説明

集光モジュールおよびこれを用いた集光ユニット

【課題】従来の集光モジュールは、太陽光の集光効率、特に太陽の日周運動に対する集光効率に関して改善する余地がある。
【解決手段】光入射面部14およびその反対側に位置する裏面部15ならびに光出射面部16を有する導光部材11と、この導光部材11の裏面部15に対して隙間を隔てて対向するように配され、かつ裏面部15から出射した光を裏面部15から再び導光部材11内に入射させる光反射部材12とを具えた本発明による集光モジュール10は、光入射面部14および裏面部15の少なくとも一方が、相互に逆向きに傾斜する一対の傾斜面15aと、これら一対の傾斜面15aによって画成される稜部15bとを含み、導光部材11の厚みを第1の方向に沿って光出射面部16側ほど厚く、かつ第2の方向に沿って稜部15bから離れるほど薄く設定し、裏面部15と光反射部材12との間の間隔を第1の方向に沿って光出射面部16側ほど広がるように設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光などの光エネルギーを集める集光モジュールおよびこの集光モジュールを用いた集光ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光の光エネルギーを電力に変換する太陽光発電装置においては、光電変換素子の変換効率を高めることはもちろん、できるだけ効率よく光エネルギーを光電変換素子に導くことができるようにすることが望まれる。このため、太陽の日周運動に追従する太陽追尾装置を用いて受光面が常に太陽を向くようにしたり、この受光面全体に光電変換素子を配したりすることも行われている。
【0003】
しかしながら、高価な太陽追尾装置を用いたり、太陽光の受光面全体に高価な光電変換素子を配することは、何れも設備コストの上昇につながり、太陽光発電装置の普及を妨げる要因の一つとなる。そこで、受光面を太陽の日周運動に対して固定する一方、太陽光の光エネルギーを集光状態で光電変換素子に導くことによって、高価な光電変換素子の使用量を抑えると同時に設備の簡便化を企図した太陽光発電装置が提案されている。このような太陽光発電装置においては、効率よく太陽光を集光してこれを光電変換素子に導くため、例えば特許文献1や特許文献2などで開示されたような集光モジュールが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−218540号公報
【特許文献2】特開2007−27423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に開示された集光モジュールに関し、太陽光の集光効率、特に太陽の日周運動に対する集光効率をさらに改善する余地がある。
【0006】
本発明の目的は、固定状態で配した場合であっても、太陽の日周運動に対する集光効率を従来のものよりも高めることができる集光モジュールおよびこの集光モジュールを用いた集光ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の形態は、第1の方向とこの第1の方向に対して交差する第2の方向とに沿って延在する光入射面部と、この光入射面部の反対側に位置し、かつ前記第1および第2の方向に沿って延在する裏面部と、前記第1の方向に沿った一端側に位置し、かつ前記第1および第2の方向に対して交差する第3の方向と前記第2の方向とに沿って延在する光出射面部とを有する導光部材と、この導光部材の前記裏面部に対して隙間を隔てて対向するように配され、前記裏面部から出射した光を当該裏面部から再び前記導光部材内に入射させる光反射部材とを具え、前記導光部材の光入射面部および前記裏面部の少なくとも一方は、前記第1の方向に対して直交する面内で相互に逆向きに傾斜する一対の傾斜面と、これら一対の傾斜面によって画成され、かつ前記第1の方向に沿って延在する稜部とを含み、前記導光部材の厚みは、前記第1の方向に沿って前記光出射面部側ほど厚く設定され、かつ前記第2の方向に沿って前記稜部から離れるほど薄く設定され、前記導光部材の裏面部と前記光反射部材との間の間隔は、前記第1の方向に沿って前記光出射面部側ほど広がるように設定されていることを特徴とする集光モジュールにある。
