説明

隅肉自動溶接装置及び隅肉自動溶接方法

【課題】特定の環境に限らず隅肉溶接範囲の始端や終端を確実に検出することができるようにすること。
【解決手段】板材A上を走行する台車3を有する溶接装置1に、板材Aと隅肉溶接する板材B上を転動するガイドローラ3h,3iの近傍に近接センサ3j、3kを設ける。また、台車3が走行する板材Aを検出する近接センサ3p,3qを台車3の側面3l,3mにそれぞれ設ける。各近接センサ3j,3k,3p,3qに、磁性体製の板材を検出する渦電流式センサを用いる。近接センサ3p,3qのどちらかが板材Aを検出しなくなるか、あるいは、近接センサ3j,3kのどちらかが板材Bを検出しなくなると、溶接トーチ5による溶接を停止する。但し、近接センサ3p,3qが共に板材Aを検出している間は、台車3の走行を継続させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走台車上に溶接トーチを搭載して隅肉の自動溶接を行う隅肉自動溶接装置及び隅肉自動溶接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自走台車に搭載した溶接トーチにより自動溶接を行う自動溶接装置として、従来から、溶接範囲の始端や終端を検出するものが知られている。具体的には、台車の進路上に存在する立板を検出して溶接範囲の終端と判断し溶接動作を停止するものや(例えば、特許文献1)、溶接する立板の開口部の始端及び終端を検出して溶接不要時に溶接動作を中断させるものがある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−216566号公報
【特許文献2】特開2007−190589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術のうち、台車の進路上に存在する立板を検出する技術では、そのような立板が存在しない場合に、溶接範囲の終端を検出することができない。また、溶接する立板の開口部の始端及び終端を検出する技術では、開口部の始端を検出した場合に、その開口部の終端を検出するまでの間は、検出したのが開口部の始端であるのか立板の終端であるのかを特定することができない。したがって、上述した従来技術は限定された環境においてしか所期の効果を発揮することができない。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、特定の環境に限らず隅肉溶接範囲の始端や終端を確実に検出することができる隅肉自動溶接装置と、この隅肉自動溶接装置を用いて行うのに好適な隅肉自動溶接方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明の隅肉自動溶接装置は、
2つの継手形成板材のうち一方の板材上を自走する台車に搭載された溶接トーチにより前記2つの継手形成板材の溶接線部を隅肉溶接する隅肉自動溶接装置であって、
前記台車の前記一方の板材上における走行時に該一方の板材と対向する箇所に配置され、該箇所に対向する板材を非接触で検出する第1近接センサと、
前記台車の前記一方の板材上における走行時に前記2つの継手形成板材のうち他方の板材に対向する箇所に配置され、該対向する箇所の板材を非接触で検出する第2近接センサと、
前記第1近接センサによる板材の検出状態から非検出状態への変化に連動して前記台車の走行を停止させると共に、前記第1及び第2近接センサのうち少なくとも一方のセンサによる板材の非検出領域において、前記2つの継手形成板材の溶接線部の溶接を停止させる制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載した本発明の隅肉自動溶接装置によれば、台車が走行する一方の板材の有無を検出する第1近接センサの検出結果に応じて台車の走行が制御され、隅肉溶接の対象である2つの継手形成板材の有無をそれぞれ検出する第1及び第2近接センサの検出結果に応じて、両継手形成板材の溶接線部の溶接が制御される。したがって、台車の走行と溶接の開始及び停止とが個別に制御されることになる。このため、特定の環境に限らず隅肉溶接範囲の始端や終端を確実に検出することができる。
【0008】
また、請求項2に記載した本発明の隅肉自動溶接装置は、請求項1に記載した本発明の隅肉自動溶接装置において、前記台車が、磁性体で構成された前記一方の板材に磁力により吸着するための磁石を有しており、前記第1近接センサが自身と対向する板材を電磁誘導により検出する渦電流式センサであることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載した本発明の隅肉自動溶接装置によれば、請求項1に記載した本発明の隅肉自動溶接装置において、台車が一方の板材に永久磁石の磁力により吸着した状態で走行することから、立向溶接を行う環境においても、隅肉溶接範囲の始端や終端を確実に検出することができる。
【0010】
さらに、請求項3に記載した本発明の隅肉自動溶接装置は、請求項1又は2に記載した本発明の隅肉自動溶接装置において、前記第2近接センサが、自身と対向する磁性体で構成された板材を電磁誘導により検出する渦電流式センサであることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載した本発明の隅肉自動溶接装置によれば、請求項1又は2に記載した本発明の隅肉自動溶接装置において、2つの継手形成板材のうち台車が走行する一方の板材ではない他方の板材が磁性体で構成されている場合に、磁性体の板材の有無を第2近接センサで検出することにより、溶接の開始及び停止を好適に制御することができる。
