説明

集中解錠操作装置

【課題】ロータが中立位置から正転方向に回動するのに応じて第1作動アームが回動し、ロータが中立位置から逆転方向に回動するのに応じて第2作動アームが回動するようにした集中解錠操作装置において、2つの作動アームが回動作動後に元の位置に戻ったか否かを外部から容易に確認可能とする。
【解決手段】ロータ15の中立位置から第1作動位置側への回動時に第1作動アーム33の第1受圧部35に当接して押圧力を及ぼす第1押圧面38と、ロータ15の中立位置から第2作動位置側への回動時に第2作動アーム34の第2受圧部36に当接して押圧力を及ぼす第2押圧面39とが、ロータ15に設けられるカム部37に形成され、スプリング32が、第1および第2受圧部35,36を第1および第2押圧面38,39に当接させる方向に第1および第2作動アーム33,34を付勢するようにして第1および第2作動アーム33,34間に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定のシリンダボディと、正規のメカニカルキーによる回動操作に応じて中立位置ならびに該中立位置の両側に設定される第1および第2作動位置間で回動することを可能として前記シリンダボディに挿入されるロータと、該ロータを前記中立位置側に向けて付勢するスプリングと、前記ロータの前記中立位置から第1作動位置側への回動時には第1の鎖錠機構を解錠するようにして前記ロータとともに回動するものの前記ロータの前記中立位置から第2作動位置側への回動時には静止したままとなる第1作動アームと、前記ロータの前記中立位置から第2作動位置側への回動時には第2の鎖錠機構を解錠するようにして前記ロータとともに回動するものの前記ロータの前記中立位置から第1作動位置側への回動時には静止したままとなる第2作動アームとを備える集中解錠操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
正規のメカニカルキーでロータを中立位置から正転方向に回動するのに応じて第1作動アームが回動し、それによって第1開閉扉のロック部のロックが解除され、正規のメカニカルキーでロータを中立位置から逆転方向に回動するのに応じて第2作動アームが回動し、それによって第2開閉扉のロック部のロックが解除されるようにしたものが、特許文献1で知られており、このものでは、前記ロータに同軸にかつ一体に設けられた軸部の外周に相互に180度の間隔をあけて第1および第2係合段部が設けられ、第1作動アームには、前記軸部の正転時に第1係合段部に係合する係合突部ならびに前記軸部の逆転方向の相対回転を許容する遊びを有して前記軸部を嵌合せしめる第1嵌合孔が設けられ、第2作動アームには、前記軸部の逆転時に第2係合段部に係合する係合突部ならびに前記軸部の正転方向の相対回転を許容する遊びを有して前記軸部を嵌合せしめる第2嵌合孔が設けられ、ロータを中立位置に付勢するスプリングがシリンダボディおよびロータ間に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−8211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1で開示されたものでは、スプリングのスプリング力がロータには作用するが、第1および第2作動アームにはスプリング力が作用しておらず、第1および第2作動アームにはロック部側からの戻し方向の付勢力が作用するだけである。このためロータを中立位置から正転および逆転方向のいずれかに回動操作した後にロータがスプリング力で中立位置に戻っても、ロック部側の原因で作動アームが作動位置に留まってしまう可能性があり、このような状態になってもロータは中立位置に戻っているので作動アームが元の位置に戻っていないことを外部から確認することができなかった。