【0008】
本発明においては、光入射面部から導光部材内に入射した光がその裏面部と光入射面部との間を全反射しながら導光部材内を伝播し、光出射端面部から導光部材の外へと出射する。導光部材内を伝播する光の一部が裏面部から導光部材の外に出射した場合、この光は光反射部材によって再び裏面部から導光部材内に導かれ、再度光入射面部と裏面部との間で全反射を繰り返し、光出射端面部に向けて導光部材内を伝播する。光入射面部から導光部材内に入射した光は、最終的に光出射端面部から導光部材の外へとすべて出射する。一対の傾斜面は、ここで全反射する光を稜部側に偏向させ、稜部近傍ほど光エネルギーの密度を高める。
【0009】
本発明の第1の形態による集光モジュールにおいて、一対の傾斜面およびその稜部を導光部材の裏面部に形成し、導光部材の裏面部と光反射部材との間の間隔を第2の方向に沿って稜部から離れるほど狭まるように設定することが好ましい。
【0010】
導光部材の光入射面部を覆い、波長選択透過性を持つフィルタをさらに具えることができる。
【0011】
導光部材が光出射面部の反対側に位置し、かつ第1の方向とこの第1の方向に対して交差する第2の方向とに沿って延在する光反射面部をさらに有するものであってよい。
【0012】
本発明の第2の形態は、上述した本発明の第1の形態による複数の集光モジュールと、これら複数の集光モジュールを囲むように配される光誘導部材とを具え、前記集光モジュールを構成する個々の前記導光部材の光入射面部の輪郭形状がそれぞれ扇形をなすと共に前記光出射面部が円弧面となり、これらが点対称に配されて全体として円形となっており、前記光誘導部材は、前記導光部材の光出射面部に沿って環状に巻回された少なくとも1本の光ファイバと、この光ファイバと前記導光部材の光出射面部との間に配されて前記導光部材の光出射面部から出射する光を前記光ファイバの外周からこの光ファイバ内へと誘導するための光案内ブロックとを有することを特徴とする集光ユニットにある。
【0013】
本発明においては、個々の導光部材の光入射面部から導光部材内に入射した光がその裏面部と光入射面部との間を全反射しながら全体として集光ユニットの径方向外側へと導光部材内を伝搬する。個々の導光部材の光入射面部から導光部材内に入射した光は、最終的に集光ユニットの外周縁に位置する個々の導光部材の出射端面部から導光部材の外へと出射し、ここから光誘導部材を介して光ファイバ内へと導かれる。
【0014】
本発明の第3の形態は、円柱状の光入射面部を有する光誘導部材と、この光誘導部材を囲むように配される請求項5に記載の複数の集光モジュールとを具え、これら集光モジュールを構成する個々の前記導光部材の光入射面部の輪郭形状がそれぞれ扇形状をなし、個々の前記導光部材の前記光入射面部が前記光誘導部材の光入射面部に密着すると共に光反射面部が円弧面となり、これら前記光誘導部材を中心として点対称に配され、全体として環状となっていることを特徴とする集光ユニットにある。
【0015】
本発明においては、個々の導光部材の光入射面部から導光部材内に入射した光がその裏面部と光入射面部との間を全反射しながら全体として集光ユニットの径方向内側へと導光部材内を伝搬する。個々の導光部材の光入射面部から導光部材内に入射した光は、最終的に集光ユニットの内周側に位置する個々の導光部材の出射端面部から導光部材の外へと出射し、ここから光誘導部材へと導かれる。
【0016】
本発明の第3の形態による集光ユニットにおいて、光誘導部材がその長手方向一端部に円錐状に窪んだ光反射面を有するものであってよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の集光モジュールによると、相対的に広い面積を持つ導光部材の光入射面部から導光部材内に入射した光を稜線部に沿って相対的に狭い面積を持つ光出射面部側へと集光状態で伝播させることができる。この結果、光入射面部から導光部材内に入射した光を光出射面部から導光部材の外側へ効率よく出射させることができる。
【0018】