【0012】
また、上記目的を達成するため、請求項4に記載した本発明の隅肉自動溶接方法は、
2つの継手形成板材のうち一方の板材上を自走して前記2つの継手形成板材の溶接線部を隅肉溶接する隅肉自動溶接装置を用いた隅肉自動溶接方法であって、
前記隅肉自動溶接装置として請求項3記載の隅肉自動溶接装置を用い、
前記隅肉自動溶接装置の台車の走行方向における前記2つの継手形成板材の終端に、前記走行方向における前記隅肉自動溶接装置の台車の前端と溶接トーチとの間隔以上の寸法を有すると共に、溶接後の前記2つの継手形成板材の溶接継手形成部分に対応する断面形状を有する走行補助板材を、前記2つの継手形成板材の前記溶接継手形成部分の端面に前記走行方向において連続するように当接させ、
前記走行補助板材の、少なくとも、前記2つの継手形成板材のうち磁性体で構成された他方の板材に連続する部分を、非磁性体で構成し、
前記台車の前記一方の板材上における走行時に該一方の板材と対向する箇所に配置され、該箇所に対向する板材を非接触で検出する、前記隅肉自動溶接装置の第1近接センサの状態が、対向する箇所の板材の検出状態から非検出状態に変化するのに連動して、前記台車の走行を停止させ、
前記台車の前記一方の板材上における走行時に前記2つの継手形成板材のうち磁性体で構成された他方の板材に対向する箇所に配置され、該箇所に対向する磁性体で構成された板材を非接触で検出する、前記隅肉自動溶接装置の渦電流式センサで構成された第2近接センサが、対向する箇所の磁性体で構成された板材を検出しない領域において、前記2つの継手形成板材の溶接線部の溶接を停止させるようにした、
ことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載した本発明の隅肉自動溶接方法によれば、台車が走行する一方の板材の有無を検出する第1近接センサの検出結果に応じて台車の走行が制御され、隅肉溶接の対象である2つの継手形成板材の有無をそれぞれ検出する第1及び第2近接センサの検出結果に応じて、両継手形成板材の溶接線部の溶接が制御される。したがって、台車の走行と溶接の開始及び停止とが個別に制御されることになる。
【0014】
また、両継手形成板材のうち一方の板材の終端まで台車が走行しても、走行補助板材が第1近接センサで検出される間は、台車が走行方向に引き続き走行できることになる。このため、台車が一方の板材の終端まで走行しても、両継手形成板材の溶接線部の溶接が両継手形成板材の終端まで行えない位置関係に溶接トーチが配置されている場合であっても、両継手形成板材の終端まで溶接線部の溶接が行われるようになる。よって、両継手形成板材の溶接線部の全体に亘って溶接トーチを移動させて、溶接線部の全体を確実に溶接することができる。
【0015】
さらに、上記目的を達成するため、請求項5に記載した本発明の隅肉自動溶接方法は、
2つの継手形成板材のうち一方の板材上を隅肉自動溶接装置により自走させ、該隅肉自動溶接装置の走行方向に間隔をおいて一直線状に複数配置された、前記2つの継手形成板材のうち磁性体で構成された他方の板材と、前記一方の板材との溶接線部を、隅肉溶接する隅肉自動溶接方法であって、
前記隅肉自動溶接装置として請求項3記載の隅肉自動溶接装置を用い、
前記走行方向において隣り合う2つの前記他方の板材の隙間を、非磁性体で構成された着脱自在な補助板材により埋めた状態で、前記一方の板材上を前記隅肉自動溶接装置の台車に自走させ、
前記台車の前記一方の板材上における走行時に該一方の板材と対向する箇所に配置され、該箇所に対向する板材を非接触で検出する、前記隅肉自動溶接装置の第1近接センサの状態が、対向する箇所の板材の検出状態から非検出状態に変化するのに連動して、前記台車の走行を停止させ、
前記台車の前記一方の板材上における走行時に前記他方の板材に対向する箇所に配置され、該箇所に対向する磁性体で構成された板材を非接触で検出する、前記隅肉自動溶接装置の渦電流式センサで構成された第2近接センサが、対向する箇所の磁性体で構成された板材を検出しない領域において、前記2つの継手形成板材の溶接線部の溶接を停止させるようにした、
ことを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載した本発明の隅肉自動溶接方法によれば、台車が走行する一方の板材の有無を検出する第1近接センサの検出結果に応じて台車の走行が制御され、隅肉溶接の対象である2つの継手形成板材の有無をそれぞれ検出する第1及び第2近接センサの検出結果に応じて、両継手形成板材の溶接線部の溶接が制御される。したがって、台車の走行と溶接の開始及び停止とが個別に制御されることになる。
【0017】
そのため、2つの継手形成板材のうち一方の板材上を走行する隅肉自動溶接装置の走行方向において、複数の他方の板材が間隔をおいて一直線状に配置されている場合であっても、渦電流式センサによる第2近接センサが磁性体で構成された他方の板材を検出している間は、溶接トーチによる両継手形成板材の溶接線部の溶接が行われることになる。これに対して、他方の板材が存在せずその代わりに非磁性体で構成された補助板材が存在する部分では、第2近接センサが他方の板材を検出せず、溶接トーチによる両継手形成板材の溶接線部の溶接が停止されることになる。
