説明

防虫シートおよびその製造方法ならびに家屋の防虫方法

【課題】適正化を図った不織布を用いることにより、害虫、特に白蟻の家屋への侵入を防止できる防虫シートを提供する。また、前記不織布に吸着材を担持させることによって、防虫剤を散布した場合並びにコンクリート中から有害物質がしみ出した場合に、これら有害物質の土壌中への拡散を防止できる防虫シートを提供する。
【解決手段】防虫シートは平均繊維径が0.1〜100μm、平均長さが0.01〜100mmの無機材料の短繊維を0.05mg/mm以上の密度で絡ませた不織布からなる。また製造方法は、平均繊維径が0.1〜100μm、平均長さが0.01〜100mmの無機繊維を含む短繊維を水中で混合してスラリー化した後に凝集剤を加えてフロック体とする工程と、このフロック体を妙紙機もしくは集綿装置によってシート形状にする工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫、特に白蟻の家屋への侵入を、土壌汚染を引き起こす有害物質を含有する防虫剤を用いることなしに無害な構成で有効に防止できる防虫シートおよびその製造方法ならびに家屋の防虫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白蟻、木食い虫等の害虫が土中から家屋等へ侵入するのを防止する手段としては、従来から床下の土壌に防虫効果のある薬剤(防虫剤)を散布する方法が有用である。しかしながら、このような防虫剤は揮発性であるため経時的にその効果が小さくなっていくため定期的な再散布を必要とし、この再散布を忘れた場合には家屋が害虫に曝されるおそれがある。また、防虫剤散布は専門的知識を必要とするため、一般的に専門業者に依頼するが、このために新たなメンテナンス費用が必要となる。専門業者が散布を行った場合でも、防虫剤の散布漏れ、散布ムラ等を生じ、必ずしも十分な防虫効果を確保できない可能性もある。また、使用される防虫剤には金属クロム化合物、ヒ素化合物、有機リン化合物およびその他の金属化合物等の人体への毒性を有する有害物質が含まれるため、居住環境および地下水等への悪影響が懸念される。
【0003】
薬剤の再散布を必要とせずメンテナンス費を低減できる防虫手段としては、例えば特許文献1に示すように、防虫剤を含浸もしくは塗布された防虫シートを家屋の床下地面に敷設する方法がある。この場合、この防虫シート中の防虫剤の成分が空気中へ放散および土中に溶け出し防虫効果を発揮する。こうした防虫方法の利用例として、家屋基礎の外側に害虫の侵入不可能な材料の壁部を配設した囲み部の内側に土を入れ、この表面に部材を配設して地面より高い段部を有する家屋用防虫基礎構造を形成し、この囲み部の底面の全面積を覆うように防虫シートを敷設することにより害虫の通過を阻止することを特徴とする構造が提案されている。
【0004】
しかしながら、経時的にシートから防虫効果が消失していくため薬剤の再散布を必要とし、この防虫剤の有害な成分により土壌汚染を生じる問題は依然として残ったままである。また、防虫シートは通常、布や紙を使用しているため、このシートを土壌中に設置した場合、シート材質の長期耐久性に劣り、破損を生じた場合にはそこから害虫が侵入してしまう問題がある。また、基礎、壁部等のコンクリート部が経時的にひび割れを生じた場合には、その隙間を通って害虫が侵入する可能性がある。
【0005】
さらに、コンクリートにも重金属等の有害物質が含まれているため、経時的にこれらが土中にしみ出して土壌汚染を生じ、ひいては地下水等の汚染に繋がることから何らかの対策をとることが求められていた。
【0006】
【特許文献1】特開平7−243240
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、適正化を図った不織布を用いることにより、害虫、特に白蟻の家屋への侵入を防止できる防虫シートを提供することにある。
また、本発明の別の目的は前記不織布に吸着材を担持させることによって、防虫剤を散布した場合並びにコンクリート中から有害物質がしみ出した場合に、これら有害物質の土壌中への拡散を防止できる防虫シートを提供することにある。
更に本発明の他の目的は、これら防虫シートの製造方法を提供することにある。
更にまた本発明の他の目的は、これら防虫シートを用いた防虫方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目標を達成するため、本発明の要旨構成は以下の通りである。
【0009】
(1)平均繊維径が0.1〜100μm、平均長さが0.01〜100mmの無機材料の短繊維を0.05mg/mm以上の密度で絡ませた不織布からなることを特徴とする防虫シート。
【0010】
