーとエラストマーとの相溶性が悪い等の理由により、導電性フィラーが凝集し、凝集体が形成されている場合には、一次元的な導電パスが形成され易い。このような場合には、エラストマー組成物の臨界体積分率(φc)は、20vol%程度と比較的小さくなる。同様に、飽和体積分率(φs)も比較的小さくなる。言い換えると、臨界体積分率(φc)および飽和体積分率(φs)が小さい場合には、導電性フィラーは一次粒子として存在し難く、二次粒子(凝集体)を形成し易い。よって、この場合、導電性フィラーをエラストマー中に多量に配合することは難しい。つまり、導電性フィラーを最密充填に近い状態で配合することは難しい。また、粒子径の小さな導電性フィラーを多量に配合すると、凝集構造が三次元的に成長するため、変形に対する導電性の変化が乏しくなる。
【0033】
本構成によると、センサ本体は、飽和体積分率(φs)が35vol%以上であるエラストマー組成物からなる。飽和体積分率(φs)が35vol%以上と大きいため、導電性フィラーは、エラストマー中に略単粒子状態で安定に存在する。よって、導電性フィラーを、最密充填に近い状態で配合することができる。
【0034】
(9)好ましくは、上記(1)ないし(8)のいずれかの構成において、前記導電性フィラーの充填率は、前記センサ本体の全体の体積を100vol%とした場合の30vol%以上65vol%以下である構成とするとよい(請求項9に対応)。
【0035】
本構成によると、エラストマー中に導電性フィラーが最密充填に近い状態で配合される。よって、センサ本体に、導電性フィラーによる三次元的な導電パスが形成され易くなる。
【0036】
(10)好ましくは、上記(1)ないし(9)のいずれかの構成において、前記導電性フィラーは、カーボンビーズである構成とするとよい(請求項10に対応)。
【0037】
カーボンビーズは、導電性が良好で、比較的安価である。また、略真球状を呈しているため、高充填率で配合することができる。
【0038】
(11)好ましくは、上記(1)ないし(10)のいずれかの構成において、前記導電性フィラーの平均粒子径は、0.05μm以上100μm以下である構成とするとよい(請求項11に対応)。
【0039】
本構成によると、導電性フィラーは凝集し難く、一次粒子の状態で存在し易い。なお、平均粒子径は、一次粒子の状態で存在する導電性フィラーの平均粒子径を意味する。
【0040】
(12)好ましくは、上記(1)ないし(11)のいずれかの構成において、前記エラストマーは、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴムから選ばれる一種以上を含む構成とするとよい(請求項12に対応)。
【0041】
本構成によると、エラストマーと導電性フィラーとの相溶性が良好である。このため、導電性フィラーが一次粒子の状態で存在し易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の防犯センサの実施形態について説明する。まず、本発明の防犯センサの実施形態について説明し、次に、本発明の防犯センサを構成するセンサ本体について詳しく説明する。
【0043】
〈防犯センサ〉
以下に示す実施形態は、本発明の防犯センサを、建物の窓の防犯システムに組み込んだものである。
【0044】
(1)第一実施形態
まず、本実施形態の防犯センサが組み込まれた防犯システムの配置について説明する。図4に、本実施形態の防犯センサが配置された窓の正面図を示す。なお、図4において紙面表側が建物の室内側であり、紙面裏側が建物の室外側である。図4に示すように、窓9は、窓ガラス90L、90Rと、窓枠91L、91Rと、レール枠部92と、鍵部93と、を備えている。
【0045】
レール枠部92は、窓9の長方形状の開口部周縁に、上下、左右、各々一対づつ対向して配置されている。窓枠91L、91Rは、各々長方形状を呈している。窓枠91L、91Rは、開口部を左右に二分するよう、各々レール枠部92の内側に配置されている。窓枠91L、91Rは、レール枠部92に沿って左右に互いに引き違えて移動するよう配置されている。窓枠91L、91Rの枠内には、各々、窓ガラス90L、90Rが嵌め込まれている。窓ガラス90L、90Rは、各々一枚のガラス板(フロートガラス)からなり、長方形状を呈している。窓9の開閉時には、窓ガラス90Lが窓ガラス90Rの室外側を移動する。
【0046】
鍵部93は、可動部930と受け部(図略)とを備えている。可動部930は、室内外方向に揺動可能に、取付部931を介して、窓枠91Rの左縁側面に取り付けられている。受け部(図略)は、可動部930と係合するよう、窓枠91Lの室内側右縁に取り付けられている。可動部930と受け部(図略)との係合により、窓9は施錠されている。
【0047】
防犯システム1は、防犯センサ2と、制御装置3と、警報装置4と、を備えている。防犯センサ2は、窓ガラス90Lの室内側右縁に沿って、上下方向に延設されている。また、制御装置3と警報装置4とは、共に窓枠91Lの室内側左縁上方に配置されている。制御装置3と警報装置4とは、外見上単一の部品として形成されている。防犯センサ2と制御装置3とは、窓枠91Lの室内側上縁に沿って配策されている導線50により接続されている。
【0048】
次に、防犯センサ2の構成について説明する。図5に、防犯センサ2付近の斜視図を示す。なお、説明の便宜上、導線50を省略し、接着用フィルム51を半分剥がした状態を示す。図4、図5に示すように、防犯センサ2は、センサ本体20と電極21A、21Bとを備えている。センサ本体20は、上下方向に延びる長尺板状を呈している。センサ本体20、電極21A、21Bは、接着用フィルム51で被覆されている。接着用フィルム51は、ポリイミド製である。接着用フィルム51の一面(窓ガラス90L側の表面)には、接着剤が塗布されている。図5中白抜き矢印で示すように、接着用フィルム51が窓ガラス90Lに貼り付けられることにより、センサ本体20は、窓ガラス90Lの室内側表面に固定されている。
【0049】
センサ本体20は、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)中に、カーボンビーズ(日本カーボン社製「ニカビーズ(登録商標)ICB0520」、平均粒子径約5μm)が配合されたエラストマー複合材料からなる。カーボンビーズの充填率は、センサ本体20の体積を100vol%とした場合の48vol%である。また、EPDMにカーボンビーズを混合したエラストマー組成物のパーコレーションカーブにおいて、臨界体積分率(φc)は43vol%、飽和体積分率(φs)は48vol%である。
【0050】
センサ本体20の上端には電極21Aが、下端には電極21Bが、各々取り付けられている。詳しく説明すると、電極21A、21Bは、各々金属製であって、左右に延びる短冊状を呈している。電極21A、21Bは、センサ本体20と窓ガラス90Lとの間、および接着用フィルム51と窓ガラス90Lとの間に、介装されている。電極21A、21Bと制御装置3とは、各々導線50により接続されている。導線50は、センサ本体20と同様に、接着用フィルム51により被覆され、窓ガラス90L、窓枠91Lに固定されている。
