階段昇降車および車輪装置
【課題】階段を円滑に上り下りできる安価な階段昇降車を得る。
【解決手段】階段走行車は、車体(4)を支える走行輪(5)を有する。走行輪(5)は、固定軸(10)に支持された回転軸(11)と、回転軸(11)から放射状に突出された複数の油圧シリンダ(18a, 18c)と、油圧シリンダ(18a, 18c)のロッド(21)の先端に支持された複数の車輪(27a,27c)と、油圧シリンダ(18a,18c)に作動油を供給する油圧機構(30)とを備えている。
【解決手段】階段走行車は、車体(4)を支える走行輪(5)を有する。走行輪(5)は、固定軸(10)に支持された回転軸(11)と、回転軸(11)から放射状に突出された複数の油圧シリンダ(18a, 18c)と、油圧シリンダ(18a, 18c)のロッド(21)の先端に支持された複数の車輪(27a,27c)と、油圧シリンダ(18a,18c)に作動油を供給する油圧機構(30)とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、階段のステップを乗り越えて走行が可能な階段昇降車および車輪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
階段を上り下りが可能な階段昇降車は、車体に支持された車軸と、車軸から放射状に突出された複数の支持アームと、支持アームの先端に支持された複数の車輪と、を備えている。
【0003】
この種の階段走行車では、支持アームが車軸を中心に回転することで、車輪が階段のステップに順次乗り上げていく。そのため、車軸は、車輪の接地点を支点とする円弧を描きながら階段に沿って上昇する。この結果、階段走行車の車体は、車輪が階段のステップを乗り越える度に上下動を繰り返すことになり、車体の挙動が不安定となる。
【0004】
この対策として、従来、各支持アームを伸縮可能な電動シリンダにより構成するとともに、各支持アームの長さを支持アームの傾斜角度に応じて変化させることで、車体の上下動を抑制するようにした階段昇降車が知られている。
【0005】
従来の階段昇降車によると、支持アームの傾斜角度を複数のセンサーによって検出し、各センサーの検出結果を制御装置に入力している。制御装置は、センサーによって検出された支持アームの傾斜角度が予め設定された値に達した時に、電動シリンダを電気的に制御して支持アームの長さを調節する。これにより、支持アームが階段のステップを乗り越す度に支持アームの長さが変化するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−97075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の階段昇降車は、支持アームの傾斜角度を個々に検出する複数のセンサーを始めとして、センサーの検出結果に基づいて複数の電動シリンダを制御する制御装置を必要としている。
【0008】
この結果、部品点数が増大するのは勿論のこと、支持アームの長さを調整するに当たって複雑な電気的な制御を必要とし、階段昇降車のコストアップを招く要因となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によれば、階段昇降車は、車体と、車体に支持された複数の走行輪と、を具備している。前記走行輪は、前記車体に固定された固定軸と、前記固定軸の外側に同軸状に支持された回転軸と、前記回転軸の外周面から前記回転軸の周方向に間隔を存して放射状に突出され、前記回転軸の径方向に移動可能なロッドを有する複数の油圧シリンダと、前記油圧シリンダのロッドの先端に支持され、階段のステップに接する複数の車輪と、前記複数の油圧シリンダに作動油を供給する油圧機構と、を含んでいる。
【0010】
前記油圧機構は、前記複数の車輪のうち、いずれか一つの車輪が前記階段のステップに突き当たった時に、前記固定軸と前記回転軸との間の相対的な回転に基づいて前記ステップに突き当たった車輪よりも前記走行輪の回転方向に沿う前側に位置された他の車輪に対応する油圧シリンダおよび前記ステップに突き当たった車輪よりも前記走行輪の回転方向に沿う後側に位置された他の車輪に対応する油圧シリンダの少なくともいずれか一方に作動油を供給する。これにより、前記走行輪は、前記他の車輪を前記回転軸の径方向に沿う外側に移動させながら回転する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係る階段昇降車の側面図。
【図2】第1の実施形態に係る走行輪の断面図。
【図3】第1の実施形態に係る走行輪の側面図。
【図4】第1の実施形態の走行輪において、第1の車輪を支持する第1の油圧シリンダに対応する部分の断面図。
【図5】図4のF5−F5線に沿う断面図。
【図6】図2のF6−F6線に沿う断面図。
【図7】図2のF7−F7線に沿う断面図。
【図8】図2のF8−F8線に沿う断面図。
【図9】図2のF9−F9線に沿う断面図。
【図10】図2のF10−F10線に沿う断面図。
【図11】第1の実施形態において、第1の油溜まりが第2の油溜まりおよび第5の油溜まりに通じた時の作動油の流れ経路を示す走行輪の展開図。
【図12】第1の実施形態において、第1ないし第5の油溜まりが密閉された状態を示す走行輪の展開図。
【図13】第1の実施形態において、第2の油溜まりが第1の油溜まりおよび第3の油溜まりに通じた時の作動油の流れ経路を示す走行輪の展開図。
【図14】第1の実施形態において、第5の油溜まりが第4の油溜まりに通じた時の作動油の流れ経路を示す走行輪の展開図。
【図15】第1の実施形態において、第1および第5の車輪が床面に接した状態を模式的に示す走行輪の側面図。
【図16】第1の実施形態において、第1の車輪が一段目のステップの蹴上がり部と床面とで規定される角部に達した状態を模式的に示す走行輪の側面図。
【図17】第1の実施形態において、第1の車輪が一段目のステップの蹴上がり部で押されて、第2の車輪が走行輪の径方向外側に移動した状態を模式的に示す走行輪の側面図。
【図18】第1の実施形態において、走行輪が第1の車輪を支点として一段目のステップに乗り上げるように回転した状態を模式的に示す走行輪の側面図。
【図19】第1の実施形態において、走行輪が第5の車輪によって一段目のステップの上に押し上げられた状態を模式的に示す走行輪の側面図。
【図20】第2の実施形態の走行輪において、第1の車輪を支持する第1の油圧シリンダに対応する部分の断面図。
【図21】図20のF21−F21線に沿う断面図。
【図22】第3の実施形態に係る走行輪の平面図。
【図23】第4の実施形態に係る走行輪の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施形態]
以下、第1の実施形態について、図1ないし図19を参照して説明する。
【0013】
図1は、階段1のステップ2を順次乗り越えて走行が可能な人力式の荷物運搬車3を開示している。荷物運搬車3は、階段昇降車の一例であって、荷物を載せる荷台4と、荷台4を支える四つの走行輪5とを備えている。荷台4は、例えば上向きに開放された四角い箱形であり、荷物運搬車3の車体を兼ねている。荷台4の後端部には、作業者が荷物運搬車3を押したり、引いたりする際に手を掛けるハンドル6が設けられている。
【0014】
走行輪5は、荷台4の前部および後部において、荷台4を間に挟んで左右に振り分けて配置されている。図1では、荷物運搬車3の進行方向の左側に配置された前側の走行輪5および後側の走行輪5のみを示している。
【0015】
なお、走行輪5は四つに限らず、例えば荷台4の前部又は後部に配置される走行輪を一輪とすることも可能である。
【0016】
走行輪5は、車輪装置の一例であって、互いに共通の構成を有している。そのため、本実施形態では、一つの走行輪5を代表して説明する。
【0017】
図2および図3に示すように、走行輪5は、固定軸10および回転軸11を備えている。固定軸10は、円柱状の本体12と、本体12の長手方向に沿う両端から同軸状に突出された軸部13とを有している。軸部13の一端は、荷台4の側壁4aに固定されている。このため、固定軸10は、側壁4aから荷台4の側方に突出されている。
【0018】
固定軸10の本体12は、第1ないし第6の隔壁14a,14b,14c,14d,14e,14fを有している。第1ないし第6の隔壁14a,14b,14c,14d,14e,14fは、夫々本体12の外周面から本体12の径方向に沿う外側に向けて円盤状に張り出している。さらに、第1ないし第6の隔壁14a,14b,14c,14d,14e,14fは、本体12と同軸状をなすとともに、本体12の軸方向に互いに間隔を存して一列に並んでいる。
【0019】
回転軸11は、中空の円筒状をなしている。本実施形態によると、回転軸11は、半円筒状をなす一対の軸要素11a,11bを互いに組み合わせることで構成されている。回転軸11は、固定軸10を外側から同軸状に覆うように固定軸10の軸部13に回転自在に支持されている。
【0020】
第1ないし第6の溝15a,15b,15c,15d,15e,15fが回転軸11の内周面に形成されている。第1ないし第6の溝15a,15b,15c,15d,15e,15fは、回転軸11の周方向に連続するとともに、回転軸11の軸方向に間隔を存して並んでいる。固定軸10の第1ないし第6の隔壁14a,14b,14c,14d,14e,14fは、回転軸11の第1ないし第6の溝15a,15b,15c,15d,15e,15f内に入り込んでいる。このため、回転軸11の内周面のうち第1ないし第6の溝15a,15b,15c,15d,15e,15fの間に位置された部分は、見かけ上、固定軸10の本体12の外周面に向けて張り出す第1ないし第5の座部16a,16b,16c,16d,16eを構成している。
【0021】
第1ないし第5の座部16a,16b,16c,16d,16eは、回転軸11の周方向に連続するリング状をなすとともに、回転軸11の軸方向に間隔を存して並んでいる。図2に示すように、第1の座部16aは、第1の隔壁14aと第2の隔壁14bとの間に介在されている。第2の座部16bは、第2の隔壁14bと第3の隔壁14cとの間に介在されている。第3の座部16cは、第3の隔壁14cと第4の隔壁14dとの間に介在されている。第4の座部16dは、第4の隔壁14dと第5の隔壁14eとの間に介在されている。第5の座部16eは、第5の隔壁14eと第6の隔壁14fとの間に介在されている。
【0022】
言い換えると、第2の隔壁14bは、第1の座部16aと第2の座部16bとの間を仕切っている。第3の隔壁14cは、第2の座部16bと第3の座部16cとの間を仕切っている。第4の隔壁14dは、第3の座部16cと第4の座部16dとの間を仕切っている。第5の隔壁14eは、第4の座部16dと第5の座部16eとの間を仕切っている。
【0023】
図2ないし図5に示すように、回転軸11は、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eを備えている。第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eは、回転軸11の周方向に互いに間隔を存して放射状に配置されているとともに、回転軸11の軸方向に互いに間隔を存して並んでいる。
【0024】
具体的に述べると、第1の油圧シリンダ18aは、回転軸11の第1の座部16aに対応する位置から回転軸11の径方向に突出されている。第2の油圧シリンダ18bは、回転軸11の第2の座部16bに対応する位置から回転軸11の径方向に突出されている。第3の油圧シリンダ18cは、回転軸11の第3の座部16cに対応する位置から回転軸11の径方向に突出されている。第4の油圧シリンダ18dは、回転軸11の第4の座部16dに対応する位置から回転軸11の径方向に突出されている。第5の油圧シリンダ18eは、回転軸11の第5の座部16eに対応する位置から回転軸11の径方向に突出されている。さらに、本実施形態によると、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eは、回転軸11の周方向に沿う位相が72度ずつずれている。
【0025】
