防護柵支柱
【課題】簡易に設計可能であり、かつ製品への信頼性を損なうことのない防護柵支柱を提供すること。
【解決手段】アンカーにより設置面に固定されるベース体と、このベース体上に立設された支柱本体と、を備え、前記支柱本体は、第1の面板材と、この第1の面板材に連結板材を介して連接される第2の面板材とを備え、前記ベース体の上面と前記支柱本体の前記第2の面板材の背面とに跨って補強リブを取付けるとともに、前記第2の面板材の背面に、前記補強リブの上端部を下端境界とする切欠部を形成した。また、前記支柱本体は中途に屈曲部を有し、この屈曲部は、前記ベース体に対して所定角度で傾斜させて立設した傾倒部と、この傾倒部に連続するとともに、前記ベース体に対して略垂直上方に伸延する垂直部とから形成されている。また、前記傾倒部の前記第2の面板材の背面に前記補強リブの先端部が溶接されている。
【解決手段】アンカーにより設置面に固定されるベース体と、このベース体上に立設された支柱本体と、を備え、前記支柱本体は、第1の面板材と、この第1の面板材に連結板材を介して連接される第2の面板材とを備え、前記ベース体の上面と前記支柱本体の前記第2の面板材の背面とに跨って補強リブを取付けるとともに、前記第2の面板材の背面に、前記補強リブの上端部を下端境界とする切欠部を形成した。また、前記支柱本体は中途に屈曲部を有し、この屈曲部は、前記ベース体に対して所定角度で傾斜させて立設した傾倒部と、この傾倒部に連続するとともに、前記ベース体に対して略垂直上方に伸延する垂直部とから形成されている。また、前記傾倒部の前記第2の面板材の背面に前記補強リブの先端部が溶接されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車道や橋梁などの路肩に設けられている防護柵の一部をなす防護柵支柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車道や橋梁などの路肩に設けられている防護柵は、複数の防護柵支柱と、これら防護柵支柱間に架設された横梁体から構成されている。そして、防護柵支柱は、設置面にアンカーボルトやナットで取付けられるベース体に支柱本体が立設された構成となっている。
【0003】
かかる防護柵支柱において、図10に示すように、支柱本体100を、車道に面する前面板材110と、この前面板材110の後方に配置される後面板材120と、これら前面板材110と後面板材120とをつなぐ連結板材130とを備えた構成とし、これらを互いに溶接により接合したものがある。そして、かかる支柱本体100を矩形板状のベース体200上に立設している。なお、図中、符号140は溶接技術の一環として形成されるスカラップ、符号210はベース体200に形成されたボルト挿通用長孔、符号300はベース体200と支柱本体100とに溶接により接合された補強リブを示している。
【0004】
かかる構成において、最大支持力を超えたときに、後面板材120が左右方向に座屈(横倒れ座屈)を始めるように、後面板材120に支柱本体100を局部座屈させるための湾曲凹部を形成しないように設計したものが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0005】
すなわち、支柱本体100に例えば車道側から衝突荷重が作用すると、図11に示すように、後面板材120に横倒れ座屈部121が生じ、支柱本体100が左右方向に横倒れするように構成するものである。そのために、後面板材120の横倒れ座屈強度が連結板材130の曲部座屈強度よりも小さくなるように設計している。
【0006】
かかる構成により、図12に示すように、最大支持力を超えた場合、後面板材120に横倒れ座屈が生じ、側面視で示すように、後面板材120に横倒れ座屈部121が形成される(図12(b))。したがって、支柱本体100は、平面視(図12(a))、正面視(図12(c))から明らかなように、大きく左右方向に横倒れするのである。なお、図12(b)中、符号400は防護柵を構成する横梁体を示す。
【0007】
このような構成とすれば、後面板材120には支柱本体100の後方への傾倒の起点となる湾曲凹部などを形成する必要はなくなり、かかる湾曲凹部の寸法や位置などを決定する手間が要らず、また、前面板材110、後面板材120及び連結板材130の幅寸法や厚さ寸法の設定も容易になる。また、湾曲凹部を形成しない分だけ支柱本体100の形状が単純になるため、製造も容易になるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−270556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
他方、防護柵支柱は、安全面を確保するために一定の基準を満たすように構成されている。すなわち、衝突車両が防護柵を突破して越えないための強度性能や、変形性能などの基準値を満たすように構成されている。例えば、支柱本体の変形性能では、支柱本体上部に所定の荷重を加えた場合の支柱本体の直後方への倒れ量が規定されている。
【0010】
しかし、上記構成の防護柵支柱では、支柱本体の横倒れによる衝撃吸収を優先してはたらかせているため、後方への傾倒姿勢は、図11に示したように、左右方向に大きく振れた状態(横倒れ)となる。実際には強度的に全く支障がないとしても、このような構成では支柱本体の直後方への倒れ量としては規定内には収まらなくても見かけ上は収まってしまう場合もあるため、製品の信頼性を損なう虞がある。また、横倒れが激しい変形は外観的にも不安定であり、強度的に不安を与える虞がある。
【0011】
そこで、支柱本体上部に所定の荷重が加わると、実際に支柱本体は可及的に直後方へ傾倒して衝撃を吸収できる構造としつつ、製品設計なども煩雑にならない構成とすることが望まれるところである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)請求項1記載の本発明では、設置面に固定されるベース体と、このベース体上に立設された支柱本体とを備え、前記支柱本体は、第1の面板材と、この第1の面板材に連結板材を介して連接される第2の面板材とを備え、前記ベース体の上面と前記支柱本体の前記第2の面板材の背面とに跨って補強リブを取付けるとともに、前記連結板材に、前記補強リブの先端部上端に対応する位置を下端境界とする切欠部を形成した防護柵支柱とした。