【0018】
これにより、他方の板材が間隔をおいて複数配置されている場合であっても、一連の台車の移動中に両継手形成板材の溶接線部を漏れなく好適に溶接することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の隅肉自動溶接装置及び隅肉自動溶接方法によれば、特定の環境に限らず隅肉溶接範囲の始端や終端を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係る隅肉自動溶接装置の概略構成を示す側面図、(b)は同平面図である。
【図2】図1の制御ユニットの電気的な概略構成を示すブロック図である。
【図3】図2の制御ユニットのCPUがROMに格納されたプログラムにしたがって行う制御を示すフローチャートである。
【図4】図1の隅肉自動溶接装置を用いて溶接を行う対象の一例を示す船体の要部拡大断面図である。
【図5】図4のトランス部材と縦通隔壁との交差部を拡大して示す斜視図である。
【図6】図5の縦通隔壁とフラットバーとの交差部を隅肉溶接した場合の仕上がり例を示す説明図である。
【図7】図1の隅肉自動溶接装置を用いた隅肉溶接に走行補助板材を利用した場合を示す説明図である。
【図8】図5の縦通隔壁にフラットバーが間隔をおいて複数溶接される場合の例を示す説明図である。
【図9】図1の隅肉自動溶接装置を用いて図8の縦通隔壁に対するフラットバーの溶接を行う際に補助板材を利用した場合を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は本発明の一実施形態に係る隅肉自動溶接装置の概略構成を示すもので、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【0023】
図1(a)に示すように、本実施形態の隅肉自動溶接装置(以下、「溶接装置」と略記する。)1は、台車3と溶接トーチ5とを有している。台車3は前後2つずつの走行輪3a,3bを有しており、台車3内に設けられた各走行輪3a,3b用のモータ3c(図2参照)からの動力により、図1(b)に示す走行方向Xに往復移動可能に構成されている。なお、4つの走行輪3a,3bをそれぞれ個別のモータで独立駆動するようにしてもよい。
【0024】
図1(a)に示すように、台車3の底面には永久磁石3eが配設されており、この永久磁石3eは、台車3の走行面となる板材A(請求項中の継手形成板材及び一方の板材に相当)が磁性体である場合に(本実施形態では鋼板製)、走行輪3a,3bが板材Aから離れないように、磁力により台車3を板材Aに吸着させる。したがって、板材Aが立板である場合は、台車3は板材Aに吸着したままの状態で走行輪3a,3bにより板材A上を走行することになる。
【0025】
図1(b)に示すように、台車3の前面には一対のアーム3f,3gが突設されており、各アーム3f,3gの先端には、ガイドローラ3h,3iと近接センサ3j,3k(請求項中の第2近接センサに相当)とがそれぞれ取り付けられている。
【0026】
ガイドローラ3h,3iは、立板としての板材B(請求項中の継手形成板材及び他方の板材に相当)と板材Aとを隅肉溶接する際に、板材Bに当接させるフリーローラである。板材A上を台車3が走行する際にガイドローラ3h,3iを板材B上で転動させることで、台車3が板材Bに沿って走行するように案内される。
【0027】
近接センサ3j,3kは、本実施形態では渦電流式センサを用いており、ガイドローラ3h,3iに当接する板材Bが磁性体である場合に(本実施形態では鋼板製)、板材Bに渦電流を流れさせることで板材Bの存在を非接触で検出する。
【0028】
また、台車3の走行方向Xにおける両側面3l,3mには、リミットスイッチ3n,3oと近接センサ3p,3qとがそれぞれ取り付けられている。リミットスイッチ3n,3oは、台車3の側面3l,3mに接触する障害物を検出する。近接センサ3p,3qは、本実施形態では渦電流式センサを用いており、台車3の走行面となる板材Aが磁性体である場合に(本実施形態では鋼板製)、近接センサ3j,3kと同様にして板材Aを非接触で検出する。
【0029】
図1(a)に示すように、溶接トーチ5は、先端が2つの板材A,Bの溶接部分Cを指向するように、台車3の前方に斜めに延設されている。なお、溶接トーチ5の指向方向は、台車3の上部に設けた位置調整機構5a,5bの調整操作によって微調整することができる。
【0030】
また、台車3上には、台車3の走行及び溶接トーチ5の溶接動作を制御する制御ユニット7が設けられている。制御ユニット7は、図2に示すように、RAM7bの作業エリアを用いてROM7cに記憶されたプログラムにしたがい処理を実行するCPU7aを有している。そして、CPU7aには、上述したモータ3cのドライバ7d、溶接トーチ5のドライバ7f、近接センサ3j,3k,3p,3q、及び、リミットスイッチ3n,3oが接続されている。また、CPU7aには、台車3の走行方向Xに沿った走行方向別に、台車3の走行及び溶接トーチ5による溶接の開始を指示する走行方向別の走行開始スイッチ7g,7hが接続されている。なお、運用上支障がなければ、走行開始スイッチ7g,7hは一つのスイッチで構成してもよい。
【0031】
次に、制御ユニット7のCPU7aがROM7cに格納されたプログラムにしたがって行う制御を、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0032】