第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eは、互いに共通の構成を有するので、第1の油圧シリンダ18aを代表して説明する。
【0026】
図4および図5に示すように、第1の油圧シリンダ18aは、夫々シリンダボディ19、ピストン20およびピストンロッド21を備えている。シリンダボディ19は、回転軸11の外周面から一体に突出されている。ピストン20は、シリンダボディ19に収容されて、シリンダボディ19の内部を作動油が充填された油室22と空気室23とに仕切っている。空気室23は、ブリーザ口24を通じて大気中に開放されている。ピストンロッド21は、ピストン20と一緒にシリンダボディ19の軸方向に移動可能であるとともに、空気室23を貫通している。ピストンロッド21の先端は、シリンダボディ19の外に突出されている。
【0027】
したがって、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eの油室22に作動油が供給されると、ピストン20が油圧により空気室23に向けて押圧される。これにより、ピストンロッド21がシリンダボディ19の先端から突出する。
【0028】
第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eのピストンロッド21の先端に夫々ブラケット25を介して第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eが回転自在に支持されている。第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eは、ピストンロッド21がシリンダボディ19内に最も入り込んだ時に、固定軸10の軸部13を中心とする第1の回転軌跡L1に沿って公転するとともに、ピストンロッド21がシリンダボディ19から最も突出した時に、固定軸10の軸部13を中心とする第2の回転軌跡L2に沿って公転する。第2の回転軌跡L2の直径は、第1の回転軌跡L1の直径よりも大きくなっている。
【0029】
図2、図4〜図10に示すように、走行輪5は、油圧機構30を内蔵している。油圧機構30は、走行輪5が回転した時に第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eの油室22に作動油を供給することで、第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eを回転軸11の径方向外側に順次移動させるためのものである。
【0030】
油圧機構30は、作動油を蓄える第1ないし第5の油溜まり31a,31b,31c,31d,31eを備えている。第1ないし第5の油溜まり31a,31b,31c,31d,31eは、回転軸11の第1ないし第5の座部16a,16b,16c,16d,16eに形成されている。第1ないし第5の油溜まり31a,31b,31c,31d,31eは、夫々回転軸11の周方向に沿うとともに、第1ないし第5の座部16a,16b,16c,16d,16eから固定軸10の本体12の外周面に向けて開放された円弧状の溝で構成されている。
【0031】
図6に示すように、第1の油溜まり31aは、第1の座部16aに形成された連通路32aを介して第1の油圧シリンダ18aの油室22に通じている。第1の油溜まり31aは、第1の油圧シリンダ18aに対し図6に矢印で示す回転軸11の回転方向に沿う前側に変位した位置に設けられている。
【0032】
図7に示すように、第2の油溜まり31bは、第2の座部16bに形成された連通路32bを介して第2の油圧シリンダ18bの油室22に通じている。第2の油溜まり31bは、第2の油圧シリンダ18bに対し図7に矢印で示す回転軸11の回転方向に沿う前側に変位した位置に設けられている。
【0033】
図8に示すように、第3の油溜まり31cは、第3の座部16cに形成された連通路32cを介して第3の油圧シリンダ18cの油室22に通じている。第3の油溜まり31cは、第3の油圧シリンダ18cに対し図8に矢印で示す回転軸11の回転方向に沿う前側に変位した位置に設けられている。
【0034】
図9に示すように、第4の油溜まり31dは、第4の座部16dに形成された連通路32dを介して第4の油圧シリンダ18dの油室22に通じている。第4の油溜まり31dは、第4の油圧シリンダ18dに対し図9に矢印で示す回転軸11の回転方向に沿う前側に変位した位置に設けられている。
【0035】
図10に示すように、第5の油溜まり31eは、第5の座部16eに形成された連通路32eを介して第5の油圧シリンダ18eの油室22に通じている。第5の油溜まり31eは、第5の油圧シリンダ18eに対し図10に矢印で示す回転軸11の回転方向に沿う前側に変位した位置に設けられている。
【0036】
したがって、回転軸11の軸方向に隣り合う第1ないし第5の油溜まり31a〜31eは、回転軸11の周方向に位相をずらして配置されている。
【0037】
本実施形態では、図5に代表して示すように、連通路32aに弁33が設けられている。弁33は、連通路32aを流れる作動油の流量を人為的に調節するためのものであって、回転軸11の外に露出された図示しない操作部を有している。このような弁33は、図示を省略するが他の連通路32b〜32eにも同様に設けられている。
【0038】
図2、図4、図6〜図10に示すように、固定軸10の第1ないし第6の隔壁14a〜14fに夫々第1ないし第3の連絡孔35a,35b,35cが形成されている。第1ないし第3の連絡孔35a,35b,35cは連絡通路の一例であって、固定軸10の周方向に間隔を存して並んでいる。第1ないし第6の隔壁14a〜14fに形成された第1の連絡孔35aは、固定軸10の軸方向に沿う同一の直線上に位置されている。第1ないし第6の隔壁14a〜14fに形成された第2の連絡孔35bは、固定軸10の軸方向に沿う同一の直線上に位置されている。第1ないし第6の隔壁14a〜14fに形成された第3の連絡孔35cは、固定軸10の軸方向に沿う同一の直線上に位置されている。
【0039】
このため、固定軸10の上で回転軸11が回転すると、第1ないし第5の油溜まり31a,31b,31c,31d,31eが第1ないし第6の隔壁14a〜14fに形成された第1ないし第3の連絡孔35a,35b,35cの上を通過する。これにより、第1ないし第5の油溜まり31a,31b,31c,31d,31eに蓄えられた作動油が第1ないし第3の連絡孔35a,35b,35cを通じて出入りするようになっている。
【0040】
さらに、第1の隔壁14aの第1の連絡孔35aと第6の隔壁14fの第1の連絡孔35aとの間は、第1のバイパス通路36aを介して繋がっている。第1の隔壁14aの第2の連絡孔35bと第6の隔壁14fの第2の連絡孔35bとの間は、第2のバイパス通路36bを介して繋がっている。同様に、第1の隔壁14aの第3の連絡孔35cと第6の隔壁14fの第3の連絡孔35cとの間は、第3のバイパス通路36cを介して繋がっている。第1ないし第3のバイパス通路36a,36b,36cは、固定軸10の内部に形成されているとともに、固定軸10の軸方向に沿って延びている。
【0041】
この結果、第1ないし第5の油溜まり31a,31b,31c,31d,31eは、第1ないし第3の連絡孔35a,35b,35cおよび第1ないし第3のバイパス通路36a,36b,36cを介して連通されている。
【0042】
図2および図3に示すように、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eのピストンロッド21の先端に夫々リターンロッド38が固定されている。リターンロッド38は、ピストンロッド21の先端から荷台4の側壁4aに向けて水平に延びている。
【0043】
さらに、荷台4の側壁4aに復帰手段の一例である押圧板39が取り付けられている。押圧板39は、回転軸11の後方において起立している。押圧板39の前面は、リターンロッド38の先端部の外周面が接するカム面40となっている。
【0044】
次に、走行輪5の第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eが動作するメカニズムについて、図11ないし図14を加えて説明する。
【0045】
図11ないし図14は、作動油の流れを固定軸10および回転軸11を平面的に展開して表したもので、図中白抜きの矢印は、回転軸11の回転方向を示している。図11は、例えば第1の油圧シリンダ18aが図6に示す基点に位置する時の第1ないし第5の油溜まり31a,31b,31c,31d,31eと第1ないし第3の連絡孔35a,35b,35cとの位置関係を示している。
【0046】
図11に示すように、第1の油圧シリンダ18aが基点に位置された状態では、第1の座部16aの第1の油溜まり31aは、第2の隔壁14bに形成された第1の連絡孔35aを介して隣り合う第2の油溜まり31bに通じている。さらに、第1の油溜まり31aは、第1の隔壁14aに形成された第2の連絡孔35b、第2のバイパス通路36bおよび第6の隔壁14fに形成された第2の連絡孔35bを介して第5の油溜まり31eに通じている。
【0047】
第1の油圧シリンダ18aに支持された第1の車輪27aが走行輪5の回転中心に向けて押圧されると、第1の油圧シリンダ18aの油室22内の作動油がピストン20により加圧されて、油室22から連通路32aを通って第1の油溜まり31aに押し出される。これにより、図11に太い矢印で示すように、第1の油溜まり31a内の作動油が第2の隔壁14bの第1の連絡孔35aを通って第2の油溜まり31bに移動するとともに、第1の隔壁14aの第2の連絡孔35b、第2のバイパス通路36bおよび第6の隔壁14fの第2の連絡孔35bを通って第5の油溜まり31eに移動する。
【0048】
この結果、第2の油溜まり31bの作動油が連通路32bを通って第2の油圧シリンダ18bの油室22に移動するので、ピストン20に作用する油圧が増大する。よって、ピストンロッド21がシリンダボディ19の外に押し出されて、第2の車輪27bが回転軸11の径方向に沿う外側に向けて移動する。
【0049】
同様に、第5の油溜まり31eの作動油が連通路32eを通って第5の油圧シリンダ18eの油室22に移動するので、ピストン20に作用する油圧が増大する。よって、ピストンロッド21がシリンダボディ19の外に押し出されて、第5の車輪27eが回転軸11の径方向に沿う外側に向けて移動する。
【0050】
加えて、図11の状態では、第3の隔壁14cの第1ないし第3の連絡孔35a,35b,35cは、第2の座部16bおよび第3の座部16cによって閉じられている。同様に、第5の隔壁14eの第1ないし第3の連絡孔35a,35b,35cは、第4の座部16dおよび第5の座部16eによって閉じられている。
【0051】
そのため、第2の油溜まり31bと第3の油溜まり31cとの間で作動油が移動することはないとともに、第5の油溜まり31eと第4の油溜まり31dとの間で作動油が移動することはない。
【0052】
よって、第1の車輪27aが押圧された時には、第2および第5の油圧シリンダ18b,18eが動作されて、第2の車輪27bおよび第5の車輪27eが回転軸11の径方向に沿う外側に移動することになる。
【0053】
回転軸11の回転により、第1の油圧シリンダ18aを有する第1の座部16aが図11に示す基点から図12に示す位置に移動すると、第1の隔壁14aの第1および第3の連絡孔35a,35cが第1の座部16aによって閉じられる。それとともに、第5の隔壁14eの第1および第3の連絡孔35a,35b、第6の隔壁14fの第1ないし第3の連絡孔35a,35b,35cが第5の座部16eによって閉じられる。
【0054】
この結果、第1の油溜まり31aおよび第5の油溜まり31eが密閉状態となって作動油の流動が停止され、第2の車輪27bおよび第5の車輪27eが回転軸11の径方向に沿う外側に移動された状態に保持される。
【0055】
回転軸11の回転に伴い、第1の座部16aが図12に示す位置から図13に示す位置に移動し、回転軸11の径方向に沿う外側に移動された第2の車輪27bが押圧されると、第2の油圧シリンダ18bの油室22内の作動油がピストン20により加圧されて、油室22から連通路32bを通って第2の油溜まり31bに押し出される。
