説明

隙間測定装置,隙間測定方法及び非破壊検査方法

【課題】二重管構造物全体の狭隘部の広さを検査前に外管の外面から精度よく計測可能な隙間測定装置,隙間測定方法及び非破壊検査方法を提供することにある。
【解決手段】
制御演算装置10は、超音波センサSから超音波が送信するとともに、超音波センサにより受信した反射波を取り込む。制御演算装置10は、二重管構造物の外管の外面に設置した超音波センサにより二重管の中心方向へ超音波を送信し、外管の内面で反射した第1反射波と、外管の内面を透過し、内管の外面で反射した第1反射波とから、多重反射波が表示される受信時間に基づいて、狭隘部の隙間の広さを算出する。移動手段12は、超音波センサSを外管の周方向に移動する。制御演算装置10は、周方向の異なる2点以上で計測された狭隘部の隙間の広さに基づいて、二重管構造物の偏心量を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隙間測定装置,隙間測定方法及び非破壊検査方法に係り、特に、二重管構造物の狭隘部の隙間測定装置,隙間測定方法及び非破壊検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二重管構造物の内管と外管との隙間(狭隘部)にセンサやセンサ移動機構を挿入し、内管あるいは外管の非破壊検査を行うニーズがある。二重管構造物は、製造誤差、構造上の負荷などの原因により、外管と内管が同心円状ではない可能性(偏心の可能性)がある。このような狭隘部でのセンサ移動においては、想定以上の偏心が生じていた場合、センサが挿入できず検査を行えない、あるいは、センサが内管と外管に挟まって動かなくなるという問題がある。従って、検査前に狭隘部でのセンサ移動が可能な隙間が保たれているかを調べる必要がある。特に、プラントで長期間使用されることのある二重管構造物では、この狭隘部の広さが経年変化することも考えられるので、隙間の広さを精度よく計測できることが重要となる。
【0003】
例えば、二重管構造物の端部が開いているような、二重管内部へ直接アクセスしやすい環境下においては、狭隘部に直接アクセスすることで隙間の広さを計測し、センサ挿入および移動が可能であることを判別することはできる。また、狭隘部の広さを内管の内部から超音波探傷装置を用いて計測する方法としては、内管の内面から超音波の送受信を行い、エコー強度比により隙間の大きさを測定する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−38643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、、既設の設備に二重管構造物が組み込まれていた場合、特許文献1記載の方法のように、設備内部より二重管構造物の内管の内側にアクセスして、隙間の広さを計測してから検査可否を判断すると、装置のインストール及び確認作業に時間がかかる、あるいは、隙間の広さ計測のためのセンサが挟まるなどのリスクを伴うという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、二重管構造物全体の狭隘部の広さを検査前に外管の外面から精度よく計測可能な隙間測定装置,隙間測定方法及び非破壊検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、超音波センサと、該超音波センサから超音波が送信するとともに、該超音波センサにより受信した反射波を取り込む制御演算手段とを備え、前記制御演算手段は、二重管構造物の外管の外面に設置した前記超音波センサにより前記二重管の中心方向へ超音波を送信し、前記外管の内面で反射した第1反射波と、前記外管の内面を透過し、内管の外面で反射した第1反射波とから、多重反射波が表示される受信時間に基づいて、狭隘部の隙間の広さを算出し、周方向の異なる2点以上で計測された前記狭隘部の隙間の広さに基づいて、前記二重管構造物の偏心量を求めるようにしたものである。
かかる構成により、二重管構造物全体の狭隘部の広さを検査前に外管の外面から精度よく計測可能となる。
【0008】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記超音波センサを周方向の異なる2点に移動する移動手段を備えるようにしたものである。
【0009】
(3)上記(2)において、好ましくは、前記移動手段は、前記超音波センサを前記二重管構造物の軸方向に移動するものであり、前記制御演算部は、二重管構造物全体の偏心を求め、構造物全体の最小隙間広さを求めるようにしたものである。
【0010】
