説明

除湿加温装置および除湿加温装置を具備した乾燥装置

【課題】蒸発器と凝縮器の間の空間をなくし、結露水の凝縮器への流入を抑制し、除湿性能、加温性能の低下を防止する。
【解決手段】圧縮機、凝縮器3、減圧機構、蒸発器5等を冷媒が順次循環するように接続してヒートポンプ装置6を構成し、このヒートポンプ装置6は、空気流入口8、蒸発器5、凝縮器3、空気流出口の順に流れる風路ケース7を備え、蒸発器5と凝縮器3はフィンを共有し、フィン10a、10bの重力方向端11a、11bを凝縮器3から蒸発器5に向かって重力方向に傾斜させたものであり、この傾斜により、蒸発器5に結露した結露水の凝縮器3側への流入を抑制し、蒸発器5と凝縮器3のフィンを共有しても除湿性能、加温性能の低下を抑止し、かつコンパクトな除湿加温装置1とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気を除湿し、かつ加温する除湿加温装置に関するもので、特に衣類等の乾燥を行う乾燥装置に適した除湿加温装置に関するものである。また、このような除湿加温装置を用いた乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の除湿加温装置を図8、図9を用いて説明する。図8は、従来の除湿加温装置の側面図である。図9は、同除湿加温装置における図8のC−C線による断面図である。
【0003】
除湿加温装置は、圧縮機51、凝縮器52、膨張機構53および蒸発器54を備えたヒートポンプ装置55と空気流入口56、蒸発器54、凝縮器52、空気流出口57の順に空気が流れる風回路58とから構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
蒸発器54は、風上側に位置して略垂直方向に配置され、凝縮器52は、風下側に位置して蒸発器54と略平行に取付けられている。また、蒸発器54と凝縮器52の間には仕切り板59が蒸発器54と略平行に設けられている。
【0005】
以上のように構成された除湿加温装置について、以下その動作を説明する。
【0006】
まず、ヒートポンプの動作として、圧縮機51が駆動するとガス冷媒は圧縮されて高温高圧のガス冷媒となり、凝縮器52に流入する。凝縮器52に流入したガス冷媒は、空気と熱交換し、空気は加温され、冷媒は冷却されて凝縮し、高圧の液冷媒に相変化する。
【0007】
次に、膨張機構53で高圧の液冷媒は減圧され、低温低圧の液冷媒もしくは気液二相冷媒となる。この冷媒が蒸発器54に流入し、空気と熱交換して空気は冷却され、冷媒は加熱されて低圧のガス冷媒となり、圧縮機51に吸い込まれる。
【0008】
一方、空気流入口56から流入した高湿の空気は、まず蒸発器54に流入し、冷却される。このとき、空気が露点温度以下に冷却されると、蒸発器54表面に結露し、空気が除湿される。次に、凝縮器52に流入し、加温され、高温低湿の空気となって、空気流出口57から除湿加温装置外へと出ていく。このときの加熱量は、蒸発器54での熱交換量と圧縮機51の入力の和であるため、空気流出口57から出ていく空気温度は、空気流入口から流入する空気温度よりも高くなる。
【0009】
この際、蒸発器54で結露した結露水は、重力により該蒸発器54の重力方向端に集められ、排水されるが、一部が風回路58内を流れる気流により飛散する。この飛散した結露水が凝縮器52に付着すると、該凝縮器52で加熱されて再蒸発してしまう。これを防止するため、従来は蒸発器54と凝縮器52の間に空間を設けている。
【0010】
近年、このような除湿加温装置が衣類乾燥機に用いられるようになった(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
次に、上記構成からなる除湿加温装置を衣類乾燥機に用いた場合について説明する。
【0012】
図10は従来の衣類乾燥機の側断面図である。
【0013】
筐体60の内部に設置された外槽61の内部には、衣類62を収容する円筒状で横軸型の回転槽63が回転可能に設けられており、駆動モータ64により回転駆動される。筐体60の前面には、衣類62を出し入れする開口部65と、これを開閉する扉66が設けられている。
【0014】
外槽61および回転槽63の前面側にもそれぞれ同様の開口部67、68を有し、この外槽61の開口部67は、ベローズ69によって前記筐体60の開口部65と水密に連結されている。
【0015】
送風手段を構成する送風機70は、筐体60の上面60aと外槽61により形成される隅部空間(筐体60の上部)に位置するように、外槽60の外周面に設けられている。筐体60の背面60bの下部には、前述したヒートポンプ装置55が設けられている。
