説明

防錆フイルムの貼付治具

【課題】装置本体のコンパクト化を図り、ホイール意匠の変更にも容易に対応できるようにする。
【解決手段】本発明の防錆フイルムの貼付治具は、上面に防錆フイルムを収容するための円形の凹陥部11が設けられた位置決め台1と、当該位置決め台1の凹陥部11に着脱自在に装着し得る取付け治具本体2と、位置決め台1の下方部位に所定長の支柱7を介して配設された円板状の台座3と、台座3の下部に一体的に取り付けられた吸引機4と、必要に応じて吸引機4の下部に取り付けられたキャスター5とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防錆フイルムの貼付治具に係わり、特に装置本体のコンパクト化を図り、ホイールの形状と関係なく各種のホイールに適用することができる防錆フイルムの貼付治具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の保管時や輸送時においては、ディスクホイールのホイール孔からの雨水などの浸入によりブレーキディスクが錆びるのを防止するため、ディスクホイールの意匠面に防錆フイルムを貼り付けることが行われている。
【0003】
従来から、この種の防錆フイルムの貼付治具として、図3に示すような構成のものが案出されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
同図において、従来の防錆フイルムの貼付治具は、上面に円形の凹陥部110を有する位置決め台100と、位置決め台100の凹陥部110に着脱自在に装着される取付け治具本体200と、位置決め台100の近傍に離間して配設される吸引機300とを備えている。
【0005】
ここで、取付け治具本体200は、上面に取手210、吸引口(マニホールド)220およびトルグスイッチ230が設けられた円板状の基板240と、当該基板240の下面に積層するように取り付けられたドーナツ状のウレタンフォーム250と、当該基板240の下面中心部に垂設された円筒状の位置決め駒260とを備えており、吸引機300を構成する吸引ホース310の端部は取付け治具本体200の吸引口220に気密に連結されている。なお、図中、符合400は防錆フイルム、500は円筒状のカラー、600は支柱、700は台座、800はゴム脚をそれぞれ示している。
【0006】
しかしながら、このような構成の防錆フイルムの貼付治具においては、貼付治具本体200の近傍に吸引機300が離間して配設されていることから、吸引ホース310の長さが長くなり、また、取付け治具本体200の基板240の下面に設けられた円筒状の位置決め駒260は特定のホイールの形状に合わせて設計されていることから、ホイール形状が変わると駒260は位置決めできないという難点があった。
【0007】
【特許文献1】特開2004−142115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の難点を解決するためになされたもので、装置本体のコンパクト化を図り、ホイールの形状と関係なく各種のホイールに適用することができる防錆フイルムの貼付治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様である防錆フイルムの貼付治具は、上面に防錆フイルムを収容するための凹陥部を有する位置決め台と、凹陥部に着脱自在に装着し得る取付け治具本体と、取付け治具本体の近傍に配設される吸引機とを備え、取付け治具本体は、吸引口を有する基板と、基板の下面に設けられた吸着部材とを備え、吸引機を構成する吸引ホースの端部は取付け治具本体の吸引口に連結されているものである。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様である防錆フイルムの貼付治具において、凹陥部の底部中心部には貫通孔が設けられ、貫通孔の周縁部には防錆フイルムを位置決めするための位置決め部材が配設されているものである。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1の態様または第2の態様である防錆フイルムの貼付治具において、取付け治具本体の基板の下面の中心部には円筒状の位置決め駒が垂設され、位置決め駒の先端部には可動部材が出没自在に装着されているものである。
【0012】
本発明の第4の態様は、第3の態様である防錆フイルムの貼付治具において、位置決め駒は、ホイールのインロー部に装着し得るように構成されているものである。
【0013】
本発明の第5の態様は、第1の態様乃至第4の態様の何れかの態様である防錆フイルムの貼付治具において、位置決め台の下方部位には台座が離間して配設されているものである。
【0014】
本発明の第6の態様は、第1の態様乃至第5の態様の何れかの態様である防錆フイルムの貼付治具において、台座の下部には吸引機が前記台座と一体的に配設されているものである。
【0015】
本発明の第7の態様は、第1の態様乃至第6の態様の何れかの態様である防錆フイルムの貼付治具において、吸引機の下部にはキャスターが取り付けられているものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の態様乃至第7の態様の防錆フイルムの貼付治具によれば、次のような効果がある。
【0017】
第1に、位置決め台の上面に防錆フイルムを収容するための凹陥部が設けられ、当該凹陥部の底部中心部に防錆フイルムを位置決めするための位置決め部材が配設されていることから、位置決め台に多数枚の防錆フイルムをセンタリングを維持した状態で効率よく積層・収容することができる。
【0018】
第2に、取付け治具本体の基板の下面中心部に円筒状の位置決め駒が垂設され、当該位置決め駒がホイールのインロー部に装着し得るように構成されていることから、取付け治具本体をホイールのインロー部で位置決めすることができ、また、位置決め駒の先端部に可動部材が出没自在に装着されていることから、ドライブシャフトとの干渉を解消することができ、ひいては取付け治具本体をホイール形状に関係なく各種のホイールに適用することができる。
