説明

防音特性を有する可塑剤含有ポリビニルアセタールからの多層フィルム

【課題】使用される可塑剤含有ポリビニルアセタールの選択によって低コストで製造され得るが、それにも関わらず良好な防音を有する、防音特性を備えた合わせガラス用の中間層フィルムを製造する。
【解決手段】標準PVBからの部分層および少なくとも平均的な残留アセテート含有量を有するポリビニルアセタールからの部分層を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールをベースとする中間層フィルムによって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせ安全ガラスにおける中間層として適した可塑剤含有フィルムに関し、該フィルムは、種々のポリビニルアセテート割合を有する可塑剤含有ポリビニルアセタールをベースとする少なくとも2つの部分フィルム(Teilfolien)から構成されており、かつ音の減衰特性(Daempfungseigenschaften)を有する。
【背景技術】
【0002】
合わせ安全ガラスは、一般的に2枚の板ガラスと、該板ガラスを接合する中間フィルムとから成る。フィルム材料として、主に可塑剤含有の部分アセタール化されたポリビニルアルコール(ポリビニルアセタール)、殊にポリビニルブチラール(PVB)が使用される。合わせ安全ガラス(VSG)は、例えば自動車領域におけるフロントガラスまたはサイドウインドウとして、ならびに建築領域における安全ガラスとして使用される。
【0003】
ますます重要となりつつある合わせガラスの特徴は、その防音特性(Schalldaemmende Eigenschaften)である。これは、例えばとりわけ軟質な、ひいては吸音性の中間層フィルムによって達成され得る。しかし、これらのフィルムは機械的にしばしば十分には安定性でないか、またはガラスへの十分な付着特性を有さない。
【0004】
代替的に多層系が使用され得、その際、部分層は、それらの機械的強度の点で異なっており、かつ、そのため機械的デカップリングによって防音が達成される。
【0005】
例えば、可塑剤含有ポリビニルアセタールをベースとするフィルムの種々の機械的強度は、使用されるポリビニルアセタール中でのその可塑剤含有量によってか、またはポリビニルアルコール基あるいはポリビニルアセテート基の割合によって調整され得る。
【0006】
そのため、例えばUS5,340,654は、一つの層が8〜30モル%の残留アセテート含有率を有するPVBを、かつ第二の層が4モル%未満の残留アセテート含有率を有するPVBを含有する多層系を記載する。US5,340,654は、8モル%未満の残留アセテート含有率を有するPVBは防音には適していないことに言及している。
【0007】
WO2006/102049は、二つのPVB部分フィルムが、5モル%未満の残留アセテート含有率、種々の割合のポリビニルアルコール基もしくは種々の可塑剤含有率、ひいては種々の機械的強度を有する類似した多層系を開示している。
【0008】
中間層フィルムのために通常使用されるポリビニルブチラールの製造は、工業的規模において、所望の残留アセテート含有率を有するポリビニルアルコールを得るポリビニルアセテートの鹸化および所望のアセタール化度を有する相応するポリビニルアセタールを得るアルデヒドとの引き続く反応によって行われる。
【0009】
ポリビニルアルコールは、ポリビニルアセテートから直接加水分解によってか、またはアルコール分解によって製造される。反応は、強い酸または塩基によって触媒され得る(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,Wiley,New York 1989,Vol 17参照)。工業的規模において、アルカリ触媒作用下でのポリビニルアセテートとメタノールとのアルコール分解によって酢酸メチルおよびポリビニルアルコールを形成することが有利である。過剰な溶剤ならびに酢酸メチルは、求められる加水分解度に達した後に留去される。ポリビニルアルコールの加水分解度は、滞留時間、触媒濃度および温度を介して調整され得る。一般にポリビニルアルコールの製造コストは、加水分解度の上昇と伴に増大する、それというのも、一方ではポリビニルアセテートに対するポリビニルアルコールの収率が減少し、かつ他方では触媒量、滞留時間ならびに蒸留されるべき溶剤の量が増大するからである。
【0010】