【0016】
次に、上記衣類乾燥機の動作について説明する。
【0017】
ヒートポンプ装置55を作動し、これと並行して送風機70を運転する。その結果、凝縮器52の放熱により加熱された温風が風回路58を構成するダクト71を通って給気口72から回転槽63内に送風される。回転槽63は駆動モータ64により回転駆動され、衣類62は上下に撹拌される。
【0018】
回転槽63内に供給された温風は、衣類62の隙間を通るときに水分を奪い、湿った状態で外槽61の排気口73を経て循環ダクト74から送風機70を通り、ダクト75から蒸発器54に至る。この湿った温風は、蒸発器54を通過する際に顕熱と潜熱が奪われて除湿され、乾いた空気と結露水に分離される。
【0019】
乾いた空気は、続いて凝縮器52を通過する際に、この凝縮器52で再び加熱され、温風となり、前述と同様に再び外槽61、回転槽63内へ供給され、以下、前述の循環を繰り返す。結露水は、蒸発器54の下部に設けられたドレンパン76に流れ、排水口(図示せず)から機外へ排出される。
【0020】
この際、蒸発器54と凝縮器52の間に空間を設けることにより、蒸発器54から飛散した結露水が凝縮器52に付着するのを防止し、乾燥時間の低減を図っている。
【特許文献1】特開昭61−2896号公報
【特許文献2】特開2005−304985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、上記従来の構成では、蒸発器54と凝縮器52の間に空間があるため、除湿加温装置が大型化し、ひいては衣類乾燥機が大型化するという課題を有していた。また、蒸発器54と凝縮器52の間の空間をなくすと、結露水が凝縮器52内に流入し、過熱され再蒸発することとなり、その結果、除湿性能、加温性能が低下するという課題を有していた。また、それに起因して衣類乾燥機の乾燥時間が長くなるという課題を有していた。
【0022】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、除湿加温装置をコンパクトにするとともに、除湿性能、加温性能の低下を防止する除湿加温装置を提供することを目的とするものである。
【0023】
また、本発明は乾燥時間が短くコンパクトな衣類乾燥機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記従来の課題を解決するために、本発明の除湿加温装置は、凝縮器および蒸発器を構成するそれぞれのフィンを一体化、もしくは近接配置して共有化し、そのフィンの下辺(重力方向端)を、前記凝縮器から前記蒸発器に向かって重力方向に傾斜させたものである。
【0025】
これにより、蒸発器に結露した結露水は、フィンの下辺が蒸発器側に傾斜していることから、風圧が作用しても凝縮器側への流入が抑制される。このように、蒸発器と凝縮器のフィンを共有し、両者が接近した配置構成であっても除湿性能、加温性能の低下を抑止することができ、さらに、コンパクトな除湿加温装置を提供することができる。
【0026】
また、本発明の除湿加温装置は、凝縮器と近接配置した蒸発器のフィン部を、前記凝縮器のフィン部よりも重力方向に突出させたものである。
【0027】
これにより、蒸発器のフィン間に保持された結露水は、気流により、凝縮器方向に流されようとするが、重力によってフィンを伝いながら流下し、フィンの下端で若干滞留する。フィンの下端に滞留した結露水は、蒸発器フィンが重力方向に突出しているため、結露水が凝縮器に付着することはなく、蒸発器と凝縮器のフィンを共有しても除湿性能、加温性能の低下を抑止することができ、コンパクトな除湿加温装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、蒸発器と凝縮器のフィンを近接配置、あるいは共有化しても、蒸発器に結露した結露水の凝縮器への流入を抑制することができるため、除湿性能、加温性能の低下を防止し、かつコンパクトな除湿加温装置を提供することができる。
【0029】
またかかる除湿加温装置を衣類乾燥機等の乾燥装置に搭載することにより、乾燥効率がよく、コンパクトな乾燥装置を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
請求項1に記載の発明は、圧縮機と、相互間を空気が流動するフィンと管内を冷媒が流動する伝熱管とからなる凝縮器と、減圧機構と、相互間を空気が流動するフィンと管内を冷媒が流動する伝熱管とからなる蒸発器を冷媒が順次循環するように接続してヒートポンプ装置を構成し、さらに、前記蒸発器と前記凝縮器を、空気流入口と空気流出口を具備する風回路内に、前記蒸発器が風上となるように配置し、前記蒸発器と前記凝縮器のそれぞれのフィンを、共有化、もしくは近接配置した除湿加温装置であって、少なくとも前記蒸発器のフィンの重力方向端部の形状を、前記凝縮器から前記蒸発器に向かって重力方向に傾斜する形状としたものである。