一対の傾斜面およびその稜部を導光部材の裏面部に形成し、この裏面部と光反射部材との間の間隔を第2の方向に沿って稜部から離れるほど狭まるように設定した場合、光反射部材により再び導光部材内に入射する光を稜部近傍へと収束させることができる。
【0019】
導光部材の光入射面部を覆い、波長選択透過性を持つフィルタをさらに具えた場合、導光部材や光反射部材などの劣化をもたらす有害な電磁波を遮断することができる。
【0020】
導光部材が光出射面部の反対側に位置し、かつ第1の方向とこの第1の方向に対して交差する第2の方向とに沿って延在する光反射面部をさらに有する場合、導光部材内を伝播して光反射面部に達した光が導光部材の外に漏洩するのを未然に防止することができる。この結果、光反射面部にて反射した光を効率よく光出射面部側へと導くことが可能となる。
【0021】
本発明の第2の形態の集光ユニットによると、個々の導光部材の光入射面部から導光部材内に入射した光を集光ユニットの径方向外側へと導光部材内を伝搬させることができる。この結果、各導光部材内を伝播する光を集光ユニットの外周縁に位置する個々の導光部材の出射端面部から導光部材の外へと放射状に出射させ、ここから光誘導部材を介して光ファイバ内へと導くことができる。
【0022】
本発明の集光ユニットによると、個々の導光部材の光入射面部から導光部材内に入射した光を集光ユニットの径方向内側へと導光部材内を伝搬させることができる。この結果、各導光部材内を伝播する光を集光ユニットの中央側に位置する個々の導光部材の出射端面部から光誘導部材へと導くことができる。
【0023】
光誘導部材がその長手方向一端部に円錐状に窪んだ光反射面を有する場合、この光誘導部材に入射光をその長手方向他端部に向けて反射させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による集光モジュールの一実施形態の外観を分解状態で表す立体投影図である。
【図2】図1に示した実施形態における導光部材の稜部に沿った断面図である。
【図3】図2中のIII−III矢視断面図である。
【図4】図1に示した実施形態の平面図である。
【図5】本発明による集光ユニットの一実施形態の外観を表す平面図である。
【図6】図5に示した実施形態における集光ユニットの対称軸に沿った一部抽出拡大断面図である。
【図7】図5に示した実施形態における集光ユニットの一部抽出拡大平面図である。
【図8】本発明による集光ユニットの他の実施形態の外観を表す平面図であり、光反射部材を取り外した状態を示す。
【図9】図8に示した実施形態における集光ユニットの対称軸に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を太陽光集光装置に応用した実施形態について、図1〜図9を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、本発明はこのような実施形態のみに限らず、必要に応じてこれらをさらに組み合わせたり、本発明の精神に帰属する他の任意の技術にも応用することができる。
【0026】
本発明による集光モジュールの一実施形態の外観を分解状態で図1に示し、その平面形状を図2に示し、そのIII−III矢視断面形状を図3に示し、図2中のIV−IV矢視断面形状を図4にそれぞれ示す。
【0027】
本実施形態における集光モジュール10は、光学的に透明な導光部材11と、アルミニウムなどの金属板から作成される光反射部材12と、光電変換器13とを具えている。導光部材11としては、屈折率nが1.49のPMMA(ポリメチルメタクリレート)の他に、n=1.53のCOP(シクロオレフィンポリマー)や、n=1.59のPC(ポリカーボネート),n=1.51程度のガラスなどを採用し得るが、耐光性や成形性あるいは加工性に優れたものであることが好ましいと言えよう。
【0028】
導光部材11は、矩形の平坦な光入射面部14と、この光入射面部14の反対側に位置する裏面部15と、光出射面部16と、この光出射面部16の反対側に位置する光反射面部17と、一対の側端面部18とを有する。光入射面部14は、第1の方向(図2中、左右方向)とこの第1の方向に対して交差する第2の方向(図2中、上下方向)とに沿って延在する。裏面部15は、第1および第2の方向に沿って延在する。光出射面部16は、第1の方向に沿った一端側に位置し、第1および第2の方向に対して交差する第3の方向(図3中、上下方向)と第2の方向とに沿って延在する。光反射面部17は、第1の方向とこの第1の方向に対して交差する第2の方向とに沿って延在する。一対の側端面部18は、第1の方向と第3の方向とに沿って延在し、第2の方向に関して相互に反対側に位置する。
