説明

障害物検知装置

【課題】障害物検知装置において、障害物までの距離を正確に検知できるようにする。
【解決手段】障害物検知装置1は、超音波を送受信する複数の超音波センサ2と、複数の超音波センサから2の超音波の送信を制御する制御部5と、複数の超音波センサ2の受信信号に基いて、障害物を検知し、障害物までの距離を計測する距離演算部4とを備える。制御部5は、距離演算部4により計測された障害物までの距離が所定の距離より遠い場合、又は、距離演算部4により障害物が検知されない場合に、複数の超音波センサから同じタイミングで超音波を送信する動作を繰り返す同時送信動作を行わせる制御を行う。これにより、全ての超音波センサ2は、他の超音波センサ2からの直接波の受信完了後に、障害物からの反射波を受信することになる。従って、超音波センサ2からの直接波の影響を受けることなく、障害物を検知することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を送信し、その反射波を受信して障害物を検知する障害物検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、障害物検知装置において、例えば車両の周辺の障害物を検出するために用いられるものがある。このような障害物検知装置としては、図6に示す構成のものが知られている。この障害物検知装置80は、1台のECU(Electronic Control Unit)81と、4つの同種の超音波センサ82(82−1、82−2、82−3、82−4)とを備えており、車両90に搭載されて使用される。各超音波センサ82は、ECU81による制御のもと、超音波を送信する。また、各超音波センサ82は、超音波を受信し、受信した超音波の周波数及び振幅に対応する波形の受信信号を出力する。ECU81は、各超音波センサ82からの超音波の送信を制御する。また、ECU81は、各超音波センサ82から出力される受信信号に基いて、各超音波センサ82による超音波の受信の有無を検出して、車両90周辺の障害物の有無を検知すると共に、障害物までの距離を計測する。
【0003】
障害物検知装置80は、ECU81による制御のもと、図7に示すように、各超音波センサ82を異なるタイミングで順番に動作させて(各超音波センサ82から異なるタイミングで順番に超音波を送信して)、車両90周辺の障害物を検出する。
【0004】
すなわち、まず最初に、ECU81は、超音波センサ82−1から所定の送信時間(例えば1ms)に亘って超音波を送信させ、超音波センサ82−1から出力される受信信号に基いて、超音波センサ82−1による超音波の受信の有無を検出する。そして、ECU81は、この超音波の受信の有無に基いて、障害物の有無を検知すると共に、障害物までの距離を計測する。つまり、ECU81は、超音波センサ82−1からの超音波の送信開始後、所定の検知時間(例えば200ms)以内に、超音波センサ82−1により超音波を受信した場合に、障害物が存在すると判断する。このとき、ECU81は、超音波センサ82−1により超音波の送信を開始してから超音波センサ82−1により超音波を受信するまでの時間に基いて、障害物までの距離を計測する。一方、超音波センサ82−1からの超音波の送信開始後、所定の検知時間以内に、超音波センサ82−1により超音波を受信しなかった場合には、障害物が存在しないと判断する。
【0005】
以降、同様に、ECU81は、超音波センサ82−2〜82−4から順番に所定の送信時間に亘って超音波を送信させ、超音波センサ82−2〜82−4から出力される受信信号に基いて、超音波センサ82−2〜82−4による超音波の受信の有無を検出する。そして、同様に、ECU81は、この超音波の受信の有無に基いて、障害物の有無を検知すると共に、障害物までの距離を計測する。
【0006】
ECU81は、これら超音波センサ82−1〜82−4から超音波を送信させて、障害物を検知すると共に、障害物までの距離を計測する動作を繰り返す。障害物検知装置80は、このように、各超音波センサ82−1〜82−4から異なるタイミングで順番に超音波を送信して、車両90周辺の障害物を検出する。
【0007】
また、障害物からの反射波が2つの超音波センサからの送信波の干渉によって増減するのを防ぐために、2つの超音波センサからの送信波が検知領域の重なる部分で干渉しないようにした障害物検知装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1の装置では、2つの超音波センサからの送信波が検知領域の重なる部分で干渉しないようにするために、2つの超音波センサの検知領域の重なりの有無に応じて、それら2つの超音波センサからの超音波の送信タイミングを決定している。すなわち、2つの超音波センサの検知領域に重なりが無い場合には、それら2つの超音波センサから同時に超音波を送信し、2つの超音波センサの検知領域に重なりが有る場合には、それら2つの超音波センサから異なるタイミングで超音波を送信している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−298266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した従来の障害物検知装置においては、各超音波センサ82−1〜82−4から異なるタイミングで順番に超音波を送信するようになっている。このため、障害物検知装置80と障害物とが大きい相対速度で近づく場合には、各超音波センサ82−1〜82−4から超音波を送信するタイミングによっては、障害物の検知が遅れることになる。その結果、障害物の検知が遅れることによって、障害物までの実際の距離を素早く出力することができない。
【0010】
また、このような障害物の検知の遅れを回避するために、各超音波センサ82−1〜82−4から同じタイミングで一斉に超音波を送信することが考えられる。しかしながら、このようにしたのでは、各超音波センサ82−1〜82−4から送信された超音波の一部が、障害物に反射されることなく他の超音波センサに直接回り込んで受信されてしまう。このため、各超音波センサ82−1〜82−4により受信した超音波が、障害物から反射された超音波を受信したものなのか、他の超音波センサから直接回り込んできた超音波を受信したものなのかを区別することができない。その結果、障害物を正確に検知できず、障害物までの距離を正確に検知することができない。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、障害物までの距離を正確に検知することができる障害物検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の障害物検知装置は、超音波を送信し、その反射波を受信して障害物を検知する障害物検知装置において、超音波を送受信する複数の超音波センサと、複数の超音波センサからの超音波の送信を制御する制御部と、複数の超音波センサの受信信号に基いて、障害物を検知し、障害物までの距離を計測する距離演算部とを備え、制御部は、距離演算部により計測された障害物までの距離が所定の距離より遠い場合、又は、距離演算部により障害物が検知されない場合に、複数の超音波センサから同じタイミングで超音波を送信する動作を繰り返す同時送信動作を行わせる制御を行う、ものである。
【0013】
本発明の障害物検知装置において、制御部は、距離演算部により計測された障害物までの距離が所定の距離以内である場合に、複数の超音波センサの各々から他の超音波センサと異なるタイミングで超音波を送信する動作を繰り返す個別送信動作を行わせる制御を行う、ものが好ましい。
【0014】
また、本発明の障害物検知装置において、制御部は、本装置の起動時には、個別送信動作を行わせる制御を行う、ものが好ましい。
【0015】
また、本発明の障害物検知装置において、制御部は、同時送信動作を行わせる制御を行っているときに、距離演算部により計測された障害物までの距離が所定の距離より遠い状態、又は、距離演算部により障害物が検知されない状態から、距離演算部により計測された障害物までの距離が所定の距離以内の状態になった場合に、個別送信動作を行わせる制御に切り替える、ものが好ましい。
【0016】
また、本発明の障害物検知装置において、制御部は、個別送信動作を行わせる制御を行っているときに、距離演算部により計測された障害物までの距離が所定の距離以内の状態から、距離演算部により計測された障害物までの距離が所定の距離より遠い状態、又は、距離演算部により障害物が検知されない状態になった場合に、同時送信動作を行わせる制御に切り替える、ものが好ましい。
【0017】
