説明

陰圧下での低級オレフィン製造法

本発明は、4個以上の炭素原子を有する1種類よりも多くのオレフィンを含有する富オレフィン混合物の原料と、必要ならば、有機酸素含有化合物から低級オレフィンを調製する方法であって、本方法が、(a)反応圧−0.1MPa〜<0MPa、オレフィンを酵素的に分解する条件下で、少なくとも10のSiO/Alモル比を有する結晶性アルミノケイ酸塩触媒と供給原料を接触させ、低級オレフィン含有反応流出物(effluent)を入手する段階と、(b)段階(a)で得られた反応流出物から低級オレフィンを分離する段階を含む方法を開示するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(クロスリファレンス)
本出願は、2005年8月15日中国国家知識産権局に出願され、あらゆる目的で参照することによってそのまま本明細書に組入れられている特許出願第200510028810.9号の優先権を主張するものである。
【0002】
(技術分野)
本発明は、低級オレフィンを製造する方法、特に、C以上の高級オレフィンの接触分解によって低級オレフィンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
石油化学工業は、国家経済の重要なサポート産業であり、工業、農業、通信および国家防衛を含めた各種部門に大量の化学原料を供給し、よって、国家経済で相関的、主導的行動を取る工業部門の1つである。低級オレフィンは、現代石油化学工業を構成する最も重要な基本的原料の1つである。
【0004】
例えば、プロピレンは、主に、ポリプロピレン、クメン、オキソアルコール、アクリロニトリル、プロピレンオキサイド、アクリル酸、イソプロパノールなどの生産に使用され、この場合、ポリプロピレンは、世界中のプロピレン需要の半分以上を占める。現在、世界のプロピレンの67%は、水蒸気分解によってエチレン生産における副産物から誘導され、そのうちの30%は、製油所の接触分解装置(FCC)によってガソリンおよびディーゼル油の生産の副産物から誘導され、そのうちの少量(約3%)は、プロパンの脱水素反応とエチレン−ブチレン複分解反応から得られる。今後のプロピレン需要は、その供給よりも高い割合で増加する、と予測される。プロピレン需要に関する比較的高めの増加率と、従来の生産形態で示される「需要が供給を超える」状況を考慮すると、プロピレンの需要を補うためにプロピレンの収率を高める他の各種新技術を思いつくことが必要である。
【0005】
現在、世界には、C以上の高級オレフィンの原料がかなり大量に存在する。化学製品市場の変化および輸送コストを考慮すると、現場でのこれらの原料をディーププロセシング(工業製品への加工)に供することによって、これらの原料を使用するのが好ましい方法である。ある有望な方法は、C以上の高級オレフィンの低級オレフィンへの変換に関する。当該方法は、比較的過剰で、付加価値の低いC以上の高級オレフィンの原料を使用することができるだけでなく、汎用性のある各種低級オレフィン製品を得ることができる。
【0006】
参考書類CN1490287Aは、温度350〜500℃、圧力0.6〜1.0MPa、重量空間速度(WHSV)1〜10/時で、固定層反応器中でCまたはCオレフィン含有混合物を反応させることによってエチレンおよびプロピレンを製造する方法を開示した。当該方法は、各種タイプの触媒の変更と反応結果に焦点を絞られ、反応原料は、主に、C以上の高級オレフィンではなく、CおよびCオレフィンに向けられている。一方、当該反応に単一反応器構造が使用され、よって、触媒が望ましい安定性を維持することを保証し、望ましい収率の目標生成物を得るのは不可能であった。
【0007】
参考書類CN1274342A(米国特許第6,307,117B1号の対応特許)は、少なくとも1種類のC〜C12オレフィンを20%以上含有する線状炭化水素供給原料からの触媒変換によってエチレンおよびプロピレンを製造する方法であって、当該方法で使用されるゼオライト含有触媒中のゼオライトが、以下の要件を満たす方法を開示した。即ち、
前記ゼオライトは、プロトンを実質的に含有しない、
前記ゼオライトは、200から5,000までのSiO/Alモル比を有する、
前記ゼオライトは、周期律表IB群に属する金属から成る群から選択される少なくとも1種類の金属を含有する、
前記ゼオライトは、中間孔径ゼオライトである、
好ましいゼオライトは、ZSM−5ゼオライト科に属する。
