障害物検出装置
【課題】可視光による配光を制御しつつ障害物の検出精度を向上する技術を提供する。
【解決手段】障害物検出装置は、可視光を出射するLEDユニット154a,154bと、赤外光を出射する赤外光ユニット154cとを有する光源154と、光源から出射した可視光および赤外光を反射しながら回転軸を中心に一方向に回転する回転リフレクタ26と、を備える。回転リフレクタ26は、その回転動作により、LEDユニット154a,154bからの可視光を照射ビームとして出射するものであり、かつ、該照射ビームを走査せしめることによって第1の配光パターンを形成するとともに、赤外光ユニット154cからの赤外光を照射ビームとして出射するものであり、かつ、該照射ビームを走査せしめることによって第2の配光パターンを形成する、ように構成されている。
【解決手段】障害物検出装置は、可視光を出射するLEDユニット154a,154bと、赤外光を出射する赤外光ユニット154cとを有する光源154と、光源から出射した可視光および赤外光を反射しながら回転軸を中心に一方向に回転する回転リフレクタ26と、を備える。回転リフレクタ26は、その回転動作により、LEDユニット154a,154bからの可視光を照射ビームとして出射するものであり、かつ、該照射ビームを走査せしめることによって第1の配光パターンを形成するとともに、赤外光ユニット154cからの赤外光を照射ビームとして出射するものであり、かつ、該照射ビームを走査せしめることによって第2の配光パターンを形成する、ように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両前方の前走車や歩行者、障害物を検出する方法が種々考案されている。特許文献1には、車両に搭載されているレーザ光源から出力されるレーザ光により、車両周辺の検出エリアを走査しながら照射し、このレーザ光の反射波に基づいて車両周辺の障害物を検知する障害物放置装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、車両周辺の対象物を赤外光により検知する赤外線センサと、赤外線センサが対象物を検知したときに可視光を対象物に照射する可視光源とを備えた車両用照明装置が開示されている。この車両用照明装置は、往復回動する反射鏡で反射された赤外光によって車両前方の領域が所定のパターンで走査される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−252264号公報
【特許文献2】特開2009−18726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ハイビーム用配光パターンの一部の領域に車両が存在する場合に、この車両にグレアを与えないように、一部の領域を部分的に非照射とする配光可変技術が考案されている。しかしながら、この状態では、非照射領域に障害物等が存在していてもその状況をドライバが認識しづらい。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、可視光による配光を制御しつつ障害物の検出精度を向上する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の障害物検出装置は、可視光を出射する第1の発光素子と、赤外光を出射する第2の発光素子とを有する光源と、光源から出射した可視光および赤外光を反射しながら回転軸を中心に一方向に回転する回転リフレクタと、を備える。回転リフレクタは、その回転動作により、第1の発光素子からの可視光を照射ビームとして出射するものであり、かつ、該照射ビームを走査せしめることによって第1の配光パターンを形成するとともに、第2の発光素子からの赤外光を照射ビームとして出射するものであり、かつ、該照射ビームを走査せしめることによって第2の配光パターンを形成する、ように構成されている。
【0008】
この態様によると、回転リフレクタの働きにより、可視光の照射ビームの走査による第1の配光パターンの形成と、赤外光の照射ビームの走査による第2の配光パターンの形成とが可能となる。
【0009】
回転軸は、回転によって左右方向に走査する照射ビームの走査平面に略平行に設けられていてもよい。これにより、障害物検出装置の薄型化が図られる。ここで、略平行とは、実質的に平行であればよく、完全な平行を意味してもしなくてもよく、ある態様の障害物検出装置の効果を著しく阻害しない範囲での誤差を許容するものである。
【0010】
第1の発光素子および第2の発光素子の点消灯を制御する制御部を更に備えてもよい。制御部は、可視光による照射ビームが第1の配光パターンの一部の領域を走査するタイミングで第1の発光素子を消灯または減光させるとともに、赤外光による照射ビームが一部の領域を含む領域を走査するタイミングで第2の発光素子を点灯させる制御モードを有してもよい。これにより、第1の発光素子を消灯または減光させた状態で走査された一部の領域を、第2の発光素子を点灯させた状態で走査することができる。
【0011】
赤外光のスペクトル領域に感度を有する撮像部と、撮像部が取得した画像に基づいて一部の領域に車両走行に障害のある障害物が存在するか判定する判定部と、を更に備えてもよい。制御部は、一部の領域に障害物が存在している場合、障害物が可視光による照射ビームで照射されるように第1の発光素子の点灯を制御してもよい。これにより、一部の領域に障害物が存在している場合に、ドライバが認識し易くなる。
【0012】
制御部は、自車両と障害物との距離に応じて、可視光による照射ビームで照射される、障害物を含む領域の範囲が変化するように、第1の発光素子の点灯を制御してもよい。これにより、自車両と障害物との距離に適した、可視光による配光パターンの形成が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、可視光による配光を制御しつつ障害物の検出精度を向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態に係る車両用前照灯の水平断面図である。
【図2】本実施の形態に係る光学ユニットを含むランプユニットの構成を模式的に示した上面図である。
【図3】図1に示すA方向からランプユニットを見た場合の側面図である。
【図4】図4(a)〜図4(e)は、本実施の形態に係るランプユニットにおいて回転リフレクタの回転角に応じたブレードの様子を示す斜視図である。
【図5】図5(a)〜図5(e)は、回転リフレクタが図4(f)〜図4(j)の状態に対応した走査位置における投影イメージを示した図である。
【図6】図6(a)は、本実施の形態に係る車両用前照灯を用いて光軸に対して左右±5度の範囲を走査した場合の配光パターンを示す図、図6(b)は、図6(a)に示す配光パターンの光度分布を示す図、図6(c)は、本実施の形態に係る車両用前照灯を用いて配光パターンのうち一箇所を遮光した状態を示す図、図6(d)は、図6(c)に示す配光パターンの光度分布を示す図、図6(e)は、本実施の形態に係る車両用前照灯を用いて配光パターンのうち複数箇所を遮光した状態を示す図、図6(f)は、図6(e)に示す配光パターンの光度分布を示す図である。
【図7】図7(a)は、LEDの光を平面ミラーで反射させ、非球面レンズにより投影した場合の投影イメージを示した図、図7(b)は、第1の実施の形態に係る車両用前照灯における投影イメージを示した図、図7(c)は、第2の実施の形態に係る車両用前照灯における投影イメージを示した図である。
【図8】第2の実施の形態に係る光学ユニットの正面図である。
【図9】図9(a)〜図9(e)は、第2の実施の形態に係る光学ユニットにおいて回転リフレクタを30°ずつ回転させた際の投影イメージを示した図である。
【図10】図10(a)は、第2の実施の形態に係る光源の斜視図、図10(b)は、図10(a)のB−B断面図である。
【図11】図11(a)は、第2の実施の形態に係る光学ユニットによって形成した照射パターンを示した図、図11(b)は、第2の実施の形態に係る光学ユニットによって形成した投影イメージを合成した状態を示した図である。
【図12】図12(a)は、LEDを備える複合放物面集光器の長手方向が鉛直方向となるように配置した状態を示した図、図12(b)は、複合放物面集光器の長手方向が鉛直方向に対して斜めになるように配置した状態を示した図である。
【図13】図13(a)は、第3の実施の形態に係る光学ユニットによって形成した照射パターンを示した図、図13(b)は、第3の実施の形態に係る光学ユニットによって形成した投影イメージを合成した状態を示した図である。
【図14】第4の実施の形態に係るランプユニットを模式的に示した側面図である。
【図15】第4の実施の形態に係るランプユニットを模式的に示した上面図である。
【図16】回転リフレクタが図14の状態における投影イメージを示した図である。
【図17】図17(a)は、前方のLEDによって形成された配光パターンを示す図、図17(b)は、後方のLEDによって形成された配光パターンを示す図、図17(c)は、2つのLEDによって形成された合成配光パターンを示す図である。
【図18】図18(a)は、前方のLEDによって形成された、遮光部を有する配光パターンを示す図、図18(b)は、後方のLEDによって形成された、遮光部を有する配光パターンを示す図、図18(c)は、2つのLEDによって形成された、遮光部を有する合成配光パターンを示す図である。
【図19】第5の実施の形態に係る光学ユニットを含む構成を模式的に示した上面図である。
【図20】第5の実施の形態に係る光学ユニットを備えた車両用前照灯により形成された配光パターンを模式的に示した図である。
【図21】図21(a)は、各光源により形成した配光パターンを示した図、図21(b)〜図21(f)は、各LEDユニットのそれぞれにより形成された照射パターンを示した図である。
【図22】図22(a)は、第5の実施の形態に係るLEDユニットの斜視図、図22(b)は、図22(a)のC−C断面図、図22(c)は、図22(a)のD−D断面図である。
【図23】図23(a)は、各光源により形成した、遮光部を有する配光パターンを示した図、図23(b)〜図23(f)は、各LEDユニットのそれぞれにより形成された遮光部を有する照射パターンを示した図である。
【図24】第6の実施の形態に係る障害物検出装置を模式的に示した上面図である。
【図25】第6の実施の形態に係る障害物検出装置のブロック図である。
【図26】第6の実施の形態に係る障害物検出装置により形成された各配光パターンを模式的に示した図である。
【図27】本実施の形態に係る障害物検出装置における障害物検出モードの一例を説明するためのフローチャートである。
【図28】図28(a)は、障害物検出モードが実行されている際の配光パターンの一例を模式的に示した図、図28(b)は、赤外光配光パターンPHIR内の赤外光(IR)光度の変化を示す図である。
【図29】図29(a)は、障害物検出モードが実行されている際の配光パターンの一例を模式的に示した図、図29(b)は、赤外光配光パターンPHIR内の赤外光(IR)光度の変化を示す図である。
【図30】図30(a)は、遠方の障害物を検出した場合の配光パターンの一例を模式的に示した図、図30(b)は、近距離の障害物を検出した場合の配光パターンの一例を模式的に示した図である。
【図31】図31(a)は、照射範囲が固定の赤外線投光器の配光パターンの一例を模式的に示した図、図31(b)は、赤外光配光パターンPHIR内の赤外光(IR)光度の変化を示す図である。
【図32】本実施の形態に係る障害物検出装置における照射範囲変更モードの一例を説明するためのフローチャートである。
【図33】図33(a)は、照射範囲変更モードにおいて広い照射範囲が選択された際の配光パターンの一例を模式的に示した図、図33(b)は、図33(a)における赤外光配光パターンPHIR(W)内の赤外光(IR)光度の変化を示す図、である。図33(c)は、照射範囲変更モードにおいて通常の照射範囲が選択された際の配光パターンの一例を模式的に示した図、図33(d)は、図33(c)における赤外光配光パターンPHIR(M)内の赤外光(IR)光度の変化を示す図、図33(e)は、照射範囲変更モードにおいて狭い照射範囲が選択された際の配光パターンの一例を模式的に示した図、図33(f)は、図33(e)における赤外光配光パターンPHIR(N)内の赤外光(IR)光度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
なお、前述の障害物検出装置は、車両用灯具が備える光学ユニットとしての機能を兼ね備えることも可能である。そこで、はじめに、障害物検出装置に適用可能な光学ユニットおよび光学ユニットを備えた車両用灯具について以下の実施の形態で詳述する。実施の形態に係る光学ユニットは、種々の車両用灯具に用いることができるが、以下では、車両用前照灯に適用した場合について説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態に係る車両用前照灯の水平断面図である。車両用前照灯10は、自動車の前端部の右側に搭載される右側前照灯であり、左側に搭載される前照灯と左右対称である以外は同じ構造である。そのため、以下では、右側の車両用前照灯10について詳述し、左側の車両用前照灯については説明を省略する。
【0018】
図1に示すように、車両用前照灯10は、前方に向かって開口した凹部を有するランプボディ12を備えている。ランプボディ12は、その前面開口が透明な前面カバー14によって覆われて灯室16が形成されている。灯室16は、2つのランプユニット18,20が車幅方向に並んで配置された状態で収容される空間として機能する。
【0019】
これらランプユニットのうち外側、すなわち、右側の車両用前照灯10にあっては図1に示す上側に配置されたランプユニット20は、レンズを備えたランプユニットであり、可変ハイビームを照射するように構成されている。一方、これらランプユニットのうち内側、すなわち、右側の車両用前照灯10にあっては図1に示す下側に配置されたランプユニット18は、ロービームを照射するように構成されている。
【0020】
ロービーム用のランプユニット18は、リフレクタ22とリフレクタ22に支持された光源バルブ(白熱バルブ)24と、不図示のシェードとを有し、リフレクタ22は図示しない既知の手段、例えば、エイミングスクリューとナットを使用した手段によりランプボディ12に対して傾動自在に支持されている。
【0021】