制御ユニット7の電源が投入されると、CPU7aは、走行開始スイッチ7g,7hが操作されたか否かを確認する(ステップS1)。操作されていない場合は(ステップS1でNO)、CPU7aは、RAM7bに設けられたフラグエリアの走行中フラグF1と溶接中フラグF3とを共に「0」に設定した後(ステップS3)、ステップS1にリターンする。操作された場合は(ステップS1でYES)、CPU7aは、近接センサ3p,3qのうち台車3の走行方向Xにおける前方に位置する方が板材Aを検出しているか否かを確認する(ステップS5)。
【0033】
近接センサ3p,3qのうち台車3の走行方向Xにおける前方に位置する方が板材Aを検出していない場合は(ステップS5でNO)、走行中フラグF1が「1」であるか否かを確認する(ステップS6)。溶接中フラグF3が「1」である場合は(ステップS6でYES)、CPU7aは、一定時間遅延させた後に(ステップS8)、後述するステップS9に移行し、溶接中フラグF3が「1」でない場合は(ステップS19でNO)、CPU7aは、一定時間の遅延を置かずにステップS9に移行する。
【0034】
一方、近接センサ3p,3qのうち台車3の走行方向Xにおける前方に位置する方が板材Aを検出している場合(ステップS5でYES)は、リミットスイッチ3n,3oのどちらかが台車3の側面3l,3mに接触する障害物を検出しているか否かを確認する(ステップS7)。リミットスイッチ3n,3oが両方とも障害物を検出していない場合は(ステップS7でNO)、後述するステップS19に移行し、どちらかが障害物を検出している場合は(ステップS7でYES)、ステップS9に移行する。
【0035】
ステップS9では、台車3が板材Aの終端に達したものとして、走行輪3a,3bの走行停止信号をモータ3c,3dのドライバ7d,7eに出力すると共に、溶接トーチ5の溶接停止信号をドライバ7fに出力する。続いて、CPU7aは、走行中フラグF1と溶接中フラグF3とを共に「0」に設定した後(ステップS11)、一連の処理を終了する。
【0036】
一方、ステップS7において、リミットスイッチ3n,3oが両方とも障害物を検出していない場合(NO)は、ステップS1で操作されたことを確認した走行開始スイッチ7g,7hに対応する走行方向に台車3が走行するように、走行輪3a,3bを走行方向に対応する方向に回転させる走行駆動信号を、モータ3c,3dのドライバ7d,7eに出力する(ステップS13)。そして、走行駆動信号の出力後、走行中フラグF1を「1」に設定する(ステップS15)。
【0037】
次に、CPU7aは、近接センサ3j,3kのうち台車3の走行方向Xにおける前方に位置する方が板材Bを検出しているか否かを確認する(ステップS17)。近接センサ3j,3kが両方とも板材Bを検出していない場合は(ステップS17でNO)、後述するステップS27に移行する。近接センサ3j,3kのうち台車3の走行方向Xにおける前方に位置する方が板材Bを検出している場合は(ステップS17でYES)、溶接中フラグF3が「1」であるか否かを確認する(ステップS19)。
【0038】
溶接中フラグF3が「1」である場合は(ステップS19でYES)、CPU7aは、一定時間遅延させた後に(ステップS21)、溶接トーチ5を駆動させるための溶接駆動信号をドライバ7fに出力する(ステップS23)。溶接中フラグF3が「1」でない場合は(ステップS19でNO)、CPU7aは、一定時間の遅延を置かずに溶接駆動信号をドライバ7fに出力する(ステップS23)。溶接駆動信号の出力後に、CPU7aは、溶接中フラグF3を「1」に設定した後(ステップS25)、ステップS7にリターンする。
【0039】
また、ステップS17において近接センサ3j,3kのうち台車3の走行方向Xにおける前方に位置する方が板材Bを検出していない場合(NO)に移行するステップS27では、溶接中フラグF3が「1」であるか否かを確認する。溶接中フラグF3が「1」である場合は(ステップS27でYES)、CPU7aは、一定時間遅延させた後に(ステップS29)、溶接停止信号をドライバ7fに出力する(ステップS31)。溶接中フラグF3が「1」でない場合は(ステップS27でNO)、CPU7aは、一定時間の遅延を置かずに溶接停止信号をドライバ7fに出力する(ステップS31)。溶接停止信号の出力後に、CPU7aは、溶接中フラグF3を「0」に設定した後(ステップS33)、ステップS7にリターンする。
【0040】
次に、上述したように構成された本実施形態の溶接装置1を用いた隅肉自動溶接方法について説明する。図4は本実施形態の溶接装置1を用いて隅肉自動溶接を行うことができる船体の断面図である。
【0041】
図4に示す船体は、二重殻構造を有するタンカーの船そう部10である。この船そう部10は、鋼板で形成された複数の二重船側ブロック11と複数の二重底ブロック13とを連結して構成されている。そして、連結した複数の二重船側ブロック11及び二重底ブロック13によって、上甲板15、船側外板17、船底外板19、及び、インナーハル23を構成している。また、船そう部10には、船長方向に縦通隔壁21が設けられ、船幅方向にトランス材25が設けられている。上甲板15、船側外板17、船底外板19、及び、インナーハル23には、補強用の鋼板製のロンジ29がリブ状に溶接されている。
【0042】