前記反応は、温度400〜700℃、圧力1〜10気圧、WHSV 1〜1,000/時で実施された。しかし、当該反応において、同様に、単一反応器構造が使用され、それによって、比較的低収率のエチレンおよびプロピレンを生じ、プロピレンの最高収率がわずか25.19%であった。
【0008】
Equistar Chemicals,L.P.へのWO 00/26163の参考書類は、少なくとも60重量%Cおよび/またはCオレフィンを含有する供給原料からの中間孔径を有するゼオライト触媒によるプロピレンおよびエチレンを製造する方法を開示した。当該発明に有用なゼオライトは、3.5Åより大きい孔径(pore diameter)と14から28までの範囲内の孔径指数(pore size index)を有するZSM−23およびAlPO−11などの、一次元の溝を有するゼオライト;3.5Åより大きい孔径(pore diameter)と14〜28の範囲内の孔径指数(pore size index)を有する一次溝と、20よりも低い孔径指数(pore size index)を有する二次溝を含むZSM−57およびAlPO−18など相互連結溝を有するゼオライトを含む。触媒は、Na型、H型などであることができ、その場合、PdまたはPtなどの微量の酸化金属が添加され、触媒再生中のコークス除去の促進することができた。当該方法は、総じて、固定層反応器システムによって使用され、反応は、温度200〜750℃、圧力0.05〜1MPa、WHSV 0.5〜1,000/時で実施された。一方、当該参考書類は、具体的な触媒調製法と反応データを開示しなかった。一方、当該反応では、単一反応器構造も使用され、非理想的収率のエチレンおよびプロピレンと当該触媒の低安定性を含む結果を示した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
(発明の内容)
本発明において解決されるべき技術的問題は、高反応圧、高反応温度、目標生成物である低級オレフィンの低い収率および選択性、触媒の低安定性および短い寿命、限られた適切な供給原料を含めた先行書類に提示された欠点を克服することであり、本発明は、低級オレフィンを製造する新規方法を提案する。本方法は、より低い反応圧および温度、目標生成物である低級オレフィンに関する高収率および良好な選択性、ならびに、触媒の高安定性および長寿命を特徴とし、各種の供給原料源に適用されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の問題を解決するために、本方法の技術的解決法は、以下のとおりである:
低級オレフィンの製造法は、オレフィンを接触分解する条件下で実施され、供給原料としてC以上の高級オレフィン1種類以上を含有する富オレフィン混合物を用い、
(a)少なくとも10のSiO/Alモル比を有する結晶性アルミノケイ酸塩触媒と前記供給原料を接触させ、それによって、低級オレフィン含有反応流出物(effluent)を生成する段階と、
(b)前記反応流出物から低級オレフィンを分離する段階の
2段階を含み、
反応圧(ゲージ圧、以下同)は、−0.1MPaから<0MPaまでである。
【0011】
本明細書で使用される用語「低級オレフィン」は、炭素原子2〜6個を有するオレフィンを指す。
【0012】
上記の技術的解決法において供給原料として使用される、C以上の高級オレフィン1種類以上を含有する富オレフィン混合物は、好ましくは、製油所の接触分解装置から、または、エチレン工場の水蒸気分解装置から誘導される、C以上の高級オレフィンを含有する富オレフィン混合物分画、あるいは、アルファ−オレフィンの製造において同時製造される、または、OTO(含酸素物からオレフィン)、例えば、MTP(メタノールからプロピレン)などのMTO(メタノールからオレフィン)において副産物として生じるC以上の高級オレフィンを含有する富オレフィン混合物成分である。当該富オレフィン供給原料中のC以上の高級オレフィンの量は、10重量%から90重量%までの範囲である。当該富オレフィン混合物は、好ましくは、C〜C12線状オレフィン含有混合物、さらに好ましくは、C〜C線状オレフィン含有混合物である。
【0013】
前記反応における前記反応流出液は、順に、エチレン分離塔およびプロピレン分離塔を通過し、それによって、エチレンおよびプロピレンなどの低級オレフィン生成物を得る。かかる低級オレフィン分離法は、当業者に周知である。
【0014】