(4)上記(1)において、好ましくは、前記超音波センサは、回動可能な第1及び第2のアームに取り付けられ、それぞれ該アームに沿って移動可能な第1及び第2の超音波センサからなるものである。
【0011】
(5)上記(1)において、好ましくは、前記超音波センサは、山形形状の面を有する治具の山形部の第1の面に取り付けられた第1の超音波振動子と、第2の面に取り付けられた第2の超音波振動子とからなるものである。
【0012】
(6)上記(4)又は(5)において、好ましくは、前記超音波センサを前記二重管構造物の軸方向に移動する移動手段を備え、前記制御演算部は、二重管構造物全体の偏心を求め、構造物全体の最小隙間広さを求めるようにしたものである。
【0013】
(7)上記目的を達成するために、本発明は、二重管構造物の外管の外面に設置した前記超音波センサにより前記二重管の中心方向へ超音波を送信し、制御演算部により、前記外管の内面で反射した第1反射波と、前記外管の内面を透過し、内管の外面で反射した第1反射波とから、多重反射波が表示される受信時間に基づいて、狭隘部の隙間の広さを算出し、周方向の異なる2点以上で計測された前記狭隘部の隙間の広さに基づいて、前記二重管構造物の偏心量を求めるようにしたものである。
かかる方法により、二重管構造物全体の狭隘部の広さを検査前に外管の外面から精度よく計測可能となる。
【0014】
(8)上記目的を達成するために、本発明は、二重管構造物の外管の外面に設置した前記超音波センサにより前記二重管の中心方向へ超音波を送信し、制御演算部により、前記外管の内面で反射した第1反射波と、前記外管の内面を透過し、内管の外面で反射した第1反射波とから、多重反射波が表示される受信時間に基づいて、狭隘部の隙間の広さを算出し、周方向の異なる2点以上で計測された前記狭隘部の隙間の広さに基づいて、前記二重管構造物の偏心量を求め、前記二重管構造物の内管の外面に第2の超音波センサを設置し、第2の制御演算部により、二重管構造物の検査対象部位において超音波検査を行うようにしたものである。
かかる方法により、二重管構造物全体の狭隘部の広さを検査前に外管の外面から精度よく計測可能となり、さらに、二重管の隙間に超音波センサを挿入しての内管の非破壊検査が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、二重管構造物全体の狭隘部の広さを検査前に外管の外面から精度よく計測可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態による、隙間測定方法及び非破壊検査方法の対象となる二重管構造物の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による、隙間測定方法及び非破壊検査方法の対象となる二重管構造物の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態の隙間測定装置を備えた非破壊検査装置による隙間測定方法及び非破壊検査方法の説明図である。
【図4】本発明の一実施形態による、隙間測定方法及び非破壊検査方法の内容を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態による、隙間測定方法の原理説明図である。
【図6】本発明の一実施形態による、隙間測定方法の内容を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態による、狭隘部の広さの算出方法の説明図である。
【図8】本発明の一実施形態による、狭隘部の広さの算出方法の説明図である。
【図9】本発明の一実施形態による、隙間測定方法に用いるセンサの第1の変形例を示す構成図である。
【図10】本発明の一実施形態による、隙間測定方法に用いるセンサの第2の変形例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1〜図8を用いて、本発明の一実施形態による、二重管構造物の隙間測定方法及び非破壊検査方法について説明する。
最初に、図1及び図2を用いて、本実施形態による、隙間測定方法及び非破壊検査方法の対象となる二重管構造物の構成について説明する。
図1及び図2は、本発明の一実施形態による、隙間測定方法及び非破壊検査方法の対象となる二重管構造物の構成を示す断面図である。
【0018】
