説明

防食システムによりコーティングされるフラット鋼生成物の製造方法

本発明は、高い腐食抵抗性を経済的に製造することができる方法、並びに、容易に実行可能な、防食システムを備えている鋼板生成物に関する。本発明の方法は、以下の工程:
保護ガス雰囲気下で鋼基板をストリップ温度まで予熱する工程;
鋼基板をストリップ入口温度まで冷却する工程;
亜鉛浴中で鋼基板をどぶ漬けコーティングして、金属防食コーティング(その中間層は0.5重量%以下のAl含有量を有する)を前記鋼基板上に形成する工程;
過剰コーティング材料をストリッピングすることによって、溶融浴中で鋼基板に付与される金属防食コーティングの厚さを、各々の面で3〜20μmの値まで調節する工程;
金属防食コーティングを備えている鋼基板を冷却する工程;そして
鋼基板の金属防食コーティングへ有機コーティングを付与する工程;
を含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、防食システムによりコーティングされるフラット鋼生成物(Stahlflachprodukts)の製造方法であって、鋼基板(例えば、鋼ストリップ又は鋼板)にどぶ漬けコーティングによって亜鉛系コーティングを付与し、そして、前記亜鉛系コーティングへ有機コーティングを付与する前記方法に関する。
【0002】
特に、鋼板又は鋼ストリップ上の腐食抵抗を改良するために、大部分の付与では、亜鉛又は亜鉛合金をベースとする金属コーティングを付与する。前記の亜鉛又は亜鉛合金コーティングは、それらのバリア効果及び陰極防食効果によって、前記方法でコーティングされる鋼板の実際の使用時に良好な保護をもたらす。
【0003】
亜鉛コーティングされた金属板の腐食抵抗は、ラッカーシステム(通常、複数の層により構成される)を実際に含む有機コーティングの付与によって、更に改良することができる。亜鉛コーティングを有する鋼板に前記ラッカーシステムを付与する或る方法は、例えば、WO98/24857に記載されている。この公知方法によると、基板表面を最初に洗浄する。次に、必要な場合には、有機及び/又は無機予備処理剤を前記コーティングへ付与する。次に、前記方法で準備されるコーティング層は、定着剤(Haftvermittler)としてのいわゆるプライマーのコーティングを付与され、前記プライマー上に、吹付(Spitzen)、浸漬(Tauchen)、スクラッピング(Rakeln)、圧延、又は、塗布(Streichen)によって、アミン変性エポキシ樹脂と架橋用に適当な細網化剤(Vernetzungsmittel)とを含むラッカーが付与される。前記ラッカーの付与後にベーキング(brennen)して、そして、必要な場合には、ラッカー層にわたって取り外し可能又は取り外し不可能なフィルムを置いて、輸送又は追加の加工間での損傷から保護するか、あるいは、特定の表面特性を確立する。前記方法により達成される利点は、コーティング表面の相当する準備によって、プライマーがほとんど崩壊しないか、又は、全く崩壊せず、そして、接着についての問題も生じないことである。従って、前記方法でコーティングされた基板は、良好で、均一な表面品質を有し、そして、良好な成形性と、耐久性と、抵抗性(化学物質、耐食、及び風化に対する)とを特徴とする。
【0004】
前記の先行技術では、定期的に、コーティング表面の予備処理の必要性がある。前記予備処理は、関連するコストの不利点だけでなく、特に、通常、予備処理剤が環境に有害であるという不利点を有する。特別な予備処理をせずに、未処理の表面に直接ラッカーシステムを付与する或る可能性は、DE10300751A1に記載されている。前記公報に記載の方法によると、DE10300751A1に詳細に記載される適当な防食組成物を使用することによって、そして、特定の層厚を遵守して、コーティングの特定の可撓性及び接着強度を達成することによって、追加の予備処理を必要としない、わずか4〜8μm厚の高い腐食抵抗を保証するコーティング層を、ホットガルバナイジングされたシート上につくることができる。しかしながら、前記実施で考慮されるべき操作パラメータと作用とが複雑であるため、前記方法は、困難であるとみなされ、そして、実際に主流な操作条件の下で問題を伴って実施することしかできない。
【0005】
本発明の目的は、腐食抵抗が高く、同時に、追加加工の容易なフラット鋼生成物の経済的な製造を可能にする方法を特定することである。
【0006】