本発明のある好ましい実施形態では、有機含酸素化合物が、富オレフィン混合物に添加され、当該富オレフィン混合物中に存在する当該有機含酸素化合物対オレフィンの重量比は、0.01〜10:1である。この実施形態で使用される有機含酸素化合物は、メタノール、ジメチルエーテル、エタノール、エチルエーテル、または、いずれかの比率のそれらの混合物である。好ましくは、当該有機含酸素化合物は、メタノール、ジメチルエーテル、または、いずれかの比率のメタノールとジメチルエーテルの混合物である。本発明のある好ましい実施形態は、炭化水素供給原料とともに、適量の有機含酸素化合物の反応器への添加である。一方、例えば、含酸素化合物としてのメタノールまたはジメチルエーテルは、目標生成物の収率の増加に有利な、エチレンおよびプロピレンを形成するための反応条件下で脱水され、一方、生成される水は、C以上の高級オレフィンの分解に希釈ガスとして用いられることができ、さらに重要な点として、メタノールまたはジメチルエーテルは、比較的低めの温度での接触分解によって、炭化水素の炭素−炭素結合を活性化できる活性中間体を生じ、それによって反応温度を低下させ、当該触媒の酸性点での炭素沈着を減少させる。有機含酸素化合物の脱水−放熱による分解反応に必要とされる熱吸収を提供し、同時に、希釈ガスを提供することを目的に、一定量のメタノールまたはジメチルエーテルまたはそれらの混合物が、各反応器の出口からの流出物に補充され、その結果、上記の2種類の反応の有効な組合せによって、中間処理と反応中のエネルギーが有効に利用される。
【0015】
本発明では、反応圧は、好ましくは−0.08〜<−0.01MPaである。反応温度は、好ましくは400〜580℃、さらに好ましくは440〜530℃である。重量空間速度(WHSV、触媒の単位重量当りの1時間に送られる供給原料重量)は、好ましくは0.1〜100/時、さらに好ましくは1〜50/時である。本発明で使用される結晶性アルミノケイ酸塩は、好ましくは、ZSMタイプ分子ふるい、ベータ分子ふるいまたはモルデナイト分子ふるいから選択される。ZSMタイプ分子ふるいは、さらに好ましくは、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−23またはZSM−42から選択され、最も好ましくはZSM−5分子ふるいから選択される。本発明で使用される分子ふるいは、好ましくは10〜3,000、さらに好ましくは50〜1000、最も好ましくは50〜500のSiO/Alモル比を有する。
【0016】
陰圧下(負圧下)で実施する本方法では、反応器は、好ましくは軸方向固定層反応器、径方向固定層反応器または移動層反応器から、さらに好ましくは軸方向固定層反応器または径方向固定層反応器から選択される。
【0017】
陰圧下での実施によって、本方法は、オレフィンのポリ反応傾向、重合傾向を、または、縮合傾向さえも熱力学的に有効に抑制し、その結果、オレフィン分子数を減少させ、代わりに、供給原料中のオレフィンサイズを減少させる傾向を良好に促進し、それによって、目標生成物としてより低級のオレフィンを生成することができる。一方、オレフィンの接触分解中、反応物質と目標生成物の両方のオレフィンは、水素転移反応を受け、それによって、対応するアルカンを生成するが、これが、目標生成物の選択性と収率の減少の原因となる一つの主な理由である。当該水素転移反応は、一種の二分子反応で、反応圧の低下も、オレフィンの水素転移反応を顕著に抑制する。特に注目すべきは、水素転移反応の抑制が、コークス前駆物質の生成の低減と、触媒の安定性および再生期間の長期化に大きな役割を果たす点である。さらに、陰圧実施条件は、有意に反応温度も低下させ、それによって、より低めの実施温度条件を達成し、低級オレフィンのより高い選択性および収率を得ることができる。関与する温度は、触媒の活性期間に影響する主要因子でもある。また、温度が低いほど、触媒活性の安定性が向上し、当該触媒の作用寿命が延びる。
【0018】
要するに、陰圧下での実施は、前記反応を熱力学的に促進し、分子サイズを減少させ、一方で、反応温度を低下させ、これが、オレフィンの水素転移反応を有効に抑制する。これは、最終的に、コークスの沈着による触媒の失活を著しく鈍化させ、それによって、触媒活性の安定期間を引き延ばし、目標生成物のより高い選択性と収率を得る。それは、固定層接触分解による低級オレフィンの収率増加法にとって非常に重要である。
【0019】
本発明の技術的解決法は、反応圧−0.1〜<0MPa、反応温度400℃〜580℃、WHSV 0.1〜100/時で、触媒活性の安定期間を延長し、低級オレフィンのより高い選択性と収率を得るという好ましい技術的効果を達成する。
【0020】