【0051】
次に、本実施形態の防犯システム1の電気的構成について説明する。図6に、本実施形態の防犯システムのブロック図を示す。図6に示すように、本実施形態の防犯システム1は、防犯センサ2と、制御装置3と、警報装置4と、を備えている。ここで、制御装置3は、ブリッジ回路30と、増幅回路31と、入力回路32と、演算部33と、記憶部34と、出力回路35と、を備えている。
【0052】
ブリッジ回路30には、抵抗R1〜R3が配置されている。抵抗R1〜R3と、センサ本体20の抵抗Rとにより、ホイーストンブリッジ回路が構成されている。電源Vin(詳しくは制御装置3の内部電源)の電圧、抵抗R1〜R3の電気抵抗値は、各々既知である。このため、抵抗R2と抵抗R3との中間電位V1と、抵抗Rと抵抗R1との中間電位V2と、の電位差を測定することにより、実質的にセンサ本体20の抵抗Rを測定することができる。
【0053】
増幅回路31には、中間電位V1、V2が入力される。中間電位V1、V2の電位差ΔVは、増幅回路31により増幅され、アナログの電圧データとして、入力回路32に入力される。入力回路32は、入力されるアナログの電圧データを、デジタルデータに変換する。記憶部34には、予め警報作動用プログラムが格納されている。並びに、警報作動用電圧しきい値th1が格納されている。演算部33は、警報作動用電圧しきい値th1と、入力回路32から入力されるデジタルデータと、を比較する。出力回路35は、警報装置4に接続されている。出力回路35は、スイッチング素子(図略)を備えている。出力回路35は、警報装置4を作動させて、警報を鳴らす。
【0054】
次に、本実施形態の防犯システム1の動きについて説明する。まず、窓9の平常時について説明する。平常時においては、センサ本体20は、無荷重状態で自然状態にある。ここで、前出図1に示すように、導電性フィラー102は、最密充填に近い状態で充填されている。このため、平常時においては、多数の導電パスPが形成されている。したがって、センサ本体20の電気抵抗値は、最小値である。
【0055】
前出図6に示すように、中間電位V1、V2の電位差ΔVは、増幅回路31により増幅され、入力回路32に常時伝送されている。そして、入力回路32にてデジタル変換された後、演算部33に入力される。一方、記憶部34には、前述したように、警報作動用電圧しきい値th1が格納されている。演算部33は、電位差(詳しくは増幅かつデジタル変換後の電位差。以下本実施形態において同様。)ΔVと、警報作動用電圧しきい値th1と、を比較する。平常時には、電位差ΔV<警報作動用電圧しきい値th1となるように設定されている。
【0056】
次に、窓ガラス90Lの破損時について説明する。例えば、不法侵入者が、鍵部93付近の窓ガラス90Lをハンマーなどで打ち破った場合、窓ガラス90Lの破損に伴いセンサ本体20が室内側に凹むように湾曲変形する。センサ本体20が湾曲変形すると、その分抵抗Rの電気抵抗値が大きくなる。詳しく説明すると、窓ガラス90Lの破損時においては、前出図2に示すように、導電性フィラー102同士が反発し合う。このため、導電パスPが崩壊してしまう。したがって、抵抗Rの電気抵抗値は、平常時に対して大きくなる。
【0057】
加えて、前出図4、図5に示すように、センサ本体20の窓ガラス90Lとの固定面と背向する表面(背向面)には、接着用フィルム51が固定されている。このため、変形に伴うセンサ本体20背向面付近の伸張変形は、接着用フィルム51により拘束される。具体的には、接着用フィルム51により、センサ本体20背向面付近の伸張変形は規制され、センサ本体20は剪断変形する。したがって、より一層、平常時に対するセンサ本体20の変形量は大きくなる。このように、センサ本体20の両面が拘束されているため、大きな歪み集中が誘起され、より一層、抵抗Rの電気抵抗値は大きくなる。
【0058】
抵抗Rの電気抵抗値が大きくなると、その分抵抗Rを通過する際の、電源Vinの電圧降下量が大きくなる。したがって、平常時と比較して、中間電位V2が低くなる。中間電位V2が低くなり、電位差ΔV≧警報作動用電圧しきい値th1となった場合、出力回路35のスイッチング素子がオンになる。これにより、警報装置4の警報が鳴る。
【0059】
次に、本実施形態の防犯センサ2の作用効果について説明する。前出図1に示すように、防犯センサ2は、窓ガラス90Lに配置されている。このため、窓ガラス90Lの破損を検出することができる。すなわち、侵入経路のなかでも最も多い窓9からの不法侵入を検出することができる。また、防犯センサ2が、窓ガラス90Lの鍵部93近傍に配置されている。よって、最初に破損されやすい鍵部93近傍の破損を確実に検出することができる。これにより、窓9からの不法侵入を早期かつ確実に検出することができる。
【0060】
また、センサ本体20は、約80℃以上になると、温度が上昇するに従って電気抵抗が増加する。よって、例えば、バーナー等で窓ガラス90Lが焼き破られた場合には、変形による電気抵抗の増加に加えて、急激な温度上昇により電気抵抗が増加するので、より早期かつ確実に窓ガラス90Lの破損を検出することができる。
【0061】
本実施形態では、センサ本体20は上下方向に延びる長尺板状を呈している。このため、窓ガラス90Lの鍵部93近傍はもちろん、その上下方向に延びる広範囲における破損を検出することができる。なお、センサ本体20の厚さは薄いため、窓9の開閉時に、窓枠91Rおよび窓ガラス90Rと干渉することはない。
【0062】
また、防犯センサ2は、接着用フィルム51により窓ガラス90Lに固定されている。このように、既存の窓ガラス90Lに貼着するという簡便な作業で、防犯センサ2を設置することができる。ここで、接着用フィルム51は薄膜状を呈しているため、窓9の開閉時に、窓枠91Rおよび窓ガラス90Rと干渉することはない。同様に、防犯センサ2と制御装置3とを接続する導線50も、接着用フィルム51により固定されている。このため、導線50の固定も容易である。加えて、導線50の弛み等の不具合が生じにくく、検出精度が高い。また、窓9の開閉時にも、窓枠91Rおよび窓ガラス90Rと干渉しない。さらに、制御装置3および警報装置4は、窓枠91Lの左縁上方に配置されている。ここで、窓枠91L、91Rは、窓9の開放時に、窓枠91Rの左縁が窓枠91Lの左縁と重ならないよう配置されている。よって、制御装置3および警報装置4は、窓9の開放時に邪魔になることはない。
【0063】
本実施形態では、電位差ΔVそのものに基づいて、窓ガラス90Lの破損の有無を判別している。このため、電位差を一旦電気抵抗に変換してから判別を行う場合と比較して、破損から警報装置4が作動するまでの時間が短くて済む。また、防犯システム1を作動させると、防犯センサ2に電流が流れ、常時通電状態となる。これにより、容易に作動診断を行うことができる。
