説明

防護柵

【課題】 本発明は、国産の間伐材が使用できるとともに、防護柵としての要求項目を満足する木製の防護柵を経済的に提供するものである。
【解決手段】 所定間隔に設置される支柱30と、隣接する支柱間に配設されるビーム部材20とよりなる本発明の防護柵100は、木製角材21と角部を含む2辺を被覆して固着されるアングル部材25とよりなるビーム部材20が、支持部材10を介して支柱30に取り付けられている。そして、支持部材10は、前記ビーム部材20を支持する山型L字鋼であって、該山型面を突出させて支柱に配設され、ビ−ム部材は角材のアングル固着面を支持部材10の山型傾斜面に対向させて固着している構成を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は道路の路肩や車道と歩道の間に配設する防護柵に関する。特に、木材を構成部材とした木製防護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の路肩などに配設する防護柵に対して、車両が路外・対向車線・歩道などに逸脱することの防止、乗員の障害と車両の破損を最小限にとどめるとともに、防護柵は二次被害の防止、車両を正常な進行方向に復元させる、などが要求されている。
従来のガードレールと称されている車両用防護柵、歩行者・自転車用防護柵は、主として鋼鉄やコンクリート製で形成されている。これは上記の防護柵(ガードレール)として要求される対衝撃強さを満足する素材、および耐候性(長期使用)を有する適当な素材として用いられていた。
【0003】
しかし、近年防護柵の配設環境とのマッチングが重要視されていることから、防護柵として木製のビームが用いられている。例えば、配設周囲の景観を損ねることなく衝撃強さを満足する木製のガードレールとしての防護柵の発明が下記の文献に開示されている。
【特許文献1】特開2000−73324号公報
【特許文献2】実用新案登録第3073642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、支柱およびビーム共に木素材を用いたガードレールが示されているが、このものは長期間の風雨環境下での使用に対する耐久性に問題があった。また、文献2には防腐用の薬液を注入した木材製のガードレールが開示されている。
しかし、これらのガードレールは、時速60km前後の自動車が衝突した場合の耐衝撃強さが不確実であった。また、利用効率の低い木製円柱加工材を配設範囲が大きいガードレールのような防護柵として用いた場合、コストが割高となってしまった。
【0005】
そこで、本発明は、国産の間伐材が使用できるとともに、防護柵としての要求項目を満足する木製の防護柵を経済的に提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、所定間隔に設置される支柱と、隣接する支柱間に配設されるビーム部材とよりなる本発明の防護柵は、木製角材と、角材の角部を含む2辺を被覆して固着されるアングル部材とよりなるビーム部材が、支持部材を介して支柱に取り付けられている。そして、支持部材は、前記ビーム部材を支持する山型L字鋼であって、該山型面を突出させて支柱に配設され、ビ−ム部材は角材のアングル固着面を支持部材の山型傾斜面に対向させて固着している構成を具備する。
【0007】
前記ビーム部材の角材はカラマツ材の集成材で形成されている構成、および、ビーム部材は支持部材の傾斜面に沿って配設され、支柱側面に対して傾斜して設置されている構成を有している。
前記ビーム部材の角材は、角部を含む2辺の表面2/3から1/2の範囲にアングル部材が被覆されている構成、支持部材が、前記ビーム部材の両端部の、少なくとも長さ寸法の1/8を支持している構成を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、防護柵部材として国産の間伐材よりなる集成材が使用できるとともに、防護柵としての要求項目を満足する木製の防護柵を経済的に構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の防護柵の全体を示し、一部のビーム部材を取り除いた状態を示す平面図、図2は図1線B−B矢視図、図3は図1線A−A矢視図である。
防護柵100は支柱30、支持部材10と、支持部材10に支持されるビーム部材20よりなる。
支柱30は角パイプ、支持部材10はL字型ブラケット(山型鋼)を用いている。
支柱30の上端は被覆部材35で覆われている。
【0010】
支持部材10は直角に連設する第一支持部10Aと第二支持部10Bを有する山型の鋼材製ブラケットであって、長さ約500mmを有し、長さ方向の中央部分を支柱30の中心線に合わせて配置する。第一支持部10Aと第二支持部10Bの幅寸法wは100mmとなっている。そして、第一支持部10Aの端縁部13、第二支持部10Bの端縁部13を支柱30に溶接固定している。すなわち、図2、図3、図4、図6に示すように、直角山型部を突出させた形状(下凸)で固着される。
また、第二支持部10Bには留め具孔12が穿孔されている。この実施例として示す図面では、各支持部材10は支柱30に対して対象位置に2個ずつ、4箇所留め具孔12が穿孔されている。