【0031】
かかる構成とすることにより、前記蒸発器に結露した結露水は、前記蒸発器のフィンの重力方向端が前記凝縮器から蒸発器側に向かって重力方向に傾斜していることに伴い、凝縮器側への流入が抑制される。したがって、蒸発器と凝縮器のそれぞれのフィンを共有化、あるいは近接配置しても結露水の凝縮器への付着に伴う除湿性能、加温性能の低下を抑止することができ、また、蒸発器と凝縮器の配置間隔が短くできるため、コンパクトな除湿加温装置を提供することができる。
【0032】
請求項2に記載の発明は、圧縮機と、相互間を空気が流動するフィンと管内を冷媒が流動する伝熱管とからなる凝縮器と、減圧機構と、相互間を空気が流動するフィンと管内を冷媒が流動する伝熱管とからなる蒸発器を冷媒が順次循環するように接続してヒートポンプ装置を構成し、さらに、前記蒸発器と前記凝縮器を、空気流入口と空気流出口を具備する風回路内に、前記蒸発器が風上となるように配置し、前記蒸発器と前記凝縮器のそれぞれのフィンを、共有化、もしくは近接位置した除湿加温装置であって、前記蒸発器のフィンの下端部を、前記凝縮器フィンの下端部よりも重力方向に突出したものである。
【0033】
かかる構成とすることにより、前記蒸発器フィンの重力方向端(下端)におけるフィン間に、表面張力によって保持された結露水は、気流により、凝縮器方向に流されようとするが、蒸発器のフィンの重力方向端が重力方向(下方)に突出しているため、結露水が凝縮器に付着することを抑制される。したがって、蒸発器と凝縮器のそれぞれのフィンを共有化、あるいは近接配置しても結露水の凝縮器への付着に伴う除湿性能、加温性能の低下を抑止することができ、また、蒸発器と凝縮器の配置間隔が短くできるため、コンパクトな除湿加温装置を提供することができる。
【0034】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記凝縮器および蒸発器を、前記伝熱管が上下方向において複数段にわたって位置する構成とし、前記蒸発器における最下段の伝熱管を、前記凝縮器における最下段の伝熱管よりも少なくとも1段下げることにより、前記蒸発器のフィンの下端部を重力方向に突出させたものである。
【0035】
かかる構成とすることにより、蒸発器の反重力方向端(上端)側に、凝縮器との関係において段差が形成された構成となる。したがって、連結された蒸発器と凝縮器の構造体においては、前記段差を前記蒸発器の突出した重力方向端の収納空間に利用することができ、管理スペースの有効化が可能となり、また、前記蒸発器と凝縮器のフィンを共有した一体のフィン成形においては、その材料取りにおいて、蒸発器と凝縮器の重力方向端の反対側端が次段の蒸発器の重力方向端として確保できる嵌合形状となり、段方向に順送しながらフィンを金型プレスで製作することができ、蒸発器、凝縮器を安価に提供することができる。
【0036】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、少なくとも前記蒸発器のフィン部に、親水性の表面処理を施したものである。
【0037】
かかる構成とすることにより、蒸発器フィン部の突出部に流れ込んだ結露水は液滴となり、重力流下および気流による飛散排出がし易くなるため、熱交換量を向上することができる。さらに蒸発器と凝縮器のフィンを共有しても結露水の重力流下が円滑であることに伴い、凝縮器への結露水の付着が抑制でき、除湿性能、加温性能の低下を抑止することができ、さらに、コンパクトな除湿加温装置を提供することができる。
【0038】
請求項5に記載の発明は、請求項2から4のいずれか一項に記載の発明において、前記蒸発器のフィン部の少なくとも突出部に、撥水性処理を施したものである。
【0039】
かかる構成とすることにより、蒸発器フィン部の突出部に流れ込んだ結露水は液滴となり、重力流下および気流による飛散排出がし易くなるため、熱交換量を向上することができる。さらに蒸発器と凝縮器のフィンを共有しても結露水の重力流下が円滑であることに伴い、凝縮器への結露水の付着が抑制でき、除湿性能、加温性能の低下を抑止することができ、さらに、コンパクトな除湿加温装置を提供することができる。
【0040】
請求項6に記載の発明は、被乾燥物を収容する収容部と、一端が前記収容部内に連通した給気ダクトと、一端が前記収容部内において前記給気ダクトと異なる位置に連通した排気ダクトを具備した乾燥装置であって、請求項1から5のいずれか一項に記載の除湿加温装置を、前記空気流入口が前記排気ダクトと連通し、前記空気流出口が前記給気ダクトと連通するように設けた乾燥装置である。