【0064】
また、加速度に基づいて破損を検出する場合と比較して、誤判別が少ない。すなわち、加速度は、風による振動や、ペットがぶつかる等の小さな振動でも生じるため、それらを破損として誤判別するおそれがある。これに対して、本実施形態の防犯センサ2は、破損という事象に対して、言わば不可避的に発生する窓ガラス90Lの変形を、確実に検出することができる。このため、加速度に基づいて破損を検出する場合と比較して、誤判別が少ない。また、誤判別が少ないので、誤判別抑制のために敢えて回路を複雑化する必要も少ない。
【0065】
(2)第二実施形態
本実施形態と第一実施形態との相違点は、防犯フィルムを貼着した窓ガラスに防犯センサが配置されている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0066】
図7に、防犯センサ2付近の斜視図を示す。なお、説明の便宜上、導線50を省略し、防犯フィルム941Lを一部剥がした状態を示す。また、図5と対応する部位については、同じ符号で示す。図7に示すように、防犯センサ2は、窓ガラス94Lに配置されている。窓ガラス94Lは、ガラス板940Lと、防犯フィルム941Lとからなる。防犯フィルム941Lは、ガラス板940Lの室内側表面全体を覆うよう貼着されている。防犯センサ2は、ガラス板940Lと防犯フィルム941Lとの間に介装されている。つまり、センサ本体20および電極21A、21Bは、防犯フィルム941Lでガラス板940Lと共に被覆されることにより、ガラス板940Lの室内側表面に固定されている。ここで、センサ本体20におけるガラス板940Lとの当接面は、本発明の固定面に相当する。また、センサ本体20における防犯フィルム941Lとの当接面は、本発明の背向面に相当する。
【0067】
本実施形態の防犯センサは、第一実施形態の防犯センサと、構成が共通する部分に関しては同様の作用効果を有する。また、本実施形態の防犯センサ2によると、防犯フィルム941Lをガラス板940Lに貼着する際に、防犯センサ2をガラス板940Lに固定することができる。このため、防犯センサ2を簡便に設置することができる。また、防犯フィルム941Lを貼着することにより、ガラス板940L自体の強度も向上している。よって、防犯効果がより高い。さらに、防犯フィルム941Lは、ガラス板940Lの表面全体を被覆しているので、別途接着用フィルムにより防犯センサ2を固定するより、見栄えがいい。
【0068】
(3)第三実施形態
本実施形態と第一実施形態との相違点は、窓ガラスとして合わせガラスを用いた点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0069】
図8に、防犯センサ2付近の斜視図を示す。なお、説明の便宜上、導線50を省略し、第二ガラス板951Lおよび中間膜952Lを一部除去した状態を示す。また、図5と対応する部位については、同じ符号で示す。図8に示すように、防犯センサ2は、窓ガラス95Lに配置されている。窓ガラス95Lは、第一ガラス板950Lと、第二ガラス板951Lと、中間膜952Lとからなる。第一ガラス板950Lと第二ガラス板951Lとは、室内外方向に対向して配置されている。すなわち、第一ガラス板950Lは室外側に、第二ガラス板951Lは室内側に、配置されている。第一ガラス板950Lと第二ガラス板951Lとの間には、中間膜952Lが介装されている。中間膜952Lは、ポリビニルブチラール(PVB)製であり、第一ガラス板950Lと第二ガラス板951Lとの間に熱圧着されている。
【0070】
防犯センサ2は、第一ガラス板950Lと中間膜952Lとの間に介装されている。つまり、センサ本体20および電極21A、21Bは、中間膜952Lで第一ガラス板950Lと共に被覆されるように、第一ガラス板950Lの室内側表面に固定されている。ここで、センサ本体20における第一ガラス板950Lとの当接面は、本発明の固定面に相当する。また、センサ本体20における中間膜952Lとの当接面は、本発明の背向面に相当する。
【0071】
本実施形態の防犯センサは、第一実施形態の防犯センサと、構成が共通する部分に関しては同様の作用効果を有する。また、本実施形態の防犯センサ2によると、窓ガラス95Lを製造する際に、具体的には、第一ガラス板950Lおよび第二ガラス板951Lと、中間膜952Lとを熱圧着させる際に、同時に防犯センサ2を第一ガラス板950Lに固定することができる。このため、防犯センサ2を簡便に設置することができる。また、窓ガラス95Lは、合わせガラスであるため破損しにくい。よって、防犯効果がより高い。
【0072】
また、防犯センサ2は、第一ガラス板950Lと中間膜952Lとの間に介装されている。つまり、窓ガラス95Lの室内側あるいは室外側に表出していない。このため、窓ガラス95Lの表面の平坦性を損なうことはない。よって、窓9の開閉を妨げるおそれはない(前出図4参照)。また、防犯センサ2は、第一ガラス板950L、第二ガラス板951L、および中間膜952Lにより保護されているため、外部からの接触等により破損しにくい。また、防犯センサ2は、障害物に直接接触しないため、誤作動するおそれが小さい。さらに、防犯センサ2は、窓ガラス95Lの内部に組み込まれているため、見栄えがいい。
【0073】
(4)第四実施形態
本実施形態と第一実施形態との相違点は、窓ガラスとして複層ガラスを用いた点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0074】
図9に、防犯センサ2付近の斜視図を示す。なお、説明の便宜上、導線50を省略し、第二ガラス板961Lを一部除去した状態を示す。また、図5と対応する部位については、同じ符号で示す。図9に示すように、防犯センサ2は、窓ガラス96Lに配置されている。窓ガラス96Lは、第一ガラス板960Lと第二ガラス板961Lとからなる。第一ガラス板960Lと第二ガラス板961Lとは、室内外方向に対向して配置されている。すなわち、第一ガラス板960Lは室外側に、第二ガラス板961Lは室内側に、配置されている。第一ガラス板960Lと第二ガラス板961Lとの間には、空気層962Lが区画されている。
【0075】
防犯センサ2は、第一ガラス板960Lの室内側表面に、接着用フィルム51で固定されている。詳しくは、センサ本体20および電極21A、21Bが、第一ガラス板960Lの一部と共に接着用フィルム51で被覆されることにより、第一ガラス板960Lの室内側表面に固定されている。
【0076】
