説明

防犯壁への改修方法

【課題】外壁からの窃盗を防止するのに有益な防犯壁への改修方法に関するものである。
【解決手段】外壁を構成する壁Pを防犯壁構造に改修する方法において、駆体の胴縁2は人間が通過できない間隔、あるいは屋内の商品が通過できない間隔に、屋内側から縦に形成した柱間に形成し、壁材を破壊しても躯体が邪魔になり屋内に侵入できない防犯壁への改修を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁からの窃盗を防止するのに有益な防犯壁への改修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の倉庫の構造としては、リップ溝形鋼の鋼材等より形成した駆体上に、乾式外壁材を形成した構造が一般的であった。(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−220818
【特許文献2】特開2002−201739
【特許文献3】特開2004−011374
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年の犯罪の増加により、今までになかった窃盗方法が出てきており、例えば、壁材を破壊し、内部に侵入して犯行に及ぶ窃盗団が頻発している。窃盗犯がねらう壁構造に使用される壁材としてはコンクリート壁材、セメント壁材、あるいは乾式壁材であるが、特に乾式壁材は破壊に対しては弱く、これら壁材が破壊されて取り除かれてしまった場合には、躯体のみの構造となり、簡単に屋内に侵入され、かつ、侵入した開口より屋内の商品を屋外に簡単に運び出されてしまうものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような欠点を解決するために、外壁を構成する壁を防犯壁構造に改修する方法において、駆体の胴縁は人間が通過できない間隔、あるいは屋内の商品が通過できない間隔に、屋内側から縦に形成した柱間に形成する防犯壁への改修方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る防犯壁への改修方法によれば、(1)壁材を破壊しても、駆体が邪魔になり屋内に侵入できない。(2)壁材と駆体の両方を破壊しなければ屋内に侵入できない。(3)人間の身長に合わせて、土台から軒の一定部分のみを補強するだけで良い。(4)内部に侵入するまでの時間を長くでき、侵入の断念を図ることができる。(5)建築後でも補強作業により防犯壁構造を形成できる。(6)破壊するのに道具が何種類も必要である。(7)改修作業が簡単である。等の特徴、効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に図面を用いて本発明に係る防犯壁への改修方法について詳細に説明する。図1(a)、(b)〜図3は本発明に係る防犯壁への改修方法と施工順序を示す断面図、図4は本発明に係る防犯壁への改修方法に使用する壁材Pの一例を示す断面図、図5は壁材Pの施工状態の一例を示す断面図、図6は従来の一般的な壁構造を示す断面図である。図中、Aは屋内、Bは屋外、Cは屋根、Dは外壁、Eは土台部、Fは軒部、Gは水切り、Hは止縁、αは既存壁下地、βは釘等の固定具である。
【0008】
壁材を破壊して屋内Aの物品を窃盗する窃盗団は、(1)犯行に時間がかかる物件、(2)破壊するのに道具が何種類も必要な物件、(3)見た目で犯罪意識を低下させるような物件、(4)壁が丈夫そうな物件、(5)犯行時に周囲に判るような物件、等のリスクが大きい物件を嫌う傾向がある。そこで、本発明は(1)〜(3)に着目し、さらに、屋内Aに躯体を通って人間が入れない、あるいは商品が躯体を通って屋外へ運び出せない構造にすれば窃盗が成立しないことに着目したものである。
【0009】
既存壁下地αの一例としては、図では、倉庫等を示すものであり、躯体としてリップ溝形鋼よりなる柱1、横胴縁2、横胴縁2aを使用した構造を示している。また、その他の構造としては、躯体の屋内A側には内装材、躯体の屋外B側にはポリエチレンシート等の防湿層、主柱、間柱等の躯体内部にはグラスウール等の断熱材を形成した構造もある。なお、躯体としては、鉄骨軸組工法、鉄骨枠組工法、あるいは木造軸組工法、木造枠組工法(ツーバイフォー工法)、等である。
【0010】
2aは横胴縁であり、駆体の横胴縁2aを人間が通過できない間隔、あるいは屋内Aの商品が通過できない間隔に形成されているものであり、図では既存壁下地αの横胴縁2の土台部分より一定の範囲(人間の平均的な身長)で、かつ横胴縁2の間隔の1/2部分に形成したものである。勿論、屋内Aの商品の大きさにより、人間が侵入できない幅の横胴縁2、2aを形成するか、商品が外部に運び出せない幅の横胴縁2、2aを形成するかは随時選択するものである。
【0011】
Hは2m位である。これは、男性の平均身長が170cm位であることを考えれば、手を伸ばして届く範囲の2m位をHの高さに形成すれば、例え2m以上の部分を破壊されたとしても、屋内Aの商品を屋外Bへ運び出すのには、多大の労力と機材が必要であり、窃盗犯の集団でも途中であきらめざるを得ない状況にするものである。
【0012】
また、hは人間の頭が入らない位の幅(16cm以下)であり、人間の頭が入らない位の幅hに横胴縁2、2aを形成すれば、体全体が屋内Aへ侵入することは出来ないものである。なお、人間の頭の幅は平均で16cm位である。また、倉庫内の商品が、横胴縁2、2aのサイズ(幅h)より大きければ屋外Bに商品を持ち出すことが出来ないため、窃盗は成立しないものである。
【0013】