ポリビニルアルコールの加水分解度が高くなればなるほど、それだけ一層ポリビニルアセタールの製造に際しての処理コストも高まる。これは、一方では加水分解度と伴に上昇するポリビニルアルコール自体のコストに因る(前段落参照)。他方では、所定の含有量のOH基(質量%記載でのポリビニルアセタールのポリビニルアルコール含有量として表される)を達成するのに必要とされるアルデヒドの量が、加水分解度と伴に増大する。従来技術において多層フィルムのために記載される系は、低い残留アセテート含有量を有するポリビニルアセタールを含有し、すなわち該ポリビニルアセタールは、高鹸化ポリビニルアルコールから製造される。これはエネルギー上および経済上の理由から不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US5,340,654
【特許文献2】WO2006/102049
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
それゆえ本発明の課題は、使用される可塑剤含有ポリビニルアセタールの選択によって低コストで製造され得るが、それにも関わらず良好な防音を有する、防音特性を備えた合わせガラス用の中間層フィルムを製造することであった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
標準PVBからの部分層および少なくとも平均的な残留アセテート含有量を有するポリビニルアセタールからの部分層を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールをベースとする中間層フィルムが低コストで製造され得、かつUS5,340,654からのデータと対比して十分な減衰特性を有することがわかった。
【0014】
それゆえ本発明の対象は、可塑剤含有ポリビニルアセタールをベースとする少なくとも2つの部分フィルムから構成される、合わせガラス用の中間層フィルムであって、その際、第一の部分フィルムは、0.1〜11モル%、有利には0.1〜4モル%、とりわけ有利には0.1〜2モル%の割合のポリビニルアセテート基を有するポリビニルアセタールを含有し、かつ第二の部分フィルムは、5〜8モル%、有利には5〜7.9モル%、とりわけ有利には5〜7.5モル%、殊に5〜7.5モル%、または5.3〜7.2モル%の割合のポリビニルアセテート基を有するポリビニルアセタールを含有する。
【0015】
減衰特性の測定は、ISO/PAS 16940(施行 16.7.2002)に従って、2mmの厚さの板ガラスの間に貼り合わせた0.8mmの厚さの中間層フィルムからの試験体を用いて行われる。そのつどモード1(1.Mode)を指定した。
【0016】
本発明によるフィルムの防音作用が、後のガラスラミネートの適用温度に際して最も高いのが望ましい。自動車ガラスの場合、適用温度は約20℃である。それというのも、冷暖房装置によって冬にはガラス板が熱せられ、かつ夏には冷やされるからである。本発明によるフィルムは、上述の測定規則において、有利には17.5〜22.5℃の温度範囲内で最大減衰を有し、ここでは殊に、22%を上回る、有利には23%を上回る、およびとりわけ有利には24%を上回る減衰値を有する。
【0017】
有利には、本発明によるフィルムは、ガラス2mm/フィルム0.8mm/ガラス2mmのラミネートにおいて、モード1におけるISO/PAS 16940(施行 16.7.2002)に従って測定した、10℃で10%を上回る、15℃で10%を上回る、および20℃で21%を上回る減衰値を有する。
【0018】
本発明により使用される部分フィルムは、遮音特性が悪影響を受けて変化しない限りは、そのつどほぼ任意の厚さで使用してよい。そのため、全ての部分フィルムは同じ厚さを有してよいが、しかし種々の厚さの部分フィルムの組み合わせも可能である。三層複合体A/B/Aとしての本発明による中間層フィルムの有利な配置の場合、防音性フィルムBは出来る限り薄くてもよい一方で、外側にあるフィルムAは実質的に同じ厚さを持つ。そのため、防音性フィルムBは、例えばフィルムの全厚が0.76mmである場合、0.075〜0.15mmの厚さを有する。
【0019】
有利には、本発明による多層フィルムは、例えば0.38、0.76、1.14mm(すなわち0.38mmの倍数)の工業的に慣例である全厚を有する。
【0020】
本発明による部分フィルムは、全体または部分的に鹸化されたポリビニルアルコールとアルデヒドとのアセタール化によって得られる可塑剤含有ポリビニルアセタールを含有する。第一の部分フィルムは、17〜22質量%、有利には18〜21質量%およびとりわけ有利には19.5〜20.5質量%の割合のポリビニルアルコール基を有するポリビニルアセタールを有する。有利には、第二の部分フィルムは、14質量%より下の、有利には11〜13.5質量%の、およびとりわけ有利には11.5〜13質量%の割合のポリビニルアセタールを有する。
【0021】