【0013】
(2)請求項2記載の本発明では、請求項1記載の防護柵支柱において、前記切欠部は、前記連結板材に形成された閉鎖端縁が湾曲状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
(3)請求項3記載の本発明では、請求項1又は2に記載の防護柵支柱において、前記支柱本体は中途に屈曲部を有し、この屈曲部は、前記ベース体に対して所定角度で傾斜させて立設した傾倒部と、この傾倒部に連続するとともに、前記ベース体に対して略垂直上方に伸延する垂直部とから形成されていることを特徴とする。
【0015】
(4)請求項4記載の本発明では、請求項3記載の防護柵支柱において、前記傾倒部の前記第2の面板材の背面に前記補強リブの先端部が溶接されていることを特徴とする。
【0016】
(5)請求項5記載の本発明では、請求項1〜4のいずれか1項に記載の防護柵支柱において、前記切欠部は、前記連結板材に形成された閉鎖端縁を円弧とし、前記第2の面板材により閉塞される開放端部を一対の径とする扇形に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、防護柵支柱としての信頼性を損なうことなく、製品設計などを容易化してコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る防護柵支柱の説明図である。
【図2】同防護柵支柱の変形状態を示す斜視図である。
【図3】同変形状態を示す説明図である。
【図4】他の実施形態に係る防護柵支柱の説明図である。
【図5】実施形態に係る防護柵支柱を用いた防護柵の説明図である。
【図6】同防護柵の横梁体の取付状態を示す説明図である。
【図7】横梁体と防護柵支柱との取付けに用いられる受金具の説明図である。
【図8】受金具の参考図である。
【図9】横梁体と防護柵支柱との取付構造を示す分解斜視図である。
【図10】従来の防護柵支柱の説明図である。
【図11】同従来の防護柵支柱の変形状態を示す斜視図である。
【図12】同変形状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1(a)は、車両用の防護柵に用いられる本実施形態に係る防護柵支柱の斜視図、図1(b)は同防護柵支柱の側面図である。図示するように、防護柵支柱は、矩形板状のベース体2上に支柱本体1を立設して構成している。
【0020】
支柱本体1は、それぞれ鋼板からなる車道側に面する第1の面板材である前面板材11と、この前面板材11の後方に配置された第2の面板材としての後面板材12と、これら前面板材11と後面板材12とをつなぐ連結板材13とを備えており、これら各板材11,12,13が互いに溶接により接合され、断面略H形状に形成されている。
【0021】
本実施形態では、前面板材11の上部に湾曲面からなる横梁体受部11aを形成するとともに、後面板材12を、前面板材11よりも幅狭に形成している(図3参照)。
【0022】
また、本実施形態に係る支柱本体1は、その高さ方向のベース体2から約110mmの高さの中途位置で屈曲させて略へ字状に形成している。すなわち、支柱本体1の屈曲させた部分である屈曲部14は、ベース体2に対して所定角度で傾斜させて立設した傾倒部1aと、この傾倒部1aに連続するとともに、ベース体2に対して略垂直上方に伸延する垂直部1bとから形成されている。なお、屈曲部14の高さ位置としては、ベース体2から100mm〜130mmの範囲に収めることが好ましい。
【0023】
このように、支柱本体1は、傾倒部1aと垂直部1bとから構成されており、傾倒部1aに対応する前面板材11の下部は、図示するように、ベース体2の車道側一端から略垂直上方へ伸延する基部11bと、この基部11bの上部から他端側へ傾斜した傾斜部11cとから形成されている。つまり、前面板材11は、基部11bと、傾斜部11cと、この傾斜部11cの上部から略垂直上方へ伸延し、上端部に横梁体受部11aが形成された起立部11dとから形成されている。
【0024】
また、後面板材12は、前面板材11の傾斜部11cと略平行にベース体2の上面から伸延した後部傾斜部12aと、この後部傾斜部12aの上部から前面板材11の起立部11dと略平行に上方へ伸延する後部起立部12bとから形成されている。なお、この後部起立部12bの上端位置は前面板材11の起立部11dの上端、すなわち横梁体受部11aの上端よりも低くしている。
【0025】
また、前面板材11と後面板材12との間に介在する連結板材13は、前後面板材11,12で規定される略へ字状の板材からなり、その上端側は、後面板材12の後部起立部12bの上端から前面板材11の横梁体受部11aの上端近傍にかけて漸次先細り形状として、意匠的な美観を醸し出せる形態としている。
【0026】
一方、上述の支柱本体1を立設しているベース体2には、路面などにアンカーボルト(不図示)などで固定するためのボルト挿通孔21が複数形成されている。本実施形態では、ボルト固定位置の自由度を高めるために、ボルト挿通孔21を車道に沿った方向に長くした長孔状に形成するとともに、車道側に位置する左右のボルト挿通孔21についてはハ字状に配置している。
【0027】
さらに、防護柵支柱は、ベース体2と支柱本体1との間に補強リブ3を設けている。すなわち、ベース体2の上面と、支柱本体1の後面板材12の背面とに跨って補強リブ3を取付けており、後面板材の背面の一部をなす後部傾斜部12aの背面に補強リブ3の先端部を溶接している。なお、図中、符号4は溶接技術の一環として形成されるスカラップを示している。
【0028】
上記構成において、本実施形態では、連結板材13に、補強リブ3の先端部上端に対応する位置を下端境界とする切欠部5を形成している。本実施形態では、補強リブ3の上端位置を屈曲部14の下側近傍としているため、切欠部5は屈曲部14に形成されることになる。
【0029】
これは、支柱本体1に車両などが衝突して所定の荷重が加わった場合、後面板材12の左右方向への横倒れ座屈が生じるより先に支柱本体1が直後方へ傾倒するように、支柱本体1の屈曲部14における連結板材13の座屈強度を弱めているのである。そして、この座屈強度を支柱本体1の最大支持力としておけばよい。そのような強度が実現するように、前面板材11と後面板材12との幅寸法を含め、厚みなどのような各寸法、及び連結板材13の幅や厚みなどの寸法についてが適宜決定されることになる。
