説明

除塵用基板に好適な耐熱性樹脂

【課題】搬送性、真空到達時間などの性能とともに、除塵性に優れた、半導体装置などの基板処理装置内の除塵用基板に好適に使用され、HDD用途や一部半導体用途などシリコーンの汚染により重大な障害が発生し得る状況下においても使用可能な新規な耐熱性樹脂を提供する。
【解決手段】テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン成分として少なくとも、ポリエーテル構造を有し、少なくとも二つの末端アミン構造を有する化合物を重合させて得られる耐熱性樹脂を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置の除塵用基板、除塵用基板のクリーニング層として好適な耐熱性樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
低弾性ポリイミドは半導体用保護膜、多層回路基板の絶縁膜、半導体の接着フィルム、フレキシブル回路基板のカバーレイなどに低応力かつ耐熱性の材料として使用されている(特許文献1、2、3、4、5参照)。
しかしながら、これら低弾性率のポリイミドはシリコーンを含有するジアミン、またはテトラカルボン酸無水物を共重合して得られるため、HDD用途や、一部半導体用途など、シリコーンの汚染により重大な障害が発生する用途においては使用することができなかった。
【0003】
このように、HDDや半導体の製造装置内等において、汚染を生じずに使用可能な、低弾性の耐熱性樹脂が求められていた。
また、装置内の除塵のための除塵用基板は、シリコンウエハ上にアクリル樹脂などの合成樹脂からなるシート(特許文献6、7参照)を有するものがあるが、耐熱性が特に要求される前処理工程などにおいて耐熱性が充分とはいえず、耐熱性に優れた除塵用基板が求められていた。
特に、半導体前半工程装置の除塵用ウエハー、とりわけPVD装置などでは、高温で使用される場合が多く、これら装置を除塵する温度範囲で耐熱性を有し、かつ、安定した諸物性が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−170901号公報
【特許文献2】特開平6−73178号公報
【特許文献3】特開平6−207024号公報
【特許文献4】特開平6−73178号公報
【特許文献5】特開2002−50854号公報
【特許文献6】特開2001−351960号公報
【特許文献7】特開2002−18377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、搬送性、真空到達時間などの性能とともに、除塵性に優れた、半導体装置などの基板処理装置内の除塵用基板を提供し、さらには該除塵用基板に好適に使用され、HDD用途や一部半導体用途などシリコーンの汚染により重大な障害が発生し得る状況下においても使用可能な新規な耐熱性樹脂を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、下記構成によって達せられた。
(1)基板と該基板の少なくとも一方の面に、20℃〜150℃までの貯蔵弾性率(1Hz)が5×10Pa〜1×10Paである耐熱性樹脂からなるクリーニング層を有する基板処理装置の除塵用基板。
(2)該耐熱性樹脂が、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン成分として少なくとも、ポリエーテル構造を有し、少なくとも二つの末端アミン構造を有する化合物を重合させて得られる耐熱性樹脂(以降、耐熱性樹脂Aともいう)である上記(1)に記載の基板処理装置の除塵用基板。
【0007】
(3)該耐熱性樹脂が、ポリエーテル構造を有し、少なくとも二つの末端アミン構造を有する化合物が式(1)で表される化合物である上記(2)に記載の基板処理装置の除塵用基板。
【0008】
【化1】

【0009】
aは2以上の整数を表す。
【0010】
(4)該耐熱性樹脂が、下記式(R1)で表される構造単位を有する耐熱性樹脂である上記(2)に記載の基板処理装置の除塵用基板。
【0011】
【化2】

【0012】
aは2以上の整数を表す。Arは少なくとも一つ芳香環を含有する構造を表す。
【0013】
(5)ポリエーテル構造を有し、少なくとも二つの末端アミン構造を有する化合物が式(2)で表される化合物である上記(2)に記載の基板処理装置の除塵用基板。
【0014】
【化3】

【0015】
b、c及びdは、各々0以上の整数を表し、ただしb+c+dは2以上である。
【0016】
(6)該耐熱性樹脂が、式(R2)で表される構造単位を有する耐熱性樹脂である上記(2)に記載の基板処理装置の除塵用基板。
【0017】
【化4】

