説明

除湿剤及び除湿ロータ

【課題】 吸水速度が速く、吸水率も高く、更に簡便な手法で水分を放出し、再生が容易な除湿剤及びそれを用いた除湿ロータを提供すること。
【解決手段】 長繊維形状の酸化チタンが従来の除湿剤よりも優れた水分の吸放出特性を有している。このような長繊維形状の酸化チタンは、酸化チタンを主成分とする材料を、アルカリ性水溶液中で水熱処理することによって得られる。長繊維形状の酸化チタンは、直径が2〜80nmで、長さが100nm以上であった。その比表面積は200〜1000平方メートルであり、水分の吸収能力は乾燥重量の30%以上であった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の水分を除去できる除湿剤及びその除湿剤を内蔵する除湿ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
空気中の水分を吸収、吸着する除湿剤は空調用、冷凍サイクルなど多くの産業分野で実用化されており、家庭用にも各種除湿剤が市販されている。このような除湿剤としては、シリカゲル、活性炭、活性アルミナ、ゼオライトなどが一般的に知られている。このような除湿剤は使い捨てる場合もあるが、工業用途では水分を吸収した除湿剤から水分を除去し再度除湿剤として使用することが一般的に行われている。水分を除去する方法としては一般的に熱風を利用する方法がとられている。除湿剤としては多量の水分を吸収できて、尚かつ簡単に水分を放出するものが求められていたが、そのような特性を満たす除湿剤はこれまでなかった。
特許文献1では、多孔質な粉末にシリカゲルを混合して吸放出特性を改良する技術が知られている。特許文献2では、除湿ロータとして、ゼオライトを除湿剤とする技術が開示されている。
特許文献3では、ナノチューブ構造で、比表面積が大きな酸化チタンを製造する技術が開示されている。酸化チタンは古くから白色顔料として知られており、紫外線吸収剤としても利用されてきた。また、最近はその光触媒作用から有害物質の分解や色素増感太陽電池等多くの分野で注目を集めている材料ではあるが、除湿剤や吸湿剤として有用な材料であるということは知られていなかった。
【特許文献1】特開2000−104353号公報
【特許文献2】特開2000−61250号公報
【特許文献3】特開平10−152323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献3の酸化チタンはチューブ状の長繊維形状をしており、その比表面積が300平方メートル/gである。除湿材としての性能に関しては今までに全く報告がない。また、特許文献2には、除湿ロータに関する技術が開示されているが、そこで使用する除湿剤はゼオライトなどの公知の材料を用いるもので、除湿効果としては必ずしも満足できるものではなかった。本発明は、このような現状に鑑み、吸水速度が速く、吸水率も高く、更に簡便な手法で水分を放出できる除湿剤を提供し、そのような除湿剤を用いた除湿ロータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、長繊維形状の酸化チタンが従来の除湿剤よりも優れた水分の吸放出特性を有することを見いだし本発明を完成した。このような長繊維形状の酸化チタンは、酸化チタンを主成分とする材料を、アルカリ性水溶液中で水熱処理することによって製造することができる。このようにして製造された長繊維形状の酸化チタンは、直径が2〜80nmで、長さが100nm以上であった。その比表面積は200〜1000平方メートルであり、水分の吸収能力は乾燥重量の30%以上であった。このようにして得た除湿剤を内蔵した除湿ロータを作成することでもう一方の課題も達成できた。
【発明の効果】
【0005】
従来の除湿剤に比べて湿度が95%といった非常に高い湿度条件下で、従来の除湿剤より遙かに大きな吸水性能を有し(図4参照)、その大きな吸水能力にも拘わらず比較的容易に水分を放出する性質を有しており、除湿ロータ及びデシカント除湿機用の除湿剤として極めて適したものである。表1に本発明の除湿剤を含めた各種除湿剤の主要特性をまとめて示した。
【0006】
【表1】