また、本発明の障害物検知装置において、複数の超音波センサの各々の受信信号、又は、複数の超音波センサの各々の受信信号から得られる、複数の超音波センサの各々による超音波の受信の有無を表わす信号を加算する加算部をさらに備え、距離演算部は、加算部により加算された信号に基いて、障害物を検知し、障害物までの距離を計測する、ものが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、障害物までの距離を正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る障害物検知装置の構成を示す電気的ブロック構成図。
【図2】同障害物検知装置の車両への搭載例を示す図。
【図3】同障害物検知装置の直接波受信完了時間について説明する図。
【図4】(a)は同障害物検知装置の同時送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作を示すタイミングチャート、(b)は同障害物検知装置の個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作を示すタイミングチャート。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る障害物検知装置の構成を示す電気的ブロック構成図。
【図6】従来の障害物検知装置の電気的ブロック構成図。
【図7】従来の障害物検知装置の障害物を検知する動作を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態による障害物検知装置について図面を参照して説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態による障害物検知装置の構成を示す。障害物検知装置1は、超音波を送信し、その反射波を受信して障害物を検知する装置である。障害物検知装置1は、複数(n個)の超音波センサ2(2−1、2−2、2−3、・・・2−n)と、送受信部3と、複数(n個)の距離演算部4(4−1、4−2、4−3、・・・、4−n)と、制御部5とを備える。
【0021】
複数の超音波センサ2は、各々、送受信部3により駆動されることによって、超音波を送信する。送受信部3は、制御部5による制御のもと、複数の超音波センサ2を駆動する。すなわち、複数の超音波センサ2は、各々、制御部5による制御のもと、送受信部3により駆動されることによって、超音波を送信する。また、複数の超音波センサ2は、各々、超音波を含む音波を受信し、受信した音波の周波数及び振幅に対応する波形の受信信号を送受信部3に出力する。各超音波センサ2は、1つの同じ振動子によって超音波の送信と受信を行うタイプのものであり、振動子が駆動されて振動することにより超音波を送信し、また、振動子が音波を受けて振動することにより受信信号を出力する。
【0022】
送受信部3は、各超音波センサ2から出力される受信信号に基いて、各超音波センサ2による超音波の受信の有無を検出し、各超音波センサ2の2値化受信信号を生成する。そして、送受信部3は、これら各超音波センサ2の2値化受信信号を、対応する距離演算部4に出力する。各超音波センサ2の2値化受信信号は、各超音波センサ2の受信信号を各超音波センサ2による超音波の受信の有無に応じて2値化した受信信号であり、各超音波センサ2の受信信号から得られる各超音波センサ2による超音波の受信の有無を表わす信号である。
【0023】
すなわち、送受信部3は、超音波センサ2−1の受信信号に含まれている超音波成分を検出し、その超音波成分の振幅レベル(超音波センサ2−1による超音波の受信強度に対応)を所定の閾値と比較する。そして、送受信部3は、超音波成分の振幅レベルが閾値未満のときには、超音波センサ2−1により超音波が受信されていないとし、超音波センサ2−1の2値化受信信号として、ローレベルの信号を距離演算部4−1に出力する。また、送受信部3は、超音波成分の振幅レベルが閾値以上のときには、超音波センサ2−1により超音波が受信されているとし、超音波センサ2−1の2値化受信信号として、ハイレベルの信号を距離演算部4−1に出力する。送受信部3は、このようにして、超音波センサ2−1の2値化受信信号を生成して、超音波センサ2−1の2値化受信信号を距離演算部4−1に出力する。
【0024】
また、送受信部3は、超音波センサ2−2の受信信号に含まれている超音波成分を検出し、その超音波成分の振幅レベル(超音波センサ2−2による超音波の受信強度に対応)を所定の閾値と比較する。そして、送受信部3は、超音波成分の振幅レベルが閾値未満のときには、超音波センサ2−2により超音波が受信されていないとし、超音波センサ2−2の2値化受信信号として、ローレベルの信号を距離演算部4−2に出力する。また、送受信部3は、超音波成分の振幅レベルが閾値以上のときには、超音波センサ2−2により超音波が受信されているとし、超音波センサ2−2の2値化受信信号として、ハイレベルの信号を距離演算部4−2に出力する。送受信部3は、このようにして、超音波センサ2−2の2値化受信信号を生成して、超音波センサ2−2の2値化受信信号を距離演算部4−2に出力する。
【0025】
また、送受信部3は、同様にして、超音波センサ2−3、・・・、2−nの2値化受信信号を生成して、超音波センサ2−3、・・・、2−nの2値化受信信号を距離演算部−3、・・・、4−nに出力する。
【0026】
複数の距離演算部4は、各々、制御部5による制御のもと、送受信部3から出力される超音波センサ2の2値化受信信号に基いて(すなわち、超音波センサ2から出力される受信信号に基いて)、障害物を検知し、障害物までの距離を計測する。すなわち、距離演算部4−1は、制御部5による制御のもと、送受信部3から出力される超音波センサ2−1の2値化受信信号に基いて、障害物を検知し、障害物までの距離を計測する。また、距離演算部4−2は、制御部5による制御のもと、送受信部3から出力される超音波センサ2−2の2値化受信信号に基いて、障害物を検知し、障害物までの距離を計測する。同様に、距離演算部4−3、・・・、4−nは、制御部5による制御のもと、超音波センサ2−3、・・・、2−nの2値化受信信号に基いて、障害物を検知し、障害物までの距離を計測する。
【0027】
制御部5は、送受信部3による各超音波センサ2の駆動を制御することにより、各超音波センサ2からの超音波の送信を制御する。また、制御部5は、各距離演算部4による障害物の検知を制御する。そして、制御部5は、各超音波センサ2からの超音波の送信を制御すると共に、各距離演算部4による障害物の検知を制御することにより、障害物検知装置1全体としての障害物の検知を実行する。
【0028】
このような構成の障害物検知装置1は、例えば、図2に示すように、車両70に搭載されて、車両70の周辺の障害物を検出するために用いられる。この場合、複数の超音波センサ2は、例えば、車両70の前部に、水平に等間隔に並べて搭載される。なお、図2では、障害物検知装置1の超音波センサ2のみを図示しており、障害物検知装置1の超音波センサ2以外の構成については図示を省略している。
【0029】
制御部5は、障害物を検知する動作において、複数の超音波センサ2から超音波を送信させる制御として、同時送信動作を行わせる制御と、個別送信動作を行わせる制御の、いずれかの制御を行う。
【0030】
すなわち、制御部5は、障害物を検知する動作として、同時送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作と、個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作の、いずれかの検知動作を行う。
【0031】
ここで、同時送信動作とは、複数の超音波センサ2から同じタイミングで一斉に超音波を送信する動作を繰り返す動作である。また、個別送信動作とは、複数の超音波センサ2の各々から他の超音波センサ2と異なるタイミングで順番に超音波を送信する動作を繰り返す動作である。
【0032】
すなわち、制御部5は、同時送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作では、複数の超音波センサ2から同じタイミングで一斉に所定の送信時間Tt(例えば1ms)に亘って超音波を送信させ、このような超音波の送信を繰り返させる。そして、制御部5は、各距離演算部4により、送受信部3から出力される各超音波センサ2の2値化受信信号に基いて(すなわち、各超音波センサ2の受信信号に基いて)、障害物を検知させる。
【0033】
また、制御部5は、個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作では、複数の超音波センサ2の各々から他の超音波センサ2と異なるタイミングで順番に所定の送信時間Ttに亘って超音波を送信させ、このような超音波の送信を繰り返させる。そして、制御部5は、各距離演算部4により、送受信部3から出力される各超音波センサ2の2値化受信信号に基いて(すなわち、各超音波センサ2の受信信号に基いて)、障害物を検知させる。同時送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作、及び個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作の詳細については後述する。