【0056】
この際、第2の油溜まり31bは、第2の隔壁14bの第2の連絡孔35bを介して第1の油溜まり31aに通じているとともに、第3の隔壁14cの第1の連絡孔35aを介して第3の油溜まり31cに通じている。
【0057】
この結果、図13に太い矢印で示すように、第2の油溜まり31b内の作動油が第2の隔壁14bの第2の連絡孔35bを通って第1の油溜まり31aに移動するとともに、第3の隔壁14cの第1の連絡孔35aを介して第3の油溜まり31cに移動する。
【0058】
したがって、第1の油溜まり31aおよび第3の油溜まり31cの作動油が第1の油圧シリンダ18aの油室22および第3の油圧シリンダ18cの油室22に移動するので、夫々のピストン20に作用する油圧が増大する。よって、第1および第3の油圧シリンダ18a,18cでは、夫々のピストンロッド21がシリンダボディ19の外に押し出されて、第1の車輪27aおよび第3の車輪27cが回転軸11の径方向に沿う外側に向けて移動する。
【0059】
回転軸11がさらに回転すると、先に回転軸11の径方向に沿う外側に移動された第5の車輪27eに対応するリターンロッド38が荷台4に固定された押圧板39のカム面40に接触する。この接触により、第5の車輪27eが押圧されて、第5の油圧シリンダ18eの油室22内の作動油がピストン20により加圧される。よって、油室22内の作動油が連通路32eを通って第5の油溜まり31eに押し出される。
【0060】
この際、図14に示すように、第5の油溜まり31eは、第4の隔壁14eの第3の連絡孔35cを介して第4の油溜まり31dに通じている。このため、図14に太い矢印で示すように、第5の油溜まり31e内の作動油が第3の連絡孔35cを通って第4の油溜まり31dに移動する。
【0061】
したがって、第4の油溜まり31dの作動油が連通路32dを通って第4の油圧シリンダ18dの油室22に移動するので、ピストン20に作用する油圧が増大する。よって、第4の油圧シリンダ18dでは、ピストンロッド21がシリンダボディ19の外に押し出されて、第4の車輪27dが回転軸11の径方向に沿う外側に向けて移動する。
【0062】
さらに、第5の油溜まり31eが第4の隔壁14eの第3の連絡孔35cを介して第4の油溜まり31dに通じている状態では、第2の油溜まり31bが第1の油溜まり31aおよび第3の油溜まり31cに夫々通じているので、第1の油圧シリンダ18aの油室22および第3の油圧シリンダ18cの油室22に作動油が継続して供給される。
【0063】
このような一連の動作を回転軸11の回転に伴って繰り返すことで、第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eが順次回転軸11の径方向に沿って移動することになる。
【0064】
次に、荷物運搬車3が階段1を上る時の走行輪5の動作について、図15ないし図19を加えて説明する。
【0065】
図15ないし図19は、走行輪5が回転する際の第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eの相対的な位置関係を模式的に示している。
【0066】
走行輪5がフラットな床面fに沿って走行する場合、図15に示す例では、回転軸11の周方向に隣り合う第1および第5の車輪27a,27eが床面fに転がり接触している。そのため、作業者が荷物運搬車3を押すと、第1および第5の車輪27a,27eは、公転せずに床面fとの接触に伴って回転する。よって、走行輪5は、静止したままの状態で床面fに沿って移動することになり、床面fから回転軸11の回転中心までの高さHが一定に保たれている。
【0067】
図15に示すように、第1の車輪27aが階段1の一段目のステップ2の蹴上がり部2aと床面fとで規定される角部に達すると、第1の車輪27aがステップ2の蹴上がり部2により水平方向に押される。第1の車輪27aが一段目のステップ2の蹴上がり部2aに達した時、走行輪11の第1ないし第5の油溜まり31a,31b,31c,31d,31eと、第1ないし第6の隔壁14a,14b,14c,14d,14e,14fに形成された第1ないし第3の連絡孔35a,35b,35cとは、図11に示すような位置関係に保たれている。
【0068】
このため、走行輪5の移動に伴って第1の車輪27aが蹴上がり部2aによって押されると、図15に二点鎖線で示すように、第1の車輪27aが走行輪5の回転中心に向けて移動する。よって、図11に太い矢印で示すように、第1の油溜まり31a内の作動油が第2の隔壁14bの第1の連絡孔35aから第2の油溜まり31b、連通路32bを通って第2の車輪27bに対応する第2の油圧シリンダ18bの油室22に移動する。
【0069】
この結果、第2の油圧シリンダ18bのピストンロッド21がシリンダボディ19の外に押し出されて、図16に二点鎖線で示すように、第1の車輪27aよりも走行輪5の回転方向に沿う後側に位置された第2の車輪27bが走行輪5の径方向に沿う外側に向けて移動する。この移動により、第2の車輪27bが一段目のステップ2の踏板2bの上方に進出する。
【0070】
さらに、第1の車輪27aが蹴上がり部2aによって押されると、図11に太い矢印で示すように、第1の油溜まり31a内の作動油が第1の隔壁14aの第2の連絡孔35bから第2のバイパス通路36b、第6の隔壁14fの第2の連絡孔35bを通って第5の油圧シリンダ18eの油室22に移動する。
【0071】
この結果、図16に二点鎖線で示すように、第5の油圧シリンダ18eのピストンロッド21がシリンダボディ19の外に押し出されて、第1の車輪27aよりも走行輪5の回転方向に沿う前側に位置された第5の車輪27eが走行輪5の径方向に沿う外側に向けて移動する。
【0072】
第5の車輪27eが走行輪5の径方向に沿う外側に移動すると、第5の車輪27eが床面fに押し付けられる。したがって、第5の車輪27eが走行輪5を全体的に押上げて、走行輪5の回転を補助する。
【0073】
それとともに、図17に二点鎖線で示すように、第5の車輪27eが引き続いて床面fを押すので、走行輪5の回転が円滑に行なわれる。
【0074】
第1の車輪27aおよび第5の車輪27eが移動すると同時に、走行輪5が一段目のステップ2に近づくように前進する。図17は、走行輪5の前進に伴って、第1の車輪27aを支持する第1の油圧シリンダ18aのピストンロッド21がシリンダボディ19の内部に最も押し込まれた状態を示している。第1の油圧シリンダ18aのピストンロッド21が最も押し込まれると、走行輪5は、図17に矢印で示すように第1の車輪27aを支点として反時計回り方向に30度程度回転する。この回転により、先に走行輪5の径方向に沿う外側に向けて移動された第2の車輪27bが一段目のステップ2の踏板2bに近づく。
【0075】
走行輪5がさらに回転すると、図18に示すように、先に走行輪5の径方向に沿う外側に向けて移動された第2の車輪27bが一段目のステップ2の踏板2bと二段目のステップ2の蹴上がり部2aとで規定される角部に到達する。すると、今度は第2の車輪27bが二段目のステップ2の蹴上がり部2aによって押されるので、図18に二点鎖線で示すように、第2の車輪27bが走行輪5の回転中心に向けて移動する。
【0076】
よって、図13に示すように、第2の油溜まり31b内の作動油が第2の隔壁14bの第2の連絡孔35bから第1の油溜まり31aに移動する。この結果、第1の油圧シリンダ18aが動作されて第1の車輪27aが図18に矢印で示すように走行輪5の径方向に沿う外側に移動する。これにより、第2の車輪27bよりも走行輪5の回転方向に沿う前側に位置された第1の車輪27aが床面fを押圧する。
【0077】
それとともに、第2の油溜まり31b内の作動油が第3の隔壁14cの第1の連絡孔35aから第3の油溜まり31cに移動するので、第3の油圧シリンダ18cが動作されて図18に矢印で示すように第3の車輪27cが走行輪5の径方向に沿う外側に移動する。よって、第2の車輪27bよりも走行輪5の回転方向に沿う後側に位置された第3の車輪27cが三段目のステップ2の踏板2bの上に進出する。
【0078】
図18に示すように、第2の車輪27bが二段目のステップ2の蹴上がり部2aによって押されるまで走行輪5が回転すると、先に走行輪5の径方向に沿う外側に移動された第5の車輪27eが床面fから離れる。第5の車輪27eが床面fを離脱してから走行輪5が約72度回転するまでの間、第5の車輪27eに対応するリターンロッド38が荷台4に固定された押圧板39のカム面40に接触する。
【0079】
この接触により、図18に二点鎖線で示すように、第5の車輪27eが走行輪5の回転中心に向けて強制的に押し戻される。そのため、第5の油圧シリンダ18eでは、ピストンロッド21がシリンダボディ19に押し込まれて油室22の容積が減少し、油室22内の作動油が連通路32eを通って第5の油溜まり31eに押し出される。
【0080】
この結果、図14に太字の矢印で示すように、第5の油溜まり31e内の作動油が第5の隔壁14eの第3の連絡孔35cから第4の油溜まり31dに移動するので、第4の油溜まり31d内の作動油が連通路32dを通って第4の油圧シリンダ18dの油室22に移動する。
【0081】
よって、第4の油圧シリンダ18dのピストンロッド21がシリンダボディ19の外に押し出されて、図19に矢印で示すように第5の車輪27eよりも走行輪5の回転方向に沿う前側に位置された第4の車輪27dが走行輪5の径方向に沿う外側に向けて移動を開始する。
【0082】
走行輪5が図19に示す位置からさらに前進して、回転軸11の第1の座部16aが図14の位置よりも左側に移動すると、第1の油溜まり31aが第1の隔壁14aの第3の連絡孔35cの位置に到達する。
【0083】
これにより、図14に破線の矢印で示すように、第5の油溜まり31e内の作動油が第6の隔壁14fの第3の連絡孔35c、第3のバイパス通路36cおよび第1の隔壁14aの第3の連絡孔35cを通って第1の油溜まり31aに供給される。したがって、図19に矢印で示すように、第1の車輪27aが床面fに向けて移動を開始する。
【0084】
加えて、第2の隔壁14bの第2の連絡孔35b、第3の隔壁14cの第1の連絡孔35aおよび第4の隔壁14dの第3の連絡孔35cが、夫々第1の座部16a、第2の座部16bおよび第3の座部16dで閉じられる。そのため、第4の油溜まり31dに対する作動油の供給が断たれる。
【0085】
このような動作を繰り返すことで、走行輪5の回転時に第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eが順次走行輪5の径方向に移動し、走行輪5が階段1のステップ2を一段ずつ乗り越していくことになる。
【0086】
第1の実施形態によると、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eの油室22と第1ないし第5の油溜まり31a,31b,31c,31d,31eとの間を結ぶ連通路32a,32b,32c,32d,32eに、夫々連通路32a,32b,32c,32d,32eを流れる作動油の流量を調整する弁33が設けられている。そのため、弁33の開度を調整することで、作動油が通路32a,32b,32c,32d,32eを通過する際に生じる減衰力を変化させて、第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eの移動速度を調整することができる。
【0087】
よって、荷物運搬車3の走行輪5が階段1のステップ2を一段ずつ乗り越えていく時に、走行輪5の回転中心が図17に示す階段1の傾斜に沿う直線O1上に位置するように、第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eの移動速度を調整することで、荷物運搬車3が階段1に沿って走行する際の上下動を抑えて、荷物運搬車3の挙動を安定させることができる。
【0088】
このような第1の実施形態によれば、荷物運搬車3が階段1を上る時は、回転軸11の周方向に互いに間隔を存して放射状に配置された第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eが走行輪5の回転に追従して次の段のステップ2の踏板2aの上に進出するように、走行輪5の径方向に沿う外側に順番に移動する。