本実施形態の防犯センサは、第一実施形態の防犯センサと、構成が共通する部分に関しては同様の作用効果を有する。また、本実施形態の防犯センサ2によると、防犯センサ2は、第一ガラス板960Lと第二ガラス板961Lとの間に介装されている。つまり、窓ガラス96Lの室内側あるいは室外側に表出していない。このため、窓ガラス96Lの表面の平坦性を損なうことはない。よって、窓9の開閉を妨げるおそれはない(前出図4参照)。また、防犯センサ2は、第一ガラス板960Lおよび第二ガラス板961Lにより保護されているため、外部からの接触等により破損しにくい。また、防犯センサ2は、障害物に直接接触しないため、誤作動するおそれが小さい。さらに、防犯センサ2は、窓ガラス96Lの内部に組み込まれているため、見栄えがいい。
【0077】
(5)その他
以上、本発明の防犯センサの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0078】
例えば、上記実施形態では、いずれも本発明の防犯センサを窓ガラスに配置した。しかし、配置場所は、窓ガラスに限定されるものではない。例えば、窓に配置する場合には、窓ガラスと窓枠との隙間に配置されるシール部材、窓シャッター、雨戸等でもよい。窓以外としては、玄関、勝手口等の扉、店舗、車庫等のシャッター、門扉等に配置してもよい。これらの複数箇所に配置すれば、より防犯効果を高めることができる。また、一つの侵入口構成部材において、本発明の防犯センサを複数個配置してもよい。例えば、上記実施形態で示した窓ガラスの場合には、窓枠に沿って窓ガラスの二〜四辺に防犯センサを配置してもよい。こうすると、より広範囲に亘って破損を検出することができる。
【0079】
本発明の防犯センサを配置する窓ガラスの種類、厚み等は、特に限定されるものではない。上記実施形態で示したフロートガラス、合わせガラス、複層ガラスの他、型板ガラス、強化ガラス、網入りガラス、複層合わせガラス等であってもよい。また、接着用フィルム、防犯フィルムの材質も特に限定されるものではない。
【0080】
上記実施形態では、接着用フィルム等により、センサ本体を窓ガラスの表面に直接固定した。しかし、窓ガラスに防犯フィルム等が貼着されている場合には、その上にセンサ本体を間接的に固定してもよい。また、侵入口構成部材の材質等によっては、基材フィルム等の固定部材を介してセンサ本体を固定してもよい。
【0081】
センサ本体の構成は、上記実施形態に限定されるものではない。これについては、後述する。また、センサ本体の形状は、特に限定されるものではない。上記実施形態の長尺板状の他、四角板状、円板状等であってもよい。また、センサ本体に接続される電極数も特に限定されない。例えば、本実施形態のような長尺状のセンサ本体の場合、長手方向の所定間隔ごとに電極を配置すると、隣接する電極の間隔ごとに破損を検出することができるので、破損箇所の特定が可能となる。なお、電極をセンサ本体に加硫接着により固定すると、センサ本体の加硫成形と同時に、電極を配置することができる。
【0082】
本発明の防犯センサに接続される制御装置、警報装置の配置は、特に限定されるものではない。上記実施形態では、これらを導線で接続したが、センサ本体からの電圧データ等を無線で制御装置に電送してもよい。この場合は、配線が不要となるため、制御装置等の配置の自由度が高くなる。また、上記実施形態では、防犯センサから電圧データを出力したが、電気抵抗データを出力してもよい。また、警報装置の種類も特に限定されるものではない。警報を鳴らす他、警備会社や携帯電話等への通知を行うものでもよい。また、警報装置の代わりに、屋外に設置されたパトランプ等を制御装置に接続してもよい。
【0083】
また、侵入口構成部材の破損の判別方法も特に限定しない。例えば、センサ本体が窓ガラスに貼り付けられている場合、窓ガラスの破損により、センサ本体は破片と共に脱落する。この時、センサ本体には破片が貼り付いたままなので、破片の形状や重みなどに規制され、センサ本体が元の状態(無荷重状態)に、完全に復元しない場合がある。この点に着目して、一定時間経過後に、防犯センサの電気抵抗値が元の状態に復帰するか否かを基準にして、窓ガラスの破損の判別を行ってもよい。
【0084】
この点、加速度センサの場合、窓ガラスが風で撓んでも、あるいは破損しても、衝撃が無くなれば、加速度はゼロに復帰する。このため、窓ガラスが本当に割れたのか、あるいは単に撓んだだけなのか判別しにくい。これに対して、上記判別方法によると、電気抵抗値が一旦増加しても、速やかに元の状態に復帰すれば、窓ガラスは単に撓んだだけだと判別することができる。また、電気抵抗値が元の状態に復帰しなければ、窓ガラスは破壊されたと判別することができる。すなわち、破損と非破損とを明確に判別することができる。
【0085】
〈センサ本体〉
本発明の防犯センサを構成するセンサ本体は、エラストマーと導電性フィラーとを有する。エラストマーは、ゴムおよび熱可塑性エラストマーから適宜選択することができる。エラストマーは、絶縁性であることが望ましい。また、導電性フィラーとの混合物(エラストマー組成物)を調製した場合、パーコレーションカーブにおける飽和体積分率(φs)が35vol%以上となるものを用いることが望ましい。飽和体積分率(φs)が35vol%未満の場合には、導電性フィラーを略単粒子状態でかつ高充填率で配合することが難しいからである。また、飽和体積分率(φs)以上の領域においては、電気抵抗が低く、安定した導電性が発現される。よって、飽和体積分率(φs)が35vol%以上の場合には、変形した際の導電体から絶縁体への電気抵抗の変化範囲が広くなる。さらに、飽和体積分率(φs)が40vol%以上となるものを用いると、より好適である。なお、本明細書における「エラストマー組成物」は、エラストマーと球状の導電性フィラーとを必須成分とする。つまり、エラストマーと球状の導電性フィラーとの混合物でもよく、エラストマー、球状の導電性フィラー、および他の添加剤等の混合物であってもよい。
【0086】
また、導電性フィラーとの親和性を考慮して、次式(1)で表されるゲル分率が15%以下のエラストマーを用いるとよい。ゲル分率が10%以下であるとより好適である。
ゲル分率(%)=(Wg−Wf)/Wf×100・・・(1)
[式(1)中、Wgは、エラストマーに導電性フィラーを混合したエラストマー組成物を、エラストマーの良溶媒に溶解した際に得られる溶媒不溶分(導電性フィラーとエラストマーとからなるゲル分)の重量である。Wfは、導電性フィラーの重量である。なお、エラストマーの良溶媒としては、溶媒とエラストマーとのSP値(溶解度パラメータ)が近いものが望ましく、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン、クロロホルム等が挙げられる。]
【0087】
ゲル分率の値は、パーコレーションカーブにおける臨界体積分率(φc)の指標となる。すなわち、臨界体積分率(φc)が30vol%未満となる場合には、導電性フィラーの凝集体に吸着、結合したエラストマー分が多く存在するため、ゲル分率は比較的大きな値になる。反対に、臨界体積分率(φc)が30vol%以上となる場合には、導電性フィラーが略単粒子状態で存在するため、導電性フィラーの凝集体に吸着、結合したエラストマー分は少なく、ゲル分率は15%以下の比較的小さな値になる。