【0034】
制御部5は、障害物までの距離が所定の距離より遠い場合に、同時送信動作を行わせる制御を行う。すなわち、同時送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作を行う。また、制御部5は、障害物までの距離が所定の距離以内である場合に、個別送信動作を行わせる制御を行う。すなわち、個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作を行う。
【0035】
上記所定の距離とは、直接波受信完了時間に相当する距離である。ここで、直接波受信完了時間とは、最も離れた2つの超音波センサ2において、一方の超音波センサ2が超音波を送信し始めたときから、他方の超音波センサ2が一方の超音波センサ2から直接回り込んできた超音波を受信し終えたときまでの時間である。ある超音波センサ2から直接回り込んできた超音波とは、ある超音波センサ2から送信された超音波のうち、障害物に反射されることなく直接に伝搬してきた超音波である。以降、直接回り込んできた超音波(障害物に反射されることなく直接に伝搬してきた超音波)を、直接波と呼ぶ。
【0036】
別の言い方をすると、所定の距離とは、その距離に障害物が存在しているとすると、超音波センサ2から送信された超音波が障害物で反射して超音波センサ2に戻ってくるまでに要する時間が、直接波受信完了時間と同じであるような距離である。つまり、超音波が超音波センサ2と障害物の間を往復する距離の半分の距離が、障害物までの距離であることを考慮すると、所定の距離は、超音波が直接波受信完了時間の間に伝搬する距離の半分の距離である。すなわち、所定の距離をRsとし、直接波受信完了時間をTsとし、超音波の伝搬速度をVとすると、所定の距離Rsは、Rs=(Ts×V)/2である。
【0037】
上記図2に示す例では、超音波センサ2−1と超音波センサ2−nとの間の距離が、他の超音波センサ2間の距離と比較して最も長い。すなわち、超音波センサ2−1と超音波センサ2−nとの間で超音波が伝搬するのに要する時間が、他の超音波センサ2間で超音波が伝搬するのに要する時間と比較して最も長い。
【0038】
従って、上記図2に示す例では、直接波受信完了時間Tsは、超音波センサ2−1が超音波を送信し始めたときから、超音波センサ2−nが超音波センサ2−1からの直接波を受信し終えたときまでの時間である。直接波受信完了時間Tsは、超音波センサ2−nが超音波を送信し始めたときから、超音波センサ2−1が超音波センサ2−nからの直接波を受信し終えたときまでの時間でもある。
【0039】
図3に示すように、超音波センサ2−1が超音波を送信し始めたときから、超音波センサ2−nが超音波センサ2−1からの直接波を受信し始めたときまでの時間を直接波伝搬時間Toとする。また、超音波センサ2−nが超音波センサ2−1からの直接波を受信し始めたときから、超音波センサ2−nが超音波センサ2−1からの直接波を受信し終えたときまでの時間を直接波受信時間Trとする。すると、直接波受信完了時間Tsは、Ts=To+Trである。
【0040】
直接波伝搬時間Toは、超音波センサ2−1から超音波センサ2−nに超音波(直接波)が伝搬するのに要する時間に相当する。すなわち、超音波センサ2−1と超音波センサ2−nとの距離をLとし、超音波の伝搬速度をVとすると、直接波伝搬時間Toは、To=L/Vである。また、直接波受信時間Trは、超音波センサ2−1が超音波を送信する送信時間Tt(超音波センサ2−1が超音波を送信し始めたときから超音波を送信し終えたときまでの時間)に相当する。すなわち、直接波受信時間Trは、Tr=Ttである。
【0041】
従って、直接波受信完了時間Tsは、超音波センサ2−1と超音波センサ2−nとの距離L、超音波の伝搬速度V、超音波センサ2−1が超音波を送信する送信時間Ttを用いて表すと、Ts=L/V+Ttである。そして、所定の距離Rsは、Rs=((L/V+Tt)×V)/2である。
【0042】
例えば、超音波センサ2−1と超音波センサ2−nとの距離Lを1mとし、超音波の伝搬速度Vを340m/sとし、超音波センサ2−1が超音波を送信する送信時間Ttを1msとすると、所定の距離Rsは、Rs=0.67mである。
【0043】
障害物が所定の距離Rsよりも遠い位置に存在する場合に、全ての超音波センサ2から同じタイミングで一斉に所定の送信時間Ttに亘って超音波を送信したとする。すると、各超音波センサ2は、他の全ての超音波センサ2からの直接波の受信完了後(直接波受信完了時間Tsの経過後)に、障害物からの反射波(障害物により反射された超音波)を受信することになる。
【0044】
制御部5は、上述のように、障害物までの距離が所定の距離より遠い場合に、同時送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作を行う。このことは、制御部5は、全ての超音波センサ2から同時に超音波を送信すると、全ての超音波センサ2からの直接波の受信完了後に、障害物からの反射波が受信される場合に、同時送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作を行うということである。このようにすることにより、全ての超音波センサ2は、他の超音波センサ2からの直接波の受信完了後に、障害物からの反射波を受信することになる。従って、直接波の影響を受けることなく障害物を検知することが可能になる。
【0045】
また、制御部5は、上述のように、障害物までの距離が所定の距離以内である場合に、個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作を行う。このことは、制御部5は、全ての超音波センサ2から同時に超音波を送信すると、全ての超音波センサ2からの直接波の受信完了前に、障害物からの反射波が受信される場合に、個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作を行うということである。このようにすることにより、超音波を送信した超音波センサ2は、他の超音波センサ2からの直接波を受信することなく、障害物からの反射波を受信することになる。従って、直接波の影響を受けることなく障害物を検知することが可能になる。
【0046】
図4(a)は、同時送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作のタイミングチャートを示す。同時送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作では、制御部5は、超音波センサ2−1〜2−nから同時に超音波を送信させて、距離演算部4−1〜4−nにより同時に障害物を検知させる動作を繰り返す。すなわち、制御部5は、以下のようにして、同時送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作を行う。
【0047】
まず、制御部5は、送受信部3により各超音波センサ2を駆動して、超音波センサ2−1〜2−nから同じタイミングで一斉に所定の送信時間Tt(例えば1ms)に亘って超音波を送信させる。また、制御部5は、超音波センサ2−1〜2−nからの超音波の送信開始と同時に、同時送信開始信号を距離演算部4−1〜4−nの各々に出力する。
【0048】
これにより、各超音波センサ2−1〜2−nは、送受信部3により駆動されることによって、同じタイミングで一斉に所定の送信時間Tt(例えば1ms)に亘って超音波を送信する。また、各超音波センサ2−1〜2−nは、超音波を受信し、その受信信号を送受信部3に出力する。送受信部3は、各超音波センサ2−1〜2−nから出力される受信信号に基いて、各超音波センサ2−1〜2−nの2値化受信信号を生成する。そして、送受信部3は、超音波センサ2−1の2値化受信信号を距離演算部4−1に出力する。また、送受信部3は、超音波センサ2−2の2値化受信信号を距離演算部4−2に出力し、超音波センサ2−3の2値化受信信号を距離演算部4−3に出力し、・・・、超音波センサ2−nの2値化受信信号を距離演算部4−nに出力する。
【0049】
また、各距離演算部4−1〜4−nは、制御部5からの同時送信開始信号を受けて、同時送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作における検出処理を行う。
【0050】
すなわち、距離演算部4−1〜4−nは、制御部5から同時送信開始信号を受けたタイミング(従って、超音波センサ2−1〜2−nからの超音波の送信開始のタイミング)で、時間の計測を開始する。そして、距離演算部4−1〜4−nは、送受信部3から出力される超音波センサ2−1〜2−nの2値化受信信号を監視する。