前記目的は、鋼基板(例えば、鋼ストリップ又は鋼板)に亜鉛系コーティングをどぶ漬けコーティングによって付与し、そして、有機コーティングを前記亜鉛系コーティングに付与する、防食システムでコーティングされるフラット鋼生成物の製造方法であって、
以下の工程:
鋼基板を、不活性ガス雰囲気下にストリップ温度720〜850℃まで予熱炉中で予熱する工程;
鋼基板をストリップ入口温度(Bandeintrittstemperatur)400〜600℃まで冷却する工程;
亜鉛及び不可避の不純物に加えて(以下、重量%で表示)、
Al0.15〜5%、Mg0.2〜3%、並びに、場合により、
Pb、Bi、Cd、Ti、B、Si、Cu、Ni、Co、Cr、Mn、Sn及び希土類からなる群の1つ以上の元素を合計で0.8%以下、
を含むと共に、浴温度420〜500℃である亜鉛浴中で、鋼基板を空気除外(Luftabschluss)下にどぶ漬けコーティングする工程であって、
ここで、ストリップ浸漬温度と浴温度との差が、−20℃〜+100℃の範囲で変化するものとする、
前記どぶ漬けコーティングによって、金属防食コーティングを前記基板上に形成し、
ここで、前記金属防食コーティングは(以下、重量%で表示)、
Mg0.25〜2.5%、Al0.2〜3.0%、Fe4%以下、並びに、場合により、
Pb、Bi、Cd、Ti、B、Si、Cu、Ni、Co、Cr、Mn、Sn、及び希土類からなる群の1つ以上の元素を合計で0.8%以下、残余亜鉛及び不可避の不純物、
を含み、そして、
中間層(フラット鋼生成物の表面に直接隣接する表面層と鋼基板に隣接する境界層との間に広がっており、そして、防食コーティングの厚さ全体の少なくとも20%に達する厚さを有する)において、最大0.5重量%のAl含有量を有するものとする、前記どぶ漬けコーティング工程;
過剰コーティング材料をスクラッピングすることによって、溶融浴(Schmelzenbad)中で鋼基板に付与される金属防食コーティングの厚さを、面あたり3〜20μmの値まで調節する工程;
金属防食コーティングを有する鋼基板を冷却する工程;そして
鋼基板の金属防食コーティングに有機コーティングを付与する工程;
を含む、前記方法によって達成される。
【0007】
本発明によると、ファインスチール板又はストリップの形態にある鋼基板にコーティング加工を施し、前記コーティング加工の作業工程は、大規模実施の経済状態に関して、連続的な通過(kontinuierlichen Durchlauf)中で好ましく実施される。関連する加工工程で必要とされる効率と時間とに応じて、実際に設定される通過速度は60〜150m/分の範囲にあることができる。
【0008】
本発明の方法の部分として、鋼基板を最初に予熱する。予熱は、例えば、DFF(直火式加熱炉)又はRTF(輻射管式加熱炉)タイプの予熱炉中で実施することができる。加熱時に、鋼基板の表面の酸化を防ぐために、関連する焼鈍を不活性ガス下(公知の方法では、少なくとも3.5容量%〜通常75容量%の水素割合を有することができる)で実施する。
【0009】
次のコーティング工程に最適な鋼基板を準備するために、達成される最高ストリップ温度を、鋼のタイプに応じて、720〜850℃で設定する。
【0010】
加熱後に、鋼基板は空気除外下で亜鉛浴へ入る。これは、例えば、焼鈍炉の内壁と連結しており、そして、その開口部が溶融浴中に浸されているブローパイプを通じて、基板を溶融浴中へ導入することによる公知の方法で達成することができる。
【0011】
溶融浴は、亜鉛及び通常の製造で生じる不純物のほかに、マグネシウム及びアルミニウムの含有量を有するメルト(Schmelze)を含む。前記メルトの組成を選択して、Zn−Mg−Al−Feを含む金属防食コーティングを鋼基板上に形成する。前記コーティングが含む合金元素の配分のために、前記コーティングは、第一に、鋼基板に対して最適な接着性を有しており、そして、第二に、複雑な予備処理なしでの有機コーティングの直接付与に適当な表面組成を有する。同時に、コーティングは、本発明のフラット鋼生成物をスポット溶接に相応しくさせる優れた溶接性を有する。
【0012】
本発明の方法を使用することによって、コーティングの層構造を形成して、表面と直接隣接するその表面境界層(その厚さは、コーティング全体の厚さの最大10%までに制限される)において、元素Mg及びAlが、最初に酸化物として濃縮されて存在する。更に、表面ではZn酸化物が生じる。すぐ表面でのAl濃縮物の量は、最大で約1重量%である。亜鉛合金コーティング上に形成される酸化物層は、表面を不動態化(passivieren)し、そして、ラッカーの直接的な接着を可能にする。