図1は、二重管構造物の断面形状を示している。二重管構造物とは、第1の管の中に第2の管が存在するような構造物を指す。二重管の内側の管を内管ITとし、内管の二重管の中心側にある面を内管内面IT−i、外側にあるものを内管外面IT−oと称する。同じく外管OTに対しても、管中心側を外管内面OT−i、外側を外管外面OT−oと称する。この場合、二重管構造の狭隘部NPとは、内管と外管の間に存在する隙間を指す。狭隘部の広さWgは、内管ITと外管OTの中心Cが一致している場合、内管外面IT−oと外管内面OT−iの直径の差の二分の一のスペースを指す。
【0019】
一方、図2は、二重管構造物の内管中心と外管中心が一致しない、すなわち、偏心を起こしている場合を示している。内管中心C−Iと外管中心C−Oの距離を偏心Aと呼ぶ。また内管中心C−Iと外管中心C−Oを結ぶ軸DIR−a上には、最小隙間Wminと最大隙間Wmaxが存在する。
【0020】
次に、図3を用いて、本実施形態による、隙間測定装置を備えた非破壊検査装置の構成について説明する。
図3は、本発明の一実施形態の隙間測定装置を備えた非破壊検査装置による隙間測定方法及び非破壊検査方法の説明図である。
【0021】
隙間測定装置は、超音波センサSと、制御演算装置10と、移動装置12とから構成されている。超音波センサSは、外管OTの外面に接触して配置される。超音波センサSは、制御演算装置10から出力される送信パルスに基づいて、超音波を外管OTの内部に送出する。また、超音波センサSは、外管OTの内部からの反射波を受信して、制御演算装置10に出力する。制御演算装置10は、超音波センサSから得られる反射波に基づいて、内管外面と外管内面との間の隙間Waを算出する。なお、隙間Waの算出方法については、図7を用いて後述する。
【0022】
移動装置12は、超音波センサSを外管OTの表面に沿って、矢印rot1方向に移動し、図示の位置から角度θだけ移動した位置まで移動する。また、移動装置12は、外管OTの表面に沿って、超音波センサSを外管OTの軸方向(紙面に垂直な方向)にも移動する。
【0023】
第1の位置から角度θだけ移動した位置において、超音波センサSは、制御演算装置10から出力される送信パルスに基づいて、超音波を外管OTの内部に送出する。また、超音波センサSは、外管OTの内部からの反射波を受信して、制御演算装置10に出力する。制御演算装置10は、超音波センサSから得られる反射波に基づいて、内管外面と外管内面との間の隙間Wbを算出する。
【0024】
制御演算装置10は、2つの隙間Wa,Wbを用いて、外管と内管の偏心量Aを算出する。偏心量Aの算出方法については、図7を用いて後述する。制御演算装置10は、算出された偏心量Aから最小隙間を算出する。そして、算出された最小隙間を、第2の制御演算装置20に出力する。
【0025】
超音波検査装置は、超音波センサSと、制御演算装置20と、移動装置22とから構成されている。超音波センサSは、内管ITの外面に接触して配置される。超音波センサSは、制御演算装置20から出力される送信パルスに基づいて、超音波を内管ITの内部に送出する。また、超音波センサSは、内管ITの内部からの反射波を受信して、制御演算装置20に出力する。制御演算装置20は、超音波センサSから得られる反射波に基づいて、内管の欠陥(傷)の有無を判定する。
【0026】
移動装置22は、超音波センサSを内管ITの表面に沿って、矢印rot2方向に移動し、内管ITの全周に亘って超音波探傷を実行する。また、移動装置22は、内管ITの表面に沿って、超音波センサSを内管ITの軸方向(紙面に垂直な方向)にも移動する。
【0027】
次に、図4〜図8を用いて、本実施形態による、隙間測定方法及び非破壊検査方法の内容について説明する。
図4は、本発明の一実施形態による、隙間測定方法及び非破壊検査方法の内容を示すフローチャートである。
【0028】
ステップS001において、制御演算装置10は、超音波センサS及び移動装置12を用いて、二重管構造物の外部から、超音波センサSにより、狭隘部隙間広さを測定する。
【0029】
ここで、図5〜図8を用いて、本実施形態による、隙間測定方法の内容について説明する。
図5は、本発明の一実施形態による、隙間測定方法の原理説明図である。図6は、本発明の一実施形態による、隙間測定方法の内容を示すフローチャートである。
【0030】
最初に、図5及び図6により、図4のステップS001における、二重管狭隘部における隙間広さおよび偏心量の計測方法について説明する。
【0031】
本実施形態による二重管狭隘部における隙間広さ計測方法は、二重管構造物の外管の外面の一周方向において、超音波センサを取り付け、管中心方向へ超音波を送信し、内管および外管の境界面で反射される超音波を受信し、受信時間(路程)を計測することにより、行われる。
【0032】