そして、例えば、図5に示す縦通隔壁21とトランス材25との交差部における隅肉溶接や、縦通隔壁21とこれに溶着される補強用のフラットバー27との交差部における隅肉溶接等に、図1の溶接装置1を用いることができる。
【0043】
例えば、縦通隔壁21とトランス材25との交差部の隅肉溶接の際には、溶接トーチ5(図1参照)の先端が隅肉部分を向くように、トランス材25の一番船底外板19寄りの箇所に溶接装置1の台車3を磁着させる。
【0044】
これにより、台車3の側面3l,3mの近接センサ3p,3qは、図1(a)の板材A(請求項中の継手形成板材及び一方の板材に相当)としてトランス材25の存在を検出することになり、アーム3f,3gの近接センサ3j,3kは、図1(a)の板材B(請求項中の継手形成板材及び他方の板材に相当)として縦通隔壁21の存在を検出することになる。
【0045】
この状態で、走行開始スイッチ7g,7h(図2参照)のうち台車3の走行方向に応じた方のスイッチを操作すると、台車3がトランス材25に磁着したまま上方に向けて走行する。その際、ガイドローラ3h,3i(図1参照)が縦通隔壁21上を転動して、台車3が縦通隔壁21に沿ってトランス材25を上動するようにガイドする。この場合の台車3の走行方向を、図5中に符号X1で示す。
【0046】
台車3がトランス材25の上端に達して、近接センサ3p,3qのうち走行方向X1の前方に位置するセンサがトランス材25を検出しなくなると、台車3の走行が停止する。このようにして台車3がトランス材25上を上方に走行する間、溶接トーチ5による縦通隔壁21とトランス材25との隅肉溶接が行われる。
【0047】
また、台車3がトランス材25上を走行しているときに、それまで検出していなかった縦通隔壁21を近接センサ3j,3kが検出するようになると、溶接トーチ5による溶接が開始され、以後、縦通隔壁21とトランス材25との隅肉溶接が行われる。
【0048】
なお、トランス材25の上端に達して溶接トーチ5による溶接と共に走行を停止した台車3は、制御ユニット7のCPU7aの制御によって、トランス材25の下端まで下動させるようにしてもよい。
【0049】
これに対し、縦通隔壁21とフラットバー27との交差部の隅肉溶接は、縦通隔壁21やトランス材25を船底外板19に組み付ける前の段階で、図6に示すように縦通隔壁21を水平においた状態で行う。そして、フラットバー27を縦通隔壁21に溶接する際には、溶接トーチ5(図1参照)の先端が隅肉部分を向くように、縦通隔壁21のフラットバー27の始端を溶接する箇所に溶接装置1の台車3を載置する。
【0050】
これにより、台車3の側面3l,3mの近接センサ3p,3qは、図1(a)の板材A(請求項中の継手形成板材及び一方の板材に相当)として縦通隔壁21の存在を検出することになり、アーム3f,3gの近接センサ3j,3kは、図1(a)の板材B(請求項中の継手形成板材及び他方の板材に相当)としてフラットバー27の存在を検出することになる。
【0051】
この状態で、走行開始スイッチ7g,7h(図2参照)のうち台車3の走行方向に応じた方のスイッチを操作すると、図6に示すように、台車3が縦通隔壁21上をフラットバー27に沿ってその終端に向けて走行する。その際、ガイドローラ3h,3i(図1参照)がフラットバー27上を転動して、台車3がフラットバー27に沿って縦通隔壁21上を走行するようにガイドする。この場合の台車3の走行方向を、図6中に符号X2で示す。
【0052】
台車3が縦通隔壁21の終端に達して、リミットスイッチ3n,3oのうち走行方向X2の前方に位置するスイッチが、図6中では図示を省略した障害物に接触すると、台車3の走行が停止する。このようにして台車3が縦通隔壁21上をフラットバー27に沿って走行する際、ガイドローラ3h,3i(図1参照)がフラットバー27上を転動して近接センサ3j,3kがフラットバー27の存在を検出している間、溶接トーチ5による縦通隔壁21とフラットバー27との隅肉溶接が行われる。
【0053】
この縦通隔壁21とフラットバー27との隅肉溶接の際、縦通隔壁21上を走行する台車3が、縦通隔壁21からガイドローラ3h,3i(図1参照)が離れるように本来の走行方向からずれた方向に走行すると、アーム3f,3gの近接センサ3j,3kの一方又は両方が、フラットバー27を検出しなくなる。すると、溶接トーチ5による溶接が停止される。
【0054】
また、台車3が縦通隔壁21上を走行しているときに、それまで検出していなかったフラットバー27を近接センサ3j,3kが検出するようになると、溶接トーチ5による溶接が開始され、以後、縦通隔壁21とフラットバー27との隅肉溶接が行われる。
【0055】
したがって、図6に想像線で示すような、縦通隔壁21とフラットバー27との交差部からそれた箇所に、溶接トーチ5による溶接で溶接線部31が形成されてしまうことがない。よって、不要な溶接線部31を補修する作業を行う必要をなくすことができる。
【0056】
以上に説明した本実施形態の溶接装置1によれば、台車3の走行及びその停止を、図1(a)に示す板材Aを非接触で検出する近接センサ3p,3qの検出結果を用いて制御するようにした。また、溶接トーチ5による溶接の開始及び停止を、図1(a)に示す板材Bを非接触で検出する近接センサ3j,3kの検出結果や、近接センサ3p,3qによる板材Aの検出結果を用いて制御するようにした。
【0057】