【0013】
表面境界層が薄くなるにつれて、どぶ漬け方法で製造される金属防食コーティングの被覆性及び溶接性も改良する。従って、本発明の亜鉛どぶ漬けコーティングのための操作パラメータを好ましく設定することによって、表面境界層の厚さは、金属コーティング全体の厚さの5%未満(特に、1%未満)である。
【0014】
表面境界層に隣接する、最大0.25重量%のAl含有量を有する中間層は、コーティングの全体の厚さの少なくとも25%以下の厚さである。最初に中間層と、次に鋼基板と隣接しているその境界層において、Al含有量は、鋼基板に対する境界で4.5%まで上昇する。コーティングのすぐ表面でのMg濃縮物は、Al濃縮物よりも明らかに多い。ここでは、Mg比率は10%以下に達する。その後、Mg比率は、中間層にわたって減少し、そして、コーティング全体の厚さの約25%の深さでは0.5〜2%に達する。Mg含有量は、境界層にわたって鋼基板の方向に上昇する。鋼基板に対する境界では、Mg含有量は、3.5%以下である。境界層中に合金化されるFeによって、鋼基板に対するコーティングの特に良好な接着性が保証されるのに対して、中間層中のAl含有量が低いことによって、特に、良好な溶接性及び表面の均一な形成が保証される。コーティング厚が薄いことによって達成されるコーティングの良好な防食効果も、境界層中のMg及びAlの高い含有量によって保証される。
【0015】
防食コーティングとその個々の層との構造についての、本明細書及び本請求項中に記載されるデータは、GDOS測定(グロー放電発光分光法)によって決定される層プロフィールに関連する。GDOS測定法(例えば、VDI Glossary of Material Technology [Hubert Graefen, VDI-Verlag GmbH, Duesseldorf, 1993]中に記載される)は、コーティングの濃度プロフィールを素早く検出する標準的な方法である。
【0016】
特に、溶融浴のAl含有量が0.15〜0.4重量%である場合に、本発明により製造される金属防食コーティングによって前記特性が達成される。本発明を実施する方法において使用される、溶融浴の比較的低い前記Al含有量によって、好ましいストリップ浸漬及び/又は浴温度それ自体が、本発明の望ましい層システムの構造に直接影響を及ぼすことができることが分かった。
【0017】
本発明による方法では、どぶ漬けコーティングの間で、金属防食コーティングの境界層(鋼基板に隣接する)中には、高いAl及びMg含有量が濃縮し、それに対して、中間層中には、特に低いAl含有量が存在するということが達成された。浸漬時のストリップ温度と、溶融浴温度との温度差は、特に重要な影響を及ぼす。この温度差が−20℃〜100℃の範囲(好ましくは、−10℃〜70℃)で変化する場合には、中間層中にある本発明のAlの存在を最小化することを、目的とされた態様で確実に設定することができる。
【0018】
本発明により設定されるべき金属防食コーティングの層構造の形成を更に支持するために、溶融浴のMg含有量を、0.2〜2.0重量%(特に、0.5〜1.5重量%)へ制限することができる。Pb、Bi、Cd、Ti、B、Si、Cu、Ni、Co、Cr、Mn、Sn及び希土類の群からなる元素は、合計で0.8重量%の含有量まで、本発明により製造される防食コーティング中に存在することができる。Pb、Bi、及びCdを使用してより大きな結晶構造(酸化亜鉛)を形成し、Ti、B、Siを使用して成形性を改良し、Cu、Ni、Co、Cr、Mnを使用して境界層反応に影響を及ぼし、Snを使用して表面酸化に影響を及ぼし、そして、希土類(特に、ランタン及びセリウム)を使用してメルトのフロー態様を改良する。本発明の防食コーティング中に含まれることのある不純物は、どぶ漬けコーティングの結果として、表面コーティングの特性に影響しない量で鋼基板から表面コーティング中に入る成分を含む。
【0019】
本発明の方法では、ガルバナイジング部分を通過した後に、表面コーティングの厚さを3〜20μm(面あたり20〜140g/mの金属防食コーティングのコーティング質量に相当する)に設定する。本発明により形成されるコーティングの優れた防食効果によって、コーティングの厚さを、4〜12μm(面あたりのコーティング質量30〜85g/mに相当する)の値まで制限することができる。前記の薄いコーティングを有する鋼基板を、更に良好に加工することができる。
【0020】
