隙間測定ゲージ
【課題】簡単な構成で、かつ容易、正確にコンクリート躯体とモルタル層との間の隙間を測定可能なゲージを提供する。
【解決手段】隙間測定ゲージ1は、モルタル層102を表面側から裏面側に貫通し、モルタル層102の裏面側とコンクリート躯体101の間の隙間103を横断して、コンクリート躯体101に亘る接着剤注入孔104を設け、該孔104から接着剤105を隙間104に注入してコンクリート躯体101とモルタル層102を接着する外壁の剥落防止工法等に使用して、隙間103の厚さを計測するゲージである。ゲージ1は、前記孔104に挿入する軸部21の端部に前記隙間103に挿入する隙間挿入部22を設けた複数本のゲージ単体11,12,13〜で構成される。各ゲージ単体11,12,13〜は、隙間挿入部22の肉厚に差異を持たせて形成されている。
【解決手段】隙間測定ゲージ1は、モルタル層102を表面側から裏面側に貫通し、モルタル層102の裏面側とコンクリート躯体101の間の隙間103を横断して、コンクリート躯体101に亘る接着剤注入孔104を設け、該孔104から接着剤105を隙間104に注入してコンクリート躯体101とモルタル層102を接着する外壁の剥落防止工法等に使用して、隙間103の厚さを計測するゲージである。ゲージ1は、前記孔104に挿入する軸部21の端部に前記隙間103に挿入する隙間挿入部22を設けた複数本のゲージ単体11,12,13〜で構成される。各ゲージ単体11,12,13〜は、隙間挿入部22の肉厚に差異を持たせて形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の外壁の内側に発生した隙間、例えば建造物のコンクリート躯体とモルタル層の間の境界部に発生した隙間の厚さを測定するゲージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建造物、例えばコンクリート建造物は、一般に図16に示すように、コンクリート躯体101の表面にモルタル層102を設け、或いはモルタル層の表面に更にタイル(図示省略)を貼り付けるなどして外壁が構成されている。
【0003】
上述の建造物においては、図17に示すように、コンクリート躯体101とモルタル層102の間の境界部に隙間103が発生し、この隙間103が拡大するとコンクリート躯体101からモルタル層102が剥落する虞がある。
【0004】
モルタル層の剥落を防止するため、図18〜図20に示すように、モルタル層102の表面から隙間103を横断して、コンクリート躯体101に亘る接着剤注入孔104を設け、該孔104から接着剤としてのエポキシ樹脂105を隙間103に注入して、該エポキシ樹脂105でコンクリート躯体101とモルタル層102を接着するとともに、孔104に挿入したアンカーボルト(アンカーピン)106でコンクリート躯体101とモルタル層102を結合した外壁の剥落防止方法が開発されている。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開平7−238690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のエポキシ樹脂105を注入してコンクリート躯体101とモルタル層102を接着する剥落防止方法にあっては、隙間103の厚さT(図17参照)および接着面積に見合った量のエポキシ樹脂105を注入する必要がある。
【0006】
注入するエポキシ樹脂105の量が少なすぎると、エポキシ樹脂105は、接着剤として十分な機能を果たさない。また、注入するエポキシ樹脂105の量が多過ぎると、注入したエポキシ樹脂105の圧力で隙間103が拡大してしまう虞がある。
【0007】
従って、適正な量のエポキシ樹脂105を注入するためには、隙間103の厚さTを正確に計測、把握して、エポキシ樹脂105の最適な注入量を決定する必要がある。しかし、隙間103は、モルタル層102の内側(裏側)にあるため、モルタル層102の外側(表側)の罅割れを測定する場合のように罅割れにスケールを当てて、その幅等を目視により計測することはできない。
【0008】
そこで、従来は超音波等を用いた計測装置を使用して、前記隙間の計測を行っていたが、前記計測装置は、構造が複雑で、持ち運びに不便で、且つ計測装置のコストも高いという問題点があった。
【0009】
このため、超音波等を用いた複雑な構造の計測装置を使用せずに、簡単容易かつ正確に前記隙間の計測を行うことができるようにするかが、上述の外壁の剥落防止作業を行う上での最大の課題とされていた。