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、2つの作動アームが回動作動後に元の位置に戻ったか否かを外部から容易に確認し得るようにした集中解錠操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、固定のシリンダボディと、正規のメカニカルキーによる回動操作に応じて中立位置ならびに該中立位置の両側に設定される第1および第2作動位置間で回動することを可能として前記シリンダボディに挿入されるロータと、該ロータを前記中立位置側に向けて付勢するスプリングと、前記ロータの前記中立位置から第1作動位置側への回動時には第1の鎖錠機構を解錠するようにして前記ロータとともに回動するものの前記ロータの前記中立位置から第2作動位置側への回動時には静止したままとなる第1作動アームと、前記ロータの前記中立位置から第2作動位置側への回動時には第2の鎖錠機構を解錠するようにして前記ロータとともに回動するものの前記ロータの前記中立位置から第1作動位置側への回動時には静止したままとなる第2作動アームとを備える集中解錠操作装置において、第1作動アームに第1受圧部が設けられ、第2作動アームに第2受圧部が設けられ、前記ロータの中立位置から第1作動位置側への回動時に第1受圧部に当接して押圧力を及ぼす第1押圧面と、前記ロータの中立位置から第2作動位置側への回動時に第2受圧部に当接して押圧力を及ぼす第2押圧面とが、前記ロータの中立位置から第1作動位置側への回動時には第2受圧部への当接を回避するとともに前記ロータの中立位置から第2作動位置側への回動時には第1受圧部への当接を回避する形状を有して前記ロータに設けられるカム部に形成され、前記スプリングが、第1受圧部を第1押圧面に当接させるとともに第2受圧部を第2押圧面に当接させる方向に第1および第2作動アームを付勢するようにして第1および第2作動アーム間に設けられ、前記ロータが中立位置にあるときに第1押圧面と同一側から第1受圧部に当接する第1規制部ならびに第2押圧面と同一側から第2受圧部に当接する第2規制部が前記シリンダボディに設けられることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、第1作動アームが備える第1円筒部と、第2作動アームが備える第2円筒部とが、第2円筒部の一部を第1円筒部内に相対回動可能に嵌合させるようにして前記ロータと同軸に配置され、第1円筒部内に前記スプリングが収容されることを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の特徴によれば、ロータが中立位置にある状態では該ロータに設けられたカム部の第1および第2押圧面が、第1作動アームの第1受圧部ならびに第2作動アームの第2受圧部に当接しており、ロータを中立位置側に付勢するスプリングが第1受圧部を第1押圧面に当接させるとともに第2受圧部を第2押圧面に当接させる方向に第1および第2作動アームを付勢するようにして第1および第2作動アーム間に設けられるので、ロータの回動によって第1および第2押圧面の一方で第1および第2受圧部の一方を押した状態で、第1および第2作動アームの一方にはスプリングのスプリング力が元に戻る側に向けて作用したままであり、ロータには第1および第2受圧部の一方からカム部を介して戻り方向のスプリング力が作用するので、ロータに加えて回動操作力を解放すると、回動作動した作動アームはロータとともに第1および第2規制部の一方で規制される中立位置まで戻ることになり、作動アームの回動位置と、ロータすなわちメカニカルキーの回動位置とが一致しているので作動アームが元に戻ったことは外部から容易に確認可能である。また作動アームが万一戻らないときにはロータのカム部にスプリング力が作用しない状態となり、メカニカルキーは元の中立位置にスプリング力で戻ることはなく、戻ったとしてもスプリング力が作用していないのでメカニカルキーおよびロータの回動がフリーとなり、ガタガタと回動することができるようになるので、作動アームが元の中立位置に戻っていないことを容易に判別することができる。
【0009】
また本発明の第2の特徴によれば、第1作動アームが備える第1円筒部内に、第2作動アームが備える第2円筒部の一部が相対回動可能に嵌合され、第1円筒部内にスプリングが収容されるので、雨水や塵埃がスプリングにかかることを抑制し、スプリングの錆び付きや、スプリングへの塵埃の噛み込みが生じることがないようにして、スプリングの作動を円滑化することができるとともに耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】集中解錠操作装置の縦断面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】集中解錠操作装置の斜め下方から見た分解斜視図である。