ランプユニット20は、図1に示すように、回転リフレクタ26と、LED28と、回転リフレクタ26の前方に配置された投影レンズとしての凸レンズ30と、を備える。なお、LED28の代わりにEL素子やLD素子などの半導体発光素子を光源として用いることも可能である。特に後述する配光パターンの一部を遮光するための制御には、点消灯が短時間に精度よく行える光源が好ましい。凸レンズ30の形状は、要求される配光パターンや照度分布などの配光特性に応じて適宜選択すればよいが、非球面レンズや自由曲面レンズが用いられる。本実施の形態では、凸レンズ30として非球面レンズを用いている。
【0022】
回転リフレクタ26は、不図示のモータなどの駆動源により回転軸Rを中心に一方向に回転する。また、回転リフレクタ26は、LED28から出射した光を回転しながら反射し、所望の配光パターンを形成するように構成された反射面を備えている。本実施の形態では、回転リフレクタ26が光学ユニットを構成している。
【0023】
図2は、本実施の形態に係る光学ユニットを含むランプユニット20の構成を模式的に示した上面図である。図3は、図1に示すA方向からランプユニット20を見た場合の側面図である。
【0024】
回転リフレクタ26は、反射面として機能する、形状の同じ3枚のブレード26aが筒状の回転部26bの周囲に設けられている。回転リフレクタ26の回転軸Rは、光軸Axに対して斜めになっており、光軸AxとLED28とを含む平面内に設けられている。換言すると、回転軸Rは、回転によって左右方向に走査するLED28の光(照射ビーム)の走査平面に略平行に設けられている。これにより、光学ユニットの薄型化が図られる。ここで、走査平面とは、例えば、走査光であるLED28の光の軌跡を連続的につなげることで形成される扇形の平面ととらえることができる。
【0025】
また、本実施の形態に係るランプユニット20においては、備えているLED28は比較的小さく、LED28が配置されている位置も回転リフレクタ26と凸レンズ30との間であって光軸Axよりずれている。そのため、従来のプロジェクタ方式のランプユニットのように、光源とリフレクタとレンズとが光軸上に一列に配列されている場合と比較して、車両用前照灯10の奥行き方向(車両前後方向)を短くできる。
【0026】
また、回転リフレクタ26のブレード26aの形状は、反射によるLED28の2次光源が凸レンズ30の焦点付近に形成されるように構成されている。また、ブレード26aは、回転軸Rを中心とする周方向に向かうにつれて、光軸Axと反射面とが成す角が変化するように捩られた形状を有している。これにより、図2に示すようにLED28の光を用いた走査が可能となる。この点について更に詳述する。
【0027】
図4(a)〜図4(e)は、本実施の形態に係るランプユニットにおいて回転リフレクタ26の回転角に応じたブレードの様子を示す斜視図である。図4(f)〜図4(j)は、図4(a)〜図4(e)の状態に対応して光源からの光を反射する方向が変化する点を説明するための図である。
【0028】
図4(a)は、LED28が2つのブレード26a1,26a2の境界領域を照射するように配置されている状態を示している。この状態では、図4(f)に示すように、LED28の光は、ブレード26a1の反射面Sで光軸Axに対して斜めの方向に反射される。その結果、配光パターンが形成される車両前方の領域のうち、左右両端部の一方の端部領域が照射される。その後、回転リフレクタ26が回転し、図4(b)に示す状態になると、ブレード26a1が捩れているため、LED28の光を反射するブレード26a1の反射面S(反射角)が変化する。その結果、図4(g)に示すように、LED28の光は、図4(f)に示す反射方向よりも光軸Axに近い方向に反射される。
【0029】
続いて、回転リフレクタ26が図4(c)、図4(d)、図4(e)に示すように回転すると、LED28の光の反射方向は、配光パターンが形成される車両前方の領域のうち、左右両端部の他方の端部に向かって変化することになる。本実施の形態に係る回転リフレクタ26は、120度回転することで、LED28の光によって前方を一方向(水平方向)に1回走査できるように構成されている。換言すると、1枚のブレード26aがLED28の前を通過することで、車両前方の所望の領域がLED28の光によって1回走査されることになる。なお、図4(f)〜図4(j)に示すように、2次光源(光源虚像)32は、凸レンズ30の焦点近傍で左右に移動している。ブレード26aの数や形状、回転リフレクタ26の回転速度は、必要とされる配光パターンの特性や走査される像のちらつきを考慮して実験やシミュレーションの結果に基づいて適宜設定される。また、種々の配光制御に応じて回転速度を変えられる駆動部としてモータが好ましい。これにより、走査するタイミングを簡便に変えることができる。このようなモータとしては、モータ自身から回転タイミング情報を得られるものが好ましい。具体的には、DCブラシレスモータが挙げられる。DCブラシレスモータを用いた場合、モータ自身から回転タイミング情報を得られるため、エンコーダなどの機器を省略することができる。
【0030】
このように、本実施の形態に係る回転リフレクタ26は、ブレード26aの形状や回転速度を工夫することで、LED28の光を用いて車両前方を左右方向に走査することができる。図5(a)〜図5(e)は、回転リフレクタが図4(f)〜図4(j)の状態に対応した走査位置における投影イメージを示した図である。図の縦軸および横軸の単位は度(°)であり、照射範囲および照射位置を示している。図5(a)〜図5(e)に示すように、回転リフレクタ26の回転によって投影イメージは水平方向に移動する。
【0031】
図6(a)は、本実施の形態に係る車両用前照灯を用いて光軸に対して左右±5度の範囲を走査した場合の配光パターンを示す図、図6(b)は、図6(a)に示す配光パターンの光度分布を示す図、図6(c)は、本実施の形態に係る車両用前照灯を用いて配光パターンのうち一箇所を遮光した状態を示す図、図6(d)は、図6(c)に示す配光パターンの光度分布を示す図、図6(e)は、本実施の形態に係る車両用前照灯を用いて配光パターンのうち複数箇所を遮光した状態を示す図、図6(f)は、図6(e)に示す配光パターンの光度分布を示す図である。
【0032】
図6(a)に示すように、本実施の形態に係る車両用前照灯10は、LED28の光を回転リフレクタ26で反射させ、反射した光で前方を走査することで実質的に水平方向に横長形状のハイビーム用配光パターンを形成することができる。このように、回転リフレクタ26の一方向の回転により所望の配光パターンを形成することができるため、共振ミラーのような特殊な機構による駆動が必要なく、また、共振ミラーのように反射面の大きさに対する制約が少ない。そのため、より大きな反射面を有する回転リフレクタ26を選択することで、光源から出射した光を照明に効率よく利用することができる。つまり、配光パターンにおける最大光度を高めることができる。なお、本実施の形態に係る回転リフレクタ26は、凸レンズ30の直径とほぼ同じ直径であり、ブレード26aの面積もそれに応じて大きくすることが可能である。
【0033】
また、本実施の形態に係る光学ユニットを備えた車両用前照灯10は、LED28の点消灯のタイミングや発光度の変化を回転リフレクタ26の回転と同期させることで、図6(c)、図6(e)に示すように任意の領域が遮光されたハイビーム用配光パターンを形成することができる。また、回転リフレクタ26の回転に同期させてLED28の発光光度を変化(点消灯)させてハイビーム用配光パターンを形成する場合、光度変化の位相をずらすことで配光パターン自体をスイブルするような制御も可能である。
【0034】
上述のように、本実施の形態に係る車両用前照灯は、LEDの光を走査することで配光パターンを形成するとともに、発光光度の変化を制御することで配光パターンの一部に任意に遮光部を形成することができる。そのため、複数のLEDの一部を消灯して遮光部を形成する場合と比較して、少ない数のLEDで所望の領域を精度よく遮光することができる。また、車両用前照灯10は、複数の遮光部を形成することができるため、前方に複数の車両が存在する場合であっても、個々の車両に対応する領域を遮光することが可能となる。
【0035】
また、車両用前照灯10は、基本となる配光パターンを動かさずに遮光制御することが可能なため、遮光制御時にドライバに与える違和感を低減できる。また、ランプユニット20を動かさずに配光パターンをスイブルすることができるため、ランプユニット20の機構を簡略化することができる。そのため、車両用前照灯10は、配光可変制御のための駆動部としては回転リフレクタ26の回転に必要なモータを有していればよく、構成の簡略化と低コスト化、小型化が図られている。
【0036】
また、本実施の形態に係る回転リフレクタ26は、図1や図2に示すように、その前面にLED28が配置されており、LED28に向かって風を送る送る冷却ファンを兼ねている。そのため、冷却ファンと回転リフレクタを別個に設ける必要がなく、光学ユニットの構成を簡略化できる。また、回転リフレクタ26で生じた風によりLED28を空冷することで、LED28を冷却するためのヒートシンクを省略あるいは小型化することが可能となり、光学ユニットの小型化や低コスト化、軽量化が図られる。
【0037】
なお、このような冷却ファンは、必ずしも光源に向かって直接風を送る機能を有していなくてもよく、ヒートシンクなどの放熱部に対流を生じさせるものでもよい。例えば、回転リフレクタ26による風がLED28とは別に設けられているヒートシンクなどの放熱部の近傍に対流を生じさせることで、LED28の冷却を行うように回転リフレクタ26やヒートシンクの配置を設定してもよい。なお、放熱部は、ヒートシンクのように別体の部材だけでなく、光源の一部であってもよい。
【0038】
(第2の実施の形態)
LEDの光を反射して投影レンズで前方に投影した場合、投影イメージの形状は、必ずしもLEDの発光面の形状と一致しない。図7(a)は、LEDの光を平面ミラーで反射させ、非球面レンズにより投影した場合の投影イメージを示した図、図7(b)は、第1の実施の形態に係る車両用前照灯における投影イメージを示した図、図7(c)は、第2の実施の形態に係る車両用前照灯における投影イメージを示した図である。
【0039】
図7(a)に示すように、反射面が平面であれば投影イメージはLEDの発光面の形状と相似する。しかしながら、第1の実施の形態に係る回転リフレクタ26では、反射面となるブレード26aが捩れているため、投影イメージは図7(b)に示すように歪んだものとなる。具体的には、第1の実施の形態では、投影イメージがぼける(照射範囲が広がる)とともに傾いている。そのため、投影イメージを走査して形成される配光パターンや遮光部の形状が傾くとともに、遮光部と照射部との境界が不明瞭となる場合がある。
【0040】
そこで、第2の実施の形態では、曲面で反射することで歪んだ像を補正するように光学ユニットを構成した。具体的には、第2の実施の形態に係る車両用前照灯では、凸レンズとして自由曲面レンズが用いられている。図8は、第2の実施の形態に係る光学ユニットの正面図である。
【0041】
第2の実施の形態に係る光学ユニットは、回転リフレクタ26と投影レンズ130とを備える。投影レンズ130は、回転リフレクタ26で反射された光を光学ユニットの光照射方向に投影する。投影レンズ130は、回転リフレクタ26の反射面で反射されることで歪んだLEDの像を、光源自体の形状(LEDの発光面の形状)に近付くよう補正する自由曲面レンズである。自由曲面レンズの形状は、ブレードの捩れや形状に応じて適宜設計すればよい。本実施の形態に係る光学ユニットによれば、図7(c)に示すように、光源の形状である矩形に近い形状に補正されている。
【0042】
図9(a)〜図9(e)は、第2の実施の形態に係る光学ユニットにおいて回転リフレクタを30°ずつ回転させた際の投影イメージを示した図である。図9(a)〜図9(e)に示すように、第1の実施の形態と比較して、ぼけが少ない投影イメージが形成されており、所望の領域を精度よく明るい光で照射することができる。
【0043】
なお、LED28から発する光は、そのままでは広がりがあるため、一部の光が回転リフレクタ26で反射されずに無駄になってしまう場合がある。また、回転リフレクタ26で反射されたとしても、投影イメージが大きくなると遮光部の分解能が低下する傾向にある。そこで、本実施の形態における光源は、LED28とLED28の光を集光する複合放物面集光器(CPC: Compound Parabolic Concentrator)32とで構成されている。図10(a)は、第2の実施の形態に係る光源の斜視図、図10(b)は、図10(a)のB−B断面図である。
【0044】
複合放物面集光器32は、底部にLED28が配置された箱形の集光器である。複合放物面集光器32の4つの側面は、LED28またはその近傍領域に焦点を有する放物線形状となるように鏡面加工されている。これにより、LED28が発する光は、集光されて前方へ照射される。この場合、複合放物面集光器32の矩形の開口部32aは、光源の発光面とみなすことができる。
【0045】
(第3の実施の形態)
第2の実施の形態に係る光学ユニットは、自由曲面レンズの働きにより投影イメージの形状を光源の形状である矩形に近い形状に補正することができる。しかしながら、このように補正した投影イメージを走査して配光パターンを形成した場合、なお改良の余地がある。
【0046】
図11(a)は、第2の実施の形態に係る光学ユニットによって形成した照射パターンを示した図、図11(b)は、第2の実施の形態に係る光学ユニットによって形成した投影イメージを合成した状態を示した図である。図12(a)は、LED28を備える複合放物面集光器32の長手方向が鉛直方向となるように配置した状態を示した図、図12(b)は、複合放物面集光器32の長手方向が鉛直方向に対して斜めになるように配置した状態を示した図である。
【0047】
光源が図12(a)に示す状態の場合、照射パターンは、図11(a)に示すように、水平線に対して約10°傾いている。また、光源が図12(a)に示す状態の場合、各投影イメージは、図11(b)に示すように、鉛直線に対して約20°傾いている。そこで、本実施の形態では、これらの傾きを補正するための構成について説明する。
【0048】
はじめに、照射パターンの傾きは、自由曲面レンズである投影レンズ130(図8参照)と回転リフレクタ26とLED28とを含む光学系全体を、光軸に対して10°回転させることで補正可能である。また、各投影イメージの傾きは、LED28と複合放物面集光器32とを備える光源を傾かせることで補正可能である。具体的には、図12(b)に示すように、光源の発光面は、投影レンズ130により前方に投影される投影イメージが直立に近くなるように、発光面の各辺が鉛直方向に対して20°傾いて設けられている。
