防護面構造
【課題】変形可能な支持面と緩衝部材とを組み合わせた従来に無い構造により、衝撃吸収効果に優れた防護面構造を提供する。
【解決手段】主桁54により支持した網体4を備えた防護面構造において、ワイヤーメッシュ11を備えた網体4が変形可能であり、緩衝袋体21Bが砂などの粒状物を有し、網体4上に緩衝袋体21Bを配置し、この緩衝袋体21Bの重さにより網体4に撓みを導入する。変形可能な網体4と緩衝袋体21Bとを組み合わせることにより、落石などの衝撃力を受けると、緩衝袋体21Bの変形と網体4の変形とにより衝撃力を効果的に吸収することができる。この場合、衝撃力を受けた緩衝袋体21B内の砂が移動し、緩衝袋体21Bが変形して衝撃力を吸収する。また、衝撃力が緩衝袋体21Bに加わってから網体4が変形するから、網体4の変形が少なく済む。
【解決手段】主桁54により支持した網体4を備えた防護面構造において、ワイヤーメッシュ11を備えた網体4が変形可能であり、緩衝袋体21Bが砂などの粒状物を有し、網体4上に緩衝袋体21Bを配置し、この緩衝袋体21Bの重さにより網体4に撓みを導入する。変形可能な網体4と緩衝袋体21Bとを組み合わせることにより、落石などの衝撃力を受けると、緩衝袋体21Bの変形と網体4の変形とにより衝撃力を効果的に吸収することができる。この場合、衝撃力を受けた緩衝袋体21B内の砂が移動し、緩衝袋体21Bが変形して衝撃力を吸収する。また、衝撃力が緩衝袋体21Bに加わってから網体4が変形するから、網体4の変形が少なく済む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落石や土砂崩れ,雪崩等の防護に用いる防護面構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の防護体の防護面構造として、支柱、梁材、屋根材を主構とし、屋根部最上層に土砂を敷設してなるロックシェッド(例えば特許文献1)や、落石等による被害を防止するロックシェッドの保護構造において、傾斜した屋根部の上面には板状の発泡スチロールブロックが複層に積み重ねられ、それら発泡スチロールブロックの上には耐食性のネットが布設され、その耐食性のネットの上には軽量コンクリート又はモルタルが打設された防護面構造(例えば特許文献2)や、法面の横方向に間隔をあけて設置される柵柱の前面に複数本のH形鋼による壁材を水平に取付け、これら壁材の山側にゴムタイヤ等の緩衝部材を設けた防護柵(例えば特許文献3)や、山に沿う道路又は鉄道軌道の少なくとも一部を覆い該山に沿って設けられる防護面を、支持体により支持してなる保護構造物において、前記クッション材が古タイヤを粉砕したチップからなる保護構造物(例えば特許文献4)や、所定の間隔で支柱を設け、各支柱の間に水平ロープ材を水平方向のスライドを許容した状態で係留し、水平ロープ材の両端は固定し、各支柱間を水平ロープ材に掛止させたワイヤ製のネットで遮蔽し、前記水平ロープ材の途上にロープ材を重合させて形成した余長部と、余長部を一定の力で挟持する挟持具とにより、水平ロープ材に設定張力以上の張力が作用したとき、水平ロープ材が一定の摩擦力を保持したまま余長部が伸長して張力を吸収する緩衝部を形成した衝撃吸収柵(例えば特許文献5)などが提案されている。
【0003】
また、同一出願人は、撓み導入手段によって、ロープ材に凸となる所定量の撓みを形成することにより、ロープ材から支柱に加わる引張力が軽減され、落石衝撃力または雪圧などが作用した際、支柱に加わる力を軽減できる防護柵を提案している(例えば特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−173221号公報
【特許文献2】実開昭54−3826号公報
【特許文献3】特開平1−214830号公報
【特許文献4】特開平9−221720号公報
【特許文献5】特開平9−184116号公報
【特許文献6】特開2009−102855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のロックシェッドでは土砂により落石などの衝撃力を吸収し、上記特許文献2では発泡スチロールブロックにより落石などの衝撃力を吸収し、上記特許文献3ではゴムタイヤにより落石などの襲撃力を吸収し、上記特許文献3では古タイヤを粉砕したチップにより落石などの襲撃力を吸収しており、このように硬質材からなる屋根や壁材などに土砂,発泡スチロール,ゴムタイヤやゴムチップなどの緩衝材を配置した防護面構造では、緩衝材が塑性変形することにより衝撃力を吸収するため、衝撃吸収効果を効果的に向上することができない。
【0006】
これに対して、上記特許文献5の衝撃吸収柵では、緩衝装置(緩衝部)を設けることにより、水平ロープ材に設定張力以上の張力が作用したとき、水平ロープ材が一定の摩擦力を保持したまま余長部が伸長して衝撃力を吸収することができる。
【0007】
しかしながら、用地の制限がある場合、緩衝装置を設けた防護面構造では衝撃力を吸収するときに大きな変形量を伴うことから設置が困難である。また、緩衝装置には復元力がないためロープ材が摺動した後の維持管理においても留意が必要である。
【0008】
そこで、本発明は、変形可能な支持面と緩衝材とを組み合わせた従来に無い構造により、衝撃吸収効果に優れた防護面構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、支持体により支持した防護面を備えた防護面構造において、前記防護面が変形可能であり、前記防護面の山側に緩衝部材を配置し、前記緩衝部材が粒状物を有し、前記防護面上に前記緩衝部材を配置し、この緩衝部材の重さにより前記防護面に撓みを導入したことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、変形可能な防護面と緩衝部材とを組み合わせることにより、落石などの衝撃力を受けると、緩衝部材の変形と防護面の変形とにより衝撃力を効果的に吸収することができる。この場合、衝撃力が緩衝部材に加わってから防護面が変形するから、防護面の変形が少なく済む。
【0011】
また、上記構成によれば、設置状態で、緩衝材の重さにより変形可能な防護面が下側に所定量だけ撓むことにより、防護面から支柱に加わる引張力が軽減され、衝撃力が作用した際、支持体に加わる力を軽減できる。
【0012】
また、本発明は、衝撃力を受けると、網体が変形して衝撃力を吸収する。
【0013】
(2)また、本発明は、前記防護面が網体であることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、衝撃力を受けると、網体が変形して衝撃力を吸収することができる。
【0015】
(3)また、本発明は、前記防護面は垂直に対して45度以上に傾いていることを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、防護面に撓みを導入する点から好ましい。
【0017】
(4)また、本発明は、前記粒状物が砂,土及び石の群から選んだ少なくとも1種であることを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、衝撃力を受けると、砂,土及び石の群から選んだ少なくとも1種からなる粒状体が移動し、緩衝部材が全体として変形することにより衝撃力を吸収する。また、比重の大きな砂,土及び石を緩衝部材に用いるから、緩衝部材の移動に伴う衝撃力吸収効果が向上する。
【0019】
(5)また、本発明は、前記緩衝部材が前記粒状物を袋体に詰めた緩衝袋体であり、複数の前記緩衝袋体を前記防護面上に並べたことを特徴とする。
【0020】
上記構成によれば、衝撃力を受けると、袋体内の砂が移動し、緩衝部材が変形することにより衝撃力を吸収すると共に、緩衝部材から防護面に加わる衝撃力により防護面が変形して衝撃力を吸収し、このように緩衝部材と変形可能な防護面とにより衝撃力を効果的に吸収することができる。
【0021】
(6)また、本発明は、前記粒状物が石であり、前記緩衝部材が籠本体に石を詰めた蛇籠であり、複数の前記蛇籠を前記防護面の山側に並べたことを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、衝撃力を受けると、蛇籠が変形して衝撃力を吸収すると共に、蛇籠から防護面に加わる衝撃力により防護面が変形して衝撃力を吸収し、このように蛇籠と変形可能な防護面により衝撃力を効果的に吸収することができる。
【0023】
(7)前記支持体の上部に所定間隔で主桁を配置し、この主桁は、基端を前記支持体の上部に固定すると共に、突出した先端を自由端とし、この先端側が高くなるように斜めに配置され、前記主桁間に前記防護面が設けられていることを特徴とする。
【0024】
(8)また、本発明は、前記支持体の上部に所定間隔で主桁を配置し、この主桁は、基端を前記支持体の上部に固定すると共に、突出した先端を自由端とし、この先端側が高くなるように斜めに配置され、前記主桁間に前記網体が設けられ、この網体に遮水シートを重ね合わせて配置して防水性を得たことを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、防護面に防水性が得られる。
【0026】
(9)また、請求項1〜8のいずれか1項に記載の防護面を、既設の保護構造物の屋根の上方に設け、前記既設の保護構造物の屋根の上面と前記防護面との間に、衝撃力を受けた前記防護面が変形可能なように間隔を設けたことを特徴とする。
【0027】
上記構成によれば、既設の保護構造物の屋根に本発明の防護面構造を適用することができる。
【発明の効果】
【0028】
上記構成によれば、変形可能な防護面と緩衝部材とを組み合わせることにより、落石などの衝撃力を受けると、緩衝部材の変形と防護面の変形とにより衝撃力を効果的に吸収することができ、衝撃力の吸収効果に優れた防護面構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の参考例1の防護面構造を備えた防護体の平面図である。
【図2】同上、落石を受けた状態の防護体の平面図である。
【図3】同上、正面説明図である。
【図4】同上、側面図である。
【図5】同上、ワイヤーネットの正面図である。
【図6】同上、ワイヤーネットの要部の拡大正面図である。
【図7】同上、架台にワイヤーネットを取り付けた状態の平面図である。
【図8】同上、架台にワイヤーネットを取り付けた状態の側面図である。
【図9】同上、試験例Sの支点反力と時間の関係及び重錘衝撃力と時間の関係を示すグラフ図である。
【図10】同上、比較例Nの支点反力と時間の関係及び重錘衝撃力と時間の関係を示すグラフ図である。
【図11】同上、試験例Dの支点反力と時間の関係及び重錘衝撃力と時間の関係を示すグラフ図である。
【図12】同上、試験例Sの力積と時間との関係を示すグラフ図である。
【図13】同上、吸収エネルギーと変位の関係を示すグラフ図である。
【図14】同上、落下高さと衝撃力の関係を示すグラフ図である。
【図15】同上、衝撃力と時間の関係を示すグラフ図であり、図15(A)は比較例N−3、図15(B)は試験例S−3のものを示す。
【図16】本発明の参考例2の防護面構造を備えた防護体の平面図である。
【図17】同上、正面説明図である。
【図18】同上、側面図である。
【図19】本発明の参考例3の防護面構造を備えた防護体の側面図である。
【図20】同上、平面図である。
【図21】本発明の参考例4の防護面構造を備えた防護体の平面図である。
【図22】同上、正面説明図である。
【図23】同上、側面図である。
【図24】同上、施工手順を説明する一部を断面にした側面図である。
【図25】本発明の参考例5の防護面構造を備えた防護体の平面図である。
【図26】本発明の参考例6の防護面構造を備えた防護体の平面図である。
【図27】同上、側面図である。
【図28】本発明の実施例1の防護面構造を備えた防護体の断面図である。
【図29】同上、防護体の防護面構造の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる新規な防護面構造を採用することにより、従来にない防護面構造が得られ、その防護面構造について記述する。
[参考例1]
以下、本発明の基本構成を示す参考例1について、図1〜図7を参照して説明する。図1に示すように、落石,雪崩,崩壊土砂等の防護体である防護柵1は、斜面2の下に位置する設置場所に所定間隔を置いて複数の支柱3,3…を立設し、これら左右方向に並んだ前記支柱3,3…には、隣合う支柱3,3間に可撓性を有する防護面たる網体4を設けている。尚、前記設置場所は地面5であり、前記支柱3,3…として断面円形の鋼管などが例示される。また、この例では、前記地面5に柱3,3…の下部を建て込んで固定しており、具体的には前記地面5に掘削孔を形成し、この掘削孔に支柱3の下部を挿入した後、掘削孔に充填材を充填して支柱3を立設している。そして、支柱3が前記網体4を支持する支持体である。