このように、台車3の走行及びその停止と、溶接トーチ5による溶接の開始及び停止とを、溶接対象である板材A,Bの互いに異なるパターンによる検出結果に基づいて制御するようにしたので、台車3の走行と溶接トーチ5による溶接とを個別に制御できるようになる。このため、隅肉溶接の終端が検出されても台車3の走行面を構成する板材Aが検出されている間は、台車3の走行を継続させることができる。このため、隅肉溶接の終端の先に次の始端が存在するような場合であっても、隅肉溶接範囲の始端や終端を確実に検出することができる。
【0058】
また、本実施形態の溶接装置1によれば、縦通隔壁21とトランス材25との交差部の隅肉溶接時のように、縦通隔壁21やトランス材25の上端に終端検出用の部材(治具)を設置しその有無をリミットスイッチ3n,3oで検出しなくても、近接センサ3j,3k,3p,3qの検出結果のみによって、台車3の走行や溶接トーチ5の溶接を縦通隔壁21及びトランス材25の上端付近で停止させることができる。したがって、縦通隔壁21やトランス材25の上端のような、終端検出用の部材(治具)を設置しづらい高所に隅肉溶接の終端がある場合であっても、容易に溶接作業を行うことができる。
【0059】
そして、台車3の走行や溶接トーチ5の溶接の制御に、リミットスイッチ3n,3oによる終端検出用部材の検出が必ずしも必要ではないことから、リミットスイッチ3n,3oやその検出結果に基づいて台車3の走行及び停止を制御するための構成は、省略してもよい。
【0060】
なお、上述した実施形態では、図1(a)に示す板材A,Bを非接触でそれぞれ検出する近接センサ3p,3q、3j,3kを、電磁誘導により磁性体を検出する渦電流式センサとした。しかし、板材Aを検出する近接センサ3p,3q又は板材Bを検出する近接センサ3j,3k、あるいは、それらの全てを、例えば、超音波や光の反射信号により対象物を検出するセンサとしてもよい。
【0061】
また、上述した実施形態の溶接装置1では、近接センサ3p又は近接センサ3qが走行面である板材A(図5の例の場合のトランス材25又は縦通隔壁21)の終端を検出して、溶接トーチ5による溶接が停止されると、板材A,Bの隅肉溶接は、板材Aの終端よりも手前で終了してしまう。同様に、近接センサ3j又は近接センサ3kが板材B(図5の例の場合の縦通隔壁21又はフラットバー27)の終端を検出して、溶接トーチ5による溶接が終了されても、板材A,Bの隅肉溶接は、板材Aの終端よりも手前で終了してしまう。
【0062】
さらに、上述した実施形態の溶接装置1では、板材A(図5の例の場合のトランス材25又は縦通隔壁21)上を台車3が走行しているときに、板材B(図5の例の場合の縦通隔壁21又はフラットバー27)の始端を近接センサ3j,3kが検出して、溶接トーチ5による溶接が開始されると、板材A,Bの隅肉溶接は、板材Bが存在しない、板材Bの始端よりも台車3の走行方向X(図5の例の場合の走行方向X1、図6の例の場合の走行方向X2)における上流側の箇所から開始されてしまう。
【0063】
これは、図1(b)に示すように、板材Aの終端を検出する近接センサ3p,3qも、板材Bの始終端を検出する近接センサ3j,3kも、台車3の走行方向X(図5の例の場合の走行方向X1、図6の例の場合の走行方向X2)において溶接トーチ5よりも上流側に配置されているからである。
【0064】
そこで、近接センサ3p,3qが板材Aの終端を検出したり、近接センサ3j,3kが板材Bの終端を検出したら、その位置から、終端を検出したセンサと溶接トーチ5とのX(図5の例の場合の走行方向X1、図6の例の場合の走行方向X2)における間隔分だけさらに台車3を走行させて、台車3の走行と溶接トーチ5による溶接とを停止させるようにすることが望ましい。
【0065】
また、近接センサ3j,3kが板材Bの始端を検出したら、その位置から、始端を検出したセンサと溶接トーチ5との走行方向X(図5の例の場合の走行方向X1、図6の例の場合の走行方向X2)における間隔分だけさらに台車3を走行させて、溶接トーチ5による溶接を開始させるようにすることが望ましい。
【0066】
その場合には、図3のフローチャートにおけるステップS9の走行停止信号の出力タイミングを、ステップS5で近接センサ3p,3qのうち台車3の走行方向Xにおける前方に位置する方が板材Aを検出していないことを検出したタイミングから、台車3を上述した間隔分だけ走行するのに要する時間だけ遅らせた(ステップS8)タイミングとすることになる。
【0067】
同様に、ステップS29の溶接停止信号の出力タイミングも、ステップS27で近接センサ3j,3kのうち台車3の走行方向Xにおける前方に位置する方が板材Bを検出していないことを検出したタイミングから、台車3を上述した間隔分だけ走行するのに要する時間だけ遅らせた(ステップS21)タイミングとすることになる。
【0068】
さらに、ステップS23の溶接駆動信号の出力タイミングも、ステップS17で近接センサ3j,3kのうち台車3の走行方向Xにおける前方に位置する方が板材Bを検出していることを検出したタイミングから、台車3を上述した間隔分だけ走行するのに要する時間だけ遅らせたタイミングとすることになる。
【0069】
なお、板材Aの終端を検出したら、溶接トーチ5の溶接を終了させる前に台車3をもうしばらく走行させる場合には、板材Aの終端を過ぎても台車3がさらに走行できる走行面が必要となる。
【0070】