【0018】
b、c及び、dは、各々0以上の整数を表し、ただしb+c+dは2以上である。Arは少なくとも一つ芳香環を含有する構造を表す。
【0019】
(7)ポリエーテル構造を有し、少なくとも二つの末端アミン構造を有する化合物が式(3)で表される化合物である上記(2)に記載の基板処理装置の除塵用基板。
【0020】
【化5】

【0021】
e、f及びgは、各々0以上の整数を表し、ただしe+f+gは2以上である。
【0022】
(8)該耐熱性樹脂が、式(R3)で表される構造単位を有する耐熱性樹脂である上記(2)に記載の基板処理装置の除塵用基板。
【0023】
【化6】

【0024】
e、f及びgは、各々0以上の整数を表し、ただしe+f+gは2以上である。Arは少なくとも一つ芳香環を含有する構造を表す。
【0025】
(9)ポリエーテル構造を有し、少なくとも二つの末端アミン構造を有する化合物が式(4)で表される化合物である上記(2)に記載の基板処理装置の除塵用基板。
【0026】
【化7】

【0027】
hは1以上の整数を表す。
【0028】
(10)該耐熱性樹脂が、式(R4)で表される構造単位を有する耐熱性樹脂である上記(2)に記載の基板処理装置の除塵用基板。
【0029】
【化8】