【0011】
支持部材10はビーム部材20を支持している。
ビーム部材20は唐松集成材よりなる角材21にアングル材25を被覆・嵌合して構成されている。
ビーム部材20の角材21は、120mm角〜150mm角、長さ1500mm〜2000mmの木製(唐松集成材)角柱材を用いている。唐松集成材は、複数の層(3〜5層)を重合して角材を形成している。この実施例では3〜4層積層した角材21を示している。
【0012】
角材21は表面層に吸水防止層を形成している。
吸水防止層は角材21に吸水防止剤を塗布して形成する。吸水防止剤としてはシリコーンと水と抗菌剤の混合溶剤を用いる。例えばバイオフレックス・TB(商標)など。
塗布された吸水防止剤は基材である集成材の内部に毛細管現象で浸透し、吸水防止剤の主成分であるシリコーンが集成材の毛細管に化学的に結合して、耐久性のある吸水防止層を形成する。この場合、基材の質感は変わることが無い。このように吸水防止層を形成した後のビーム部材の外観は変ることなく、集成材の表情を生かした仕上げとなる。
【0013】
アングル部材25は角材21表面に固着される断面L字状の鋼材製アングル材であって、第一のアングル部25Aと第一のアングル部25Aに直角に連設される第二のアングル部25Bとを有している。角材21はアングル部材25を被覆(嵌合)する部位には、アングル部材25の板厚に相当する凹溝23が形成されており、アングル部材25は該凹溝23に嵌合固着されている。アングル部材25が配設された角材21の外表面は面一となる。この実施例に示す支持部材10とアングル部材25はほぼ同形状の山型鋼である。すなわち、第一のアングル部25Aと第二のアングル部25Bの幅寸法xは約100mmとなっている。
このとき、アングル部材25の第一のアングル部25Aには留め具を挿入する留め具孔26が穿孔されている。この図面に示す実施例ではアングル部材25の長手方向両端部分に2箇所ずつ4箇所穿孔されている。そして、アングル部材25が固着している角材21は、留め具孔26に対応する位置に留め具挿入孔22が4箇所穿孔されている。
【0014】
ここで、支持部材10とビーム部材20との長さ関係を説明する。
ビーム部材20の長さLが1500mmの場合、支持部材10の長さRを500mmとすると、ビーム部材20の端部の250mm、約1/6の範囲を支持部材10で支持している。支持部材10の長さRは500mmとすると、ビーム部材20の長さLが1800mmの場合は約1/7の範囲で支持、ビーム部材20の長さLが2000mmの場合は約1/8の範囲が支持部材10で支持されている。
【0015】
このように構成されている支持部材10、ビーム部材20の支柱30への取り付けを説明する。・・図2、図3、図4参照
支柱30の上部に等間隔に3本の支持部材10を配設する。各支持部材10の自由端縁部13を支柱30に溶接固定する。例えば、図面に示す実施例においては、3本の支持部材10は215mm間隔に配設している。
支持部材10の第二支持部10B上に、ビーム部材20を載置する。このとき、アングル部材20の第一のアングル部25Aを第二支持部10B面に対向させる。そして、第二支持部10Bの留め具孔12、ビーム部材20の第一のアングル部材25Aの留め具孔26、角材21の留め具挿入孔22が合致するように設置する。
【0016】
角材21の角部を挟んだ2辺にアングル部材25が配設されたビーム部材20を、支持部材10に取り付ける。
第二支持部10Bの留め具孔12からボルトナットなどの固定具40を差込み、ビーム部材20の第一のアングル部材25Aの留め具孔26、角材21の留め具挿入孔22に挿入して、角材の孔22からナット留めする。・・・図6参照
【0017】
このようにビーム部材20は支持部材10を介して支柱30に取り付けられている。
このとき、支柱30の配設間隔をビーム部材20の部材長さLとすることにより、支持部材10の一端の留め孔12に1本のビーム部材20の一端を留め、支持部材10の他端の留め孔12に2本目のビーム部材20の一端を留めることにより、図1に示すように、支柱30ごとにビーム部材20を連設できる。このとき、ビーム部材20の長さLが1500mmの場合は、ビーム部材20の両端部は250mmの範囲(1/6の範囲)で支持部材10に支持される。
【0018】
ここで、支持部材10は直角山型部を突出させた形状で固着されているので、第二支持部10Bは支柱30の側面に対して45度に傾斜した面となっており、支持部材10の傾斜面に取り付けられるビーム部材20は支柱30の側面に対して約45度の角度に回転した状態で配設される。ビーム部材20が支柱30の側面に対して角度を持って配設されていることにより、支柱30の側面とビーム部材20壁面とで雨水誘導の樋を形成するので、雨水の排水性が良好となる。
また、角材21として用いている集成材は、カラマツの集成層、3〜5層としているので、他の樹種と比較して強度、耐朽性で優位であって、かつ集成材は安定した強度を有し、割れ・ねじれ・寸法の狂いが生じにくい。
さらに、集成材を利用した角材は、利用効率の低い無垢の円柱材を使用した場合の約半分のコストで提供でき、また、角材の2辺をアングル部材で被覆しているので、ビーム部材の長手方向に対して垂直方向からの衝撃に強い。
【0019】