一般的に、可塑剤および部分アセタール化ポリビニルアルコールの相容性は、該可塑剤の極性の低下と伴に下がる。そのため、比較的高い極性の可塑剤は、比較的低い極性を有するものよりポリビニルアセタールとの相容性が良好である。その代わりに、僅かな極性の可塑剤の相容性は、アセタール化度の増大と伴に、すなわちヒドロキシ基の数、ひいてはポリビニルアセタールの極性の低下と伴に上昇する。
【0022】
種々の割合のポリビニルアルコール基に基づき、部分フィルムは可塑剤の種々の量を、該可塑剤が滲み出すことなく吸収することができる。それゆえ、部分フィルムはフィルム配合物に対して、有利には少なくとも5質量%、とりわけ有利には少なくとも7.5質量%および殊に少なくとも10質量%の割合で異なった可塑剤を有する。
【0023】
部分フィルムは、同じまたは種々の可塑剤を含有してよい。有利なのは、同じ可塑剤の使用であって、その際、部分フィルム中の可塑剤混合物の組成は、泳動によってほんの僅かに変わり得る。
【0024】
部分フィルムは、PVBフィルムのために公知の以下の可塑剤の少なくとも1つからの可塑剤または可塑剤混合物を含有してよい:
− 多価の脂肪族または芳香族の酸のエステル、例えばジアルキルアジペート、例えばジヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ヘキシルシクロヘキシルアジペート、ヘプチルアジペートおよびノニルアジペートからの混合物、ジイソノニルアジペート、ヘプチルノニルアジペートならびにアジピン酸と、脂環式のまたはエーテル結合を含有するエステルアルコールとのエステル、ジアルキルセバケート、例えばジブチルセバケートならびに、セバシン酸と脂環式のまたはエーテル結合を含有するエステルアルコールとのエステル、フタル酸のエステル、例えばブチルベンジルフタレートまたはビス−2−ブトキシエチルフタレート、シクロヘキサンジカルボン酸のエステル、例えば1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル
− 多価の脂肪族または芳香族のアルコールまたはオリゴエーテルグリコールと1個以上の非分岐または分岐の脂肪族または芳香族の置換基とのエステルまたはエーテル、例えばジ−、トリ−またはテトラグリコールと線状または分岐の脂肪族または脂環式のカルボン酸とのエステル;後者の群の例として、ジエチレングリコール−ビス−(2−エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコール−ビス−(2−エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコール−ビス−(2−エチルブタノエート)、テトラエチレングリコール−ビス−n−ヘプタノエート、トリエチレングリコール−ビス−n−ヘプタノエート、トリエチレングリコール−ビス−n−ヘキサノエート、テトラエチレングリコールジメチルエーテルおよび/またはジプロピレングリコールベンゾエート
− 脂肪族または芳香族のエステルアルコールとのリン酸エステル、例えばトリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOF)、トリエチルホスフェート、ジフェニル−2−エチルヘキシルホスフェート、および/またはリン酸トリクレジル
− クエン酸、コハク酸および/またはフマル酸のエステル。
【0025】
とりわけ有利には、以下の可塑剤の1つ以上が使用される:
− ジ−2−エチルヘキシルセバケート(DOS)、ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジヘキシルアジペート(DHA)、ジブチルセバケート(DBS)、トリエチレングリコール−ビス−n−ヘプタノエート(3G7)、テトラエチレングリコール−ビス−n−ヘプタノエート(4G7)、トリエチレングリコール−ビス−2−エチルヘキサノエート(3GOもしくは3G8)、テトラエチレングリコール−ビス−n−2−エチルヘキサノエート(4GOもしくは4G8)、ジ−2−ブトキシエチルアジペート(DBEA)、ジ−2−ブトキシエトキシエチルアジペート(DBEEA)、ジ−2−ブトキシエチルセバケート(DBES)、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジ−イソノニルフタレート(DINP)、トリエチレングリコール−ビス−イソノナノエート、トリエチレングリコール−ビス−2−プロピルヘキサノエート、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(DINCH)、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOF)およびジプロピレングリコールベンゾエート。
【0026】