【0041】
上記除湿加温装置の搭載により、除湿性能、加温性能を低下させることがなく、乾燥時間の短縮化がはかれ、さらに、コンパクトな乾燥装置を提供することができる。
【0042】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0043】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における除湿加温装置の正面図である。図2は、同除湿加温装置における図1のA−A線による断面図である。図3は、同除湿加温装置における異なる形状のフィンを具備した凝縮器と蒸発器の図2相当の断面図である。
【0044】
図1、図2において、除湿加温装置1は、圧縮機2、凝縮器3、膨張機構4および蒸発器5を備え、冷媒がこれらを順次循環するように接続した冷凍サイクルを有するヒートポンプ装置6と、このヒートポンプ装置6を収納した風路ケース(本発明の風回路に相当)7を主体に構成されている。この風路ケース7には、空気流入口8と空気流出口9が設けられており、空気流入口8から流入した空気は、蒸発器5から凝縮器3を通過し、空気流出口9から排出される。この風路ケース7は、ヒートポンプ装置1の外殻ケースを兼ねている。
【0045】
蒸発器5および凝縮器3は、所定間隔を介して配置された複数のフィンと、蛇行状に形成され、前記フィンを上下方向において複数段にわたって貫通した、所謂フィンチューブ型の熱交換器で構成されている。そして、風路ケース7内において、蒸発器5が風上に、凝縮器3が風下に配置され、前記フィンの相互間を空気が通過する。
【0046】
この蒸発器5と凝縮器3は、近接配置されており、それぞれのフィンチューブ型熱交換器を近接し、共通する端板(図示せず)で両者が離れないように一体化した構成、あるいはフィンを共有し、そのフィンに、蒸発器5、および凝縮器3の伝熱管を複数段にわたって貫通させ、必要に応じて端板(図示せず)を付加して一体化した構成が一般的であり、本実施の形態1においては、後者の構成を例に説明する。したがって、以下においては、凝縮器側フィンに符号10aを、蒸発器側フィンに符号10bをそれぞれ付し、また凝縮器3の伝熱管に符号3aを、蒸発器5の伝熱管に符号5aをそれぞれ付して説明する。
【0047】
凝縮器3と蒸発器5は、それぞれのフィン10a、10bが上下方向に延出するように配置されている。したがって、各フィン10a、10bの下端は、重力が作用する方向であるため、重力方向端と称し、凝縮器3側のフィン10aの重力方向端に符号11aを、蒸発器5側のフィン10bの重力方向端に符号11bを付して説明する。
【0048】
そして、凝縮器3と蒸発器5は、その一体化構成において台形状に形成され、凝縮器3と蒸発器5それぞれの重力方向端11a、11bが、図2に示す如く凝縮器3側から蒸発器5側に向かって重力方向に傾斜して配置されている。
【0049】
また、前記フィンにおける凝縮器3と蒸発器5との境界には、切込み12が設けられており、この切込み12によって伝熱通路となる面積を小さくし、凝縮器3から蒸発器5への熱伝導を抑制している。また、凝縮器3の伝熱管3aの入口側で冷媒が過熱状態である1列目と冷媒が二相状態の2列目の間にも同様の切込み12aが設けられており、温度が高い加熱冷媒から温度が低い二相冷媒への熱伝導を抑制している。
【0050】
さらに、蒸発器5を構成するフィン10bおよび伝熱管5aの表面には、親水性表面処理が施されている。
【0051】
この親水性表面処理は、周知の如く熱交換器表面に、薄い親水性の樹脂塗膜を形成するもので、周知の方法によって塗膜を形成することができる。
【0052】
さらに、風路ケース7内における凝縮器3と蒸発器5の下部には、結露水を受ける水受け部7aが設けられており、ここに溜まった水は、排水口(図示せず)から順次除湿加温装置1の外に排水される。
【0053】
以上のように構成された除湿加温装置1について、以下その動作を説明する。この場合、適宜送風手段(図示せず)によって風路ケース7内は、空気流入口8から空気流出口9に向けて気流が生じていることを前提として説明する。
【0054】
まず、ヒートポンプの動作として、圧縮機2が駆動するとガス冷媒は圧縮されて高温高圧のガス冷媒となり、凝縮器3に流入する。凝縮器3に流入したガス冷媒は空気と熱交換し、その結果、空気は加温され、冷媒は冷却されて凝縮し、高圧の液冷媒に相変化する。
【0055】