【0019】
第3に、位置決め台の下方部位に台座が離間して配設され、当該台座の下部に吸引機が台座と一体的に配設されていることから、装置本体のコンパクト化を図ることができ、また、取付け治具本体の直下に吸引機が配設されていることから、取付け治具本体の吸引口に連結される吸引ホースの長さを短くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の防錆フイルムの貼付治具を適用した好ましい実施の形態例について、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の防錆フイルムの貼付治具の斜視図を示している。
【0022】
同図において、本発明の防錆フイルムの貼付治具は、上面に防錆フイルム(不図示)を収容するための円形の凹陥部11が設けられた位置決め台1と、当該位置決め台1の凹陥部11に着脱自在に装着し得る取付け治具本体2と、位置決め台1の下方部位に所定長の支柱7を介して配設された円板状の台座3と、台座3の下部に一体的に取り付けられた吸引機4と、必要に応じて吸引機4の下部に取り付けられたキャスター5とを備えている。
【0023】
位置決め台1は、外径が580mm程度の円板状のフイルムホルダー12と、フイルムホルダー12の外周縁部に上方に向けて立設された環状の周壁(高さ:50mm程度)13とを備えており、位置決め台1の凹陥部11の底部中心部には、すなわちフイルムホルダー12の中心部には円形の貫通孔14が設けられ、当該貫通孔14の周囲には防錆フイルムを位置決めするための位置決め部材、具体的には3本の位置決めピン15が貫通孔14の円周方向に沿って所定の間隔をおいて上方に向けて立設されている。ここで、貫通孔14の口径は、後述する防錆フイルムの中心部に設けられた透孔の口径と略同径とされている。
【0024】
取付け治具本体2は、図2に示すように、外径が510mm程度の円板状の基板21と、当該基板21の下面に基板21と同心状にかつ積層するように取り付けられたドーナツ状の吸着部材22と、吸着部材22の下面に吸着部材22と同心状にかつ積層するように取り付けられたドーナツ状のクッション部材23と、基板21の下面中心部に垂設された位置決め駒24とを備えている。ここで、基板21の上面にはU字状の取手21a、吸引口(マニホールド)21bおよびトグルスイッチ21cがそれぞれ設けられている。また、吸着部材22は通気性を有し、かつ弾性を呈する部材、具体的には厚さが30mm程度のドーナツ状のウレタンフォームで形成され、クッション部材23は各種形状のホイールに当接可能とするためのもので、厚さが5mm程度のドーナツ状のゴム、プラスチックスポンジで形成されている。なお、吸着部材22としてのウレタンフォームの外周にはエバーライトSFなどをコーティングすることでウレタンフォームのバラケ防止を図ることができる。
【0025】
位置決め駒24は、基板21の下面にネジ止めなどにより固定された有底円筒状の位置決め駒(以下「位置決め駒本体」という。)24aと、位置決め駒本体24aの先端部(開口部)に出没自在に装着された有底円筒状の可動部材(以下「可動部材」という。)24bと、位置決め駒本体24aの底部と可動部材24bの底部間に軸方向に伸縮し得るように配設された例えばコイル状のスプリング24cとを備えている。ここで、位置決め駒本体24aの外径はホイールインロー部の口径と実質的に同一とされている。具体的には、位置決め駒本体24aの外径は59mm程度とされ、軸方向の長さは80mm程度とされている。また、可動部材24bの外径は46mm程度とされ、スプリング24cにバネ力が付与されない状態における可動部材24bの露出長さ、すなわち位置決め駒本体24aの端面からの突出長さLは25mm程度とされている。なお、位置決め駒本体24aおよび可動部材24bはMCナイロンなどの硬質のプラスチック樹脂で形成されている。
【0026】
吸引機4の上部にはフランジ(不図示)が設けられ、当該フランジを台座3の下面に当接した状態でボルト等で締結することにより、吸引機4が台座3と一体化される。そして、吸引機4の差込口41には吸引ホース42の一端部が着脱自在に差し込み接続され、他端部は取付け治具本体2の吸引口(マニホールド)21bに気密に連結されている。なお、吸引機4としては、電源が100V、消費電力が1050W、吸込仕事率が360Wの業務用掃除機を使用することができる。また、吸引機4の下部にはキャスター5が取り付けられ、これにより、装置全体が移動可能とされている。
【0027】
なお、図1中、符合31は、台座3に設けられた取手、32は電源用リード線、43は切替スイッチ用リード線を示している。
【0028】
次に、このような構成の防錆フイルムの貼付治具の使用方法について説明する。
【0029】
先ず、防錆フイルムは、ディスクホイールに対応した円形状とされ、その中心部には円形の透孔が設けられている。また、防錆フイルムの片面には粘着面が設けられ、当該粘着面には離型紙が貼設されている。
【0030】
このような構成の防錆フイルムの多数枚(10〜20枚程度)は、それぞれ非粘着面を上に向けて位置決め台1の凹陥部11に積層するようにして収容される。この場合、防錆フイルムの透孔が位置決め部材(ガイドピン15)に嵌められることで、防錆フイルムのセンタンリングが維持されることになる。
【0031】
そして、防錆フイルムが積層・収容された位置決め台1の凹陥部11に、取付け治具本体2を位置決め駒24を凹陥部11側に向けて装着し、吸引機4により吸引することで、最上面に積層された防錆フイルムの1枚が吸着されることになる。
【0032】