【0031】
前記網体4は、図5〜図6に示すように、鋼線を撚った鋼製ワイヤからなる複数の斜め線材12,12が交差するワイヤーネット11を備え、前記斜め線材12,12の網体交差部13において、一方の斜め線材12に他方の斜め線材12を挿通して他方の斜め線材12を一方の線材12に編み込んでおり、斜め線材12の長さ方向で隣合う網体交差部13は、一方の斜め線材12に他方の斜め線材12に挿通する交差部13と、他方の斜め線材12に一方の斜め線材が挿通する網体交差部13が交互に配置されている。また、前記ワイヤネット11の一方の斜め線材12は左上から右下に向う斜めに配置され、他方の斜め線材12は逆向きで右上から左下に向う斜めに配置され、それら斜め線材12,22は、網体4の縁において、略90度に折り返した網体折り返し部14を有し、折り返し部14で斜め線材12,12が連続する連続する。また、前記ワイヤーネット11の周囲には、上下左右に縁辺ロープ材15が設けられ、この縁辺ロープ材15は、前記網体折り返し部14に挿通されている。さらに、また、1枚のワイヤーネット11は、隣合う支柱3,3の間隔に対応した幅を有し、隣合う支柱3,3間にワイヤーネット11を1枚ずつ張設する。具体的には、隣合う支柱3,3にワイヤーネット11の上下左右角部を固定し、この場合、縁辺ロープ材の上下角部の2箇所を支柱3,3に固定する。尚、縁辺ロープ材の左右を3箇所以上で支柱3に固定してもよいし、隣合うワイヤーネット11,11同士を連結してもよい。また、網体4には、ワイヤーネット11の網目16より小さい網目を有する金網などの網体(図示せず)を重ねて設けて網体4を構成してもよし、ワイヤーネット11のみで網体4を構成してもよい。
【0032】
前記網体4の山側Y(斜面2側)には緩衝部材たる緩衝袋体21が設けられ、防護面3のほぼ全面を覆うように複数の緩衝袋体21を並べている。この例の緩衝部材は、砂などの粒状物を含み、この粒状物を円柱状の袋体に充填した前記緩衝袋体21を複数形成する。この緩衝袋体21は、縦長で略円筒状をなし、前記支柱3の上部と略等しい高さを有し、複数の緩衝袋体21を左右方向に隙間なく並べて配置する。また、緩衝袋体21は下面が平坦に形成されているから、緩衝袋体21は自立性を有する。尚、粒状物としては、砂以外でも、砂,土,自然石や砕石などの石,木片,木質チップなどの各種の粒状物を用いることができ、且つそれらを2つ以上選択して混合して用いてもよい。また、粒状物には、圧縮強度が高く容易に圧縮崩壊しない砂,土や石を用いることが好ましく、砂,土及び石の群から選んだ少なくとも1種を粒状物に用いることができる。
【0033】
さらに、前記緩衝袋体21は、固定手段たる固定用ロープ材22により前記網体4に固定される。具体的には、固定用ロープ材22の一端22Aをワイヤーネット11の上端に連結し、この固定ロープ材22を緩衝袋体21に斜めに巻き付け、その固定用ロープ材22の他端22Bをワイヤネット11に連結し、斜めの固定用ロープ材22を複数段(図では3段)設ける。また、支柱3に沿う緩衝袋体21では、前記固定用ロープ材22の一端22A又は他端22Bを支柱3の上端又は下端に連結する。尚、固定用ロープ材22は平面図では略U字状をなす。
【0034】
そして、防護面たる網体4の山側に落石などの衝撃力を受けると、緩衝袋体21が変形して衝撃力を吸収すると共に、緩衝袋体21から網体4に加わる衝撃力により網体4が変形して衝撃力を吸収し、このように緩衝材たる砂を詰めた緩衝袋体21と変形可能な網体4とにより衝撃力を効果的に吸収することができる。
【0035】
この場合、落石Rなどの衝撃力を受けると、網体4が変形して衝撃力を吸収すると共に、図2に示すように、網体4と供に複数の緩衝袋体21が移動することにより、衝撃力が吸収される。したがって、比重の小さいものよりは比重の大きな砂などを緩衝材に用いる方が、緩衝袋体21の移動に伴う衝撃力吸収効果が高いものとなる。
【0036】
次に、変形可能な網体と緩衝材とを用いた実験例について説明する。図7〜図8に示すように、鋼材などにより略直方体形状の架台101を形成し、この架台101の上面開口102に前記ワイヤーネット11を張設する。このワイヤーネット11は、図7の平面図に示すように縦Lが3m、横Mが5mであり、前記縁辺ロープ材15は直径30mmで引張強度が1470N/mm2であり、斜め線材12は直径12mmで引張強度が1470N/mm2であり、斜め線材11,11の交差部の隣合う間隔Wは500mmである。また、前記ワイヤーネット11の上に、網目の大きさが80mm×100mmで、線径2.7mmの金網(図示せず)を敷設した。
【0037】
前記架台101の下部に該架台101に加わる反力を測定する支点反力測定用の荷重センサ103(500kN)を配置し、この荷重センサ103は、前記架台101の四方の脚部101Aの下部にそれぞれ配置されている。また、前記ワイヤーネット11の四方を前記架台101に連結し、この連結箇所に荷重センサ104(500kN)を配置する。また、緩衝材として砂を詰めた緩衝袋体105を、前記ワイヤーネット11上に敷設する。尚、緩衝袋体105は、土嚢用の袋体に重量15kNの砂を詰めてなり、6個の緩衝袋体105を前記ワイヤーネット11上に敷設した。尚、ワイヤーネット11は緩衝袋体105の重さにより撓んだ状態になる。
【0038】
本発明に対応する試験例S−1〜S−10及び本発明外の比較例N−1〜N−4は、鋼製の殻内にモルタルを充填した重量10kNの重錘106を用い、ワイヤーネット11からの高さHを3〜10mとし、それぞれの高さから重錘106を自由落下させることにより行った。また、本発明に対応する試験例D−1〜D−10は、大型土嚢に重量10kNの砂を詰めた重錘106Aを用い、ワイヤーネット11からの高さHを3〜10mとし、それぞれの高さから重錘106Aを自由落下させることにより行った。尚、重錘106の中央には3軸の加速度計107(100G)を配置した。
【0039】
前記重錘106は落石を想定したものであり、前記重錘106Aは柔らかい土砂等を想定したものである。
【0040】
そして、比較例N−1〜N−4は、ワイヤーネット11上に緩衝袋体105を配置せずにワイヤーネット11のみを用いて行った。以下の表1に、試験例S−1〜S−10、比較例N−1〜N−4及び試験例D−1〜D−10における高さHを示す。
【0041】
【表1】
【0042】
尚、表1中、重錘の種類で、「コンクリート」は、鋼製の殻内にモルタルを充填した重錘106を示し、「砂」は、大型土嚢に砂を詰めた重錘106Aを示す。
【0043】
そして、荷重センサ103により重錘落下時において架台101に加わる支点反力を測定し、荷重センサ104により重錘落下時においてワイヤーネット11に加わる張力を測定し、加速度センサ107により重錘落下時の加速度を測定し、いずれの測定も5kHzでデータのサンプリングを行った。また、変形状況を確認するために、高速ビデオカメラを用い、毎秒1000コマの速度で撮影を行った。尚、試験例D−5〜D−10は、土嚢の重錘106Aを使用したため、加速度は測定しなかった。
【0044】
図9(A)〜(F)、図10(A)〜(D)及び図11(A)〜(D)は、縦軸に、重錘衝撃力と架台101の荷重センサ103により測定した支点反力、横軸に時間を採り、重錘衝撃力と支点反力の経時的変化を示す。重錘衝撃力は重錘加速度に重錘重量を乗じて算出を行い、支点反力は4箇所に配置した荷重センサ103の応答値を時間毎に合計したものである。尚、図11(A)〜(D)は支点反力のみを示す。
【0045】
図9(A)〜(F)に示すように、試験例S−1〜S−10では、重錘衝撃力の荷重の立ち上がりから最大値までの時間は0.02秒〜0.05秒、作用時間は0.15秒〜0.18秒となっている。支点反力は、重錘衝撃力が最大値を示す時刻付近に立ち上がり、その作用時間は0.13秒〜0.15秒となっている。また、最大値は重錘衝撃力に比べてやや小さい値を示している。
【0046】
図10(A)〜(D)に示すように、比較例N−1〜N−4において重錘衝撃力は、試験例Sに比べ荷重の立ち上がりから最大値までの時間が長く、0.07秒〜0.12秒程度となっている。最大値は135kN〜276kNであり、試験例Sに比べ大きい値を示している。落下高さが3mで比べると、試験例S−3の192kNに対して比較例N−3では263kNと1.37倍の値となっている。尚、比較例N−4の重錘衝撃力をみると比較例N−3に比べ小さい値を示している。これは、ワイヤーネット11の破断により、エネルギーが吸収されたためであると考えられる。支点反力の作用時間は、落下高さが高くなると短くなっており、0.08秒〜0.16秒となっている。
【0047】
試験例D−5〜D−10では、土嚢からなる重錘106Aを落下させたため重錘衝撃力は計測していない。図11(A)〜(D)では、重錘の違いを比較するため試験例S−5〜S−10の波形も破線で併せて示している。
【0048】
試験例D−5〜D−10の支点反力と試験例S−5〜S−10の支点反力を比べると、最大値および作用時間は概ね同じであり、波形形状も類似している。なお、支点反力の立ち上がり時間のずれは、計測開始時間のずれであり、衝突からの立ち上がり時間に関係していない。このことより、ワイヤーネット11上に大型土嚢である緩衝袋体21が設置されている柔な支持面の場合、衝突物が硬質は重錘106である場合と土嚢からなる重錘106Aの場合の支点反力の応答に優位な違いはないことが明らかとなった。
【0049】
図12(A)〜(F)は、試験例S−5〜S−10での力積の経時変化を示したもので
ある。力積は、重錘衝撃力を時間で積分して算出している。
【0050】
試験例S−5〜S−10での力積は、衝突時の重錘の初期運動量m・vに比べ 10%〜20%程度大きい値を示している。ロックシェッド等の剛な構造上の敷砂への衝突では、重錘が緩衝砂に貫入しリバウンドもほとんどないため力積と初期運動量はほぼ同じになる。一方、今回の実験ではワイヤーネット11の限界に達していないため、ワイヤーネット11の比較的ゆっくりとした弾性挙動のため重錘がリバウンドし、やや大きい値を示している。
【0051】
図13(A)(B)は吸収エネルギーと変位の関係を示したものである。なお、変位は加速度を時間で2回積分して算出したものであり、吸収エネルギーは、荷重を変位による積分して算出したものであり、荷重と変位関係で囲まれる面積で表される。試験例S−5〜S−10では、変位と変位エネルギー関係の勾配は落下高さが高くなるとやや大きくなる傾向が認められる。これは重錘の落下を漸増載荷としたため砂が締め固まった影響であると推測される。しかしながら、最大変位最大エネルギーでは、吸収エネルギーは変位にほぼ比例関係が認められる。
【0052】
比較例N−1〜N−4では、落下高さによるエネルギー吸収勾配の変化が見られない。比較例N−4では、エネルギーが一定で変位が増加した後、変位が0.75m程度の位置よりエネルギーが再び大きく増加する比較的複雑な関係となっているが、これはワイヤーネット11が破断したためである。
【0053】
ワイヤーネット11に変形に関し、大型土嚢の緩衝袋体21をワイヤーネット11上に設置した試験例Sでは、落下高さ10mの試験例S−10で重錘106は緩衝袋体21に1m程度に貫入したもののワイヤーネット11全体の変形は最大で93mm程度であった。一方、緩衝袋体21を設置しない場合、ワイヤーネット11は落下高さ4mで破断しており緩衝袋体21によってワイヤーネット11の局部損傷も抑制できることがわかる。
【0054】
これらから、ワイヤーネット11上緩衝袋体21を設置することでワイヤーネット11の局部損傷と変形を低減することが確認され、変形量の小さい防護工としても適したものとなる。
【0055】
【表2】
【0056】
表2は試験例Sおよび比較例Nの重錘衝撃力と支点反力の最大値を示している。表中の応答比は、入力荷重である重錘衝撃力を伝達荷重である支点反力で除した比を示している。
【0057】
ワイヤーネット11上に緩衝袋体21を敷設した試験例Sでは、支点反力の値が重錘衝撃力の0.84〜0.96、ワイヤーネット11に直接落下させた比較例Nでは、0.98〜1.09であった。
【0058】
重錘の衝突速度すなわち衝突エネルギーが同じである比較例N−3と試験例S−3について比較すると、ワイヤーネット11に直接落下させた重錘衝撃力の最大値では、試験例S−3は比較例N−3の70%程度、支点反力の最大値では比較例N−3の60%程度になっており、砂の緩衝効果により衝撃力が小さくなったものと考えられる。