本明細書では具体的に説明されないが、接触分解による低級オレフィンの本製造法に関与することが可能な他の実施条件について、従来の低級オレフィン接触分解法が参照されることができる。
【0021】
他で規定されない限り、本明細書で使用されるパーセンテージと比率は、すべて、重量換算である。
【0022】
他で特定されない限り、本発明の結晶性アルミノ珪酸塩のSiO/Alモル比は、原子換算で算出される。
【0023】
言及されている全出版物は、あらゆる目的で、参照することによってそのまま本明細書に組入れられている。
【0024】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態をさらに詳細に説明し、実証するものである。全実施例は、単なる例示であり、本発明を制約するものであるとは解釈されない。
【0025】
以下の実施例では、関与する各混合物中の各種成分量は、水素炎イオン化検出器と長さ50メートルの直径0.53mm PLOT Alキャピラリークロマトグラフカラムを備えたHP−6890ガスクロマトグラフ(Agilent Technologies,Inc.,米国)によって分離、検出される。
【実施例】
【0026】
(実施例1〜4)
陰圧下、各種WHSV条件および1−ブテン供給原料による接触分解反応に関する実験
モル比200 SiO:0.5 Al:60 n−ブチルアミン:17 OH:200 NaCl:6300 HOの原料が、室温下で15時間攪拌混合され、SiO/Alモル比200を考慮して、ケイ素、アルミニウム、テンプレート(n−ブチルアミン)および水を含有するスラリーが調合された。その後、当該スラリーは、140℃、50時間で結晶化された後、結晶化溶液は蒸留水で洗浄され、大気圧下、120℃で12時間乾燥され、次に、大気圧下、580℃で8時間焼成され、ZSM−5分子ふるいが得られた。50gのZSM−5分子量が、87gの40%(重量)シリカゲルと混合され、押出され、短冊状切片を入手した後、大気圧下、130℃で12時間乾燥され、次に、大気圧下、430℃で6時間焼成され、ZSM−5タイプ触媒が得られた。
【0027】
5gの上記ZSM−5タイプ触媒が反応器(直径18mm軸方向固定層反応器、他に特定されない限り、以下の実施例も同じ)の恒温ゾーンに負荷され、反応前にN雰囲気中、480℃で活性化された。次に、純1−ブテン供給原料(純度99.9%)が、投入され、触媒との接触によって反応が実施された。反応温度は500℃で、反応圧は−0.042MPaであった。陰圧は、真空ポンプの電源を入れ、所望の陰圧が達成されるまで周波数変換器を調整することによって達成された。生成物は、各種反応条件下での2時間の反応(以下の実施例も同じ)後にサンプル採取することによって分析された。反応結果は、表1に示された。
【表1】

【0028】
(実施例5〜7)
陰圧、各種温度条件下で、混合C8モノオレフィン(Lanzhou Refinery of PetroChina Company Limited(Lanzhou city,中国)から入手され、オクテンの重量%は約80.5%、オクタンの重量%は19.5%であった)を供給原料とする接触分解反応実験
上記実施例1で調製されたとおりの(ただし、SiO/Alモル比800)5gの上記ZSM−5タイプ触媒が反応器(直径18mm軸方向固定層反応器、他に規定されない限り、以下の実施例でも同じ)の恒温ゾーンに負荷され、反応の3時間前にN雰囲気中、480℃で活性化された。次に、Cモノオレフィン供給原料(純度99.9%)が、投入され、触媒との接触によって反応が実施された。真空ポンプの電源を入れ、所望の陰圧が達成されるまで周波数変換器を調整することによって、陰圧が達成された。各種条件下での生成物の収率および選択性は、表2に示された。
【表2】

【0029】
(実施例8)
この実施例における各種段階および条件は、分子ふるいがSiO/Alモル比58を有するZSM−5分子ふるい触媒、反応温度が410℃、WHSVが0.52/時および反応圧が−0.09MPaであった点を除いて、実施例1の場合と同一であった。陰圧は、真空ポンプの電源を入れ、所望の陰圧が達成されるまで周波数変換器を調整することによって達成された。この実施例で使用された供給原料は、Shanghai Petrochemical Refinery of SINOPEC(Shanghai city(上海),中国)においてFCC装置から得られた混合C供給原料であり、その成分重量%は表3に示された。反応結果は、次のとおりであった。即ち、エチレンの収率は4.31%、プロピレンの収率は25.76%であった。