【0089】
それとともに、第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eがステップ2の蹴上がり部2aに突き当たる度に、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eのピストンロッド21がシリンダボディ19の内部に引っ込む。このため、第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eが蹴上がり部2aに突き当たった時の衝撃を第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eが吸収する。
【0090】
しかも、本実施形態では、第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eは、走行輪5がステップ2を乗り越す度に順番に走行輪5の回転軸11を押し上げて、走行輪5の回転を補助する。
【0091】
一方、荷物運搬車3が階段1を下る時は、例えば第1の車輪27aがステップ2の踏板2bに接した時点で、第1の車輪27aが踏板2bにより走行輪5の回転中心に向けて押される。これにより、第1の車輪27aよりも走行輪5の回転方向に沿う後側に位置された第5の車輪27eが走行輪5の径方向に沿う外側に移動して下の段の踏板2bの上に進出する。
【0092】
それとともに、第1の車輪27aよりも走行輪5の回転方向に沿う前側に位置された第2の車輪27bが走行輪5の径方向に沿う外側に移動する。この移動により、第2の車輪27bが上の段の踏板2bを押圧し、走行輪5の回転を補助する。
【0093】
以上のことから、荷物運搬車3が階段1に沿って走行する際に、荷物運搬車3に加わる衝撃が少なくなるとともに荷物運搬車3の上下動が抑制され、階段1の上り下りを容易に行うことができる。
【0094】
第1の実施形態によると、固定軸10と回転軸11との相対的な回転に伴って第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eの油室22に対する作動油の流れが自動的に切り換わる。このため、走行輪5の回転時に、油室22に流入する作動油の圧力を利用して第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eを走行輪5の径方向に沿う外側に選択的に移動させることができる。
【0095】
この結果、第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eを移動させるに当たって、複数のセンサーや制御装置を用いた複雑な電気的な制御が不要となる。よって、走行輪5の構成を簡素化することができ、走行輪5ひいては荷物運搬車3の製造コストを低減できるといった利点がある。
【0096】
[第2の実施形態]
図20および図21は、走行輪の第2の実施形態を開示している。
【0097】
第2の実施形態は、回転軸の第1ないし第5の油溜まりに作動油を出し入れするための構成が第1の実施形態と相違している。これ以外の走行輪の構成は、基本的に第1の実施形態と同様である。そのため、第2の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0098】
図20および図21は、走行輪5の第1の車輪27a側の端部を示している。図20および図21に示すように、固定軸10の本体12は、第2の隔壁14bに対応する位置に第1ないし第3の連絡通路51a,51b,51cを有している。第1ないし第3の連絡通路51a,51b,51cは、第2の隔壁14bを迂回するように固定軸10の軸方向に延びているとともに、固定軸10の周方向に間隔を存して並んでいる。
【0099】
第1ないし第3の連絡通路51a,51b,51cの一端は、回転軸11の第1の座部16aと向かい合うように本体12の外周面に開口されている。同様に、第1ないし第3の連絡通路51a,51b,51cの他端は、第2の回転軸11の第2の座部16bと向かい合うように本体12の外周面に開口されている。
【0100】
そのため、固定軸10の上で回転軸11が回転すると、第1の座部16aに形成された第1の油溜まり31aおよび第2の座部16bに形成された第2の油溜まり31bが第1ないし第3の連絡通路51a,51b,51cの開口端を通過する。これにより、第1および第2の油溜まり31a,31bに蓄えられた作動油が第1ないし第3の連絡通路51a,51b,51cを通じて出入りするようになっている。
【0101】
言い換えると、本体12に形成された第1ないし第3の連絡通路51a,51b,51cは、前記第1の実施形態の第1ないし第3の連絡孔35a,35b,35cと同様の機能を有している。
【0102】
なお、図示を省略するが、第1ないし第3の連絡通路51a,51b,51cは、本体12のうち第3ないし第5の隔壁14c,14d,14eに対応する箇所にも同じように形成されている。そのため、回転軸11が回転すると、第3ないし第5の油溜まり31c,31d,31eが第1ないし第3の連絡通路51a,51b,51cの開口端の上を通過するようになっている。
【0103】
このような構成においても、固定軸10と回転軸11との相対的な回転に伴って第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eの油室22に対する作動油の流れが自動的に切り換わる。よって、前記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0104】
[第3の実施形態]
図22は、走行輪の第3の実施形態を開示している。
【0105】
第3の実施形態は、回転軸と第1ないし第5の油圧シリンダとの相対的な位置関係が第1の実施形態と相違している。図22に示すように、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eは、回転軸11の軸方向にずれておらず、回転軸11の同一の周上に互いに間隔を存して配列されている。さらに、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eは、回転軸11のうち荷台4の側壁4aとは反対側の端部に位置されている。
【0106】
この構成によれば、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eが回転軸11の端部に片寄っているので、第1の実施形態よりも走行輪5の軸長を短くすることができる。よって、走行輪5のコンパクト化が可能となる。
【0107】
[第4の実施形態]
図23は、走行輪の第4の実施形態を開示している。
【0108】
第4の実施形態は、回転軸と第1ないし第5の油圧シリンダとの相対的な位置関係が第3の実施形態と相違している。図23に示すように、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eは、回転軸11の軸方向にずれておらず、回転軸11の同一の周上に互いに間隔を存して配列されている。さらに、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eは、回転軸11のうち荷台4の側壁4aと隣り合う端部に位置されている。
【0109】
このような構成においても、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eが回転軸11の端部に片寄っているので、走行輪5の軸長を短くすることができる。よって、走行輪5のコンパクト化が可能となる。
【0110】
なお、階段昇降車は、作業者が押したり引いたりする人力式の荷物運搬車に限らず、例えば回転軸をモータのような駆動源で駆動するようにした電動式の荷物運搬車であってもよい。
【0111】
さらに、油圧シリンダおよび車輪の数は、例えばステップの蹴上がり部の高さ、踏板の幅によって適宜変更が可能であり、例えば油圧シリンダおよび車輪が三つであったり、六つであっても何等差し支えない。
【0112】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0113】
1…階段、2…ステップ、4…車体(荷台)、5…走行輪、10…固定軸、11…回転軸、18a,18b,18c,18d,18e…第1ないし第5の油圧シリンダ、21…ピストンロッド、27a,27b,27c,27d,27e…第1ないし第5の車輪、30…油圧機構。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、階段のステップを乗り越えて走行が可能な階段昇降車および車輪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
階段を上り下りが可能な階段昇降車は、車体に支持された車軸と、車軸から放射状に突出された複数の支持アームと、支持アームの先端に支持された複数の車輪と、を備えている。
【0003】
この種の階段走行車では、支持アームが車軸を中心に回転することで、車輪が階段のステップに順次乗り上げていく。そのため、車軸は、車輪の接地点を支点とする円弧を描きながら階段に沿って上昇する。この結果、階段走行車の車体は、車輪が階段のステップを乗り越える度に上下動を繰り返すことになり、車体の挙動が不安定となる。
【0004】
この対策として、従来、各支持アームを伸縮可能な電動シリンダにより構成するとともに、各支持アームの長さを支持アームの傾斜角度に応じて変化させることで、車体の上下動を抑制するようにした階段昇降車が知られている。
【0005】
従来の階段昇降車によると、支持アームの傾斜角度を複数のセンサーによって検出し、各センサーの検出結果を制御装置に入力している。制御装置は、センサーによって検出された支持アームの傾斜角度が予め設定された値に達した時に、電動シリンダを電気的に制御して支持アームの長さを調節する。これにより、支持アームが階段のステップを乗り越す度に支持アームの長さが変化するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−97075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の階段昇降車は、支持アームの傾斜角度を個々に検出する複数のセンサーを始めとして、センサーの検出結果に基づいて複数の電動シリンダを制御する制御装置を必要としている。
【0008】
この結果、部品点数が増大するのは勿論のこと、支持アームの長さを調整するに当たって複雑な電気的な制御を必要とし、階段昇降車のコストアップを招く要因となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態によれば、階段昇降車は、車体と、車体に支持された複数の走行輪と、を具備している。前記走行輪は、前記車体に固定された固定軸と、前記固定軸の外側に同軸状に支持された回転軸と、前記回転軸の外周面から前記回転軸の周方向に間隔を存して放射状に突出され、前記回転軸の径方向に移動可能なロッドを有する複数の油圧シリンダと、前記油圧シリンダのロッドの先端に支持され、階段のステップに接する複数の車輪と、前記複数の油圧シリンダに作動油を供給する油圧機構と、を含んでいる。
【0010】
前記油圧機構は、前記複数の車輪のうち、いずれか一つの車輪が前記階段のステップに突き当たった時に、前記固定軸と前記回転軸との間の相対的な回転に基づいて前記ステップに突き当たった車輪よりも前記走行輪の回転方向に沿う前側に位置された他の車輪に対応する油圧シリンダおよび前記ステップに突き当たった車輪よりも前記走行輪の回転方向に沿う後側に位置された他の車輪に対応する油圧シリンダの少なくともいずれか一方に作動油を供給する。これにより、前記走行輪は、前記他の車輪を前記回転軸の径方向に沿う外側に移動させながら回転する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係る階段昇降車の側面図。
【図2】第1の実施形態に係る走行輪の断面図。