【0010】
本発明の目的は、極めて簡単な構成で、かつ容易、正確にコンクリート躯体とモルタル層との間の隙間を測定することのできる持ち運びに便利な隙間測定ゲージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、モルタル層を表面側から裏面側に貫通し、該モルタル層の裏面側とコンクリート躯体の間の隙間を横断して、コンクリート躯体に亘る接着剤注入孔を設け、該接着剤注入孔からエポキシ樹脂等の接着剤を前記隙間に注入してコンクリート躯体とモルタル層を接着する外壁の剥落防止工法等に使用して、前記隙間の厚さを計測する隙間測定ゲージであって、
前記測定ゲージは、前記孔に挿入する軸部の端部に前記隙間に挿入する隙間挿入部を設けた複数本のゲージ単体で構成され、これら各ゲージ単体は、前記隙間挿入部の肉厚に差異を持たせて形成されている。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の隙間測定ゲージにおいて、前記各ゲージ単体の軸部は、断面円形状の金属線で形成されていて、前記隙間挿入部は、断面円形状の金属線の軸部の端部をプレスして所定の肉厚の板状部を形成した後に該部を略直角または略U字状に折り曲げることにより形成されていて、前記隙間挿入部の先端部は、前記軸部の外周面から所定の高さ突出している。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の隙間測定ゲージにおいて、軸部の一端部に前記隙間挿入部を形成し、他端部に把持部を形成した。
【0014】
請求項4の発明は、請求項3の隙間測定ゲージにおいて、前記把持部を、前記軸部を構成する金属線の一端部をリング状に折り曲げることにより形成した。
【0015】
請求項5の発明は、請求項3または請求項4の隙間測定ゲージにおいて、前記リング状の把持部に前記隙間挿入部の肉厚を表示するタグを取り付けた。
【0016】
請求項6の発明は、請求項3〜請求項6のいずれかに記載の隙間測定ゲージにおいて、前記各ゲージ単体のリング状の把持部を結束リングで束ねた。
【発明の効果】
【0017】
(1)請求項1の隙間測定ゲージは、これを構成する複数本のゲージ単体を順次、前記接着剤注入孔に挿入して、前記隙間挿入部が前記隙間に挿入できるか否かを試みる。そして、前記隙間挿入部が前記隙間にきっちりと挿入された場合に、前記隙間の厚みは前記隙間挿入部の肉厚によって推測可能になる。
(2)請求項2の隙間測定ゲージは、断面円形状の金属線の端部をプレスして、所定の肉厚の板状部を形成し、該板状部を略直角または略U字状に折り曲げることにより、前記隙間挿入部の肉厚の異なる複数本のゲージ単体を簡単、容易に形成することができる。また、前記隙間挿入部の先端部を前記軸部の外周面から所定の高さ突出させたので、前記隙間に前記隙間挿入部の先端部を確実に挿入させることができる。
(3)請求項3の隙間測定ゲージは、金属線の軸部の一端部に前記隙間挿入部を形成し、他端部に把持部を形成したので、該把持部を把持して、前記隙間挿入部の接着剤注入孔への挿入作業や、隙間挿入部の隙間への挿入作業を容易に行うことができる。
(4)請求項4の隙間測定ゲージは、金属線の一端部をリング状に折り曲げることにより把持部を軸部と一体に形成することができる。
(5)請求項5の隙間測定ゲージは、リング状の把持部に取り付けたタグにより隙間挿入部の肉厚を容易に確認することができる。
(6)請求項6の隙間測定ゲージは、各ゲージ単体のリング状の把持部を結束リングで束ねたので、複数本のゲージ単体からなる隙間測定ゲージの一体性を確保し、複数本のゲージ単体が分離、逸散してしまうのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の隙間測定ゲージ1を示す説明図である。隙間測定ゲージ1は、第1〜第6の6本のゲージ単体11〜16で構成されている。
【0019】
図2に示すように、第1〜第6のゲージ単体11〜16は、前記接着剤注入孔104(図18参照)に挿入する軸部21と、該軸部21の端部に設けられていて前記コンクリート躯体101とモルタル層102の間の境界部に隙間103(図18参照)に挿入する肉厚Tの隙間挿入部22を備えている。
【0020】