付加的に、本発明による部分フィルムは、当業者に公知のさらに別の添加剤、例えば残量の水、UV吸収剤、酸化防止剤、粘着調整剤、蛍光増白剤、安定化剤、着色剤、加工助剤、有機または無機ナノ粒子、熱分解法シリカおよび/または表面活性物質を含有してよい。
【0027】
本発明の一変法において、全ての部分フィルムは、上述の添加剤を実質的に同じ濃度で有する。本発明の特別な一変法において、部分フィルムの少なくとも1つは粘着調整剤(粘着防止剤)を有さない。粘着防止剤とは、本発明の範囲内で、ガラス表面への可塑剤含有ポリビニルアセテートフィルムの粘着を調整し得る化合物と理解される。この種の化合物は当業者に公知である;実際に、このために、頻繁に有機酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、例えば酢酸カリウム/マグネシウムが使用される。
【0028】
同様に、部分フィルムの少なくとも1つが、剛性の改善のためにSiO0.001〜20質量%、有利には1〜15質量%、殊に5〜10質量%を、場合によりAlまたはZrOでドープされて含有することも可能である。
【0029】
本発明による中間層フィルムが改善された減衰特性を有するように、本発明のための種々の部分フィルムにおいて使用可能なポリビニルアセタールは、有利には種々のガラス転移温度(Tg)を有する。第一の部分フィルムにおけるポリビニルアセタールのガラス転移温度は、有利には70℃より大きい。遮音作用を有する第二の部分フィルムにおけるポリビニルアセタールのガラス転移温度は、これとは無関係に、有利には70℃より小さく、有利には64〜69℃の範囲内にある。
【0030】
ポリビニルアセタールの製造のために、ポリビニルアルコールが水に溶解され、かつアルデヒド、例えばブチルアルデヒドと酸触媒の添加下でアセタール化される。沈殿したポリビニルアセタールは分離され、中性に洗浄され、場合によりアルカリ性に調整された水性媒体中に懸濁され、その後、再び中性に洗浄および乾燥される。
【0031】
ポリビニルアセタールのポリビニルアルコール含有量は、アセタール化の際に使用されるアルデヒドの量によって調整され得る。炭素原子2〜10個を有するその他のまたは複数のアルデヒド(例えばバレルアルデヒド)によりアセタール化を実施することも可能である。
【0032】
可塑剤含有ポリビニルアセタールをベースとするフィルムは、有利には非架橋のポリビニルブチラール(PVB)を含有し、それはポリビニルアルコールとブチルアルデヒドとのアセタール化によって取得される。
【0033】
架橋ポリビニルアセタール、殊に架橋ポリビニルブチラール(PVB)の使用も同様に可能である。適した架橋ポリビニルアセタールは、例えばEP1527107B1およびWO2004/063231A1(カルボキシル基含有ポリビニルアセタールの熱自己架橋)、EP1606325A1(ポリアルデヒドにより架橋されたポリビニルアセタール)およびWO03/020776A1(グリオキシル酸により架橋されたポリビニルアセタール)の中で記載されている。この特許出願の開示内容は、全範囲が引用される。
【0034】
ポリビニルアルコールとして、本発明の範囲内で、加水分解された酢酸ビニル/エチレン−コポリマーからのターポリマーも使用され得る。これらの化合物は、一般に92モル%を超えて加水分解されており、かつエチレンをベースとしている単位1〜10質量%を含有する(例えば、Kuraray Europe GmbHの"Exceval"型)。
【0035】
ポリビニルアルコールとして、さらに本発明の範囲内で、酢酸ビニルおよび少なくとも1つのさらに別のエチレン性不飽和モノマーとからの加水分解されたコポリマーも使用され得る。
【0036】
ポリビニルアルコールは、本発明の範囲内で、純粋にまたは種々の重合度または加水分解度を有するポリビニルアルコールの混合物として使用され得る。本発明による中間層フィルムが2、3、4または5つの部分フィルムから成り、その際、そのつど隣接した部分フィルムが上述の種々の特性を有することが可能である。
【0037】
有利には、本発明によるフィルムは3つの部分フィルムを有し、その際、第一のおよび第三の部分フィルムは同一である。殊に有利なのは、5〜8モル%の割合のポリビニルアセテート基を有するポリビニルアセタールを含有する軟質のフィルムの使用であり、該フィルムは0.1〜11モル%、有利には0.1〜4モル%、とりわけ有利には0,1〜2モル%の割合のポリビニルアセテート基を有するポリビニルアセタールを含有する2つのフィルムの間に配置されている。
【0038】
これは、相応するガラス/ガラスラミネートにおいて多層フィルムのガラス面に向いた側が同じ粘着特性を有するという利点を持つ。真ん中のフィルムは、本発明の範囲内で、その時に第二の部分フィルムとみなされ、かつ上述の特性を有する。本発明によるフィルムの製造のために、部分フィルムはまず個々に押出によって製造され、かつ引き続き機械的に、例えばフィルムロールに一緒に巻き取ることによって本発明による中間層フィルムが組み立てられ得る。