【0029】
なお、本実施形態では、光入射端面部14を平坦な面としたが、全体を凸状に湾曲させたり、微小な凸レンズが整列するマイクロレンズアレイをその表面に一体的に形成することも有効である。また、光反射面部17や一対の側端面部18を省略する、つまり第3の方向に沿った光反射面部17および一対の側端面部18の高さ寸法を実質的に0に設定することができる。また、第3の方向に沿った一対の側端面部18の高さ寸法を第1の方向に沿って光出射面部16側ほど大きくなるように設定することも可能である。
【0030】
本実施形態における導光部材11の裏面部15は、第1の方向に対して直交する面内で相互に逆向きに傾斜する一対の傾斜面15aと、これら一対の傾斜面15aによって画成され、かつ第1の方向に沿って延在する稜部15bとで画成されている。光入射面部14に対する一対の傾斜面15aの傾斜角αは、相互に逆向きで等しく設定されており、つまり、第3の方向に沿った導光部材11の厚みは、第2の方向に沿って稜部15bから離れるほど薄く設定されている。また、導光部材11の一対の側端面部18から稜部15bまでの距離は、相互に等しく設定されている。なお、光反射面部17の高さ寸法を実質的に0に設定した場合、光入射面部14に対する一対の傾斜面15aの傾斜角αは、第1の方向に沿って光出射面部16側ほど大きく設定され、本実施形態では0度から連続的に変化している。このため、傾斜面15aが第1の方向に沿ってねじれた湾曲面となることに注意されたい。これら一対の傾斜面15aおよび稜部15bを導光部材11の光入射面部14に形成することも可能である。この場合、導光部材11の裏面部15が平坦面であっても、あるいは上述したような一対の傾斜面15aと稜部15bとを有するものであってもかまわない。
【0031】
第3の方向に沿った導光部材11の厚みは、第1の方向に沿って光出射面部16側ほど厚く設定されており、稜部15bは導光部材11の光入射面部14に対して角度βにて傾斜している。従って、導光部材11内を伝播して一対の傾斜面15aにて全反射する光Lは、ここに入射する光よりも基本的に光出射面部16側に向けて全反射すると同時に光入射面部14から離れる方向に全反射することとなる。
【0032】
本実施形態における導光部材11の光入射面部14の表面には、導光部材11の光入射面部14を覆う波長選択透過性を持つ多層膜14aが本発明におけるフィルタとして形成されている。この多層膜14aは、導光部材11の劣化を早める紫外線や赤外線などを反射する機能を有していればよい。この多層膜14aに代えて矩形の板状をなす光学フィルタを導光部材11の光入射面部14を覆うように配することも可能であり、任意の所望の波長に対する選択透過性を有していることが好ましい。
【0033】
光反射部材12は、導光部材11の裏面部15,光反射面部17,側端面部18に対してそれぞれ隙間を隔てて対向するように配され、導光部材11の光入射面部14以外から出射した光を再び導光部材11内に入射させる機能を有する。このため、導光部材11と対向する光反射部材12の表面12aは光学的な反射面となる鏡面であることが好ましい。導光部材11の裏面部15と光反射部材12との間の第2の方向に沿った間隔は、第1の方向に沿って光出射面部16側ほど広がるように設定されている。また、この間隔は、第2の方向に沿って稜部15bから離れるほど狭まるようにも設定されている。光反射部材12の表面12aの傾斜は、導光部材11の傾斜面15aの傾斜よりも全体的に10度以下の範囲で急勾配に設定されている。従って、光反射部材12にて反射する光は、ここに入射した光よりも基本的に光出射面部16側に向けて反射すると同時に光入射面部14から離れる方向に反射することとなる。
【0034】