【0051】
超音波センサ2−1〜2−nが同じタイミングで一斉に所定の送信時間Ttに亘って超音波を送信したので、各超音波センサ2−1〜2−nは、他の超音波センサからの直接波を受信することになる。このとき、各超音波センサ2−1〜2−nは、距離演算部4−1〜4−nにおける時間の計測開始から(超音波センサ2−1〜2−nからの超音波の送信開始から)直接波受信完了時間Tsが経過するまでに、他の超音波センサからの直接波を受信し終える。すなわち、各超音波センサ2−1〜2−nは、距離演算部4−1〜4−nにおける時間の計測開始から直接波受信完了時間Tsが経過した以降は、他の超音波センサからの直接波を受信しない。従って、距離演算部4−1〜4−nにおける時間の計測開始から直接波受信完了時間Tsが経過した以降において、各超音波センサ2−1〜2−nが受信する超音波は、障害物からの反射波である。
【0052】
ここで、距離演算部4−1は、時間の計測開始から直接波受信完了時間Tsが経過した後であって、時間の計測開始から所定の検知時間が経過する前に、超音波センサ2−1の2値化受信信号がローレベルからハイレベルに変化すると、障害物を検知したとする。所定の検知時間は、例えば200msである。このとき、距離演算部4−1は、時間の計測開始から、直接波受信完了時間Tsが経過した以降において、超音波センサ2−1の2値化受信信号が最初にローレベルからハイレベルに変化するまでの計測時間に基いて、障害物までの距離を計測する。距離演算部4−1は、この計測した障害物までの距離を制御部5に出力する。
【0053】
超音波センサ2−1の2値化受信信号がローレベルからハイレベルに変化するのは、超音波センサ2−1が超音波を受信したときである。従って、直接波受信完了時間Tsが経過した以降において、超音波センサ2−1の2値化受信信号が最初にローレベルからハイレベルに変化するのは、障害物からの反射波が超音波センサ2−1に最初に受信されたときである。すなわち、距離演算部4−1の計測する障害物までの距離は、超音波センサ2−1〜2−nから送信された超音波の障害物からの反射波が、超音波センサ2−1に最初に受信されたことに基くものである。
【0054】
同様に、距離演算部4−2、4−3、・・・、4−nは、送受信部3から出力される超音波センサ2−2、2−3、・・・、2−nの2値化受信信号に基いて、障害物を検知する。また同様に、距離演算部4−2、4−3、・・・、4−nは、超音波センサ2−2、2−3、・・・、2−nの2値化受信信号がローレベルからハイレベルに変化するまでの計測時間に基いて、障害物までの距離を計測する。距離演算部4−2、4−3、・・・、4−nは、この計測した障害物までの距離を制御部5に出力する。
【0055】
距離演算部4−2、4−3、・・・、4−nの計測する障害物までの距離は、超音波センサ2−1〜2−nから送信された超音波の障害物からの反射波が、超音波センサ2−2、2−3、・・・、2−nに最初に受信されたことに基くものである。
【0056】
制御部5は、超音波センサ2−1〜2−nからの超音波の送信開始後、所定の検知時間が経過する前に、距離演算部4−1〜4−nの全てから障害物までの距離が出力されると、今回の超音波センサ2−1〜2−nから同時に超音波を送信させての検知を終了する。また、制御部5は、超音波センサ2−1〜2−nからの超音波の送信開始後、距離演算部4−1〜4−nの全てから障害物までの距離が出力される前に、所定の検知時間が経過したときにも、今回の同時に超音波を送信させての検知を終了する。
【0057】
そして、制御部5は、今回の超音波センサ2−1〜2−nから同時に超音波を送信させての検知における距離演算部4−1〜4−nからの出力に基いて、障害物の有無及び障害物までの距離を判断する。すなわち、制御部5は、今回の超音波センサ2−1〜2−nから同時に超音波を送信させての検知において、距離演算部4−1〜4−nのいずれかから障害物までの距離が出力されると、障害物が存在すると判断する。このとき、制御部5は、距離演算部4−1〜4−nから出力された障害物までの距離のうちの最も短い距離を、距離演算部4により計測された障害物までの距離とする。また、制御部5は、距離演算部4−1〜4−nのいずれからも障害物までの距離が出力されなかった場合には、距離演算部4により障害物が検知されなかったとする。
【0058】
以降、制御部5は、上記の動作を繰り返す。すなわち、制御部5は、超音波センサ2−1〜2−nから同時に所定の送信時間Ttに亘って超音波を送信させると共に、同時送信開始信号を距離演算部4−1〜4−nの各々に出力する動作を繰り返す。
【0059】
これにより、超音波センサ2−1〜2−nが同時に超音波を送信して、距離演算部4−1〜4−nが同時に障害物を検知する動作が繰り返される。そして、制御部5が障害物の有無及び障害物までの距離を判断する動作が繰り返される。制御部5は、このようにして、同時送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作を行う。
【0060】
図4(b)は、個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作のタイミングチャートを示す。個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作では、制御部5は、超音波センサ2−1〜2−nから順番に超音波を送信させて、距離演算部4−1〜4−nにより順番に障害物を検知させる動作を繰り返す。すなわち、制御部5は、以下のようにして、個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作を行う。
【0061】
まず、制御部5は、送受信部3により超音波センサ2−1を駆動して、超音波センサ2−1から所定の送信時間Tt(例えば1ms)に亘って超音波を送信させる(他の超音波センサ2−2、2−3、・・・、2−nからは超音波を送信させない)。また、制御部5は、超音波センサ2−1からの超音波の送信開始と同時に、個別送信開始信号を距離演算部4−1(超音波を送信した超音波センサに対応する距離演算部)に出力する。
【0062】
これにより、超音波センサ2−1は、送受信部3により駆動されることによって、所定の送信時間Tt(例えば1ms)に亘って超音波を送信する(他の超音波センサ2−2、2−3、・・・、2−nは、超音波を送信しない)。また、各超音波センサ2−1〜2−nは、超音波を受信し、その受信信号を送受信部3に出力する。送受信部3は、各超音波センサ2−1〜2−nから出力される受信信号に基いて、各超音波センサ2−1〜2−nの2値化受信信号を生成する。そして、送受信部3は、超音波センサ2−1の2値化受信信号を距離演算部4−1に出力し、超音波センサ2−2の2値化受信信号を距離演算部4−2に出力し、・・・、超音波センサ2−nの2値化受信信号を距離演算部4−nに出力する。
【0063】
また、距離演算部4−1は、制御部5からの個別送信開始信号を受けて、個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作における検出処理を行う。すなわち、距離演算部4−1は、制御部5から個別送信開始信号を受けたタイミング(従って、超音波センサ2−1からの超音波の送信開始のタイミング)で、時間の計測を開始する。そして、距離演算部4−1は、送受信部3から出力される超音波センサ2−1の2値化受信信号(超音波を送信した超音波センサの2値化受信信号)を監視する。
【0064】
超音波センサ2−1が超音波を送信した(他の超音波センサ2−2、2−3、・・・、2−nは超音波を送信しなかった)ので、超音波センサ2−1は、他の超音波センサからの直接波を受信することがない。従って、超音波センサ2−1が受信する超音波は、障害物からの反射波である。
【0065】
ここで、距離演算部4−1は、時間の計測開始から(超音波センサ2−1からの超音波の送信開始から)所定の検知時間が経過する前に、超音波センサ2−1の2値化受信信号がローレベルからハイレベルに変化すると、障害物を検知したとする。所定の検知時間は、例えば200msである。このとき、距離演算部4−1は、時間の計測開始から、超音波センサ2−1の2値化受信信号がローレベルからハイレベルに変化するまでの計測時間に基いて、障害物までの距離を計測する。距離演算部4−1は、この計測した障害物までの距離を制御部5に出力する。
【0066】
超音波センサ2−1の2値化受信信号がローレベルからハイレベルに変化するのは、障害物からの反射波が超音波センサ2−1に受信されたときである。すなわち、距離演算部4−1の計測する障害物までの距離は、超音波センサ2−1から送信された超音波の障害物からの反射波が、超音波センサ2−1に受信されたことに基くものである。
【0067】