【0049】
図13(a)は、第3の実施の形態に係る光学ユニットによって形成した照射パターンを示した図、図13(b)は、第3の実施の形態に係る光学ユニットによって形成した投影イメージを合成した状態を示した図である。図13に示すように、照射パターンや各投影イメージの傾きは補正されており、理想的な配光パターンの形成が可能となる。また、投影レンズ130やLED28や回転リフレクタ26を含む光学系全体を傾けるだけで照射パターンや投影イメージの補正が可能なため、所望の配光パターンを得るための調整が容易となる。
【0050】
(第4の実施の形態)
上述の実施の形態の光学ユニットのように、一つの光源でハイビーム用配光パターンを形成することは可能である。しかしながら、より明るい照射パターンを必要とする場合や、低コスト化のために低光度のLEDを用いる場合も考えられる。そこで、本実施の形態では、光源を複数備えた光学ユニットについて説明する。
【0051】
図14は、第4の実施の形態に係るランプユニットを模式的に示した側面図である。図15は、第4の実施の形態に係るランプユニットを模式的に示した上面図である。第4の実施の形態に係るランプユニット120は、投影レンズ130と、回転リフレクタ26と、2つのLED28a,28bとを備える。図16は、回転リフレクタ26が図14の状態における投影イメージを示した図である。投影イメージIaは、投影レンズ130に近い前方に配置されているLED28aの光によって形成されており、投影イメージIbは、投影レンズ130から離れた後方に配置されているLED28bの光によって形成されている。
【0052】
図17(a)は、前方のLED28aによって形成された配光パターンを示す図、図17(b)は、後方のLED28bによって形成された配光パターンを示す図、図17(c)は、2つのLEDによって形成された合成配光パターンを示す図である。図17(c)に示すように、複数のLEDを用いることでも所望の配光パターンを形成することができる。また、合成された配光パターンでは、一つのLEDだけでは困難な最大光度も達成されている。
【0053】
次に、ランプユニット120を用いて配光パターンに遮光部を形成する場合について説明する。図18(a)は、前方のLED28aによって形成された、遮光部を有する配光パターンを示す図、図18(b)は、後方のLED28bによって形成された、遮光部を有する配光パターンを示す図、図18(c)は、2つのLEDによって形成された、遮光部を有する合成配光パターンを示す図である。図18(a)および図18(b)に示す配光パターンを形成するためには、それぞれの遮光部の位置を合わせるために、各LEDの点消灯タイミングを適宜ずらしている。図18(c)に示すように、複数のLEDを用いることでも遮光部を有する所望の配光パターンを形成することができる。また、合成された配光パターンでは、一つのLEDだけでは困難な最大光度も達成されている。
【0054】
(第5の実施の形態)
図19は、第5の実施の形態に係る光学ユニットを含む構成を模式的に示した上面図である。
【0055】
本実施の形態に係る光学ユニット150は、回転リフレクタ26と、発光素子としてのLEDを有する複数の光源と、を備えている。複数の光源のうち一方の光源152は、複数のLEDユニット152a,152b,152cを有する。複数のLEDユニット152a,152b,152cは、集光用のLEDユニットであり、ハイビーム用配光パターンに適した進行方向正面への強い集光を実現するように配置されている。複数の光源のうち他方の光源154は、複数のLEDユニット154a,154bを有する。複数のLEDユニット154a,154bは、拡散用のLEDユニットであり、ハイビーム用配光パターンに適した広い範囲を照射する拡散光を実現するように配置されている。なお、各光源が有するLEDユニットは必ずしも複数である必要はなく、十分な明るさを実現できればLEDユニットは1つでもよい。また、常に全てのLEDユニットを点灯させる必要はなく、車両の走行状況や前方の状態に応じて一部のLEDユニットのみを点灯させてもよい。
【0056】
光源152および光源154は、それぞれ出射した光が、回転リフレクタ26の各ブレードによって異なる位置で反射されるように配置されている。具体的には、光源152が有する集光用のLEDユニット152a,152b,152cは、出射した光が第1の投影レンズ156からより離れた位置にある扇形のブレード26aで反射されるように配置されている。そのため、扇形のブレード26aで反射されたことで生じる光源152の位置変化を、焦点距離が長い(投影倍率が低い)第1の投影レンズ156で前方へ投影することができる。その結果、回転リフレクタ26を回転させ、光源152から出射した光を用いて前方を走査した場合に、走査範囲が余り広くならず、狭い範囲をより明るく照らす配光パターンを形成することができる。
【0057】
一方、光源154が有する拡散用のLEDユニット154a,154bは、出射した光が第2の投影レンズ158により近い位置にある扇側のブレード26aで反射されるように配置されている。そのため、扇形のブレード26aで反射されたことで生じる光源154の位置変化を、焦点距離が短い(投影倍率が高い)第2の投影レンズ158で投影することができる。その結果、回転リフレクタ26を回転させ、光源154から出射した光を用いて前方を走査した場合に、走査範囲が広がり、広い範囲を照らす配光パターンを形成することができる。
【0058】
このように、複数の光源152,154を、それぞれの出射した光が回転リフレクタ26の反射面の異なる位置で反射するように配置することにより、複数の配光パターンを形成できるとともに、それらの配光パターンを合成して新たな配光パターンを形成することも可能なため、より理想的な配光パターンの設計が容易となる。
【0059】
次に、各投影レンズの位置について説明する。上述のように、光源152および光源154から出射した光は、ブレード26aで反射されることによって、各投影レンズに入射する。このことは、各投影レンズにとって、ブレード26aの裏側に仮想的に形成された、光源152や光源154の2次光源から光線が入射することと等価である。光を走査して配光パターンを形成する場合、分解能を向上させるためには、できるだけピンぼけのないクリアな光源像を投影し、走査することが重要である。
【0060】
したがって、各投影レンズの位置は、レンズ焦点が2次光源と一致することが好ましい。なお、光源152および光源154の2次光源の位置がブレード26aの回転に伴い変化すること、および、要求される種々の照射パターン、を考慮すると、必ずしも全ての2次光源が投影レンズの焦点に一致する必要はない。
【0061】
このような知見を踏まえ、例えば、第1の投影レンズ156は、ブレード26aの反射により形成される光源152の2次光源のうち少なくとも一つが第1の投影レンズ156の焦点付近を通過するように、配置されている。また、第2の投影レンズ158は、ブレード26aの反射により形成される光源154の2次光源のうち少なくとも一つが第2の投影レンズ158の焦点付近を通過するように、配置されている。
【0062】
図20は、第5の実施の形態に係る光学ユニットを備えた車両用前照灯により形成された配光パターンを模式的に示した図である。図20に示すハイビーム用配光パターンPHは、光源152により形成され、車両前方正面を遠方まで明るく照射する第1の配光パターンPH1と、光源154により形成され、車両前方の広い範囲を照射する第2の配光パターンPH2とからなる。
【0063】
なお、本実施の形態に係る光学ユニット150は、光源152から出射され、回転リフレクタ26で反射された光を、光学ユニットの光照射方向に第1の配光パターンPH1として投影する第1の投影レンズ156と、光源154から出射され、回転リフレクタ26で反射された光を、光学ユニットの光照射方向に第2の配光パターンPH2として投影する第2の投影レンズ158と、を更に備えている。これにより、各投影レンズを適宜選択することで、異なる配光パターンを1つの回転リフレクタで形成できる。
【0064】
次に、第1の配光パターンPH1および第2の配光パターンPH2を形成する各LEDによる照射パターンについて説明する。図21(a)は、光源152および光源154により形成した配光パターンを示した図、図21(b)〜図21(f)は、LEDユニット152a,152b,152c,154a,154bのそれぞれにより形成された照射パターンを示した図である。図21(b)〜図21(d)に示すように、LEDユニット152a,152b,152cにより形成された照射パターンは、照射領域が狭く最大光度が大きなものである。一方、図21(e)、図21(f)に示すように、LEDユニット154a,154bにより形成された照射パターンは、最大光度は小さいものの照射領域が広いものである。そして、各LEDの照射パターンを重ね合わせることで図21(a)に示すハイビーム用配光パターンが形成される。
【0065】
次に、光源152および光源154が備えるLEDユニットについて更に詳述する。図22(a)は、第5の実施の形態に係るLEDユニットの斜視図、図22(b)は、図22(a)のC−C断面図、図22(c)は、図22(a)のD−D断面図である。本実施の形態に係る光源152が備えるLEDユニット152aは、LED160とLED160の光を集光する複合放物面集光器162とで構成されている。なお、LEDユニット152a,152b,152c,154a,154bはそれぞれ同様の構成であるため、以下では、LEDユニット152aを例に説明する。
【0066】
複合放物面集光器162は、底部にLED160が配置され、開口部162aが矩形の部材である。複合放物面集光器162は、LED160の光を集光するように底部から開口部162aに向かって形成された4つの側面(集光面)162b〜162eを有している。4つの側面162b〜162eは、LED160またはその近傍領域に焦点を有する放物線形状となるように鏡面加工されている。これにより、LED160が発する光は、集光されて前方へ照射される。ところで、LED160から発した光は、図22(c)に示す点線の矢印のように、開口部162aの長手方向において拡散し易い。そのため、側面の高さが全て同じだとすると、LED160が発した光のうち開口部162aの長手方向に向かう光を十分に集光することができない場合がある。つまり、側面で反射されずにそのまま開口部より斜めに出射した光の一部は、回転リフレクタ26の反射面に到達しない。
【0067】
そこで、本実施の形態に係る複合放物面集光器162においては、4つの側面のそれぞれは、開口部162aの長手方向の端部にある側面162b,162cの高さH1が、開口部162aの短手方向の端部にある側面162d,162eの高さH2より高くなるように形成されている。これにより、LED160の光のうち回転リフレクタの反射面に到達しない拡散光の発生が低減され、各投影レンズへの入射光が増加するため、光源の光を照明に効率よく利用できる。
【0068】
なお、本実施の形態に係る光学ユニット150を用いることでも配光パターンに遮光部を形成することができる。図23(a)は、光源152および光源154により形成した、遮光部を有する配光パターンを示した図、図23(b)〜図23(f)は、LEDユニット152a,152b,152c,154a,154bのそれぞれにより形成された遮光部を有する照射パターンを示した図である。図23(b)〜図23(d)に示すように、LEDユニット152a,152b,152cにより形成された遮光部を有する照射パターンは、照射領域が狭く最大光度が大きなものである。一方、図23(e)、図21(f)に示すように、LEDユニット154a,154bにより形成された遮光部を有する照射パターンは、最大光度は小さいものの照射領域が広いものである。そして、各LEDの照射パターンを重ね合わせることで、図23(a)に示す、遮光部を有するハイビーム用配光パターンが形成される。
【0069】
(第6の実施の形態)
上述の各実施の形態の光学ユニットを用いて障害物検出装置を構成することができる。図24は、第6の実施の形態に係る障害物検出装置を模式的に示した上面図である。図25は、第6の実施の形態に係る障害物検出装置のブロック図である。
【0070】
本実施の形態に係る障害物検出装置100は、光学ユニット102、制御部104、検出部106、車速センサ108を備えている。光学ユニット102は、前述の光学ユニット150の光源154に、赤外光を出射する発光素子として赤外光ユニット154cが設けられている点が異なっている以外は、光学ユニット150とほぼ同じ構成である。
【0071】
つまり、障害物検出装置100は、可視光を出射する第1の発光素子としてのLEDユニット154a,154bと、赤外光を出射する第2の発光素子としての赤外光ユニット154cとを有する光源154と、光源154から出射した可視光および赤外光を反射しながら回転軸を中心に一方向に回転する回転リフレクタ26と、を備える。
【0072】
回転リフレクタ26は、その回転動作により、LEDユニット154a,154bからの可視光を照射ビームとして出射するものであり、かつ、その照射ビームを走査せしめることによって可視光配光パターンを形成するとともに、赤外光ユニット154cからの赤外光を照射ビームとして出射するものであり、かつ、その照射ビームを走査せしめることによって赤外光配光パターンを形成する。
【0073】
したがって、障害物検出装置100は、回転リフレクタ26の働きにより、可視光の照射ビームの走査による可視光配光パターンの形成と、赤外光の照射ビームの走査による赤外光配光パターンの形成とが可能となる。
【0074】
また、障害物検出装置100においては、回転リフレクタ26の回転軸Rが、回転によって左右方向に走査する照射ビームの走査平面に略平行に設けられている。そのため、障害物検出装置100の薄型化が図られる。ここで、略平行とは、実質的に平行であればよく、完全な平行を意味してもしなくてもよく、ある態様の障害物検出装置の効果を著しく阻害しない範囲での誤差を許容するものである。
【0075】
図26は、第6の実施の形態に係る障害物検出装置100により形成された各配光パターンを模式的に示した図である。障害物検出装置100は、光源154のLEDユニット154a,154bの点消灯のタイミングや光度の変化を回転リフレクタ26の回転と同期させることで、図26に示すように任意の領域A1が遮光された可視光配光パターンPHvを形成することができる。また、障害物検出装置100は、光源154の赤外光ユニット154cの点消灯のタイミングや光度の変化を回転リフレクタ26の回転と同期させることで、図26に示すように任意の領域A1が照射される赤外光配光パターンPHIRを形成することができる。