勿論、建物の立地条件、隣の建物との境界部分の幅、等により変化するものであり、限定されるものではなく、あくまでも作業に時間と労力がかかり、人間が通れない幅であれば良い。
【0014】
Pは壁材であり、断熱性、遮熱性、防水性、気密性、耐候性、等の機能を有する長尺状部材であり、例えば、図4、図5に示すような、上下端部に、雌型連結部6、雄型連結部7を形成した金属系外壁材、あるいは図示しないが窯業系外壁材、木質系外壁材、ALC板、PC板、セメント板、等を使用するものである。なお、8はパッキング材である。勿論、壁材Pはモルタル壁等の湿式の壁材Pを用いても良いものである。
【0015】
表面材3と裏面材5は金属薄板、例えば鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、チタン、アルミ・亜鉛合金メッキ鋼板、ガルバリウム鋼板、ホーロー鋼板、クラッド鋼板、ラミネート鋼板(塩ビ鋼板等)、サンドイッチ鋼板(制振鋼板等)、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネイト樹脂等(勿論、これらを各種色調に塗装したカラー板を含む)の一種をロール成形、プレス成形、押出成形等によって各種形状に成形したもの、あるいは無機質材を押出成形、プレス成形、オートクレーブ養生成形等して各種任意形状に形成したものである。
【0016】
さらに、裏面材5としてはアルミニウム蒸着紙、クラフト紙、アスファルトフェルト、金属箔(Al、Fe、Pb、Cu)、合成樹脂シート、ゴムシート、布シート、石膏紙、水酸化アルミ紙、ガラス繊維不織布等の1種、または2種以上をラミネートしたもの、あるいは防水処理、難燃処理されたシート状物からなるものである。
【0017】
芯材4は例えばポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム、フェノールフォーム、塩化ビニルフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ユリアフォーム等、の合成樹脂発泡体からなるものであり、特に耐火性を必要とする場合にはレゾール型フェノールの原液と、硬化剤、発泡剤を混合し、表面材3、もしくは裏面材5の裏面側に吐出させ、加熱して反応・発泡・硬化させて形成したものである。
【0018】
次に、図1〜図6を用いて本発明に係る防犯壁への改修方法の施工方法について説明する。まず、リップ溝形鋼よりなる柱1と横胴縁2により形成された、図1(a)に示すような既存の外壁Dが有るとする。
【0019】
その外壁Dの屋内A側より、図1(b)、図2(a)、図2(b)に示すように、順次横胴縁2間に横胴縁2aを形成する。
【0020】
横胴縁2aの固定が完了したら、図3に示すような改修壁構造が形成されるものである。
【0021】
以上説明したのは本発明に係る防犯壁への改修方法の一実施例にすぎず、図7(a)〜(d)〜図9に示すように形成することができるものである。
【0022】
すなわち、図7(a)〜(d)は壁材Pのその他の実施例を示す断面図である。
【0023】
図8、図9は本発明に係る防犯壁への改修方法のその他の実施例を示す断面図であり、図8は既存壁下地αに対して、さらに横胴縁2aのピッチを密に形成した防犯壁への改修方法、図9は既存壁下地αに対して、柱1の屋内A側に横胴縁2aを形成した防犯壁への改修方法である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る防犯壁への改修方法の施工順序の一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係る防犯壁への改修方法の施工順序の一例を示す断面図である。
【図3】本発明に係る防犯壁への改修方法の代表的一例を示す断面図である。
【図4】本発明に係る防犯壁への改修方法に使用する壁材の代表的一例を示す断面図である。
【図5】本発明に係る防犯壁への改修方法に使用する壁材の施工状態の一例を示す断面図である。
【図6】従来の壁構造を示す断面図である。
【図7】本発明に係る防犯壁への改修方法に使用する壁材のその他の実施例を示す断面図である。
【図8】本発明に係る防犯壁への改修方法のその他の実施例を示す断面図である。
【図9】本発明に係る防犯壁への改修方法のその他の実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0025】
α 既存壁下地
β 固定具
A 屋内
B 屋外
C 屋根
D 外壁
E 土台部
F 軒部
G 水切り
H 止縁
P 壁材
1 柱
2 横胴縁
2a 横胴縁
3 表面材
4 芯材
5 裏面材
6 雌型連結部
7 雄型連結部
8 パッキング材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁を構成する壁を防犯壁構造に改修する方法において、駆体の胴縁は人間が通過できない間隔、あるいは屋内の商品が通過できない間隔に、屋内側から縦に形成した柱間に形成することを特徴とする防犯壁への改修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−231855(P2008−231855A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76094(P2007−76094)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(390018463)アイジー工業株式会社 (100)
【Fターム(参考)】