制御部5は、超音波センサ2−1からの超音波の送信開始後、所定の検知時間が経過する前に、距離演算部4−1から障害物までの距離が出力されると、今回の超音波センサ2−1から超音波を送信させての障害物の検知を終了する。また、制御部5は、超音波センサ2−1からの超音波の送信開始後、距離演算部4−1から障害物までの距離が出力されることなく、所定の検知時間が経過したときにも、今回の超音波センサ2−1から超音波を送信させての障害物の検知を終了する。
【0068】
以降、同様に、制御部5は、超音波センサ2−2、2−3、・・・、2−nから順番に所定の送信時間Ttに亘って超音波を送信させる。また、制御部5は、これと共に、個別送信開始信号を距離演算部4−2、4−3、・・・、4−n(超音波を送信した超音波センサに対応する距離演算部)に出力する。
【0069】
これにより、同様に、距離演算部4−2、4−3、・・・、4−nは、順番に、送受信部3から出力される超音波センサ2−2、2−3、・・・、2−nの2値化受信信号(超音波を送信した超音波センサの2値化受信信号)に基いて、障害物を検知する。また同様に、距離演算部4−2、4−3、・・・、4−nは、順番に、時間の計測開始から超音波センサ2−2、2−3、・・・、2−nの2値化受信信号がローレベルからハイレベルに変化するまでの計測時間に基いて、障害物までの距離を計測する。距離演算部4−2、4−3、・・・、4−nは、この計測した障害物までの距離を制御部5に出力する。
【0070】
距離演算部4−2、4−3、・・・、4−nの計測する障害物までの距離は、超音波センサ2−2、2−3.・・・、2−nから送信された超音波の障害物からの反射波が、超音波センサ2−2、2−3.・・・、2−nに受信されたことに基くものである。
【0071】
制御部5は、超音波センサ2−nからの超音波の送信開始後、所定の検知時間が経過する前に、距離演算部4−nから障害物までの距離が出力されると、今回の超音波センサ2−nから超音波を送信させての障害物の検知を終了する。また、制御部5は、超音波センサ2−nからの超音波の送信開始後、距離演算部4−nから障害物までの距離が出力されることなく、所定の検知時間が経過したときにも、今回の超音波センサ2−nから超音波を送信させての検知を終了する。そして、制御部5は、今回の超音波センサ2−1〜2−nから順番に超音波を送信させての検知を終了する。
【0072】
そして、制御部5は、今回の超音波センサ2−1〜2−nから順番に超音波を送信させての検知における距離演算部4−1〜4−nからの出力に基いて、障害物の有無及び障害物までの距離を判断する。すなわち、制御部5は、今回の超音波センサ2−1〜2−nから順番に超音波を送信させての検知において、距離演算部4−1〜4−nのいずれかから障害物までの距離が出力されると、障害物が存在すると判断する。このとき、制御部5は、距離演算部4−1〜4−nから出力された障害物までの距離のうちの最も短い距離を、距離演算部4により計測された障害物までの距離とする。また、制御部5は、距離演算部4−1〜4−nのいずれからも障害物までの距離が出力されなかった場合には、距離演算部4により障害物が検知されなかったとする。
【0073】
以降、制御部5は、上記の動作を繰り返す。すなわち、制御部5は、超音波センサ2−1〜2−nから順番に所定の送信時間Ttに亘って超音波を送信させると共に、個別送信開始信号を距離演算部4−1〜4−n(超音波を送信した超音波センサに対応する距離演算部)に出力する動作を繰り返す。
【0074】
これにより、超音波センサ2−1〜2−nが順番に超音波を送信して、距離演算部4−1〜4−nが順番に障害物を検知する動作が繰り返される。そして、制御部5が障害物の有無及び障害物までの距離を判断する動作が繰り返される。制御部5は、このようにして、個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作を行う。
【0075】
次に、障害物検知装置1の起動時からの動作について説明する。制御部5は、障害物検知装置1の起動時(障害物検知装置1による障害物の検知動作の開始時)には、個別送信動作を行わせる制御を行う。すなわち、個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作を行う。
【0076】
ここで、距離演算部4により計測された障害物までの距離が所定の距離Rs以内である場合には、制御部5は、個別送信動作を行わせる制御を継続する。すなわち、個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作を継続する。
【0077】
一方、距離演算部4により計測された障害物までの距離が所定の距離Rsより遠い場合、又は、距離演算部4により障害物が検知されない場合には、制御部5は、同時送信動作を行わせる制御に切り替える。すなわち、同時送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作に切り替える。
【0078】
その後、同時送信動作を行わせる制御を行っているときに、距離演算部4により計測された障害物までの距離が所定の距離Rsより遠い状態から所定の距離Rs以内の状態になった場合に、制御部5は、個別送信動作を行わせる制御に切り替える。すなわち、個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作に切り替える。なお、制御部5は、距離演算部4により計測された障害物までの距離の時間推移に基いて、距離演算部4により計測された障害物までの距離が所定の距離Rsより遠い状態から所定の距離Rs以内の状態になったことを判断する。
【0079】
また、同時送信動作を行わせる制御を行っているときに、距離演算部4により障害物が検知されない状態から、距離演算部4により計測された障害物までの距離が所定の距離Rs以内の状態になった場合にも、個別送信動作を行わせる制御に切り替える。すなわち、個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作に切り替える。なお、制御部5は、距離演算部4により計測された障害物までの距離の時間推移に基いて、距離演算部4により障害物が検知されない状態から、距離演算部4により計測された障害物までの距離が所定の距離Rs以内の状態になったことを判断する。
【0080】
また、個別送信動作を行わせる制御を行っているときに、距離演算部4により計測された障害物までの距離が所定の距離Rs以内の状態から所定の距離Rsより遠い状態になった場合に、制御部5は、同時送信動作を行わせる制御に切り替える。すなわち、同時送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作に切り替える。
【0081】
また、個別送信動作を行わせる制御を行っているときに、距離演算部4により計測された障害物までの距離が所定の距離Rs以内の状態から、距離演算部4により障害物が検知されない状態になった場合にも、同時送信動作を行わせる制御に切り替える。すなわち、同時送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作に切り替える。
【0082】
同時送信動作中において、距離演算部4により計測された障害物までの距離とは、1回の超音波センサ2−1〜2−nから同時に超音波を送信させての検知において距離演算部4−1〜4−nから出力された障害物までの距離のうちの最も短い距離である。また、個別送信動作中において、距離演算部4により計測された障害物までの距離とは、1回の超音波センサ2−1〜2−nから順番に超音波を送信させての検知において距離演算部4−1〜4−nから出力された障害物までの距離のうちの最も短い距離である。
【0083】
なお、直接波受信完了時間Ts及び所定の距離Rsは、例えばパソコンなどの外部装置から超音波センサ2−1と超音波センサ2−nとの距離L(最も長い超音波センサ2間の距離)を入力することにより設定される。すなわち、制御部5が、外部装置から入力された超音波センサ2−1と超音波センサ2−nとの距離L、予め記憶している超音波の伝搬速度V、及び超音波の送信時間Ttに基いて、直接波受信完了時間Ts及び所定の距離Rsを求めて設定する。
【0084】
本実施形態の障害物検知装置1によれば、障害物までの距離が所定の距離より遠い場合に、同時送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作が行われる。これにより、全ての超音波センサ2は、他の超音波センサ2からの直接波の受信完了後に、障害物からの反射波を受信することになる。そして、このように超音波を受信する(直接波の受信完了後に障害物からの反射波を受信する)ことになる超音波センサ2の受信信号に基いて、直接波を受信したことと区別して、障害物からの反射波を受信したことが検知されて、障害物が検知される。すなわち、直接波の受信完了後(直接波受信完了時間が経過した後)に超音波を受信したことによって、障害物からの反射波を受信したことが検知されて、障害物が検知される。従って、障害物の検知が遅れることがないと共に、超音波センサ2からの直接波(障害物に反射されることなく直接に伝搬してきた超音波)の影響を受けることなく、障害物を正確に検知して、障害物までの距離を正確に検知することができる。