【図3】第1の実施形態に係る走行輪の側面図。
【図4】第1の実施形態の走行輪において、第1の車輪を支持する第1の油圧シリンダに対応する部分の断面図。
【図5】図4のF5−F5線に沿う断面図。
【図6】図2のF6−F6線に沿う断面図。
【図7】図2のF7−F7線に沿う断面図。
【図8】図2のF8−F8線に沿う断面図。
【図9】図2のF9−F9線に沿う断面図。
【図10】図2のF10−F10線に沿う断面図。
【図11】第1の実施形態において、第1の油溜まりが第2の油溜まりおよび第5の油溜まりに通じた時の作動油の流れ経路を示す走行輪の展開図。
【図12】第1の実施形態において、第1ないし第5の油溜まりが密閉された状態を示す走行輪の展開図。
【図13】第1の実施形態において、第2の油溜まりが第1の油溜まりおよび第3の油溜まりに通じた時の作動油の流れ経路を示す走行輪の展開図。
【図14】第1の実施形態において、第5の油溜まりが第4の油溜まりに通じた時の作動油の流れ経路を示す走行輪の展開図。
【図15】第1の実施形態において、第1および第5の車輪が床面に接した状態を模式的に示す走行輪の側面図。
【図16】第1の実施形態において、第1の車輪が一段目のステップの蹴上がり部と床面とで規定される角部に達した状態を模式的に示す走行輪の側面図。
【図17】第1の実施形態において、第1の車輪が一段目のステップの蹴上がり部で押されて、第2の車輪が走行輪の径方向外側に移動した状態を模式的に示す走行輪の側面図。
【図18】第1の実施形態において、走行輪が第1の車輪を支点として一段目のステップに乗り上げるように回転した状態を模式的に示す走行輪の側面図。
【図19】第1の実施形態において、走行輪が第5の車輪によって一段目のステップの上に押し上げられた状態を模式的に示す走行輪の側面図。
【図20】第2の実施形態の走行輪において、第1の車輪を支持する第1の油圧シリンダに対応する部分の断面図。
【図21】図20のF21−F21線に沿う断面図。
【図22】第3の実施形態に係る走行輪の平面図。
【図23】第4の実施形態に係る走行輪の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施形態]
以下、第1の実施形態について、図1ないし図19を参照して説明する。
【0013】
図1は、階段1のステップ2を順次乗り越えて走行が可能な人力式の荷物運搬車3を開示している。荷物運搬車3は、階段昇降車の一例であって、荷物を載せる荷台4と、荷台4を支える四つの走行輪5とを備えている。荷台4は、例えば上向きに開放された四角い箱形であり、荷物運搬車3の車体を兼ねている。荷台4の後端部には、作業者が荷物運搬車3を押したり、引いたりする際に手を掛けるハンドル6が設けられている。
【0014】
走行輪5は、荷台4の前部および後部において、荷台4を間に挟んで左右に振り分けて配置されている。図1では、荷物運搬車3の進行方向の左側に配置された前側の走行輪5および後側の走行輪5のみを示している。
【0015】
なお、走行輪5は四つに限らず、例えば荷台4の前部又は後部に配置される走行輪を一輪とすることも可能である。
【0016】
走行輪5は、車輪装置の一例であって、互いに共通の構成を有している。そのため、本実施形態では、一つの走行輪5を代表して説明する。
【0017】
図2および図3に示すように、走行輪5は、固定軸10および回転軸11を備えている。固定軸10は、円柱状の本体12と、本体12の長手方向に沿う両端から同軸状に突出された軸部13とを有している。軸部13の一端は、荷台4の側壁4aに固定されている。このため、固定軸10は、側壁4aから荷台4の側方に突出されている。
【0018】
固定軸10の本体12は、第1ないし第6の隔壁14a,14b,14c,14d,14e,14fを有している。第1ないし第6の隔壁14a,14b,14c,14d,14e,14fは、夫々本体12の外周面から本体12の径方向に沿う外側に向けて円盤状に張り出している。さらに、第1ないし第6の隔壁14a,14b,14c,14d,14e,14fは、本体12と同軸状をなすとともに、本体12の軸方向に互いに間隔を存して一列に並んでいる。
【0019】
回転軸11は、中空の円筒状をなしている。本実施形態によると、回転軸11は、半円筒状をなす一対の軸要素11a,11bを互いに組み合わせることで構成されている。回転軸11は、固定軸10を外側から同軸状に覆うように固定軸10の軸部13に回転自在に支持されている。
【0020】
第1ないし第6の溝15a,15b,15c,15d,15e,15fが回転軸11の内周面に形成されている。第1ないし第6の溝15a,15b,15c,15d,15e,15fは、回転軸11の周方向に連続するとともに、回転軸11の軸方向に間隔を存して並んでいる。固定軸10の第1ないし第6の隔壁14a,14b,14c,14d,14e,14fは、回転軸11の第1ないし第6の溝15a,15b,15c,15d,15e,15f内に入り込んでいる。このため、回転軸11の内周面のうち第1ないし第6の溝15a,15b,15c,15d,15e,15fの間に位置された部分は、見かけ上、固定軸10の本体12の外周面に向けて張り出す第1ないし第5の座部16a,16b,16c,16d,16eを構成している。
【0021】
第1ないし第5の座部16a,16b,16c,16d,16eは、回転軸11の周方向に連続するリング状をなすとともに、回転軸11の軸方向に間隔を存して並んでいる。図2に示すように、第1の座部16aは、第1の隔壁14aと第2の隔壁14bとの間に介在されている。第2の座部16bは、第2の隔壁14bと第3の隔壁14cとの間に介在されている。第3の座部16cは、第3の隔壁14cと第4の隔壁14dとの間に介在されている。第4の座部16dは、第4の隔壁14dと第5の隔壁14eとの間に介在されている。第5の座部16eは、第5の隔壁14eと第6の隔壁14fとの間に介在されている。
【0022】
言い換えると、第2の隔壁14bは、第1の座部16aと第2の座部16bとの間を仕切っている。第3の隔壁14cは、第2の座部16bと第3の座部16cとの間を仕切っている。第4の隔壁14dは、第3の座部16cと第4の座部16dとの間を仕切っている。第5の隔壁14eは、第4の座部16dと第5の座部16eとの間を仕切っている。
【0023】
図2ないし図5に示すように、回転軸11は、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eを備えている。第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eは、回転軸11の周方向に互いに間隔を存して放射状に配置されているとともに、回転軸11の軸方向に互いに間隔を存して並んでいる。
【0024】
具体的に述べると、第1の油圧シリンダ18aは、回転軸11の第1の座部16aに対応する位置から回転軸11の径方向に突出されている。第2の油圧シリンダ18bは、回転軸11の第2の座部16bに対応する位置から回転軸11の径方向に突出されている。第3の油圧シリンダ18cは、回転軸11の第3の座部16cに対応する位置から回転軸11の径方向に突出されている。第4の油圧シリンダ18dは、回転軸11の第4の座部16dに対応する位置から回転軸11の径方向に突出されている。第5の油圧シリンダ18eは、回転軸11の第5の座部16eに対応する位置から回転軸11の径方向に突出されている。さらに、本実施形態によると、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eは、回転軸11の周方向に沿う位相が72度ずつずれている。
【0025】
第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eは、互いに共通の構成を有するので、第1の油圧シリンダ18aを代表して説明する。
【0026】
図4および図5に示すように、第1の油圧シリンダ18aは、夫々シリンダボディ19、ピストン20およびピストンロッド21を備えている。シリンダボディ19は、回転軸11の外周面から一体に突出されている。ピストン20は、シリンダボディ19に収容されて、シリンダボディ19の内部を作動油が充填された油室22と空気室23とに仕切っている。空気室23は、ブリーザ口24を通じて大気中に開放されている。ピストンロッド21は、ピストン20と一緒にシリンダボディ19の軸方向に移動可能であるとともに、空気室23を貫通している。ピストンロッド21の先端は、シリンダボディ19の外に突出されている。
【0027】
したがって、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eの油室22に作動油が供給されると、ピストン20が油圧により空気室23に向けて押圧される。これにより、ピストンロッド21がシリンダボディ19の先端から突出する。
【0028】
第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eのピストンロッド21の先端に夫々ブラケット25を介して第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eが回転自在に支持されている。第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eは、ピストンロッド21がシリンダボディ19内に最も入り込んだ時に、固定軸10の軸部13を中心とする第1の回転軌跡L1に沿って公転するとともに、ピストンロッド21がシリンダボディ19から最も突出した時に、固定軸10の軸部13を中心とする第2の回転軌跡L2に沿って公転する。第2の回転軌跡L2の直径は、第1の回転軌跡L1の直径よりも大きくなっている。
【0029】
図2、図4〜図10に示すように、走行輪5は、油圧機構30を内蔵している。油圧機構30は、走行輪5が回転した時に第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eの油室22に作動油を供給することで、第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eを回転軸11の径方向外側に順次移動させるためのものである。
【0030】
油圧機構30は、作動油を蓄える第1ないし第5の油溜まり31a,31b,31c,31d,31eを備えている。第1ないし第5の油溜まり31a,31b,31c,31d,31eは、回転軸11の第1ないし第5の座部16a,16b,16c,16d,16eに形成されている。第1ないし第5の油溜まり31a,31b,31c,31d,31eは、夫々回転軸11の周方向に沿うとともに、第1ないし第5の座部16a,16b,16c,16d,16eから固定軸10の本体12の外周面に向けて開放された円弧状の溝で構成されている。
【0031】
図6に示すように、第1の油溜まり31aは、第1の座部16aに形成された連通路32aを介して第1の油圧シリンダ18aの油室22に通じている。第1の油溜まり31aは、第1の油圧シリンダ18aに対し図6に矢印で示す回転軸11の回転方向に沿う前側に変位した位置に設けられている。
【0032】
図7に示すように、第2の油溜まり31bは、第2の座部16bに形成された連通路32bを介して第2の油圧シリンダ18bの油室22に通じている。第2の油溜まり31bは、第2の油圧シリンダ18bに対し図7に矢印で示す回転軸11の回転方向に沿う前側に変位した位置に設けられている。
【0033】
図8に示すように、第3の油溜まり31cは、第3の座部16cに形成された連通路32cを介して第3の油圧シリンダ18cの油室22に通じている。第3の油溜まり31cは、第3の油圧シリンダ18cに対し図8に矢印で示す回転軸11の回転方向に沿う前側に変位した位置に設けられている。
【0034】
図9に示すように、第4の油溜まり31dは、第4の座部16dに形成された連通路32dを介して第4の油圧シリンダ18dの油室22に通じている。第4の油溜まり31dは、第4の油圧シリンダ18dに対し図9に矢印で示す回転軸11の回転方向に沿う前側に変位した位置に設けられている。
【0035】