光電変換器13は、導光部材11と光反射部材12との間の空隙を塞ぐように、導光部材11の光出射面部16に対して密着状態で配される。本実施形態では光電変換器13の表面13aを矩形にしているが、第1の方向に沿った一端側の導光部材11および光反射部材12で形成される輪郭形状に対応した略三角形状であってもよい。この光電変換器13は、シリコン系や化合物系あるいは有機系などの一般的に太陽電池と呼称されるものであり、光エネルギーを電気エネルギーに変換する機能を有する。この光電変換器13の熱的劣化を防止するため、放熱機構や冷却機構などを一体的に組み込むことも可能である。
【0035】
このような集光モジュール10において太陽光を取り込む場合、理想的には春分点および秋分点における太陽の南中位置に対して導光部材11の光入射面部14が正対するように、地面または建物に対して集光モジュール10を傾斜状態で設置することが好ましい。しかしながら、周囲の建物の状況や設置の容易性などを考慮して導光部材11の光入射面部14が地面に対して水平となるように設置したり、あるいは導光部材11の入射端面が地面に対して垂直となるように設置したりすることも可能である。導光部材11の光入射面部14を地面に対して水平に設置する場合、第1の方向が南北方向となり、かつ光電変換器13が北側に位置するように集光モジュール10の向きを設定することが好ましい。また、導光部材11の光入射面部14を地面に対して垂直に設置する場合、導光部材11の光入射面部14を南に向け、かつ光電変換器13が下側となるように集光モジュール10の向きを設定することが好ましい。何れの場合においても、導光部材11の光入射面部14から導光部材11内に入射した光が光出射面部16へと伝播しやすくなるように、導光部材11の姿勢および向きを設定することが有効である。
【0036】
導光部材11を構成する材料の屈折率をnとした場合、平坦な光入射面部14から導光部材11内に入射する太陽光線Lのうち、裏面部15や光反射面部17,側端面部18に対して全反射臨界角以内で進行する光は、全反射を起して導光部材11内を伝播する。そして、光入射面部14に対して全反射臨界角以内で入射する光も同様に、ここで全反射を起して導光部材11内を再び伝播する。これに対し、全反射臨界角を越える光のうち、光入射面部14から導光部材11の外に出射する以外の光は、光反射部材12に向けて導光部材11の外に出射し、光反射部材12の表面12aで反射して再び裏面部15や光反射面部17,側端面部18から導光部材11の内部に入射することとなる。このようにして、光入射面部14から導光部材11の内部に入射した光の大部分は、最終的に光出射面部16から導光部材11の外側へと出射し、つまり光電変換器13へと導かれて電気エネルギーに変換され、電力として供される。ここで、光電変換器13の表面13aの面積が導光部材11の光入射面部14の面積に対して充分に小さいことに注意すべきである。つまり、導光部材11はその光入射面部14から導光部材11内に入射した光を集光状態で光出射面部16に導くものであり、高価な光電変換器13の使用量を削減して製造コストを低減させることができる。
【0037】
上述したような集光モジュール10を多数用意してこれらを整列状態で配置すると共に個々の光電変換器13を電気的に接続した集光ユニットとして用いることも可能である。
【0038】
導光部材11の光入射面部14の輪郭形状は矩形に限らず、任意の形状にすることが可能である。例えば、二等辺三角形や円の一部を切り取った扇形にすることができ、これらを組み合わせて全体として円形の集光ユニットを構成することも可能である。このような本発明による集光ユニットの一実施形態の平面形状を図5に示し、その一部を抽出拡大して図6に示し、そのVII−VII矢視断面形状を図7に示すが、先の実施形態と同一機能の要素には、これと同一符号を記すに止め、重複する説明を省略する。
【0039】