【0085】
また、障害物が検知されない場合に、同時送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作が行われる。これにより、障害物が検知されない状況から障害物が検知される状況になったときに、障害物の検知が遅れることがなく、障害物を正確に検知して、障害物までの距離を正確に検知することができる。
【0086】
しかも、障害物までの距離が所定の距離以内である場合に、個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作が行われる。これにより、超音波を送信した超音波センサ2は、他の超音波センサ2からの直接波を受信することなく、障害物からの反射波を受信することになる。そして、このように超音波を受信する(他の超音波センサ2からの直接波を受信することなく、障害物からの反射波を受信する)ことになる超音波センサ2の受信信号に基いて、障害物からの反射波を受信したことが検知されて、障害物が検知される。従って、超音波センサ2からの直接波の影響を受けることなく、障害物を正確に検知して、障害物までの距離を正確に検知することができる。
【0087】
また、障害物検知装置1の起動時に、個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作が行われる。これにより、障害物が所定の距離以内に存在している状況で障害物検知装置1を起動させた場合でも、障害物を正確に検知して、障害物までの距離を正確に検知することができる。
【0088】
また、同時送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作と、個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作が自動的に切り替えられる。これにより、障害物検知装置1を車両70に搭載して、障害物検知装置1を車両70の周辺の障害物を検出するために用いた場合に、運転者による検知動作の切り替え操作を必要とせずに、適切な検知動作によって車両70の周辺の障害物が検知される。
【0089】
<第2の実施形態>
図5は、第2の実施形態による障害物検知装置の構成を示す。本実施形態の障害物検知装置1は、上記第1の実施形態において複数の距離演算部4を備えていることに代えて、1つの距離演算部4を備えている。また、本実施形態の障害物検知装置1は、上記第1の実施形態の構成に加え、加算部6をさらに備えている。
【0090】
複数の超音波センサ2及び送受信部3は、上記第1の実施形態と同様の構成である。但し、本実施形態では、送受信部3は、各超音波センサ2の2値化受信信号を、加算部6に出力する。
【0091】
加算部6は、制御部5による制御のもと、送受信部3から出力される各超音波センサ2の2値化受信信号を加算して、その加算した2値化受信信号を距離演算部4に出力する。すなわち、加算部6は、送受信部3から出力される超音波センサ2−1の2値化受信信号、超音波センサ2−2の2値化受信信号、超音波センサ2−3の2値化受信信号、・・・、超音波センサ2−nの2値化受信信号を加算する。そして、加算部6は、この加算した2値化受信信号を距離演算部4に出力する。
【0092】
加算部6により加算された2値化受信信号は、超音波センサ2−1の2値化受信信号、超音波センサ2−2の2値化受信信号、・・・、超音波センサ2−nの2値化受信信号の全てがローレベルのときに、ローレベルとなる。また、加算部6により加算された2値化受信信号は、超音波センサ2−1の2値化受信信号、超音波センサ2−2の2値化受信信号、・・・、超音波センサ2−nの2値化受信信号の少なくともいずれか1つがハイレベルのときに、ハイレベルとなる。
【0093】
また、加算部6は、制御部5による制御のもと、送受信部3から出力される各超音波センサ2の2値化受信信号のうち、いずれか1つの2値化受信信号を選択して、その選択した2値化受信信号を距離演算部4に出力する。
【0094】
距離演算部4は、制御部5による制御のもと、加算部6から出力される2値化受信信号(すなわち、加算部6により加算された2値化受信信号、又は、加算部6により選択された2値化受信信号)に基いて、障害物を検知し、障害物までの距離を計測する。
【0095】
制御部5は、送受信部3による各超音波センサ2の駆動を制御することにより、各超音波センサ2からの超音波の送信を制御する。また、制御部5は、加算部6による2値化受信信号の出力(加算及び選択)を制御する。また、制御部5は、距離演算部4による障害物の検知を制御する。そして、制御部5は、各超音波センサ2からの超音波の送信、加算部6による2値化受信信号の加算及び選択、距離演算部4による障害物の検知を制御することにより、障害物検知装置1全体としての障害物の検知を実行する。
【0096】
制御部5は、上記第1の実施形態と同様に、障害物を検知する動作において、複数の超音波センサ2から超音波を送信させる制御として、同時送信動作を行わせる制御と、個別送信動作を行わせる制御の、いずれかの制御を行う。
【0097】
すなわち、制御部5は、上記第1の実施形態と同様に、障害物を検知する動作として、同時送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作と、個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作の、いずれかの検知動作を行う。但し、本実施形態では、上記第1の実施形態と異なり、制御部5は、距離演算部4により、加算部6から出力される2値化受信信号に基いて(すなわち、各超音波センサ2の受信信号に基いて)、障害物を検知させる。
【0098】
本実施形態において、同時送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作では、制御部5は、超音波センサ2−1〜2−nから同時に超音波を送信させて、距離演算部4により障害物を検知させる動作を繰り返す。このとき、制御部5は、加算部6により、超音波センサ2−1〜2−nの2値化受信信号を加算させ、距離演算部4により、この加算された2値化受信信号に基いて、障害物を検知させる。すなわち、制御部5は、以下のようにして、同時送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作を行う。
【0099】
まず、制御部5は、送受信部3により各超音波センサ2を駆動して、超音波センサ2−1〜2−nから同じタイミングで一斉に所定の送信時間Tt(例えば1ms)に亘って超音波を送信させる。また、制御部5は、超音波センサ2−1〜2−nからの超音波の送信開始と同時に、同時送信開始信号を距離演算部4及び加算部6に出力する。
【0100】
これにより、各超音波センサ2−1〜2−nは、送受信部3により駆動されることによって、同じタイミングで一斉に所定の送信時間Tt(例えば1ms)に亘って超音波を送信する。また、各超音波センサ2−1〜2−nは、超音波を受信し、その受信信号を送受信部3に出力する。送受信部3は、各超音波センサ2−1〜2−nから出力される受信信号に基いて、各超音波センサ2−1〜2−nの2値化受信信号を生成する。そして、送受信部3は、超音波センサ2−1の2値化受信信号、超音波センサ2−2の2値化受信信号、超音波センサ2−3の2値化受信信号、・・・、超音波センサ2−nの2値化受信信号を加算部6に出力する。
【0101】
また、加算部6は、制御部5からの同時送信開始信号を受けて、送受信部3から出力される超音波センサ2−1の2値化受信信号、超音波センサ2−2の2値化受信信号、・・・、超音波センサ2−nの2値化受信信号を加算する。そして、加算部6は、この加算した2値化受信信号を距離演算部4に出力する。加算部6から出力される2値化受信信号は、超音波センサ2−1の2値化受信信号、超音波センサ2−2の2値化受信信号、・・・、超音波センサ2−nの2値化受信信号の全てがローレベルのときに、ローレベルとなる。また、加算部6から出力される2値化受信信号は、超音波センサ2−1の2値化受信信号、超音波センサ2−2の2値化受信信号、・・・、超音波センサ2−nの2値化受信信号の少なくともいずれか1つがハイレベルのときに、ハイレベルとなる。
【0102】
また、距離演算部4は、制御部5からの同時送信開始信号を受けて、同時送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作における検出処理を行う。すなわち、距離演算部4は、制御部5から同時送信開始信号を受けたタイミング(従って、超音波センサ2−1〜2−nからの超音波の送信開始のタイミング)で、時間の計測を開始する。そして、距離演算部4は、加算部6から出力される2値化受信信号を監視する。