図10に示すように、第5の油溜まり31eは、第5の座部16eに形成された連通路32eを介して第5の油圧シリンダ18eの油室22に通じている。第5の油溜まり31eは、第5の油圧シリンダ18eに対し図10に矢印で示す回転軸11の回転方向に沿う前側に変位した位置に設けられている。
【0036】
したがって、回転軸11の軸方向に隣り合う第1ないし第5の油溜まり31a〜31eは、回転軸11の周方向に位相をずらして配置されている。
【0037】
本実施形態では、図5に代表して示すように、連通路32aに弁33が設けられている。弁33は、連通路32aを流れる作動油の流量を人為的に調節するためのものであって、回転軸11の外に露出された図示しない操作部を有している。このような弁33は、図示を省略するが他の連通路32b〜32eにも同様に設けられている。
【0038】
図2、図4、図6〜図10に示すように、固定軸10の第1ないし第6の隔壁14a〜14fに夫々第1ないし第3の連絡孔35a,35b,35cが形成されている。第1ないし第3の連絡孔35a,35b,35cは連絡通路の一例であって、固定軸10の周方向に間隔を存して並んでいる。第1ないし第6の隔壁14a〜14fに形成された第1の連絡孔35aは、固定軸10の軸方向に沿う同一の直線上に位置されている。第1ないし第6の隔壁14a〜14fに形成された第2の連絡孔35bは、固定軸10の軸方向に沿う同一の直線上に位置されている。第1ないし第6の隔壁14a〜14fに形成された第3の連絡孔35cは、固定軸10の軸方向に沿う同一の直線上に位置されている。
【0039】
このため、固定軸10の上で回転軸11が回転すると、第1ないし第5の油溜まり31a,31b,31c,31d,31eが第1ないし第6の隔壁14a〜14fに形成された第1ないし第3の連絡孔35a,35b,35cの上を通過する。これにより、第1ないし第5の油溜まり31a,31b,31c,31d,31eに蓄えられた作動油が第1ないし第3の連絡孔35a,35b,35cを通じて出入りするようになっている。
【0040】
さらに、第1の隔壁14aの第1の連絡孔35aと第6の隔壁14fの第1の連絡孔35aとの間は、第1のバイパス通路36aを介して繋がっている。第1の隔壁14aの第2の連絡孔35bと第6の隔壁14fの第2の連絡孔35bとの間は、第2のバイパス通路36bを介して繋がっている。同様に、第1の隔壁14aの第3の連絡孔35cと第6の隔壁14fの第3の連絡孔35cとの間は、第3のバイパス通路36cを介して繋がっている。第1ないし第3のバイパス通路36a,36b,36cは、固定軸10の内部に形成されているとともに、固定軸10の軸方向に沿って延びている。
【0041】
この結果、第1ないし第5の油溜まり31a,31b,31c,31d,31eは、第1ないし第3の連絡孔35a,35b,35cおよび第1ないし第3のバイパス通路36a,36b,36cを介して連通されている。
【0042】
図2および図3に示すように、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eのピストンロッド21の先端に夫々リターンロッド38が固定されている。リターンロッド38は、ピストンロッド21の先端から荷台4の側壁4aに向けて水平に延びている。
【0043】
さらに、荷台4の側壁4aに復帰手段の一例である押圧板39が取り付けられている。押圧板39は、回転軸11の後方において起立している。押圧板39の前面は、リターンロッド38の先端部の外周面が接するカム面40となっている。
【0044】
次に、走行輪5の第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eが動作するメカニズムについて、図11ないし図14を加えて説明する。
【0045】
図11ないし図14は、作動油の流れを固定軸10および回転軸11を平面的に展開して表したもので、図中白抜きの矢印は、回転軸11の回転方向を示している。図11は、例えば第1の油圧シリンダ18aが図6に示す基点に位置する時の第1ないし第5の油溜まり31a,31b,31c,31d,31eと第1ないし第3の連絡孔35a,35b,35cとの位置関係を示している。
【0046】
図11に示すように、第1の油圧シリンダ18aが基点に位置された状態では、第1の座部16aの第1の油溜まり31aは、第2の隔壁14bに形成された第1の連絡孔35aを介して隣り合う第2の油溜まり31bに通じている。さらに、第1の油溜まり31aは、第1の隔壁14aに形成された第2の連絡孔35b、第2のバイパス通路36bおよび第6の隔壁14fに形成された第2の連絡孔35bを介して第5の油溜まり31eに通じている。
【0047】
第1の油圧シリンダ18aに支持された第1の車輪27aが走行輪5の回転中心に向けて押圧されると、第1の油圧シリンダ18aの油室22内の作動油がピストン20により加圧されて、油室22から連通路32aを通って第1の油溜まり31aに押し出される。これにより、図11に太い矢印で示すように、第1の油溜まり31a内の作動油が第2の隔壁14bの第1の連絡孔35aを通って第2の油溜まり31bに移動するとともに、第1の隔壁14aの第2の連絡孔35b、第2のバイパス通路36bおよび第6の隔壁14fの第2の連絡孔35bを通って第5の油溜まり31eに移動する。
【0048】
この結果、第2の油溜まり31bの作動油が連通路32bを通って第2の油圧シリンダ18bの油室22に移動するので、ピストン20に作用する油圧が増大する。よって、ピストンロッド21がシリンダボディ19の外に押し出されて、第2の車輪27bが回転軸11の径方向に沿う外側に向けて移動する。
【0049】
同様に、第5の油溜まり31eの作動油が連通路32eを通って第5の油圧シリンダ18eの油室22に移動するので、ピストン20に作用する油圧が増大する。よって、ピストンロッド21がシリンダボディ19の外に押し出されて、第5の車輪27eが回転軸11の径方向に沿う外側に向けて移動する。
【0050】
加えて、図11の状態では、第3の隔壁14cの第1ないし第3の連絡孔35a,35b,35cは、第2の座部16bおよび第3の座部16cによって閉じられている。同様に、第5の隔壁14eの第1ないし第3の連絡孔35a,35b,35cは、第4の座部16dおよび第5の座部16eによって閉じられている。
【0051】
そのため、第2の油溜まり31bと第3の油溜まり31cとの間で作動油が移動することはないとともに、第5の油溜まり31eと第4の油溜まり31dとの間で作動油が移動することはない。
【0052】
よって、第1の車輪27aが押圧された時には、第2および第5の油圧シリンダ18b,18eが動作されて、第2の車輪27bおよび第5の車輪27eが回転軸11の径方向に沿う外側に移動することになる。
【0053】
回転軸11の回転により、第1の油圧シリンダ18aを有する第1の座部16aが図11に示す基点から図12に示す位置に移動すると、第1の隔壁14aの第1および第3の連絡孔35a,35cが第1の座部16aによって閉じられる。それとともに、第5の隔壁14eの第1および第3の連絡孔35a,35b、第6の隔壁14fの第1ないし第3の連絡孔35a,35b,35cが第5の座部16eによって閉じられる。
【0054】
この結果、第1の油溜まり31aおよび第5の油溜まり31eが密閉状態となって作動油の流動が停止され、第2の車輪27bおよび第5の車輪27eが回転軸11の径方向に沿う外側に移動された状態に保持される。
【0055】
回転軸11の回転に伴い、第1の座部16aが図12に示す位置から図13に示す位置に移動し、回転軸11の径方向に沿う外側に移動された第2の車輪27bが押圧されると、第2の油圧シリンダ18bの油室22内の作動油がピストン20により加圧されて、油室22から連通路32bを通って第2の油溜まり31bに押し出される。
【0056】
この際、第2の油溜まり31bは、第2の隔壁14bの第2の連絡孔35bを介して第1の油溜まり31aに通じているとともに、第3の隔壁14cの第1の連絡孔35aを介して第3の油溜まり31cに通じている。
【0057】
この結果、図13に太い矢印で示すように、第2の油溜まり31b内の作動油が第2の隔壁14bの第2の連絡孔35bを通って第1の油溜まり31aに移動するとともに、第3の隔壁14cの第1の連絡孔35aを介して第3の油溜まり31cに移動する。
【0058】
したがって、第1の油溜まり31aおよび第3の油溜まり31cの作動油が第1の油圧シリンダ18aの油室22および第3の油圧シリンダ18cの油室22に移動するので、夫々のピストン20に作用する油圧が増大する。よって、第1および第3の油圧シリンダ18a,18cでは、夫々のピストンロッド21がシリンダボディ19の外に押し出されて、第1の車輪27aおよび第3の車輪27cが回転軸11の径方向に沿う外側に向けて移動する。
【0059】
回転軸11がさらに回転すると、先に回転軸11の径方向に沿う外側に移動された第5の車輪27eに対応するリターンロッド38が荷台4に固定された押圧板39のカム面40に接触する。この接触により、第5の車輪27eが押圧されて、第5の油圧シリンダ18eの油室22内の作動油がピストン20により加圧される。よって、油室22内の作動油が連通路32eを通って第5の油溜まり31eに押し出される。
【0060】
この際、図14に示すように、第5の油溜まり31eは、第4の隔壁14eの第3の連絡孔35cを介して第4の油溜まり31dに通じている。このため、図14に太い矢印で示すように、第5の油溜まり31e内の作動油が第3の連絡孔35cを通って第4の油溜まり31dに移動する。
【0061】
したがって、第4の油溜まり31dの作動油が連通路32dを通って第4の油圧シリンダ18dの油室22に移動するので、ピストン20に作用する油圧が増大する。よって、第4の油圧シリンダ18dでは、ピストンロッド21がシリンダボディ19の外に押し出されて、第4の車輪27dが回転軸11の径方向に沿う外側に向けて移動する。
【0062】
さらに、第5の油溜まり31eが第4の隔壁14eの第3の連絡孔35cを介して第4の油溜まり31dに通じている状態では、第2の油溜まり31bが第1の油溜まり31aおよび第3の油溜まり31cに夫々通じているので、第1の油圧シリンダ18aの油室22および第3の油圧シリンダ18cの油室22に作動油が継続して供給される。
【0063】
このような一連の動作を回転軸11の回転に伴って繰り返すことで、第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eが順次回転軸11の径方向に沿って移動することになる。
【0064】
次に、荷物運搬車3が階段1を上る時の走行輪5の動作について、図15ないし図19を加えて説明する。
【0065】
図15ないし図19は、走行輪5が回転する際の第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eの相対的な位置関係を模式的に示している。
【0066】
走行輪5がフラットな床面fに沿って走行する場合、図15に示す例では、回転軸11の周方向に隣り合う第1および第5の車輪27a,27eが床面fに転がり接触している。そのため、作業者が荷物運搬車3を押すと、第1および第5の車輪27a,27eは、公転せずに床面fとの接触に伴って回転する。よって、走行輪5は、静止したままの状態で床面fに沿って移動することになり、床面fから回転軸11の回転中心までの高さHが一定に保たれている。
【0067】
図15に示すように、第1の車輪27aが階段1の一段目のステップ2の蹴上がり部2aと床面fとで規定される角部に達すると、第1の車輪27aがステップ2の蹴上がり部2により水平方向に押される。第1の車輪27aが一段目のステップ2の蹴上がり部2aに達した時、走行輪11の第1ないし第5の油溜まり31a,31b,31c,31d,31eと、第1ないし第6の隔壁14a,14b,14c,14d,14e,14fに形成された第1ないし第3の連絡孔35a,35b,35cとは、図11に示すような位置関係に保たれている。
【0068】
このため、走行輪5の移動に伴って第1の車輪27aが蹴上がり部2aによって押されると、図15に二点鎖線で示すように、第1の車輪27aが走行輪5の回転中心に向けて移動する。よって、図11に太い矢印で示すように、第1の油溜まり31a内の作動油が第2の隔壁14bの第1の連絡孔35aから第2の油溜まり31b、連通路32bを通って第2の車輪27bに対応する第2の油圧シリンダ18bの油室22に移動する。