【0059】
図14は落下高さと衝撃力の関係を示している。図中の便覧式は、落石対策便覧(発行所:社団法人日本道路協会 2000)での衝撃力式から算出したものである。
【0060】
下記の式(1)に落石対策便覧式を示す。
P=2.108・(m・g)2/3・H3/5・λ2/5・・・(1)
ここで、m:落石の質量(t),g:重力加速度9.806m/sec2,H:落下高さ(m),λ:ラーメ定数(kN/m2)である。
【0061】
本実験では、比較例Nの支点反力はラーメ定数λ=1000kN/m2で算出した衝撃力と概ね一致しており、試験例Sと試験例Dでは、試験例Sの重錘衝撃力が少し大きな値を示しているものの、支点反力に関してはラーメ定数λ=200kN/m2で算出した衝撃力と概ね一致していることがわかる。
【0062】
このように、ワイヤーネット11上に大型土嚢である緩衝袋体11が設置されている柔な支持面に落石あるいは土砂が衝突した場合には、ロックシェッドに通常使用されるサンドクッション(λ=1000kN/m2)で算定される最大衝撃力に関し、衝撃力は非常に小さいものであることがわかった。
【0063】
これらから、本構造に落石等の衝撃が作用しワイヤーネット11を支持する柱や梁の設計を静的荷重に置き換えて設計する場合、ラーメ定数λ=200kN/m2を用いて設計を行うことができるものと推察できる。
【0064】
図15は,比較例N−3および試験例S−3の支点反力の応答波形から固有周期を示したものである。比較例N−3は、重錘衝突後に短い周期で振動していることがわかる。これは載荷架台101の振動と推察される。試験例S−3では、衝突後に0.3秒で振動しており、比較例N−3に比べ固有周期が非常に長くなっていることがわかる。
【0065】
1質点系の固有周期は、次の式(2)により定義される。
T=2・π・√(M/k)・・・(2)
ここで、T:固有周期(sec),M:質量(t),k:ばね定数(kN/m)である。Mは構造体の応答を考える場合、適切な量を設定し、有効質量と呼ばれる。
【0066】
本研究においても、1質点のモデルで表現できると仮定し、実験で得られた変位を用い、最大衝撃力の試算を行った。
【0067】
固有周期は、式(2)により表されていることから、ばね定数を式(3)により求めた。なお、有効質量には、ワイヤーネット11の質量が緩衝袋体21の質量に比べ非常に小さいため無視し、ワイヤネット上の土嚢のみとした。
k=M/T2・(2・π)2=9/0.32・(2・π)2=3943kN/m・・・(3)
ここで、T:固有周期 0.3(sec),k:ワイヤネットのばね定数(kN/m),M:有効質量9.0(t)である。
【0068】
【表3】
【0069】
表3は、高速ビデオの画像から算出した最大変位にばね定数を乗じて算出した計算値と実験で得られた支点反力を示している。計算値は重錘が傾いて衝突した試験例S−5を除き実験値と概ね一致していることがわかる。
【0070】
以上の実験から以下の点が確認された。
【0071】
(1)ワイヤーネット11上に大型土嚢である緩衝袋体21が設置されている柔な支持面の場合、衝突物が重錘106である場合と土嚢の重錘106Aの場合の支点反力の応答に優位な違いはないことが明らかとなり、落石と崩壊土砂の両者で効果が得られることが判った。
【0072】
(2)本実験に使用したワイヤーネット11単独の重錘衝撃力は、落石対策便覧式のλ=1000kN/m2と同程度であった。
【0073】
(3)柔なワイヤーネット11上に土嚢を設置することで、衝撃におけるラーメ定数λ=200kN/m2に相当することが明らかになった。
【0074】
(4)1質点系モデルの固有周期から算出したばね定数とワイヤネットの変位の関係から算出した荷重は、実験値の支点反力と概ね一致することを示した。
【0075】
このように本参考例では、支持体により支持した防護面たる網体4を備えた防護面構造において、網体4が変形可能であり、網体4の山側に緩衝部材たる緩衝袋体21を配置したから、変形可能な網体4と緩衝袋体21とを組み合わせることにより、落石Rなどの衝撃力を受けると、緩衝袋体21の変形と防護面の変形とにより衝撃力を効果的に吸収することができる。この場合、衝撃力が緩衝袋体21に加わってから網体4が変形するから、防護面の変形が少なく済む。また、衝撃力が緩衝袋体21に加わってから網体4が変形するから、網体4の変形が少なく済む。
【0076】
また、このように本参考例では前記防護面が網体であるから、衝撃力を受けると、網体4が変形して衝撃力を吸収することができる。
【0077】
また、このように本参考例では、前記緩衝部材が粒状物たる砂を有するから、衝撃力を受けると、複数の砂が移動し、緩衝袋体21が全体として変形することにより衝撃力を吸収することができる。
【0078】
また、このように本参考例では、前記粒状物が砂,土及び石の群から選んだ少なくとも1種であるから、衝撃力を受けると、砂,土及び石の群から選んだ少なくとも1種からなる粒状体が移動し、緩衝部材たる緩衝袋体21が全体として変形することにより衝撃力を吸収する。また、比重の大きな砂,土及び石を緩衝袋体21に用いるから、緩衝袋体21の移動に伴う衝撃力吸収効果が向上する。
【0079】
また、このように本参考例では、前記粒状物が砂であり、前記緩衝部材が前記砂を袋体に詰めた緩衝袋体21であり、複数の緩衝袋体21を防護面たる網体4の山側に並べたから、衝撃力を受けると、袋体内の砂が移動し、緩衝袋体21が変形することにより衝撃力を吸収すると共に、緩衝袋体21から網体4に加わる衝撃力により網体4が変形して衝撃力を吸収し、このように緩衝袋体21と変形可能な網体4とにより衝撃力を効果的に吸収することができる。
【0080】
また、このように本参考例では、支持体が間隔を置いて立設した支柱3であり、支柱3間に防護面たる網体4が設けられているから、防護柵1における衝撃吸収力を向上することができる。
【0081】
また、参考例上の効果として、緩衝袋体21を網体4のワイヤーネット11に固定する固定手段たる固定用ロープ材22を備えるから、緩衝袋体21の移動を防止することができる。さらに、緩衝袋体21を隙間なく並べて設けたから、確実な緩衝効果が得られる。
[参考例2]
図16〜図18は、本発明の参考例2を示し、上記参考例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、設置場所たる斜面2下部の地面5に、コンクリート基礎31を設け、このコンクリート基礎31に前記支柱3,3・・・を立設する、また、網体4に換えて、支柱3,3・・・間には、横ロープ材32,32・・・を多段に設け、それら横ロープ材32,32・・・により防護面33を構成している。また、横ロープ材32,32・・・には、横ロープ材32,32の上下間隔より網目が小さい金網などの網体(図示せず)を重ねて設けてもよい。
【0082】
前記防護面33の山側Y(斜面2側)には緩衝材が設けられている。この例の緩衝部材は前記緩衝袋体21であり、この緩衝袋体21を上記参考例1と同様に防護面33の山側に配置する。
【0083】
さらに、前記緩衝袋体21は、上下多段に設けられる固定手段たる固定用ロープ材23により前記横ロープ材32,32・・・に固定される。具体的には、緩衝袋体21に略U字状に固定用ロープ材23を巻き、この固定用ロープ材23の両端を前記横ロープ材32に連結固定し、固定用ロープ材23は多段に設けられている。また、支柱3に沿う緩衝袋体21では、前記固定用ロープ材23の一端を支柱3に連結する。さらに、固定用ロープ材23を環状に緩衝袋体21に巻くと共に、固定用ロープ材23を前記斜め線材12,12の升目に挿通して斜め線材12,12に連結してもよい。尚、この例では、1本の固定用ロープ材23の両端は略同一高さ位置にある。
【0084】
そして、防護面33の山側に落石Rなどの衝撃力を受けると、緩衝袋体21が変形して衝撃力を吸収すると共に、緩衝袋体21から防護面33に加わる衝撃力により防護面33が変形して衝撃力を吸収し、このように緩衝部材たる砂を詰めた緩衝袋体21と変形可能な防護面33とにより衝撃力を効果的に吸収することができる。
【0085】
このように本参考例では、支持体たる支柱3により支持した防護面33を備えた防護面構造において、防護面33が変形可能であり、防護面22に緩衝部材たる緩衝袋体21を配置し、また、支持体が間隔を置いて立設した支柱3であり、支柱3,3・・・間に防護面33が設けられているから、上記参考例1と同様な作用・効果を奏する。
【0086】
また、実施例上の効果として、固定用ロープ材23は多段に設けられたから、緩衝袋体21を安定して防護面33に固定することができる。
[参考例3]
図19〜図20は、本発明の参考例3を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例の緩衝袋体21Aは、横長で縦断面形状が略方形をなし、この例では略正方形の縦断面形状をなし、略支柱3,3の間隔に対応した長さを有する。
【0087】
そして、複数の緩衝袋体21Aを略防護面33の高さまで積み上げ、上下の緩衝袋体21A,21A同士を連結すると共に、各緩衝袋体21Aを固定手段により網体4に固定する。また、防護柵1の左右方向に隣り合う緩衝袋体21A,21A同士も固定する。尚、この固定位置は支柱3の前方となる。
【0088】
そして、防護面33の山側に落石Rなどの衝撃力を受けると、緩衝袋体21Aが変形して衝撃力を吸収すると共に、緩衝袋体21Aから網体4に加わる衝撃力により防護面33が変形して衝撃力を吸収し、このように緩衝部材たる砂を詰めた緩衝袋体21と変形可能な防護面33とにより衝撃力を効果的に吸収することができる。
【0089】
この場合、衝撃力を受けると、防護面33が変形して衝撃力を吸収すると共に、網体4と供に複数の緩衝袋体21Aが移動することにより、衝撃力が吸収される。したがって、比重の小さいものよりは比重の大きな砂などを用いる方が、緩衝袋体21Aの移動に伴う衝撃力吸収効果が高いものとなる。
【0090】
このように本参考例では、支持体たる支柱3により支持した防護面33を備えた防護面構造において、防護面33が変形可能であり、防護面22に緩衝部材たる緩衝袋体21を配置し、また、支持体が間隔を置いて立設した支柱3であり、支柱3,3・・・間に防護面33が設けられているから、上記参考例1と同様な作用・効果を奏する。
[参考例4]
図21〜図24は、本発明の参考例4を示し、上記各参考例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、支柱3及び網体4は参考例1と同一構成である。
【0091】
この例の緩衝部材は、砂,土及び石の群から選んだ少なくとも1種の粒状物41を盛った緩衝構造体たる緩衝盛土45であり、網体4の山側Yに沿って設けた後壁面材42と、この後壁面材42と間隔を置いて設けた前壁面材43とを備え、それら後,前壁面材42,43間の充填空間に前記粒状物41を充填してなる。また、前記後壁面材42と前壁面材43はそれぞれ高さ方向に複数分割された分割面材42A,43Aからなり、分割面材42A,43Aを上下に重ね合わせて前記後壁面材42と前壁面材43が形成される。尚、分割面材42A,43Aは左右方向にも分割することができ、例えば支柱3,3間に対応した左右長さを有するように分割する。また、分割面材42A,43Aの重ね合わせ箇所間には、前記充填空間内においてジオテキスタイルなどのシート状補強材44を配置し、このシート状補強材44により充填した土41を補強する。尚、シート状補強材44は後部を後壁面材42とワイヤーネット11に連結固定し、前部を前面壁材43に連結固定する。
【0092】
前記後,前壁面材42,43にはコンクリート板,鉄板,エキスパンドメタルやワイヤネットなどが用いられ、エキスパンドメタルやワイヤネットを用いる場合は、植生用シートなどの吸出し防止部材を重ねて配置すればよい。
【0093】
そして、分割面材42A,43Aを1段ずつ配置し、それら分割面材42A,43A間に砂41を充填して締固め、その締固めた砂層の上にシート状補強材44を配置し、この後、施工の終わった1段上に分割面材42A,43Aを配置し、それら分割面材42A,43A間に粒状物41を充填して締固め、その締固めた粒状物41の層の上にシート状補強材44を配置し、これを繰り返して支柱3の高さまで、構造体たる緩衝盛土45を構築する。尚、緩衝盛土45の左右方向端部は側部面材46を設ける。
【0094】