【0103】
超音波センサ2−1〜2−nが同じタイミングで一斉に所定の送信時間Ttに亘って超音波を送信したので、各超音波センサ2−1〜2−nは、他の超音波センサからの直接波を受信することになる。このとき、各超音波センサ2−1〜2−nは、距離演算部4における時間の計測開始から(超音波センサ2−1〜2−nからの超音波の送信開始から)直接波受信完了時間Tsが経過するまでに、他の超音波センサからの直接波を受信し終える。すなわち、各超音波センサ2−1〜2−nは、距離演算部4における時間の計測開始から直接波受信完了時間Tsが経過した以降は、他の超音波センサからの直接波を受信しない。従って、距離演算部4における時間の計測開始から直接波受信完了時間Tsが経過した以降において、各超音波センサ2−1〜2−nが受信する超音波は、障害物からの反射波である。
【0104】
ここで、距離演算部4は、時間の計測開始から直接波受信完了時間Tsが経過した後であって、時間の計測開始から所定の検知時間が経過する前に、加算部6から出力される2値化受信信号がローレベルからハイレベルに変化すると、障害物を検知したとする。所定の検知時間は、例えば200msである。このとき、距離演算部4は、時間の計測開始から、直接波受信完了時間Tsが経過した以降において、加算部6の出力する2値化受信信号が最初にローレベルからハイレベルに変化するまでの計測時間に基いて、障害物までの距離を計測する。距離演算部4は、この計測した障害物までの距離を制御部5に出力する。
【0105】
加算部6の出力する2値化受信信号がローレベルからハイレベルに変化するのは、超音波センサ2−1〜2−nの2値化受信信号のいずれかがローレベルからハイレベルに変化するときである。これは、超音波センサ2−1〜2−nのいずれかが超音波を受信したときである。従って、直接波受信完了時間Tsが経過した以降において、加算部6の出力する2値化受信信号が最初にローレベルからハイレベルに変化するのは、障害物からの反射波が超音波センサ2−1〜2−nのいずれかに最初に受信されたときである。すなわち、距離演算部4の計測する障害物までの距離は、超音波センサ2−1〜2−nから送信された超音波の障害物からの反射波が、超音波センサ2−1〜2−nのいずれかに最初に受信されたことに基くものである。
【0106】
制御部5は、超音波センサ2−1〜2−nからの超音波の送信開始後、所定の検知時間が経過する前に、距離演算部4から障害物までの距離が出力されると、今回の超音波センサ2−1〜2−nから同時に超音波を送信させての障害物の検知を終了する。また、制御部5は、超音波センサ2−1〜2−nからの超音波の送信開始後、距離演算部4から障害物までの距離が出力されることなく、所定の検知時間が経過したときにも、今回の同時に超音波を送信させての障害物の検知を終了する。
【0107】
そして、制御部5は、今回の超音波センサ2−1〜2−nから同時に超音波を送信させての検知における距離演算部4からの出力に基いて、障害物の有無及び障害物までの距離を判断する。すなわち、制御部5は、今回の超音波センサ2−1〜2−nから同時に超音波を送信させての検知において、距離演算部4から障害物までの距離が出力されると、障害物が存在すると判断する。このとき、制御部5は、距離演算部4から出力された障害物までの距離を、距離演算部4により計測された障害物までの距離とする。また、制御部5は、距離演算部4から障害物までの距離が出力されなかった場合には、距離演算部4により障害物が検知されなかったとする。
【0108】
以降、制御部5は、上記の動作を繰り返す。すなわち、制御部5は、超音波センサ2−1〜2−nから同時に所定の送信時間Ttに亘って超音波を送信させると共に、同時送信開始信号を距離演算部4及び加算部6に出力する動作を繰り返す。
【0109】
これにより、超音波センサ2−1〜2−nが同時に超音波を送信して、距離演算部4が障害物を検知する動作が繰り返される。そして、制御部5が障害物の有無及び障害物までの距離を判断する動作が繰り返される。制御部5は、このようにして、同時送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作を行う。
【0110】
本実施形態において、個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作では、制御部5は、超音波センサ2−1〜2−nから順番に超音波を送信させて、距離演算部4により障害物を検知させる動作を繰り返す。このとき、制御部5は、加算部6により、超音波センサ2−1〜2−nのうち超音波を送信した超音波センサの2値化受信信号を選択させ、距離演算部4により、この選択された2値化受信信号に基いて、障害物を検知させる。すなわち、制御部5は、以下のようにして、個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作を行う。
【0111】
まず、制御部5は、送受信部3により超音波センサ2−1を駆動して、超音波センサ2−1から所定の送信時間Tt(例えば1ms)に亘って超音波を送信させる(他の超音波センサ2−2、2−3、・・・、2−nからは超音波を送信させない)。また、制御部5は、超音波センサ2−1からの超音波の送信開始と同時に、個別送信開始信号を距離演算部4及び加算部6に出力すると共に、超音波センサ2−1から超音波を送信したことを示す送信センサ通知信号を加算部6に出力する。
【0112】
これにより、超音波センサ2−1は、送受信部3により駆動されることによって、所定の送信時間Tt(例えば1ms)に亘って超音波を送信する(他の超音波センサ2−2、2−3、・・・、2−nは、超音波を送信しない)。また、各超音波センサ2−1〜2−nは、超音波を受信し、その受信信号を送受信部3に出力する。送受信部3は、各超音波センサ2−1〜2−nから出力される受信信号に基いて、各超音波センサ2−1〜2−nの2値化受信信号を生成する。そして、送受信部3は、超音波センサ2−1の2値化受信信号、超音波センサ2−2の2値化受信信号、超音波センサ2−3の2値化受信信号、・・・、超音波センサ2−nの2値化受信信号を加算部6に出力する。
【0113】
また、加算部6は、制御部5からの個別送信開始信号及び超音波センサ2−1から超音波を送信したことを示す送信センサ通知信号を受けて、送受信部3から出力される超音波センサ2−1(超音波を送信した超音波センサ)の2値化受信信号を選択する。そして、加算部6は、この選択した2値化受信信号を距離演算部4に出力する。加算部6から出力される2値化受信信号は、超音波センサ2−1の2値化受信信号がローレベルのときに、ローレベルとなり、超音波センサ2−1の2値化受信信号がハイレベルのときに、ハイレベルとなる。
【0114】
また、距離演算部4は、制御部5からの個別送信開始信号を受けて、個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作における検出処理を行う。すなわち、距離演算部4は、制御部5から個別送信開始信号を受けたタイミング(従って、超音波センサ2−1からの超音波の送信開始のタイミング)で、時間の計測を開始する。そして、距離演算部4は、加算部6から出力される2値化受信信号を監視する。
【0115】
超音波センサ2−1が超音波を送信した(他の超音波センサ2−2、2−3、・・・、2−nは超音波を送信しなかった)ので、超音波センサ2−1は、他の超音波センサからの直接波を受信することがない。従って、超音波センサ2−1が受信する超音波は、障害物からの反射波である。
【0116】
ここで、距離演算部4は、時間の計測開始から(超音波センサ2−1からの超音波の送信開始から)所定の検知時間が経過する前に、加算部6から出力される2値化受信信号がローレベルからハイレベルに変化すると、障害物を検知したとする。所定の検知時間は、例えば200msである。このとき、距離演算部4は、時間の計測開始から、加算部6の出力する2値化受信信号がローレベルからハイレベルに変化するまでの計測時間に基いて、障害物までの距離を計測する。距離演算部4は、この計測した障害物までの距離を制御部5に出力する。
【0117】
加算部6の出力する2値化受信信号がローレベルからハイレベルに変化するのは、超音波センサ2−1の2値化受信信号がローレベルからハイレベルに変化したときである。これは、障害物からの反射波が超音波センサ2−1に受信されたときである。すなわち、距離演算部4の計測する障害物までの距離は、超音波センサ2−1から送信された超音波の障害物からの反射波が、超音波センサ2−1に受信されたことに基くものである。
【0118】