第1のゲージ単体2の隙間挿入部22の肉厚Tは0.1mm、第2のゲージ単体12の隙間挿入部22の肉厚Tは0.2mm、第3のゲージ単体13の隙間挿入部22の肉厚Tは0.3mm、第4のゲージ単体14の隙間挿入部22の肉厚Tは、0.4mm、第5のゲージ単体15の隙間挿入部22の肉厚Tは、0.5mm、第6のゲージ単体16の隙間挿入部22の肉厚Tは、0.6mmというように、第1〜第6のゲージ単体11〜16の隙間挿入部22の肉厚Tは、互いに0.1mmずつの差異を持たせて形成されている。
【0021】
前記軸部21の周面には、前記隙間挿入部22の前面22bからの距離を示すスケール目盛23が付されている。また、前記軸部21の他端部には把持部24が形成されている。
【0022】
次に、第1〜第6のゲージ単体11〜16の製造方法の一例を説明する。図3に示すように、第1〜第6のゲージ単体11〜16の軸部21は、直径1.5mmの断面円形状のSUS304等の金属線で形成されている。
【0023】
図4に示すように、前記軸部21の一端部をプレスして0.1mm〜0.6mmのいずれかの肉厚Tの板状部22´を形成した後に、図5に示すように、前記板状部22´を略U字状或いは略直角に折り曲げることにより前記隙間挿入部22が形成される。
【0024】
前記隙間挿入部22の高さH1は、前記接着剤注入孔104に自由に出し入れできるように該接着剤注入孔104の直径よりも小に形成されている。また、前記隙間挿入部22の先端部22aは、前記軸部21の外周面21aから所定の高さH2突出していて、少なくとも前記突出している部分が前記隙間103に侵入するようになっている。
【0025】
図6に示すように、前記把持部24は、前記軸部21の前記隙間挿入部22と反対側の端部をリング状に折り曲げて端部を溶接部25で軸部21に結合することにより形成されている。前記リング状の把持部24には前記隙間挿入部22の肉厚を表示するタグ26が取り付けられている。
【0026】
図1に示すように、第1〜第6のゲージ単体11〜16は、各ゲージ単体11〜16が分離、逸散しないようにリング状の把持部24が結束リング27で束ねられていて、隙間測定ゲージ1としての一体性が図られている。
【0027】
次に、前記隙間測定ゲージ1の使用方法の一例を説明する。第1〜第6のゲージ単体11〜16のいずれかのゲージ単体、例えば第6のゲージ単体16を選択して、図7に示すように、第6のゲージ単体16の隙間挿入部22の先端部22aを前記接着剤注入孔104の周面に押し当てながら挿入する。
【0028】
第6のゲージ単体16の隙間挿入部22の肉厚0.6mmよりも前記コンクリート躯体101とモルタル層102の間の隙間103が小さい場合には、該隙間103に前記第6のゲージ単体16の隙間挿入部22を侵入させることはできず、前記隙間103が0.6mm以下であることが判明する。
【0029】
そこで、次に、第5のゲージ単体15を選択して、前記と同様に、第5のゲージ単体15の隙間挿入部22の先端部22aを前記接着剤注入孔104の周面に押し当てながら挿入する。その結果、図8に示すように、第5のゲージ単体15の隙間挿入部22の先端部22aが前記隙間103に侵入すれば、該隙間103の厚さは、0.6mm以下、0.5mm以上であることが判明する。
【0030】
前記隙間103の厚さが判明したら、前記接着剤注入孔104に注入するエポキシ樹脂等の接着剤105の適量を算出する。注入する接着剤105の適量は、前記隙間103の厚さ、該隙間103に侵入させる接着剤の面積、即ち接着面積、接着剤注入孔104の直径や深さ等を勘案して算出される。
【0031】
接着剤注入孔104の深さは、図9に示すように、隙間挿入部22の前面22bを前記接着剤注入孔104の底面104aに押し当てることにより前記スケール目盛23で計測される。
【0032】
そして、算出された適量の接着剤105は、図10に示すように、樹脂注入器201のノズル202によって接着剤注入孔104の先端部に注入される。前記樹脂注入器201およびノズル202に、例えば特許第3585825号の樹脂注入器およびノズルを使用することにより、接着剤105は、所謂エアー溜りを発生させること無く、接着剤注入孔104に注入される。そして、図11に示すように、接着剤105は、コンクリート躯体101とモルタル層102の間の隙間103内に過不足なく注入される。
【0033】
接着剤105を注入したら、図12に示すように、接着剤注入孔104にアンカーボルト106を挿入し、コンクリート躯体101とモルタル層102を接着剤105およびアンカーボルト106で結合して外壁の剥落を防止する。107は、モルタル層102の外側に付けられたタイル層である。なお、図13に示すように、モルタル層102とタイル層107の間に隙間108が発生することもあり、この場合にも前記隙間108を測定するのに前記隙間測定ゲージ1が使用される。