【0030】
特に、本実施形態では、屈曲部14における連結板材13に切欠部5を設け、屈曲部14における連結板材13の断面二次モーメントを小さくしている。その結果、図2に示すように、支柱本体1に所定の荷重が加わった場合、支柱本体1は直後方へ傾倒して衝撃を吸収することが可能となる。
【0031】
こうして、本実施形態によれば、例えば、車両などの衝突によって支柱本体1の上部に所定の荷重が加わり、屈曲部14に負荷が集中することになるが、支柱本体1の最大支持力を上回った場合、切欠部5が設けられているため、支柱本体1の後面板材12には横倒れするような座屈が生起されず、支柱本体1は、図2に示すように、直後方へ傾倒して衝撃を吸収できる構造となる。しかも、製品設計などは煩雑になることがない。したがって、かかる防護柵支柱を用いれば、コストダウンを図りつつ信頼性を損なうことのない防護柵を提供することが可能となる。
【0032】
ところで、切欠部5は、連結板材13に形成された閉鎖端縁51を円弧とし、後面板材により閉塞される開放端部52,52を一対の径とする扇形に形成されている。しかも、円弧中心は屈曲部14の屈曲点としているため、扇形に形成された切欠部5によって、屈曲部14に集中する力を均等に受けることができる。
【0033】
なお、切欠部5の形状としては、必ずしも扇形に限定されるものではない。切欠部5の形状としては、連結板材13に形成された閉鎖端縁51が滑らかな曲線を描く形状であればよく、例えば、湾曲状に形成されていればよい。
【0034】
ここで、図3を参照しながら、支柱本体1が、最大支持力を超えたときに後面板材12が横倒れ座屈することなく、直後方へ傾倒する状態について説明する。なお、図3(b)において、符号6は、防護柵支柱に横架される横梁体を示しており、ここでは便宜上、1つの横梁体6のみを表しているが、横梁体6は、一般に、上下方向に所定の間隔をあけて複数本取付けられる(図5〜図7を参照。)。
【0035】
図3に示すように、支柱本体1に加わった荷重に対して、支柱本体1の最大支持力を超えた場合、図3(b)に示すように、屈曲部14に力が集中する。このとき、切欠部5が設けられていることから、連結板材13は座屈を起こして後方へ屈曲しようとするとともに、後面板材12へは圧縮力がかかり、後方へ向かう座屈変形7を引き起こしながら後方へ傾倒する。
【0036】
したがって、支柱本体1は、図3(a)、図3(c)からも明らかなように、左右方向に横倒れすることなく、可及的に直後方へ傾倒して衝撃のエネルギーを吸収することが可能となる。
【0037】
このような構成とすれば、後面板材12には支柱本体1の後方への傾倒の起点となる湾曲凹部などは形成する必要はなく、前面板材11、後面板材12及び連結板材13の幅寸法や厚さ寸法の設定が容易になるとともに、湾曲凹部を形成しない分だけ支柱本体1の形状が単純になるため、製造も容易になる。しかも、横倒れなどが発生せずに、支柱本体の変形方向が直後方になるため、支柱本体1の上部に所定の荷重を加えた場合の支柱本体1の直後方への倒れ量を規定した安全基準にも沿うことになり、信頼性を損なう虞がない。
【0038】
図4に他の実施形態に係る支柱本体10を示す。なお、先の実施形態(図1参照)と同一の構成要素については同一の符号を付して、その説明は省略する
【0039】
この実施形態に係る支柱本体10が先の実施形態に係る支柱本体1と異なるのは、先の実施形態に係る支柱本体1がベース体2から約110mmの高さの中途位置で屈曲した略へ字状に形成されていたのに対し、ストレート形状に形成されていることにある。
【0040】
すなわち、支柱本体10は、いずれもベース体2から略垂直方向に起立した前面板材11と後面板材12と連結板材13とから構成されている。したがって、ここでは、補強リブ3は後面板材12の垂直面に溶接されている。
【0041】
そして、ここでも補強リブ3の先端部上端に対応する位置を下端境界とする切欠部5を連結板材13に形成している。本実施形態に係る切欠部5は、連結板材13に形成された閉鎖端縁51を円弧とし、後面板材12により閉塞される開放端部52を径とする半円形に形成されている。なお、ここでは円弧中心を補強リブ3の先端部よりも上方に位置させているが、補強リブ3の先端部の高さ位置を切欠部5の中心に合致させてもよい。
【0042】
この実施形態においては、支柱本体1に車両などの衝突により荷重が加わり、支柱本体1の最大支持力を超えた場合、補強リブ3の上端部近傍に力が集中することになる。しかし、補強リブ3の先端部近傍には切欠部5が設けられていることから、連結板材13は座屈を起こして後方へ屈曲しようとし、後面板材12へは圧縮力がかかるために後方へ傾倒し、衝突エネルギーを吸収することになる。
【0043】
ここで、上述してきた防護柵支柱を用いて図5に示すような車両用防護柵8が構築される。すなわち、設置面に取付けられたベース体2上に立設される支柱本体1に、ここでは3本の横梁体6(上部横梁体6a,中間横梁体6b,下部横梁体6c)を横架している。なお、横梁体6は、支柱本体1の前面板材11の中心部において、2本の横梁体6,6同士を突き合わせた状態で連結している。
【0044】
また、支柱本体1の上端部には、前述したように横梁体受部11aが形成されており、この横梁体受部11aに所定の直径からなる円筒状パイプからなる上部横梁体6aを、取付ボルト61を介して連結固定している。そして、上部横梁体6aよりも小径の中間横梁体6bと下部横梁体6cとについては、図6に示すように、支柱本体1の前面板材11に受金具9を介して連結固定している。
【0045】
図7に本実施形態で用いた受金具9を示す。図7(a)は斜視図、図7(b)は正面図、図7(c)は背面図、図7(d)は平面図、図7(e)は底面図、図7(f)は左側面図である。
【0046】
図示するように、受金具9は、垂直方向に伸延する身頃部91と、この身頃部91の上部に連接され、水平方向に伸延する袖部92とからなる略T状の半纏状に形成されている。そして、身頃部91と袖部92との境部分となる脇部分をボルト挿通部93としている。
【0047】