【0076】
詳述すると、障害物検出装置100が備える制御部104(図25参照)は、LEDユニット154a,154bおよび赤外光ユニット154cの点消灯を行う点消灯回路110を制御するとともに、回転リフレクタ26のモータ112を制御する。制御部104は、可視光による照射ビームが配光パターンの一部の領域A1を走査するタイミングでLEDユニット154a,154bを消灯または減光させるとともに、赤外光による照射ビームが領域A1を含む領域を走査するタイミングで赤外光ユニット154cを点灯させる障害物検出モード(制御モード)を有している。これにより、障害物検出装置100は、LEDユニット154a,154bを消灯または減光させた状態で走査された一部の領域A1を、赤外光ユニット154cを点灯させた状態で走査することができる。
【0077】
次に、前述の障害物検出モードについて説明する。図27は、本実施の形態に係る障害物検出装置100における障害物検出モードの一例を説明するためのフローチャートである。図28(a)は、障害物検出モードが実行されている際の配光パターンの一例を模式的に示した図、図28(b)は、赤外光配光パターンPHIR内の赤外光(IR)光度の変化を示す図である。図29(a)は、障害物検出モードが実行されている際の配光パターンの一例を模式的に示した図、図29(b)は、赤外光配光パターンPHIR内の赤外光(IR)光度の変化を示す図である。障害物検出モードは、例えば、夜間など車両用前照灯を点灯している際に、自動でまたはドライバの選択により実行される。
【0078】
障害物検出モードが開始されると、自車両より前方に他の車両(前方車)が存在するか否かが検出部106の情報に基づいて制御部104において判定される(S10)。検出部106は、例えば、ミリ波レーダ、レーザレーダ、遠赤外線カメラなどが用いられる。
【0079】
前方車が存在しないと判定された場合(S10のNo)、通常のハイビーム用配光パターンにより前方が照射された状態が維持される。一方、前方車が存在すると判定された場合(S10のYes)、図28に示すように、前方車C1が存在する領域A2が遮光された可視光配光パターンPHvが形成される(S12)。この状態では、領域A2は可視光で照射されていないため、領域A2における状況をドライバが認識しづらい。
【0080】
そこで、この状態において、遮光されている領域A2を赤外光で照射するように、障害物検出装置100は、光源154の赤外光ユニット154cの点消灯のタイミングや光度の変化を回転リフレクタ26の回転と同期させる。これにより、図28に示すように、領域A2を含む領域が赤外光で照射される赤外光配光パターンPHIRが形成される(S14)。
【0081】
この状態で障害物の検出が適宜行われる(S16)。ここで、障害物とは、路上にある物体(例えば、落下物、落石、故障車両、停車車両、駐車車両など)や歩行者などである。本実施の形態では、このような障害物の検出を行うために、検出部106として赤外光のスペクトル領域に感度を有するカメラ(撮像部)が用いられている。なお、検出部106としては、カメラやセンサ以外に、ナビゲーション、路車間通信、車車間通信などの外部との通信手段を用いることも可能である。
【0082】
そして、制御部104が備える判定部は、カメラが取得した車両前方の画像の情報に基づいて、領域A2に、車両走行に障害のある障害物(例えば、図28に示す歩行者C2)、換言すれば、可視光で照射する必要のある障害物、が存在するか判定する。制御部104は、一部の領域A2に障害物が存在していないと判定した場合(S16のNo)、ステップS10〜S14までの処理を繰り返す。
【0083】
制御部104は、一部の領域A2に可視光で照射する必要のある障害物が存在していると判定した場合(S16のYes)、障害物が可視光による照射ビームで照射されるようにLEDユニット154a,154bの点灯制御をする。これにより、一部の領域A2に障害物が存在している場合に、ドライバが認識し易くなる。なお、制御部104は、一部の領域A2に障害物が存在していると判定する前に、カメラや各種レーダによって障害物の疑いがある物体をとらえた場合、その物体を含む狭い範囲がより光度の高い赤外光で照射される赤外光配光パターンPHIR’を形成するように、点消灯回路110を制御してもよい(図29参照)。これにより、障害物の検出精度が更に向上する。なお、障害物検出装置100は、予めステップS14の処理による赤外光配光パターンPHIRの形成を行ってから障害物の検出を行うのではなく、ステップS16の処理によって障害物を検出してからその障害物を含む範囲を照射する赤外光配光パターンPHIRを形成してもよい。
【0084】
障害物を可視光による照射ビームにより照射する場合、本実施の形態における制御部104は、自車両と障害物との距離に応じて、可視光による照射ビームで照射される、障害物を含む領域の範囲が変化するように、LEDユニット154a,154bの点灯を制御している。図30(a)は、遠方の障害物を検出した場合の配光パターンの一例を模式的に示した図、図30(b)は、近距離の障害物を検出した場合の配光パターンの一例を模式的に示した図である。なお、図30(a)、図30(b)に示す点線領域のロービーム用配光パターンPLは、図1に示すランプユニット18により形成されるものである。
【0085】
ステップS16において障害物が検出された場合、制御部104は、自車両と障害物との距離dが所定値d1よりも大きいか否かを判定する(S18)。これにより、自車両と障害物との距離に適した、可視光による配光パターンの形成が可能になるとともに、ドライバに注意を促すことができる。
【0086】
自車両と障害物との距離dが所定値d1よりも大きい場合(S18のYes)、ブレーキによる衝突回避が可能な場合と考えられる。そこで、制御部104は、障害物を中心に照射範囲を狭く設定し(S20)、障害物を含む狭い照射範囲を照射する可視光配光パターンPHv’(図30(a)参照)を形成すべく光源154を制御し(S22)、ドライバに注意を促す。一方、自車両と障害物との距離dが所定値d1以下の場合(S18のNo)、ハンドル操作によってのみ衝突回避が可能な場合と考えられる。そこで、制御部104は、障害物を中心に照射範囲を広く設定し(S24)、障害物を含む広い照射範囲を照射する可視光配光パターンPHv”(図30(b)参照)を形成すべく光源154を制御し(S22)、ドライバに障害物の側方への車両回避を促す。なお、自車両と障害物との距離と、照射範囲との関係は、前述のように2段階の場合に限られず、閾値である所定値を複数設けることでより多段階の関数であってもよい。
【0087】
以上のように、障害物検出装置100は、光源154の赤外光ユニット154cの点消灯のタイミングおよび光度の大きさを制御することで、照射範囲や光度が異なる複数種の赤外光配光パターンを形成できる。特に、赤外光ユニット154cとしてIR−LEDを採用した場合、パルス駆動時に定格の数倍の大電流を流せるため、集光用配光パターンや拡散用配光パターンを一つの赤外光ユニット154cで容易に形成できる。
【0088】
一般的に、車両が低速走行時は、周囲からの歩行者の飛び出しなどを監視するために、広い範囲を照射する必要がある。また、車両が高速走行時は、遠方の障害物を監視するために、中央を強く照射する必要がある。そのため、照射範囲が固定の赤外線投光器の場合、その配光パターンは、赤外光による前方の広い範囲の照射と、高い光度の赤外光による前方中央範囲の照射を両立するように設定されることになる。図31(a)は、照射範囲が固定の赤外線投光器の配光パターンの一例を模式的に示した図、図31(b)は、赤外光配光パターンPHIR内の赤外光(IR)光度の変化を示す図である。
【0089】
しかしながら、実際の走行では、低速走行時に遠方を監視する必要性は乏しく、高速走行時に広い範囲を監視する必要性が乏しいため、照射範囲が固定の赤外線投光器は、照射エネルギーを無駄に消費している。
【0090】
それに対して、本実施の形態に係る障害物検出装置100においては、遠方の狭い範囲を照射する場合には、赤外光ユニット154cを点灯させる時間が短いため、照射する赤外光の光度を大きくするために赤外光ユニット154cへの瞬間投入電力を大きくしても、赤外光ユニット154cの平均消費電力の増大が抑制される。一方、近距離の広い範囲を照射する場合には、赤外光ユニット154cを点灯させる時間は長くなるが、照射に必要な赤外光の光度が小さくて済むため、赤外光ユニット154cへの瞬間投入電力を小さくでき、赤外光ユニット154cの平均消費電力の増大が抑制される。このように、赤外光を照射する際における赤外光ユニット154cへの瞬間投入電力を、照射範囲の大きさに反比例させることで、赤外光ユニット154cにおける消費電力の変動を抑制できる。
【0091】
図32は、本実施の形態に係る障害物検出装置100における照射範囲変更モードの一例を説明するためのフローチャートである。図33(a)は、照射範囲変更モードにおいて広い照射範囲が選択された際の配光パターンの一例を模式的に示した図、図33(b)は、図33(a)における赤外光配光パターンPHIR(W)内の赤外光(IR)光度の変化を示す図、である。図33(c)は、照射範囲変更モードにおいて通常の照射範囲が選択された際の配光パターンの一例を模式的に示した図、図33(d)は、図33(c)における赤外光配光パターンPHIR(M)内の赤外光(IR)光度の変化を示す図、図33(e)は、照射範囲変更モードにおいて狭い照射範囲が選択された際の配光パターンの一例を模式的に示した図、図33(f)は、図33(e)における赤外光配光パターンPHIR(N)内の赤外光(IR)光度の変化を示す図である。
【0092】
照射範囲変更モードは、例えば、夜間など車両用前照灯を点灯している際に、自動でまたはドライバの選択により実行される。照射範囲変更モードが開始されると、自車両の車速Vが所定の速度V1より早いか否かが車速センサ108の情報に基づいて制御部104において判定される(S30)。車速Vが所定の速度V1よりも小さい場合(S30のYes)、制御部104は、広い範囲を赤外光で照射すべく、図33(a)に示す赤外光配光パターンPHIR(W)を形成するように点消灯回路110を制御する(S32)。
【0093】
車速Vが所定の速度V1以上の場合(S30のNo)、自車両の車速Vが所定の速度V2より早いか否かが車速センサ108の情報に基づいて制御部104において判定される(S34)。車速Vが所定の速度V2よりも小さい場合(S34のNo)、制御部104は、通常の範囲を赤外光で照射すべく、図33(c)に示す赤外光配光パターンPHIR(M)を形成するように点消灯回路110を制御する(S36)。
【0094】
車速Vが所定の速度V2より大きい場合(S34のYes)、制御部104は、狭い範囲を赤外光で照射すべく、図33(e)に示す赤外光配光パターンPHIR(N)を形成するように点消灯回路110を制御する(S38)。
【0095】
このように、本実施の形態に係る障害物検出装置100は、車両速度に応じて赤外光による照射範囲と赤外光の光度を変化させることができるため、赤外光ユニット154cの消費電力を大幅に削減できる。
【0096】
なお、赤外光は赤みがかった色であるため、車両外観上また法規上好ましくない場合がある。そこで、障害物検出装置100は、赤外光配光パターンを形成している際には、白色光などの可視光による可視光配光パターンを適宜重畳させることで、赤外光の赤みによる影響を緩和できる。
【0097】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0098】
例えば、車両用前照灯10は、回転リフレクタ26を回転させずに任意の角度で停止させることで、最大光度が非常に高いスポット光を所望の位置に形成することができる。これにより、特定の障害物(人を含む)を明るいスポット光で照射することで注意喚起を促すことが可能となる。
【0099】
また、LEDユニット154a,154b、赤外光ユニット154cは、光源として必ずしも一体的に構成されていなくてもよく、分離されていてもよい。また、各ユニットから出射するそれぞれの光は、必ずしも回転リフレクタ26の同じ領域で反射されていなくてもよく、それぞれの光が異なるブレードによって反射されるような位置に各ユニットが配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0100】
10 車両用前照灯、 18,20 ランプユニット、 26 回転リフレクタ、 100 障害物検出装置、 102 光学ユニット、 104 制御部、 106 検出部、 108 車速センサ、 110 点消灯回路、 112 モータ、 120 ランプユニット、 130 投影レンズ、 154 光源、 154a LEDユニット、 154c 赤外光ユニット。
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両前方の前走車や歩行者、障害物を検出する方法が種々考案されている。特許文献1には、車両に搭載されているレーザ光源から出力されるレーザ光により、車両周辺の検出エリアを走査しながら照射し、このレーザ光の反射波に基づいて車両周辺の障害物を検知する障害物放置装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、車両周辺の対象物を赤外光により検知する赤外線センサと、赤外線センサが対象物を検知したときに可視光を対象物に照射する可視光源とを備えた車両用照明装置が開示されている。この車両用照明装置は、往復回動する反射鏡で反射された赤外光によって車両前方の領域が所定のパターンで走査される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−252264号公報
【特許文献2】特開2009−18726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ハイビーム用配光パターンの一部の領域に車両が存在する場合に、この車両にグレアを与えないように、一部の領域を部分的に非照射とする配光可変技術が考案されている。しかしながら、この状態では、非照射領域に障害物等が存在していてもその状況をドライバが認識しづらい。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、可視光による配光を制御しつつ障害物の検出精度を向上する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の障害物検出装置は、可視光を出射する第1の発光素子と、赤外光を出射する第2の発光素子とを有する光源と、光源から出射した可視光および赤外光を反射しながら回転軸を中心に一方向に回転する回転リフレクタと、を備える。回転リフレクタは、その回転動作により、第1の発光素子からの可視光を照射ビームとして出射するものであり、かつ、該照射ビームを走査せしめることによって第1の配光パターンを形成するとともに、第2の発光素子からの赤外光を照射ビームとして出射するものであり、かつ、該照射ビームを走査せしめることによって第2の配光パターンを形成する、ように構成されている。