このように構成される防護柵100は、車両が衝突した場合、ビーム部材20の角材21の角部で、先ず、衝撃を受ける。このとき、角材21の背面部分に固着されているアングル部材25が補強材として作用する。
【0020】
また、集成材の内部に浸透している吸水防止剤は、角材21の内部への水の浸入を防止し、腐敗による角材の劣化を防止することができる。
さらに、1本のビーム部材において長さ方向での部位による太さの変化があったとしても、アングル部材25を取り付けているので、支持部材への取り付けの中心位置が変らず、防護柵の設置作業を容易とし、作業性が向上する。
また、防護柵が立体的に形成されるので、意匠効果が向上する。
【0021】
ここで、本発明の防護柵100の曲げ性能を説明する。
本発明の実施の形態例としての防護柵
山型鋼(アングル部材) 100mm
角柱 上段 北海道産カラマツ集成材150mm角材1本、
下段 北海道産カラマツ集成材120mm角材2本
スパン 1800mm
【0022】
比較対象とする防護柵(既存の防護柵)。なお、この防護柵は必要とされる曲げ強さ荷重を満足するものである。
円柱材 上段 直径200mmのスギ円柱材1本
下段 直径180mmのスギ円柱材1本
スパン 1800mm
【0023】
比較例としての防護柵は、曲げ強さ荷重が直径200mmの円柱材:50kN、180mmの円柱材:40kNであった。したがって、2本の円柱材よりなる比較例の防護柵の曲げ強さ荷重は、50+40=90kNを有している。すなわち、この種防護柵として必要とされている曲げ強さ荷重は90kNである。
【0024】
次に、本発明の集成材(角材)とアングル部材とよりなるビーム部材(部材A、B、C)に対して加載スパン2000mmとして曲げ破壊試験を実行して、その強度を測定した。
その結果を、下記の表に記載する。
【表1】

上記表に示すように、150mm角材とアングル部材を組み合わせたビーム部材3本の曲げ強さ荷重は、平均73kN(下限値51kN)、120mm角材とアングル部材を組み合わせたビーム部材3本の曲げ強さ荷重は、平均32kN(下限値20kN)であった。
【0025】
上記試験結果から、加載スパンを1800mmとしたときの曲げ強さ荷重を計算すると、
150mm角材とアングル部材を組み合わせたビーム部材の曲げ強さ荷重は、平均81kN(下限値56kN)、120mm角材とアングル部材を組み合わせたビーム部材の曲げ強さ荷重は、平均35kN(下限値22kN)となる。
【0026】
そこで、本発明の実施の形態例に示す防護柵は、150mm角材とアングル部材を組み合わせたビーム部材1本、120mm角材とアングル部材を組み合わせたビーム部材2本で構成しているので、この防護柵100の曲げ強さ荷重を計算すると、
81+35×2=151kN(下限値56+22×2=100kN)
となり、この防護柵は必要とされている曲げ強さ荷重90kNを十分満足していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】防護柵の外観説明図
【図2】図1B−B矢視図
【図3】支柱に取り付けた支持部材の平面図
【図4】支持部材を取り付けた支柱の側面図
【図5】ビーム部材の構成説明図
【図6】支持部材とビーム部材の取り付けの説明図
【符号の説明】
【0028】
10 支持部
10A 第1の支持部材
10B 第2の支持部材
13 接合部
20 ビーム部材
21 角材
22 留め孔
25 アングル部材
30 支柱
35 被覆部材
40 留め具
100 防護柵

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔に設置される支柱と、
隣接する支柱間に配設されるビーム部材と、よりなる防護柵において、
前記ビーム部材は、木製角材と、該角材の角部を含む2辺を被覆して角材に固着されるアングル部材とよりなり、支持部材を介して支柱に取り付けられ、
該支持部材は、前記ビーム部材を支持する山型L字鋼であって、該山型面を突出させて支柱に配設され、
前記ビ−ム部材は角材のアングル固着面を支持部材の山型傾斜面に対向させて固着してなる防護柵。
【請求項2】
前記ビーム部材の角材はカラマツ材の集成材で形成されている請求項1記載の防護柵。
【請求項3】
前記ビーム部材は支持部材の傾斜面に沿って配設され、支柱側面に対して傾斜して設置されている請求項1記載の防護柵。
【請求項4】
前記ビーム部材の角材は、角部を含む2辺の表面2/3から1/2の範囲をアングル部材で被覆されている請求項1記載の防護柵。
【請求項5】
前記支持部材は、前記ビーム部材の両端部の、少なくとも長さ寸法の1/8を支持していることを特徴とする請求項1記載の防護柵。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−113275(P2007−113275A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305979(P2005−305979)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(505392433)北海道産木材利用協同組合 (1)
【出願人】(591190955)北海道 (121)
【Fターム(参考)】