【0034】
前記実施例においては、第1〜第6の6本のゲージ単体11〜16に断面円形状の金属線で形成した場合を示したが、図14,図15に示すように、所定の肉厚の金属板を打ち抜いて把持部24と軸部21を一体に形成し、該軸部21の先端を略U字状や略直角に折り曲げて隙間挿入部22を形成してもよい。この場合に、前記把持部24の表面に前記隙間挿入部22の肉厚の値を表示してもよい。23は前記隙間挿入部22の前面22bからの距離を示すスケール目盛、28は結束リング26を通すための孔である。
【0035】
また、前記実施例においては、隙間測定ゲージ1を第1〜第6の6本のゲージ単体11〜16で構成した場合を示したが、隙間測定ゲージ1を構成するゲージ単体の本数は6本に限定されず、3本でも7本以上であっても良い。ゲージ単体の本数を増やせば増やすほど、前記隙間の大きさを正確に、且つ広範囲に測定することができる。また、前記軸部21の両端部に厚さの異なる隙間挿入部22を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】隙間測定ゲージの斜視図。
【図2】ゲージ単体の斜視図。
【図3】ゲージ単体の製造方法の一例を示す説明図。
【図4】ゲージ単体の製造方法の一例を示す説明図。
【図5】ゲージ単体の製造方法の一例を示す説明図。
【図6】ゲージ単体の製造方法の一例を示す説明図。
【図7】隙間測定ゲージの使用方法を示す説明図。
【図8】隙間測定ゲージの使用方法を示す説明図。
【図9】隙間測定ゲージにより接着剤注入孔の深さを測定している状態を示す説明図。
【図10】樹脂注入器により接着剤を接着剤注入孔に注入する前の状態を示す説明図。
【図11】樹脂注入器により接着剤を接着剤注入孔に注入した後の状態を示す説明図。
【図12】接着剤注入孔にアンカーボルトを挿入した後の状態を示す説明図。
【図13】隙間測定ゲージの他の使用例を示す説明図。
【図14】ゲージ単体の製造方法の他例を示す説明図。
【図15】ゲージ単体の他例を示す説明図。
【図16】コンクリート躯体とモルタル層の断面図。
【図17】コンクリート躯体とモルタル層の間に隙間が発生した状態の断面図。
【図18】接着剤注入孔を設けた状態を示す断面図。
【図19】接着剤注入孔に樹脂を注入した状態の断面図。
【図20】樹脂を注入した接着剤注入孔にアンカーボルトを挿入した状態の断面図。
【符号の説明】
【0037】
1…隙間測定ゲージ、11〜16…第1〜第6のゲージ単体、21…軸部、22…隙間挿入部、23…スケール目盛、24…把持部、25…溶接部、26…タグ、27…結束リング、101…コンクリート躯体、102…モルタル層、103…隙間、104…接着剤注入孔、105…接着剤(エポキシ樹脂)、106…アンカーボルト。
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の外壁の内側に発生した隙間、例えば建造物のコンクリート躯体とモルタル層の間の境界部に発生した隙間の厚さを測定するゲージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建造物、例えばコンクリート建造物は、一般に図16に示すように、コンクリート躯体101の表面にモルタル層102を設け、或いはモルタル層の表面に更にタイル(図示省略)を貼り付けるなどして外壁が構成されている。
【0003】
上述の建造物においては、図17に示すように、コンクリート躯体101とモルタル層102の間の境界部に隙間103が発生し、この隙間103が拡大するとコンクリート躯体101からモルタル層102が剥落する虞がある。
【0004】
モルタル層の剥落を防止するため、図18〜図20に示すように、モルタル層102の表面から隙間103を横断して、コンクリート躯体101に亘る接着剤注入孔104を設け、該孔104から接着剤としてのエポキシ樹脂105を隙間103に注入して、該エポキシ樹脂105でコンクリート躯体101とモルタル層102を接着するとともに、孔104に挿入したアンカーボルト(アンカーピン)106でコンクリート躯体101とモルタル層102を結合した外壁の剥落防止方法が開発されている。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開平7−238690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のエポキシ樹脂105を注入してコンクリート躯体101とモルタル層102を接着する剥落防止方法にあっては、隙間103の厚さT(図17参照)および接着面積に見合った量のエポキシ樹脂105を注入する必要がある。
