説明

集合住宅

【課題】集合住宅における空調効率を良好に維持し、各室の効率的な利用を図る。
【解決手段】居室2およびサービスルーム3を備える下階4と前記サービスルーム3上に配置される上階5とを備えた各戸6において、下階4の居室天井7を上階5の天井板8より所定高さ9だけ低下させた低天井板10を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅に関するものであり、具体的には、集合住宅における空調効率を良好に維持し、各室の効率的な利用を図ることが可能な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
旧来とは異なる家族構成や各自の価値観等に伴い、集合住宅に求められる構造も変化している。例えば、都市生活者やそれを所望するユーザにとって、広々とした開放感や流行性、各部屋への容易なアクセス性等を実感できるロフトやメゾネットの構造は、近年人気が高い。こうしたロフト等の構造に着目した住宅としては、例えば、複数階を有する一戸建ての住宅において、前記住宅は、平面視矩形状を呈する建物本体からなり、該建物本体には、短辺方向において二分割した一方の片側半分にリビングルームが長辺方向に沿って設けられ、他方の片側半分の中央寄りの部分に中央階段が、長辺方向に沿って形成されるとともに、該中央階段の外側寄りの部分に、浴室、トイレ、台所等の水廻り設備が配設されていることを特徴とする住宅(特許文献1)が提案されている。
【0003】
また、スラブの下面に設けられ、前記スラブ上に形成された居住空間の平面視における周囲4方のうち1方向側に配置された順梁と、前記スラブの上面に設けられ、前記居住空間の平面視における周囲4方のうち他の3方向側に配置された3つの逆梁と、前記順梁と対向する逆梁側のスラブ上方に配置され、前記スラブとの間に空間を形成する第1床と、前記順梁側のスラブ上に配置され、前記第1床よりも下方に形成された第2床と、を備え、前記第1床は、床上に居室が形成され、前記3つの逆梁により支持され、前記順梁と対向する前記逆梁は、前記居住空間の平面視において、前記居室とベランダとの間に配置され、前記スラブは、前記第2床と前記順梁との間に配置された上面が、前記第2床よりも下方に配置された玄関の床面とされ、前記上面が、居住空間の平面視において前記第2床と隣接していることを特徴とする住宅構造(特許文献2)なども提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3085918号公報
【特許文献2】特許第4276282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、ロフトやメゾネットなど吹き抜け構造を備える住宅において、特有の課題があった。例えば、吹き抜け構造を介してロフトや居室が相互に結ばれ、全室一体の大空間となっているため、空調効率が良好ではなく、場所により空調効果がばらつくという課題がある。例えば冷房を行う場合、空調設備から供給される冷気は、その性質によって下階に溜まりやすく、一方、暖房を行う場合、空調設備から供給される暖気は、その性質によって上階に溜まりやすい。従って、通常能力の空調設備を導入しても、場所毎に快適性が大きく異なり、居住者として不満の残る住居となりやすい。
【0006】
寒暖の差が各室で生じると、居住者は快適な室ばかり利用し各室の利用内容が限定的となる懸念がある。その場合、各室の効率的な利用が図りにくいという課題も生じることとなる。
【0007】
これに対し、従来構造において居住者の快適性を確保するためには、通常より強力な空調設備を導入せざるを得ない。この場合、元来低い空調効率しか発揮しない環境を、強力な空調でカバーすることになるから、空調設備を非効率な状態で稼働させることになり、そのランニングコストも良好とは言えない。
【0008】
また、吹き抜け構造における居室の天井高は通常の居室より高いものとなるから、照明施設や高窓等の設置、メンテナンスが難しいという課題もある。
【0009】
そこで本発明では、集合住宅における空調効率を良好に維持し、各室の効率的な利用を図ることが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の集合住宅は、居室およびサービスルームを備える下階と前記サービスルーム上に配置される上階とを備えた各戸において、下階の居室天井を上階の天井板より所定高さだけ低下させた低天井板を備えることを特徴とする。なお、前記上階には、例えば、水回り機器を配置した設備室となっている。
【0011】