身頃部91と袖部92とは、一側面は中間横梁体6b、下部横梁体6cの径に対応する曲率の湾曲面91a,92aを形成しており、他側面は支柱本体1の前面板材11に対応して平面90を形成している(図7(f)参照)。なお、図中、9a、9bは面取り部である。
【0048】
かかる受金具9を用いなければ、中間横梁体6bと下部横梁体6cとについては、平面な支柱本体1の前面板材11に、取付ボルト61により直接取付けることになるが、その場合は、中間横梁体6と前面板材11とは線接触になってしまうが、受金具9を用いることにより、中間横梁体6がしっかりと面で受けられるため、安定した連結状態を維持することができる。
【0049】
ところで、受金具を用いる場合、通常であれば、図8に示すように、正面視略矩形形状とした板材の一側面を横架材に合わせて湾曲形成するとともに、ボルト挿通孔900.900を所定の間隔をあけて設けた構成の矩形受金具9Aとするのが一般的である。
【0050】
しかし、かかる構成では、横梁体6を支柱本体1に取り付ける場合、矩形受金具9Aを予め支柱本体1と横梁体との間に介在させておかなければならず、取り扱いが極めて面倒である。なお、図8中、符号65は連結用内筒を示し、この連結用内筒65を介して横梁体6の端部同士を突き合わせて連結可能としている。
【0051】
そこで、本実施形態のような構成とすることにより、横梁体6を支柱本体1に仮止めした後、横梁体6を支柱本体1との間隙に受金具9を挿入することで、中間横梁体6と前面板材11とをしっかりと面接触させ、中間横梁体6を面で確実に受けた状態で連結することができる。
【0052】
すなわち、図9に示すように、連結用内筒65を介して横梁体6(中間横梁体6b,下部横梁体6c)の端部同士を突き合わせて連結しておき、図6に示すように、取付ボルト61を介して横梁体6を支柱本体1に仮止めする。そして、前述したように、横梁体6を支柱本体1との間隙に受金具9を挿入し、その後、取付ボルト61を絞めつければ、横梁体6は支柱本体1側へ引き寄せられるとともに、受金具9の湾曲面91a,92aによってしっかりと面で受け止められ、確実な連結固定状態が実現される。
【0053】
上述してきた実施形態より、以下の防護柵支柱が実現される。
【0054】
例えばアンカーなどにより設置面に固定されるベース体2と、このベース体2の上に立設された支柱本体1とを備え、支柱本体1は、前面板材11(第1の面板材)と、この前面板材11に連結板材13を介して連接される後面板材12(第2の面板材)とを備え、ベース体2の上面と支柱本体1の前記後面板材12の背面とに跨って補強リブ3を取付けるとともに、連結板材13に、補強リブ3の先端部上端に対応する位置を下端境界とする切欠部5を形成した防護柵支柱。
【0055】
また、上記防護柵支柱において前記切欠部5は、連結板材13に形成された閉鎖端縁51を円弧とし、後面板材12により閉塞される開放端部52,52を一対の径とする扇形に形成されている防護柵支柱。
【0056】
また、上記防護柵支柱において、支柱本体1は中途に屈曲部14を有し、この屈曲部14は、ベース体2に対して所定角度で傾斜させて立設した傾倒部1aと、この傾倒部1aに連続するとともに、ベース体2に対して略垂直上方に伸延する垂直部1bとから形成されている防護柵支柱。
【0057】
さらに、上記防護柵支柱において、前記傾倒部1aの後面板材12の背面に補強リブ3の先端部が溶接されている防護柵支柱。
【0058】
また、上述してきた実施形態より、以下の防護柵が実現される。
【0059】
支柱本体1の前側板材11に横梁体6を受金具9を介して連結して構成した防護柵であって、前記前側板材11は平面部を有し、前記受金具9は、垂直方向に伸延する身頃部91と、この身頃部91の上部に連接され、水平方向に伸延する袖部92とからなる略T状に形成され、前記身頃部91と前記袖部92との境部分となる脇部分をボルト挿通部93とした防護柵。
【0060】
また、前記横梁体6と支柱本体1とを仮止めした後、横梁体6を支柱本体1との間隙に前記受金具9を挿入することにより、前記受金具9を横梁体6と前面板材11との間に介在させた防護柵。
【0061】
以上、実施形態を通して本発明を説明してきたが、本発明は、実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することのない限り、適宜、設計変更などは可能である。
【0062】
例えば、支柱本体1に補強リブ3を複数枚設けてもよいし、その形状も適宜変更して構わない。また、横梁体6の本数なども適宜設定することができる。さらに、ベース体の寸法、ボルト挿通孔などの形状も自由に設計変更可能である。
【0063】
また、上述してきた実施形態では、補強リブ3をはじめ、支柱本体1(10)を構成する部材は溶接により互いに接続したものとしたが、鋳造により一体形成したものであってもよい。すなわち、傾倒部1a、垂直部1b、ベース体2、補強リブ3などが一体形成された支柱本体1(10)であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1,10 支柱本体
1a 傾倒部
1b 垂直部
2 ベース体
3 補強リブ
5 切欠部
11 前面板材
12 後面板材
13 連結板材
51 閉鎖端縁
52 開放端部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車道や橋梁などの路肩に設けられている防護柵の一部をなす防護柵支柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車道や橋梁などの路肩に設けられている防護柵は、複数の防護柵支柱と、これら防護柵支柱間に架設された横梁体から構成されている。そして、防護柵支柱は、設置面にアンカーボルトやナットで取付けられるベース体に支柱本体が立設された構成となっている。
【0003】
かかる防護柵支柱において、図10に示すように、支柱本体100を、車道に面する前面板材110と、この前面板材110の後方に配置される後面板材120と、これら前面板材110と後面板材120とをつなぐ連結板材130とを備えた構成とし、これらを互いに溶接により接合したものがある。そして、かかる支柱本体100を矩形板状のベース体200上に立設している。なお、図中、符号140は溶接技術の一環として形成されるスカラップ、符号210はベース体200に形成されたボルト挿通用長孔、符号300はベース体200と支柱本体100とに溶接により接合された補強リブを示している。