【表3】

【0030】
(実施例9)
この実施例における各種段階および条件は、分子ふるいがSiO/Alモル比950を有するZSM−5分子ふるい触媒、反応温度が530℃、WHSVが47/時および反応圧が−0.01MPaであった点を除いて、実施例1の場合と同一であった。陰圧は、真空ポンプの電源を入れ、所望の陰圧が達成されるまで周波数変換器を調整することによって達成された。この実施例で使用された供給原料は、上記FCC装置から得られた混合C供給原料であり、その成分重量%は表3に示された。反応結果は、次のとおりであった。即ち、エチレンの収率は5.55%、プロピレンの収率は26.83%であった。
【0031】
(実施例10)
この実施例における各種段階および条件は、分子ふるいがSiO/Alモル比115を有するZSM−5分子ふるい触媒、反応温度が500℃、WHSVが3/時および反応圧が−0.053MPaであった点を除いて、実施例1の場合と同一であった。陰圧は、真空ポンプの電源を入れ、所望の陰圧が達成されるまで周波数変換器を調整することによって達成された。この実施例で使用された供給原料は、上記FCC装置から得られた混合C供給原料であり、その成分重量%は表3に示された。反応結果は、次のとおりであった。即ち、エチレンの収率は7.34%、プロピレンの収率は30.51%であった。
【0032】
(実施例11)
この実施例における各種段階および条件は、分子ふるいがSiO/Alモル比115を有するZSM−5分子ふるい触媒、反応温度が500℃、WHSVが3/時および反応圧が−0.053MPaであった点を除いて、実施例1の場合と同一であった。陰圧は、真空ポンプの電源を入れ、所望の陰圧が達成されるまで周波数変換器を調整することによって達成された。この実施例で使用された供給原料は、上記FCC装置から得られた混合C供給原料であり、その成分重量%は表3に示された。同時に、混合C供給原料とともにメタノールが、当該混合C供給原料対メタノール4:1のオレフィン重量比で添加された。反応結果は、次のとおりであった。即ち、エチレンの収率は7.89%、プロピレンの収率は33.78%であった。
【0033】
(実施例12)
この実施例における各種段階および条件は、分子ふるいがSiO/Alモル比600を有するZSM−11分子ふるい触媒、反応温度が510℃、WHSVが18/時および反応圧が−0.02MPaであった点を除いて、実施例1の場合と同一であった。陰圧は、真空ポンプの電源を入れ、所望の陰圧が達成されるまで周波数変換器を調整することによって達成された。この実施例で使用された供給原料は、上記FCC装置から得られた混合C供給原料であり、その成分重量%は表3に示された。反応結果は、次のとおりであった。即ち、エチレンの収率は10.82%、プロピレンの収率は36.51%であった。
【0034】
(実施例13)
この実施例における各種段階および条件は、分子ふるいがSiO/Alモル比600を有するZSM−11分子ふるい触媒、反応温度が510℃、WHSVが18/時および反応圧が−0.02MPaであった点を除いて、実施例1の場合と同一であった。陰圧は、真空ポンプの電源を入れ、所望の陰圧が達成されるまで周波数変換器を調整することによって達成された。この実施例で使用された供給原料は、SINOPEC SHANGHAI Petrochemical Company Limited(上海市、中国)のエチレン工場の水蒸気分解装置から得られた混合C供給原料(当該原料中、n−ペンテンの重量は44.1%、n−ペンタンの重量は15.28%、イソペンタンの重量は40.62%であった)であった。反応結果は、次のとおりであった。即ち、エチレンの収率は4.06%、プロピレンの収率は25.76%、ブテンの収率は30%であった。
【0035】
(実施例14)
この実施例における各種段階および条件は、分子ふるいがSiO/Alモル比210を有するZSM−42分子ふるい触媒、反応温度が530℃、WHSVが30/時および反応圧が−0.062MPaであった点を除いて、実施例1の場合と同一であった。陰圧は、真空ポンプの電源を入れ、所望の陰圧が達成されるまで周波数変換器を調整することによって達成された。この実施例で使用された供給原料は、純1−ブテン(純度99.9%)であった。反応結果は、次のとおりであった。即ち、エチレンの収率は6.34%、プロピレンの収率は32.58%であった。
【0036】
(実施例15)