本実施形態における集光ユニット20は、複数の集光モジュール10と、これら複数の集光モジュール10を囲むように配される光誘導部材21とを具える。集光モジュール10を構成する個々の導光部材11の光入射面部14の輪郭形状は、その光反射面部17が線状に収束すると共に光出射面部16が円弧面となった扇形をなす。これら扇形をなす導光部材11の一対の側端面部18が相互に接合して全体として円形となっている。つまり、個々の導光部材11は、集光ユニット20の平面形状に関し、これらの光反射面部17を中心として点対称に配された状態となっており、本実施形態では個々の導光部材11を接合することなく、一体成形によってこれらを円形に形成している。裏面部15に形成された稜部15bは、集光モジュール10の中心、つまり対称軸線となる光反射面部17から径方向外側の円弧状をなす光出射面部16に向けて延在し、光出射面部16は集光モジュール10の外周面を画成する。
【0040】
光誘導部材21は、導光部材11の光出射面部16に沿ってこれを囲むように環状に巻回された少なくとも1本の光ファイバ22と、この光ファイバ22と導光部材11の光出射面部16との間に配された光案内ブロック23とを有する。この光案内ブロック23は、導光部材11の光出射面部16から出射する光を光ファイバ22の外周からこの光ファイバ22内へと誘導するためのものである。光ファイバ22は、コア部22aと、このコア部22aよりも低屈折率のクラッド部22bとを有する一般的なものであってよく、クラッド部22bと同程度の屈折率を有するモールド材24にて全体の断面がほぼ矩形に成形されている。図示しない光ファイバ22の端部は、この集光ユニット20から引き出されて図示しないエネルギー回収手段、例えば光電変換器やレーザー発振器などに接続している。この場合、光ファイバ22を光増幅器またはレーザー共振器として利用することも可能である。光増幅器として用いる場合には、その一端側から微弱なシード光を導入させることにより、その他端側から高出力のエネルギービームを取り出すことが可能となる。その詳細については特開平10−135548号公報などで周知である。また、レーザー共振器として用いる場合、光ファイバ22の両端面に所定の反射率を持たせて全体を共振器として機能させるか、あるいは発振閾値を低くするために光ファイバの両端にFBG(ファイバブラッググレーティング)と呼称される共振器を接続する形態を採用することができる。このような光ファイバレーザーに関する技術は、例えば特開平11−238928号公報などで周知である。
【0041】
光案内ブロック23は、導光部材11の光反射面部17(対称軸線)と稜部15bとを含む面に対して対称な形状を有する。この光案内ブロック23は、光学的に透明な材料にて形成され、かつ導光部材11と同程度の屈折率を有し、モールド材24と同じ屈折率であってよい。本実施形態における光案内ブロック23は、光導入面部23aと、光誘導面部23bと、傾斜面部23cとを有する。光導入面部23aは、内周側が導光部材11の光出射面部16に接合され、光誘導面部23bは、外周側が光ファイバ22のモールド材24の内周面に接合される。傾斜面部23cは、この光案内ブロック23内を伝播する光を円周方向に全反射させるための機能を有する。従って、隣接する傾斜面部23cと光ファイバ22のモールド材24の内周面との間には略三角柱状をなす空隙25が形成され、本実施形態ではここを空気層としている。光案内ブロック23の屈折率をnとした場合、本実施形態では隣接する傾斜面部23cのなす角γをπ−2sin-1(1/n)よりも小さく設定することが有効である。
【0042】
なお、上述したような光誘導部材21に代えて集光モジュール10の外周面を覆うようにこれを取り囲む環状の光電変換器を採用することも可能である。
【0043】
本実施形態における光反射部材12は、その外周側が光ファイバ22を囲み、光案内ブロック23の上面側を覆う内フランジ部12bを有する。これによって、光案内ブロック23やモールド材24から外部に漏洩する光を再び光案内ブロック23およびモールド材24に戻して最終的に光ファイバ22へと導くことができ、光の損失が少なくなるように配慮している。
【0044】
本実施形態のような円形の集光ユニット20は、稜部15bが放射状となった全方向性を有しているため、先の実施形態のものよりも設置の向きなどに神経質になる必要はない。しかしながら、光入射面部14が太陽光線に対して垂直となる状態が最も長くなるように配することが基本的に好ましいと言える。従って、光入射面部14から導光部材11内に入射した光は、光出射面部16から光誘導部材21の光案内ブロック23に入り、ここから光誘導面部23bおよびモールド材24を介して光ファイバ22のコア部22aへと導かれるようになっている。