そして、網体4の山側Yに落石Rなどの衝撃力を受けると、緩衝盛土45が変形して衝撃力を吸収すると共に、緩衝盛土45から網体4に加わる衝撃力により網体4が変形して衝撃力を吸収し、このように緩衝盛土45と変形可能な網体4とにより衝撃力を効果的に吸収することができる。
【0095】
尚、この例においても、緩衝部材を木片や木質チップを盛って構成してもよい。
【0096】
このように本参考例では、支持体たる支柱3により支持した防護面33を備えた防護面構造において、防護面33が変形可能であり、防護面33に緩衝構造体たる緩衝盛土45を配置し、また、支持体が間隔を置いて立設した支柱3であり、支柱3,3・・・間に防護面たる防護面33が設けられているから、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0097】
また、このように本参考例では、緩衝部材が防護面33の山側に粒状物を盛った構造体たる盛土45であるから、衝撃力を受けると、緩衝盛土45が変形して衝撃力を吸収すると共に、緩衝盛土45から防護面33に加わる衝撃力により防護面33が変形して衝撃力を吸収し、このように緩衝盛土45と変形可能な防護面33により衝撃力を効果的に吸収することができる。
【0098】
また、参考例上の効果として、防護面33の山側に、緩衝盛土45を設け、この緩衝盛土45は後,前壁面材42,43との間に砂41を締固めて充填したものであるから、均一な緩衝効果が得られると共に、緩衝効果に優れたものとなる。
[参考例5]
図25は、本発明の参考例5を示し、上記各参考例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、実施例4の緩衝盛土45において、後,前壁面材42,43の略中央に発泡性合成樹脂ブロック47を配置し、この樹脂ブロック47の前後を充填した粒状物41の層により挟んでなり、発泡性合成樹脂ブロック47を中に配置した緩衝盛土45により緩衝部材を構成している。尚、前記発泡性合成樹脂ブロック47の発泡性合成樹脂としては、発泡スチロール、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ウレタン等がある。また、実施例では、複数のブロック47を用いたが、現場発泡により発泡性合成樹脂の層を形成してもよい。
【0099】
そして、網体4の山側に落石Rなどの衝撃力を受けると、緩衝盛土45が変形して衝撃力を吸収すると共に、緩衝盛土45から網体4に加わる衝撃力により網体4が変形して衝撃力を吸収し、このように緩衝盛土45と変形可能な網体4とにより衝撃力を効果的に吸収することができ、特に、緩衝盛土45は前後の粒状物41の層と間の発泡性合成樹脂ブロック46とからなるから、衝撃吸収効果が向上する。
【0100】
このように本参考例では、支持体たる支柱3により支持した防護面たる網体4を備えた防護面構造において、網体4が変形可能であり、網体4に緩衝材たる木質杆を配置し、また、支持体が間隔を置いて立設した支柱3であり、支柱3,3・・・間に防護面たる網体4が設けられているから、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0101】
また、このように本参考例では、緩衝材が発泡性合成樹脂であるから、衝撃力を受けると、発泡性合成樹脂ブロック47が塑性変形して衝撃力を吸収することができる。
[参考例6]
図26〜図27は、本発明の参考例6を示し、上記各参考例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、緩衝部材として蛇籠48を用い、この蛇籠48は、籠本体49内に玉石や栗石など石を詰めてなり、前記籠本体49は、金網などからなる上面、下面及び四方の側面を有する。
【0102】
前記籠本体49は、横長で縦断面形状が略長方形をなし、略支柱3,3の間隔に対応した長さを有する。
【0103】
そして、複数の蛇籠48を略防護面33の高さまで積み上げ、上下の蛇籠48,48同士を連結すると共に、各蛇籠48,48を固定手段により網体4に固定する。また、防護柵1の左右方向に隣り合う蛇籠48,48同士も連結する。尚、この連結位置は支柱3の前方となる。
【0104】
そして、防護面33の山側に落石Rなどの衝撃力を受けると、蛇籠48が変形して衝撃力を吸収すると共に、蛇籠48から防護面33に加わる衝撃力により防護面33が変形して衝撃力を吸収し、このように粒状物たる石をつめた蛇籠48と変形可能な防護面33とにより衝撃力を効果的に吸収することができる。
【0105】
このように本参考例では、支持体たる支柱3により支持した防護面33を備えた防護面構造において、防護面33が変形可能であり、網体4に緩衝部材たる蛇籠48を配置し、また、支持体が間隔を置いて立設した支柱3であり、支柱3,3・・・間に防護面33が設けられているから、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0106】
また、このように本参考例では、粒状物が石であり、緩衝部材が籠本体49に石を詰めた蛇籠48であり、複数の蛇籠48を防護面33の山側に並べたから、衝撃力を受けると、蛇籠48が変形して衝撃力を吸収すると共に、蛇籠48から防護面33に加わる衝撃力により防護面33が変形して衝撃力を吸収し、このように蛇籠48と変形可能な防護面33により衝撃力を効果的に吸収することができる。
【実施例1】
【0107】
図28〜図29は、本発明の実施例1を示し、上記各参考例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、落石Rや土砂崩れ,雪崩等から道路や建築物などを防護する屋根を備えた防護体50に本発明を適用した例である。
【0108】
図28に示すように山の斜面2の下部に通路である道路51が設けられており、その斜面2の下部に支持体たるコンクリート製の壁体52を構築する。この壁体52はその下部に脚部53を一体に有し、この脚部53は道路51側に突出すると共に、道路の下部に埋設されている。
【0109】
また、道路51の長さ方向に所定間隔で主桁54を設け、この主桁54は、鋼管やプレキャストコンクリート梁などからなり、基端を前記壁体52の上部に固定し、道路側に突出した先端を自由端とし、先端側が高くなるように斜めに配置されている。また、主桁54の先端側下部と壁体52とを斜材55が連結し、この斜材55は鋼管やプレキャストコンクリート梁などからなり、主桁54の先端側を支持する。
【0110】
また、前記主桁54,54間には、前記ワイヤーネット11,11を備えた防護面たる網体4が張設され、前記ワイヤーネット11,11の両側が、屋根57の構成部材である前記主桁54に連結固定されている。
【0111】
この例の緩衝部材は、砂などの粒状物を円柱状の袋体に充填した緩衝袋体21Bである。この緩衝袋体21Bは、略直方体形状をなし、この例では立方体形状のものを用い、前記網体4の上に前記緩衝袋体21Bを隙間なく敷設する。この場合、網体4には緩衝袋体21Aの荷重が加わるから、主桁54,54の中間で網体4の撓み量が最大となり、このように緩衝袋体21Aの荷重により予め網体4に撓みが導入されている。
【0112】
ところで、従来技術の防護柵(特許文献6)では、撓み導入手段によりロープ材に所定量の撓みを形成していたが、本実施例では緩衝袋体21Bの重さによりワイヤーネット11が下側に所定量だけ撓むため、防護体50の主桁54に加わる力を軽減できる。
【0113】
また、各緩衝袋体21Bが図示しない固定手段により前記ワイヤーネット11に固定され、固定手段としては、袋をワイヤーネット11に固定する固定具や袋体21Bに巻き付けて固定する固定用ロープ材を用いたり、予め袋に縫着されたバンドなどをワイヤーネット11に連結固定したり、各種の手段を用いることができる。
【0114】
また、壁体52の上部には緩衝層56を設け、この緩衝層56は、サンドクッション材,発泡性合成樹脂ブロックなどからなる。尚、前記主桁54,網体及び緩衝袋体21Bにより、屋根57を構成している。この場合、前記網体4に遮水シート(図示せず)を重ね合わせて配置すれば、屋根57に防水性が得られる。
【0115】
そして、主桁54,54の間には変形可能な防護面50が設けられ、従来のように硬質材からなる屋根材などは設けられていない。尚、既設の保護構造物の屋根に本発明の防護面構造を適用する場合、前記屋根の上方に防護面構造を設ければよく、この場合は、屋根の上面と防護面との間に、衝撃力を受けた防護面が変形可能なように間隔を設ければよい。
【0116】
そして、防護面たる網体4の山側である上面側に落石Rなどの衝撃力を受けると、緩衝袋体21Aが変形して衝撃力を吸収すると共に、緩衝袋体21Bから網体4に加わる衝撃力により網体4が変形して衝撃力を吸収し、このように砂などの粒状物を詰めた緩衝袋体21Bと変形可能な網体4とにより衝撃力を効果的に吸収することができる。
【0117】
このように本実施例では、支持体たる主桁54により支持し防護面たる網体4を備えた防護面構造において、網体4が変形可能であり、網体4に緩衝部材たる砂が詰まった緩衝袋体21Aを配置し、また、支持体が防護体50であり、防護体50の主桁54,54・・・間に防護面たる網体4が設けられているから、上記各参考例と同様な作用・効果を奏する。
【0118】
また、このように本実施例では、防護面たる網体4上に緩衝材たる緩衝袋体21Aを配置したから、緩衝袋体21Bの重さによりワイヤーネット11が下側の所定量だけ撓むため、防護体50の主桁54に加わる力を軽減できる。この場合、防護面は垂直に対して45度以上傾いていることが網体4に撓みを導入する点から好ましい。
【0119】
尚、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、網体は各種形状のものを用いることができる。例えば、変形可能な防護面は、実施例のワイヤーネットと横ロープ材のように鋼製のロープ材を組み合わせて構成したものが好ましいが、ロープ材の材質は適宜選定可能である。また、実施例1においは屋根の一側(山側)を支持体により支持したが、屋根の両側(山側及び反山側)をそれぞれの支持体により支持してもよい。
【符号の説明】
【0120】
1 防護柵(防護体)
2 斜面
3 支柱(支持体)
4 網体(防護面)
11 ワイヤーネット
21 緩衝袋体
21A 緩衝袋体
21B 緩衝袋体
31 コンクリート基礎
32 横ロープ材
33 防護面
41 粒状物
45 緩衝盛土(構造体)
48 蛇籠
50 防護体
54 主桁(支持体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、落石や土砂崩れ,雪崩等の防護に用いる防護面構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の防護体の防護面構造として、支柱、梁材、屋根材を主構とし、屋根部最上層に土砂を敷設してなるロックシェッド(例えば特許文献1)や、落石等による被害を防止するロックシェッドの保護構造において、傾斜した屋根部の上面には板状の発泡スチロールブロックが複層に積み重ねられ、それら発泡スチロールブロックの上には耐食性のネットが布設され、その耐食性のネットの上には軽量コンクリート又はモルタルが打設された防護面構造(例えば特許文献2)や、法面の横方向に間隔をあけて設置される柵柱の前面に複数本のH形鋼による壁材を水平に取付け、これら壁材の山側にゴムタイヤ等の緩衝部材を設けた防護柵(例えば特許文献3)や、山に沿う道路又は鉄道軌道の少なくとも一部を覆い該山に沿って設けられる防護面を、支持体により支持してなる保護構造物において、前記クッション材が古タイヤを粉砕したチップからなる保護構造物(例えば特許文献4)や、所定の間隔で支柱を設け、各支柱の間に水平ロープ材を水平方向のスライドを許容した状態で係留し、水平ロープ材の両端は固定し、各支柱間を水平ロープ材に掛止させたワイヤ製のネットで遮蔽し、前記水平ロープ材の途上にロープ材を重合させて形成した余長部と、余長部を一定の力で挟持する挟持具とにより、水平ロープ材に設定張力以上の張力が作用したとき、水平ロープ材が一定の摩擦力を保持したまま余長部が伸長して張力を吸収する緩衝部を形成した衝撃吸収柵(例えば特許文献5)などが提案されている。
【0003】
また、同一出願人は、撓み導入手段によって、ロープ材に凸となる所定量の撓みを形成することにより、ロープ材から支柱に加わる引張力が軽減され、落石衝撃力または雪圧などが作用した際、支柱に加わる力を軽減できる防護柵を提案している(例えば特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−173221号公報