【0004】
かかる構成において、最大支持力を超えたときに、後面板材120が左右方向に座屈(横倒れ座屈)を始めるように、後面板材120に支柱本体100を局部座屈させるための湾曲凹部を形成しないように設計したものが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0005】
すなわち、支柱本体100に例えば車道側から衝突荷重が作用すると、図11に示すように、後面板材120に横倒れ座屈部121が生じ、支柱本体100が左右方向に横倒れするように構成するものである。そのために、後面板材120の横倒れ座屈強度が連結板材130の曲部座屈強度よりも小さくなるように設計している。
【0006】
かかる構成により、図12に示すように、最大支持力を超えた場合、後面板材120に横倒れ座屈が生じ、側面視で示すように、後面板材120に横倒れ座屈部121が形成される(図12(b))。したがって、支柱本体100は、平面視(図12(a))、正面視(図12(c))から明らかなように、大きく左右方向に横倒れするのである。なお、図12(b)中、符号400は防護柵を構成する横梁体を示す。
【0007】
このような構成とすれば、後面板材120には支柱本体100の後方への傾倒の起点となる湾曲凹部などを形成する必要はなくなり、かかる湾曲凹部の寸法や位置などを決定する手間が要らず、また、前面板材110、後面板材120及び連結板材130の幅寸法や厚さ寸法の設定も容易になる。また、湾曲凹部を形成しない分だけ支柱本体100の形状が単純になるため、製造も容易になるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−270556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
他方、防護柵支柱は、安全面を確保するために一定の基準を満たすように構成されている。すなわち、衝突車両が防護柵を突破して越えないための強度性能や、変形性能などの基準値を満たすように構成されている。例えば、支柱本体の変形性能では、支柱本体上部に所定の荷重を加えた場合の支柱本体の直後方への倒れ量が規定されている。
【0010】
しかし、上記構成の防護柵支柱では、支柱本体の横倒れによる衝撃吸収を優先してはたらかせているため、後方への傾倒姿勢は、図11に示したように、左右方向に大きく振れた状態(横倒れ)となる。実際には強度的に全く支障がないとしても、このような構成では支柱本体の直後方への倒れ量としては規定内には収まらなくても見かけ上は収まってしまう場合もあるため、製品の信頼性を損なう虞がある。また、横倒れが激しい変形は外観的にも不安定であり、強度的に不安を与える虞がある。
【0011】
そこで、支柱本体上部に所定の荷重が加わると、実際に支柱本体は可及的に直後方へ傾倒して衝撃を吸収できる構造としつつ、製品設計なども煩雑にならない構成とすることが望まれるところである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)請求項1記載の本発明では、設置面に固定されるベース体と、このベース体上に立設された支柱本体とを備え、前記支柱本体は、第1の面板材と、この第1の面板材に連結板材を介して連接される第2の面板材とを備え、前記ベース体の上面と前記支柱本体の前記第2の面板材の背面とに跨って補強リブを取付けるとともに、前記連結板材に、前記補強リブの先端部上端に対応する位置を下端境界とする切欠部を形成した防護柵支柱とした。
【0013】
(2)請求項2記載の本発明では、請求項1記載の防護柵支柱において、前記切欠部は、前記連結板材に形成された閉鎖端縁が湾曲状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
(3)請求項3記載の本発明では、請求項1又は2に記載の防護柵支柱において、前記支柱本体は中途に屈曲部を有し、この屈曲部は、前記ベース体に対して所定角度で傾斜させて立設した傾倒部と、この傾倒部に連続するとともに、前記ベース体に対して略垂直上方に伸延する垂直部とから形成されていることを特徴とする。
【0015】
(4)請求項4記載の本発明では、請求項3記載の防護柵支柱において、前記傾倒部の前記第2の面板材の背面に前記補強リブの先端部が溶接されていることを特徴とする。
【0016】
(5)請求項5記載の本発明では、請求項1〜4のいずれか1項に記載の防護柵支柱において、前記切欠部は、前記連結板材に形成された閉鎖端縁を円弧とし、前記第2の面板材により閉塞される開放端部を一対の径とする扇形に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、防護柵支柱としての信頼性を損なうことなく、製品設計などを容易化してコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る防護柵支柱の説明図である。
【図2】同防護柵支柱の変形状態を示す斜視図である。
【図3】同変形状態を示す説明図である。
【図4】他の実施形態に係る防護柵支柱の説明図である。
【図5】実施形態に係る防護柵支柱を用いた防護柵の説明図である。
【図6】同防護柵の横梁体の取付状態を示す説明図である。
【図7】横梁体と防護柵支柱との取付けに用いられる受金具の説明図である。
【図8】受金具の参考図である。
【図9】横梁体と防護柵支柱との取付構造を示す分解斜視図である。
【図10】従来の防護柵支柱の説明図である。
【図11】同従来の防護柵支柱の変形状態を示す斜視図である。
【図12】同変形状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1(a)は、車両用の防護柵に用いられる本実施形態に係る防護柵支柱の斜視図、図1(b)は同防護柵支柱の側面図である。図示するように、防護柵支柱は、矩形板状のベース体2上に支柱本体1を立設して構成している。
【0020】
支柱本体1は、それぞれ鋼板からなる車道側に面する第1の面板材である前面板材11と、この前面板材11の後方に配置された第2の面板材としての後面板材12と、これら前面板材11と後面板材12とをつなぐ連結板材13とを備えており、これら各板材11,12,13が互いに溶接により接合され、断面略H形状に形成されている。