【0006】
注入するエポキシ樹脂105の量が少なすぎると、エポキシ樹脂105は、接着剤として十分な機能を果たさない。また、注入するエポキシ樹脂105の量が多過ぎると、注入したエポキシ樹脂105の圧力で隙間103が拡大してしまう虞がある。
【0007】
従って、適正な量のエポキシ樹脂105を注入するためには、隙間103の厚さTを正確に計測、把握して、エポキシ樹脂105の最適な注入量を決定する必要がある。しかし、隙間103は、モルタル層102の内側(裏側)にあるため、モルタル層102の外側(表側)の罅割れを測定する場合のように罅割れにスケールを当てて、その幅等を目視により計測することはできない。
【0008】
そこで、従来は超音波等を用いた計測装置を使用して、前記隙間の計測を行っていたが、前記計測装置は、構造が複雑で、持ち運びに不便で、且つ計測装置のコストも高いという問題点があった。
【0009】
このため、超音波等を用いた複雑な構造の計測装置を使用せずに、簡単容易かつ正確に前記隙間の計測を行うことができるようにするかが、上述の外壁の剥落防止作業を行う上での最大の課題とされていた。
【0010】
本発明の目的は、極めて簡単な構成で、かつ容易、正確にコンクリート躯体とモルタル層との間の隙間を測定することのできる持ち運びに便利な隙間測定ゲージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、モルタル層を表面側から裏面側に貫通し、該モルタル層の裏面側とコンクリート躯体の間の隙間を横断して、コンクリート躯体に亘る接着剤注入孔を設け、該接着剤注入孔からエポキシ樹脂等の接着剤を前記隙間に注入してコンクリート躯体とモルタル層を接着する外壁の剥落防止工法等に使用して、前記隙間の厚さを計測する隙間測定ゲージであって、
前記測定ゲージは、前記孔に挿入する軸部の端部に前記隙間に挿入する隙間挿入部を設けた複数本のゲージ単体で構成され、これら各ゲージ単体は、前記隙間挿入部の肉厚に差異を持たせて形成されている。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の隙間測定ゲージにおいて、前記各ゲージ単体の軸部は、断面円形状の金属線で形成されていて、前記隙間挿入部は、断面円形状の金属線の軸部の端部をプレスして所定の肉厚の板状部を形成した後に該部を略直角または略U字状に折り曲げることにより形成されていて、前記隙間挿入部の先端部は、前記軸部の外周面から所定の高さ突出している。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の隙間測定ゲージにおいて、軸部の一端部に前記隙間挿入部を形成し、他端部に把持部を形成した。
【0014】
請求項4の発明は、請求項3の隙間測定ゲージにおいて、前記把持部を、前記軸部を構成する金属線の一端部をリング状に折り曲げることにより形成した。
【0015】
請求項5の発明は、請求項3または請求項4の隙間測定ゲージにおいて、前記リング状の把持部に前記隙間挿入部の肉厚を表示するタグを取り付けた。
【0016】
請求項6の発明は、請求項3〜請求項6のいずれかに記載の隙間測定ゲージにおいて、前記各ゲージ単体のリング状の把持部を結束リングで束ねた。
【発明の効果】
【0017】
(1)請求項1の隙間測定ゲージは、これを構成する複数本のゲージ単体を順次、前記接着剤注入孔に挿入して、前記隙間挿入部が前記隙間に挿入できるか否かを試みる。そして、前記隙間挿入部が前記隙間にきっちりと挿入された場合に、前記隙間の厚みは前記隙間挿入部の肉厚によって推測可能になる。
(2)請求項2の隙間測定ゲージは、断面円形状の金属線の端部をプレスして、所定の肉厚の板状部を形成し、該板状部を略直角または略U字状に折り曲げることにより、前記隙間挿入部の肉厚の異なる複数本のゲージ単体を簡単、容易に形成することができる。また、前記隙間挿入部の先端部を前記軸部の外周面から所定の高さ突出させたので、前記隙間に前記隙間挿入部の先端部を確実に挿入させることができる。
(3)請求項3の隙間測定ゲージは、金属線の軸部の一端部に前記隙間挿入部を形成し、他端部に把持部を形成したので、該把持部を把持して、前記隙間挿入部の接着剤注入孔への挿入作業や、隙間挿入部の隙間への挿入作業を容易に行うことができる。