【0030】
hは、1以上の整数を表す。Arは少なくとも一つ芳香環を含有する構造を表す。
【0031】
(11)上記(1)〜(10)のいずれかに記載の除塵用基板の樹脂面を基板処理装置の表面に接触させることで当該表面を除塵する方法。
【0032】
すなわち、本発明は、以下の耐熱性樹脂を提供する。
(12)テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン成分として少なくとも、ポリエーテル構造を有し、少なくとも二つの末端アミン構造を有する化合物を重合させて得られる耐熱性樹脂(耐熱性樹脂A)。
(13)ポリエーテル構造を有し、少なくとも二つの末端アミン構造を有する化合物が上記式(1)で表される化合物である上記(12)に記載の耐熱性樹脂。
【0033】
(14)上記式(R1)で表される構造単位を有する耐熱性樹脂。
(15)ポリエーテル構造を有し、少なくとも二つの末端アミン構造を有する化合物が上記式(2)で表される化合物である上記(12)に記載の耐熱性樹脂。
(16)上記式(R2)で表される構造単位を有する耐熱性樹脂。
【0034】
(17)ポリエーテル構造を有し、少なくとも二つの末端アミン構造を有する化合物が上記式(3)で表される化合物である上記(12)に記載の耐熱性樹脂。
(18)上記式(R3)で表される構造単位を有する耐熱性樹脂。
【0035】
(19)ポリエーテル構造を有し、少なくとも二つの末端アミン構造を有する化合物が上記式(4)で表される化合物である上記(12)に記載の耐熱性樹脂。
(20)上記式(R4)で表される構造単位を有する耐熱性樹脂。
【発明の効果】
【0036】
本発明の基板処理装置の除塵用基板は、半導体装置、特に、高真空となる半導体装置内部のクリーニングに有効であって、これら半導体装置内部の真空度を低下させずに、または、より、速やかに、真空度を復活させることで、効率的かつ短時間でのクリーニングが可能となる。
【0037】
上記(1)に記載の耐熱性樹脂は、半導体装置などの基板処理装置の除塵用基板に用いるクリーニング層として有用であり、これを用いて、半導体前半工程装置の除塵用など、広い温度範囲で使用可能な除塵用ウエハーを製造することが可能となった。
また、耐熱性樹脂Aは、シリコーンの汚染により重大な障害が発生する用途、例えば、
HDD用途や、半導体用途において、高耐熱・低応力の低弾性率ポリイミド樹脂として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明において、基板と該基板の少なくとも一方の面に、20℃〜150℃までの貯蔵弾性率(1Hz)が5×10Pa〜1×10Paである耐熱性樹脂からなるクリーニング層を有する除塵用基板が、上記課題を解決する優れた性能を有することを見出した。
なお、20℃〜150℃までの貯蔵弾性率(1Hz)は、好ましくは8×10Pa〜8×10Paであり、特に好ましくは1×10Pa〜6×10Paである。
【0039】
クリーニング層として用いることができる耐熱性樹脂としては、例えば、フェニル−T、ポリキノキサリン、ポリベンゾイレンベンズイミダゾールなどのラダーポリマー、ポリフェニレン、ポリアミド、ポリエステルイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリカルボジイミド、アラミドなどの芳香族ポリマーなどを挙げることができる。
特に、ポリイミド、ポリアミド、ポリカルボジイミドは400℃以上の高温にさらしても揮発性ガスや分解モノマーを生成しないという点で、クリーニング層として好適である。
【0040】
また、本発明において耐熱性樹脂として、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン成分として少なくとも、アルキレンオキシドなどから構成されるポリエーテル構造を有し、少なくとも二つの末端アミン構造を有する化合物を重合させて得られる新規なポリイミド樹脂(耐熱性樹脂A)が好ましいことを見出した。
ここで、ポリイミド樹脂は、イミド結合が形成されたイミド樹脂とともに、イミド樹脂の前駆体であるイミド化されていないポリアミック酸をも包含する意である。
耐熱性樹脂Aは、除塵用基板のクリーニング層としてのみならず、シリコーンの汚染により重大な障害が発生する用途、例えば、HDD用途や、半導体用途において、高耐熱・低応力の低弾性率ポリイミド樹脂として好適に使用することができる。
【0041】
〔ポリエーテル構造を有し、少なくとも二つの末端アミン構造を有する化合物〕
本発明において、耐熱性樹脂Aの合成に使用するジアミン成分は、ポリエーテル構造を有し、アミン構造を有する末端を少なくとも二つ有する化合物(以降、PEジアミン化合物という)である。PEジアミン化合物を用いることで、高耐熱性、低応力の低弾性率ポリイミド樹脂を得ることができる。
PEジアミン化合物は、ポリエーテル構造を有し、アミン構造を有する末端を少なくとも2つ有する化合物であるかぎり、特に限定されないが、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ポリテトラメチレングリコール、ポリアミンまたはこれらの混合体から調製されるアミン構造を有する末端を二つ有するPEジアミン化合物が好ましい。
【0042】
PEジアミン化合物が有するポリエーテル構造は、−A−O−で表されるアルキレンオキシ基を2つ以上有する構造である。Aはアルキレン基を表す。Oは酸素原子である。
Aとしてのアルキレン基は、一般的には炭素数1〜10、好ましくは2〜5、であり、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどが挙げられる。
複数のアルキレンオキシ基は、同じでも異なっていてもよい。また、Aとしてのアルキレン基は、置換基(例えば、メチル基、ポリエーテル基、アミノポリエーテル基)を有していてもよい。
PEジアミン化合物におけるポリエーテル構造が占める質量は一般的には50%以上、好ましくは70%以上である。
【0043】
PEジアミン化合物が二つの末端に有するアミン構造は、同じでも異なっていてもよく、1級〜3級のいずれであってもよいが、1級が好ましい。
アミン構造としては、たとえば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミンが挙げられ、プロピルアミンが好ましい。
PEジアミン化合物の数平均分子量は200〜5000、好ましくは600〜4000である。
【0044】
PEジアミン化合物としては、例えば、式(1)〜(4)で表される化合物を挙げることができる。
【0045】
【化9】