【0021】
本実施形態では、前面板材11の上部に湾曲面からなる横梁体受部11aを形成するとともに、後面板材12を、前面板材11よりも幅狭に形成している(図3参照)。
【0022】
また、本実施形態に係る支柱本体1は、その高さ方向のベース体2から約110mmの高さの中途位置で屈曲させて略へ字状に形成している。すなわち、支柱本体1の屈曲させた部分である屈曲部14は、ベース体2に対して所定角度で傾斜させて立設した傾倒部1aと、この傾倒部1aに連続するとともに、ベース体2に対して略垂直上方に伸延する垂直部1bとから形成されている。なお、屈曲部14の高さ位置としては、ベース体2から100mm〜130mmの範囲に収めることが好ましい。
【0023】
このように、支柱本体1は、傾倒部1aと垂直部1bとから構成されており、傾倒部1aに対応する前面板材11の下部は、図示するように、ベース体2の車道側一端から略垂直上方へ伸延する基部11bと、この基部11bの上部から他端側へ傾斜した傾斜部11cとから形成されている。つまり、前面板材11は、基部11bと、傾斜部11cと、この傾斜部11cの上部から略垂直上方へ伸延し、上端部に横梁体受部11aが形成された起立部11dとから形成されている。
【0024】
また、後面板材12は、前面板材11の傾斜部11cと略平行にベース体2の上面から伸延した後部傾斜部12aと、この後部傾斜部12aの上部から前面板材11の起立部11dと略平行に上方へ伸延する後部起立部12bとから形成されている。なお、この後部起立部12bの上端位置は前面板材11の起立部11dの上端、すなわち横梁体受部11aの上端よりも低くしている。
【0025】
また、前面板材11と後面板材12との間に介在する連結板材13は、前後面板材11,12で規定される略へ字状の板材からなり、その上端側は、後面板材12の後部起立部12bの上端から前面板材11の横梁体受部11aの上端近傍にかけて漸次先細り形状として、意匠的な美観を醸し出せる形態としている。
【0026】
一方、上述の支柱本体1を立設しているベース体2には、路面などにアンカーボルト(不図示)などで固定するためのボルト挿通孔21が複数形成されている。本実施形態では、ボルト固定位置の自由度を高めるために、ボルト挿通孔21を車道に沿った方向に長くした長孔状に形成するとともに、車道側に位置する左右のボルト挿通孔21についてはハ字状に配置している。
【0027】
さらに、防護柵支柱は、ベース体2と支柱本体1との間に補強リブ3を設けている。すなわち、ベース体2の上面と、支柱本体1の後面板材12の背面とに跨って補強リブ3を取付けており、後面板材の背面の一部をなす後部傾斜部12aの背面に補強リブ3の先端部を溶接している。なお、図中、符号4は溶接技術の一環として形成されるスカラップを示している。
【0028】
上記構成において、本実施形態では、連結板材13に、補強リブ3の先端部上端に対応する位置を下端境界とする切欠部5を形成している。本実施形態では、補強リブ3の上端位置を屈曲部14の下側近傍としているため、切欠部5は屈曲部14に形成されることになる。
【0029】
これは、支柱本体1に車両などが衝突して所定の荷重が加わった場合、後面板材12の左右方向への横倒れ座屈が生じるより先に支柱本体1が直後方へ傾倒するように、支柱本体1の屈曲部14における連結板材13の座屈強度を弱めているのである。そして、この座屈強度を支柱本体1の最大支持力としておけばよい。そのような強度が実現するように、前面板材11と後面板材12との幅寸法を含め、厚みなどのような各寸法、及び連結板材13の幅や厚みなどの寸法についてが適宜決定されることになる。
【0030】
特に、本実施形態では、屈曲部14における連結板材13に切欠部5を設け、屈曲部14における連結板材13の断面二次モーメントを小さくしている。その結果、図2に示すように、支柱本体1に所定の荷重が加わった場合、支柱本体1は直後方へ傾倒して衝撃を吸収することが可能となる。
【0031】
こうして、本実施形態によれば、例えば、車両などの衝突によって支柱本体1の上部に所定の荷重が加わり、屈曲部14に負荷が集中することになるが、支柱本体1の最大支持力を上回った場合、切欠部5が設けられているため、支柱本体1の後面板材12には横倒れするような座屈が生起されず、支柱本体1は、図2に示すように、直後方へ傾倒して衝撃を吸収できる構造となる。しかも、製品設計などは煩雑になることがない。したがって、かかる防護柵支柱を用いれば、コストダウンを図りつつ信頼性を損なうことのない防護柵を提供することが可能となる。
【0032】
ところで、切欠部5は、連結板材13に形成された閉鎖端縁51を円弧とし、後面板材により閉塞される開放端部52,52を一対の径とする扇形に形成されている。しかも、円弧中心は屈曲部14の屈曲点としているため、扇形に形成された切欠部5によって、屈曲部14に集中する力を均等に受けることができる。
【0033】
なお、切欠部5の形状としては、必ずしも扇形に限定されるものではない。切欠部5の形状としては、連結板材13に形成された閉鎖端縁51が滑らかな曲線を描く形状であればよく、例えば、湾曲状に形成されていればよい。
【0034】
ここで、図3を参照しながら、支柱本体1が、最大支持力を超えたときに後面板材12が横倒れ座屈することなく、直後方へ傾倒する状態について説明する。なお、図3(b)において、符号6は、防護柵支柱に横架される横梁体を示しており、ここでは便宜上、1つの横梁体6のみを表しているが、横梁体6は、一般に、上下方向に所定の間隔をあけて複数本取付けられる(図5〜図7を参照。)。
【0035】
図3に示すように、支柱本体1に加わった荷重に対して、支柱本体1の最大支持力を超えた場合、図3(b)に示すように、屈曲部14に力が集中する。このとき、切欠部5が設けられていることから、連結板材13は座屈を起こして後方へ屈曲しようとするとともに、後面板材12へは圧縮力がかかり、後方へ向かう座屈変形7を引き起こしながら後方へ傾倒する。
【0036】
したがって、支柱本体1は、図3(a)、図3(c)からも明らかなように、左右方向に横倒れすることなく、可及的に直後方へ傾倒して衝撃のエネルギーを吸収することが可能となる。
【0037】