次に、膨張機構4で高圧の液冷媒は減圧され、低温低圧の液冷媒もしくは気液二相冷媒となる。この冷媒が蒸発器5に流入し、空気と熱交換して空気は冷却され、冷媒は加熱されて低圧のガス冷媒となり、再び前記圧縮機2へと循環する。
【0056】
一方、風路ケース7内においては、空気流入口8から流入した高湿の空気が、まず蒸発器5を通過し、冷却される。このとき、空気が露点温度以下に冷却され、蒸発器5(フィン10b)の表面に結露し、これによって空気が除湿される。
【0057】
次に、除湿された空気は凝縮器3を通過し、このときに加温され、高温低湿の空気となって、空気流出口9から除湿加温装置1の外へと出ていく。このときの加熱量は、蒸発器5での熱交換量と圧縮機2の入力の和であるため、空気流出口9から出ていく空気温度は、空気流入口8から流入する空気温度よりも高い状態にある。
【0058】
ここで、蒸発器5は、その表面に親水性処理を施しているため、結露水は速やかに液膜となり、スムーズに蒸発器5の重力方向端11bに集められ、水受け部7aに滴下し、ここから除湿加温装置1の外へ排水される。
【0059】
また、蒸発器5において、一部の結露水は、その表面張力により、フィン10bの間の重力方向端11bに保持され、風路ケース7内を流れる気流の風圧によって凝縮器3側へ移動しようとするが、凝縮器3および蒸発器5のそれぞれの重力方向端11a、11bが凝縮器3側から蒸発器95側に向かって重力方向に傾斜しているため、結露水は、その重力により前記風圧に抗して蒸発器5における重力方向端11bの角11cに集められ、水受け部7aに滴下し、排水される。これにより、結露水の凝縮器3への流入を抑制することができ、結露水の流入に伴う除湿性能、加温性能の損失が少ない除湿加温装置1を得ることができる。また、凝縮器3のフィン10aと蒸発器5のフィン10bを共有し、同一のフィンとしたことにより、凝縮器3と蒸発器5の間の空間をなくすことができ、コンパクトな除湿加温装置1とすることができる。
【0060】
また、凝縮器3、蒸発器5のそれぞれのフィン10a、10bの共用に伴うフィンの金型プレス成形において、その材料取りも、フィンを台形状とすることにより、長方形の板から無駄なく得ることができ、安価に除湿加温装置1を得ることができる。
【0061】
なお、本実施の形態1においては、重力方向端11a、11bの形成の都合上フィンを台形状とし、フィンの重力方向端11a、11bと反対側の端部11dを水平としたが、図3に示すように、重力方向端11a、11bと反対側の端部11dを重力方向端11a、11bと平行にした平行四辺形とすることにより、その材料取りが一定方向で行えるため、金型装置の動作を簡略化することができる。
【0062】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における除湿加温装置の正面図である。図5は、同除湿加温装置における図4のB−B線による断面図である。なお、先の実施の形態1と同一の構成要件については同一の符号を付し、ここでは、実施の形態1と相違する部分を主体に説明する。
【0063】
先の実施の形態1と大きく相違する点は、凝縮器13と蒸発器15のそれぞれのフィン20a、20bの形状を長方形とし、これに伴い、凝縮器13および蒸発器15における伝熱管3a、5aの引き回し配列を変更した点である。ここで、伝熱管3a、5aの引き回し配列の相違については、本発明の要旨と直接関係しないもので、説明を省略する。
【0064】
凝縮器13と蒸発器15のそれぞれのフィン20a、20bは、上述の如く長方形に形成され、一体化構成は、実施の形態1と同様に、近接配置したフィンチューブ型熱交換器を共通する端板(図示せず)で両者が離れないように一体化した構成とすることも可能であるが、ここでは、フィンを共用した構成として説明する。
【0065】
そして、凝縮器13と蒸発器15は、それぞれのフィン20a、20bが上下方向に延出するように配置され、それぞれの重力方向端(下端)21a、21bは、蒸発器15側の重力方向端21bが重力方向において凝縮器13側の重力方向端21aよりも水受け部7aに近くなるように突出し、その突出部にも伝熱管5aが引き回されている。
【0066】
さらに、蒸発器15を構成するフィン20bおよび伝熱管5aの表面には、親水性表面処理が施されており、また蒸発器15の重力方向に突出した部分には撥水性表面処理が施されている。
【0067】
この親水性表面処理と撥水性表面処理は、周知の如く熱交換器表面に、薄い親水性、あるいは撥水性の樹脂塗膜を形成するもので、周知の方法によって塗膜を形成することができる。
【0068】