コーティング厚を設定するための過剰表面コーティング材料のスクラッピングを、例えば、ノズルスクラッパーシステムが用いられるガスジェットによって、公知の態様で達成することができる。ガスジェット用のガスは窒素が好ましく、それによって、コーティングの表面の任意の酸化をできる限り制限する。
【0021】
Mg及びAlを含む亜鉛系金属防食コーティングを有する鋼ストリップを亜鉛浴から導いた後で、目的とされた態様で前記鋼ストリップを冷却する。到達する最終温度は、通常室温に相当する。
【0022】
次に、金属防食コーティングを有する鋼基板を調質圧延して、その後のコーティングに最適な表面集合組織を達成することができる。制御された冷却と実施される任意の調質圧延との両方を、ガルバナイジング加工を伴う連続的な通過中にインラインで、経済的及び効率的に好ましく実施する。
【0023】
最後に、本発明の方法でコーティングされる鋼基板を有機コーティングする。有機コーティングを、別のストリップコーティングプラント中で実施するか、又は、冷却及び/又は任意の必要な追加の焼戻し後にインラインで実施することができる。この場合、先の作業工程後に連続的に続く加工が好ましい。なぜなら、特に良好な作業結果を有する新しく製造された金属表面へ直接コーティングを付与することができるからである。特に、有機コーティングがインラインで、先の作業工程の後に続く場合には、老朽化、オイリング、又は脱脂による金属コーティングの変化を防ぐことができる。
【0024】
しかしながら、原則として、有機コーティングを公知の方法で、別のコイルコーティングプラントを介して付与することも考慮することができる。この目的を達成するために、ガルバナイジング、冷却又は圧延の後で、コーティングを付与される鋼基板を最初にオイリングして一時的な防食を保証することができる。
【0025】
更なる別の方法は、基板の「密封」及びガルバナイジングである。このために、ポリアクリレート又はポリエステル製の約2μm厚の層を、単純な防食として、そして、追加の加工助剤(つまり、熱によって、又は、紫外線硬化によって付与することができる)として付与する。
【0026】
驚くべきことに、洗浄と予備処理とを実施しないガルバナイジングの直後に生じ、そして、追加の加工工程によって影響されない表面は、有機コーティングの直接付与に特に適当である。本発明の或る観点では、コーティングの表面洗浄が実施される場合には、軽い洗浄が特に適当であることが分かっているので、金属コーティング上に存在する自然酸化物層(native Oxidschicht)は最小限の腐食しか受けない。本明細書中の用語「軽い洗浄」は、金属防食コーティングの表面が、弱アルカリ性洗浄液(pH値9〜10、遊離アルカリ度(freie Alkalitaet)14以下)又は強アルカリ性の低濃度の洗浄液(pH値12〜12.5、アルカリ価5)で処理される洗浄を言及するものである。この目的のために適当な洗浄剤は、例えば、ホスフェート含有カリウム系又は水酸化ナトリウム(Natronlauge)系の液体(通常、温度は40〜70℃の範囲にある)である。
【0027】
吹付、浸漬(Tauchen)、又はロールコーターの使用による有機コーティングの付与前に、ストリップ表面へ予備処理を付与して、金属表面を不動態化し、そして、金属コーティングとラッカーとの間の接着性を保証することができる。前記予備処理は、CrVIを含まないシステム(好ましくは、例えば、Ti、Zr、P及び/又はSiに基づいて製造される、全体としてCrを含まないシステム)であることが好ましい。しかしながら、既にコーティングを担持する鋼基板上につくられる自然酸化物層が、実際に重要な多くの付与において、表面の良好な不動態化を保証するので、前記予備処理を完全に省略して、そして、脱脂のみが実施された金属基板へラッカーを直接付与することができる。
【0028】
ロールコーター、吹付、浸漬(Tauchen)によって、有機コーティングを公知の態様で少なくとも1つの層の形態で付与することができる。この場合に、単一層構造又は多層構造を形成することができ、その場合には、以下の層又は層システムを使用し、そして、適切な場合には、組み合わせることができる:
1.ラッカー
2.ラッカー − フィルム
3.ラッカー − フィルム − ラッカー
4.ラッカー(接着剤ありと接着剤なし)
【0029】
続いて、熱供給又は放射によりコーティングを硬化する。加工の経済性に関して、放射(特に、紫外線放射)による硬化が有利である。放射による硬化は、放出された溶媒の熱的なアフターバーニングを必要としない。紫外線硬化用のシステムも、構造長さ(熱乾燥で必須の空気循環オーブンで必要とされる長さよりも実施的に短い)中で実施することができる。