このような構成とすれば、後面板材12には支柱本体1の後方への傾倒の起点となる湾曲凹部などは形成する必要はなく、前面板材11、後面板材12及び連結板材13の幅寸法や厚さ寸法の設定が容易になるとともに、湾曲凹部を形成しない分だけ支柱本体1の形状が単純になるため、製造も容易になる。しかも、横倒れなどが発生せずに、支柱本体の変形方向が直後方になるため、支柱本体1の上部に所定の荷重を加えた場合の支柱本体1の直後方への倒れ量を規定した安全基準にも沿うことになり、信頼性を損なう虞がない。
【0038】
図4に他の実施形態に係る支柱本体10を示す。なお、先の実施形態(図1参照)と同一の構成要素については同一の符号を付して、その説明は省略する
【0039】
この実施形態に係る支柱本体10が先の実施形態に係る支柱本体1と異なるのは、先の実施形態に係る支柱本体1がベース体2から約110mmの高さの中途位置で屈曲した略へ字状に形成されていたのに対し、ストレート形状に形成されていることにある。
【0040】
すなわち、支柱本体10は、いずれもベース体2から略垂直方向に起立した前面板材11と後面板材12と連結板材13とから構成されている。したがって、ここでは、補強リブ3は後面板材12の垂直面に溶接されている。
【0041】
そして、ここでも補強リブ3の先端部上端に対応する位置を下端境界とする切欠部5を連結板材13に形成している。本実施形態に係る切欠部5は、連結板材13に形成された閉鎖端縁51を円弧とし、後面板材12により閉塞される開放端部52を径とする半円形に形成されている。なお、ここでは円弧中心を補強リブ3の先端部よりも上方に位置させているが、補強リブ3の先端部の高さ位置を切欠部5の中心に合致させてもよい。
【0042】
この実施形態においては、支柱本体1に車両などの衝突により荷重が加わり、支柱本体1の最大支持力を超えた場合、補強リブ3の上端部近傍に力が集中することになる。しかし、補強リブ3の先端部近傍には切欠部5が設けられていることから、連結板材13は座屈を起こして後方へ屈曲しようとし、後面板材12へは圧縮力がかかるために後方へ傾倒し、衝突エネルギーを吸収することになる。
【0043】
ここで、上述してきた防護柵支柱を用いて図5に示すような車両用防護柵8が構築される。すなわち、設置面に取付けられたベース体2上に立設される支柱本体1に、ここでは3本の横梁体6(上部横梁体6a,中間横梁体6b,下部横梁体6c)を横架している。なお、横梁体6は、支柱本体1の前面板材11の中心部において、2本の横梁体6,6同士を突き合わせた状態で連結している。
【0044】
また、支柱本体1の上端部には、前述したように横梁体受部11aが形成されており、この横梁体受部11aに所定の直径からなる円筒状パイプからなる上部横梁体6aを、取付ボルト61を介して連結固定している。そして、上部横梁体6aよりも小径の中間横梁体6bと下部横梁体6cとについては、図6に示すように、支柱本体1の前面板材11に受金具9を介して連結固定している。
【0045】
図7に本実施形態で用いた受金具9を示す。図7(a)は斜視図、図7(b)は正面図、図7(c)は背面図、図7(d)は平面図、図7(e)は底面図、図7(f)は左側面図である。
【0046】
図示するように、受金具9は、垂直方向に伸延する身頃部91と、この身頃部91の上部に連接され、水平方向に伸延する袖部92とからなる略T状の半纏状に形成されている。そして、身頃部91と袖部92との境部分となる脇部分をボルト挿通部93としている。
【0047】
身頃部91と袖部92とは、一側面は中間横梁体6b、下部横梁体6cの径に対応する曲率の湾曲面91a,92aを形成しており、他側面は支柱本体1の前面板材11に対応して平面90を形成している(図7(f)参照)。なお、図中、9a、9bは面取り部である。
【0048】
かかる受金具9を用いなければ、中間横梁体6bと下部横梁体6cとについては、平面な支柱本体1の前面板材11に、取付ボルト61により直接取付けることになるが、その場合は、中間横梁体6と前面板材11とは線接触になってしまうが、受金具9を用いることにより、中間横梁体6がしっかりと面で受けられるため、安定した連結状態を維持することができる。
【0049】
ところで、受金具を用いる場合、通常であれば、図8に示すように、正面視略矩形形状とした板材の一側面を横架材に合わせて湾曲形成するとともに、ボルト挿通孔900.900を所定の間隔をあけて設けた構成の矩形受金具9Aとするのが一般的である。
【0050】
しかし、かかる構成では、横梁体6を支柱本体1に取り付ける場合、矩形受金具9Aを予め支柱本体1と横梁体との間に介在させておかなければならず、取り扱いが極めて面倒である。なお、図8中、符号65は連結用内筒を示し、この連結用内筒65を介して横梁体6の端部同士を突き合わせて連結可能としている。
【0051】
そこで、本実施形態のような構成とすることにより、横梁体6を支柱本体1に仮止めした後、横梁体6を支柱本体1との間隙に受金具9を挿入することで、中間横梁体6と前面板材11とをしっかりと面接触させ、中間横梁体6を面で確実に受けた状態で連結することができる。
【0052】
すなわち、図9に示すように、連結用内筒65を介して横梁体6(中間横梁体6b,下部横梁体6c)の端部同士を突き合わせて連結しておき、図6に示すように、取付ボルト61を介して横梁体6を支柱本体1に仮止めする。そして、前述したように、横梁体6を支柱本体1との間隙に受金具9を挿入し、その後、取付ボルト61を絞めつければ、横梁体6は支柱本体1側へ引き寄せられるとともに、受金具9の湾曲面91a,92aによってしっかりと面で受け止められ、確実な連結固定状態が実現される。
【0053】
上述してきた実施形態より、以下の防護柵支柱が実現される。
【0054】
例えばアンカーなどにより設置面に固定されるベース体2と、このベース体2の上に立設された支柱本体1とを備え、支柱本体1は、前面板材11(第1の面板材)と、この前面板材11に連結板材13を介して連接される後面板材12(第2の面板材)とを備え、ベース体2の上面と支柱本体1の前記後面板材12の背面とに跨って補強リブ3を取付けるとともに、連結板材13に、補強リブ3の先端部上端に対応する位置を下端境界とする切欠部5を形成した防護柵支柱。
【0055】