【0008】
この態様によると、回転リフレクタの働きにより、可視光の照射ビームの走査による第1の配光パターンの形成と、赤外光の照射ビームの走査による第2の配光パターンの形成とが可能となる。
【0009】
回転軸は、回転によって左右方向に走査する照射ビームの走査平面に略平行に設けられていてもよい。これにより、障害物検出装置の薄型化が図られる。ここで、略平行とは、実質的に平行であればよく、完全な平行を意味してもしなくてもよく、ある態様の障害物検出装置の効果を著しく阻害しない範囲での誤差を許容するものである。
【0010】
第1の発光素子および第2の発光素子の点消灯を制御する制御部を更に備えてもよい。制御部は、可視光による照射ビームが第1の配光パターンの一部の領域を走査するタイミングで第1の発光素子を消灯または減光させるとともに、赤外光による照射ビームが一部の領域を含む領域を走査するタイミングで第2の発光素子を点灯させる制御モードを有してもよい。これにより、第1の発光素子を消灯または減光させた状態で走査された一部の領域を、第2の発光素子を点灯させた状態で走査することができる。
【0011】
赤外光のスペクトル領域に感度を有する撮像部と、撮像部が取得した画像に基づいて一部の領域に車両走行に障害のある障害物が存在するか判定する判定部と、を更に備えてもよい。制御部は、一部の領域に障害物が存在している場合、障害物が可視光による照射ビームで照射されるように第1の発光素子の点灯を制御してもよい。これにより、一部の領域に障害物が存在している場合に、ドライバが認識し易くなる。
【0012】
制御部は、自車両と障害物との距離に応じて、可視光による照射ビームで照射される、障害物を含む領域の範囲が変化するように、第1の発光素子の点灯を制御してもよい。これにより、自車両と障害物との距離に適した、可視光による配光パターンの形成が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、可視光による配光を制御しつつ障害物の検出精度を向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態に係る車両用前照灯の水平断面図である。
【図2】本実施の形態に係る光学ユニットを含むランプユニットの構成を模式的に示した上面図である。
【図3】図1に示すA方向からランプユニットを見た場合の側面図である。
【図4】図4(a)〜図4(e)は、本実施の形態に係るランプユニットにおいて回転リフレクタの回転角に応じたブレードの様子を示す斜視図である。
【図5】図5(a)〜図5(e)は、回転リフレクタが図4(f)〜図4(j)の状態に対応した走査位置における投影イメージを示した図である。
【図6】図6(a)は、本実施の形態に係る車両用前照灯を用いて光軸に対して左右±5度の範囲を走査した場合の配光パターンを示す図、図6(b)は、図6(a)に示す配光パターンの光度分布を示す図、図6(c)は、本実施の形態に係る車両用前照灯を用いて配光パターンのうち一箇所を遮光した状態を示す図、図6(d)は、図6(c)に示す配光パターンの光度分布を示す図、図6(e)は、本実施の形態に係る車両用前照灯を用いて配光パターンのうち複数箇所を遮光した状態を示す図、図6(f)は、図6(e)に示す配光パターンの光度分布を示す図である。
【図7】図7(a)は、LEDの光を平面ミラーで反射させ、非球面レンズにより投影した場合の投影イメージを示した図、図7(b)は、第1の実施の形態に係る車両用前照灯における投影イメージを示した図、図7(c)は、第2の実施の形態に係る車両用前照灯における投影イメージを示した図である。
【図8】第2の実施の形態に係る光学ユニットの正面図である。
【図9】図9(a)〜図9(e)は、第2の実施の形態に係る光学ユニットにおいて回転リフレクタを30°ずつ回転させた際の投影イメージを示した図である。
【図10】図10(a)は、第2の実施の形態に係る光源の斜視図、図10(b)は、図10(a)のB−B断面図である。
【図11】図11(a)は、第2の実施の形態に係る光学ユニットによって形成した照射パターンを示した図、図11(b)は、第2の実施の形態に係る光学ユニットによって形成した投影イメージを合成した状態を示した図である。
【図12】図12(a)は、LEDを備える複合放物面集光器の長手方向が鉛直方向となるように配置した状態を示した図、図12(b)は、複合放物面集光器の長手方向が鉛直方向に対して斜めになるように配置した状態を示した図である。
【図13】図13(a)は、第3の実施の形態に係る光学ユニットによって形成した照射パターンを示した図、図13(b)は、第3の実施の形態に係る光学ユニットによって形成した投影イメージを合成した状態を示した図である。
【図14】第4の実施の形態に係るランプユニットを模式的に示した側面図である。
【図15】第4の実施の形態に係るランプユニットを模式的に示した上面図である。
【図16】回転リフレクタが図14の状態における投影イメージを示した図である。
【図17】図17(a)は、前方のLEDによって形成された配光パターンを示す図、図17(b)は、後方のLEDによって形成された配光パターンを示す図、図17(c)は、2つのLEDによって形成された合成配光パターンを示す図である。
【図18】図18(a)は、前方のLEDによって形成された、遮光部を有する配光パターンを示す図、図18(b)は、後方のLEDによって形成された、遮光部を有する配光パターンを示す図、図18(c)は、2つのLEDによって形成された、遮光部を有する合成配光パターンを示す図である。
【図19】第5の実施の形態に係る光学ユニットを含む構成を模式的に示した上面図である。
【図20】第5の実施の形態に係る光学ユニットを備えた車両用前照灯により形成された配光パターンを模式的に示した図である。
【図21】図21(a)は、各光源により形成した配光パターンを示した図、図21(b)〜図21(f)は、各LEDユニットのそれぞれにより形成された照射パターンを示した図である。
【図22】図22(a)は、第5の実施の形態に係るLEDユニットの斜視図、図22(b)は、図22(a)のC−C断面図、図22(c)は、図22(a)のD−D断面図である。
【図23】図23(a)は、各光源により形成した、遮光部を有する配光パターンを示した図、図23(b)〜図23(f)は、各LEDユニットのそれぞれにより形成された遮光部を有する照射パターンを示した図である。
【図24】第6の実施の形態に係る障害物検出装置を模式的に示した上面図である。
【図25】第6の実施の形態に係る障害物検出装置のブロック図である。
【図26】第6の実施の形態に係る障害物検出装置により形成された各配光パターンを模式的に示した図である。
【図27】本実施の形態に係る障害物検出装置における障害物検出モードの一例を説明するためのフローチャートである。
【図28】図28(a)は、障害物検出モードが実行されている際の配光パターンの一例を模式的に示した図、図28(b)は、赤外光配光パターンPHIR内の赤外光(IR)光度の変化を示す図である。
【図29】図29(a)は、障害物検出モードが実行されている際の配光パターンの一例を模式的に示した図、図29(b)は、赤外光配光パターンPHIR内の赤外光(IR)光度の変化を示す図である。
【図30】図30(a)は、遠方の障害物を検出した場合の配光パターンの一例を模式的に示した図、図30(b)は、近距離の障害物を検出した場合の配光パターンの一例を模式的に示した図である。
【図31】図31(a)は、照射範囲が固定の赤外線投光器の配光パターンの一例を模式的に示した図、図31(b)は、赤外光配光パターンPHIR内の赤外光(IR)光度の変化を示す図である。
【図32】本実施の形態に係る障害物検出装置における照射範囲変更モードの一例を説明するためのフローチャートである。
【図33】図33(a)は、照射範囲変更モードにおいて広い照射範囲が選択された際の配光パターンの一例を模式的に示した図、図33(b)は、図33(a)における赤外光配光パターンPHIR(W)内の赤外光(IR)光度の変化を示す図、である。図33(c)は、照射範囲変更モードにおいて通常の照射範囲が選択された際の配光パターンの一例を模式的に示した図、図33(d)は、図33(c)における赤外光配光パターンPHIR(M)内の赤外光(IR)光度の変化を示す図、図33(e)は、照射範囲変更モードにおいて狭い照射範囲が選択された際の配光パターンの一例を模式的に示した図、図33(f)は、図33(e)における赤外光配光パターンPHIR(N)内の赤外光(IR)光度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
なお、前述の障害物検出装置は、車両用灯具が備える光学ユニットとしての機能を兼ね備えることも可能である。そこで、はじめに、障害物検出装置に適用可能な光学ユニットおよび光学ユニットを備えた車両用灯具について以下の実施の形態で詳述する。実施の形態に係る光学ユニットは、種々の車両用灯具に用いることができるが、以下では、車両用前照灯に適用した場合について説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態に係る車両用前照灯の水平断面図である。車両用前照灯10は、自動車の前端部の右側に搭載される右側前照灯であり、左側に搭載される前照灯と左右対称である以外は同じ構造である。そのため、以下では、右側の車両用前照灯10について詳述し、左側の車両用前照灯については説明を省略する。
【0018】
図1に示すように、車両用前照灯10は、前方に向かって開口した凹部を有するランプボディ12を備えている。ランプボディ12は、その前面開口が透明な前面カバー14によって覆われて灯室16が形成されている。灯室16は、2つのランプユニット18,20が車幅方向に並んで配置された状態で収容される空間として機能する。
【0019】
これらランプユニットのうち外側、すなわち、右側の車両用前照灯10にあっては図1に示す上側に配置されたランプユニット20は、レンズを備えたランプユニットであり、可変ハイビームを照射するように構成されている。一方、これらランプユニットのうち内側、すなわち、右側の車両用前照灯10にあっては図1に示す下側に配置されたランプユニット18は、ロービームを照射するように構成されている。
【0020】
ロービーム用のランプユニット18は、リフレクタ22とリフレクタ22に支持された光源バルブ(白熱バルブ)24と、不図示のシェードとを有し、リフレクタ22は図示しない既知の手段、例えば、エイミングスクリューとナットを使用した手段によりランプボディ12に対して傾動自在に支持されている。
【0021】
ランプユニット20は、図1に示すように、回転リフレクタ26と、LED28と、回転リフレクタ26の前方に配置された投影レンズとしての凸レンズ30と、を備える。なお、LED28の代わりにEL素子やLD素子などの半導体発光素子を光源として用いることも可能である。特に後述する配光パターンの一部を遮光するための制御には、点消灯が短時間に精度よく行える光源が好ましい。凸レンズ30の形状は、要求される配光パターンや照度分布などの配光特性に応じて適宜選択すればよいが、非球面レンズや自由曲面レンズが用いられる。本実施の形態では、凸レンズ30として非球面レンズを用いている。
【0022】
回転リフレクタ26は、不図示のモータなどの駆動源により回転軸Rを中心に一方向に回転する。また、回転リフレクタ26は、LED28から出射した光を回転しながら反射し、所望の配光パターンを形成するように構成された反射面を備えている。本実施の形態では、回転リフレクタ26が光学ユニットを構成している。
【0023】
図2は、本実施の形態に係る光学ユニットを含むランプユニット20の構成を模式的に示した上面図である。図3は、図1に示すA方向からランプユニット20を見た場合の側面図である。
【0024】
回転リフレクタ26は、反射面として機能する、形状の同じ3枚のブレード26aが筒状の回転部26bの周囲に設けられている。回転リフレクタ26の回転軸Rは、光軸Axに対して斜めになっており、光軸AxとLED28とを含む平面内に設けられている。換言すると、回転軸Rは、回転によって左右方向に走査するLED28の光(照射ビーム)の走査平面に略平行に設けられている。これにより、光学ユニットの薄型化が図られる。ここで、走査平面とは、例えば、走査光であるLED28の光の軌跡を連続的につなげることで形成される扇形の平面ととらえることができる。
【0025】
また、本実施の形態に係るランプユニット20においては、備えているLED28は比較的小さく、LED28が配置されている位置も回転リフレクタ26と凸レンズ30との間であって光軸Axよりずれている。そのため、従来のプロジェクタ方式のランプユニットのように、光源とリフレクタとレンズとが光軸上に一列に配列されている場合と比較して、車両用前照灯10の奥行き方向(車両前後方向)を短くできる。
【0026】
また、回転リフレクタ26のブレード26aの形状は、反射によるLED28の2次光源が凸レンズ30の焦点付近に形成されるように構成されている。また、ブレード26aは、回転軸Rを中心とする周方向に向かうにつれて、光軸Axと反射面とが成す角が変化するように捩られた形状を有している。これにより、図2に示すようにLED28の光を用いた走査が可能となる。この点について更に詳述する。
【0027】
図4(a)〜図4(e)は、本実施の形態に係るランプユニットにおいて回転リフレクタ26の回転角に応じたブレードの様子を示す斜視図である。図4(f)〜図4(j)は、図4(a)〜図4(e)の状態に対応して光源からの光を反射する方向が変化する点を説明するための図である。
【0028】
図4(a)は、LED28が2つのブレード26a1,26a2の境界領域を照射するように配置されている状態を示している。この状態では、図4(f)に示すように、LED28の光は、ブレード26a1の反射面Sで光軸Axに対して斜めの方向に反射される。その結果、配光パターンが形成される車両前方の領域のうち、左右両端部の一方の端部領域が照射される。その後、回転リフレクタ26が回転し、図4(b)に示す状態になると、ブレード26a1が捩れているため、LED28の光を反射するブレード26a1の反射面S(反射角)が変化する。その結果、図4(g)に示すように、LED28の光は、図4(f)に示す反射方向よりも光軸Axに近い方向に反射される。