これによれば、従来のロフト構造の如く、上階の天井と下階居室天井とが面一で高い天井高をなすという状況を回避することができ、空調対象を、サービスルームおよび低天井板下の居室と、上階とに適宜区画することが可能となる。こうした区画を行えることで、当然ながら必要となる空調設備の能力も、区画毎に最適効率となるよう選択すればよく、無理な空調を行う必要も無くなる。更に、空調効率も良好となるから、各室の快適性も向上し、居住者の満足度も高まると言える。また、下階居室の天井高は従来のロフト構造のものより十分低減され、居室天井における照明施設や高窓等の設置、メンテナンスが容易となる。他方、従来の吹き抜け構造における居室天井高よりは低減されているものの、吹き抜け構造を備えない一般構造での居室天井高より高い天井高を下階居室天井で実現できるから、徒に閉塞感を増すことなく、開放感を適宜保つことも可能である。したがって、集合住宅における空調効率を良好に維持し、各室の効率的な利用を図ることが可能になる。
【0012】
なお、本発明の集合住宅において、各戸における前記天井板と前記低天井板との間の領域に、上階の壁面の一部が張り出した棚構造を備えるとしてもよい。これによれば、上述の空調効率改善の効果に加えて、上階が手狭で収納スペースが確保しにくい状況に対応して、必要な収納スペースを前記領域の許す範囲で柔軟に設定し、上階の利用効率を向上させることができる。当然、居住者の満足度向上も促進される。
【0013】
また、本発明の集合住宅において、各戸における前記天井板と前記低天井板との間の領域に断熱材を配置したとしてもよい。これによれば、空調対象である、サービスルームおよび低天井板下の居室と、上階との間が、前記天井板と前記低天井板との間の領域を断熱区画として、より効率的に区画できることとなる。従って、必要となる空調設備の能力も通常より抑制可能であり、無理な空調を行う必要も無い。更に、空調効率も良好となるから、各室の快適性も向上し、居住者の満足度もより高まると言える。
【0014】
また、本発明の集合住宅において、各戸における前記天井板と前記低天井板との間の領域に防音材を配置したとしてもよい。これによれば、サービスルームおよび低天井板下の居室と、上階との間が、前記天井板と前記低天井板との間の領域を防音区画として区画できることとなり、隣接住戸等への音漏れを抑制し、居住者間の満足度もより高まると言える。
【0015】
また、本発明の集合住宅において、各戸における前記天井板と前記低天井板との間の領域に防音材を配置し、各戸における前記サービスルームに、楽器演奏室ないし音楽鑑賞室を設けるとしてもよい。これによれば、サービスルームおよび低天井板下の居室と、上階との間について、上記の防音区画にて区画してあるため、サービスルームでの楽器演奏や音楽鑑賞に際して隣接住戸等への音漏れを抑制し、居住者間の満足度もより高まると言える。
【0016】
また、本発明の集合住宅において、建物最上部に位置する各戸において、前記低天井板の上面を床面とし、当該床面上空の前記天井板を外気に開放したルーフバルコニーと、上階の壁面における前記ルーフバルコニーへの連絡口とを備えるとしてもよい。これによれば、上述の空調効率改善の効果に加えて、上階にルーフバルコニーというオープンスペースが付加されることによる、上階の利用効率向上と居住者の満足度向上の促進という効果も実現できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、集合住宅における空調効率を良好に維持し、各室の効率的な利用を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態における集合住宅の構造例1を示す図である。
【図2】本実施形態における集合住宅の構造例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
−−−構造例1−−−
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態における集合住宅の構造例1を示す図である。本実施形態で例示する集合住宅1は、居室2およびサービスルーム3を備える下階4と、前記サービスルーム3上に配置される上階5とを備えた各戸6が複数集合した構造をなしている。図1では説明の関係上、ある1戸の構造のみを示しているが、集合住宅であるから当然ながら階下階上、および左右に隣接住戸があるものとする。また、本実施形態において前記上階5は、風呂11、トイレ12、キッチン13といった水回り機器が配置された設備室14となっている。
【0020】
こうした集合住宅1の各戸6において、下階4の居室天井7を上階5の天井板8より所定高さ9だけ低下させた低天井板10が備わっている。この低天井板10は、もともとの構造が吹き抜け構造であった場合の、上階5の天井空間を塞ぐものとして採用してもよい。また、低天井板10の素材は限定しないが、必要な強度を備えるのは勿論のこと、断熱性に優れた素材であれば、空調効率向上の面でより好適である。また、低天井板10の素材として防音性に優れた素材であれば、隣接住戸等への音漏れ防止の観点から好適である。
【0021】