(2)前記短繊維は、ガラス繊維、カーボン繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維およびチタン繊維から選択される少なくとも1種の繊維からなる前記(1)に記載の防虫シート。
【0011】
(3)前記不織布は、セリウムもしくはランタンを含む希土類化合物からなる吸着剤を更に含む前記(1)もしくは(2)に記載の防虫シート。
【0012】
(4)前記不織布は、前記短繊維同士の結合を高める補助繊維を更に含む前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の防虫シート。
【0013】
(5)前記補助繊維は平均繊維径が0.1〜200μm、平均長さが0.01〜100mmのポリプロピレン−ポリエチレンの短繊維である前記(4)に記載の防虫シート。
【0014】
(6)不織布の厚さは0.1〜100mmである前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の防虫シート。
【0015】
(7)前記防虫シートは防蟻シートである前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の防虫シート。
【0016】
(8)平均繊維径が0.1〜100μm、平均長さが0.01〜100mmの無機繊維を含む短繊維を水中で混合してスラリー化した後に凝集剤を加えてフロック体とする工程と、このフロック体を妙紙機もしくは集綿装置によってシート形状にする工程を有することを特徴とする防虫シートの製造方法。
【0017】
(9)前記(3)〜(7)のいずれか1項に記載の防虫シートを、家屋の少なくとも地面と接触する土台部を覆うように土中に配置することによって、前記土台部を含む家屋全体への土中からの害虫の侵入を物理的に防止し、かつ既に散布されている防虫剤および土台部のセメントに含まれる有害物質を吸着し、該有害物質の土壌汚染を防止することを特徴とする家屋の防虫方法。
【0018】
(10)防虫シートは家屋の仕上げ壁と前記土台部で挟む位置まで配置することを特徴とする前記(9)に記載の家屋の防虫方法。
【0019】
(11)防虫シートは家屋の仕上げ板および内壁の上部まで完全に覆うように配置することを特徴とする前記(9)に記載の家屋の防虫方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、無機繊維を含む不織布からなる土壌中で長期間にわたって防虫効果を維持できる防虫シートを提供することが可能になった。また、前記不織布に吸着材を担持させることによって、有害成分の土壌中への拡散を防止できる防虫シート、並びにこの防虫シートの製造方法および該防虫シートを用いた家屋の防虫方法の提供が可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明者は、害虫、特に白蟻の家屋への侵入を有害物質を含有する防虫剤を散布することなく無害な構成で防止できるかどうかの検討を行った。その結果、白蟻の食害による蟻道を生じないようにするためには無機材料を用いればよいこと、および、これらの無機材料の短繊維を所定の形状で絡ませた不織布を防虫シートとすることにより、白蟻の侵入を有効に防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明の防虫シートは平均繊維径が0.1〜100μm、平均長さが0.01〜100mmの無機材料の短繊維を0.05mg/mm以上の密度で絡ませた不織布からなる。
【0022】
本発明に使用する不織布には、平均繊維径が0.1〜100μm、平均長さが0.01〜100mmの無機材料の短繊維を使用するが、平均長さは0.01〜50mmが好ましく、0.01〜10mmが更に好ましい。ここで、平均繊維径が0.1μm未満であるとシート状に成形した場合に強度が弱く、また不織布が吸着剤を含む場合には吸着剤である希土類化合物の固定化がしにくくなり、100μmを超えると無機繊維が剛直となり絡まり難くなる。また、平均長さが0.01mm未満の場合は、短繊維が短すぎて短繊維同士の絡みが弱くなるため、シート化した状態で容易に裂けてしまうなどの問題が生じやすい一方、平均長さが100mmを超えると繊維同士が絡みにくくなり、不織布とした状態で隙間ができやすく、並びにシートの密度が不均一になりやすい。無機繊維の断面形状は、特に限定されないが、円、楕円、ひし形、星形等が挙げられる。この短繊維をランダムに絡ませることによって不織布を作製するが、この密度は0.1mg/mm以上であることが好ましい。0.1mg/mm未満であると目が粗くなるため、十分な防虫効果を発揮できなくなるからである。
【0023】
本発明に使用する短繊維としては、ガラス繊維、カーボン繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維およびチタン繊維を挙げることができるが、土壌中で腐敗しないため家屋の建て替え時に容易にシートの回収ができる環境に優しいガラス繊維を用いることが好適である。