(4)請求項4の隙間測定ゲージは、金属線の一端部をリング状に折り曲げることにより把持部を軸部と一体に形成することができる。
(5)請求項5の隙間測定ゲージは、リング状の把持部に取り付けたタグにより隙間挿入部の肉厚を容易に確認することができる。
(6)請求項6の隙間測定ゲージは、各ゲージ単体のリング状の把持部を結束リングで束ねたので、複数本のゲージ単体からなる隙間測定ゲージの一体性を確保し、複数本のゲージ単体が分離、逸散してしまうのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の隙間測定ゲージ1を示す説明図である。隙間測定ゲージ1は、第1〜第6の6本のゲージ単体11〜16で構成されている。
【0019】
図2に示すように、第1〜第6のゲージ単体11〜16は、前記接着剤注入孔104(図18参照)に挿入する軸部21と、該軸部21の端部に設けられていて前記コンクリート躯体101とモルタル層102の間の境界部に隙間103(図18参照)に挿入する肉厚Tの隙間挿入部22を備えている。
【0020】
第1のゲージ単体2の隙間挿入部22の肉厚Tは0.1mm、第2のゲージ単体12の隙間挿入部22の肉厚Tは0.2mm、第3のゲージ単体13の隙間挿入部22の肉厚Tは0.3mm、第4のゲージ単体14の隙間挿入部22の肉厚Tは、0.4mm、第5のゲージ単体15の隙間挿入部22の肉厚Tは、0.5mm、第6のゲージ単体16の隙間挿入部22の肉厚Tは、0.6mmというように、第1〜第6のゲージ単体11〜16の隙間挿入部22の肉厚Tは、互いに0.1mmずつの差異を持たせて形成されている。
【0021】
前記軸部21の周面には、前記隙間挿入部22の前面22bからの距離を示すスケール目盛23が付されている。また、前記軸部21の他端部には把持部24が形成されている。
【0022】
次に、第1〜第6のゲージ単体11〜16の製造方法の一例を説明する。図3に示すように、第1〜第6のゲージ単体11〜16の軸部21は、直径1.5mmの断面円形状のSUS304等の金属線で形成されている。
【0023】
図4に示すように、前記軸部21の一端部をプレスして0.1mm〜0.6mmのいずれかの肉厚Tの板状部22´を形成した後に、図5に示すように、前記板状部22´を略U字状或いは略直角に折り曲げることにより前記隙間挿入部22が形成される。
【0024】
前記隙間挿入部22の高さH1は、前記接着剤注入孔104に自由に出し入れできるように該接着剤注入孔104の直径よりも小に形成されている。また、前記隙間挿入部22の先端部22aは、前記軸部21の外周面21aから所定の高さH2突出していて、少なくとも前記突出している部分が前記隙間103に侵入するようになっている。
【0025】
図6に示すように、前記把持部24は、前記軸部21の前記隙間挿入部22と反対側の端部をリング状に折り曲げて端部を溶接部25で軸部21に結合することにより形成されている。前記リング状の把持部24には前記隙間挿入部22の肉厚を表示するタグ26が取り付けられている。
【0026】
図1に示すように、第1〜第6のゲージ単体11〜16は、各ゲージ単体11〜16が分離、逸散しないようにリング状の把持部24が結束リング27で束ねられていて、隙間測定ゲージ1としての一体性が図られている。
【0027】
次に、前記隙間測定ゲージ1の使用方法の一例を説明する。第1〜第6のゲージ単体11〜16のいずれかのゲージ単体、例えば第6のゲージ単体16を選択して、図7に示すように、第6のゲージ単体16の隙間挿入部22の先端部22aを前記接着剤注入孔104の周面に押し当てながら挿入する。
【0028】
第6のゲージ単体16の隙間挿入部22の肉厚0.6mmよりも前記コンクリート躯体101とモルタル層102の間の隙間103が小さい場合には、該隙間103に前記第6のゲージ単体16の隙間挿入部22を侵入させることはできず、前記隙間103が0.6mm以下であることが判明する。
【0029】
そこで、次に、第5のゲージ単体15を選択して、前記と同様に、第5のゲージ単体15の隙間挿入部22の先端部22aを前記接着剤注入孔104の周面に押し当てながら挿入する。その結果、図8に示すように、第5のゲージ単体15の隙間挿入部22の先端部22aが前記隙間103に侵入すれば、該隙間103の厚さは、0.6mm以下、0.5mm以上であることが判明する。
【0030】