【特許文献2】実開昭54−3826号公報
【特許文献3】特開平1−214830号公報
【特許文献4】特開平9−221720号公報
【特許文献5】特開平9−184116号公報
【特許文献6】特開2009−102855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のロックシェッドでは土砂により落石などの衝撃力を吸収し、上記特許文献2では発泡スチロールブロックにより落石などの衝撃力を吸収し、上記特許文献3ではゴムタイヤにより落石などの襲撃力を吸収し、上記特許文献3では古タイヤを粉砕したチップにより落石などの襲撃力を吸収しており、このように硬質材からなる屋根や壁材などに土砂,発泡スチロール,ゴムタイヤやゴムチップなどの緩衝材を配置した防護面構造では、緩衝材が塑性変形することにより衝撃力を吸収するため、衝撃吸収効果を効果的に向上することができない。
【0006】
これに対して、上記特許文献5の衝撃吸収柵では、緩衝装置(緩衝部)を設けることにより、水平ロープ材に設定張力以上の張力が作用したとき、水平ロープ材が一定の摩擦力を保持したまま余長部が伸長して衝撃力を吸収することができる。
【0007】
しかしながら、用地の制限がある場合、緩衝装置を設けた防護面構造では衝撃力を吸収するときに大きな変形量を伴うことから設置が困難である。また、緩衝装置には復元力がないためロープ材が摺動した後の維持管理においても留意が必要である。
【0008】
そこで、本発明は、変形可能な支持面と緩衝材とを組み合わせた従来に無い構造により、衝撃吸収効果に優れた防護面構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、支持体により支持した防護面を備えた防護面構造において、前記防護面が変形可能であり、前記防護面の山側に緩衝部材を配置し、前記緩衝部材が粒状物を有し、前記防護面上に前記緩衝部材を配置し、この緩衝部材の重さにより前記防護面に撓みを導入したことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、変形可能な防護面と緩衝部材とを組み合わせることにより、落石などの衝撃力を受けると、緩衝部材の変形と防護面の変形とにより衝撃力を効果的に吸収することができる。この場合、衝撃力が緩衝部材に加わってから防護面が変形するから、防護面の変形が少なく済む。
【0011】
また、上記構成によれば、設置状態で、緩衝材の重さにより変形可能な防護面が下側に所定量だけ撓むことにより、防護面から支柱に加わる引張力が軽減され、衝撃力が作用した際、支持体に加わる力を軽減できる。
【0012】
また、本発明は、衝撃力を受けると、網体が変形して衝撃力を吸収する。
【0013】
(2)また、本発明は、前記防護面が網体であることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、衝撃力を受けると、網体が変形して衝撃力を吸収することができる。
【0015】
(3)また、本発明は、前記防護面は垂直に対して45度以上に傾いていることを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、防護面に撓みを導入する点から好ましい。
【0017】
(4)また、本発明は、前記粒状物が砂,土及び石の群から選んだ少なくとも1種であることを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、衝撃力を受けると、砂,土及び石の群から選んだ少なくとも1種からなる粒状体が移動し、緩衝部材が全体として変形することにより衝撃力を吸収する。また、比重の大きな砂,土及び石を緩衝部材に用いるから、緩衝部材の移動に伴う衝撃力吸収効果が向上する。
【0019】
(5)また、本発明は、前記緩衝部材が前記粒状物を袋体に詰めた緩衝袋体であり、複数の前記緩衝袋体を前記防護面上に並べたことを特徴とする。
【0020】
上記構成によれば、衝撃力を受けると、袋体内の砂が移動し、緩衝部材が変形することにより衝撃力を吸収すると共に、緩衝部材から防護面に加わる衝撃力により防護面が変形して衝撃力を吸収し、このように緩衝部材と変形可能な防護面とにより衝撃力を効果的に吸収することができる。
【0021】
(6)また、本発明は、前記粒状物が石であり、前記緩衝部材が籠本体に石を詰めた蛇籠であり、複数の前記蛇籠を前記防護面の山側に並べたことを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、衝撃力を受けると、蛇籠が変形して衝撃力を吸収すると共に、蛇籠から防護面に加わる衝撃力により防護面が変形して衝撃力を吸収し、このように蛇籠と変形可能な防護面により衝撃力を効果的に吸収することができる。
【0023】
(7)前記支持体の上部に所定間隔で主桁を配置し、この主桁は、基端を前記支持体の上部に固定すると共に、突出した先端を自由端とし、この先端側が高くなるように斜めに配置され、前記主桁間に前記防護面が設けられていることを特徴とする。
【0024】
(8)また、本発明は、前記支持体の上部に所定間隔で主桁を配置し、この主桁は、基端を前記支持体の上部に固定すると共に、突出した先端を自由端とし、この先端側が高くなるように斜めに配置され、前記主桁間に前記網体が設けられ、この網体に遮水シートを重ね合わせて配置して防水性を得たことを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、防護面に防水性が得られる。
【0026】
(9)また、請求項1〜8のいずれか1項に記載の防護面を、既設の保護構造物の屋根の上方に設け、前記既設の保護構造物の屋根の上面と前記防護面との間に、衝撃力を受けた前記防護面が変形可能なように間隔を設けたことを特徴とする。
【0027】
上記構成によれば、既設の保護構造物の屋根に本発明の防護面構造を適用することができる。
【発明の効果】
【0028】
上記構成によれば、変形可能な防護面と緩衝部材とを組み合わせることにより、落石などの衝撃力を受けると、緩衝部材の変形と防護面の変形とにより衝撃力を効果的に吸収することができ、衝撃力の吸収効果に優れた防護面構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の参考例1の防護面構造を備えた防護体の平面図である。
【図2】同上、落石を受けた状態の防護体の平面図である。
【図3】同上、正面説明図である。
【図4】同上、側面図である。
【図5】同上、ワイヤーネットの正面図である。
【図6】同上、ワイヤーネットの要部の拡大正面図である。
【図7】同上、架台にワイヤーネットを取り付けた状態の平面図である。
【図8】同上、架台にワイヤーネットを取り付けた状態の側面図である。
【図9】同上、試験例Sの支点反力と時間の関係及び重錘衝撃力と時間の関係を示すグラフ図である。
【図10】同上、比較例Nの支点反力と時間の関係及び重錘衝撃力と時間の関係を示すグラフ図である。
【図11】同上、試験例Dの支点反力と時間の関係及び重錘衝撃力と時間の関係を示すグラフ図である。
【図12】同上、試験例Sの力積と時間との関係を示すグラフ図である。
【図13】同上、吸収エネルギーと変位の関係を示すグラフ図である。
【図14】同上、落下高さと衝撃力の関係を示すグラフ図である。
【図15】同上、衝撃力と時間の関係を示すグラフ図であり、図15(A)は比較例N−3、図15(B)は試験例S−3のものを示す。
【図16】本発明の参考例2の防護面構造を備えた防護体の平面図である。
【図17】同上、正面説明図である。
【図18】同上、側面図である。
【図19】本発明の参考例3の防護面構造を備えた防護体の側面図である。
【図20】同上、平面図である。
【図21】本発明の参考例4の防護面構造を備えた防護体の平面図である。
【図22】同上、正面説明図である。
【図23】同上、側面図である。
【図24】同上、施工手順を説明する一部を断面にした側面図である。
【図25】本発明の参考例5の防護面構造を備えた防護体の平面図である。
【図26】本発明の参考例6の防護面構造を備えた防護体の平面図である。
【図27】同上、側面図である。
【図28】本発明の実施例1の防護面構造を備えた防護体の断面図である。
【図29】同上、防護体の防護面構造の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる新規な防護面構造を採用することにより、従来にない防護面構造が得られ、その防護面構造について記述する。
[参考例1]
以下、本発明の基本構成を示す参考例1について、図1〜図7を参照して説明する。図1に示すように、落石,雪崩,崩壊土砂等の防護体である防護柵1は、斜面2の下に位置する設置場所に所定間隔を置いて複数の支柱3,3…を立設し、これら左右方向に並んだ前記支柱3,3…には、隣合う支柱3,3間に可撓性を有する防護面たる網体4を設けている。尚、前記設置場所は地面5であり、前記支柱3,3…として断面円形の鋼管などが例示される。また、この例では、前記地面5に柱3,3…の下部を建て込んで固定しており、具体的には前記地面5に掘削孔を形成し、この掘削孔に支柱3の下部を挿入した後、掘削孔に充填材を充填して支柱3を立設している。そして、支柱3が前記網体4を支持する支持体である。
【0031】
前記網体4は、図5〜図6に示すように、鋼線を撚った鋼製ワイヤからなる複数の斜め線材12,12が交差するワイヤーネット11を備え、前記斜め線材12,12の網体交差部13において、一方の斜め線材12に他方の斜め線材12を挿通して他方の斜め線材12を一方の線材12に編み込んでおり、斜め線材12の長さ方向で隣合う網体交差部13は、一方の斜め線材12に他方の斜め線材12に挿通する交差部13と、他方の斜め線材12に一方の斜め線材が挿通する網体交差部13が交互に配置されている。また、前記ワイヤネット11の一方の斜め線材12は左上から右下に向う斜めに配置され、他方の斜め線材12は逆向きで右上から左下に向う斜めに配置され、それら斜め線材12,22は、網体4の縁において、略90度に折り返した網体折り返し部14を有し、折り返し部14で斜め線材12,12が連続する連続する。また、前記ワイヤーネット11の周囲には、上下左右に縁辺ロープ材15が設けられ、この縁辺ロープ材15は、前記網体折り返し部14に挿通されている。さらに、また、1枚のワイヤーネット11は、隣合う支柱3,3の間隔に対応した幅を有し、隣合う支柱3,3間にワイヤーネット11を1枚ずつ張設する。具体的には、隣合う支柱3,3にワイヤーネット11の上下左右角部を固定し、この場合、縁辺ロープ材の上下角部の2箇所を支柱3,3に固定する。尚、縁辺ロープ材の左右を3箇所以上で支柱3に固定してもよいし、隣合うワイヤーネット11,11同士を連結してもよい。また、網体4には、ワイヤーネット11の網目16より小さい網目を有する金網などの網体(図示せず)を重ねて設けて網体4を構成してもよし、ワイヤーネット11のみで網体4を構成してもよい。
【0032】
前記網体4の山側Y(斜面2側)には緩衝部材たる緩衝袋体21が設けられ、防護面3のほぼ全面を覆うように複数の緩衝袋体21を並べている。この例の緩衝部材は、砂などの粒状物を含み、この粒状物を円柱状の袋体に充填した前記緩衝袋体21を複数形成する。この緩衝袋体21は、縦長で略円筒状をなし、前記支柱3の上部と略等しい高さを有し、複数の緩衝袋体21を左右方向に隙間なく並べて配置する。また、緩衝袋体21は下面が平坦に形成されているから、緩衝袋体21は自立性を有する。尚、粒状物としては、砂以外でも、砂,土,自然石や砕石などの石,木片,木質チップなどの各種の粒状物を用いることができ、且つそれらを2つ以上選択して混合して用いてもよい。また、粒状物には、圧縮強度が高く容易に圧縮崩壊しない砂,土や石を用いることが好ましく、砂,土及び石の群から選んだ少なくとも1種を粒状物に用いることができる。
【0033】
さらに、前記緩衝袋体21は、固定手段たる固定用ロープ材22により前記網体4に固定される。具体的には、固定用ロープ材22の一端22Aをワイヤーネット11の上端に連結し、この固定ロープ材22を緩衝袋体21に斜めに巻き付け、その固定用ロープ材22の他端22Bをワイヤネット11に連結し、斜めの固定用ロープ材22を複数段(図では3段)設ける。また、支柱3に沿う緩衝袋体21では、前記固定用ロープ材22の一端22A又は他端22Bを支柱3の上端又は下端に連結する。尚、固定用ロープ材22は平面図では略U字状をなす。
【0034】