図5(A)に示すように、外管OTの内面OT−iで反射した第1反射波(経路PA401)と外管内面OT−iを透過し、内管の外面IT−oで反射した第1反射波(経路PA402)の強度と受信時間(図5(B))を計測することで求められる。
【0033】
このとき、経路PA401で伝搬した超音波は経路PA402で伝搬した超音波よりも強い強度で受信される。特に、外管が鋼材、狭隘部が水のように音響インピーダンスが大きく異なる場合は、より顕著になる。図5(A)の経路PA401を伝搬した超音波による受信波形は、図5(B)の波形Pe411となって現れ、図5(A)の経路PA402を伝搬した超音波による受信波形は、図5(B)の波形Pe412となって現れる。波形Pe411の到達時刻をtとする。この二つの波形Peの受信時間の差、すなわち狭隘部を伝搬した時間をTとする。狭隘部NPを満たしている媒質の音速をVとすると、狭隘部の隙間の広さは(TV/2)となる。
【0034】
また、このほか、経路PA403のように内管内面にまで到達する経路、経路PA404〜PA407のように多重反射(多重エコー)を起こす経路がある。このうち、経路PA403は異なる媒質を4回透過するため、一般には反射波の強度が低くなる。そのほかの多重エコーによる波形、例えば、Pe411とPe415、Pe412とPe415、Pe414とPe417などを比較することによっても、狭隘部の隙間の広さを求めることが可能である。
【0035】
基本的には、波形Pe411と波形Pe412の時間差Tを用いて、狭隘部の隙間の広さを算出する。これは、波形Pe411と波形Pe412の強度が高いからである。但し、内管ITの音響インピーダンスが狭隘部の媒質のインピーダンスよりもかなり小さい場合、波形Pe412と波形Pe414が重なって観察される場合もある。このような場合には、波形Pe411と波形Pe415の時間差を用いることができる。
【0036】
次に、図6を用いて、狭隘部の隙間の広さを計測する処理内容について説明する。
【0037】
最初に、隙間測定装置のオペレータは、制御演算装置10に、二重管構造物の外管および内管の材質、狭隘部を満たしている材質、二重管構造物設計時の寸法などの初期情報を入力し(ステップS501)、図5に示した、第1反射波401の波形Pe411の強度を基準とし、多重反射波の波形Pe414、Pe416を強度によって弁別する(ステップS502)。これは、二重管を構成する材質および、狭隘部を満たす媒質の種類がわかれば、得られるピーク強度の予想をたてることができ、また、伝搬距離が長い場合において減衰を考慮する場合は、せいぜい設計時の値を用いて大まかに補正すれば良いからである。
【0038】
次に、多重反射波の波形Pe414、Pe416以外の波形のピークサーチを行う(ステップS503)。ただし、外管厚みと外管中音速、狭隘部の隙間広さと狭隘部に満ちている媒質音速の関係上、媒質を伝搬する時間Tと外管を伝搬する時間t’が重なる場合も考えられので、このような場合、残った波形Peは予測されるピークが入力された初期値から得られた予想値よりも大きく異なっている場合があり、このときエラーを返す(ステップS504)。こうした場合は、得られた波形Peに、最初の第一波の波形Peを元にして、相関処理を行ってからピーク分別してもよい。
【0039】
分別が終われば、外管の内面で反射した第1反射波(経路PA401)と外管内面を透過し、内管の外面で反射した第1反射波(経路PA402)の反射波をえた受信時間に基づいて、狭隘部の隙間の広さを算出する(ステップS505)。
【0040】
次に、図7及び図8を用いて、狭隘部の広さの算出方法について説明する。
図7及び図8は、本発明の一実施形態による、狭隘部の広さの算出方法の説明図である。
【0041】
図7に示すように、外管OTの内面の半径をRとし、内管ITの外面の半径をrとする。なお、外管OTの中心は点C−Oであり、内管ITの中心は点C−Iである。超音波センサを第1の位置S1に設置したとき求められる外管OTの内面と内管ITの外面との隙間をaとする。超音波センサを第2の位置S2に設置したとき求められる外管OTの内面と内管ITの外面との隙間をbとする。超音波センサを第1の位置S1に設置したときと、超音波センサを第2の位置S2に設置したときに、なす角度をθとする。
【0042】
図7に示すようにパラメータを設定すると、偏心量Aは、図8から幾何学的に求めることができて、式(1)で表すことができる。なお、図8における点Z1,Z2は、図7に示す位置Z1,Z2に対応する。
【0043】
【数1】

【0044】
ここで、式(1)における変数α、β、γは以下の式(2),式(3),式(4)により表される。
【0045】
【数2】

【0046】
【数3】

【0047】
【数4】

【0048】