前記隙間103の厚さが判明したら、前記接着剤注入孔104に注入するエポキシ樹脂等の接着剤105の適量を算出する。注入する接着剤105の適量は、前記隙間103の厚さ、該隙間103に侵入させる接着剤の面積、即ち接着面積、接着剤注入孔104の直径や深さ等を勘案して算出される。
【0031】
接着剤注入孔104の深さは、図9に示すように、隙間挿入部22の前面22bを前記接着剤注入孔104の底面104aに押し当てることにより前記スケール目盛23で計測される。
【0032】
そして、算出された適量の接着剤105は、図10に示すように、樹脂注入器201のノズル202によって接着剤注入孔104の先端部に注入される。前記樹脂注入器201およびノズル202に、例えば特許第3585825号の樹脂注入器およびノズルを使用することにより、接着剤105は、所謂エアー溜りを発生させること無く、接着剤注入孔104に注入される。そして、図11に示すように、接着剤105は、コンクリート躯体101とモルタル層102の間の隙間103内に過不足なく注入される。
【0033】
接着剤105を注入したら、図12に示すように、接着剤注入孔104にアンカーボルト106を挿入し、コンクリート躯体101とモルタル層102を接着剤105およびアンカーボルト106で結合して外壁の剥落を防止する。107は、モルタル層102の外側に付けられたタイル層である。なお、図13に示すように、モルタル層102とタイル層107の間に隙間108が発生することもあり、この場合にも前記隙間108を測定するのに前記隙間測定ゲージ1が使用される。
【0034】
前記実施例においては、第1〜第6の6本のゲージ単体11〜16に断面円形状の金属線で形成した場合を示したが、図14,図15に示すように、所定の肉厚の金属板を打ち抜いて把持部24と軸部21を一体に形成し、該軸部21の先端を略U字状や略直角に折り曲げて隙間挿入部22を形成してもよい。この場合に、前記把持部24の表面に前記隙間挿入部22の肉厚の値を表示してもよい。23は前記隙間挿入部22の前面22bからの距離を示すスケール目盛、28は結束リング26を通すための孔である。
【0035】
また、前記実施例においては、隙間測定ゲージ1を第1〜第6の6本のゲージ単体11〜16で構成した場合を示したが、隙間測定ゲージ1を構成するゲージ単体の本数は6本に限定されず、3本でも7本以上であっても良い。ゲージ単体の本数を増やせば増やすほど、前記隙間の大きさを正確に、且つ広範囲に測定することができる。また、前記軸部21の両端部に厚さの異なる隙間挿入部22を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】隙間測定ゲージの斜視図。
【図2】ゲージ単体の斜視図。
【図3】ゲージ単体の製造方法の一例を示す説明図。
【図4】ゲージ単体の製造方法の一例を示す説明図。
【図5】ゲージ単体の製造方法の一例を示す説明図。
【図6】ゲージ単体の製造方法の一例を示す説明図。
【図7】隙間測定ゲージの使用方法を示す説明図。
【図8】隙間測定ゲージの使用方法を示す説明図。
【図9】隙間測定ゲージにより接着剤注入孔の深さを測定している状態を示す説明図。
【図10】樹脂注入器により接着剤を接着剤注入孔に注入する前の状態を示す説明図。
【図11】樹脂注入器により接着剤を接着剤注入孔に注入した後の状態を示す説明図。
【図12】接着剤注入孔にアンカーボルトを挿入した後の状態を示す説明図。
【図13】隙間測定ゲージの他の使用例を示す説明図。
【図14】ゲージ単体の製造方法の他例を示す説明図。
【図15】ゲージ単体の他例を示す説明図。
【図16】コンクリート躯体とモルタル層の断面図。
【図17】コンクリート躯体とモルタル層の間に隙間が発生した状態の断面図。
【図18】接着剤注入孔を設けた状態を示す断面図。
【図19】接着剤注入孔に樹脂を注入した状態の断面図。
【図20】樹脂を注入した接着剤注入孔にアンカーボルトを挿入した状態の断面図。
【符号の説明】
【0037】
1…隙間測定ゲージ、11〜16…第1〜第6のゲージ単体、21…軸部、22…隙間挿入部、23…スケール目盛、24…把持部、25…溶接部、26…タグ、27…結束リング、101…コンクリート躯体、102…モルタル層、103…隙間、104…接着剤注入孔、105…接着剤(エポキシ樹脂)、106…アンカーボルト。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モルタル層を表面側から裏面側に貫通し、該モルタル層の裏面側とコンクリート躯体の間の隙間を横断して、コンクリート躯体に亘る接着剤注入孔を設け、該接着剤注入孔からエポキシ樹脂等の接着剤を前記隙間に注入してコンクリート躯体とモルタル層を接着する外壁の剥落防止工法等に使用して、前記隙間の厚さを計測する隙間測定ゲージであって、