【0046】
式(1)において、aは2以上の整数を表し、好ましくは5〜80である。
式(2)において、b、c、dは各々0以上の整数を表し、ただし、b+c+dは2以上であり、好ましくは5〜50である。
式(3)において、e、f、gは各々0以上の整数を表し、ただしe+f+gは2以上であり、好ましくは5〜30である。
式(4)において、hは1以上の整数を表し、好ましくは1〜4を表す。
【0047】
PEジアミン化合物は、公知の方法により合成することができる。また、市販のものを使用してもよい。
【0048】
テトラカルボン酸二無水物との反応に際して、ジアミン成分として、PEジアミン化合物とともに、ポリエーテル構造を有さない、他のジアミン化合物を併用することが好ましい。併用することが好ましいジアミン化合物としては、例えば、以下のような脂肪族ジアミンや芳香族ジアミンを挙げることができる。
【0049】
〔脂肪族ジアミン〕
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、4,9−ジオキサ−1,12−ジアミノドデカン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンなどがあげられる。
脂肪族ジアミンの分子量は、通常50〜1000、好ましくは100〜300である。
【0050】
〔芳香族ジアミン〕
芳香族ジアミンとしては、例えば、4,4'−ジアミノジフェニルエ−テル、3,4'−ジアミノジフェニルエ−テル、3,3'−ジアミノジフェニルエ−テル、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、3,3'−ジアミノジフェニルプロパン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
これらの中で、4,4'−ジアミノジフェニルエ−テル、p−フェニレンジアミンが好ましい。
【0051】
〔テトラカルボン酸二無水物〕
本発明の耐熱性樹脂Aを合成するためのテトラカルボン酸二無水物は、特に、限定されないが、例えば、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4'−オキシジフタル酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ピロメリット酸二無水物、エチレングリコールビストリメリット酸二無水物等が挙げられ、それらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
好ましいテトラカルボン酸無水物としては、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4'−オキシジフタル酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、ピロメリット酸二無水物が挙げられる。
【0052】
耐熱性樹脂Aの好ましい例として、下記に示す、上記一般式(1)〜(4)で表されるジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物との反応による構造を有する樹脂を挙げることができる。
以下において、Arは少なくとも一つ芳香環を含有する構造を表し、好ましくは炭素数6〜30であり、例えば、ベンゼン環、ビフェニル、ジフェニルエーテルが挙げられる。
a〜hは、一般式(1)〜(4)におけるものと同様である。
【0053】
【化10】