【0039】
中間層フィルムを、部分フィルムの同時押出によって製造することも可能である。同時押出は、例えば相応して備え付けられた多層ノズルまたはフィードブロックにより行ってよい。
【0040】
自動車領域においては頻繁に、上方領域中にいわゆるインクリボンを有するフィルムが使用される。このために、フィルムの上部を、相応して着色されたポリマー溶融物と同時押出するか、または多層系において部分フィルムの1つが種々の着色を有してよい。本発明において、これは少なくとも1つの部分フィルムの全体的または部分的な着色によって実現可能である。
【0041】
一般に本発明によるフィルムもしくは部分フィルムの製造は、特定の条件(溶融物圧力、溶融物温度および材料温度)下で溶融物破断表面、すなわち確率論的な表面粗さを維持したまま送り出す押出または同時押出によって行われる。
【0042】
代替的に、すでに製造された本発明による中間層フィルムにエンボシングプロセスによって少なくとも1つのロール対の間で規則的な、確率論的ではない粗さを型押ししてもよい。型押しされたフィルムは、一般に改善された換気挙動を、合わせガラス製造に際して有し、かつ有利には自動車領域において使用される。
【0043】
本発明によるフィルムは、製造法とは無関係に片面またはとりわけ有利には両面に施された、15〜150μmの粗さR、有利には15〜100μmのR、とりわけ有利には20〜80μmのRおよび殊に40〜75μmのRを有する表面構造を持つ。
【0044】
本発明によるフィルムは、ガラス/フィルム/プラスチック−ラミネートの製造、例えば板ガラスとPET層との持続的な接着のためにも良好に適している。例えばポリカーボネートまたはPMMAからの2つのプラスチック板の接着も、本発明によるフィルムにより実施可能である。
【0045】
殊に本発明によるフィルムは、当業者に公知の方法で、1つ以上の板ガラスと貼り合わせることによって合わせ安全ガラスを製造するのに使用され得る。合わせ安全ガラスは、自動車領域中で、例えばフロントガラスとして、それに建築領域中で、ウィンドウまたは透明なファサード構成材においてか、または家具建築においても使用され得る。
【0046】
本発明によるフィルムのさらに別の使用は、光起電モジュールを製造するという点にある。
【0047】
ポリビニルアセタールをベースとするフィルムの原則的な製造および組成は、例えばEP185863B1、EP1118258B1、WO02/102591A1、EP1118258B1またはEP387148B1の中で記載されている。
【0048】
測定法
ポリビニルアルコールのエステル価 EZは、DIN EN ISO 3681に従って測定される。加水分解度 HGは、以下のようにエステル価から算出される:HG[モル%]=100*(100−0.1535*EZ)/(100−0.0749*EZ)。
【0049】
PVBのポリビニルアルコール−およびポリビニルアセテート含有量の測定は、ASTM D 1396−92に従って行われる。アセタール化度(ブチラール含有量)は、ASTM D 1396−92に従って測定されたポリビニルアルコール−およびポリビニルアセテート含有量からの合計から足して100となる部分として計算され得る。
【0050】
質量%からモル%への換算は、当業者に公知の式に従って行われる。
【0051】
フィルムの可塑剤含有量は、フィルムのエタノール中への溶解および引き続く定量ガスクロマトグラフィーによって測定される。部分フィルムの可塑剤含有量を測定するために、多層フィルムは、約1週間のコンディショニング時間後に、すなわち可塑剤の流動が実質的に完了した後に再び分離され、かつ個々に測定されなければならない。
【0052】
フィルム粗さ:
表面粗さRまたは粗さ値Rの測定は、DIN EN ISO 4287に従って行われる。上記測定は、機械的なスキッドフィーラ (Einkufentaster) MFW−250を備えたMahr社 S2型,トラバース測量装置(Vorschubgeraet)PGKの粗さ測定装置を用いて実施した。限界波長λ、全体の測定距離l、個々の測定距離lの数および長さおよび前方間隔および後方間隔lもしくはlが、上記の規定に従って選択される。
【0053】
部分アセタール化されたポリビニルアルコールのガラス転移温度の測定は、DIN 53765に従った示差走査熱分析計によって10K/分の加熱速度の使用下で温度間隔− 50℃〜150℃において行われる。第一の加熱ランプ、続けて冷却ランプ、続けて第二の加熱ランプが運転される。ガラス転移温度の位置は、DIN51007に従った第二の加熱ランプに属する測定曲線からつきとめられる。DIN中点(Tg DIN)は、測定曲線と、半分の段階的高さでの水平線の交点として定義されている。段階的高さは、ガラス転移の前および後の測定曲線のベースラインと中央接線の2つの交点の垂直間隔によって定義されている。