【0045】
上述した本実施形態では、導光部材11の径方向外側に入射光を導くようにしたが、逆に導光部材11の径方向内側に入射光を導くことも可能である。このような本発明による集光ユニット20の他の実施形態の平面形状を図8に示し、そのIX−IX矢視断面構造を図9に示すが、先の実施形態と同一機能の要素には、これと同一符号を記すに止め、重複する説明を省略する。
【0046】
本実施形態における集光ユニット20は、円柱状の光導入面部21aを有する光誘導部材21と、この光誘導部材21を囲むように配される複数の集光モジュール10とを具えている。これら集光モジュール10を構成する個々の導光部材11の光入射面部14の輪郭形状はそれぞれ扇形状をなし、光誘導部材21の光導入面部21aに密着する凹円弧状の光出射面部16と、その反対側の凸円弧状をなす光反射面部17とを有する。複数の導光部材11の隣接する一対の側端面部18が相互に接合して全体として環状をなし、稜部15bは光誘導部材21を中心として放射状に形成された状態となっている。従って、個々の導光部材11は、光誘導部材21を中心として点対称に配され、全体として環状となっている。本実施形態においても、先の実施形態と同様に、個々の導光部材11を接合することなく、一体成形によってこれらを環状に形成している。
【0047】
光誘導部材21は、その長手方向一端部に円錐状に窪んだ光反射面部21bを有し、この光反射面部21bを覆う円錐状の光反射部材26が光反射面部21bとの間に隙間27を形成するように配されている。光反射面部21bと対向する光反射部材26の表面(内側面)26aは、全反射せずに光反射面部21bから出射した光を再び光反射面部21bから光誘導部材21内に反射させるような鏡面に形成されており、先の光反射部材12と同様な機能を有する。光誘導部材21の光反射面部21bの中心角δは、光誘導部材21の屈折率をnとした場合、2sin-1(1/n)よりも大きいことが好ましい。なお、光反射部材26の内側面26aの中心角は、これよりもさらに大きくすることが有効である。光反射面部21bは、光導入面部21aから入射した光を光誘導部材21の長手方向他端部側へと全反射させる機能を有する。
【0048】
光誘導部材21の長手方向他端部には、レーザー発振器28が一体的に接合されている。このレーザー発振器28は、レーザー媒質28aと、このレーザー媒質28aの両端面に形成された一対の反射膜28bとを有し、これら一対の反射膜28bの間のレーザー媒質28a内にて反射を繰り返す光のエネルギーを増幅させることができる。
【0049】
従って、光入射面部14から導光部材11内に入射した光は、導光部材11の光出射面部16から光誘導部材21へと導かれる。そして、レーザー発振器28にて増幅されたレーザー光がその先端部側の反射膜28bを通過して放射され、これを産業的に利用することが可能となる。
【0050】
なお、本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のないあらゆる構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。
【符号の説明】
【0051】
10 集光モジュール
11 導光部材
12 光反射部材
12a 表面
12b 内フランジ部
13 光電変換器
13a 表面
14 光入射面部
14a 多層膜
15 裏面部
15a 傾斜面
15b 稜部
16 光出射面部
17 光反射面部
18 側端面部
20 集光ユニット
21 光誘導部材
21a 光導入面部
21b 光反射面部
22 光ファイバ
22a コア部
22b クラッド部
23 光案内ブロック
23a 光導入面部
23b 光誘導面部
23c 傾斜面部
24 モールド材
25 空隙
26 光反射部材
26a 内側面
27 隙間
28 レーザー発振器
28a レーザー媒質
28b 反射膜
L 光
α 光入射面部に対する傾斜面の傾斜角
β 光入射面部に対する稜部のなす角
γ 隣接する傾斜面部のなす角