【0054】
【化11】

【0055】
〔耐熱性樹脂Aの調製〕
本発明の耐熱性樹脂Aは、PEジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物を一般に溶媒中で反応させて得ることができる。
PEジアミン化合物は、テトラカルボン酸二無水物に対して、化学量論的には等量まで配合することができるが、好ましくは化学量論的等量の5〜60%であり、より好ましくは5〜30%である。この場合、ジアミン成分として、上述したような、脂肪族ジアミンや芳香族ジアミンなどの他のジアミン化合物を併用する。
【0056】
PEジアミン化合物と他のジアミン化合物の総量は、テトラカルボン酸二無水物に対し、一般的には化学量論量的に等量であるが、化学量論的等量の100〜500%などの過剰量であってもよい。
本発明の耐熱性樹脂Aは、乾燥後の全質量に対し、PEジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物の反応による構造単位を、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは20〜50質量%が含有することが好ましい。
【0057】
ここで、反応に用いる溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミドや、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどの有機溶剤が挙げられ、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。また、原材料や樹脂の溶解性を調整するために、トルエンや、キシレンなどといった非極性の溶剤を適宜、混合して用いることができる。
反応液中の溶質濃度は一般的には5〜50質量%で、反応温度は一般的には室温(例えば23℃)〜220℃で、反応時間は一般的には1〜10時間、好ましくは3〜6時間である。
【0058】
上記方法にて得られた耐熱性樹脂Aは、好ましくは不活性雰囲気下、高温にて熱処理して、より耐熱性を向上させることができる。熱処理条件は、後述の基板処理装置の除塵用基板の製造における加熱処理条件と同様である。
【0059】
〔基板処理装置の除塵用基板の製造〕
本発明の基板処理装置の除塵用基板は、耐熱性樹脂を基板上に塗布後、溶剤を乾燥除去し、好ましくはさらに、高温で熱処理し、得ることができる。
なお、本発明の耐熱性樹脂Aからなるクリーニング層は、耐熱性樹脂A以外にも他の樹脂、添加剤などを含有することができるが、クリーニング層の全質量に対し、50質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0060】
塗布の方法としては、スピンコート法、スプレー法などを用いて、シリコンウエハーなどの適宜の基板上に直接塗布するか、PETフィルムや、ポリイミドフィルム上にコンマコート法や、ファウンテン法、グラビア法などを用いて塗工形成し、これをシリコンウエハーなどの適宜の基板上に、転写、張り合わせて形成してもよい。
そして、溶剤乾燥後、高温で加熱処理する温度としては、200℃以上がよく、好ましくは250〜350℃、処理時間は通常10分〜5時間、好ましくは30分〜2時間である。樹脂の酸化劣化を防ぐため、窒素雰囲気下や真空中など不活性な雰囲気下で加熱処理することが望ましい。この加熱処理によって、耐熱性がより向上するとともに、樹脂中に残った揮発成分を完全に除去することができる。
【0061】
クリーニング層を設ける基板は特に限定はなく、異物除去される基板処理装置の種類に応じて各種の基板が用いられる。具体的には、例えば、半導体ウエハ、LCD、PDPなどのフラットパネルディスプレイ用基板、その他のコンパクトディスク、MRヘッドなどの基板が挙げられる。
【0062】
クリーニング層を設ける面は基板の少なくとも片面に設ければよく、両面に設けても良い。また、全面に設けても、端面(エッジ部)などの一部のみに設けても良い。
クリーニング層の厚み(乾燥後)は、通常1〜50μm、好ましくは5〜20μmである。厚すぎると吸湿水により装置の真空度が低下する場合があり、薄いと除塵性が低下する場合がある。