【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の長繊維形状の酸化チタンを含有する除湿剤は、酸化チタンを主成分とする材料を、アルカリ性水溶液中で加熱処理することで作成することができる。原料は粉末状でもゾレゲルタイプの形状でも処理後は繊維形状のものを得ることができる。アルカリ性水溶液の濃度は5〜25モル/Kgの水溶液が好ましく、処理温度は70〜150℃の範囲が好ましい。処理時間は10〜30時間の範囲が好ましい。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを水に溶かした液を使用することができる。水酸化カリウムを用いた場合には、より比表面積の大きな長繊維形状の酸化チタンを得ることができるので特に好ましい。本発明の除湿剤が十分に水分を吸収した後に、その水分を除去する方法としては、温風を吹き付ける方法がある。マイクロ波や遠赤外線といった電磁波を利用して除湿剤を再生する方法も有力である。
除湿剤が水分を吸湿した後にその水分を放出して除湿剤が再生するのに必要な時間を評価した結果を表2に示した。
【表2】

この表から除湿剤として公知のシリカゲルに比較して、除湿剤を再生処理する時間が短縮出来ることが分かる。
更に、図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明に係る除湿剤の走査型及び透過型電子顕微鏡写真である。図2は、本発明除湿剤を含有する除湿ロータの斜視図及び断面図である。図3は、本発明の除湿ロータを配置したデシカント空調装置の概略図である。図4は、本発明除湿剤と従来の除湿剤との水分の吸収特性を表すグラフである。この図から、処理前の酸化チタン含有物はわずかな水分吸収しか示さないが、水熱処理して得られた長繊維形状の酸化チタン含有物では、大きな水分吸収性能を示し、除湿剤として極めて優れた吸収特性を有することが分かる。特に、高湿度下では、吸着特性と脱着特性が重なり極めて脱着性能が良いことが分かる。一方、除湿剤としてよく知られたシリカゲルの場合には吸着特性に比べて、脱着特性は左側にずれていることから脱着に時間がかかっていることが分かる。
【実施例】
【0008】
粒径20nmの酸化チタン粉末0.21gを17モル/Kg濃度の水酸化カリウム水溶液に入れ、撹拌した後、容器を密封して乾燥機に入れ、110℃で20時間静置した。20時間経過後容器を取り出し、希塩酸で中和処理して余分なアルカリ分を除いた。その後遠心分離機を用いて得られた固形分を、イオン交換水で洗浄し、凍結乾燥機にて乾燥して、長繊維形状の酸化チタン含有物を得た。得られたものの走査型及び透過型電子顕微鏡写真を図1に示した。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】 本発明の除湿剤の走査型及び透過型電子顕微鏡写真
【図2】 本発明除湿剤を含有する除湿ロータの斜視図及び断面図
【図3】 本発明の除湿ロータを配置したデシカント空調装置の概略図
【図4】 本発明除湿剤と従来品の吸湿特性を表すグラフ
【符号の説明】
【0011】
1 除湿ロータ
2 回転ケース
3 収容部
4 除湿剤粉末
5 デシカント空調装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ性水溶液中で水熱処理して得られる、結晶形状が長繊維である酸化チタンを含有することを特徴とする除湿剤。
【請求項2】
長繊維状の結晶の直径が2〜80nmで、長さが100nm以上である酸化チタンを含有することを特徴とする除湿剤。
【請求項3】
長繊維形状の酸化チタンを含有する除湿剤を内蔵することを特徴とする除湿ロータ。
【請求項4】
水分を吸着した除湿剤をマイクロ波または遠赤外線によって水分を追い出すことを特徴とする除湿剤の再生方法。
【請求項5】
長繊維形状の酸化チタンを含有する除湿剤を内蔵する除湿ロータを備えたことを特徴とするデシカント空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−272329(P2006−272329A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89351(P2006−89351)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(599073490)株式会社ア−スクリ−ン東北 (25)
【Fターム(参考)】