【0088】
エラストマーの具体例として、例えば、ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、エチレン−プロピレン共重合ゴム[エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)等]、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Cl−IIR、Br−IIR等)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(AR)、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム(CSM)、ヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、合成ラテックス等が挙げられる。また、熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、フッ素系等の各種熱可塑性エラストマー、およびこれらの誘導体が挙げられる。これらのうち、一種を単独で、あるいは二種以上を併せて用いればよい。なかでも、導電性フィラーとの相溶性が極めて良好なEPDMが好適である。また、導電性フィラーとの相溶性が良好なNBR、シリコーンゴムも好適である。
【0089】
導電性フィラーは、球状を呈する。なお、球状には、真球、略真球状は勿論、楕円球状、長円球状(一対の対向する半球を円柱で連結した形状)、部分球状、部分毎に半径の異なる球状、水滴形状等が含まれる。例えば、導電性フィラーのアスペクト比(短辺に対する長辺の比)は、1以上2以下の範囲が望ましい。アスペクト比が2より大きくなると、導電性フィラー同士の接触により一次元的な導電パスが形成され易いからである。この場合、上記飽和体積分率(φs)が35vol%未満となるおそれがある。また、エラストマー中における導電性フィラーの充填状態を、より最密充填状態に近づけるという観点から、導電性フィラーとして、真球あるいは極めて真球に近い形状(略真球状)の粒子を採用するとよい。
【0090】
導電性フィラーは、導電性を有する粒子であれば、特に限定されるものではない。例えば、炭素材料、金属等の微粒子が挙げられる。これらのうち、一種を単独で、あるいは二種以上を併せて用いることができる。
【0091】
導電性フィラーは、できるだけ凝集せず、一次粒子の状態で存在することが望ましい。よって、導電性フィラーを選択する際には、平均粒子径やエラストマーとの相溶性等を考慮するとよい。例えば、導電性フィラーの平均粒子径(一次粒子)は、0.05μm以上100μm以下であることが望ましい。0.05μm未満の場合には、凝集して二次粒子を形成し易い。また、上記飽和体積分率(φs)が35vol%未満となるおそれがある。好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。反対に、100μmを超えると、弾性変形による導電性フィラーの並進運動(平行運動)が、粒子径に比べて相対的に小さくなり、センサ本体の弾性変形に対する電気抵抗の変化が緩慢となる。好ましくは60μm以下、より好ましくは30μm以下である。なお、導電性フィラーとエラストマーとの組み合わせや、導電性フィラーの平均粒子径等を適宜調整することで、上記臨界体積分率(φc)および飽和体積分率(φs)を、所望の範囲内に調整することができる。
【0092】
また、導電性フィラーの粒度分布におけるD90/D10の値は、1以上30以下であることが望ましい。ここで、D90は、累積粒度曲線において積算重量が90%となる粒子径を、D10は、同積算重量が10%となる粒子径である。D90/D10の値が30を超えると、粒度分布がブロードになるため、センサ本体の変形量に対する電気抵抗の増加挙動が不安定になる。これにより、検出の再現性が低下するおそれがある。D90/D10の値が10以下であるとより好適である。なお、導電性フィラーとして、二種類以上の粒子を使用する場合には、D90/D10の値は100以下であればよい。
【0093】
このような導電性フィラーとしては、例えば、カーボンビーズが好適である。具体的には、大阪ガスケミカル社製のメソカーボンマイクロビーズ[MCMB6−28(平均粒子径約6μm)、MCMB10−28(平均粒子径約10μm)、MCMB25−28(平均粒子径約25μm)]、日本カーボン社製のカーボンマイクロビーズ:ニカビーズ(登録商標)ICB、ニカビーズPC、ニカビーズMC、ニカビーズMSB[ICB0320(平均粒子径約3μm)、ICB0520(平均粒子径約5μm)、ICB1020(平均粒子径約10μm)、PC0720(平均粒子径約7μm)、MC0520(平均粒子径約5μm)]、日清紡社製のカーボンビーズ(平均粒子径約10μm)等が挙げられる。
【0094】
導電性フィラーは、エラストマー中に高充填率で配合されている。所望の導電性を発現させるため、導電性フィラーは、パーコレーションカーブにおける臨界体積分率(φc)以上の割合で配合されていることが望ましい。導電性フィラーを略単粒子状態でかつ高充填率で配合するという観点から、臨界体積分率(φc)は30vol%以上であることが望ましい。35vol%以上であるとより好適である。したがって、例えば、導電性フィラーの充填率は、センサ本体の全体の体積を100vol%とした場合の30vol%以上65vol%以下であることが望ましい。30vol%未満の場合には、導電性フィラーが最密充填に近い状態で配合されないため、所望の導電性が発現しない。また、センサ本体の弾性変形に対する電気抵抗の変化が緩慢になり、電気抵抗の増加挙動を制御することが難しくなる。35vol%以上であるとより好適である。反対に、65vol%を超えると、エラストマーへの混合が困難となり、成形加工性が低下する。また、センサ本体が弾性変形し難くなる。55vol%以下であるとより好適である。
【0095】
センサ本体には、上記エラストマー、導電性フィラーに加え、各種添加剤が配合されていてもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、加硫促進剤、加硫助剤、老化防止剤、可塑剤、軟化剤、着色剤等が挙げられる。また、上記球状の導電性フィラーと共に、異形状(例えば、針状等)の導電性フィラーが配合されていても構わない。
【0096】
センサ本体は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、エラストマーに、加硫助剤、軟化剤等の添加剤を添加して、混練りする。続いて、導電性フィラーを加えて混練りした後、さらに、架橋剤、加硫促進剤を加えて混練りし、エラストマー組成物とする。次に、エラストマー組成物をシート状に成形し、それを金型に充填して、所定の条件下でプレス加硫する。
【実施例】
【0097】
以下、本発明の防犯センサを用いたガラス破損試験について説明する。