【0063】
また、本発明において、除塵が行われる基板処理装置としては特に限定されず、たとえば、露光装置、レジスト塗布装置、現像装置、アッシング装置、ドライエッチング装置、イオン注入装置、PVD装置、CVD装置、外観検査装置、ウエハプローバーなどがあげられる。
【0064】
上記のようなクリーニング層の形成により、20℃〜150℃までの貯蔵弾性率(1Hz)が5×10Pa〜1×10Paであるクリーニング層を形成することができ、除塵特性が優れたものとなる。
また、室温(例えば23℃)における引張弾性率が1.5GPa以下のクリーニング層とすることができる。引張弾性率は好ましくは1.5GPa以下、より好ましくは0.1〜0.8GPaであり、これによりクリーニング層の除塵特性が優れたものとなる。0.1GPa未満であると、基板処理装置の接触面に接着してしまい、搬送できなくなる場合がある。
【0065】
本発明では前記の方法により除塵された上記の基板処理装置についても提供できるものである。
【実施例】
【0066】
〔貯蔵弾性率〕
粘弾性測定装置RS−II(Rheometric Sientific社製)を用い、サンプルを周波数1Hz、歪0.3%、サンプルサイズ5.0×22.6mm、昇温速度10℃/分で測定した。
〔引張弾性率〕
試験法JIS K7127に準ずる方法を用いた。測定温度23℃。
〔除塵性〕
クリーニングシート製造用のライナーフィルム剥離装置(日東精機製、HR−300CW)を用いて除塵性評価を行った(装置A)。まず装置のチャックテーブルに1mm×1mmに裁断したアルミ片を20片設置した。次に装置Aにクリーニング搬送部材のクリーニング層側をダミー搬送させ、チャックテーブルに真空吸着(0.5kg/cm)させ、クリーニング層とチャックテーブル接触部位と強く接着させた。その後、真空吸着を解除し、クリーニング搬送部材をチャックテーブル上から取り除いたときの、チャックテーブル上のアルミ片の数より除塵率を測定した。測定は3度行い、その平均を求めた。
【0067】
〔搬送性〕
上記装置にて同様にチャックテーブル上に搬送し、真空吸着を行い、真空を解除した後、リフトピンにてクリーニング部材(CW)をチャックテーブル(CT)から剥離できるかどうかを5段階にて評価した。搬送性指数3以上が剥離可能となる。
搬送性指数(3以上で合格レベル)
5:非常に安定(Siウェハ同等)
4:CWがCTから移載される際若干ぐらつき、極小さな剥離音がする。
3:CWがCTから移載される際若干ぐらつき、小さな剥離音がする。
2:CWがCTから移載される際ぐらつき、やや大きな剥離音する。
1:CWがCTから移載される際大きくぐらつき、非常に大きな剥離音がする。
【0068】
〔真空到達時間〕
真空到達度は昇温脱離質量分析装置(電子科学製EMD−WA1000S)に該クリーニング搬走部材1cmを投入した場合に、50℃保持下で初期真空度1×10−9Torr(1.33×10−7Pa)に復帰する時間を測定した。ここで測定条件は、チャンバー内の温度を50℃に保持し、試料サイズは1cm、初期真空度を3×10−10Torr(4.0×10−8Pa)とし、試料投入後、真空度が1×10−9Torr(1.33×10−7Pa)に復帰した時間を真空到達時間として求めたものである。
この真空到達時間は小さいことが、真空下での本生産への影響が小さく好ましい。
【0069】
〔実施例1〕
ポリエーテルジアミン(サンテクノケミカル製、XTJ−502(ED−2003))32.2g、およびp−フェニレンジアミン9.4gを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)286.3g中で溶解した。次に、下記3,3,4,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAと略す)30gを加え、反応させた。冷却し得られた、樹脂溶液をスピンコーターで8インチシリコンウエハーの鏡面上、およびガラス板上に塗布し、90℃で20分乾燥した。これを、窒素雰囲気下、280℃で2時間熱処理して、厚み20μmの耐熱性樹脂皮膜を形成した。
【0070】
【化12】