そして、防護面たる網体4の山側に落石などの衝撃力を受けると、緩衝袋体21が変形して衝撃力を吸収すると共に、緩衝袋体21から網体4に加わる衝撃力により網体4が変形して衝撃力を吸収し、このように緩衝材たる砂を詰めた緩衝袋体21と変形可能な網体4とにより衝撃力を効果的に吸収することができる。
【0035】
この場合、落石Rなどの衝撃力を受けると、網体4が変形して衝撃力を吸収すると共に、図2に示すように、網体4と供に複数の緩衝袋体21が移動することにより、衝撃力が吸収される。したがって、比重の小さいものよりは比重の大きな砂などを緩衝材に用いる方が、緩衝袋体21の移動に伴う衝撃力吸収効果が高いものとなる。
【0036】
次に、変形可能な網体と緩衝材とを用いた実験例について説明する。図7〜図8に示すように、鋼材などにより略直方体形状の架台101を形成し、この架台101の上面開口102に前記ワイヤーネット11を張設する。このワイヤーネット11は、図7の平面図に示すように縦Lが3m、横Mが5mであり、前記縁辺ロープ材15は直径30mmで引張強度が1470N/mm2であり、斜め線材12は直径12mmで引張強度が1470N/mm2であり、斜め線材11,11の交差部の隣合う間隔Wは500mmである。また、前記ワイヤーネット11の上に、網目の大きさが80mm×100mmで、線径2.7mmの金網(図示せず)を敷設した。
【0037】
前記架台101の下部に該架台101に加わる反力を測定する支点反力測定用の荷重センサ103(500kN)を配置し、この荷重センサ103は、前記架台101の四方の脚部101Aの下部にそれぞれ配置されている。また、前記ワイヤーネット11の四方を前記架台101に連結し、この連結箇所に荷重センサ104(500kN)を配置する。また、緩衝材として砂を詰めた緩衝袋体105を、前記ワイヤーネット11上に敷設する。尚、緩衝袋体105は、土嚢用の袋体に重量15kNの砂を詰めてなり、6個の緩衝袋体105を前記ワイヤーネット11上に敷設した。尚、ワイヤーネット11は緩衝袋体105の重さにより撓んだ状態になる。
【0038】
本発明に対応する試験例S−1〜S−10及び本発明外の比較例N−1〜N−4は、鋼製の殻内にモルタルを充填した重量10kNの重錘106を用い、ワイヤーネット11からの高さHを3〜10mとし、それぞれの高さから重錘106を自由落下させることにより行った。また、本発明に対応する試験例D−1〜D−10は、大型土嚢に重量10kNの砂を詰めた重錘106Aを用い、ワイヤーネット11からの高さHを3〜10mとし、それぞれの高さから重錘106Aを自由落下させることにより行った。尚、重錘106の中央には3軸の加速度計107(100G)を配置した。
【0039】
前記重錘106は落石を想定したものであり、前記重錘106Aは柔らかい土砂等を想定したものである。
【0040】
そして、比較例N−1〜N−4は、ワイヤーネット11上に緩衝袋体105を配置せずにワイヤーネット11のみを用いて行った。以下の表1に、試験例S−1〜S−10、比較例N−1〜N−4及び試験例D−1〜D−10における高さHを示す。
【0041】
【表1】
【0042】
尚、表1中、重錘の種類で、「コンクリート」は、鋼製の殻内にモルタルを充填した重錘106を示し、「砂」は、大型土嚢に砂を詰めた重錘106Aを示す。
【0043】
そして、荷重センサ103により重錘落下時において架台101に加わる支点反力を測定し、荷重センサ104により重錘落下時においてワイヤーネット11に加わる張力を測定し、加速度センサ107により重錘落下時の加速度を測定し、いずれの測定も5kHzでデータのサンプリングを行った。また、変形状況を確認するために、高速ビデオカメラを用い、毎秒1000コマの速度で撮影を行った。尚、試験例D−5〜D−10は、土嚢の重錘106Aを使用したため、加速度は測定しなかった。
【0044】
図9(A)〜(F)、図10(A)〜(D)及び図11(A)〜(D)は、縦軸に、重錘衝撃力と架台101の荷重センサ103により測定した支点反力、横軸に時間を採り、重錘衝撃力と支点反力の経時的変化を示す。重錘衝撃力は重錘加速度に重錘重量を乗じて算出を行い、支点反力は4箇所に配置した荷重センサ103の応答値を時間毎に合計したものである。尚、図11(A)〜(D)は支点反力のみを示す。
【0045】
図9(A)〜(F)に示すように、試験例S−1〜S−10では、重錘衝撃力の荷重の立ち上がりから最大値までの時間は0.02秒〜0.05秒、作用時間は0.15秒〜0.18秒となっている。支点反力は、重錘衝撃力が最大値を示す時刻付近に立ち上がり、その作用時間は0.13秒〜0.15秒となっている。また、最大値は重錘衝撃力に比べてやや小さい値を示している。
【0046】
図10(A)〜(D)に示すように、比較例N−1〜N−4において重錘衝撃力は、試験例Sに比べ荷重の立ち上がりから最大値までの時間が長く、0.07秒〜0.12秒程度となっている。最大値は135kN〜276kNであり、試験例Sに比べ大きい値を示している。落下高さが3mで比べると、試験例S−3の192kNに対して比較例N−3では263kNと1.37倍の値となっている。尚、比較例N−4の重錘衝撃力をみると比較例N−3に比べ小さい値を示している。これは、ワイヤーネット11の破断により、エネルギーが吸収されたためであると考えられる。支点反力の作用時間は、落下高さが高くなると短くなっており、0.08秒〜0.16秒となっている。
【0047】
試験例D−5〜D−10では、土嚢からなる重錘106Aを落下させたため重錘衝撃力は計測していない。図11(A)〜(D)では、重錘の違いを比較するため試験例S−5〜S−10の波形も破線で併せて示している。
【0048】
試験例D−5〜D−10の支点反力と試験例S−5〜S−10の支点反力を比べると、最大値および作用時間は概ね同じであり、波形形状も類似している。なお、支点反力の立ち上がり時間のずれは、計測開始時間のずれであり、衝突からの立ち上がり時間に関係していない。このことより、ワイヤーネット11上に大型土嚢である緩衝袋体21が設置されている柔な支持面の場合、衝突物が硬質は重錘106である場合と土嚢からなる重錘106Aの場合の支点反力の応答に優位な違いはないことが明らかとなった。
【0049】
図12(A)〜(F)は、試験例S−5〜S−10での力積の経時変化を示したもので
ある。力積は、重錘衝撃力を時間で積分して算出している。
【0050】
試験例S−5〜S−10での力積は、衝突時の重錘の初期運動量m・vに比べ 10%〜20%程度大きい値を示している。ロックシェッド等の剛な構造上の敷砂への衝突では、重錘が緩衝砂に貫入しリバウンドもほとんどないため力積と初期運動量はほぼ同じになる。一方、今回の実験ではワイヤーネット11の限界に達していないため、ワイヤーネット11の比較的ゆっくりとした弾性挙動のため重錘がリバウンドし、やや大きい値を示している。
【0051】
図13(A)(B)は吸収エネルギーと変位の関係を示したものである。なお、変位は加速度を時間で2回積分して算出したものであり、吸収エネルギーは、荷重を変位による積分して算出したものであり、荷重と変位関係で囲まれる面積で表される。試験例S−5〜S−10では、変位と変位エネルギー関係の勾配は落下高さが高くなるとやや大きくなる傾向が認められる。これは重錘の落下を漸増載荷としたため砂が締め固まった影響であると推測される。しかしながら、最大変位最大エネルギーでは、吸収エネルギーは変位にほぼ比例関係が認められる。
【0052】
比較例N−1〜N−4では、落下高さによるエネルギー吸収勾配の変化が見られない。比較例N−4では、エネルギーが一定で変位が増加した後、変位が0.75m程度の位置よりエネルギーが再び大きく増加する比較的複雑な関係となっているが、これはワイヤーネット11が破断したためである。
【0053】
ワイヤーネット11に変形に関し、大型土嚢の緩衝袋体21をワイヤーネット11上に設置した試験例Sでは、落下高さ10mの試験例S−10で重錘106は緩衝袋体21に1m程度に貫入したもののワイヤーネット11全体の変形は最大で93mm程度であった。一方、緩衝袋体21を設置しない場合、ワイヤーネット11は落下高さ4mで破断しており緩衝袋体21によってワイヤーネット11の局部損傷も抑制できることがわかる。
【0054】
これらから、ワイヤーネット11上緩衝袋体21を設置することでワイヤーネット11の局部損傷と変形を低減することが確認され、変形量の小さい防護工としても適したものとなる。
【0055】
【表2】
【0056】
表2は試験例Sおよび比較例Nの重錘衝撃力と支点反力の最大値を示している。表中の応答比は、入力荷重である重錘衝撃力を伝達荷重である支点反力で除した比を示している。
【0057】
ワイヤーネット11上に緩衝袋体21を敷設した試験例Sでは、支点反力の値が重錘衝撃力の0.84〜0.96、ワイヤーネット11に直接落下させた比較例Nでは、0.98〜1.09であった。
【0058】
重錘の衝突速度すなわち衝突エネルギーが同じである比較例N−3と試験例S−3について比較すると、ワイヤーネット11に直接落下させた重錘衝撃力の最大値では、試験例S−3は比較例N−3の70%程度、支点反力の最大値では比較例N−3の60%程度になっており、砂の緩衝効果により衝撃力が小さくなったものと考えられる。
【0059】
図14は落下高さと衝撃力の関係を示している。図中の便覧式は、落石対策便覧(発行所:社団法人日本道路協会 2000)での衝撃力式から算出したものである。
【0060】
下記の式(1)に落石対策便覧式を示す。
P=2.108・(m・g)2/3・H3/5・λ2/5・・・(1)
ここで、m:落石の質量(t),g:重力加速度9.806m/sec2,H:落下高さ(m),λ:ラーメ定数(kN/m2)である。
【0061】
本実験では、比較例Nの支点反力はラーメ定数λ=1000kN/m2で算出した衝撃力と概ね一致しており、試験例Sと試験例Dでは、試験例Sの重錘衝撃力が少し大きな値を示しているものの、支点反力に関してはラーメ定数λ=200kN/m2で算出した衝撃力と概ね一致していることがわかる。
【0062】
このように、ワイヤーネット11上に大型土嚢である緩衝袋体11が設置されている柔な支持面に落石あるいは土砂が衝突した場合には、ロックシェッドに通常使用されるサンドクッション(λ=1000kN/m2)で算定される最大衝撃力に関し、衝撃力は非常に小さいものであることがわかった。
【0063】
これらから、本構造に落石等の衝撃が作用しワイヤーネット11を支持する柱や梁の設計を静的荷重に置き換えて設計する場合、ラーメ定数λ=200kN/m2を用いて設計を行うことができるものと推察できる。
【0064】
図15は,比較例N−3および試験例S−3の支点反力の応答波形から固有周期を示したものである。比較例N−3は、重錘衝突後に短い周期で振動していることがわかる。これは載荷架台101の振動と推察される。試験例S−3では、衝突後に0.3秒で振動しており、比較例N−3に比べ固有周期が非常に長くなっていることがわかる。
【0065】
1質点系の固有周期は、次の式(2)により定義される。
T=2・π・√(M/k)・・・(2)
ここで、T:固有周期(sec),M:質量(t),k:ばね定数(kN/m)である。Mは構造体の応答を考える場合、適切な量を設定し、有効質量と呼ばれる。
【0066】
本研究においても、1質点のモデルで表現できると仮定し、実験で得られた変位を用い、最大衝撃力の試算を行った。
【0067】
固有周期は、式(2)により表されていることから、ばね定数を式(3)により求めた。なお、有効質量には、ワイヤーネット11の質量が緩衝袋体21の質量に比べ非常に小さいため無視し、ワイヤネット上の土嚢のみとした。
k=M/T2・(2・π)2=9/0.32・(2・π)2=3943kN/m・・・(3)
ここで、T:固有周期 0.3(sec),k:ワイヤネットのばね定数(kN/m),M:有効質量9.0(t)である。
【0068】
【表3】
【0069】
表3は、高速ビデオの画像から算出した最大変位にばね定数を乗じて算出した計算値と実験で得られた支点反力を示している。計算値は重錘が傾いて衝突した試験例S−5を除き実験値と概ね一致していることがわかる。
【0070】
以上の実験から以下の点が確認された。
【0071】
(1)ワイヤーネット11上に大型土嚢である緩衝袋体21が設置されている柔な支持面の場合、衝突物が重錘106である場合と土嚢の重錘106Aの場合の支点反力の応答に優位な違いはないことが明らかとなり、落石と崩壊土砂の両者で効果が得られることが判った。
【0072】
(2)本実験に使用したワイヤーネット11単独の重錘衝撃力は、落石対策便覧式のλ=1000kN/m2と同程度であった。
【0073】