【0098】
(1)フロートガラス破損試験
〈試験方法〉
本試験には、以下のように作製したセンサ本体を使用した。まず、油展EPDM(住友化学社製「エスプレン(登録商標)6101」)85重量部(以下「部」と略称する)(85g)と、油展EPDM(住友化学社製「エスプレン601」)34部(34g)と、EPDM(住友化学社製「エスプレン505」)30部(30g)と、酸化亜鉛(白水化学工業社製)5部(5g)と、ステアリン酸(花王社製「ルナック(登録商標)S30」)1部(1g)と、パラフィン系プロセスオイル(日本サン石油社製「サンパー(登録商標)110」)20部(20g)と、をロール練り機にて素練りした。次に、カーボンビーズ(日本カーボン社製「ニカビーズICB0520」、平均粒子径約5μm、粒度分布におけるD90/D10=3.2)270部(270g)を添加して、ロール練り機にて混合し、分散させた。さらに、加硫促進剤として、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(大内新興化学社製「ノクセラー(登録商標)PZ−P」)1.5部(1.5g)、テトラメチルチウラムジスルフィド(三新化学社製「サンセラー(登録商標)TT−G」)1.5部(1.5g)、2−メルカプトベンゾチアゾール(大内新興化学社製「ノクセラーM−P」)0.5部(0.5g)と、硫黄(鶴見化学工業社製「サルファックスT−10」)0.56部(0.56g)と、を添加して、ロール練り機にて混合し、分散させ、エラストマー組成物を調製した。
【0099】
調製したエラストマー組成物中のカーボンビーズの体積分率は、エラストマー組成物全体の体積を100vol%とした場合の約48vol%であった。また、エラストマー組成物のパーコレーションカーブにおける臨界体積分率(φc)は、約43vol%、飽和体積分率(φs)は、約48vol%であった。また、エラストマー組成物を溶媒(トルエン)に溶解し、溶媒不溶分を測定したところ、ゲル分率は約3%であった。
【0100】
次に、エラストマー組成物を、所定の大きさの帯状に成形して成形体とした。その成形体を金型に充填し、長手方向両端に電極を配置して、170℃で30分間プレス加硫することにより、センサ本体を得た。得られたセンサ本体におけるカーボンビーズの充填率は、センサ本体の体積を100vol%とした場合の約48vol%であった。
【0101】
作製したセンサ本体を、フロートガラスの一方の表面(室内側表面)に取り付けて防犯センサを構成し、他方の表面(室外側表面)からの衝撃に対する防犯センサの応答性を評価した。図10に、防犯センサの配置図を示す。なお、各防犯センサの固定方法は、上記第一実施形態と同じとした(前出図5参照)。図10にハッチングで示すように、防犯センサ2は、フロートガラス80(縦425mm、横576mm)の周縁の五箇所に各々配置されている。防犯センサ2は、接着用フィルム(図略)によりフロートガラス80の表面に固定されている。防犯センサ2は、その配置により、第一下部:No.1、第二下部:No.5、上部:No.2、左部:No.3、右部:No.4、と番号付けされている。No.1〜4の防犯センサ2は、各々、窓枠81から約20mmだけ内側に離間して配置されている。また、No.5の防犯センサ2は、No.1の防犯センサ2から上方へ約10mm離間して配置されている。また、No.5の防犯センサ2の右端上方には、加速度センサ82が配置されている。
【0102】
防犯センサ2は、センサ本体20と、センサ本体20の両端に配置された電極(図略)と、を備えている。No.1〜4のセンサ本体20は、長さ50mm、厚さ0.5mmの長尺板状を呈している。No.5のセンサ本体20は、長さ145mm、厚さ0.5mmの長尺板状を呈している。センサ本体20は、電極および導線(共に図略)を介して外部回路に接続されている。フロートガラス80の室外側(紙面裏側方向)から衝撃が加わり、フロートガラス80が破損すると、防犯センサ2が変形する。防犯センサ2の電気抵抗値は、電極(図略)等から外部回路に出力される。また、衝撃の加速度は、加速度センサ82により測定される。
【0103】
試験は、次のようにして二種類行った。第一試験は、インパクトハンマでフロートガラス80の室外側表面(紙面裏側方向の面)の中央を叩いた。この時の衝撃の加速度、および各防犯センサ2の電気抵抗値の変化を測定した。なお、この時の衝撃では、フロートガラス80は破損していない。第二試験は、インパクトハンマでフロートガラス80の室外側表面の下方を叩き、フロートガラス80を破損させた。衝撃入力位置は、No.5の防犯センサ2の中央から上方に約50mm離間した位置(図10中点線円P)である。この時の衝撃の加速度、および各防犯センサ2の電気抵抗値の変化を測定した。
【0104】
〈試験結果〉
まず、第一試験の結果を図11に示す。図11は、第一試験におけるインパクトハンマの打力、衝撃の加速度、および各防犯センサの電気抵抗値の経時変化を示す。図11に示すように、インパクトハンマの衝撃に対して、加速度は大きく変化した。一方、電気抵抗値は、いずれの防犯センサにおいてもほとんど変化しなかった。これより、フロートガラスが破損しないような衝撃の場合には、本発明の防犯センサは応答しないことがわかる。つまり、本発明の防犯センサは、風などによる小さな振動で誤動作しにくい。
【0105】
次に、第二試験の結果を図12に示す。図12は、第二試験における衝撃の加速度、および各防犯センサの電気抵抗値の経時変化を示す。図12に示すように、フロートガラスを破損した衝撃に対して、加速度が変化すると共に、No.1、No.5の防犯センサの電気抵抗値が大きく増加した。一方、No.2〜4の防犯センサの電気抵抗値は、ほとんど変化しなかった。つまり、フロートガラスの破損位置に近い防犯センサ(No.1、5)のみが大きく応答した。このように、本発明の防犯センサによると、侵入口構成部材の破損を確実に検出することができると共に、破損位置の特定も可能である。
【0106】
〈加熱試験〉
上記No.1の防犯センサについて、加熱試験を行った。すなわち、No.1の防犯センサ付近を加熱して、センサ本体の温度と電気抵抗値との関係を調べた。結果を図13に示す。図13に示すように、約80℃以上において、電気抵抗値が急激に上昇した。これより、本発明の防犯センサは、変形による電気抵抗値の増加に加えて、温度上昇によっても電気抵抗値が増加することがわかる。このように、本発明の防犯センサは、侵入口構成部材の破損を検出すると共に、温度センサとしても機能する。
【0107】
(2)合わせガラス破損試験
〈試験方法〉
上記(1)の試験にて作製したセンサ本体を、合わせガラスの一方の表面(室内側表面)に取り付けて防犯センサを構成し、他方の表面(室外側表面)からの衝撃に対する防犯センサの応答性を評価した。合わせガラスにおける防犯センサの配置は、前出図10のNo.1およびNo.2の二箇所とした。各防犯センサは、上記(1)の試験と同様、接着用フィルムで固定した。また、加速度センサは、No.1の防犯センサの右側に配置した。