【図4】図1の4−4線断面図である。
【図5】集中解錠操作装置のうち図1の5−5線から後方の部分を左前方から見た横断斜視図である。
【図6】図1の6−6線断面図である。
【図7】ロータを第1作動位置に回動した状態での図4に対応した断面図である。
【図8】ロータを第2作動位置に回動した状態での図6に対応した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図1〜図8を参照しながら説明すると、先ず図1において、この集中解錠操作装置は、シリンダ錠10を有してたとえば自動二輪車に設けられるものであり、シリンダ錠10に正規のメカニカルキー11を挿入して回動操作することによって、たとえば収納ボックスを上方から覆う乗車用シートの閉鎖状態を維持するための第1の鎖錠機構12と、たとえば燃料タンクにおけるキャップカバーの閉鎖状態を維持するための第2の鎖錠機構13とを解錠作動せしめることができる。
【0012】
図2を併せて参照して、前記シリンダ錠10には、中立位置Nと、その両側の第1および第2作動位置S1,S2が設定される。而して第1作動位置S1は前記中立位置Nから右まわりに角度αたとえば90度の位置に設定され、第2作動位置S2は前記中立位置Nから左まわりに角度βたとえば160度の位置に設定されており、シリンダ錠10に挿入した正規のメカニカルキー11を中立位置Nから第1作動位置S1に回動操作することで第1の鎖錠機構12が解錠され、前記メカニカルキー11を中立位置Nから第2作動位置S2に回動操作することで第2の鎖錠機構13が解錠される。
【0013】
図3を併せて参照して、前記シリンダ錠10は、略円筒状に形成された固定のシリンダボディ14と、該シリンダボディ14に挿入されるロータ15とを備え、該ロータ15は、正規のメカニカルキー11による回動操作に応じて、中立位置Nと、第1および第2作動位置S1,S2との間で回動することが可能である。
【0014】
前記シリンダボディ14は、大径円筒部14aと、該大径円筒部14aの前端(図1の左端)から半径方向外方に張り出す鍔部14bと、前記大径円筒部14aの後端から半径方向内方に張り出す規制鍔部14cと、該規制鍔部14cの内周に前端を連ならせて大径円筒部14aと同軸に配置される小径円筒部14dと、小径円筒部14dの後端部の上部に面一に連なる大円弧部14eと、大円弧部14eの後端部に大円弧部14eよりも小さな角度範囲で面一に連なる小円弧部14fとを一体に有するように形成される。
【0015】
このシリンダボディ14の大径円筒部14a内には、前端を開放した第1シリンダ孔16と、第1シリンダ孔16よりも小径に形成されて第1シリンダ孔16の後端に同軸に連なる第2シリンダ孔17とが形成され、前記小径円筒部14dには、第2シリンダ孔17よりも小径に形成されて第2シリンダ孔17の後端に同軸に連なる第3シリンダ孔18が形成される。
【0016】
また前記シリンダボディ14の前端部には、リング状であるアウターキャップ21がその内周部を第1シリンダ孔16の前端よりも内方に張り出すようにしつつ外周を前記鍔部14bの外周にかしめ結合するようにして固定される。
【0017】
前記ロータ15は、前記シリンダボディ14の規制鍔部14cに前方から摺接する環状の摺接段部15aを有して第1〜第3シリンダ孔16〜18に回動可能に挿入されるものであり、このロータ15には、前記メカニカルキー11を挿入可能な有底のキー孔22がロータ15の前端に開口するようにして設けられる。またロータ15の前端部には、前記キー孔22に対応した開口部24を有するインナーキャップ23が装着されており、該インナーキャップ23には、前記メカニカルキー11の前記キー孔22への挿入を可能としたカバー25が、前記開口部24を閉じる側にばね付勢されつつ回動可能に取付けられる。而して前記ロータ15は、前記アウターキャップ21と、前記規制鍔部14cとで軸方向の移動が規制されるようにしてシリンダボディ14内に挿入されることになる。