また、上記防護柵支柱において前記切欠部5は、連結板材13に形成された閉鎖端縁51を円弧とし、後面板材12により閉塞される開放端部52,52を一対の径とする扇形に形成されている防護柵支柱。
【0056】
また、上記防護柵支柱において、支柱本体1は中途に屈曲部14を有し、この屈曲部14は、ベース体2に対して所定角度で傾斜させて立設した傾倒部1aと、この傾倒部1aに連続するとともに、ベース体2に対して略垂直上方に伸延する垂直部1bとから形成されている防護柵支柱。
【0057】
さらに、上記防護柵支柱において、前記傾倒部1aの後面板材12の背面に補強リブ3の先端部が溶接されている防護柵支柱。
【0058】
また、上述してきた実施形態より、以下の防護柵が実現される。
【0059】
支柱本体1の前側板材11に横梁体6を受金具9を介して連結して構成した防護柵であって、前記前側板材11は平面部を有し、前記受金具9は、垂直方向に伸延する身頃部91と、この身頃部91の上部に連接され、水平方向に伸延する袖部92とからなる略T状に形成され、前記身頃部91と前記袖部92との境部分となる脇部分をボルト挿通部93とした防護柵。
【0060】
また、前記横梁体6と支柱本体1とを仮止めした後、横梁体6を支柱本体1との間隙に前記受金具9を挿入することにより、前記受金具9を横梁体6と前面板材11との間に介在させた防護柵。
【0061】
以上、実施形態を通して本発明を説明してきたが、本発明は、実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することのない限り、適宜、設計変更などは可能である。
【0062】
例えば、支柱本体1に補強リブ3を複数枚設けてもよいし、その形状も適宜変更して構わない。また、横梁体6の本数なども適宜設定することができる。さらに、ベース体の寸法、ボルト挿通孔などの形状も自由に設計変更可能である。
【0063】
また、上述してきた実施形態では、補強リブ3をはじめ、支柱本体1(10)を構成する部材は溶接により互いに接続したものとしたが、鋳造により一体形成したものであってもよい。すなわち、傾倒部1a、垂直部1b、ベース体2、補強リブ3などが一体形成された支柱本体1(10)であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1,10 支柱本体
1a 傾倒部
1b 垂直部
2 ベース体
3 補強リブ
5 切欠部
11 前面板材
12 後面板材
13 連結板材
51 閉鎖端縁
52 開放端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に固定されるベース体と、このベース体上に立設された支柱本体とを備え、
前記支柱本体は、第1の面板材と、この第1の面板材に連結板材を介して連接される第2の面板材とを備え、前記ベース体の上面と前記支柱本体の前記第2の面板材の背面とに跨って補強リブを取付けるとともに、前記連結板材に、前記補強リブの先端部上端に対応する位置を下端境界とする切欠部を形成したことを特徴とする防護柵支柱。
【請求項2】
前記切欠部は、前記連結板材に形成された閉鎖端縁が湾曲状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の防護柵支柱。
【請求項3】
前記支柱本体は中途に屈曲部を有し、この屈曲部は、前記ベース体に対して所定角度で傾斜させて立設した傾倒部と、この傾倒部に連続するとともに、前記ベース体に対して略垂直上方に伸延する垂直部とから形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の防護柵支柱。
【請求項4】
前記傾倒部の前記第2の面板材の背面に前記補強リブの先端部が溶接されていることを特徴とする請求項3記載の防護柵支柱。
【請求項5】
前記切欠部は、前記連結板材に形成された閉鎖端縁を円弧とし、前記第2の面板材により閉塞される開放端部を一対の径とした扇形に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の防護柵支柱。
【請求項1】
設置面に固定されるベース体と、このベース体上に立設された支柱本体とを備え、
前記支柱本体は、第1の面板材と、この第1の面板材に連結板材を介して連接される第2の面板材とを備え、前記ベース体の上面と前記支柱本体の前記第2の面板材の背面とに跨って補強リブを取付けるとともに、前記連結板材に、前記補強リブの先端部上端に対応する位置を下端境界とする切欠部を形成したことを特徴とする防護柵支柱。
【請求項2】
前記切欠部は、前記連結板材に形成された閉鎖端縁が湾曲状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の防護柵支柱。
【請求項3】
前記支柱本体は中途に屈曲部を有し、この屈曲部は、前記ベース体に対して所定角度で傾斜させて立設した傾倒部と、この傾倒部に連続するとともに、前記ベース体に対して略垂直上方に伸延する垂直部とから形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の防護柵支柱。
【請求項4】
前記傾倒部の前記第2の面板材の背面に前記補強リブの先端部が溶接されていることを特徴とする請求項3記載の防護柵支柱。
【請求項5】
前記切欠部は、前記連結板材に形成された閉鎖端縁を円弧とし、前記第2の面板材により閉塞される開放端部を一対の径とした扇形に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の防護柵支柱。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−180646(P2012−180646A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42483(P2011−42483)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(390001568)昭和鉄工株式会社 (27)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(390001568)昭和鉄工株式会社 (27)
【Fターム(参考)】
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