【0030】
金属及び有機コーティングを有する本発明により製造されるフラット鋼生成物は、コーティング厚が減少されると、従来のコーティングされた鋼基板のものよりも実質的に良好な開いた切断面(offene Schnittflaechen)の保護、及、キズ及び切断端部での改良された移動特性を有する。
【0031】
CrVIを含まない予備処理剤を使用する本発明の方法によって、相当する予備処理が必要な場合には、達成される防食特性は、先行技術によりCrVIを含む処理剤で予備処理される製品と同じくらい良好である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図面中の実施例を参照して、以下に、本発明を詳細に説明する。
ダイアグラム1は、防食システムによってコーティングされるフラット鋼生成物の製造方法の第1変異体の作業工程の順序を示す図である。
ダイアグラム2は、防食システムによってコーティングされるフラット鋼生成物の製造方法の第2変異体の作業工程の順序を示す図である。
ダイアグラム3は、鋼基板に付与される第1の防食コーティングの厚さにわたって、GDOS測定によって決定されるZn、Mg、Al、及びFeの含有量の比率の描写を示す図である。
ダイアグラム4は、鋼基板に付与される第2の防食コーティングの厚さにわたって、GDOS測定によって決定されるZn、Mg、Al、及びFeの含有量の比率の描写を示す図である。
図1〜図4は、防食コーティングを有するフラット鋼生成物の層構造を示す図である。
【0033】
本発明による個々の作業工程の、本発明の枠組み内で見込まれる2つの順序を、実施例としてダイアグラム1及び2に図示した。
【0034】
ダイアグラム1中に示される変異体において、全ての作業工程を連続的な通過中で実施する。関連する鋼基板(鋼板又は鋼ストリップ)を最初に予熱し、次に、どぶ漬けガルバナイジングし、そして、前記基板上に製造される金属コーティングの厚さを設定した後で、圧延して、変形度の少ない最適化された表面構造を形成する。次に、プライマーとラッカーとから形成される有機コーティングシステムを、中間洗浄及び下準備なしで金属防食コーティング上に直接付与するか、又は、圧延後の洗浄及び(必要な場合には)予備処理の後で、金属防食コーティング上へ直接付与する。
【0035】
ダイアグラム2中に示される順序では、ダイアグラム1に示される方法のように、作業工程「予熱」、「ガルバナイジング」、「厚さ設定」、及び「圧延」を、連続的な通過中で実施する。次に、圧延後に得られ、そして、防食コーティングでのコーティングされる鋼基板を、最初に、(有機コーティングを付与される鋼基板の表面の洗浄後で)プライマーとラッカーとから形成される有機コーティングシステムでコーティングする前に、別のコーティングプラント中で一時的に保管する。待機時間の間で腐食から保護するために、有機的にコーティングされるべき金属防食コーティングの表面の金属防食コーティングを圧延後にオイリング(oelen)するか、又は、「密封」する。
【0036】
本発明の方法を試験するために作業試験B1〜B8を実施し、ここで、高級鋼(Qualitaetsstahl)を含む鋼ストリップを鋼基板として使用した。鋼ストリップの組成を表1に示す。
【表1】

【0037】
作業試験間で設定される作業パラメータと、それぞれの溶融浴の組成と、鋼基板上で得られる防食層の分析とを表2に示す。
【0038】
試験される試験片中の表面の酸化を吸収する表面境界層の厚さは、最大0.2μmであり、そして、GDOS測定によって決定される層のプロフィールと比較すると、層全体の厚さの2.7%以下の範囲にあった。すぐ表面のAl濃縮物の量は、最大で約1重量%である。表面境界層の次に、コーティング全体の厚さの少なくとも25%の厚さまでの中間層(最大0.25重量%の低いAl含有量を有する)が続く。次に、境界層では、鋼基板との境界でAl含有量が4.5%まで上昇する。コーティングのすぐ表面でのMg濃縮物は、Al濃縮物よりも明らかに多い。ここでは、20%までのMg比率が達成される。その後、Mg割合は、中間層にわたって減少し、コーティングの全体の層の厚さの約25%の深さでは、0.5〜2%に達する。Mg含有量は、境界層にわたって鋼基板の方向に上昇する。鋼基板との境界では、Mg含有量が3.5%に達する。
【0039】