【0018】
前記シリンダボディ14の大径円筒部14aには、第2シリンダ孔17の内周に開口して軸方向に延びる一対の係合溝27,27が、第1シリンダ孔16の内周面に面一に連なるようにしつつ周方向に間隔をあけて設けられ、この実施の形態では、自動二輪車に固定された状態にある前記シリンダボディ14の上下に分かれて配置されるようにして前記シリンダボディ14に係合溝27…が設けられる。一方、前記ロータ15には、前記係合溝27…に係合し得る複数のタンブラー28…が前記係合溝27…に係合する方向に弾発付勢されながら配設され、正規のメカニカルキー11を前記キー孔22に挿入するのに応じて前記各タンブラー28…は係合溝27…との係合を解除する側に変位し、それによりロータ15の回動が可能となる。
【0019】
しかも第1および第2シリンダ孔16,17間の連設部よりも前方で前記シリンダボディ14には、第1シリンダ孔16の内周から内方に突出する規制突部29が一体に設けられ、第1シリンダ孔16内で前記ロータ15の外周には、前記規制突部29の周方向一側面に当接して前記ロータ15の第1作動位置S1を定めるとともに前記規制突部29の周方向他側面に当接して前記ロータ15の第2作動位置S2を定める突部30が一体に突設される。
【0020】
また前記シリンダボディ14における前記規制鍔部14cの下部には、大径円筒部14a内からの水抜きを行うための第1水抜き孔31が、前記両係合溝27…のうち下方の係合溝27に連なるようにして設けられる。
【0021】
前記集中解錠操作装置は、前記シリンダボディ14および前記ロータ15に加えて、前記ロータ15を前記中立位置N側に向けて付勢するスプリング32と、前記ロータ15の前記中立位置Nから第1作動位置S1側への回動時には第1の鎖錠機構12を解錠するようにして前記ロータ15とともに回動するものの前記ロータ15の前記中立位置Nから第2作動位置S2側への回動時には静止したままとなる第1作動アーム33と、前記ロータ15の前記中立位置Nから第2作動位置S2側への回動時には第2の鎖錠機構13を解錠するようにして前記ロータ15とともに回動するものの前記ロータ15の前記中立位置Nから第1作動位置S1側への回動時には静止したままとなる第2作動アーム34とを備える。
【0022】
第1作動アーム33には第1受圧部35が設けられ、第2作動アーム34には第2受圧部36が設けられる。一方、前記ロータ15にはカム部37が設けられており、前記ロータ15の中立位置Nから第1作動位置S1側への回動時に第1受圧部35に当接して押圧力を及ぼす第1押圧面38と、前記ロータ15の中立位置から第2作動位置S2側への回動時に第2受圧部36に当接して押圧力を及ぼす第2押圧面39とが前記カム部37に形成される。
【0023】
前記ロータ15の後端部には、前記シリンダボディ14における大円弧部14eおよび小円弧部14f内を後方に延びる駆動軸部15bが同軸にかつ一体に連設されており、この駆動軸部15bの外周に、大円弧部14eおよび小円弧部14fの内周に外周を摺接させる前記カム部37が前記駆動軸部15bの軸方向全長にわたって設けられ、第1および第2押圧面38,39は前記駆動軸部15bの周方向に沿って相互に反対側に臨むようにして前記カム部37に形成される。
【0024】
図4および図5を併せて参照して、第1作動アーム33は、小径円筒部分40aならびに小径円筒部分40aよりも大径に形成される大径円筒部分40bを有して段付きの円筒状に形成される第1円筒部40と、第1円筒部40における小径円筒部分40aから半径方向外方に張り出す第1アーム部41とを一体に有するように形成されるものであり、第1アーム部41の先端部に、第1の鎖錠機構12に連なるワイヤ42等の伝動手段が連結される。
【0025】