【0054】
減衰挙動の測定
フィルムの減衰特性は、ISO/PAS 16940(施行 16.07.2002)に従った機械的インピーダンスの測定によって決定される。そのためにフィルムを厚さ2mmの2枚の板ガラスの間に貼り合わせ、かつ、これから300*25mmの寸法を有するサンプルピースを切断する。このガラスサンプル上に、シアノアクリレート接着剤によって、サンプルをネジ山によりインピーダンス測定ヘッド(8001型/Bruel&Kjaer社)と直接結び付けることを可能にする接着キャップネジ(Klebkopfschraube)(型 UA0866/Bruel&Kjaer社)を真ん中に施す。これは1〜10000Hzの周波数範囲にわたる該ガラスサンプルの一箇所での力および加速度の同時の測定を可能にする。その際、インピーダンスヘッドは、振動発生器(4809型/Bruel&Kjaer GmbH社)の振動テーブル上に直接存在し、それを介して所望の力が伝送される。どちらも、有利には0〜40℃の温度範囲にわたって減衰特性の測定を可能にする制御可能な、隔離された加熱キャビネット(Binder社)内に存在する。それから、同時に信号受信機としても作用するノイズ信号発生器(PULSE Fronted Type 3560B−040/Bruel&Kjaer GmbH社)によってノイズが発生させられる。ノイズは、電力増幅器(2718型/Bruel&Kjaer GmbH社)を介して振動発生器に伝達される。周波数範囲は、その際0〜5000Hzを包含する。それから、発生させられた振動に対するガラスサンプルの応答が、種々の温度で直接インピーダンスヘッドを介して力/加速度の記録作成によって測定され、かつ分析ソフトウェア(PULSE FFT Analysis 7770N2型/Bruel&Kjaer GmbH社)により評価され得る。力および加速度からの測定された伝達関数から、ガラスサンプルの振動モードnの様々な固有周波数f、ならびにその半値幅が測定され得る。その際、半値幅Δfが信号最大値より3dB下で選択される。関係式η=Δf/fを介して、種々の固有周波数での減衰定数ηもしくは減衰が測定され得る。高い減衰定数もしくは高い百分率の減衰値が、防音特性の品質の基準である。その際、観察される0〜40℃の温度範囲内での可能な限り幅広い減衰曲線が重要性を持つ。
【0055】
材料の減衰特性は温度に依存するので、サンプルは、原則的に吸音性ガラスの適用範囲をカバーする選択された温度範囲内で5℃間隔において測定した。
【実施例】
【0056】
種々の残留アセテート含有量を有するポリビニルアセタールの製造
PVB 1:
100質量部のポリビニルアルコール Mowiol 28〜99(Kuraray Europe GmbHの市販製品)を、90℃へと加熱しながら水1075質量部中に溶解した。40℃の温度でn−ブチルアルデヒド56.8質量部を、かつ12℃の温度で攪拌しながら20%の塩酸75質量部を添加した。混合物を、ポリビニルブチラール(PVB)の沈殿後に69℃へと加熱し、かつ、この温度で2時間攪拌した。該PVBを、室温への冷却後に分離し、水で中性に洗浄および乾燥した。20.0質量%(28.8モル%)のポリビニルアルコール含有率および1.3質量%(1モル%)のポリビニルアセテート含有率を有するPVBを得た。
【0057】
PVB 2:
PVB製造を、実施例1に従って行い、その際、93.1モル%の加水分解度を有する100質量部のポリビニルアルコール Mowiol 30〜92(Kuraray Europe GmbHの市販製品)およびn−ブチルアルデヒド66質量部を使用した。12.7質量%(19.3モル%)のポリビニルアルコール含有率および9.1質量%(7モル%)のポリビニルアセテート含有率を有するPVBを得た。
【0058】
PVB 3:
PVB製造を、実施例1に従って行い、その際、n−ブチルアルデヒド78質量部を使用した。12.5質量%(18.8モル%)のポリビニルアルコール含有率および1.3質量%(1モル%)のポリビニルアセテート含有率を有するPVBを得た。
【0059】
PVB 4:
PVB製造を、実施例1に従って行い、その際、n−ブチルアルデヒド75質量部を使用した。13質量%(19.4モル%)のポリビニルアルコール含有率および1.4質量%(1.1モル%)のポリビニルアセテート含有率を有するPVBを得た。
【0060】
PVB 5:
PVB製造を、実施例2に従って行い、その際、n−ブチルアルデヒド64質量部を使用した。13.1質量%(19.8モル%)のポリビニルアルコール含有率および9質量%(7モル%)のポリビニルアセテート含有率を有するPVBを得た。
【0061】
PVB 6:
PVB製造を、実施例2に従って行い、その際、n−ブチルアルデヒド65質量部を使用した。12.9質量%(19.5モル%)のポリビニルアルコール含有率および8.9質量%(6.9モル%)のポリビニルアセテート含有率を有するPVBを得た。
【0062】
PVB 7:
PVB製造を、実施例2に従って行い、その際、n−ブチルアルデヒド73質量部を使用した。11.6質量%(17.7モル%)のポリビニルアルコール含有率および9.1質量%(7.1モル%)のポリビニルアセテート含有率を有するPVBを得た。
【0063】
PVB 8:
PVB製造を、PVB7に従って行い、その際、93.6モル%の加水分解度を有するMowiol 30〜92ロートを使用した。12.3質量%(18.7モル%)のポリビニルアルコール含有率および8.3質量%(6.5モル%)のポリビニルアセテート含有率を有するPVBを得た。
【0064】
PVB 9:
PVB製造を、PVB7に従って行い、その際、94.1モル%の加水分解度を有するMowiol 30〜92ロートを使用した。13質量%(19.7モル%)のポリビニルアルコール含有率および7.8質量%(6.0モル%)のポリビニルアセテート含有率を有するPVBを得た。
【0065】
PVB 10:
PVB製造を、PVB7に従って行い、その際、94.5モル%の加水分解度を有するMowiol 30〜92ロートを使用した。13.8質量%(20.8モル%)のポリビニルアルコール含有率および7.0質量%(5.4モル%)のポリビニルアセテート含有率を有するPVBを得た。
【0066】
表1には上記のポリビニルブチラールならびに使用したポリビニルアルコールの化学的組成を列挙している。
【0067】
表2から、低下した加水分解度を有するポリビニルアルコールを使用した場合に生じる経済的な利点を読み取ることができる(ポリビニルアセテートに関する、より高い収率、ポリビニルアセタールのOH基の比較可能な含有量を得るための減少したアルデヒド量)。Mowiolは、Kuraray Europe GmbHのポリビニルアルコールの商品名であり、その際、後に続く数字が型を表す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
本発明の範囲内で、中間層として本発明によるフィルムを3つの一緒に集められた部分フィルムの形で含有する様々なガラス/ガラスラミネートを製造し、その際、フィルムAおよびCは、ガラス表面に直接接触しており、かつフィルムBは、フィルムAとCの間に貼り合わされている。表3および4は、部分フィルムの組成を示す。
【0071】
表5および6の中で列挙される例は、部分フィルムAおよびCを0.3mmの厚さで含有し、かつ部分フィルムBを0.2mmの厚さで含有し、その際、部分フィルムを積み重ねることによって複合体に積層した。
【0072】
部分フィルムAもしくはCおよびBにおける種々の含有量の可塑剤に基づき、2枚の板ガラスの間に貼り合わせた後、中間層内または中間層から可塑剤の拡散が生じ得る。その際、割合は、使用される部分フィルムAもしくはCの可塑剤量に依存する。期待通り、外側の層として可塑剤28.5質量%を有する部分フィルムA1を使用した場合に、真ん中の層(部分フィルムB)では非常に大きい可塑剤含有量が見られる。部分フィルムBに取り込まれた可塑剤量に依存して、減衰の最大値は、部分フィルムBのガラス転移温度の低下を伴って、より低い温度にシフトする。そのことから、所望の減衰特性を調整するために層組成(PVOH含有率、PVAcetat含有率、可塑剤含有率)を正確に維持しなければならいことが結論される。列挙した例の中で、部分フィルムAおよびCについて同じ組成を選択した。
【0073】
表6に挙げた減衰特性は、前で述べたISO/PAS 16940(施行 16.07.2002)に従って測定した。大きい温度範囲にわたって可能な限り良好な減衰特性を得るために、本発明による中間層フィルムは、10℃で10%より大きい、有利には11%より大きい、およびとりわけ有利には12%より大きい減衰値を有する。
【0074】
【表3】

【0075】
【表4】

【0076】
【表5】

【0077】
【表6】

【0078】
上で記載した例から明らかなように、標準的に使用される、1モル%のポリビニルアセテート含有率を有する高鹸化ポリビニルブチラールフィルムと比較して、5〜8モル%のアセテート含有率を有する少なくとも1つの部分フィルムを有する本発明による中間層フィルムを用いて、同じもしくはより良好な減衰特性が得られる。例2a〜2cおよび3は比較例を示す。