そこで、図7の説明図に示す、船底外板19とロンジ29との隅肉溶接を行う場合の例のように、船底外板19とロンジ29の溶接継手形成部分Y(図7では隅肉溶接によるT継手形成部分)の端面に、その溶接継手形成部分Yに対応する断面形状を有する非磁性体製の走行補助板材40を当接させて、溶接装置1(図7中図示せず)による隅肉溶接を行うようにしてもよい。この走行補助板材40は、ベース板41と立板43とを有している。溶接継手形成部分Yの端面に走行補助板材40を当接させた状態で、ベース板41は船底外板19と連なり、立板43はロンジ29の一部と連なる。
【0071】
なお、この場合の溶接装置1は、船底外板19を検出する近接センサ3p,3qとして、渦電流式センサではなく、超音波センサや光センサを用いているものとする。したがって、近接センサ3p,3qは、磁性体の板材だけでなく非磁性体の板材も検出することができる。
【0072】
この場合は、船底外板19に本実施形態の溶接装置1を設置し、ガイドローラ3h,3iをロンジ29上で転動させながら台車3を船底外板19上で、走行方向X3に走行させる。これにより、台車3の側面3l,3mの近接センサ3p,3qは、図1(a)の板材A(請求項中の継手形成板材及び一方の板材に相当)として船底外板19の存在を検出することになり、アーム3f,3gの近接センサ3j,3kは、図1(a)の板材B(請求項中の継手形成板材及び他方の板材に相当)としてロンジ29の存在を検出することになる。そして、台車3が船底外板19の終端に達すると、アーム3f,3gの近接センサ3j,3kのうち台車3の走行方向X3における上流側のセンサが、船底外板19の終端と同じ位置にあるロンジ29の終端に達する。
【0073】
ここで、アーム3f,3gの近接センサ3j,3kが渦電流式センサであることから、近接センサ3j,3kのうち台車3の走行方向X3における上流側のセンサは、磁性体製のロンジ29から非磁性体製の立板43に対向する板材が変わると、板材を検出しなくなる。
【0074】
一方、台車3の側面3l,3mの近接センサ3p,3qは超音波センサや光センサであることから、近接センサ3p,3qのうち台車3の走行方向X3における上流側のセンサは、磁性体製の船底外板19から非磁性体製のベース板41に対向する板材が変わっても、板材を検出し続ける。
【0075】
したがって、台車3が船底外板19及びロンジ29の終端に達すると、その位置から溶接トーチ5と台車3の側面3l,3mの近接センサ3p,3qとの間隔分だけ、ベース板41上を台車3がさらに走行する。そして、溶接トーチ5の溶接が停止される。台車3はさらに走行を継続し、側面3l,3mの近接センサ3p,3qのうち台車3の走行方向X3における上流側のセンサがベース板41の終端を検出すると、走行を停止する。
【0076】
このように、走行補助板材40を用いて船底外板19とロンジ29との隅肉溶接を行うことで、溶接トーチ5により船底外板19とロンジ29の終端まで隅肉溶接が行われるように、台車3を船底外板19の終端に達した後も必要な距離だけ安定して移動させることができる。
【0077】
なお、走行補助板材40の立板43のみを非磁性体製とし、ベース板41を磁性体製とする場合には、船底外板19を検出する近接センサ3p,3qとして渦電流式センサを用いても、上述したのと同様の隅肉溶接を行うことができる。
【0078】
また、例えば図8に示すように、縦通隔壁21に複数のフラットバー27を一定間隔で溶接する場合に、上述した溶接装置1を使用し台車3を縦通隔壁21上で走行方向X2に走行させると、台車3の側面3l,3mの近接センサ3p,3qが縦通隔壁21を検出している間、台車3がフラットバー27に沿って走行することになる。そして、アーム3f,3gの近接センサ3j,3kがフラットバー27を検出している領域では溶接トーチ5による溶接が行われ、フラットバー27を検出していない領域では溶接トーチ5による溶接が停止されることになる。
【0079】
なお、図9に示すように、隣り合う2つのフラットバー27,27の隙間を非磁性体製の補助板材50で埋めて、縦通隔壁21と各フラットバー27との隅肉溶接を行うようにしてもよい。その場合は、補助板材50の2つの挟持部53を両隣のフラットバー27,27にそれぞれ嵌め込んで、補助板材50のベース板51を両隣のフラットバー27,27と同一平面上に配置した状態で、台車3をフラットバー27に沿って縦通隔壁21上を走行方向X2に走行させる。
【0080】
この補助板材50を用いることで、溶接装置1のガイドローラ3h,3iが隣り合う2つのフラットバー27,27の間でもベース板51上を転動するようにして、台車3をフラットバー27に沿って安定してガイドすることができる。また、補助板材50が非磁性体製であることから、アーム3f,3gの近接センサ3j,3kが補助板材50(のベース板51)をフラットバー27と混同して検出することがない。そのため、フラットバー27の存在する領域においてのみ、溶接トーチ5による縦通隔壁21とフラットバー27との隅肉溶接を行わせることができる。
【符号の説明】
【0081】
1 溶接装置
3 台車
3a 走行輪
3b 走行輪
3c モータ
3e 永久磁石
3f アーム
3g アーム
3h ガイドローラ
3i ガイドローラ
3j 近接センサ
3k 近接センサ
3l 側面
3m 側面
3n リミットスイッチ
3o リミットスイッチ
3p 近接センサ
3q 近接センサ
5 溶接トーチ
5a 位置調整機構
5b 位置調整機構
7 制御ユニット
7a CPU
7b RAM
7c ROM
7d ドライバ
7f ドライバ