(3)柔なワイヤーネット11上に土嚢を設置することで、衝撃におけるラーメ定数λ=200kN/m2に相当することが明らかになった。
【0074】
(4)1質点系モデルの固有周期から算出したばね定数とワイヤネットの変位の関係から算出した荷重は、実験値の支点反力と概ね一致することを示した。
【0075】
このように本参考例では、支持体により支持した防護面たる網体4を備えた防護面構造において、網体4が変形可能であり、網体4の山側に緩衝部材たる緩衝袋体21を配置したから、変形可能な網体4と緩衝袋体21とを組み合わせることにより、落石Rなどの衝撃力を受けると、緩衝袋体21の変形と防護面の変形とにより衝撃力を効果的に吸収することができる。この場合、衝撃力が緩衝袋体21に加わってから網体4が変形するから、防護面の変形が少なく済む。また、衝撃力が緩衝袋体21に加わってから網体4が変形するから、網体4の変形が少なく済む。
【0076】
また、このように本参考例では前記防護面が網体であるから、衝撃力を受けると、網体4が変形して衝撃力を吸収することができる。
【0077】
また、このように本参考例では、前記緩衝部材が粒状物たる砂を有するから、衝撃力を受けると、複数の砂が移動し、緩衝袋体21が全体として変形することにより衝撃力を吸収することができる。
【0078】
また、このように本参考例では、前記粒状物が砂,土及び石の群から選んだ少なくとも1種であるから、衝撃力を受けると、砂,土及び石の群から選んだ少なくとも1種からなる粒状体が移動し、緩衝部材たる緩衝袋体21が全体として変形することにより衝撃力を吸収する。また、比重の大きな砂,土及び石を緩衝袋体21に用いるから、緩衝袋体21の移動に伴う衝撃力吸収効果が向上する。
【0079】
また、このように本参考例では、前記粒状物が砂であり、前記緩衝部材が前記砂を袋体に詰めた緩衝袋体21であり、複数の緩衝袋体21を防護面たる網体4の山側に並べたから、衝撃力を受けると、袋体内の砂が移動し、緩衝袋体21が変形することにより衝撃力を吸収すると共に、緩衝袋体21から網体4に加わる衝撃力により網体4が変形して衝撃力を吸収し、このように緩衝袋体21と変形可能な網体4とにより衝撃力を効果的に吸収することができる。
【0080】
また、このように本参考例では、支持体が間隔を置いて立設した支柱3であり、支柱3間に防護面たる網体4が設けられているから、防護柵1における衝撃吸収力を向上することができる。
【0081】
また、参考例上の効果として、緩衝袋体21を網体4のワイヤーネット11に固定する固定手段たる固定用ロープ材22を備えるから、緩衝袋体21の移動を防止することができる。さらに、緩衝袋体21を隙間なく並べて設けたから、確実な緩衝効果が得られる。
[参考例2]
図16〜図18は、本発明の参考例2を示し、上記参考例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、設置場所たる斜面2下部の地面5に、コンクリート基礎31を設け、このコンクリート基礎31に前記支柱3,3・・・を立設する、また、網体4に換えて、支柱3,3・・・間には、横ロープ材32,32・・・を多段に設け、それら横ロープ材32,32・・・により防護面33を構成している。また、横ロープ材32,32・・・には、横ロープ材32,32の上下間隔より網目が小さい金網などの網体(図示せず)を重ねて設けてもよい。
【0082】
前記防護面33の山側Y(斜面2側)には緩衝材が設けられている。この例の緩衝部材は前記緩衝袋体21であり、この緩衝袋体21を上記参考例1と同様に防護面33の山側に配置する。
【0083】
さらに、前記緩衝袋体21は、上下多段に設けられる固定手段たる固定用ロープ材23により前記横ロープ材32,32・・・に固定される。具体的には、緩衝袋体21に略U字状に固定用ロープ材23を巻き、この固定用ロープ材23の両端を前記横ロープ材32に連結固定し、固定用ロープ材23は多段に設けられている。また、支柱3に沿う緩衝袋体21では、前記固定用ロープ材23の一端を支柱3に連結する。さらに、固定用ロープ材23を環状に緩衝袋体21に巻くと共に、固定用ロープ材23を前記斜め線材12,12の升目に挿通して斜め線材12,12に連結してもよい。尚、この例では、1本の固定用ロープ材23の両端は略同一高さ位置にある。
【0084】
そして、防護面33の山側に落石Rなどの衝撃力を受けると、緩衝袋体21が変形して衝撃力を吸収すると共に、緩衝袋体21から防護面33に加わる衝撃力により防護面33が変形して衝撃力を吸収し、このように緩衝部材たる砂を詰めた緩衝袋体21と変形可能な防護面33とにより衝撃力を効果的に吸収することができる。
【0085】
このように本参考例では、支持体たる支柱3により支持した防護面33を備えた防護面構造において、防護面33が変形可能であり、防護面22に緩衝部材たる緩衝袋体21を配置し、また、支持体が間隔を置いて立設した支柱3であり、支柱3,3・・・間に防護面33が設けられているから、上記参考例1と同様な作用・効果を奏する。
【0086】
また、実施例上の効果として、固定用ロープ材23は多段に設けられたから、緩衝袋体21を安定して防護面33に固定することができる。
[参考例3]
図19〜図20は、本発明の参考例3を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例の緩衝袋体21Aは、横長で縦断面形状が略方形をなし、この例では略正方形の縦断面形状をなし、略支柱3,3の間隔に対応した長さを有する。
【0087】
そして、複数の緩衝袋体21Aを略防護面33の高さまで積み上げ、上下の緩衝袋体21A,21A同士を連結すると共に、各緩衝袋体21Aを固定手段により網体4に固定する。また、防護柵1の左右方向に隣り合う緩衝袋体21A,21A同士も固定する。尚、この固定位置は支柱3の前方となる。
【0088】
そして、防護面33の山側に落石Rなどの衝撃力を受けると、緩衝袋体21Aが変形して衝撃力を吸収すると共に、緩衝袋体21Aから網体4に加わる衝撃力により防護面33が変形して衝撃力を吸収し、このように緩衝部材たる砂を詰めた緩衝袋体21と変形可能な防護面33とにより衝撃力を効果的に吸収することができる。
【0089】
この場合、衝撃力を受けると、防護面33が変形して衝撃力を吸収すると共に、網体4と供に複数の緩衝袋体21Aが移動することにより、衝撃力が吸収される。したがって、比重の小さいものよりは比重の大きな砂などを用いる方が、緩衝袋体21Aの移動に伴う衝撃力吸収効果が高いものとなる。
【0090】
このように本参考例では、支持体たる支柱3により支持した防護面33を備えた防護面構造において、防護面33が変形可能であり、防護面22に緩衝部材たる緩衝袋体21を配置し、また、支持体が間隔を置いて立設した支柱3であり、支柱3,3・・・間に防護面33が設けられているから、上記参考例1と同様な作用・効果を奏する。
[参考例4]
図21〜図24は、本発明の参考例4を示し、上記各参考例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、支柱3及び網体4は参考例1と同一構成である。
【0091】
この例の緩衝部材は、砂,土及び石の群から選んだ少なくとも1種の粒状物41を盛った緩衝構造体たる緩衝盛土45であり、網体4の山側Yに沿って設けた後壁面材42と、この後壁面材42と間隔を置いて設けた前壁面材43とを備え、それら後,前壁面材42,43間の充填空間に前記粒状物41を充填してなる。また、前記後壁面材42と前壁面材43はそれぞれ高さ方向に複数分割された分割面材42A,43Aからなり、分割面材42A,43Aを上下に重ね合わせて前記後壁面材42と前壁面材43が形成される。尚、分割面材42A,43Aは左右方向にも分割することができ、例えば支柱3,3間に対応した左右長さを有するように分割する。また、分割面材42A,43Aの重ね合わせ箇所間には、前記充填空間内においてジオテキスタイルなどのシート状補強材44を配置し、このシート状補強材44により充填した土41を補強する。尚、シート状補強材44は後部を後壁面材42とワイヤーネット11に連結固定し、前部を前面壁材43に連結固定する。
【0092】
前記後,前壁面材42,43にはコンクリート板,鉄板,エキスパンドメタルやワイヤネットなどが用いられ、エキスパンドメタルやワイヤネットを用いる場合は、植生用シートなどの吸出し防止部材を重ねて配置すればよい。
【0093】
そして、分割面材42A,43Aを1段ずつ配置し、それら分割面材42A,43A間に砂41を充填して締固め、その締固めた砂層の上にシート状補強材44を配置し、この後、施工の終わった1段上に分割面材42A,43Aを配置し、それら分割面材42A,43A間に粒状物41を充填して締固め、その締固めた粒状物41の層の上にシート状補強材44を配置し、これを繰り返して支柱3の高さまで、構造体たる緩衝盛土45を構築する。尚、緩衝盛土45の左右方向端部は側部面材46を設ける。
【0094】
そして、網体4の山側Yに落石Rなどの衝撃力を受けると、緩衝盛土45が変形して衝撃力を吸収すると共に、緩衝盛土45から網体4に加わる衝撃力により網体4が変形して衝撃力を吸収し、このように緩衝盛土45と変形可能な網体4とにより衝撃力を効果的に吸収することができる。
【0095】
尚、この例においても、緩衝部材を木片や木質チップを盛って構成してもよい。
【0096】
このように本参考例では、支持体たる支柱3により支持した防護面33を備えた防護面構造において、防護面33が変形可能であり、防護面33に緩衝構造体たる緩衝盛土45を配置し、また、支持体が間隔を置いて立設した支柱3であり、支柱3,3・・・間に防護面たる防護面33が設けられているから、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0097】
また、このように本参考例では、緩衝部材が防護面33の山側に粒状物を盛った構造体たる盛土45であるから、衝撃力を受けると、緩衝盛土45が変形して衝撃力を吸収すると共に、緩衝盛土45から防護面33に加わる衝撃力により防護面33が変形して衝撃力を吸収し、このように緩衝盛土45と変形可能な防護面33により衝撃力を効果的に吸収することができる。
【0098】
また、参考例上の効果として、防護面33の山側に、緩衝盛土45を設け、この緩衝盛土45は後,前壁面材42,43との間に砂41を締固めて充填したものであるから、均一な緩衝効果が得られると共に、緩衝効果に優れたものとなる。
[参考例5]
図25は、本発明の参考例5を示し、上記各参考例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、実施例4の緩衝盛土45において、後,前壁面材42,43の略中央に発泡性合成樹脂ブロック47を配置し、この樹脂ブロック47の前後を充填した粒状物41の層により挟んでなり、発泡性合成樹脂ブロック47を中に配置した緩衝盛土45により緩衝部材を構成している。尚、前記発泡性合成樹脂ブロック47の発泡性合成樹脂としては、発泡スチロール、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ウレタン等がある。また、実施例では、複数のブロック47を用いたが、現場発泡により発泡性合成樹脂の層を形成してもよい。
【0099】
そして、網体4の山側に落石Rなどの衝撃力を受けると、緩衝盛土45が変形して衝撃力を吸収すると共に、緩衝盛土45から網体4に加わる衝撃力により網体4が変形して衝撃力を吸収し、このように緩衝盛土45と変形可能な網体4とにより衝撃力を効果的に吸収することができ、特に、緩衝盛土45は前後の粒状物41の層と間の発泡性合成樹脂ブロック46とからなるから、衝撃吸収効果が向上する。
【0100】
このように本参考例では、支持体たる支柱3により支持した防護面たる網体4を備えた防護面構造において、網体4が変形可能であり、網体4に緩衝材たる木質杆を配置し、また、支持体が間隔を置いて立設した支柱3であり、支柱3,3・・・間に防護面たる網体4が設けられているから、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0101】
また、このように本参考例では、緩衝材が発泡性合成樹脂であるから、衝撃力を受けると、発泡性合成樹脂ブロック47が塑性変形して衝撃力を吸収することができる。
[参考例6]
図26〜図27は、本発明の参考例6を示し、上記各参考例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、緩衝部材として蛇籠48を用い、この蛇籠48は、籠本体49内に玉石や栗石など石を詰めてなり、前記籠本体49は、金網などからなる上面、下面及び四方の側面を有する。