【0071】
〔実施例2〕
ポリエーテルジアミン(サンテクノケミカル製、XTJ−500(ED−600))32.3g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル12.6gを、NMP279.9g中で溶解した。次に、下記ピロメリット酸二無水物(以下、PMDA)25gを加え、反応させた。冷却し得られた、樹脂溶液をスピンコーターで8インチシリコンウエハーの鏡面上、およびガラス板上に塗布し、90℃で20分乾燥した。これを、窒素雰囲気下、280℃で2時間熱処理して、厚み20μmの耐熱性樹脂皮膜を形成した。
【0072】
【化13】

【0073】
〔実施例3〕
ポリエーテルジアミン(サンテクノケミカル製、XTJ−502(ED−2003))29.0g、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル15.6gを、NMP258.2g中で溶解した。次に、PMDA20gを加え、反応させた。冷却し得られた、樹脂溶液をスピンコーターで8インチシリコンウエハーの鏡面上、およびガラス板上に塗布し、90℃で20分乾燥した。これを、窒素雰囲気下、280℃で2時間熱処理して、厚み20μmの耐熱性樹脂皮膜を形成した。
【0074】
〔実施例4〕
ポリエーテルジアミン(サンテクノケミカル製 XTJ−510(D4000))44.0g、および4,4’−ジアミノジフェニルエーテル25.3gをNMP 397.4g中で溶解した。次に、PMDA 30.0gを加え、反応させた。冷却し得られた、樹脂溶液をスピンコーターで8インチシリコンウエハーの鏡面上、およびガラス板上に塗布し、90℃で20分乾燥した。これを、窒素雰囲気下、280℃で2時間熱処理して、厚み20μmの耐熱性樹脂皮膜を形成した。
【0075】
[実施例5]
ポリエーテルジアミン(サンテクノケミカル製 XTJ−542)40.7g、および4,4’−ジアミノジフェニルエーテル10.1gをNMP 283.4g中で溶解した。次に、PMDA 20.0g加え、反応させた。冷却し得られた、樹脂溶液をスピンコーターで8インチシリコンウエハーの鏡面上、およびガラス板上に塗布し、90℃で20分乾燥した。これを、窒素雰囲気下、280℃2時間熱処理して、厚み20μmの耐熱性樹脂皮膜を形成した。
【0076】
実施例1〜5において使用のポリエーテルジアミン(サンテクノケミカル製 )は、以下のとおりである。
XTJ−500(ED−600): 前記の式(2)において、c=9.0、b+d=3.6である化合物
XTJ−502(ED−2003): 前記の式(2)において、c=38.7、b+d=6である化合物
XTJ−510(D4000): 前記の式(1)において、a=68である化合物
XTJ−542: 前記の式(3)において、e+g=6.0、f=9.0である化合物
【0077】
実施例1〜5において調製した耐熱性樹脂皮膜を形成した8インチシリコンウエハーについて、耐熱性樹脂皮膜を除塵面として、上記方法にて除塵性、真空到達時間、ならびに搬送性の評価を行った。ガラス板上に形成した耐熱性樹脂皮膜については、ガラス板から剥離し、上記方法に従い、貯蔵弾性率と引張弾性率を測定した。
【0078】
〔比較例1〕
8インチシリコンウエハーの上に樹脂を塗布せず、鏡面を接着面として、除塵性、真空到達時間、ならびに、搬送性の評価を行った。
【0079】
[比較例2]
エチレン−1,2−ビストリメリテートテトラカルボン酸二無水物(以下TMEGと略する)30.0gを窒素気流下、110gのN−メチル−2−ピロリドン中(以下NMPと略する)、下記構造で示されるジアミン(アミン当量900、アクリロニトリル含有量18%)65.8g、および2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(以下BAPPと略す)15.0gと120℃で混合反応させた。
冷却し得られた樹脂溶液をスピンコーターで8インチシリコンウエハーの鏡面上、およびガラス板上に塗布し、90℃で20分乾燥した。これを、窒素雰囲気下、280℃で2時間熱処理して、厚み20μmの耐熱性樹脂皮膜を形成した。
【0080】
【化14】