【0024】
また、本発明はセリウムおよび/またはランタンを含む希土類化合物からなる吸着剤を更に含むことが好ましい。この吸着材によって、防虫剤およびコンクリートに含まれる重金属、非金属、これらのイオン化物、および有機リン酸等を吸着することができる。特に防虫剤等を散布した場合や土台部のコンクリートに含まれる有害物質が土中に溶出した場合、これら有害物質は該防虫シートに吸着されることにより結果的に濃縮されるため、該防虫シートにおいてこれら防虫成分による防虫効果が期待できる。吸着剤としては具体的にはセリウムまたはランタンの水酸化物もしくはこれらの水和物、またはこれらを組み合わせて使用することが好適である。
【0025】
また、本発明では前記不織布に短繊維同士の結合を高める補助繊維を更に含めてもよい。補助繊維を含めることで、含まないものと比較した場合引っ張り強度が数倍になるため、施工時の作業性に優れる。また、土壌中での耐食性はガラス繊維と比較して劣るが、シート化した場合には大部分をガラス繊維が占めるため、長期間の使用による不織布の構造変化や長期間使用後の回収にはほとんど影響しない。この補助繊維には平均繊維径が0.1〜200μm、平均長さが0.1〜100mmのポリプロピレン−ポリエチレン繊維を用いることが好適である。また、補助繊維の長さは0.1〜50mmが好ましく、0.1〜10mmがより好ましい。ここで、平均繊維径が0.1μm未満および/または平均長さが0.1mm未満であると短繊維同士の結合性を高めることができず、平均繊維径が100μmを超えるおよび/または平均長さが10mmを超える場合も同様に繊維が剛直になり結合性を高めるためには適さない。
【0026】
不織布の厚さは0.1〜100mmが好ましく、0.1〜10mmが更に好ましく、0.1〜5mmがより好適である。0.1mm未満であると十分な防虫効果が期待できず、100mmを超えると防虫効果は変化しない一方、不織布として剛直になり曲げにくくなるため、不織布をロール化しにくくなり運搬に不適になるからである。また、指定の形状に追従しにくくなり、施工が困難になる。
【0027】
本発明の防虫シートは、その対象となる害虫は特に限定されないが、土中からの白蟻の侵入を防止する防蟻シートとして使用することが好適である。
【0028】
次に本発明に従う防虫シートの製造方法の一例を説明する。まず、平均繊維径が0.1〜100μm、平均長さが0.01〜100mmの無機繊維を含む短繊維20〜100質量部に、必要に応じてさらに0〜80質量部の吸着剤と0〜30質量部の補助繊維を加え合計100質量部とし、ここに水500〜1000質量部を加え混合してスラリー化し、その後ここに凝集剤を加えてフロック体とし、このフロック体を妙紙機もしくは集綿装置によって厚さ0.1〜100mmのシート形状にして防虫シートを得る。凝集剤としては高分子凝集剤、無機系凝集剤などが挙げられる。また、シート形状にするのを効率的にするため、スラリー化した後に増粘剤を0〜20質量部加えてもよい。増粘剤としては、合成スメクタイトなどの無機層状物などが挙げられる。また、有機溶媒系でも分散しやすくさせるために無機繊維の表面をシランカップリング剤などで処理したり、増粘させるために無機層状物の表面を処理してもよい。
【0029】
次に本発明に従う家屋の防虫方法について説明する。
【0030】
図1に示す本実施形態では、ベタ基礎2を覆うように、防虫シート1を配置することで、害虫の侵入を物理的に防止することができる。また、床下10、地盤8へ防虫剤を散布した場合には、吸着剤を含む防虫シート1を配置することで地盤9に防虫剤中のヒ素、6価クロム、有機リン、鉛、その他の金属などの有害成分が拡散するのを防止する。また、ベタ基礎からの鉛、セレン水銀、カドミウム、ヒ素、6価クロムなどの溶出物についても拡散を防止できる。
【0031】
図2に示す本実施形態では、束石4の下を覆うように、防虫シート1を配置することによって、束石部を含む家屋全体への害虫の侵入を物理的に防止する。また、床下10、地盤8へ防虫剤を散布した場合には、吸着剤を含む防虫シート1を配置することで地盤9に防虫剤中のヒ素、6価クロム、有機リン、鉛、その他の金属などの有害成分が拡散するのを防止することができる。
【0032】
図3に示す本実施形態では、独立基礎(コンクリート)11の下を覆うように、防虫シート1を配置することによって、家屋全体への害虫の侵入を物理的に防止する。また、床下10、地盤8へ防虫剤を散布した場合には、防虫シート1を配置することで地盤9に防虫剤中のヒ素、6価クロム、有機リン、鉛、その他の金属などの有害成分が拡散するのを防止することができる。
【0033】