【0102】
前記籠本体49は、横長で縦断面形状が略長方形をなし、略支柱3,3の間隔に対応した長さを有する。
【0103】
そして、複数の蛇籠48を略防護面33の高さまで積み上げ、上下の蛇籠48,48同士を連結すると共に、各蛇籠48,48を固定手段により網体4に固定する。また、防護柵1の左右方向に隣り合う蛇籠48,48同士も連結する。尚、この連結位置は支柱3の前方となる。
【0104】
そして、防護面33の山側に落石Rなどの衝撃力を受けると、蛇籠48が変形して衝撃力を吸収すると共に、蛇籠48から防護面33に加わる衝撃力により防護面33が変形して衝撃力を吸収し、このように粒状物たる石をつめた蛇籠48と変形可能な防護面33とにより衝撃力を効果的に吸収することができる。
【0105】
このように本参考例では、支持体たる支柱3により支持した防護面33を備えた防護面構造において、防護面33が変形可能であり、網体4に緩衝部材たる蛇籠48を配置し、また、支持体が間隔を置いて立設した支柱3であり、支柱3,3・・・間に防護面33が設けられているから、上記各実施例と同様な作用・効果を奏する。
【0106】
また、このように本参考例では、粒状物が石であり、緩衝部材が籠本体49に石を詰めた蛇籠48であり、複数の蛇籠48を防護面33の山側に並べたから、衝撃力を受けると、蛇籠48が変形して衝撃力を吸収すると共に、蛇籠48から防護面33に加わる衝撃力により防護面33が変形して衝撃力を吸収し、このように蛇籠48と変形可能な防護面33により衝撃力を効果的に吸収することができる。
【実施例1】
【0107】
図28〜図29は、本発明の実施例1を示し、上記各参考例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、落石Rや土砂崩れ,雪崩等から道路や建築物などを防護する屋根を備えた防護体50に本発明を適用した例である。
【0108】
図28に示すように山の斜面2の下部に通路である道路51が設けられており、その斜面2の下部に支持体たるコンクリート製の壁体52を構築する。この壁体52はその下部に脚部53を一体に有し、この脚部53は道路51側に突出すると共に、道路の下部に埋設されている。
【0109】
また、道路51の長さ方向に所定間隔で主桁54を設け、この主桁54は、鋼管やプレキャストコンクリート梁などからなり、基端を前記壁体52の上部に固定し、道路側に突出した先端を自由端とし、先端側が高くなるように斜めに配置されている。また、主桁54の先端側下部と壁体52とを斜材55が連結し、この斜材55は鋼管やプレキャストコンクリート梁などからなり、主桁54の先端側を支持する。
【0110】
また、前記主桁54,54間には、前記ワイヤーネット11,11を備えた防護面たる網体4が張設され、前記ワイヤーネット11,11の両側が、屋根57の構成部材である前記主桁54に連結固定されている。
【0111】
この例の緩衝部材は、砂などの粒状物を円柱状の袋体に充填した緩衝袋体21Bである。この緩衝袋体21Bは、略直方体形状をなし、この例では立方体形状のものを用い、前記網体4の上に前記緩衝袋体21Bを隙間なく敷設する。この場合、網体4には緩衝袋体21Aの荷重が加わるから、主桁54,54の中間で網体4の撓み量が最大となり、このように緩衝袋体21Aの荷重により予め網体4に撓みが導入されている。
【0112】
ところで、従来技術の防護柵(特許文献6)では、撓み導入手段によりロープ材に所定量の撓みを形成していたが、本実施例では緩衝袋体21Bの重さによりワイヤーネット11が下側に所定量だけ撓むため、防護体50の主桁54に加わる力を軽減できる。
【0113】
また、各緩衝袋体21Bが図示しない固定手段により前記ワイヤーネット11に固定され、固定手段としては、袋をワイヤーネット11に固定する固定具や袋体21Bに巻き付けて固定する固定用ロープ材を用いたり、予め袋に縫着されたバンドなどをワイヤーネット11に連結固定したり、各種の手段を用いることができる。
【0114】
また、壁体52の上部には緩衝層56を設け、この緩衝層56は、サンドクッション材,発泡性合成樹脂ブロックなどからなる。尚、前記主桁54,網体及び緩衝袋体21Bにより、屋根57を構成している。この場合、前記網体4に遮水シート(図示せず)を重ね合わせて配置すれば、屋根57に防水性が得られる。
【0115】
そして、主桁54,54の間には変形可能な防護面50が設けられ、従来のように硬質材からなる屋根材などは設けられていない。尚、既設の保護構造物の屋根に本発明の防護面構造を適用する場合、前記屋根の上方に防護面構造を設ければよく、この場合は、屋根の上面と防護面との間に、衝撃力を受けた防護面が変形可能なように間隔を設ければよい。
【0116】
そして、防護面たる網体4の山側である上面側に落石Rなどの衝撃力を受けると、緩衝袋体21Aが変形して衝撃力を吸収すると共に、緩衝袋体21Bから網体4に加わる衝撃力により網体4が変形して衝撃力を吸収し、このように砂などの粒状物を詰めた緩衝袋体21Bと変形可能な網体4とにより衝撃力を効果的に吸収することができる。
【0117】
このように本実施例では、支持体たる主桁54により支持し防護面たる網体4を備えた防護面構造において、網体4が変形可能であり、網体4に緩衝部材たる砂が詰まった緩衝袋体21Aを配置し、また、支持体が防護体50であり、防護体50の主桁54,54・・・間に防護面たる網体4が設けられているから、上記各参考例と同様な作用・効果を奏する。
【0118】
また、このように本実施例では、防護面たる網体4上に緩衝材たる緩衝袋体21Aを配置したから、緩衝袋体21Bの重さによりワイヤーネット11が下側の所定量だけ撓むため、防護体50の主桁54に加わる力を軽減できる。この場合、防護面は垂直に対して45度以上傾いていることが網体4に撓みを導入する点から好ましい。
【0119】
尚、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、網体は各種形状のものを用いることができる。例えば、変形可能な防護面は、実施例のワイヤーネットと横ロープ材のように鋼製のロープ材を組み合わせて構成したものが好ましいが、ロープ材の材質は適宜選定可能である。また、実施例1においは屋根の一側(山側)を支持体により支持したが、屋根の両側(山側及び反山側)をそれぞれの支持体により支持してもよい。
【符号の説明】
【0120】
1 防護柵(防護体)
2 斜面
3 支柱(支持体)
4 網体(防護面)
11 ワイヤーネット
21 緩衝袋体
21A 緩衝袋体
21B 緩衝袋体
31 コンクリート基礎
32 横ロープ材
33 防護面
41 粒状物
45 緩衝盛土(構造体)
48 蛇籠
50 防護体
54 主桁(支持体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体により支持した防護面を備えた防護面構造において、前記防護面が変形可能であり、前記防護面の山側に緩衝部材を配置し、前記緩衝部材が粒状物を有し、前記防護面上に前記緩衝部材を配置し、この緩衝部材の重さにより前記防護面に撓みを導入したことを特徴とする防護面構造。
【請求項2】
前記防護面が網体であることを特徴とする請求項1記載の防護面構造。
【請求項3】
前記防護面は垂直に対して45度以上に傾いていることを特徴とする請求項1又は2記載の防護面構造。
【請求項4】
前記粒状物が砂,土及び石の群から選んだ少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の防護面構造。
【請求項5】
前記緩衝部材が前記粒状物を袋体に詰めた緩衝袋体であり、複数の前記緩衝袋体を前記防護面上に並べたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の防護面構造。
【請求項6】
前記粒状物が石であり、前記緩衝部材が籠本体に石を詰めた蛇籠であり、複数の前記蛇籠を前記防護面上に並べたことを特徴とする請求項4記載の防護面構造。
【請求項7】
前記支持体の上部に所定間隔で主桁を配置し、この主桁は、基端を前記支持体の上部に固定すると共に、突出した先端を自由端とし、この先端側が高くなるように斜めに配置され、前記主桁間に前記防護面が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の防護面構造。
【請求項8】
前記支持体の上部に所定間隔で主桁を配置し、この主桁は、基端を前記支持体の上部に固定すると共に、突出した先端を自由端とし、この先端側が高くなるように斜めに配置され、前記主桁間に前記網体が設けられ、この網体に遮水シートを重ね合わせて配置して防水性を得たことを特徴とする請求項2又は3記載の防護面構造。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の防護面を、既設の保護構造物の屋根の上方に設け、前記既設の保護構造物の屋根の上面と前記防護面との間に、衝撃力を受けた前記防護面が変形可能なように間隔を設けたことを特徴とする防護面構造。
【請求項1】
支持体により支持した防護面を備えた防護面構造において、前記防護面が変形可能であり、前記防護面の山側に緩衝部材を配置し、前記緩衝部材が粒状物を有し、前記防護面上に前記緩衝部材を配置し、この緩衝部材の重さにより前記防護面に撓みを導入したことを特徴とする防護面構造。
【請求項2】
前記防護面が網体であることを特徴とする請求項1記載の防護面構造。
【請求項3】
前記防護面は垂直に対して45度以上に傾いていることを特徴とする請求項1又は2記載の防護面構造。
【請求項4】
前記粒状物が砂,土及び石の群から選んだ少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の防護面構造。
【請求項5】
前記緩衝部材が前記粒状物を袋体に詰めた緩衝袋体であり、複数の前記緩衝袋体を前記防護面上に並べたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の防護面構造。
【請求項6】
前記粒状物が石であり、前記緩衝部材が籠本体に石を詰めた蛇籠であり、複数の前記蛇籠を前記防護面上に並べたことを特徴とする請求項4記載の防護面構造。
【請求項7】
前記支持体の上部に所定間隔で主桁を配置し、この主桁は、基端を前記支持体の上部に固定すると共に、突出した先端を自由端とし、この先端側が高くなるように斜めに配置され、前記主桁間に前記防護面が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の防護面構造。
【請求項8】
前記支持体の上部に所定間隔で主桁を配置し、この主桁は、基端を前記支持体の上部に固定すると共に、突出した先端を自由端とし、この先端側が高くなるように斜めに配置され、前記主桁間に前記網体が設けられ、この網体に遮水シートを重ね合わせて配置して防水性を得たことを特徴とする請求項2又は3記載の防護面構造。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の防護面を、既設の保護構造物の屋根の上方に設け、前記既設の保護構造物の屋根の上面と前記防護面との間に、衝撃力を受けた前記防護面が変形可能なように間隔を設けたことを特徴とする防護面構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2012−117360(P2012−117360A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205656(P2011−205656)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【分割の表示】特願2010−267700(P2010−267700)の分割
【原出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(398054845)株式会社プロテックエンジニアリング (42)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【分割の表示】特願2010−267700(P2010−267700)の分割
【原出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(398054845)株式会社プロテックエンジニアリング (42)
【Fターム(参考)】
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