以上のように構成された除湿加温装置1について、以下その動作を説明する。この場合、適宜送風手段(図示せず)によって風路ケース7内は、空気流入口8から空気流出口9に向けて気流が生じていることを前提として説明する。
【0069】
まず、ヒートポンプの動作として、圧縮機2が駆動するとガス冷媒は圧縮されて高温高圧のガス冷媒となり、凝縮器13に流入する。凝縮器13に流入したガス冷媒は空気と熱交換し、その結果、空気は加温され、冷媒は冷却されて凝縮し、高圧の液冷媒に相変化する。
【0070】
次に、膨張機構4で高圧の液冷媒は減圧され、低温低圧の液冷媒もしくは気液二相冷媒となる。この冷媒が蒸発器15に流入し、空気と熱交換して空気は冷却され、冷媒は加熱されて低圧のガス冷媒となり、再び前記圧縮機2へと循環する。
【0071】
一方、風路ケース7内においては、空気流入口8から流入した高湿の空気が、まず蒸発器15を通過し、冷却される。このとき、空気が露点温度以下に冷却され、蒸発器15(フィン20b)の表面に結露し、これによって空気が除湿される。
【0072】
次に、除湿された空気は凝縮器13を通過し、このときに加温され、高温低湿の空気となって、空気流出口9から除湿加温装置1の外へと出ていく。このときの加熱量は、蒸発器15での熱交換量と圧縮機2の入力の和であるため、空気流出口9から出ていく空気温度は、空気流入口8から流入する空気温度よりも高い状態にある。
【0073】
ここで、蒸発器15は、その表面に親水性処理を施しているため、結露水は速やかに液膜となり、スムーズに蒸発器15の重力方向端21bに集められ、水受け部7aに滴下し、ここから除湿加温装置1の外へ排水される。
【0074】
また、蒸発器15において、一部の結露水は、その表面張力により、フィン20bの間の重力方向端21bに保持され、風路ケース7内を流れる気流の風圧によって凝縮器3側へ移動しようとするが、特に、蒸発器15の重力方向端21bには撥水性表面処理が施されていることから気流により飛散し易い状態にある。
【0075】
このとき、蒸発器15の重力方向端21bが重力方向に突出しているため、気流により結露水が飛散しても、凝縮器13への付着を抑制することができ、結露水の凝縮器13への流入に伴う除湿性能、加温性能の損失が少ない除湿加温装置1を提供することができる。また、凝縮器13のフィン20aと蒸発器15のフィン20bを共有し、同一のフィンとしたことにより、凝縮器13と蒸発器15間の空間をなくすことができ、コンパクトな除湿加温装置1とすることができる。
【0076】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3における除湿加温装置を構成する凝縮器と蒸発器の図5相当の断面図である。なお、先の実施の形態2と同一の構成要件については同一の符号を付し、ここでは、実施の形態2と相違する部分を主体に説明する。
【0077】
先の実施の形態2と大きく相違する点は、凝縮器23と蒸発器25のそれぞれのフィン30a、30bを共用した構成を前提に、各フィン30a、30bの上下方向の寸法を同じとし、蒸発器25のフィン30bを伝熱管5aの一段分相当の寸法だけ重力方向(下方)にずらすことによって、蒸発器25の重力方向端31bを形成した点である。
【0078】
したがって、凝縮器23と蒸発器25の重力方向端31a、31bと反対側の端部は、蒸発器25側において段差が形成された形状となっている。
【0079】
このように、蒸発器25側のフィン30bを1段突出させて重力方向端31bを形成することにより、凝縮器23と蒸発器25のフィン30a、30bを共有した一体のフィン成形においては、その材料取りにおいて破線で示す如く、凝縮器23と蒸発器25の重力方向端31a、31bの反対側端が、次段の蒸発器25の重力方向端31bとして確保できる嵌合形状となり、段方向に順送しながらフィンを金型プレスで製作することができる。その結果、長方形の板から無駄なくフィン30a、30bを得ることができ、安価に除湿加温装置1を得ることができる。
【0080】
なお、フィン30a、30bを別体とするフィンチューブ型熱交換器を近接配置し、共通する端板(図示せず)にて凝縮器23と蒸発器25を一体化する構成の場合は、上述の段差部を、蒸発器25における重力方向端31bの収納空間に利用することができ、管理スペースの有効化が可能となる。
【0081】
(実施の形態4)
図7は、先の実施の形態1における除湿加温装置を搭載した衣類乾燥機の側断面図である。なお、先の実施の形態1と同じ構成要件については同一の符号を付して説明する。
【0082】