さらに、式(2),式(3),式(4)における変数xは、
【0049】
【数5】

【0050】
として表される。
【0051】
制御演算装置10は、二重管構造物外管の一周方向において、少なくとも2か所の位置にて、同じ算出ステップにより隙間広さを計測する。制御演算装置10は、2点以上の同一周方向上の異なる位置における隙間広さa,bの算出量によって偏心量Aを算出することができる。また、制御演算装置10は、外管内径Rと内管外径rと偏心量Aから最小隙間広さWminを算出できる。この最小隙間広さ量によって、検査可否を判別できる。
【0052】
さらに、二重管構造物のある1周方向における偏心量Aを求めた後、制御演算装置10は、移動装置12により、超音波センサSの位置を軸方向にずらし、それぞれの位置にて、偏心量B,C,…を求め、この2点以上の偏心量および測定点をプロットすることにより、二重管構造物全体の偏心を求め、構造物全体の最小隙間広さを予測することができ、これにより検査可否を判別することができる。
【0053】
なお、以上の説明では、1周方向において、図7に示したように、互いに角度θをなす第1及び第2の位置の2箇所において、それぞれ隙間の広さを求めているが、1周方向において、3箇所以上において、それぞれ隙間の広さを求め、求められた隙間の広さの平均値を算出することで、より正確な隙間の広さを算出することができる。
【0054】
次に、図4に戻り、制御演算装置10により、狭隘部隙間広さを測定すると、制御演算装置20は、狭隘部に非破壊検査を行うセンサあるいは移動機構が挿入可能かを判別することができる。十分な広さ無しと判定された場合は、その時点で記録を残して検査を終了するとよい(ステップS003)。
【0055】
十分な広さ有りと判定された場合は、検査装置一式を二重管構造物周辺にまでインストールを行い(ステップS002)、検査装置一式の位置決めを行う(ステップS004)。
【0056】
そして、制御演算装置20は、移動装置22により、超音波センサSを狭隘部に挿入する(ステップS005)。その上で、検査対象個所を検査可能な位置を決定し(ステップS006)、その位置にまでセンサを移動する(ステップS007)。検査対象箇所にまでセンサが届くと、その部分にセンサを固定し(ステップS008)、検査を行い(ステップS009)、データを収録する(ステップS010)。
【0057】
これを、検査対象箇所すべてのデータが収録できるまで、繰り返し行う(ステップS011)。全データの収録が完了すれば、センサ走査を終了し(ステップS012)、センサを抜き取り(ステップS013)、検査装置を回収し(ステップS014)、検査終了となる(ステップS015)。このような検査手順にすることで、二重管構造物の検査を合理化することができる。
【0058】
次に、図9を用いて、本発明の一実施形態による、二重管構造物の隙間測定方法に用いるセンサの第1の変形例について説明する。
図9は、本発明の一実施形態による、隙間測定方法に用いるセンサの第1の変形例を示す構成図である。
【0059】
第1のセンサS−Aは、第1のアームAR−Aに矢印方向に移動可能に保持されている。第2のセンサS−Bは、第2のアームAR−Bに矢印方向に移動可能に保持されている。第1のアームAR−Aと第2のアームAR−Bとは、点Cを中心に回動可能に保持されている。
【0060】
ここで、第1のセンサS−Aを第1のアームAR−A上で移動し、また、第2のセンサS−Bは、第2のアームAR−B上で移動し、それぞれのセンサS−A,S−Bが外管OTの表面に接触するように、両アームAR−A,AR−Bのなす角度δを調整する。これにより、外管外面の接線方向とセンサ面が一致するようにセンサを外管に設置することができる。そして、精度の高い二重管狭隘部における隙間広さ計測が可能となる。
【0061】
センサ位置およびセンサ設置の角度を可変にすることで、外管外径が変化した場合にも対応できる。
【0062】
また、2つのセンサを用いることで、前述の実施形態におけるように、2つの位置における隙間計測時に単一のセンサを移動することが不要となる。前述の実施形態におけるセンサ設置位置のなす角度θは、(180度−δ)となる。
【0063】
次に、図10を用いて、本発明の一実施形態による、二重管構造物の隙間測定方法に用いるセンサの第2の変形例について説明する。
図10は、本発明の一実施形態による、隙間測定方法に用いるセンサの第2の変形例を示す構成図である。
【0064】
この例では、超音波センサS’は、一面が山形形状となっている治具JGと、山形形状の面の内、第1の面に取り付けられた第1の超音波振動子EAと、第2の面に取り付けられた第2の超音波振動子EBとから構成されている