【0029】
続いて、回転リフレクタ26が図4(c)、図4(d)、図4(e)に示すように回転すると、LED28の光の反射方向は、配光パターンが形成される車両前方の領域のうち、左右両端部の他方の端部に向かって変化することになる。本実施の形態に係る回転リフレクタ26は、120度回転することで、LED28の光によって前方を一方向(水平方向)に1回走査できるように構成されている。換言すると、1枚のブレード26aがLED28の前を通過することで、車両前方の所望の領域がLED28の光によって1回走査されることになる。なお、図4(f)〜図4(j)に示すように、2次光源(光源虚像)32は、凸レンズ30の焦点近傍で左右に移動している。ブレード26aの数や形状、回転リフレクタ26の回転速度は、必要とされる配光パターンの特性や走査される像のちらつきを考慮して実験やシミュレーションの結果に基づいて適宜設定される。また、種々の配光制御に応じて回転速度を変えられる駆動部としてモータが好ましい。これにより、走査するタイミングを簡便に変えることができる。このようなモータとしては、モータ自身から回転タイミング情報を得られるものが好ましい。具体的には、DCブラシレスモータが挙げられる。DCブラシレスモータを用いた場合、モータ自身から回転タイミング情報を得られるため、エンコーダなどの機器を省略することができる。
【0030】
このように、本実施の形態に係る回転リフレクタ26は、ブレード26aの形状や回転速度を工夫することで、LED28の光を用いて車両前方を左右方向に走査することができる。図5(a)〜図5(e)は、回転リフレクタが図4(f)〜図4(j)の状態に対応した走査位置における投影イメージを示した図である。図の縦軸および横軸の単位は度(°)であり、照射範囲および照射位置を示している。図5(a)〜図5(e)に示すように、回転リフレクタ26の回転によって投影イメージは水平方向に移動する。
【0031】
図6(a)は、本実施の形態に係る車両用前照灯を用いて光軸に対して左右±5度の範囲を走査した場合の配光パターンを示す図、図6(b)は、図6(a)に示す配光パターンの光度分布を示す図、図6(c)は、本実施の形態に係る車両用前照灯を用いて配光パターンのうち一箇所を遮光した状態を示す図、図6(d)は、図6(c)に示す配光パターンの光度分布を示す図、図6(e)は、本実施の形態に係る車両用前照灯を用いて配光パターンのうち複数箇所を遮光した状態を示す図、図6(f)は、図6(e)に示す配光パターンの光度分布を示す図である。
【0032】
図6(a)に示すように、本実施の形態に係る車両用前照灯10は、LED28の光を回転リフレクタ26で反射させ、反射した光で前方を走査することで実質的に水平方向に横長形状のハイビーム用配光パターンを形成することができる。このように、回転リフレクタ26の一方向の回転により所望の配光パターンを形成することができるため、共振ミラーのような特殊な機構による駆動が必要なく、また、共振ミラーのように反射面の大きさに対する制約が少ない。そのため、より大きな反射面を有する回転リフレクタ26を選択することで、光源から出射した光を照明に効率よく利用することができる。つまり、配光パターンにおける最大光度を高めることができる。なお、本実施の形態に係る回転リフレクタ26は、凸レンズ30の直径とほぼ同じ直径であり、ブレード26aの面積もそれに応じて大きくすることが可能である。
【0033】
また、本実施の形態に係る光学ユニットを備えた車両用前照灯10は、LED28の点消灯のタイミングや発光度の変化を回転リフレクタ26の回転と同期させることで、図6(c)、図6(e)に示すように任意の領域が遮光されたハイビーム用配光パターンを形成することができる。また、回転リフレクタ26の回転に同期させてLED28の発光光度を変化(点消灯)させてハイビーム用配光パターンを形成する場合、光度変化の位相をずらすことで配光パターン自体をスイブルするような制御も可能である。
【0034】
上述のように、本実施の形態に係る車両用前照灯は、LEDの光を走査することで配光パターンを形成するとともに、発光光度の変化を制御することで配光パターンの一部に任意に遮光部を形成することができる。そのため、複数のLEDの一部を消灯して遮光部を形成する場合と比較して、少ない数のLEDで所望の領域を精度よく遮光することができる。また、車両用前照灯10は、複数の遮光部を形成することができるため、前方に複数の車両が存在する場合であっても、個々の車両に対応する領域を遮光することが可能となる。
【0035】
また、車両用前照灯10は、基本となる配光パターンを動かさずに遮光制御することが可能なため、遮光制御時にドライバに与える違和感を低減できる。また、ランプユニット20を動かさずに配光パターンをスイブルすることができるため、ランプユニット20の機構を簡略化することができる。そのため、車両用前照灯10は、配光可変制御のための駆動部としては回転リフレクタ26の回転に必要なモータを有していればよく、構成の簡略化と低コスト化、小型化が図られている。
【0036】
また、本実施の形態に係る回転リフレクタ26は、図1や図2に示すように、その前面にLED28が配置されており、LED28に向かって風を送る送る冷却ファンを兼ねている。そのため、冷却ファンと回転リフレクタを別個に設ける必要がなく、光学ユニットの構成を簡略化できる。また、回転リフレクタ26で生じた風によりLED28を空冷することで、LED28を冷却するためのヒートシンクを省略あるいは小型化することが可能となり、光学ユニットの小型化や低コスト化、軽量化が図られる。
【0037】
なお、このような冷却ファンは、必ずしも光源に向かって直接風を送る機能を有していなくてもよく、ヒートシンクなどの放熱部に対流を生じさせるものでもよい。例えば、回転リフレクタ26による風がLED28とは別に設けられているヒートシンクなどの放熱部の近傍に対流を生じさせることで、LED28の冷却を行うように回転リフレクタ26やヒートシンクの配置を設定してもよい。なお、放熱部は、ヒートシンクのように別体の部材だけでなく、光源の一部であってもよい。
【0038】
(第2の実施の形態)
LEDの光を反射して投影レンズで前方に投影した場合、投影イメージの形状は、必ずしもLEDの発光面の形状と一致しない。図7(a)は、LEDの光を平面ミラーで反射させ、非球面レンズにより投影した場合の投影イメージを示した図、図7(b)は、第1の実施の形態に係る車両用前照灯における投影イメージを示した図、図7(c)は、第2の実施の形態に係る車両用前照灯における投影イメージを示した図である。
【0039】
図7(a)に示すように、反射面が平面であれば投影イメージはLEDの発光面の形状と相似する。しかしながら、第1の実施の形態に係る回転リフレクタ26では、反射面となるブレード26aが捩れているため、投影イメージは図7(b)に示すように歪んだものとなる。具体的には、第1の実施の形態では、投影イメージがぼける(照射範囲が広がる)とともに傾いている。そのため、投影イメージを走査して形成される配光パターンや遮光部の形状が傾くとともに、遮光部と照射部との境界が不明瞭となる場合がある。
【0040】
そこで、第2の実施の形態では、曲面で反射することで歪んだ像を補正するように光学ユニットを構成した。具体的には、第2の実施の形態に係る車両用前照灯では、凸レンズとして自由曲面レンズが用いられている。図8は、第2の実施の形態に係る光学ユニットの正面図である。
【0041】
第2の実施の形態に係る光学ユニットは、回転リフレクタ26と投影レンズ130とを備える。投影レンズ130は、回転リフレクタ26で反射された光を光学ユニットの光照射方向に投影する。投影レンズ130は、回転リフレクタ26の反射面で反射されることで歪んだLEDの像を、光源自体の形状(LEDの発光面の形状)に近付くよう補正する自由曲面レンズである。自由曲面レンズの形状は、ブレードの捩れや形状に応じて適宜設計すればよい。本実施の形態に係る光学ユニットによれば、図7(c)に示すように、光源の形状である矩形に近い形状に補正されている。
【0042】
図9(a)〜図9(e)は、第2の実施の形態に係る光学ユニットにおいて回転リフレクタを30°ずつ回転させた際の投影イメージを示した図である。図9(a)〜図9(e)に示すように、第1の実施の形態と比較して、ぼけが少ない投影イメージが形成されており、所望の領域を精度よく明るい光で照射することができる。
【0043】
なお、LED28から発する光は、そのままでは広がりがあるため、一部の光が回転リフレクタ26で反射されずに無駄になってしまう場合がある。また、回転リフレクタ26で反射されたとしても、投影イメージが大きくなると遮光部の分解能が低下する傾向にある。そこで、本実施の形態における光源は、LED28とLED28の光を集光する複合放物面集光器(CPC: Compound Parabolic Concentrator)32とで構成されている。図10(a)は、第2の実施の形態に係る光源の斜視図、図10(b)は、図10(a)のB−B断面図である。
【0044】
複合放物面集光器32は、底部にLED28が配置された箱形の集光器である。複合放物面集光器32の4つの側面は、LED28またはその近傍領域に焦点を有する放物線形状となるように鏡面加工されている。これにより、LED28が発する光は、集光されて前方へ照射される。この場合、複合放物面集光器32の矩形の開口部32aは、光源の発光面とみなすことができる。
【0045】
(第3の実施の形態)
第2の実施の形態に係る光学ユニットは、自由曲面レンズの働きにより投影イメージの形状を光源の形状である矩形に近い形状に補正することができる。しかしながら、このように補正した投影イメージを走査して配光パターンを形成した場合、なお改良の余地がある。
【0046】
図11(a)は、第2の実施の形態に係る光学ユニットによって形成した照射パターンを示した図、図11(b)は、第2の実施の形態に係る光学ユニットによって形成した投影イメージを合成した状態を示した図である。図12(a)は、LED28を備える複合放物面集光器32の長手方向が鉛直方向となるように配置した状態を示した図、図12(b)は、複合放物面集光器32の長手方向が鉛直方向に対して斜めになるように配置した状態を示した図である。
【0047】
光源が図12(a)に示す状態の場合、照射パターンは、図11(a)に示すように、水平線に対して約10°傾いている。また、光源が図12(a)に示す状態の場合、各投影イメージは、図11(b)に示すように、鉛直線に対して約20°傾いている。そこで、本実施の形態では、これらの傾きを補正するための構成について説明する。
【0048】
はじめに、照射パターンの傾きは、自由曲面レンズである投影レンズ130(図8参照)と回転リフレクタ26とLED28とを含む光学系全体を、光軸に対して10°回転させることで補正可能である。また、各投影イメージの傾きは、LED28と複合放物面集光器32とを備える光源を傾かせることで補正可能である。具体的には、図12(b)に示すように、光源の発光面は、投影レンズ130により前方に投影される投影イメージが直立に近くなるように、発光面の各辺が鉛直方向に対して20°傾いて設けられている。
【0049】
図13(a)は、第3の実施の形態に係る光学ユニットによって形成した照射パターンを示した図、図13(b)は、第3の実施の形態に係る光学ユニットによって形成した投影イメージを合成した状態を示した図である。図13に示すように、照射パターンや各投影イメージの傾きは補正されており、理想的な配光パターンの形成が可能となる。また、投影レンズ130やLED28や回転リフレクタ26を含む光学系全体を傾けるだけで照射パターンや投影イメージの補正が可能なため、所望の配光パターンを得るための調整が容易となる。
【0050】
(第4の実施の形態)
上述の実施の形態の光学ユニットのように、一つの光源でハイビーム用配光パターンを形成することは可能である。しかしながら、より明るい照射パターンを必要とする場合や、低コスト化のために低光度のLEDを用いる場合も考えられる。そこで、本実施の形態では、光源を複数備えた光学ユニットについて説明する。
【0051】
図14は、第4の実施の形態に係るランプユニットを模式的に示した側面図である。図15は、第4の実施の形態に係るランプユニットを模式的に示した上面図である。第4の実施の形態に係るランプユニット120は、投影レンズ130と、回転リフレクタ26と、2つのLED28a,28bとを備える。図16は、回転リフレクタ26が図14の状態における投影イメージを示した図である。投影イメージIaは、投影レンズ130に近い前方に配置されているLED28aの光によって形成されており、投影イメージIbは、投影レンズ130から離れた後方に配置されているLED28bの光によって形成されている。
【0052】
図17(a)は、前方のLED28aによって形成された配光パターンを示す図、図17(b)は、後方のLED28bによって形成された配光パターンを示す図、図17(c)は、2つのLEDによって形成された合成配光パターンを示す図である。図17(c)に示すように、複数のLEDを用いることでも所望の配光パターンを形成することができる。また、合成された配光パターンでは、一つのLEDだけでは困難な最大光度も達成されている。
【0053】
次に、ランプユニット120を用いて配光パターンに遮光部を形成する場合について説明する。図18(a)は、前方のLED28aによって形成された、遮光部を有する配光パターンを示す図、図18(b)は、後方のLED28bによって形成された、遮光部を有する配光パターンを示す図、図18(c)は、2つのLEDによって形成された、遮光部を有する合成配光パターンを示す図である。図18(a)および図18(b)に示す配光パターンを形成するためには、それぞれの遮光部の位置を合わせるために、各LEDの点消灯タイミングを適宜ずらしている。図18(c)に示すように、複数のLEDを用いることでも遮光部を有する所望の配光パターンを形成することができる。また、合成された配光パターンでは、一つのLEDだけでは困難な最大光度も達成されている。
【0054】
(第5の実施の形態)
図19は、第5の実施の形態に係る光学ユニットを含む構成を模式的に示した上面図である。
【0055】