前記測定ゲージは、前記孔に挿入する軸部の端部に前記隙間に挿入する隙間挿入部を設けた複数本のゲージ単体で構成され、これら各ゲージ単体は、前記隙間挿入部の肉厚に差異を持たせて形成されていることを特徴とする隙間測定ゲージ。
【請求項2】
前記各ゲージ単体の軸部は、断面円形状の金属線で形成されていて、前記隙間挿入部は、断面円形状の金属線の軸部の端部をプレスして所定の肉厚の板状部を形成した後に該部を略直角または略U字状に折り曲げることにより形成され、前記隙間挿入部の先端部は、前記軸部の外周面から所定の高さ突出していることを特徴とする請求項1に記載の隙間測定ゲージ。
【請求項3】
軸部の一端部に前記隙間挿入部を形成し、他端部に把持部を形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の隙間測定ゲージ。
【請求項4】
前記把持部は、前記軸部を構成する金属線の一端部をリング状に折り曲げることにより形成されていることを特徴とする請求項3に記載の隙間測定ゲージ。
【請求項5】
前記リング状の把持部に前記隙間挿入部の肉厚を表示するタグを取り付けたことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の隙間測定ゲージ。
【請求項6】
前記各ゲージ単体のリング状の把持部を結束リングで束ねたことを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれかに記載の隙間測定ゲージ。
【請求項1】
モルタル層を表面側から裏面側に貫通し、該モルタル層の裏面側とコンクリート躯体の間の隙間を横断して、コンクリート躯体に亘る接着剤注入孔を設け、該接着剤注入孔からエポキシ樹脂等の接着剤を前記隙間に注入してコンクリート躯体とモルタル層を接着する外壁の剥落防止工法等に使用して、前記隙間の厚さを計測する隙間測定ゲージであって、
前記測定ゲージは、前記孔に挿入する軸部の端部に前記隙間に挿入する隙間挿入部を設けた複数本のゲージ単体で構成され、これら各ゲージ単体は、前記隙間挿入部の肉厚に差異を持たせて形成されていることを特徴とする隙間測定ゲージ。
【請求項2】
前記各ゲージ単体の軸部は、断面円形状の金属線で形成されていて、前記隙間挿入部は、断面円形状の金属線の軸部の端部をプレスして所定の肉厚の板状部を形成した後に該部を略直角または略U字状に折り曲げることにより形成され、前記隙間挿入部の先端部は、前記軸部の外周面から所定の高さ突出していることを特徴とする請求項1に記載の隙間測定ゲージ。
【請求項3】
軸部の一端部に前記隙間挿入部を形成し、他端部に把持部を形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の隙間測定ゲージ。
【請求項4】
前記把持部は、前記軸部を構成する金属線の一端部をリング状に折り曲げることにより形成されていることを特徴とする請求項3に記載の隙間測定ゲージ。
【請求項5】
前記リング状の把持部に前記隙間挿入部の肉厚を表示するタグを取り付けたことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の隙間測定ゲージ。
【請求項6】
前記各ゲージ単体のリング状の把持部を結束リングで束ねたことを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれかに記載の隙間測定ゲージ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−257798(P2009−257798A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104195(P2008−104195)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000153340)日本メックス株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000153340)日本メックス株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
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