超音波センサS’は、振動子EA,EBの表面が外管OTの外面に接触するように配置される。なお、ここでは、二重管の外管の外径が分かっているものである。これにより、外管外面の接線方向とセンサ面が一致するようにセンサを外管に設置することができる。そして、精度の高い二重管狭隘部における隙間広さ計測が可能となる。
【0065】
センサ設置の角度は一定であり、センサ設置位置のなす角度は、θである。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によれば、二重管構造物全体の狭隘部の広さを検査前に外管の外面から精度よく計測可能となる。また、二重管構造物に対する非破壊検査手順を合理化し、非破壊検査をリスクなく速やかに行うことができるようになる。
【符号の説明】
【0067】
10,20…制御演算装置
12,22…移動装置
S…超音波センサ
OT…外管
IT…内管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波センサと、該超音波センサから超音波が送信するとともに、該超音波センサにより受信した反射波を取り込む制御演算手段とを備え、
前記制御演算手段は、二重管構造物の外管の外面に設置した前記超音波センサにより前記二重管の中心方向へ超音波を送信し、前記外管の内面で反射した第1反射波と、前記外管の内面を透過し、内管の外面で反射した第1反射波とから、多重反射波が表示される受信時間に基づいて、狭隘部の隙間の広さを算出し、周方向の異なる2点以上で計測された前記狭隘部の隙間の広さに基づいて、前記二重管構造物の偏心量を求めることを特徴とする隙間測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の隙間測定装置において、
前記超音波センサを周方向の異なる2点に移動する移動手段を備えることを特徴とする隙間測定装置。
【請求項3】
請求項2記載の隙間測定装置において、
前記移動手段は、前記超音波センサを前記二重管構造物の軸方向に移動するものであり、
前記制御演算部は、二重管構造物全体の偏心を求め、構造物全体の最小隙間広さを求めることを特徴とする隙間測定装置。
【請求項4】
請求項1記載の隙間測定装置において、
前記超音波センサは、回動可能な第1及び第2のアームに取り付けられ、それぞれ該アームに沿って移動可能な第1及び第2の超音波センサからなることを特徴とする隙間測定装置。
【請求項5】
請求項1記載の隙間測定装置において、
前記超音波センサは、山形形状の面を有する治具の山形部の第1の面に取り付けられた第1の超音波振動子と、第2の面に取り付けられた第2の超音波振動子とからなることを特徴とする隙間測定装置。
【請求項6】
請求項4若しくは請求項5のいずれかに記載の隙間測定装置において、
前記超音波センサを前記二重管構造物の軸方向に移動する移動手段を備え、
前記制御演算部は、二重管構造物全体の偏心を求め、構造物全体の最小隙間広さを求めることを特徴とする隙間測定装置。
【請求項7】
二重管構造物の外管の外面に設置した前記超音波センサにより前記二重管の中心方向へ超音波を送信し、
制御演算部により、前記外管の内面で反射した第1反射波と、前記外管の内面を透過し、内管の外面で反射した第1反射波とから、多重反射波が表示される受信時間に基づいて、狭隘部の隙間の広さを算出し、周方向の異なる2点以上で計測された前記狭隘部の隙間の広さに基づいて、前記二重管構造物の偏心量を求めることを特徴とする隙間測定方法。
【請求項8】
二重管構造物の外管の外面に設置した前記超音波センサにより前記二重管の中心方向へ超音波を送信し、
制御演算部により、前記外管の内面で反射した第1反射波と、前記外管の内面を透過し、内管の外面で反射した第1反射波とから、多重反射波が表示される受信時間に基づいて、狭隘部の隙間の広さを算出し、周方向の異なる2点以上で計測された前記狭隘部の隙間の広さに基づいて、前記二重管構造物の偏心量を求め、
前記二重管構造物の内管の外面に第2の超音波センサを設置し、
第2の制御演算部により、二重管構造物の検査対象部位において超音波検査を行うことを特徴とする非破壊検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−257180(P2011−257180A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129938(P2010−129938)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】