また、図4に示す本実施形態では、防虫シート1を仕上げ壁12とベタ基礎2で挟む位置まで配置してもよい。このことによって家屋全体への土中からの害虫の侵入をより一層効果的に防止することができる。また、床下10、地盤8へ防虫剤を散布した場合には、吸着剤を含む防虫シート1を配置することで地盤9に防虫剤中のヒ素、6価クロム、有機リン、鉛、その他の金属などの有害成分が拡散するのを防止する。
【0034】
さらに、図5に示す本実施形態では、防虫シート1を仕上げ板12と内壁13の上部まで完全に覆うように配置してもよい。このことによって家屋全体への土中からの害虫の侵入をより一層有効に防止することができる。また、床下10、地盤8へ防虫剤を散布した場合には、吸着剤を含む防虫シート1を配置することで地盤9に防虫剤中のヒ素、6価クロム、有機リン、鉛、その他の金属などの有害成分が拡散するのを防止する。ここで、無機繊維は断熱材としての働きもあるため、この防虫シートは防虫作用のみならず家屋の壁面において断熱材としても働きうる。
【0035】
防虫シート内に含まれる吸着剤は中性領域において吸着力が最大となる。一方、コンクリート成分は塩基性であるが、土中を浸透していくことによって中和されることが知られている。そのため、防虫シートは家屋の土台部に接するように設置するのではなく、土台部から離して土中に敷設するのが好適である。これにより、防虫シートの有害物質の吸着効率を改善することが出来る。また、このことは防虫シートの耐久性を高めることにも同様に寄与する。具体的には、コンクリート成分の中和の度合いおよび防虫シートを設置する上での経済性を勘案すれば、特に限定されないが、家屋の土台部から5cm以上離して土中に設置することが好ましい。なお、本防虫シートは透水性を有するため水はけの問題は生じない。
【0036】
尚、上述したところは本発明の実施形態の一例を示したにすぎず、特許請求の範囲内において種々の態様を取ることができる。
【実施例】
【0037】
(実施例1)
平均繊維径0.8μm、長さ10mm以下で平均長さ2mmのガラス繊維であるCMLF208(日本板硝子(株)製)50質量部と水酸化セリウムの水和物50質量部を水1000質量部に混合してスラリー化した後、カチオン系の高分子凝集剤(アコフロックC470、三井化学アクアポリマー(株)製)0.3質量部を添加し、続いてアニオン系の高分子凝集剤(アコフロックA150、三井化学アクアポリマー(株)製)0.1質量部添加することによってフロック体を形成させた。このフロック体を妙紙機により妙紙し、密度0.25mg/mm、厚み0.8mmの湿式不織布からなる最大孔径が40μm、平均孔径が5μmのシート状の防虫シート1を得た。なお、孔径の測定はSEM(走査型電子顕微鏡)による観察を数点行い、20個以上の孔径を測定することにより最大孔径および平均孔径を求めた。
【0038】
(実施例2)
平均繊維径4μmのCガラス成分(アルカリ珪酸塩ガラス)からなるガラス繊維50質量部(日本無機株式会社製)と水酸化セリウムの水和物40質量部、平均繊維径5μmのポリプロピレン−ポリエチレン有機繊維10質量部(チッソ株式会社製)を水500質量部に混合してスラリー化した後、カチオン系の高分子凝集剤(アコフロックC470、三井化学アクアポリマー(株)製)0.5質量部投入することによりフロック体を形成させた。このフロック体を妙紙機により妙紙し密度0.15mg/mm、厚み0.8mmの湿式不織布からなる最大孔径が80μm、平均孔径が16μmのシート状の防虫シート2を得た。なお、孔径の測定はSEM(走査型電子顕微鏡)による観察を数点行い、20個以上の孔径を測定することにより孔径の最大値および平均値を求めた。
【0039】
(比較例)
繊維径5μm、長さ200mmのCガラス成分(日本板硝子(株)製)からなるガラス繊維50質量部と水酸化セリウムの水和物50質量部を水1000質量部に混合してスラリー化した後、カチオン系の高分子凝集剤0.3質量部を投入し、続いてアニオン系の高分子凝集剤0.1質量部投入することによってフロック体を形成させた。このフロック体を妙紙機により妙紙し、密度0.03mg/mm、厚さ3mmの湿式不織布からなる最大孔径が2mm、平均孔径が500μmのシート状の防虫シート3を得た。
【0040】
(試験方法)
1、防蟻性能評価試験
次に、図6に示す実験装置を使用して防虫シート1および2の防蟻性能評価(蟻の遮断性の評価)を行った。具体的には、2つのセルA、Bを含む実験装置の中央部に防虫シート1(実施例1)もしくは2(実施例2)を1枚挟み、セルAには蟻をセルBには、おが屑を投入し、暗室内で25℃、相対湿度80%の雰囲気下で観察することにより、蟻の移動の可否を判定した。蟻はイエシロアリおよびヤマトシロアリを使用した。一週間観察した結果、防虫シート1および2ともに一匹も通過できなかった。一方、比較例は蟻の通り道ができており、蟻の往来が観察された。
【0041】