第1円筒部40の小径円筒部分40aは、前記シリンダボディ14の小径円筒部14dおよび大円弧部14eの一部を摺動可能に嵌合せしめて小径円筒部14dおよび大円弧部14eを同軸に囲繞するように形成され、小径円筒部分40aの前端はシリンダボディ14における規制鍔部14cに摺接される。また第1円筒部40の大径円筒部分40bは、前記シリンダボディ14における大円弧部14eの残部および小円弧部14fの外周との間に間隙43を形成するようにして、大円弧部14eおよび小円弧部14fよりも大径に形成され、大径円筒部分40bの下部には、軸方向に延びるスリット状の第2水抜き孔44が設けられる。
【0026】
第1受圧部35は、前記駆動軸部15bの外周のカム部37が設けられる部分から外れた位置で、第1作動アーム33の第1円筒部40における小径円筒部分40aの内周から半径方向内方に突出するようにして第1作動アーム33に一体に設けられるものであり、第1受圧部35の一部が、前記大円弧部14eの周方向両端間に位置するようにして第1円筒部40における大径円筒部分40b側に延出される。そして第1受圧部35は、前記駆動軸部15bの周方向に沿う前記カム部37の一側側面に形成される第1押圧面38に当接可能となる。
【0027】
図6を併せて参照して、第2作動アーム34は、前端部を第1円筒部40における大径円筒部分40bの後部に相対回動可能に嵌合せしめる第2円筒部45と、前記駆動軸部15bを同軸に貫通せしめるようにして第2円筒部45内に同軸に配置される支持円筒部46と、第2円筒部45および前記支持円筒部46の後端間を結ぶリング板状の端壁部47と、第1円筒部40における大径円筒部分40bの後端に摺接するようにして第2円筒部45の前部から半径方向外方に張り出す鍔部48と、第2円筒部45から半径方向外方に張り出す第2アーム部49とを一体に有するように形成されるものであり、第2アーム部49の先端部に、第2の鎖錠機構13に連なるワイヤ50等の伝動手段が連結される。
【0028】
第2作動アーム34における支持円筒部46の後端から外方に突出した部分で前記駆動軸部15bには前記端壁部47の外面に当接、係合する止め輪51が装着される。すなわち第1および第2作動アーム33,34は、シリンダボディ14の規制鍔部14cと、駆動軸部15bに装着された止め輪51とで軸方向位置が規制されるようにしてシリンダボディ14および駆動軸部15bで回動可能に支承される。
【0029】
第2受圧部36は、前記駆動軸部15bの外周のカム部37が設けられる部分から外れた位置で、第2円筒部45の内周および支持円筒部46の外周間にわたるようにして第2作動アーム34に一体に設けられるものであり、第2受圧部36の一部は、前記小円弧部14fの周方向両端間に位置するようにして第1円筒部40における大径円筒部分40b側に延出される。そして第2受圧部36は、前記駆動軸部15bの周方向に沿う前記カム部37の他側側面に形成される第2押圧面39に当接可能となる。
【0030】
ところで前記カム部37は、前記ロータ15の中立位置Nから第1作動位置S1側への回動時には第2受圧部36への当接を回避するとともに前記ロータ15の中立位置Nから第2作動位置S2側への回動時には第1受圧部35への当接を回避するように形成されるものであり、第2押圧面39は、前記カム部37の後部に形成され、第2押圧面39よりも前方側で前記カム部37には、前記ロータ15の中立位置Nから第2作動位置S2側への回動時に第1受圧部35のカム部37への当接を回避するための切欠き52が形成される。
【0031】
また第1受圧部35を第1押圧面38に当接させるとともに第2受圧部36を第2押圧面39に当接させる方向に第1および第2作動アーム33,34を付勢する前記スプリング32は、ねじりばねであり、前記間隙43に配置されるようにして第1円筒部40の大径円筒部分40b内に収容され、第1作動アーム33の第1受圧部35と、第2作動アーム34の第2受圧部36との間に設けられる。
【0032】
また前記ロータ15が中立位置Nにあるときに第1押圧面38と同一側から第1受圧部35に当接する第1規制部55と、第2押圧面39と同一側から第2受圧部36に当接する第2規制部56とが前記シリンダボディ14に設けられるものであり、第1規制部55は、シリンダボディ14における大円弧部14eの周方向に沿う一端に形成され、第2規制部56は、シリンダボディ14における小円弧部14fの周方向に沿う他端に形成される。