【0069】
この結果、第2の油圧シリンダ18bのピストンロッド21がシリンダボディ19の外に押し出されて、図16に二点鎖線で示すように、第1の車輪27aよりも走行輪5の回転方向に沿う後側に位置された第2の車輪27bが走行輪5の径方向に沿う外側に向けて移動する。この移動により、第2の車輪27bが一段目のステップ2の踏板2bの上方に進出する。
【0070】
さらに、第1の車輪27aが蹴上がり部2aによって押されると、図11に太い矢印で示すように、第1の油溜まり31a内の作動油が第1の隔壁14aの第2の連絡孔35bから第2のバイパス通路36b、第6の隔壁14fの第2の連絡孔35bを通って第5の油圧シリンダ18eの油室22に移動する。
【0071】
この結果、図16に二点鎖線で示すように、第5の油圧シリンダ18eのピストンロッド21がシリンダボディ19の外に押し出されて、第1の車輪27aよりも走行輪5の回転方向に沿う前側に位置された第5の車輪27eが走行輪5の径方向に沿う外側に向けて移動する。
【0072】
第5の車輪27eが走行輪5の径方向に沿う外側に移動すると、第5の車輪27eが床面fに押し付けられる。したがって、第5の車輪27eが走行輪5を全体的に押上げて、走行輪5の回転を補助する。
【0073】
それとともに、図17に二点鎖線で示すように、第5の車輪27eが引き続いて床面fを押すので、走行輪5の回転が円滑に行なわれる。
【0074】
第1の車輪27aおよび第5の車輪27eが移動すると同時に、走行輪5が一段目のステップ2に近づくように前進する。図17は、走行輪5の前進に伴って、第1の車輪27aを支持する第1の油圧シリンダ18aのピストンロッド21がシリンダボディ19の内部に最も押し込まれた状態を示している。第1の油圧シリンダ18aのピストンロッド21が最も押し込まれると、走行輪5は、図17に矢印で示すように第1の車輪27aを支点として反時計回り方向に30度程度回転する。この回転により、先に走行輪5の径方向に沿う外側に向けて移動された第2の車輪27bが一段目のステップ2の踏板2bに近づく。
【0075】
走行輪5がさらに回転すると、図18に示すように、先に走行輪5の径方向に沿う外側に向けて移動された第2の車輪27bが一段目のステップ2の踏板2bと二段目のステップ2の蹴上がり部2aとで規定される角部に到達する。すると、今度は第2の車輪27bが二段目のステップ2の蹴上がり部2aによって押されるので、図18に二点鎖線で示すように、第2の車輪27bが走行輪5の回転中心に向けて移動する。
【0076】
よって、図13に示すように、第2の油溜まり31b内の作動油が第2の隔壁14bの第2の連絡孔35bから第1の油溜まり31aに移動する。この結果、第1の油圧シリンダ18aが動作されて第1の車輪27aが図18に矢印で示すように走行輪5の径方向に沿う外側に移動する。これにより、第2の車輪27bよりも走行輪5の回転方向に沿う前側に位置された第1の車輪27aが床面fを押圧する。
【0077】
それとともに、第2の油溜まり31b内の作動油が第3の隔壁14cの第1の連絡孔35aから第3の油溜まり31cに移動するので、第3の油圧シリンダ18cが動作されて図18に矢印で示すように第3の車輪27cが走行輪5の径方向に沿う外側に移動する。よって、第2の車輪27bよりも走行輪5の回転方向に沿う後側に位置された第3の車輪27cが三段目のステップ2の踏板2bの上に進出する。
【0078】
図18に示すように、第2の車輪27bが二段目のステップ2の蹴上がり部2aによって押されるまで走行輪5が回転すると、先に走行輪5の径方向に沿う外側に移動された第5の車輪27eが床面fから離れる。第5の車輪27eが床面fを離脱してから走行輪5が約72度回転するまでの間、第5の車輪27eに対応するリターンロッド38が荷台4に固定された押圧板39のカム面40に接触する。
【0079】
この接触により、図18に二点鎖線で示すように、第5の車輪27eが走行輪5の回転中心に向けて強制的に押し戻される。そのため、第5の油圧シリンダ18eでは、ピストンロッド21がシリンダボディ19に押し込まれて油室22の容積が減少し、油室22内の作動油が連通路32eを通って第5の油溜まり31eに押し出される。
【0080】
この結果、図14に太字の矢印で示すように、第5の油溜まり31e内の作動油が第5の隔壁14eの第3の連絡孔35cから第4の油溜まり31dに移動するので、第4の油溜まり31d内の作動油が連通路32dを通って第4の油圧シリンダ18dの油室22に移動する。
【0081】
よって、第4の油圧シリンダ18dのピストンロッド21がシリンダボディ19の外に押し出されて、図19に矢印で示すように第5の車輪27eよりも走行輪5の回転方向に沿う前側に位置された第4の車輪27dが走行輪5の径方向に沿う外側に向けて移動を開始する。
【0082】
走行輪5が図19に示す位置からさらに前進して、回転軸11の第1の座部16aが図14の位置よりも左側に移動すると、第1の油溜まり31aが第1の隔壁14aの第3の連絡孔35cの位置に到達する。
【0083】
これにより、図14に破線の矢印で示すように、第5の油溜まり31e内の作動油が第6の隔壁14fの第3の連絡孔35c、第3のバイパス通路36cおよび第1の隔壁14aの第3の連絡孔35cを通って第1の油溜まり31aに供給される。したがって、図19に矢印で示すように、第1の車輪27aが床面fに向けて移動を開始する。
【0084】
加えて、第2の隔壁14bの第2の連絡孔35b、第3の隔壁14cの第1の連絡孔35aおよび第4の隔壁14dの第3の連絡孔35cが、夫々第1の座部16a、第2の座部16bおよび第3の座部16dで閉じられる。そのため、第4の油溜まり31dに対する作動油の供給が断たれる。
【0085】
このような動作を繰り返すことで、走行輪5の回転時に第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eが順次走行輪5の径方向に移動し、走行輪5が階段1のステップ2を一段ずつ乗り越していくことになる。
【0086】
第1の実施形態によると、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eの油室22と第1ないし第5の油溜まり31a,31b,31c,31d,31eとの間を結ぶ連通路32a,32b,32c,32d,32eに、夫々連通路32a,32b,32c,32d,32eを流れる作動油の流量を調整する弁33が設けられている。そのため、弁33の開度を調整することで、作動油が通路32a,32b,32c,32d,32eを通過する際に生じる減衰力を変化させて、第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eの移動速度を調整することができる。
【0087】
よって、荷物運搬車3の走行輪5が階段1のステップ2を一段ずつ乗り越えていく時に、走行輪5の回転中心が図17に示す階段1の傾斜に沿う直線O1上に位置するように、第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eの移動速度を調整することで、荷物運搬車3が階段1に沿って走行する際の上下動を抑えて、荷物運搬車3の挙動を安定させることができる。
【0088】
このような第1の実施形態によれば、荷物運搬車3が階段1を上る時は、回転軸11の周方向に互いに間隔を存して放射状に配置された第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eが走行輪5の回転に追従して次の段のステップ2の踏板2aの上に進出するように、走行輪5の径方向に沿う外側に順番に移動する。
【0089】
それとともに、第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eがステップ2の蹴上がり部2aに突き当たる度に、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eのピストンロッド21がシリンダボディ19の内部に引っ込む。このため、第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eが蹴上がり部2aに突き当たった時の衝撃を第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eが吸収する。
【0090】
しかも、本実施形態では、第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eは、走行輪5がステップ2を乗り越す度に順番に走行輪5の回転軸11を押し上げて、走行輪5の回転を補助する。
【0091】
一方、荷物運搬車3が階段1を下る時は、例えば第1の車輪27aがステップ2の踏板2bに接した時点で、第1の車輪27aが踏板2bにより走行輪5の回転中心に向けて押される。これにより、第1の車輪27aよりも走行輪5の回転方向に沿う後側に位置された第5の車輪27eが走行輪5の径方向に沿う外側に移動して下の段の踏板2bの上に進出する。
【0092】
それとともに、第1の車輪27aよりも走行輪5の回転方向に沿う前側に位置された第2の車輪27bが走行輪5の径方向に沿う外側に移動する。この移動により、第2の車輪27bが上の段の踏板2bを押圧し、走行輪5の回転を補助する。
【0093】
以上のことから、荷物運搬車3が階段1に沿って走行する際に、荷物運搬車3に加わる衝撃が少なくなるとともに荷物運搬車3の上下動が抑制され、階段1の上り下りを容易に行うことができる。
【0094】
第1の実施形態によると、固定軸10と回転軸11との相対的な回転に伴って第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eの油室22に対する作動油の流れが自動的に切り換わる。このため、走行輪5の回転時に、油室22に流入する作動油の圧力を利用して第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eを走行輪5の径方向に沿う外側に選択的に移動させることができる。
【0095】
この結果、第1ないし第5の車輪27a,27b,27c,27d,27eを移動させるに当たって、複数のセンサーや制御装置を用いた複雑な電気的な制御が不要となる。よって、走行輪5の構成を簡素化することができ、走行輪5ひいては荷物運搬車3の製造コストを低減できるといった利点がある。
【0096】
[第2の実施形態]
図20および図21は、走行輪の第2の実施形態を開示している。
【0097】
第2の実施形態は、回転軸の第1ないし第5の油溜まりに作動油を出し入れするための構成が第1の実施形態と相違している。これ以外の走行輪の構成は、基本的に第1の実施形態と同様である。そのため、第2の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0098】
図20および図21は、走行輪5の第1の車輪27a側の端部を示している。図20および図21に示すように、固定軸10の本体12は、第2の隔壁14bに対応する位置に第1ないし第3の連絡通路51a,51b,51cを有している。第1ないし第3の連絡通路51a,51b,51cは、第2の隔壁14bを迂回するように固定軸10の軸方向に延びているとともに、固定軸10の周方向に間隔を存して並んでいる。
【0099】
第1ないし第3の連絡通路51a,51b,51cの一端は、回転軸11の第1の座部16aと向かい合うように本体12の外周面に開口されている。同様に、第1ないし第3の連絡通路51a,51b,51cの他端は、第2の回転軸11の第2の座部16bと向かい合うように本体12の外周面に開口されている。
【0100】
そのため、固定軸10の上で回転軸11が回転すると、第1の座部16aに形成された第1の油溜まり31aおよび第2の座部16bに形成された第2の油溜まり31bが第1ないし第3の連絡通路51a,51b,51cの開口端を通過する。これにより、第1および第2の油溜まり31a,31bに蓄えられた作動油が第1ないし第3の連絡通路51a,51b,51cを通じて出入りするようになっている。