厚さD(表面D=0μm)にわたる相当する分布を、ダイアグラム3及び4中に実施例として図示する。ここで、前記ダイアグラム3及び4は、本発明の鋼基板上に製造される金属防食コーティングの2つの通常の層構造についての、GDOS測定の結果を示す。
【0040】
関係するコーティングの表面で、酸化の結果として、表面境界層が高いAl含有量で形成されたことが、ダイアグラム3及び4中に示されている。前記表面境界層の厚さは最大0.2μmであり、従って、溶接結果の品質における劣化なしで、スポット溶接、又は、レーザー溶接中で容易に破壊(durchbrochen)できる。
【0041】
表面境界層の次に、0.2%未満のAl含有量を有する約2.5μm厚の中間層が続く。従って、中間層の厚さは、防食コーティングの全体の厚さ7μmの約36%である。
【0042】
中間層は、鋼基板に隣接する境界層へ変化する。そこで、Al、Mg、及びFeの含有量は、中間層の相当する含有量にわたって明らかに上昇した。
【0043】
図1は、本発明により製造され、そして、構成されるフラット鋼生成物の部分の断面(原寸に比例しない)を示す。図1によると、鋼板として示される鋼基板Sの側面A(使用時には外側上にあり、そして、特に激しい腐食を受ける)上に、約7.5μm厚の金属防食コーティングKを、最初に付与する。前記防食コーティングKは、本質的に、Zn、Al、Mg及びFeを含む。
【0044】
防食コーティングKの表面上に直接(つまり、追加の予備処理なしで)プライマー層Pを付与する。標準的なプライマー生成物を有するプライマー層Pの厚さは、約5μmであった。いわゆる「厚層プライマー」を使用する場合には、プライマー層Pの厚さは、20μm以下であることができる。
【0045】
プライマー層P上に、ラッカー層Lを約20μmの厚さで付与する。ラッカー付与の準備のため、そして、全体の乾燥時間を短くするために、プライマー層Pを、紫外線放射によって初めに予備処理することができる。
【0046】
ラッカー層L上に、17μm厚以下のカバーラッカーコーティングDを最後に付与する。プライマー層Pとラッカー層Lとカバーラッカー層Dとが、一緒に有機コーティングを形成し、ここで、防食コーティングKの表面の予備処理を省略するにもかかわらず、前記有機コーティングは金属防食コーティングKと共に、鋼基板Sを腐食から特に良好に保護する。
【0047】
実際の使用時での、鋼基板Sの内側I(激しい腐食をほとんど受けない)には、最初に約7.5μm厚の金属防食コーティングKiを付与する。前記金属防食コーティングKiは、本質的にZn、Al、Mg及びFeを含む。防食コーティングKiの表面上に、厚さ5〜10μmのラッカー層Liを直接付与する。
【0048】
図1に示されるタイプのフラット鋼生成物は、自動車製造分野での使用が特に適当である。
【0049】
図2は、本発明により製造され、そして、構成される第2のフラット鋼生成物の部分の断面(原寸に比例しない)を示す。前記フラット鋼生成物も、自動車製造分野での使用に特に適当である。図2によると、鋼板として示される鋼基板Sの使用時の外側(特に激しい腐食を受ける)上に、約5μm厚の金属防食コーティングKを、最初に付与する。前記金属防食コーティングKは、本質的にZn、Al、Mg及びFeを含む。
【0050】
ここで、防食コーティングKの表面に、最初に予備処理を施すので、防食コーティングK上に、薄い予備処理コーティングVが残る。予備処理コーティングV上に、約8μm厚のプライマー層P1を付与する。
【0051】
プライマー層P1は、約5μm厚の接着剤Eの層を担持しており、前記接着剤Eにわたって、接着剤層E上に置かれる約52μm厚のラミネートフィルムFを、プライマー層P1上へ接着する。ラミネートフィルムFの外側上に、追加のプライマー層P2を付与し、前記プライマー層P2は、約20μm厚のカバーラッカー層Dを担持する。カバーラッカー層Dは、プライマー層P1、接着剤層E、ラミネートフィルムF、プライマー層P2、及びカバーラッカー層Dから形成される有機コーティングシステムの外側末端を形成する。
【0052】
実際の使用時での、鋼基板Sの内側(激しい腐食をほとんど受けない)には、最初に5μm厚の金属防食コーティングKiを付与し、前記金属防食コーティングKiは、本質的にZn、Al、Mg及びFeを含む。ここで、防食コーティングKiの表面を、最初に予備処理して、薄い予備処理層Viを形成する。次に、予備処理層V上に、通常5μm厚のラッカー層Liを付与する。
【0053】