この実施例における各種段階および条件は、分子ふるいがSiO/Alモル比800を有するベータ分子ふるい触媒、反応温度が410℃、WHSVが50/時および反応圧が−0.023MPaであった点を除いて、実施例1の場合と同一であった。陰圧は、真空ポンプの電源を入れ、所望の陰圧が達成されるまで周波数変換器を調整することによって達成された。この実施例で使用された供給原料は、上記FCC装置から得られた混合C供給原料であり、その成分重量%は表3に示された。反応結果は、次のとおりであった。即ち、エチレンの収率は3.78%、プロピレンの収率は23.18%であった。
【0037】
(実施例16)
この実施例における各種段階および条件は、分子ふるいがSiO/Alモル比50を有するモルデナイト分子ふるい触媒、反応温度が580℃、WHSVが0.5/時および反応圧が−0.042MPaであった点を除いて、実施例1の場合と同一であった。陰圧は、真空ポンプの電源を入れ、所望の陰圧が達成されるまで周波数変換器を調整することによって達成された。この実施例で使用された供給原料は、上記FCC装置から得られた混合C供給原料であり、その成分重量%は表3に示された。反応結果は、次のとおりであった。即ち、エチレンの収率は8.45%、プロピレンの収率は31.36%であった。
【0038】
(実施例17)
〜Cモノオレフィンである接触分解用供給原料による触媒の分解性能に関する実験
この実施例における各種段階および条件は、分子ふるいがSiO/Alモル比180を有するZSM−5分子ふるい触媒、供給原料が、Petrochemical Technology SINOPEC(Shanghai city(上海市)、China(中国))のShanghai Research Institute(上海研究所)におけるメタノール分解(MOT)によるオレフィン製造の副産物から得られるC〜Cモノオレフィンである点を除いて、実施例1の場合と同一であり、当該供給原料中のCおよびCオレフィンの量は、それぞれ、約60%および約25%で、残りの約15%はCよりも高級のオレフィンであった。
【0039】
5gの上記ZSM−5タイプ触媒が、直径18mm軸方向固定層反応器の恒温ゾーンに負荷され、反応の3時間前にN雰囲気中、480℃で活性化された。次に、上記供給原料が、投入され、前記触媒との接触によって反応が実施された。反応温度は530℃、反応圧は−0.068MPaであった。陰圧は、真空ポンプの電源を入れ、所望の陰圧が達成されるまで周波数変換器を調整することによって達成された。反応結果は、次のとおりであった。即ち、エチレンの収率は8.34%、プロピレンの収率は33.95%、全オレフィンの変換率は72%であった。
【0040】
(実施例18)
この実施例における各種段階および条件は、実施例1の場合と同一であり、ZSM−5分子ふるい触媒を生成した。5gの上記ZSM−5タイプ触媒が、直径18mm軸方向固定層反応器の恒温ゾーンに負荷され、反応の3時間前にN雰囲気中、480℃で活性化された。次に、上記供給原料が投入され、当該触媒との接触によって反応が実施された。この実施例で使用された供給原料は、上記FCC装置から得られた混合C供給原料であり、その成分重量%は表3に示された。反応温度は560℃、WHSVは8/時、反応圧は−0.028MPaであった。陰圧は、真空ポンプの電源を入れ、所望の陰圧が達成されるまで周波数変換器を調整することによって達成された。各種時点の前記触媒の反応活性は、表4に示された。
【表4】

【0041】
(比較実施例1)
この実施例の各種段階、条件、触媒および供給原料は、反応圧が常圧である点を除いて、実施例18の場合と同一で、実施例18のとおりに調製されたZSM−5触媒を検討した。各種時点の当該触媒の反応活性が、表5に示された。
【表5】

【0042】
明らかに、メタノールを添加する本技術的解決法は、同様に、触媒の活性期間を顕著に延長でき、これは、明らかな技術的長所を有した。
【0043】
(比較実施例2〜5)
これらの実施例における各種段階、条件、触媒および供給原料は、反応圧が常圧である点を除いて、実施例1の場合と同一で、実施例1のとおりに調製されたZSM−5触媒を検討した。各種時点の当該触媒の反応活性が、表6に示された。
【表6】

【0044】
(比較実施例6)
この実施例における各種段階および条件は、反応圧が常圧である点を除いて、実施例1の場合と同一であった。反応結果は、次のとおりであった。即ち、エチレンの収率は3.73%、プロピレンの収率は22.89%、ブテンの収率は26.3%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低級オレフィンの製造法であって、オレフィンを接触分解する条件下で実施され、供給原料としてC以上の高級オレフィン1種類以上を含有する富オレフィン混合物を用い、