【0108】
試験は、衝撃の程度を変えて三種類行った。すなわち、インパクトハンマの打力を変えて、合わせガラスの室外側表面を叩き、衝撃の加速度、および各防犯センサの電気抵抗値の変化を測定した。衝撃入力位置は、No.1の防犯センサの中央から上方に約60mm離間した位置(前出図10中点線円P)とした。
【0109】
図14に、第一試験における衝撃入力時のモデル図を示す。図15に、第二試験における衝撃入力時のモデル図を示す。図16に、第三試験における衝撃入力時のモデル図を示す。図14〜図16に示すように、合わせガラス83は、第一ガラス板830と、第二ガラス板831と、中間膜832とからなる。第一ガラス板830は室外側に、第二ガラス板831は室内側に、各々対向して配置されている。第一ガラス板830と第二ガラス板831との間には、中間膜832が介装されている。中間膜832は、PVB製であり、第一ガラス板830と第二ガラス板831との間に熱圧着されている。防犯センサ2は、第二ガラス板831の室内側表面に固定されている。各試験において、インパクトハンマ84で合わせガラス83の室外側表面を叩き、衝撃の加速度、および各防犯センサ2の電気抵抗値の変化を測定した。第一試験では、図14に示すように、インパクトハンマ84による衝撃で、合わせガラス83は破損しなかった。第二試験では、図15に示すように、第一ガラス板830のみが破損した。第三試験では、図16に示すように、合わせガラス83、すなわち、第一ガラス板830および第二ガラス板831が破損し、これに伴いセンサ本体20も変形した。
【0110】
〈試験結果〉
まず、第一試験の結果を図17に示す。図17は、第一試験における衝撃の加速度、および各防犯センサの電気抵抗値の経時変化を示す。図17に示すように、インパクトハンマの衝撃に対して、加速度は大きく変化した。一方、電気抵抗値は、No.1、No.2のいずれの防犯センサにおいてもほとんど変化しなかった。これより、合わせガラスが破損しないような衝撃の場合には、本発明の防犯センサは応答しないことがわかる。したがって、本発明の防犯センサは、風などによる小さな振動では誤動作しにくい。
【0111】
次に、第二試験の結果を図18に示す。図18は、第二試験における衝撃の加速度、および各防犯センサの電気抵抗値の経時変化を示す。図18に示すように、第一ガラス板を破損した衝撃に対して、加速度が変化すると共に、No.1の防犯センサの電気抵抗値が僅かに増加した。一方、No.2の防犯センサの電気抵抗値は、ほとんど変化しなかった。
【0112】
次に、第三試験の結果を図19に示す。図19は、第三試験における衝撃の加速度、および各防犯センサの電気抵抗値の経時変化を示す。図19に示すように、合わせガラスを破損した衝撃に対して、加速度が変化すると共に、No.1の防犯センサの電気抵抗値が大きく増加した。一方、No.2の防犯センサの電気抵抗値は、ほとんど変化しなかった。つまり、合わせガラスの破損位置に近い防犯センサのみが大きく応答した。このように、本発明の防犯センサによると、侵入口構成部材の破損を確実に検出することができると共に、破損位置の特定も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明におけるセンサ本体の荷重印加前の導電パスを示す模式図である。
【図2】同センサ本体の荷重印加後の導電パスを示す模式図である。
【図3】エラストマー組成物におけるパーコレーションカーブの模式図である。
【図4】本発明の第一実施形態の防犯センサが配置された窓の正面図である。
【図5】同防犯センサ付近の斜視図である。
【図6】第一実施形態の防犯システムのブロック図である。
【図7】本発明の第二実施形態の防犯センサ付近の斜視図である。
【図8】本発明の第三実施形態の防犯センサ付近の斜視図である。
【図9】本発明の第四実施形態の防犯センサ付近の斜視図である。
【図10】フロートガラス破損試験における防犯センサの配置図である。
【図11】同試験における第一試験のインパクトハンマの打力、衝撃の加速度、および各防犯センサの電気抵抗値の経時変化を示すグラフである。
【図12】同試験における第二試験の衝撃の加速度、および各防犯センサの電気抵抗値の経時変化を示すグラフである。
【図13】センサ本体の温度と電気抵抗値との関係を示すグラフである。
【図14】合わせガラス破損試験における第一試験の衝撃入力時のモデル図である。
【図15】同試験における第二試験の衝撃入力時のモデル図である。
【図16】同試験における第三試験の衝撃入力時のモデル図である。
【図17】同試験における第一試験の衝撃の加速度、および各防犯センサの電気抵抗値の経時変化を示すグラフである。
【図18】同試験における第二試験の衝撃の加速度、および各防犯センサの電気抵抗値の経時変化を示すグラフである。
【図19】同試験における第三試験の衝撃の加速度、および各防犯センサの電気抵抗値の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0114】
1:防犯システム
2:防犯センサ 20:センサ本体 21A、21B:電極
3:制御装置 30:ブリッジ回路 31:増幅回路 32:入力回路 33:演算部
34:記憶部 35:出力回路
4:警報装置 50:導線 51:接着用フィルム
80:フロートガラス 81:窓枠 82:加速度センサ
83:合わせガラス 830:第一ガラス板 831:第二ガラス板 832:中間膜
84:インパクトハンマ
9:窓 90L、90R:窓ガラス 91L、91R:窓枠 92:レール枠部
93:鍵部 94L:窓ガラス 940L:ガラス板 941L:防犯フィルム
95L:窓ガラス 950L:第一ガラス板 951L:第二ガラス板
952L:中間膜 96L:窓ガラス 960L:第一ガラス板
961L:第二ガラス板 962L:空気層
100:センサ本体 101:エラストマー 102:導電性フィラー
ΔV:電位差 R1〜R3:抵抗 V1、V2:中間電位 Vin:電源
P:導電パス P1:導電パス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーと、該エラストマー中に略単粒子状態でかつ高充填率で配合されている球状の導電性フィラーと、を有し、変形量が増加するに従って電気抵抗が増加する弾性変形可能なセンサ本体と、
該センサ本体に接続され、該電気抵抗を出力可能な電極と、
を備えてなり、
外部からの侵入口を構成する侵入口構成部材に配置され、該侵入口構成部材の変形に伴う該センサ本体の変形から、該侵入口構成部材の破損を検出可能な防犯センサ。
【請求項2】
前記侵入口構成部材は、窓ガラス、扉、シャッターのうちのいずれか一つ以上である請求項1に記載の防犯センサ。
【請求項3】
前記侵入口構成部材は、施錠可能な鍵部を備えており、
該鍵部の近傍に配置されている請求項1または請求項2に記載の防犯センサ。
【請求項4】