図3は、本発明により製造され、そして、構成される第3のフラット鋼生成物の部分の断面(原寸に比例しない)を示す。前記フラット鋼生成物は、一般的な外部構造物への適用に特に適当である。図3によると、鋼板として示される鋼基板Sの使用時の外側(特に激しい腐食を受ける)上に、約10μm厚の金属防食コーティングKを、最初に付与する。前記金属防食コーティングKは、本質的にZn、Al、Mg及びFeを含む。ここで、防食コーティングKの表面にも最初に予備処理を施したので、防食コーティングK上に、薄い予備処理コーティングVが残った。
【0054】
予備処理層V上に、約5μm厚のプライマー層Pを付与する。前記プライマー層Pは、20μm厚のカバーラッカー層Dを担持する。
【0055】
カバーラッカー層D自体は、その外側上に、取り外し可能な保護フィルムUを担持しており、前記保護フィルムUは、輸送及び保管の間にフラット鋼生成物を保護する。
【0056】
しかしながら、保護フィルムUを、取り外し不可能な(permanent haftend)接着フィルムとして設計して、表面特性を改良させることができる。
【0057】
実際の使用時での、鋼基板Sの内側(激しい腐食をほとんど受けない)にも、最初に約10μm厚の金属防食コーティングKiを付与する。前記金属防食コーティングKiは、本質的にZn、Al、Mg及びFeを含む。ここで、防食コーティングKiの表面を、最初に予備処理して、薄い予備処理層Vを形成する。次に、予備処理層V上に、通常7〜15μm厚のラッカー層Liを付与する。
【0058】
図4は、本発明により製造され、そして、構成される第3のフラット鋼生成物の部分の断面(原寸に比例しない)を示す。前記フラット鋼生成物は、家庭電化製品の製造に特に適当である。図4によると、鋼板として示される鋼基板Sの使用時の外側(特に激しい腐食を受ける)上に、約4〜5μm厚の金属防食コーティングKを、最初に付与する。前記金属防食コーティングKは、本質的にZn、Al、Mg及びFeを含む。
【0059】
防食コーティングKの表面上に直接(つまり、追加の予備処理なしで)、約8μm厚のプライマー層Pを付与する。ここで使用されるプライマーは、いわゆる「構造プライマー(Struktur-primer)」であり、凹凸を有する構造化された(strukturiert)表面を形成する。
【0060】
次に、プライマー層P上に、約20μmの厚さを有するラッカー層Lを付与する。
【0061】
適用可能な場合には、ラッカー層上に、例えば、取り外し不可能な接着保護層を付与して、特に、表面特性を改良することができる。
【0062】
実際の使用時での、鋼基板Sの内側(激しい腐食をほとんど受けない)にも、最初に約4〜5μm厚の金属防食コーティングKiを付与する。前記金属防食コーティングKiは、本質的にZn、Al、Mg及びFeを含む。防食コーティングKiの表面上に、7〜10μmの厚さを有するラッカー層Liを直接付与する。
【表2】

《ダイアグラム1》

《ダイアグラム2》

《ダイアグラム3》

《ダイアグラム4》

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼基板(例えば、鋼ストリップ又は鋼板)に亜鉛系コーティングをどぶ漬けコーティングによって付与し、そして、有機コーティングを前記亜鉛系コーティングに付与する、防食システムでコーティングされるフラット鋼生成物の製造方法であって、
以下の工程:
鋼基板を、不活性ガス雰囲気下にストリップ温度720〜850℃まで予熱炉中で予熱する工程;
鋼基板をストリップ入口温度400〜600℃まで冷却する工程;
亜鉛及び不可避の不純物に加えて(以下、重量%で表示)、
Al0.15〜5%、Mg0.2〜3%、並びに、場合により、
Pb、Bi、Cd、Ti、B、Si、Cu、Ni、Co、Cr、Mn、Sn及び希土類からなる群の1つ以上の元素を合計で0.8%以下、
を含むと共に、浴温度が420〜500℃である亜鉛浴中で、鋼基板を空気除外下にどぶ漬けコーティングする工程であって、
ここで、ストリップ浸漬温度と浴温度との差が、−20℃〜+100℃の範囲で変化するものとし、
前記どぶ漬けコーティングによって、金属防食コーティングを前記基板上に形成し、
ここで、前記金属防食コーティングは(以下、重量%で表示)、
Mg0.25〜2.5%、Al0.2〜3.0%、Fe4%以下、並びに、場合により、
Pb、Bi、Cd、Ti、B、Si、Cu、Ni、Co、Cr、Mn、Sn、及び希土類からなる群の1つ以上の元素を合計で0.8%以下、残余亜鉛及び不可避の不純物、
を含み、そして、