δ 光反射面部の中心角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向とこの第1の方向に対して交差する第2の方向とに沿って延在する光入射面部と、この光入射面部の反対側に位置し、かつ前記第1および第2の方向に沿って延在する裏面部と、前記第1の方向に沿った一端側に位置し、かつ前記第1および第2の方向に対して交差する第3の方向と前記第2の方向とに沿って延在する光出射面部とを有する導光部材と、
この導光部材の前記裏面部に対して隙間を隔てて対向するように配され、前記裏面部から出射した光を当該裏面部から再び前記導光部材内に入射させる光反射部材と
を具え、前記導光部材の光入射面部および前記裏面部の少なくとも一方は、前記第1の方向に対して直交する面内で相互に逆向きに傾斜する一対の傾斜面と、これら一対の傾斜面によって画成され、かつ前記第1の方向に沿って延在する稜部とを含み、
前記導光部材の厚みは、前記第1の方向に沿って前記光出射面部側ほど厚く設定され、かつ前記第2の方向に沿って前記稜部から離れるほど薄く設定され、
前記導光部材の裏面部と前記光反射部材との間の間隔は、前記第1の方向に沿って前記光出射面部側ほど広がるように設定されていることを特徴とする集光モジュール。
【請求項2】
前記一対の傾斜面およびその稜部が前記導光部材の裏面部に形成され、前記導光部材の裏面部と前記光反射部材との間の間隔は、前記第2の方向に沿って前記稜部から離れるほど狭まるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の集光モジュール。
【請求項3】
前記導光部材の光入射面部を覆い、波長選択透過性を持つフィルタをさらに具えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の集光モジュール。
【請求項4】
前記導光部材は、前記光出射面部の反対側に位置し、かつ第1の方向とこの第1の方向に対して交差する第2の方向とに沿って延在する光反射面部をさらに有することを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の集光モジュール。
【請求項5】
請求項1から3の何れかに記載の複数の集光モジュールと、
これら複数の集光モジュールを囲むように配される光誘導部材と
を具え、前記集光モジュールを構成する個々の前記導光部材の光入射面部の輪郭形状がそれぞれ扇形をなすと共に前記光出射面部が円弧面となり、これらが点対称に配されて全体として円形となっており、
前記光誘導部材は、前記導光部材の光出射面部に沿って環状に巻回された少なくとも1本の光ファイバと、この光ファイバと前記導光部材の光出射面部との間に配されて前記導光部材の光出射面部から出射する光を前記光ファイバの外周からこの光ファイバ内へと誘導するための光案内ブロックとを有することを特徴とする集光ユニット。
【請求項6】
円柱状の光入射面部を有する光誘導部材と、
この光誘導部材を囲むように配される請求項4に記載の複数の集光モジュールと
を具え、これら集光モジュールを構成する個々の前記導光部材の光入射面部の輪郭形状がそれぞれ扇形状をなし、個々の前記導光部材の前記光入射面部が前記光誘導部材の光入射面部に密着すると共に光反射面部が円弧面となり、これら前記光誘導部材を中心として点対称に配され、全体として環状となっていることを特徴とする集光ユニット。
【請求項7】
前記光誘導部材は、その長手方向一端部に円錐状に窪んだ光反射面を有することを特徴とする請求項6に記載の集光ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−59323(P2011−59323A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208256(P2009−208256)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(510183187)ライツ・アドバンスト・テクノロジー株式会社 (4)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】