2、吸着性能試験
防虫シート1および2の各種成分の吸着能力を測定した。測定には各種成分を50mg/L含む試験溶液1Lに、0.1mである正方形のシートを浸漬し24時間後の吸着量を測定した。結果は表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
以上の結果から、防虫シート1および2とも各種成分に対する吸着能力を有することが確認された。その他吸着可能な金属として、ホウ素、リン、銅、亜鉛、バリウム、モリブデンが挙げられる。また、これら成分の土壌への拡散の防止および防虫能力をさらに強化するために、シートを2〜5枚積層してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、無機繊維を含む不織布からなる土壌中で長期間にわたって防虫効果を維持できる防虫シートを提供することが可能になった。また、前記不織布に吸着材を担持させることによって、有害成分の土壌中への拡散を防止できる防虫シート、並びにこの防虫シートの製造方法および該防虫シートを用いた家屋の防虫方法の提供が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に従う防虫シートを用いた家屋の防虫方法の例を示す図である。
【図2】本発明に従う防虫シートを用いた家屋の防虫方法の例を示す図である。
【図3】本発明に従う防虫シートを用いた家屋の防虫方法の例を示す図である。
【図4】本発明に従う防虫シートを用いた家屋の防虫方法の例を示す図である。
【図5】本発明に従う防虫シートを用いた家屋の防虫方法の例を示す図である。
【図6】防蟻性能評価を行った装置を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1:防虫シート
2:ベタ基礎(コンクリート)
3:束
4:束石
5:床
6:室内
7:犬走り
8:地盤
9:地盤
10:床下
11:独立基礎
12:仕上げ壁
13:内壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維径が0.1〜100μm、平均長さが0.01〜100mmの無機材料の短繊維を0.05mg/mm以上の密度で絡ませた不織布からなることを特徴とする防虫シート。
【請求項2】
前記短繊維は、ガラス繊維、カーボン繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維およびチタン繊維から選択される少なくとも1種の繊維からなる請求項1に記載の防虫シート。
【請求項3】
前記不織布は、セリウムおよび/またはランタンを含む希土類化合物からなる吸着剤を更に含む請求項1もしくは2に記載の防虫シート。
【請求項4】
前記不織布は、前記短繊維同士の結合を高める補助繊維を更に含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の防虫シート。
【請求項5】
前記補助繊維は平均繊維径が0.1〜200μm、平均長さが0.01〜100mmのポリプロピレン−ポリエチレンの短繊維である請求項4に記載の防虫シート。
【請求項6】
不織布の厚さは0.1〜100mmである請求項1〜5のいずれか1項に記載の防虫シート。
【請求項7】
前記防虫シートは防蟻シートである請求項1〜6のいずれか1項に記載の防虫シート。
【請求項8】
平均繊維径が0.1〜100μm、平均長さが0.01〜100mmの無機繊維を含む短繊維を水中で混合してスラリー化した後に凝集剤を加えてフロック体とする工程と、このフロック体を妙紙機もしくは集綿装置によってシート形状にする工程を有することを特徴とする防虫シートの製造方法。
【請求項9】
請求項3〜7のいずれか1項に記載の防虫シートを、家屋の少なくとも地面と接触する土台部を覆うように土中に配置することによって、前記土台を含む家屋全体への土中からの害虫の侵入を物理的に防止し、かつ既に散布されている防虫剤および土台部のセメントに含まれる有害物質を吸着し、該有害物質の土壌汚染を防止することを特徴とする家屋の防虫方法。
【請求項10】
防虫シートは家屋の仕上げ壁と前記土台部で挟む位置まで配置することを特徴とする請求項9に記載の家屋の防虫方法。
【請求項11】
防虫シートは家屋の仕上げ壁および内壁の上部まで完全に覆うように配置することを特徴とする請求項9に記載の家屋の防虫方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−95210(P2008−95210A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274826(P2006−274826)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】