【0033】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、ロータ15の中立位置Nから第1作動位置S1側への回動時に第1作動アーム33の第1受圧部35に当接して押圧力を及ぼす第1押圧面38と、前記ロータ15の中立位置Nから第2作動位置側への回動時に第2作動アーム34の第2受圧部36に当接して押圧力を及ぼす第2押圧面39とが、前記ロータ15の中立位置Nから第1作動位置S1側への回動時には第2受圧部36への当接を回避するとともに前記ロータ15の中立位置Nから第2作動位置S2側への回動時には第1受圧部35への当接を回避する形状を有して前記ロータ15の駆動軸部15bに設けられるカム部37に形成され、前記スプリング32が、第1受圧部35を第1押圧面38に当接させるとともに第2受圧部36を第2押圧面39に当接させる方向に第1および第2作動アーム34を付勢するようにして第1および第2作動アーム33,34間に設けられ、前記ロータ15が中立位置Nにあるときに第1押圧面38と同一側から第1受圧部35に当接する第1規制部55と、第2押圧面39と同一側から第2受圧部36に当接する第2規制部56とがシリンダボディ14に設けられている。
【0034】
したがって図7で示すように、前記ロータ15を中立位置Nから第1作動位置S1に回動したときには、第1押圧面38で第1受圧部35を押した状態で、第1作動アーム33にはスプリング32のスプリング力が元に戻る側に向けて作用したままであり、前記ロータ15には第1受圧部35からカム部37を介して戻り方向のスプリング力が作用しているので、メカニカルキー11によるロータ15の回動操作力を解放すると、シリンダボディ14に設けられた第1規制部55に第1受圧部35を当接させる中立位置まで前記ロータ15が戻ることになる。
【0035】
また図8で示すように、前記ロータ15を中立位置Nから第2作動位置S2に回動したときには、第2押圧面39で第2受圧部36を押した状態で、第2作動アーム34にはスプリング32のスプリング力が元に戻る側に向けて作用したままであり、前記ロータ15には第2受圧部36からカム部37を介して戻り方向のスプリング力が作用しているので、メカニカルキー11によるロータ15の回動操作力を解放すると、シリンダボディ14に設けられた第2規制部56に第2受圧部36を当接させる中立位置まで前記ロータ15が戻ることになる。
【0036】
すなわちロータ15の回動によって第1および第2押圧面38,39の一方で第1および第2受圧部35,36の一方を押した状態で、第1および第2作動アーム33,34の一方にはスプリング32のスプリング力が元に戻る側に向けて作用したままであり、ロータ15には第1および第2受圧部35,36の一方からカム部37を介して戻り方向のスプリング力が作用するので、ロータ15に加えた回動操作力を解放すると、ロータ15と、回動作動した作動アーム33,34とは、第1および第2規制部55,56の一方で規制される中立位置まで戻ることになり、作動アーム33,34の回動位置と、ロータ15すなわちメカニカルキー11の回動位置とが一致しているので、作動アーム33,34が元に戻ったことは外部から容易に確認可能である。このことにより、第1の鎖錠機構12または第2の鎖錠機構13が正常に作動し、原位置に戻ったことの確認が行えることになる。
【0037】
作動アーム33,34が万一戻らないときにはロータ15のカム部37にスプリング力が作用しない状態となり、ロータ15に挿入されたメカニカルキー11はロータ15とともに元の中立位置にスプリング力で戻ることはなく、メカニカルキー11をシリンダ錠10から抜くことができず、またメカニカルキー11がロータ15とともに戻ったとしてもスプリング力が作用していないのでメカニカルキー11およびロータ15の回動がフリーとなり、ガタガタと回動することができるようになるので、作動アーム33,34が元の中立位置に戻っていないことを容易に判別することができる。
【0038】