【0101】
言い換えると、本体12に形成された第1ないし第3の連絡通路51a,51b,51cは、前記第1の実施形態の第1ないし第3の連絡孔35a,35b,35cと同様の機能を有している。
【0102】
なお、図示を省略するが、第1ないし第3の連絡通路51a,51b,51cは、本体12のうち第3ないし第5の隔壁14c,14d,14eに対応する箇所にも同じように形成されている。そのため、回転軸11が回転すると、第3ないし第5の油溜まり31c,31d,31eが第1ないし第3の連絡通路51a,51b,51cの開口端の上を通過するようになっている。
【0103】
このような構成においても、固定軸10と回転軸11との相対的な回転に伴って第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eの油室22に対する作動油の流れが自動的に切り換わる。よって、前記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0104】
[第3の実施形態]
図22は、走行輪の第3の実施形態を開示している。
【0105】
第3の実施形態は、回転軸と第1ないし第5の油圧シリンダとの相対的な位置関係が第1の実施形態と相違している。図22に示すように、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eは、回転軸11の軸方向にずれておらず、回転軸11の同一の周上に互いに間隔を存して配列されている。さらに、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eは、回転軸11のうち荷台4の側壁4aとは反対側の端部に位置されている。
【0106】
この構成によれば、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eが回転軸11の端部に片寄っているので、第1の実施形態よりも走行輪5の軸長を短くすることができる。よって、走行輪5のコンパクト化が可能となる。
【0107】
[第4の実施形態]
図23は、走行輪の第4の実施形態を開示している。
【0108】
第4の実施形態は、回転軸と第1ないし第5の油圧シリンダとの相対的な位置関係が第3の実施形態と相違している。図23に示すように、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eは、回転軸11の軸方向にずれておらず、回転軸11の同一の周上に互いに間隔を存して配列されている。さらに、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eは、回転軸11のうち荷台4の側壁4aと隣り合う端部に位置されている。
【0109】
このような構成においても、第1ないし第5の油圧シリンダ18a,18b,18c,18d,18eが回転軸11の端部に片寄っているので、走行輪5の軸長を短くすることができる。よって、走行輪5のコンパクト化が可能となる。
【0110】
なお、階段昇降車は、作業者が押したり引いたりする人力式の荷物運搬車に限らず、例えば回転軸をモータのような駆動源で駆動するようにした電動式の荷物運搬車であってもよい。
【0111】
さらに、油圧シリンダおよび車輪の数は、例えばステップの蹴上がり部の高さ、踏板の幅によって適宜変更が可能であり、例えば油圧シリンダおよび車輪が三つであったり、六つであっても何等差し支えない。
【0112】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0113】
1…階段、2…ステップ、4…車体(荷台)、5…走行輪、10…固定軸、11…回転軸、18a,18b,18c,18d,18e…第1ないし第5の油圧シリンダ、21…ピストンロッド、27a,27b,27c,27d,27e…第1ないし第5の車輪、30…油圧機構。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に支持された複数の走行輪と、を具備した階段昇降車であって、
前記走行輪は、
前記車体に固定された固定軸と、
前記固定軸の外側に同軸状に支持された回転軸と、
前記回転軸の外周面から前記回転軸の周方向に間隔を存して放射状に突出され、前記回転軸の径方向に移動可能なロッドを有する複数の油圧シリンダと、
前記油圧シリンダの前記ロッドの先端に支持され、階段のステップに接する複数の車輪と、
前記複数の油圧シリンダに作動油を供給する油圧機構と、を含み、
前記油圧機構は、前記複数の車輪のうち、いずれか一つの車輪が前記階段のステップに突き当たった時に、前記固定軸と前記回転軸との間の相対的な回転に基づいて前記ステップに突き当たった車輪よりも前記走行輪の回転方向に沿う前側に位置された他の車輪に対応する油圧シリンダおよび前記ステップに突き当たった車輪よりも前記走行輪の回転方向に沿う後側に位置された他の車輪に対応する油圧シリンダの少なくともいずれか一方に作動油を供給し、前記他の車輪を前記回転軸の径方向に沿う外側に移動させることを特徴とする階段昇降車。
【請求項2】
請求項1に記載の階段昇降車において、前記油圧機構は、
前記回転軸に設けられ、前記各油圧シリンダに連通された複数の油溜まりと、
前記固定軸に設けられ、前記固定軸と前記回転軸との相対的な回転に基づいて前記回転軸の周方向に位相をずらして隣り合う前記油圧シリンダに対応する前記油溜まりの間を互いに連通させたり、連通を遮断する複数の連絡通路と、を備えていることを特徴とする階段昇降車。
【請求項3】
請求項2に記載の階段昇降車において、前記油圧機構は、前記油圧シリンダと前記油溜まりとの間を結ぶ連通路と、前記連通路を流れる作動油の流量を調整する弁と、を備えていることを特徴とする階段走行車。
【請求項4】
請求項1に記載の階段走行車において、前記回転軸の径方向に沿う外側に移動された前記他の車輪を前記回転軸に向けて押し戻す復帰手段をさらに備えていることを特徴とする階段走行車。
【請求項5】
固定軸と、
前記固定軸の外側に同軸状に支持された回転軸と、
前記回転軸の外周面から前記回転軸の周方向に間隔を存して放射状に突出され、前記回転軸の径方向に移動可能なロッドを有する複数の油圧シリンダと、
前記油圧シリンダの前記ロッドの先端に支持され、階段のステップに接する複数の車輪と、
前記複数の油圧シリンダに作動油を供給する油圧機構と、を含み、
前記油圧機構は、前記複数の車輪のうち、いずれか一つの車輪が前記階段の前記ステップに突き当たった時に、前記固定軸と前記回転軸との間の相対的な回転に基づいて前記ステップに突き当たった車輪よりも前記走行輪の回転方向に沿う前側に位置された他の車輪に対応する油圧シリンダおよび前記ステップに突き当たった車輪よりも前記走行輪の回転方向に沿う後側に位置された他の車輪に対応する油圧シリンダの少なくともいずれか一方に作動油を供給し、前記他の車輪を前記回転軸の径方向に沿う外側に移動させることを特徴とする車輪装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車輪装置において、前記油圧機構は、
前記回転軸に設けられ、前記各油圧シリンダに連通された複数の油溜まりと、
前記固定軸に設けられ、前記固定軸と前記回転軸との相対的な回転に基づいて前記回転軸の周方向に位相をずらして隣り合う前記油圧シリンダに対応する前記油溜まりの間を互いに連通させたり、連通を遮断する複数の連絡通路と、を備えていることを特徴とする車輪装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車輪装置において、前記油圧機構は、前記油圧シリンダと前記油溜まりとの間を結ぶ連通路と、前記連通路を流れる作動油の流量を調整する弁と、を備えていることを特徴とする車輪装置。
【請求項1】
車体と、
前記車体に支持された複数の走行輪と、を具備した階段昇降車であって、
前記走行輪は、
前記車体に固定された固定軸と、
前記固定軸の外側に同軸状に支持された回転軸と、
前記回転軸の外周面から前記回転軸の周方向に間隔を存して放射状に突出され、前記回転軸の径方向に移動可能なロッドを有する複数の油圧シリンダと、
前記油圧シリンダの前記ロッドの先端に支持され、階段のステップに接する複数の車輪と、
前記複数の油圧シリンダに作動油を供給する油圧機構と、を含み、
前記油圧機構は、前記複数の車輪のうち、いずれか一つの車輪が前記階段のステップに突き当たった時に、前記固定軸と前記回転軸との間の相対的な回転に基づいて前記ステップに突き当たった車輪よりも前記走行輪の回転方向に沿う前側に位置された他の車輪に対応する油圧シリンダおよび前記ステップに突き当たった車輪よりも前記走行輪の回転方向に沿う後側に位置された他の車輪に対応する油圧シリンダの少なくともいずれか一方に作動油を供給し、前記他の車輪を前記回転軸の径方向に沿う外側に移動させることを特徴とする階段昇降車。
【請求項2】
請求項1に記載の階段昇降車において、前記油圧機構は、
前記回転軸に設けられ、前記各油圧シリンダに連通された複数の油溜まりと、
前記固定軸に設けられ、前記固定軸と前記回転軸との相対的な回転に基づいて前記回転軸の周方向に位相をずらして隣り合う前記油圧シリンダに対応する前記油溜まりの間を互いに連通させたり、連通を遮断する複数の連絡通路と、を備えていることを特徴とする階段昇降車。
【請求項3】
請求項2に記載の階段昇降車において、前記油圧機構は、前記油圧シリンダと前記油溜まりとの間を結ぶ連通路と、前記連通路を流れる作動油の流量を調整する弁と、を備えていることを特徴とする階段走行車。
【請求項4】
請求項1に記載の階段走行車において、前記回転軸の径方向に沿う外側に移動された前記他の車輪を前記回転軸に向けて押し戻す復帰手段をさらに備えていることを特徴とする階段走行車。
【請求項5】
固定軸と、
前記固定軸の外側に同軸状に支持された回転軸と、
前記回転軸の外周面から前記回転軸の周方向に間隔を存して放射状に突出され、前記回転軸の径方向に移動可能なロッドを有する複数の油圧シリンダと、
前記油圧シリンダの前記ロッドの先端に支持され、階段のステップに接する複数の車輪と、
前記複数の油圧シリンダに作動油を供給する油圧機構と、を含み、
前記油圧機構は、前記複数の車輪のうち、いずれか一つの車輪が前記階段の前記ステップに突き当たった時に、前記固定軸と前記回転軸との間の相対的な回転に基づいて前記ステップに突き当たった車輪よりも前記走行輪の回転方向に沿う前側に位置された他の車輪に対応する油圧シリンダおよび前記ステップに突き当たった車輪よりも前記走行輪の回転方向に沿う後側に位置された他の車輪に対応する油圧シリンダの少なくともいずれか一方に作動油を供給し、前記他の車輪を前記回転軸の径方向に沿う外側に移動させることを特徴とする車輪装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車輪装置において、前記油圧機構は、
前記回転軸に設けられ、前記各油圧シリンダに連通された複数の油溜まりと、
前記固定軸に設けられ、前記固定軸と前記回転軸との相対的な回転に基づいて前記回転軸の周方向に位相をずらして隣り合う前記油圧シリンダに対応する前記油溜まりの間を互いに連通させたり、連通を遮断する複数の連絡通路と、を備えていることを特徴とする車輪装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車輪装置において、前記油圧機構は、前記油圧シリンダと前記油溜まりとの間を結ぶ連通路と、前記連通路を流れる作動油の流量を調整する弁と、を備えていることを特徴とする車輪装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−56545(P2012−56545A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204828(P2010−204828)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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