【0081】
[比較例3]
アクリル酸−2−エチルヘキシル75部、アクリル酸メチル20部、及びアクリル酸5部からなるモノマー混合液から得たアクリルポリマー(質量平均分子量70万)100部に対して、ポリエチレングリコール200ジメタクリレート(新中村化学製:商品名:NKエステル4G)200部、ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業製:商品名:コロネートL)3部、エポキシ系化合物(三菱瓦斯化学製:商品名:テトラッドC)2部および光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャリティケミカルズ製:商品名:イルガキュアー651)3部を均一に混合して、紫外線硬化型の粘着剤溶液Aを調製した。
【0082】
これとは別に、温度計、攪拌機、窒素導入管および還流冷却管を備えた内容量が500mlの3つ口フラスコ型反応器内に、アクリル酸2−エチルヘキシル73部、アクリル酸n−ブチル10部、N,N−ジメチルアクリルアミド15部およびアクリル酸5部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.15部、酢酸エチル100部を、全体が200gになるように配合して投入し、窒素ガスを約1時間導入しながら撹拌し、内部の空気を窒素で置換した。その後、内部の温度を58℃にし、この状態で約4時間保持して重合を行い、粘着剤ポリマー溶液を得た。粘着剤ポリマー溶液100部にポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業製:商品名:コロネートL)3部を均一に混合し、粘着剤溶液Aを得た。
【0083】
片面がシリコーン系離型剤にて処理された長尺ポリエステルフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム製:商品名:MRF50N100、厚み50μm、幅250mm)のシリコーン離型処理面に、上記粘着剤溶液Aを乾燥後の厚みが5μmとなるように塗布し、その粘着剤層上に長尺エチレン酢酸ビニル共重合体(厚さ100μm、幅250mm)を積層した。さらにそのフィルム上に紫外線硬化型粘着剤溶液Aを乾燥後の厚みが5μmとなるように塗布してクリーニング層としての粘着剤層を設け、その表面に片面がシリコーン系離型剤にて処理された長尺ポリエステルフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム製:商品名:MRF50N100、厚み50μm、幅250mm)のシリコーン離型処理面に貼り合わせて、積層シートAを得た。
この積層シートAに中心波長365nmの紫外線を積算光量1000mJ/cm照射して、紫外線硬化したクリーニング層を有するクリーニングシートAを得た。
このクリーニングシートAの通常の粘着剤層側の保護フィルムを剥がし、8インチシリコンウエハーのミラー面にハンドローラで貼り付け、クリーニング搬送部材Aを作製した。
【0084】
[比較例4]
4,4’−ジアミノフェニルエーテル27.5gをNMP 230.2g中で溶解した。次に、PMDA 30.0gを加え、反応させた。冷却し得られた、樹脂溶液をスピンコーターで8インチシリコンウエハーの鏡面上、およびガラス板上に塗布し、90℃で20分乾燥した。これを、窒素雰囲気下、280℃で2時間熱処理して、厚み20μmの耐熱性樹脂皮膜を形成した。
【0085】
比較例2〜4において調製した耐熱性樹脂皮膜を形成した8インチシリコンウエハーについて、耐熱性樹脂皮膜を除塵面として、上記方法にて除塵性、真空到達時間、ならびに搬送性の評価を行った。
また、比較例2及び4におけるガラス板上に形成した耐熱性樹脂皮膜及び比較例3におけるクリーニングシートAにおける紫外線硬化したクリーニング層について、上記方法に従い、貯蔵弾性率と引張弾性率を測定した。
【0086】
実施例1〜5及び比較例1〜4の評価結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
本発明に従った貯蔵弾性率について所定の条件を満足する耐熱性樹脂からなるクリーニング層を有する除塵用基板は、望ましい貯蔵弾性率及び引張弾性率を有し、優れた除塵性を示すとともに、通常のウエハーと比べ、真空到達時間がそれほど大きくなることがなく、また搬送性にも問題がないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン成分として少なくとも、ポリエーテル構造を有し、少なくとも二つの末端アミン構造を有する化合物を重合させて得られる耐熱性樹脂。
【請求項2】
ポリエーテル構造を有し、少なくとも二つの末端アミン構造を有する化合物が式(1)で表される化合物である請求項1に記載の耐熱性樹脂。
【化1】

aは2以上の整数を表す。
【請求項3】
下記式(R1)で表される構造単位を有する耐熱性樹脂。
【化2】

aは2以上の整数を表す。Arは少なくとも一つ芳香環を含有する構造を表す。
【請求項4】
ポリエーテル構造を有し、少なくとも二つの末端アミン構造を有する化合物が式(2)で表される化合物である請求項1に記載の耐熱性樹脂。
【化3】

b、c及びdは、各々0以上の整数を表し、ただしb+c+dは2以上である。
【請求項5】
式(R2)で表される構造単位を有する耐熱性樹脂。
【化4】

b、c及び、dは、各々0以上の整数を表し、ただしb+c+dは2以上である。Arは少なくとも一つ芳香環を含有する構造を表す。
【請求項6】
ポリエーテル構造を有し、少なくとも二つの末端アミン構造を有する化合物が式(3)で表される化合物である請求項1に記載の耐熱性樹脂。
【化5】

e、f及びgは、各々0以上の整数を表し、ただしe+f+gは2以上である。
【請求項7】
式(R3)で表される構造単位を有する耐熱性樹脂。
【化6】

e、f及びgは、各々0以上の整数を表し、ただしe+f+gは2以上である。Arは少なくとも一つ芳香環を含有する構造を表す。
【請求項8】
ポリエーテル構造を有し、少なくとも二つの末端アミン構造を有する化合物が式(4)で表される化合物である請求項1に記載の耐熱性樹脂。
【化7】

hは1以上の整数を表す。
【請求項9】
式(R4)で表される構造単位を有する耐熱性樹脂。
【化8】

hは、1以上の整数を表す。Arは少なくとも一つ芳香環を含有する構造を表す。

【公開番号】特開2011−153325(P2011−153325A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113782(P2011−113782)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【分割の表示】特願2005−297735(P2005−297735)の分割
【原出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】