前記センサ本体は、温度が上昇するに従って電気抵抗が増加する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の防犯センサ。
【請求項5】
前記センサ本体は、弾性的に曲げ変形可能である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の防犯センサ。
【請求項6】
前記侵入口構成部材は、窓ガラスであって、
該窓ガラスは、ガラス板と、該ガラス板の少なくとも一部を被覆するフィルム部材と、を有し、
前記センサ本体は、該ガラス板に固定される固定面と、該固定面に背向する背向面と、を有し、
該フィルム部材で該背向面側から該ガラス板と共に被覆することにより、該ガラス板に固定されている請求項2ないし請求項5のいずれかに記載の防犯センサ。
【請求項7】
前記侵入口構成部材は、窓ガラスであって、
該窓ガラスは、二枚以上のガラス板が積層されてなり、
積層された該ガラス板のうち、隣り合う該ガラス板間に介装されている請求項2ないし請求項6のいずれかに記載の防犯センサ。
【請求項8】
前記センサ本体は、前記エラストマーと前記導電性フィラーとを必須成分とするエラストマー組成物からなり、
該エラストマー組成物の、該導電性フィラーの配合量と電気抵抗との関係を表すパーコレーションカーブにおいて、電気抵抗変化が飽和する第二変極点の該導電性フィラーの配合量(飽和体積分率:φs)が35vol%以上である請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の防犯センサ。
【請求項9】
前記導電性フィラーの充填率は、前記センサ本体の全体の体積を100vol%とした場合の30vol%以上65vol%以下である請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の防犯センサ。
【請求項10】
前記導電性フィラーは、カーボンビーズである請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の防犯センサ。
【請求項11】
前記導電性フィラーの平均粒子径は、0.05μm以上100μm以下である請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の防犯センサ。
【請求項12】
前記エラストマーは、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴムから選ばれる一種以上を含む請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の防犯センサ。
【請求項1】
エラストマーと、該エラストマー中に略単粒子状態でかつ高充填率で配合されている球状の導電性フィラーと、を有し、変形量が増加するに従って電気抵抗が増加する弾性変形可能なセンサ本体と、
該センサ本体に接続され、該電気抵抗を出力可能な電極と、
を備えてなり、
外部からの侵入口を構成する侵入口構成部材に配置され、該侵入口構成部材の変形に伴う該センサ本体の変形から、該侵入口構成部材の破損を検出可能な防犯センサ。
【請求項2】
前記侵入口構成部材は、窓ガラス、扉、シャッターのうちのいずれか一つ以上である請求項1に記載の防犯センサ。
【請求項3】
前記侵入口構成部材は、施錠可能な鍵部を備えており、
該鍵部の近傍に配置されている請求項1または請求項2に記載の防犯センサ。
【請求項4】
前記センサ本体は、温度が上昇するに従って電気抵抗が増加する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の防犯センサ。
【請求項5】
前記センサ本体は、弾性的に曲げ変形可能である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の防犯センサ。
【請求項6】
前記侵入口構成部材は、窓ガラスであって、
該窓ガラスは、ガラス板と、該ガラス板の少なくとも一部を被覆するフィルム部材と、を有し、
前記センサ本体は、該ガラス板に固定される固定面と、該固定面に背向する背向面と、を有し、
該フィルム部材で該背向面側から該ガラス板と共に被覆することにより、該ガラス板に固定されている請求項2ないし請求項5のいずれかに記載の防犯センサ。
【請求項7】
前記侵入口構成部材は、窓ガラスであって、
該窓ガラスは、二枚以上のガラス板が積層されてなり、
積層された該ガラス板のうち、隣り合う該ガラス板間に介装されている請求項2ないし請求項6のいずれかに記載の防犯センサ。
【請求項8】
前記センサ本体は、前記エラストマーと前記導電性フィラーとを必須成分とするエラストマー組成物からなり、
該エラストマー組成物の、該導電性フィラーの配合量と電気抵抗との関係を表すパーコレーションカーブにおいて、電気抵抗変化が飽和する第二変極点の該導電性フィラーの配合量(飽和体積分率:φs)が35vol%以上である請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の防犯センサ。
【請求項9】
前記導電性フィラーの充填率は、前記センサ本体の全体の体積を100vol%とした場合の30vol%以上65vol%以下である請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の防犯センサ。
【請求項10】
前記導電性フィラーは、カーボンビーズである請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の防犯センサ。
【請求項11】
前記導電性フィラーの平均粒子径は、0.05μm以上100μm以下である請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の防犯センサ。
【請求項12】
前記エラストマーは、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴムから選ばれる一種以上を含む請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の防犯センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
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【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−158942(P2008−158942A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349338(P2006−349338)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】
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