本実施の形態に係る光学ユニット150は、回転リフレクタ26と、発光素子としてのLEDを有する複数の光源と、を備えている。複数の光源のうち一方の光源152は、複数のLEDユニット152a,152b,152cを有する。複数のLEDユニット152a,152b,152cは、集光用のLEDユニットであり、ハイビーム用配光パターンに適した進行方向正面への強い集光を実現するように配置されている。複数の光源のうち他方の光源154は、複数のLEDユニット154a,154bを有する。複数のLEDユニット154a,154bは、拡散用のLEDユニットであり、ハイビーム用配光パターンに適した広い範囲を照射する拡散光を実現するように配置されている。なお、各光源が有するLEDユニットは必ずしも複数である必要はなく、十分な明るさを実現できればLEDユニットは1つでもよい。また、常に全てのLEDユニットを点灯させる必要はなく、車両の走行状況や前方の状態に応じて一部のLEDユニットのみを点灯させてもよい。
【0056】
光源152および光源154は、それぞれ出射した光が、回転リフレクタ26の各ブレードによって異なる位置で反射されるように配置されている。具体的には、光源152が有する集光用のLEDユニット152a,152b,152cは、出射した光が第1の投影レンズ156からより離れた位置にある扇形のブレード26aで反射されるように配置されている。そのため、扇形のブレード26aで反射されたことで生じる光源152の位置変化を、焦点距離が長い(投影倍率が低い)第1の投影レンズ156で前方へ投影することができる。その結果、回転リフレクタ26を回転させ、光源152から出射した光を用いて前方を走査した場合に、走査範囲が余り広くならず、狭い範囲をより明るく照らす配光パターンを形成することができる。
【0057】
一方、光源154が有する拡散用のLEDユニット154a,154bは、出射した光が第2の投影レンズ158により近い位置にある扇側のブレード26aで反射されるように配置されている。そのため、扇形のブレード26aで反射されたことで生じる光源154の位置変化を、焦点距離が短い(投影倍率が高い)第2の投影レンズ158で投影することができる。その結果、回転リフレクタ26を回転させ、光源154から出射した光を用いて前方を走査した場合に、走査範囲が広がり、広い範囲を照らす配光パターンを形成することができる。
【0058】
このように、複数の光源152,154を、それぞれの出射した光が回転リフレクタ26の反射面の異なる位置で反射するように配置することにより、複数の配光パターンを形成できるとともに、それらの配光パターンを合成して新たな配光パターンを形成することも可能なため、より理想的な配光パターンの設計が容易となる。
【0059】
次に、各投影レンズの位置について説明する。上述のように、光源152および光源154から出射した光は、ブレード26aで反射されることによって、各投影レンズに入射する。このことは、各投影レンズにとって、ブレード26aの裏側に仮想的に形成された、光源152や光源154の2次光源から光線が入射することと等価である。光を走査して配光パターンを形成する場合、分解能を向上させるためには、できるだけピンぼけのないクリアな光源像を投影し、走査することが重要である。
【0060】
したがって、各投影レンズの位置は、レンズ焦点が2次光源と一致することが好ましい。なお、光源152および光源154の2次光源の位置がブレード26aの回転に伴い変化すること、および、要求される種々の照射パターン、を考慮すると、必ずしも全ての2次光源が投影レンズの焦点に一致する必要はない。
【0061】
このような知見を踏まえ、例えば、第1の投影レンズ156は、ブレード26aの反射により形成される光源152の2次光源のうち少なくとも一つが第1の投影レンズ156の焦点付近を通過するように、配置されている。また、第2の投影レンズ158は、ブレード26aの反射により形成される光源154の2次光源のうち少なくとも一つが第2の投影レンズ158の焦点付近を通過するように、配置されている。
【0062】
図20は、第5の実施の形態に係る光学ユニットを備えた車両用前照灯により形成された配光パターンを模式的に示した図である。図20に示すハイビーム用配光パターンPHは、光源152により形成され、車両前方正面を遠方まで明るく照射する第1の配光パターンPH1と、光源154により形成され、車両前方の広い範囲を照射する第2の配光パターンPH2とからなる。
【0063】
なお、本実施の形態に係る光学ユニット150は、光源152から出射され、回転リフレクタ26で反射された光を、光学ユニットの光照射方向に第1の配光パターンPH1として投影する第1の投影レンズ156と、光源154から出射され、回転リフレクタ26で反射された光を、光学ユニットの光照射方向に第2の配光パターンPH2として投影する第2の投影レンズ158と、を更に備えている。これにより、各投影レンズを適宜選択することで、異なる配光パターンを1つの回転リフレクタで形成できる。
【0064】
次に、第1の配光パターンPH1および第2の配光パターンPH2を形成する各LEDによる照射パターンについて説明する。図21(a)は、光源152および光源154により形成した配光パターンを示した図、図21(b)〜図21(f)は、LEDユニット152a,152b,152c,154a,154bのそれぞれにより形成された照射パターンを示した図である。図21(b)〜図21(d)に示すように、LEDユニット152a,152b,152cにより形成された照射パターンは、照射領域が狭く最大光度が大きなものである。一方、図21(e)、図21(f)に示すように、LEDユニット154a,154bにより形成された照射パターンは、最大光度は小さいものの照射領域が広いものである。そして、各LEDの照射パターンを重ね合わせることで図21(a)に示すハイビーム用配光パターンが形成される。
【0065】
次に、光源152および光源154が備えるLEDユニットについて更に詳述する。図22(a)は、第5の実施の形態に係るLEDユニットの斜視図、図22(b)は、図22(a)のC−C断面図、図22(c)は、図22(a)のD−D断面図である。本実施の形態に係る光源152が備えるLEDユニット152aは、LED160とLED160の光を集光する複合放物面集光器162とで構成されている。なお、LEDユニット152a,152b,152c,154a,154bはそれぞれ同様の構成であるため、以下では、LEDユニット152aを例に説明する。
【0066】
複合放物面集光器162は、底部にLED160が配置され、開口部162aが矩形の部材である。複合放物面集光器162は、LED160の光を集光するように底部から開口部162aに向かって形成された4つの側面(集光面)162b〜162eを有している。4つの側面162b〜162eは、LED160またはその近傍領域に焦点を有する放物線形状となるように鏡面加工されている。これにより、LED160が発する光は、集光されて前方へ照射される。ところで、LED160から発した光は、図22(c)に示す点線の矢印のように、開口部162aの長手方向において拡散し易い。そのため、側面の高さが全て同じだとすると、LED160が発した光のうち開口部162aの長手方向に向かう光を十分に集光することができない場合がある。つまり、側面で反射されずにそのまま開口部より斜めに出射した光の一部は、回転リフレクタ26の反射面に到達しない。
【0067】
そこで、本実施の形態に係る複合放物面集光器162においては、4つの側面のそれぞれは、開口部162aの長手方向の端部にある側面162b,162cの高さH1が、開口部162aの短手方向の端部にある側面162d,162eの高さH2より高くなるように形成されている。これにより、LED160の光のうち回転リフレクタの反射面に到達しない拡散光の発生が低減され、各投影レンズへの入射光が増加するため、光源の光を照明に効率よく利用できる。
【0068】
なお、本実施の形態に係る光学ユニット150を用いることでも配光パターンに遮光部を形成することができる。図23(a)は、光源152および光源154により形成した、遮光部を有する配光パターンを示した図、図23(b)〜図23(f)は、LEDユニット152a,152b,152c,154a,154bのそれぞれにより形成された遮光部を有する照射パターンを示した図である。図23(b)〜図23(d)に示すように、LEDユニット152a,152b,152cにより形成された遮光部を有する照射パターンは、照射領域が狭く最大光度が大きなものである。一方、図23(e)、図21(f)に示すように、LEDユニット154a,154bにより形成された遮光部を有する照射パターンは、最大光度は小さいものの照射領域が広いものである。そして、各LEDの照射パターンを重ね合わせることで、図23(a)に示す、遮光部を有するハイビーム用配光パターンが形成される。
【0069】
(第6の実施の形態)
上述の各実施の形態の光学ユニットを用いて障害物検出装置を構成することができる。図24は、第6の実施の形態に係る障害物検出装置を模式的に示した上面図である。図25は、第6の実施の形態に係る障害物検出装置のブロック図である。
【0070】
本実施の形態に係る障害物検出装置100は、光学ユニット102、制御部104、検出部106、車速センサ108を備えている。光学ユニット102は、前述の光学ユニット150の光源154に、赤外光を出射する発光素子として赤外光ユニット154cが設けられている点が異なっている以外は、光学ユニット150とほぼ同じ構成である。
【0071】
つまり、障害物検出装置100は、可視光を出射する第1の発光素子としてのLEDユニット154a,154bと、赤外光を出射する第2の発光素子としての赤外光ユニット154cとを有する光源154と、光源154から出射した可視光および赤外光を反射しながら回転軸を中心に一方向に回転する回転リフレクタ26と、を備える。
【0072】
回転リフレクタ26は、その回転動作により、LEDユニット154a,154bからの可視光を照射ビームとして出射するものであり、かつ、その照射ビームを走査せしめることによって可視光配光パターンを形成するとともに、赤外光ユニット154cからの赤外光を照射ビームとして出射するものであり、かつ、その照射ビームを走査せしめることによって赤外光配光パターンを形成する。
【0073】
したがって、障害物検出装置100は、回転リフレクタ26の働きにより、可視光の照射ビームの走査による可視光配光パターンの形成と、赤外光の照射ビームの走査による赤外光配光パターンの形成とが可能となる。
【0074】
また、障害物検出装置100においては、回転リフレクタ26の回転軸Rが、回転によって左右方向に走査する照射ビームの走査平面に略平行に設けられている。そのため、障害物検出装置100の薄型化が図られる。ここで、略平行とは、実質的に平行であればよく、完全な平行を意味してもしなくてもよく、ある態様の障害物検出装置の効果を著しく阻害しない範囲での誤差を許容するものである。
【0075】
図26は、第6の実施の形態に係る障害物検出装置100により形成された各配光パターンを模式的に示した図である。障害物検出装置100は、光源154のLEDユニット154a,154bの点消灯のタイミングや光度の変化を回転リフレクタ26の回転と同期させることで、図26に示すように任意の領域A1が遮光された可視光配光パターンPHvを形成することができる。また、障害物検出装置100は、光源154の赤外光ユニット154cの点消灯のタイミングや光度の変化を回転リフレクタ26の回転と同期させることで、図26に示すように任意の領域A1が照射される赤外光配光パターンPHIRを形成することができる。
【0076】
詳述すると、障害物検出装置100が備える制御部104(図25参照)は、LEDユニット154a,154bおよび赤外光ユニット154cの点消灯を行う点消灯回路110を制御するとともに、回転リフレクタ26のモータ112を制御する。制御部104は、可視光による照射ビームが配光パターンの一部の領域A1を走査するタイミングでLEDユニット154a,154bを消灯または減光させるとともに、赤外光による照射ビームが領域A1を含む領域を走査するタイミングで赤外光ユニット154cを点灯させる障害物検出モード(制御モード)を有している。これにより、障害物検出装置100は、LEDユニット154a,154bを消灯または減光させた状態で走査された一部の領域A1を、赤外光ユニット154cを点灯させた状態で走査することができる。
【0077】
次に、前述の障害物検出モードについて説明する。図27は、本実施の形態に係る障害物検出装置100における障害物検出モードの一例を説明するためのフローチャートである。図28(a)は、障害物検出モードが実行されている際の配光パターンの一例を模式的に示した図、図28(b)は、赤外光配光パターンPHIR内の赤外光(IR)光度の変化を示す図である。図29(a)は、障害物検出モードが実行されている際の配光パターンの一例を模式的に示した図、図29(b)は、赤外光配光パターンPHIR内の赤外光(IR)光度の変化を示す図である。障害物検出モードは、例えば、夜間など車両用前照灯を点灯している際に、自動でまたはドライバの選択により実行される。
【0078】
障害物検出モードが開始されると、自車両より前方に他の車両(前方車)が存在するか否かが検出部106の情報に基づいて制御部104において判定される(S10)。検出部106は、例えば、ミリ波レーダ、レーザレーダ、遠赤外線カメラなどが用いられる。
【0079】
前方車が存在しないと判定された場合(S10のNo)、通常のハイビーム用配光パターンにより前方が照射された状態が維持される。一方、前方車が存在すると判定された場合(S10のYes)、図28に示すように、前方車C1が存在する領域A2が遮光された可視光配光パターンPHvが形成される(S12)。この状態では、領域A2は可視光で照射されていないため、領域A2における状況をドライバが認識しづらい。
【0080】
そこで、この状態において、遮光されている領域A2を赤外光で照射するように、障害物検出装置100は、光源154の赤外光ユニット154cの点消灯のタイミングや光度の変化を回転リフレクタ26の回転と同期させる。これにより、図28に示すように、領域A2を含む領域が赤外光で照射される赤外光配光パターンPHIRが形成される(S14)。
【0081】
この状態で障害物の検出が適宜行われる(S16)。ここで、障害物とは、路上にある物体(例えば、落下物、落石、故障車両、停車車両、駐車車両など)や歩行者などである。本実施の形態では、このような障害物の検出を行うために、検出部106として赤外光のスペクトル領域に感度を有するカメラ(撮像部)が用いられている。なお、検出部106としては、カメラやセンサ以外に、ナビゲーション、路車間通信、車車間通信などの外部との通信手段を用いることも可能である。
【0082】