衣類乾燥機は、外郭を筺体40によって形成され、筐体40の内部には、外槽(本発明の収容部に相当)41が設置されている。外槽41の内部には、衣類(本発明の被乾燥物に相当)42を収容する円筒状で横軸型の回転槽(衣類収容部)43が回転可能に設けられており、駆動モータ44により回転駆動される。回転槽43の周壁には、多数の小孔(図示せず)が設けられており、また底壁には、給気口49aが設けられている。さらに、筐体40の前面には、衣類42を出し入れする開口部40aと、これを開閉する扉45が設けられている。
【0083】
また、外槽41および回転槽43の前面側にもそれぞれ同様の開口部41a、43aが設けられており、外槽41の開口部41aは、ベローズ41bによって筐体40の開口部40aと水密に連結されている。
【0084】
送風手段を構成する送風機46は、筐体40の上面40bと外槽41により形成される隅部空間(筐体40の上部)に位置するように、外槽41の外周面に設けられている。筐体40の背面40cの下部には、先の実施の形態1で説明した除湿加温装置1が設けられている。
【0085】
そして、送風機46の吸込み側には、外槽41内に開口した排気口47aを具備する第1の排気ダクト(本発明の排気ダクトに相当)47が接続され、また、送風機46の吐出側には、除湿加温装置1の空気流入口8に連通した第2の排気ダクト(本発明の排気ダクトに相当)48が接続されている。さらに、除湿加温装置1における空気流出口9には、外槽41内において排気口47aとは異なる位置(回転槽43の底壁)に設けられた給気口49aと連通する給気ダクト49が接続されている。
【0086】
次に、上記構成からなる衣類乾燥機の動作について説明する。
【0087】
乾燥動作は、ヒートポンプ装置6を作動し、これと並行して送風機46と駆動モータ44を運転した状態にある。
【0088】
かかる状態において、凝縮器3の放熱により加熱された温風は、風路ケース7の空気流出口9から給気ダクト49を通り、給気口49aから回転槽43内に送風される。一方、回転槽43は、駆動モータ44により回転駆動された状態にあり、衣類42は上下に撹拌されている。
【0089】
そして、回転槽43内に供給された温風は、衣類42の隙間を通るときに水分を奪い、湿った状態で外槽41の排気口47aを経て第1の排気ダクト47から送風機46を通り、第2の排気ダクト48から風路ケース7の空気流入口8へ流れ、風路ケース7内に配置した蒸発器5に至る。この湿った温風は、この蒸発器5を通過する際に顕熱と潜熱が奪われて除湿され、乾いた空気と結露水に分離される。
【0090】
乾いた空気は、続いて凝縮器3を通過する際に、前述の如くこの凝縮器3で再び加熱されて温風となり、前述と同様に再び外槽41、回転槽43内へと供給され、以下、前述の循環を繰り返す。
【0091】
また、蒸発器5で分離された結露水は、蒸発器5の下部に設けられた水受け部7aに流れ、排水口(図示せず)から機外へ排出される。
【0092】
かかる動作において、蒸発器5に付着した結露水は、先の実施の形態1で説明した如く、円滑に水受け部7aへ流下し、また蒸発器5の重力方向端11bにおける結露水の凝縮器3への流入は、重力方向端11a、11bの傾斜の位置関係によって抑止されるため、凝縮器3への付着に伴う再蒸発によって乾燥作用が阻害されることも抑制される。
【0093】
したがって、損失の少ない乾燥作用が得られ、乾燥時間の短縮化が期待できる。また、凝縮器3のフィン10aと蒸発器5のフィン10bを共有し、同一のフィンとした構成のため、凝縮器3と蒸発器5間の空間をなくすことができ、除湿加温装置1をコンパクト化でき、さらに、コンパクトな除湿加温装置1の搭載により、衣類乾燥機のコンパクト化がはかれるものである。
【0094】
本実施の形態では、実施の形態1の除湿加温装置を搭載したが、実施の形態2あるいは実施の形態3で説明した除湿加温装置1を搭載しても同様の効果が期待できる。
【0095】
また、凝縮器3と蒸発器5において、各フィンを10a、10bを共有する構成としたが、これらのフィン10a、10bが近接配置され、一体化された凝縮器3と蒸発器5の構成とした場合であっても、同様の作用効果が期待できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上のように、本発明にかかる除湿加温装置は、蒸発器と凝縮器のフィンを共有、あるいは近接配置し、フィンの重力方向端を凝縮器から蒸発器に向かって重力方向に傾斜させて凝縮器側への結露水の流入を抑制するもので、コンパクトな構成にして除湿性能、加温性能の低下を抑止することができ、除湿機、さらには洗濯機能を搭載した乾燥装置、あるいは穀物等を乾燥の対象とする乾燥室等、幅広い乾燥用途に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施の形態1における除湿加温装置の正面図