(a)少なくとも10のSiO/Alモル比を有する結晶性アルミノケイ酸塩触媒と前記供給原料を接触させ、それによって、低級オレフィン含有反応流出物(effluent)を生成する段階と、
(b)前記反応流出物から低級オレフィンを分離する段階の
2段階を含み、
反応圧(ゲージ圧、以下同)が、−0.1MPaから<0MPaまでである低級オレフィンの製造法。
【請求項2】
前記富オレフィン混合物が、製油所の接触分解装置から、または、エチレン工場の水蒸気分解装置から誘導される、C以上の高級オレフィンを含有する富オレフィン混合物留分、あるいは、アルファ−オレフィンの製造において同時製造される、または、含酸素物質からオレフィンへの変換で副産物として生じるC以上の高級オレフィンを含有する富オレフィン混合物成分であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記富オレフィン混合物が、C〜C12線状オレフィン含有混合物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記富オレフィン混合物が、C〜C線状オレフィン含有混合物であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記反応圧が−0.08MPaから<−0.01MPaまでであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記反応温度が400〜580℃、WHSVが0.1〜100/時であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記反応温度が440〜530℃、WHSVが1〜50/時であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記結晶性アルミノケイ酸塩が、ZSMタイプ分子ふるい、ベータ分子ふるいまたはモルデナイト分子ふるいから選択され、前記分子ふるいが10〜3,000のSiO/Alモル比を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ZSMタイプ分子ふるいが、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−23またはZSM−42から選択され、前記分子ふるいが、50〜1,000のSiO/Alモル比を有することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ZSM分子ふるいが、50〜500のSiO/Alモル比を有するZSM−5分子ふるいから選択されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
有機含酸素化合物が、前記富オレフィン混合物に添加され、前記富オレフィン混合物中に存在する有機含酸素化合物対オレフィンの重量比が、0.01〜10:1であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記有機含酸素化合物が、メタノール、ジメチルエーテル、または、メタノールとジメチルエーテルの混合物であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記のオレフィン接触分解のための反応器が、軸方向固定層反応器、径方向固定層反応器および移動層反応器から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2009−505983(P2009−505983A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526358(P2008−526358)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【国際出願番号】PCT/CN2006/002013
【国際公開番号】WO2007/019787
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(508013490)チャイナ ペトロリウム アンド ケミカル コーポレイション (3)
【出願人】(508047037)シャンハイ リサーチ インスティテュート オブ ペトロケミカル テクノロジー シノペック (1)
【Fターム(参考)】