次いで、取付け治具本体2を位置決め台1の凹陥部11から取り外し、防錆フイルムが取付け治具本体2に吸着された状態において防錆フイルムから離型紙(不図示)を剥がして当該防錆フイルムの粘着面を露出させる。
【0033】
しかして、この状態で取付け治具本体2を貼付け対象面としてのディスクホイールに向けて移動しこれを貼付け対象面としてのディスクホイールにセットする。これにより、取付け治具本体2の位置決め駒24がディスクホイールのインロー部に挿通されるとともに防錆フイルムの粘着面がディスクホイールの表面に当接し、押圧されることで、防錆フイルムが貼付け対象面としてのディスクホイールに貼り付けられることになる。
【0034】
以上のように、このような構成の防錆フイルムの貼付治具によれば、次のような効果がある。
【0035】
第1に、位置決め台1の上面に防錆フイルムを収容するための凹陥部11が設けられ、当該凹陥部11の底部中心部に防錆フイルムを位置決めするための位置決め部材(ガイドピン15)が配設されていることから、位置決め台1の凹陥部11に複数枚の防錆フイルムをセンタンリングを維持した状態で効率よく積層・収容することができる。
【0036】
第2に、取付け治具本体2の基板21の下面中心部に円筒状の位置決め駒(位置決め駒本体24a)が垂設され、当該当該位置決め駒本体24aがホイールのインロー部に装着し得るように構成されていることから、取付け治具本体2をホイールのインロー部で位置決めすることができ、また、当該位置決め駒本体24aの先端部に可動部材24bが出没自在に装着されていることから、ドライブシャフトとの干渉を解消することができ、ひいては取付け治具本体2をホイール形状に関係なく各種のホイールに適用することができる。
【0037】
第3に、位置決め台1の下方部位に台座3が離間して配設され、当該台座3の下部に吸引機4が台座3と一体的に配設されていることから、装置本体のコンパクト化を図ることができ、また、取付け治具本体2の直下に吸引機4が配設されていることから、取付け治具本体2と吸引機4間に連結される吸引ホース42の長さを短くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
前述の実施例においては、図面に示した特定の実施の形態をもって本発明を説明しているが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、次のように構成してもよい。
【0039】
第1に、前述の実施例においては、防錆フイルムを位置決めするための位置決め部材として3本の位置決めピンを用いているが、2本の位置決めピンまたは4本以上の位置決めピンを用いてもよく、あるいは貫通孔の周りに上向きのフランジを設けてもよい。
【0040】
第2に、前述の実施例においては、位置決め駒本体24aの底部と可動部材24bの底部間にコイル状のスプリング24cを配設しているが、ゴム状弾性部材を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の防錆フイルムの貼付治具の斜視図。
【図2】本発明の防錆フイルムの貼付治具における取付け治具本体の断面図。
【図3】従来の防錆フイルムの貼付治具の一部断面図。
【符号の説明】
【0042】
1・・・位置決め台
11・・・凹陥部
14・・・貫通孔
15・・・位置決め部材(位置決めピン)
2・・・取付け治具本体
21・・・基板
21b・・・吸引口
22・・・吸着部材
24・・・位置決め駒
24b・・・可動部材
3・・・台座
4・・・吸引機
42・・・吸引ホース
5・・・キャスター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に防錆フイルムを収容するための凹陥部を有する位置決め台と、前記凹陥部に着脱自在に装着し得る取付け治具本体と、前記取付け治具本体の近傍に配設される吸引機とを備え、
前記取付け治具本体は、吸引口を有する基板と、前記基板の下面に設けられた吸着部材とを備え、
前記吸引機を構成する吸引ホースの端部は前記取付け治具本体の前記吸引口に連結されていることを特徴とする防錆フイルムの貼付治具。
【請求項2】
前記凹陥部の底部中心部には貫通孔が設けられ、前記貫通孔の周縁部には前記防錆フイルムを位置決めするための位置決め部材が配設されていることを特徴とする請求項1記載の防錆フイルムの貼付治具。
【請求項3】
前記取付け治具本体の前記基板の下面の中心部には円筒状の位置決め駒が垂設され、前記位置決め駒の先端部には可動部材が出没自在に装着されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の防錆フイルムの貼付治具。
【請求項4】
前記位置決め駒は、ホイールのインロー部に装着し得るように構成されていることを特徴とする請求項3記載の防錆フイルムの貼付治具。
【請求項5】
前記位置決め台の下方部位には台座が離間して配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4何れか1項記載の防錆フイルムの貼付治具。
【請求項6】
前記台座の下部には前記吸引機が前記台座と一体的に配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5何れか1項記載の防錆フイルムの貼付治具。
【請求項7】
前記吸引機の下部にはキャスターが取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項6何れか1項記載の防錆フイルムの貼付治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−66964(P2009−66964A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239072(P2007−239072)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】