中間層(フラット鋼生成物の表面に直接隣接する表面層と鋼基板に隣接する境界層との間に広がっており、そして、防食コーティングの厚さ全体の少なくとも20%に達する厚さを有する)において、最大0.5重量%のAl含有量を有するものとする、前記どぶ漬けコーティング工程;
過剰コーティング材料をスクラッピングすることによって、溶融浴中で鋼基板に付与される金属防食コーティングの厚さを、面あたり3〜20μmの値まで調節する工程;
金属防食コーティングを有する鋼基板を冷却する工程;そして、
鋼基板の金属防食コーティングに有機コーティングを付与する工程;
を含む、前記方法。
【請求項2】
作業工程を連続的な通過中で実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
鋼基板が作業工程を通過する速度が、60〜150m/分の範囲にあることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ストリップ浸漬温度と浴温度との差が、−10℃〜+70℃の範囲で変化することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
亜鉛浴のAl含有量が、0.15〜0.4重量%であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
亜鉛浴のMg含有量が、0.2〜2.0重量%であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
亜鉛浴のMg含有量が、0.5〜1.5重量%であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
過剰なコーティング材料のスクラッピングをガスジェットによって実施して、Zn−Mg−Alコーティングの厚さをつくることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ガスジェット用に使用されるガスが窒素であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
Zn−Mg−Alコーティングを有する鋼基板が、調質圧延を施されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
Zn−Mg−Alコーティングの厚さを、厚さ4〜12μm(面あたりのコーティング質量30〜85g/mに相当する)までに設定することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
鋼基板に付与され、そして、予め洗浄又は予備処理されないZn−Mg−Alコーティングの表面へ、有機コーティングを直接付与することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
鋼基板へ付与されるZn−Mg−Alコーティングの表面を、有機コーティングの付与前に洗浄することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
有機コーティングの付与前に、鋼基板の表面に付与されるZn−Mg−Alコーティングの表面を、CrVIを含まない予備処理剤によって化学予備処理することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
予備処理剤がCrを含まないことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
有機コーティングが、紫外線放射によって硬化することを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−537698(P2009−537698A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510445(P2009−510445)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054712
【国際公開番号】WO2007/132008
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(500169782)ティッセンクルップ スチール アクチェンゲゼルシャフト (45)
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Steel AG
【Fターム(参考)】