制御部5は、超音波センサ2−1からの超音波の送信開始後、所定の検知時間が経過する前に、距離演算部4から障害物までの距離が出力されると、今回の超音波センサ2−1から超音波を送信させての障害物の検知を終了する。また、制御部5は、超音波センサ2−1からの超音波の送信開始後、距離演算部4から障害物までの距離が出力されることなく、所定の検知時間が経過したときにも、今回の超音波センサ2−1から超音波を送信させての障害物の検知を終了する。
【0119】
以降、同様に、制御部5は、超音波センサ2−2、2−3、・・・、2−nから順番に所定の送信時間Ttに亘って超音波を送信させる。また、制御部5は、これと共に、個別送信開始信号を距離演算部4及び加算部6に出力し、超音波センサ2−2、2−3、・・・、2−nから超音波を送信したことを示す送信センサ通知信号を加算部6に出力する。
【0120】
これにより、同様に、距離演算部4は、加算部6から出力される2値化受信信号(超音波センサ2−2、2−3、・・・、2−nの2値化受信信号であって、超音波を送信した超音波センサの2値化受信信号)に基いて、障害物を検知する。また同様に、距離演算部4は、時間の計測開始から加算部6の出力する2値化受信信号がローレベルからハイレベルに変化するまでの計測時間に基いて、障害物までの距離を計測する。距離演算部4は、この計測した障害物までの距離を制御部5に出力する。
【0121】
距離演算部4の計測する障害物までの距離は、超音波センサ2−2、2−3.・・・、2−nから送信された超音波の障害物からの反射波が、超音波センサ2−2、2−3.・・・、2−nに受信されたことに基くものである。
【0122】
制御部5は、超音波センサ2−nからの超音波の送信開始後、所定の検知時間が経過する前に、距離演算部4から障害物までの距離が出力されると、今回の超音波センサ2−nから超音波を送信させての障害物の検知を終了する。また、制御部5は、超音波センサ2−nからの超音波の送信開始後、距離演算部4から障害物までの距離が出力されることなく、所定の検知時間が経過したときにも、今回の超音波センサ2−nから超音波を送信させての障害物の検知を終了する。そして、制御部5は、今回の超音波センサ2−1〜2−nから順番に超音波を送信させての障害物の検知を終了する。
【0123】
そして、制御部5は、今回の超音波センサ2−1〜2−nから順番に超音波を送信させての検知における距離演算部4からの出力に基いて、障害物の有無及び障害物までの距離を判断する。すなわち、制御部5は、今回の超音波センサ2−1〜2−nから順番に超音波を送信させての検知において、距離演算部4から障害物までの距離が出力されると、障害物が存在すると判断する。このとき、制御部5は、距離演算部4から出力された障害物までの距離のうちの最も短い距離を、距離演算部4により計測された障害物までの距離とする。また、制御部5は、距離演算部4から一度も障害物までの距離が出力されなかった場合(超音波センサ2−1〜2−nのいずれの受信信号によっても障害物が検知されなかった場合)には、距離演算部4により障害物が検知されなかったとする。
【0124】
以降、制御部5は、上記の動作を繰り返す。すなわち、制御部5は、超音波センサ2−1〜2−nから順番に所定の送信時間Ttに亘って超音波を送信させると共に、個別送信開始信号を距離演算部4及び加算部6に出力し、送信センサ通知信号を加算部6に出力する動作を繰り返す。
【0125】
これにより、超音波センサ2−1〜2−nが順番に超音波を送信して、距離演算部4が障害物を検知する動作が繰り返される。そして、制御部5が障害物の有無及び障害物までの距離を判断する動作が繰り返される。制御部5は、このようにして、個別送信動作を行わせる制御を行って障害物を検知する動作を行う。
【0126】
本実施形態の障害物検知装置1によれば、上記第1の実施形態と同様に、障害物を正確に検知して、障害物までの距離を正確に検知することができる。しかも、本実施形態の障害物検知装置1によれば、距離演算部4を1つにすることができ、回路規模を小さくすることができる。
【0127】
なお、本発明は、上記各実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。例えば、超音波センサは、1つの同じ振動子によって超音波の送信と受信を行うタイプのものに限られず、超音波を送信する振動子と超音波を受信する振動子が別々であるタイプのものであってもよい。また、超音波センサは、2つ以上あればよい。また、送受信部は、各超音波センサに対応して、複数のものが設けられていてもよい。また、送受信部は、各超音波センサの一部として、各超音波センサに備えられていてもよい。また、送受信部は、各超音波センサの2値化受信信号を生成せずに、各超音波センサの受信信号を出力し、距離演算部が、各超音波センサの2値化受信信号を生成するようにしてもよい。この場合、上記第2の実施形態において、加算部は、送受信部から出力される各超音波センサの受信信号を加算して出力し、又は、送受信部から出力される各超音波センサの受信信号のいずれかを選択して出力すればよい。また、超音波センサは、車両の前部に限られず、車両の後部や側部に設置されてもよい。また、障害物検知装置は、車両に限られず、車両以外の移動体に搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0128】
1 障害物検知装置
2、2−1、2−2、2−3、・・・、2−n 超音波センサ
3 送受信部
4、4−1、4−2、4−3、・・・、4−n 距離演算部
5 制御部
6 加算部
70 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送信し、その反射波を受信して障害物を検知する障害物検知装置において、
超音波を送受信する複数の超音波センサと、
前記複数の超音波センサからの超音波の送信を制御する制御部と、
前記複数の超音波センサの受信信号に基いて、障害物を検知し、障害物までの距離を計測する距離演算部とを備え、
前記制御部は、前記距離演算部により計測された障害物までの距離が所定の距離より遠い場合、又は、前記距離演算部により障害物が検知されない場合に、前記複数の超音波センサから同じタイミングで超音波を送信する動作を繰り返す同時送信動作を行わせる制御を行う、ことを特徴とする障害物検知装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記距離演算部により計測された障害物までの距離が所定の距離以内である場合に、前記複数の超音波センサの各々から他の超音波センサと異なるタイミングで超音波を送信する動作を繰り返す個別送信動作を行わせる制御を行う、ことを特徴とする請求項1に記載の障害物検知装置。
【請求項3】
前記制御部は、本装置の起動時には、前記個別送信動作を行わせる制御を行う、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の障害物検知装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記同時送信動作を行わせる制御を行っているときに、前記距離演算部により計測された障害物までの距離が所定の距離より遠い状態、又は、前記距離演算部により障害物が検知されない状態から、前記距離演算部により計測された障害物までの距離が所定の距離以内の状態になった場合に、前記個別送信動作を行わせる制御に切り替える、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の障害物検知装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記個別送信動作を行わせる制御を行っているときに、前記距離演算部により計測された障害物までの距離が所定の距離以内の状態から、前記距離演算部により計測された障害物までの距離が所定の距離より遠い状態、又は、前記距離演算部により障害物が検知されない状態になった場合に、前記同時送信動作を行わせる制御に切り替える、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の障害物検知装置。
【請求項6】
前記複数の超音波センサの各々の受信信号、又は、前記複数の超音波センサの各々の受信信号から得られる、前記複数の超音波センサの各々による超音波の受信の有無を表わす信号を加算する加算部をさらに備え、
前記距離演算部は、前記加算部により加算された信号に基いて、障害物を検知し、障害物までの距離を計測する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の障害物検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−88279(P2013−88279A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228745(P2011−228745)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】