【図2】同除湿加温装置における図1のA−A線による断面図
【図3】同除湿加温装置における異なる形状のフィンを具備した凝縮器と蒸発器の図2相当の断面図
【図4】本発明の実施の形態2における除湿加温装置の正面図
【図5】同除湿加温装置における図4のB−B線による断面図
【図6】本発明の実施の形態3における除湿加温装置を構成する凝縮器と蒸発器の図5相当の断面図
【図7】本発明の実施の形態4における実施の形態1の除湿加温装置を搭載した衣類乾燥機の側断面図
【図8】従来の除湿加温装置の側面図
【図9】同除湿加温装置における図8のC−C線による断面図
【図10】従来の衣類乾燥機の側断面図
【符号の説明】
【0098】
1 除湿加温装置
2 圧縮機
3 凝縮器
3a 伝熱管
4 膨張機構
5 蒸発器
5a 伝熱管
6 ヒートポンプ装置
7 風路ケース(風回路)
8 空気流入口
9 空気流出口
10a 凝縮器側フィン
10b 蒸発器側フィン
11a 凝縮器側の重力方向端
11b 蒸発器側の重力方向端
13 凝縮器
15 蒸発器
20a 凝縮器側フィン
20b 蒸発器側フィン
21a 凝縮器側の重力方向端
21b 蒸発器側の重力方向端
23 凝縮器
25 蒸発器
30a 凝縮器側フィン
30b 蒸発器側フィン
31a 凝縮器側の重力方向端
31b 蒸発器側の重力方向端
40 筺体
41 外槽(収容部)
46 送風機
47 第1の排気ダクト(排気ダクト)
47a 排気口
48 第2の排気ダクト(排気ダクト)
49 給気ダクト
49a 給気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、相互間を空気が流動するフィンと管内を冷媒が流動する伝熱管とからなる凝縮器と、減圧機構と、相互間を空気が流動するフィンと管内を冷媒が流動する伝熱管とからなる蒸発器を冷媒が順次循環するように接続してヒートポンプ装置を構成し、さらに、前記蒸発器と前記凝縮器を、空気流入口と空気流出口を具備する風回路内に、前記蒸発器が風上となるように配置し、前記蒸発器と前記凝縮器のそれぞれのフィンを、共有化、もしくは近接配置した除湿加温装置であって、少なくとも前記蒸発器のフィンの重力方向端部の形状を、前記凝縮器から前記蒸発器に向かって重力方向に傾斜する形状とした除湿加温装置。
【請求項2】
圧縮機と、相互間を空気が流動するフィンと管内を冷媒が流動する伝熱管とからなる凝縮器と、減圧機構と、相互間を空気が流動するフィンと管内を冷媒が流動する伝熱管とからなる蒸発器を冷媒が順次循環するように接続してヒートポンプ装置を構成し、さらに、前記蒸発器と前記凝縮器を、空気流入口と空気流出口を具備する風回路内に、前記蒸発器が風上となるように配置し、前記蒸発器と前記凝縮器のそれぞれのフィンを、共有化、もしくは近接位置した除湿加温装置であって、前記蒸発器のフィンの下端部を、前記凝縮器フィンの下端部よりも重力方向に突出した除湿加温装置。
【請求項3】
前記凝縮器および蒸発器を、前記伝熱管が上下方向において複数段にわたって位置する構成とし、前記蒸発器における最下段の伝熱管を、前記凝縮器における最下段の伝熱管よりも少なくとも1段下げることにより、前記蒸発器のフィンの下端部を重力方向に突出させた請求項2に記載の除湿加温装置。
【請求項4】
少なくとも前記蒸発器のフィン部に、親水性の表面処理を施した請求項1から3のいずれか一項に記載の除湿加温装置。
【請求項5】
前記蒸発器のフィン部の少なくとも突出部に、撥水性処理を施した請求項2から4のいずれか一項に記載の除湿加温装置。
【請求項6】
被乾燥物を収容する収容部と、一端が前記収容部内に連通した給気ダクトと、一端が前記収容部内において前記給気ダクトと異なる位置に連通した排気ダクトを具備した乾燥装置であって、請求項1から5のいずれか一項に記載の除湿加温装置を、前記空気流入口が前記排気ダクトと連通し、前記空気流出口が前記給気ダクトと連通するように設けた乾燥装置。

【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図9】
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【図1】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−94169(P2010−94169A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265066(P2008−265066)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】