そして、制御部104が備える判定部は、カメラが取得した車両前方の画像の情報に基づいて、領域A2に、車両走行に障害のある障害物(例えば、図28に示す歩行者C2)、換言すれば、可視光で照射する必要のある障害物、が存在するか判定する。制御部104は、一部の領域A2に障害物が存在していないと判定した場合(S16のNo)、ステップS10〜S14までの処理を繰り返す。
【0083】
制御部104は、一部の領域A2に可視光で照射する必要のある障害物が存在していると判定した場合(S16のYes)、障害物が可視光による照射ビームで照射されるようにLEDユニット154a,154bの点灯制御をする。これにより、一部の領域A2に障害物が存在している場合に、ドライバが認識し易くなる。なお、制御部104は、一部の領域A2に障害物が存在していると判定する前に、カメラや各種レーダによって障害物の疑いがある物体をとらえた場合、その物体を含む狭い範囲がより光度の高い赤外光で照射される赤外光配光パターンPHIR’を形成するように、点消灯回路110を制御してもよい(図29参照)。これにより、障害物の検出精度が更に向上する。なお、障害物検出装置100は、予めステップS14の処理による赤外光配光パターンPHIRの形成を行ってから障害物の検出を行うのではなく、ステップS16の処理によって障害物を検出してからその障害物を含む範囲を照射する赤外光配光パターンPHIRを形成してもよい。
【0084】
障害物を可視光による照射ビームにより照射する場合、本実施の形態における制御部104は、自車両と障害物との距離に応じて、可視光による照射ビームで照射される、障害物を含む領域の範囲が変化するように、LEDユニット154a,154bの点灯を制御している。図30(a)は、遠方の障害物を検出した場合の配光パターンの一例を模式的に示した図、図30(b)は、近距離の障害物を検出した場合の配光パターンの一例を模式的に示した図である。なお、図30(a)、図30(b)に示す点線領域のロービーム用配光パターンPLは、図1に示すランプユニット18により形成されるものである。
【0085】
ステップS16において障害物が検出された場合、制御部104は、自車両と障害物との距離dが所定値d1よりも大きいか否かを判定する(S18)。これにより、自車両と障害物との距離に適した、可視光による配光パターンの形成が可能になるとともに、ドライバに注意を促すことができる。
【0086】
自車両と障害物との距離dが所定値d1よりも大きい場合(S18のYes)、ブレーキによる衝突回避が可能な場合と考えられる。そこで、制御部104は、障害物を中心に照射範囲を狭く設定し(S20)、障害物を含む狭い照射範囲を照射する可視光配光パターンPHv’(図30(a)参照)を形成すべく光源154を制御し(S22)、ドライバに注意を促す。一方、自車両と障害物との距離dが所定値d1以下の場合(S18のNo)、ハンドル操作によってのみ衝突回避が可能な場合と考えられる。そこで、制御部104は、障害物を中心に照射範囲を広く設定し(S24)、障害物を含む広い照射範囲を照射する可視光配光パターンPHv”(図30(b)参照)を形成すべく光源154を制御し(S22)、ドライバに障害物の側方への車両回避を促す。なお、自車両と障害物との距離と、照射範囲との関係は、前述のように2段階の場合に限られず、閾値である所定値を複数設けることでより多段階の関数であってもよい。
【0087】
以上のように、障害物検出装置100は、光源154の赤外光ユニット154cの点消灯のタイミングおよび光度の大きさを制御することで、照射範囲や光度が異なる複数種の赤外光配光パターンを形成できる。特に、赤外光ユニット154cとしてIR−LEDを採用した場合、パルス駆動時に定格の数倍の大電流を流せるため、集光用配光パターンや拡散用配光パターンを一つの赤外光ユニット154cで容易に形成できる。
【0088】
一般的に、車両が低速走行時は、周囲からの歩行者の飛び出しなどを監視するために、広い範囲を照射する必要がある。また、車両が高速走行時は、遠方の障害物を監視するために、中央を強く照射する必要がある。そのため、照射範囲が固定の赤外線投光器の場合、その配光パターンは、赤外光による前方の広い範囲の照射と、高い光度の赤外光による前方中央範囲の照射を両立するように設定されることになる。図31(a)は、照射範囲が固定の赤外線投光器の配光パターンの一例を模式的に示した図、図31(b)は、赤外光配光パターンPHIR内の赤外光(IR)光度の変化を示す図である。
【0089】
しかしながら、実際の走行では、低速走行時に遠方を監視する必要性は乏しく、高速走行時に広い範囲を監視する必要性が乏しいため、照射範囲が固定の赤外線投光器は、照射エネルギーを無駄に消費している。
【0090】
それに対して、本実施の形態に係る障害物検出装置100においては、遠方の狭い範囲を照射する場合には、赤外光ユニット154cを点灯させる時間が短いため、照射する赤外光の光度を大きくするために赤外光ユニット154cへの瞬間投入電力を大きくしても、赤外光ユニット154cの平均消費電力の増大が抑制される。一方、近距離の広い範囲を照射する場合には、赤外光ユニット154cを点灯させる時間は長くなるが、照射に必要な赤外光の光度が小さくて済むため、赤外光ユニット154cへの瞬間投入電力を小さくでき、赤外光ユニット154cの平均消費電力の増大が抑制される。このように、赤外光を照射する際における赤外光ユニット154cへの瞬間投入電力を、照射範囲の大きさに反比例させることで、赤外光ユニット154cにおける消費電力の変動を抑制できる。
【0091】
図32は、本実施の形態に係る障害物検出装置100における照射範囲変更モードの一例を説明するためのフローチャートである。図33(a)は、照射範囲変更モードにおいて広い照射範囲が選択された際の配光パターンの一例を模式的に示した図、図33(b)は、図33(a)における赤外光配光パターンPHIR(W)内の赤外光(IR)光度の変化を示す図、である。図33(c)は、照射範囲変更モードにおいて通常の照射範囲が選択された際の配光パターンの一例を模式的に示した図、図33(d)は、図33(c)における赤外光配光パターンPHIR(M)内の赤外光(IR)光度の変化を示す図、図33(e)は、照射範囲変更モードにおいて狭い照射範囲が選択された際の配光パターンの一例を模式的に示した図、図33(f)は、図33(e)における赤外光配光パターンPHIR(N)内の赤外光(IR)光度の変化を示す図である。
【0092】
照射範囲変更モードは、例えば、夜間など車両用前照灯を点灯している際に、自動でまたはドライバの選択により実行される。照射範囲変更モードが開始されると、自車両の車速Vが所定の速度V1より早いか否かが車速センサ108の情報に基づいて制御部104において判定される(S30)。車速Vが所定の速度V1よりも小さい場合(S30のYes)、制御部104は、広い範囲を赤外光で照射すべく、図33(a)に示す赤外光配光パターンPHIR(W)を形成するように点消灯回路110を制御する(S32)。
【0093】
車速Vが所定の速度V1以上の場合(S30のNo)、自車両の車速Vが所定の速度V2より早いか否かが車速センサ108の情報に基づいて制御部104において判定される(S34)。車速Vが所定の速度V2よりも小さい場合(S34のNo)、制御部104は、通常の範囲を赤外光で照射すべく、図33(c)に示す赤外光配光パターンPHIR(M)を形成するように点消灯回路110を制御する(S36)。
【0094】
車速Vが所定の速度V2より大きい場合(S34のYes)、制御部104は、狭い範囲を赤外光で照射すべく、図33(e)に示す赤外光配光パターンPHIR(N)を形成するように点消灯回路110を制御する(S38)。
【0095】
このように、本実施の形態に係る障害物検出装置100は、車両速度に応じて赤外光による照射範囲と赤外光の光度を変化させることができるため、赤外光ユニット154cの消費電力を大幅に削減できる。
【0096】
なお、赤外光は赤みがかった色であるため、車両外観上また法規上好ましくない場合がある。そこで、障害物検出装置100は、赤外光配光パターンを形成している際には、白色光などの可視光による可視光配光パターンを適宜重畳させることで、赤外光の赤みによる影響を緩和できる。
【0097】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0098】
例えば、車両用前照灯10は、回転リフレクタ26を回転させずに任意の角度で停止させることで、最大光度が非常に高いスポット光を所望の位置に形成することができる。これにより、特定の障害物(人を含む)を明るいスポット光で照射することで注意喚起を促すことが可能となる。
【0099】
また、LEDユニット154a,154b、赤外光ユニット154cは、光源として必ずしも一体的に構成されていなくてもよく、分離されていてもよい。また、各ユニットから出射するそれぞれの光は、必ずしも回転リフレクタ26の同じ領域で反射されていなくてもよく、それぞれの光が異なるブレードによって反射されるような位置に各ユニットが配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0100】
10 車両用前照灯、 18,20 ランプユニット、 26 回転リフレクタ、 100 障害物検出装置、 102 光学ユニット、 104 制御部、 106 検出部、 108 車速センサ、 110 点消灯回路、 112 モータ、 120 ランプユニット、 130 投影レンズ、 154 光源、 154a LEDユニット、 154c 赤外光ユニット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を出射する第1の発光素子と、赤外光を出射する第2の発光素子とを有する光源と、
前記光源から出射した前記可視光および前記赤外光を反射しながら回転軸を中心に一方向に回転する回転リフレクタと、を備え、
前記回転リフレクタは、その回転動作により、
前記第1の発光素子からの可視光を照射ビームとして出射するものであり、かつ、該照射ビームを走査せしめることによって第1の配光パターンを形成するとともに、
前記第2の発光素子からの赤外光を照射ビームとして出射するものであり、かつ、該照射ビームを走査せしめることによって第2の配光パターンを形成する、
ように構成されていることを特徴とする障害物検出装置。
【請求項2】
前記回転軸は、回転によって左右方向に走査する照射ビームの走査平面に略平行に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の障害物検出装置。
【請求項3】
前記第1の発光素子および前記第2の発光素子の点消灯を制御する制御部を更に備え、 前記制御部は、前記可視光による照射ビームが前記第1の配光パターンの一部の領域を走査するタイミングで前記第1の発光素子を消灯または減光させるとともに、前記赤外光による照射ビームが前記一部の領域を含む領域を走査するタイミングで前記第2の発光素子を点灯させる制御モードを有することを特徴とする請求項1または2に記載の障害物検出装置。
【請求項4】
赤外光のスペクトル領域に感度を有する撮像部と、
前記撮像部が取得した画像に基づいて前記一部の領域に車両走行に障害のある障害物が存在するか判定する判定部と、を更に備え、
前記制御部は、前記一部の領域に前記障害物が存在している場合、前記障害物が前記可視光による照射ビームで照射されるように前記第1の発光素子の点灯を制御することを特徴とする請求項3に記載の障害物検出装置。
【請求項5】
前記制御部は、自車両と前記障害物との距離に応じて、前記可視光による照射ビームで照射される、前記障害物を含む領域の範囲が変化するように、前記第1の発光素子の点灯を制御することを特徴とする請求項4に記載の障害物検出装置。
【請求項1】
可視光を出射する第1の発光素子と、赤外光を出射する第2の発光素子とを有する光源と、
前記光源から出射した前記可視光および前記赤外光を反射しながら回転軸を中心に一方向に回転する回転リフレクタと、を備え、
前記回転リフレクタは、その回転動作により、
前記第1の発光素子からの可視光を照射ビームとして出射するものであり、かつ、該照射ビームを走査せしめることによって第1の配光パターンを形成するとともに、
前記第2の発光素子からの赤外光を照射ビームとして出射するものであり、かつ、該照射ビームを走査せしめることによって第2の配光パターンを形成する、
ように構成されていることを特徴とする障害物検出装置。
【請求項2】
前記回転軸は、回転によって左右方向に走査する照射ビームの走査平面に略平行に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の障害物検出装置。
【請求項3】
前記第1の発光素子および前記第2の発光素子の点消灯を制御する制御部を更に備え、 前記制御部は、前記可視光による照射ビームが前記第1の配光パターンの一部の領域を走査するタイミングで前記第1の発光素子を消灯または減光させるとともに、前記赤外光による照射ビームが前記一部の領域を含む領域を走査するタイミングで前記第2の発光素子を点灯させる制御モードを有することを特徴とする請求項1または2に記載の障害物検出装置。
【請求項4】
赤外光のスペクトル領域に感度を有する撮像部と、
前記撮像部が取得した画像に基づいて前記一部の領域に車両走行に障害のある障害物が存在するか判定する判定部と、を更に備え、
前記制御部は、前記一部の領域に前記障害物が存在している場合、前記障害物が前記可視光による照射ビームで照射されるように前記第1の発光素子の点灯を制御することを特徴とする請求項3に記載の障害物検出装置。
【請求項5】
前記制御部は、自車両と前記障害物との距離に応じて、前記可視光による照射ビームで照射される、前記障害物を含む領域の範囲が変化するように、前記第1の発光素子の点灯を制御することを特徴とする請求項4に記載の障害物検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図19】
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【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図6】
【公開番号】特開2012−224317(P2012−224317A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96421(P2011−96421)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】
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