【0079】
例1および2aを比べた場合、意想外にも、7モル%のポリビニルアセテート含有率および78.2質量%の含有率のポリビニルアセタールを有する部分フィルムを用いることで、相応してより低い1モル%のポリビニルアセテート含有率にてポリビニルアセタール含有率86.2質量%のより高度にアセタール化されている部分フィルムと同じかまたはより良好な減衰特性が得られることがわかる。それに応じたことが、例2aおよび例5の比較にも当てはまる。
【0080】
本発明の範囲内で生じる利点は、5〜8モル%の比較的高いポリビニルアセテート含有率を有する中間層フィルムを製造するのに原料として使用されるポリビニルアルコールのコストがより安く、ならびにブチルアルデヒドの消費がより僅かなことである。
【0081】
例1および2aもしくは例2aおよび例5の比較において、ポリビニルアルコール100質量部当たりブチルアルデヒド約8質量部が節約される。それに応じたことは、質量%記載でポリビニルアルコール基のほぼ同じ割合を有する例3および例4の比較からわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑剤含有ポリビニルアセタールをベースとする少なくとも2つの部分フィルムから構成される、合わせガラス用の中間層フィルムにおいて、第一の部分フィルムが、0.1〜11モル%の割合のポリビニルアセテート基を有するポリビニルアセタールを含有し、かつ第二の部分フィルムが、5〜8モル%の割合のポリビニルアセテート基を有するポリビニルアセタールを含有することを特徴とする、合わせガラス用の中間層フィルム。
【請求項2】
部分フィルムが、少なくとも5質量%異なった可塑剤割合を有することを特徴とする、請求項1記載の中間層フィルム。
【請求項3】
第二の部分フィルムが、14質量%より下の割合のポリビニルアルコール基を有するポリビニルアセタールを含有することを特徴とする、請求項1または2記載の中間層フィルム。
【請求項4】
第一の部分フィルムが、17〜22質量%の割合のポリビニルアルコール基を有するポリビニルアセタールを含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の中間層フィルム。
【請求項5】
部分フィルムの少なくとも1つが、SiO0.001〜20質量%を含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の中間層フィルム。
【請求項6】
中間層フィルムが、部分フィルムの同時押出によって製造されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の中間層フィルム。
【請求項7】
少なくとも1つの部分フィルムが、全体的または部分的に着色されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の中間層フィルム。
【請求項8】
中間層フィルムを用いて製造された、ガラス2mm/中間層フィルム0.8mm/ガラス2mmからの試験体が、ISO/PAS 16940(施行 16.7.2002)に従ってモード1において、17.5〜22.5℃の温度範囲内で22%を上回る減衰値を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の中間層フィルム。
【請求項9】
中間層フィルムを用いて製造された、ガラス2mm/中間層フィルム0.8mm/ガラス2mmからの試験体が、ISO/PAS 16940(施行 16.7.2002)に従ってモード1において、10℃で10%を上回る減衰値を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の中間層フィルム。
【請求項10】
自動車領域中での、フロントガラスにおける、建築領域中での、ファサード構成材における、または光起電モジュールの製造のための、請求項1から9までのいずれか1項記載の中間層フィルムの使用。

【公開番号】特開2010−37193(P2010−37193A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180344(P2009−180344)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(507052393)クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (29)
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Brueningstrasse 50, D−65926 Frankfurt , Germany
【Fターム(参考)】