7g 走行開始スイッチ
7h 走行開始スイッチ
10 船そう部
11 二重船側ブロック
13 二重底ブロック
15 上甲板
17 船側外板
19 船底外板
21 縦通隔壁
23 インナーハル
25 トランス材
27 フラットバー
29 ロンジ
31 溶接線部
40 走行補助板材
41 ベース板
43 立板
50 補助板材
51 ベース板
53 挟持部
A 板材
B 板材
C 溶接部分
X 走行方向
X1 走行方向
X2 走行方向
X3 走行方向
Y 溶接継手形成部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの継手形成板材のうち一方の板材上を自走する台車に搭載された溶接トーチにより前記2つの継手形成板材の溶接線部を隅肉溶接する隅肉自動溶接装置であって、
前記台車の前記一方の板材上における走行時に該一方の板材と対向する箇所に配置され、該箇所に対向する板材を非接触で検出する第1近接センサと、
前記台車の前記一方の板材上における走行時に前記2つの継手形成板材のうち他方の板材に対向する箇所に配置され、該対向する箇所の板材を非接触で検出する第2近接センサと、
前記第1近接センサによる板材の検出状態から非検出状態への変化に連動して前記台車の走行を停止させると共に、前記第1及び第2近接センサのうち少なくとも一方のセンサによる板材の非検出領域において、前記2つの継手形成板材の溶接線部の溶接を停止させる制御手段と、
を備えることを特徴とする隅肉自動溶接装置。
【請求項2】
前記台車は、磁性体で構成された前記一方の板材に吸着するための磁石を有しており、前記第1近接センサは自身と対向する板材を電磁誘導により検出する渦電流式センサであることを特徴とする請求項1記載の隅肉自動溶接装置。
【請求項3】
前記第2近接センサは、自身と対向する磁性体で構成された板材を電磁誘導により検出する渦電流式センサであることを特徴とする請求項1又は2記載の隅肉自動溶接装置。
【請求項4】
2つの継手形成板材のうち一方の板材上を自走して前記2つの継手形成板材の溶接線部を隅肉溶接する隅肉自動溶接装置を用いた隅肉自動溶接方法であって、
前記隅肉自動溶接装置として請求項3記載の隅肉自動溶接装置を用い、
前記隅肉自動溶接装置の台車の走行方向における前記2つの継手形成板材の終端に、前記走行方向における前記隅肉自動溶接装置の台車の前端と溶接トーチとの間隔以上の寸法を有すると共に、溶接後の前記2つの継手形成板材の溶接継手形成部分に対応する断面形状を有する走行補助板材を、前記2つの継手形成板材の前記溶接継手形成部分の端面に前記走行方向において連続するように当接させ、
前記走行補助板材の、少なくとも、前記2つの継手形成板材のうち磁性体で構成された他方の板材に連続する部分を、非磁性体で構成し、
前記台車の前記一方の板材上における走行時に該一方の板材と対向する箇所に配置され、該箇所に対向する板材を非接触で検出する、前記隅肉自動溶接装置の第1近接センサの状態が、対向する箇所の板材の検出状態から非検出状態に変化するのに連動して、前記台車の走行を停止させ、
前記台車の前記一方の板材上における走行時に前記他方の板材に対向する箇所に配置され、該箇所に対向する磁性体で構成された板材を非接触で検出する、前記隅肉自動溶接装置の渦電流式センサで構成された第2近接センサが、対向する箇所の磁性体で構成された板材を検出しない領域において、前記2つの継手形成板材の溶接線部の溶接を停止させるようにした、
ことを特徴とする隅肉自動溶接方法。
【請求項5】
2つの継手形成板材のうち一方の板材上を隅肉自動溶接装置により自走させ、該隅肉自動溶接装置の走行方向に間隔をおいて一直線状に複数配置された、前記2つの継手形成板材のうち磁性体で構成された他方の板材と、前記一方の板材との溶接線部を、隅肉溶接する隅肉自動溶接方法であって、
前記隅肉自動溶接装置として請求項3記載の隅肉自動溶接装置を用い、
前記走行方向において隣り合う2つの前記他方の板材の隙間を、非磁性体で構成された着脱自在な補助板材により埋めた状態で、前記一方の板材上を前記隅肉自動溶接装置の台車に自走させ、
前記台車の前記一方の板材上における走行時に該一方の板材と対向する箇所に配置され、該箇所に対向する板材を非接触で検出する、前記隅肉自動溶接装置の第1近接センサの状態が、対向する箇所の板材の検出状態から非検出状態に変化するのに連動して、前記台車の走行を停止させ、
前記台車の前記一方の板材上における走行時に前記他方の板材に対向する箇所に配置され、該箇所に対向する磁性体で構成された板材を非接触で検出する、前記隅肉自動溶接装置の渦電流式センサで構成された第2近接センサが、対向する箇所の磁性体で構成された板材を検出しない領域において、前記2つの継手形成板材の溶接線部の溶接を停止させるようにした、
ことを特徴とする隅肉自動溶接方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−139712(P2012−139712A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293906(P2010−293906)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(502422351)株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド (159)
【Fターム(参考)】