さらに第1作動アーム33が備える第1円筒部40と、第2作動アーム34が備える第2円筒部45とが、第2円筒部45の一部を第1円筒部40内に相対回動可能に嵌合させるようにして前記ロータ15と同軸に配置され、第1円筒部40内にスプリング32が収容されるので、雨水や塵埃がスプリング32にかかることを抑制し、スプリング32の錆び付きや、スプリング32への塵埃の噛み込みが生じることがないようにして、スプリング32の作動を円滑化することができるとともに耐久性の向上を図ることができる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0040】
11・・・メカニカルキー
12・・・第1の鎖錠機構
13・・・第2の鎖錠機構
14・・・シリンダボディ
15・・・ロータ
32・・・スプリング
33・・・第1作動アーム
34・・・第2作動アーム
35・・・第1受圧部
36・・・第2受圧部
37・・・カム部
38・・・第1押圧面
39・・・第2押圧面
40・・・第1円筒部
45・・・第2円筒部
55・・・第1規制部
56・・・第2規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定のシリンダボディ(14)と、正規のメカニカルキー(11)による回動操作に応じて中立位置ならびに該中立位置の両側に設定される第1および第2作動位置間で回動することを可能として前記シリンダボディ(14)に挿入されるロータ(15)と、該ロータ(15)を前記中立位置側に向けて付勢するスプリング(32)と、前記ロータ(15)の前記中立位置から第1作動位置側への回動時には第1の鎖錠機構(12)を解錠するようにして前記ロータ(15)とともに回動するものの前記ロータ(15)の前記中立位置から第2作動位置側への回動時には静止したままとなる第1作動アーム(33)と、前記ロータ(15)の前記中立位置から第2作動位置側への回動時には第2の鎖錠機構(13)を解錠するようにして前記ロータ(15)とともに回動するものの前記ロータ(15)の前記中立位置から第1作動位置側への回動時には静止したままとなる第2作動アーム(34)とを備える集中解錠操作装置において、第1作動アーム(33)に第1受圧部(35)が設けられ、第2作動アーム(34)に第2受圧部(36)が設けられ、前記ロータ(15)の中立位置から第1作動位置側への回動時に第1受圧部(35)に当接して押圧力を及ぼす第1押圧面(38)と、前記ロータ(15)の中立位置から第2作動位置側への回動時に第2受圧部(36)に当接して押圧力を及ぼす第2押圧面(39)とが、前記ロータ(15)の中立位置から第1作動位置側への回動時には第2受圧部(36)への当接を回避するとともに前記ロータ(15)の中立位置から第2作動位置側への回動時には第1受圧部(35)への当接を回避する形状を有して前記ロータ(15)に設けられるカム部(37)に形成され、前記スプリング(32)が、第1受圧部(35)を第1押圧面(38)に当接させるとともに第2受圧部(36)を第2押圧面(39)に当接させる方向に第1および第2作動アーム(33,34)を付勢するようにして第1および第2作動アーム(33,34)間に設けられ、前記ロータ(15)が中立位置にあるときに第1押圧面(38)と同一側から第1受圧部(35)に当接する第1規制部(55)ならびに第2押圧面(39)と同一側から第2受圧部(36)に当接する第2規制部(56)が前記シリンダボディ(14)に設けられることを特徴とする集中解錠操作装置。
【請求項2】
第1作動アーム(33)が備える第1円筒部(40)と、第2作動アーム(34)が備える第2円筒部(45)とが、第2円筒部(45)の一部を第1円筒部(40)内に相対回動可能に嵌合させるようにして前記ロータ(15)と同軸に配置され、第1円筒部(40)内に前記スプリング(32)が収容されることを特徴とする請求項1記載の集中解錠操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−132253(P2012−132253A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286597(P2010−286597)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000155067)株式会社ホンダロック (164)
【Fターム(参考)】