また、前記天井板8と前記低天井板10との間の領域15に、上階5の壁面16の一部が張り出した棚構造17を備えるとしてもよい。図1の拡大図にて示すように、この棚構造17は、食器や電化製品、美術品等を載置する棚として利用できる他、例えば、上階5のキッチン13におけるカウンターテーブルとなる。この場合、図示するように棚構造17の手前にイス18を配置するなどすればよい。
【0022】
このような構造を採用したならば、従来のロフト構造の如く、上階の天井と下階居室天井とが面一で高い天井高をなすという状況を回避することができ、空調対象を、サービスルーム3および低天井板10下の居室2と、上階5とに適宜区画することが可能となる。こうした区画を行えることで、当然ながら必要となる空調設備20の能力も、区画毎に最適効率となるよう選択すればよく、無理な空調を行う必要も無くなる。更に、空調効率も良好となるから、各室の快適性も向上し、居住者の満足度も高まると言える。また、下階居室2の天井高は従来のロフト構造のものより十分低減され、居室天井7における照明施設21や高窓等の設置、メンテナンスが容易となる。
【0023】
他方、従来の吹き抜け構造における居室天井高よりは低減されているものの、吹き抜け構造を備えない一般構造での居室天井高より高い天井高を下階居室天井7で実現できるから、いたずらに閉塞感を増すことなく、開放感を適宜保つことも可能である。したがって、集合住宅1における空調効率を良好に維持し、各室の効率的な利用を図ることが可能になる。
【0024】
また、上述の空調効率改善の効果に加えて、上階5が手狭で収納スペースが確保しにくい状況に対応して、必要な収納スペースすなわち棚構造17を前記領域15の許す範囲で柔軟に設定し、上階5の利用効率を向上させることができる。当然、居住者の満足度向上も促進される。
【0025】
空調効率改善という観点で、上述の構造を更に進めて、前記天井板8と前記低天井板10との間の領域15に断熱材25を配置するとすればより好適となる。断熱材25としては例えば、グラスウール、ロックウール、ポリスチレンフォーム、セルロースファイバー、羊毛断熱材、炭化発泡コルクなど各種想定できるが、種類は限定しない。居住者の健康に配慮した素材であり、適宜な断熱性、領域15への充填性、作業性に優れたものであれば良い。また、領域15の内空術を断熱材25で充填せず、低天井板10の付近のみ敷設するとしてもよい。
【0026】
こうした断熱材25の配置を行った構造とすれば、空調対象である、サービスルーム3および低天井板下の居室2と、上階5との間が、前記天井板8と前記低天井板10との間の領域25を断熱区画として、より効率的に区画できることとなる。従って、必要となる空調設備20の能力も通常より抑制可能であり、無理な空調を行う必要も無い。更に、空調効率も良好となるから、各室の快適性も向上し、居住者の満足度もより高まると言える。
【0027】
更に、前記天井板8と前記低天井板10との間の領域25に防音材30を配置するとしてもよい。防音材30としては、例えば、石膏ボード、グラスウール、ロックウール、ゴムマットなど各種の遮音、吸音素材が想定できるが種類の限定はしない。居住者の健康に配慮した素材であり、適宜な防音性、領域15への充填性、作業性に優れたものであれば良い。上記断熱材25と共通する素材を採用すれば、断熱と防音の両方の効果を併せて発揮できる。また、低天井板10の付近から順に、断熱材25と防音材30とを積層するとすれば、断熱のための細かく区切られた断熱空間を得ることもできるし、吸音用の細かく区切られた空間を得ることもでき、好適である。
【0028】
こうした断熱材25の配置を行った構造によれば、サービスルーム3および低天井板下の居室2と、上階5との間が、前記天井板8と前記低天井板10との間の領域25を防音区画として区画できることとなり、隣接住戸等への音漏れを抑制し、居住者間の満足度もより高まると言える。なお、こうした防音材30の配置を行った上で、前記サービスルーム3に、楽器演奏室ないし音楽鑑賞室を設けるとしてもよい。これによれば、サービスルーム3および低天井板下の居室2と、上階5との間について、上記の防音区画にて区画してあるため、サービスルーム3での楽器演奏や音楽鑑賞に際して隣接住戸等への音漏れを抑制し、居住者間の満足度もより高まると言える。
−−−構造例2−−−
図2は、本実施形態における集合住宅の構造例2を示す図である。本実施形態における集合住宅1は、上述した構造を備えた各戸の他に、建物最上部に位置する各戸について、以下のような構造を備えている。この場合の構造とは、前記低天井板10の上面を床面41とし、当該床面上空の前記天井板8を外気に開放したルーフバルコニー50と、上階5の壁面16における前記ルーフバルコニー50への連絡口55とを備えている。ルーフバルコニー50を構成する構造としては、上層から順に、塩ビ鋼板(屋根材)、アスファルトルーフィング(防水材)、野地板が順に積層したものとなる。また、ルーフバルコニー50の床面41と前記低天井板10との間には、断熱材や防音材が充填される。このように断熱材を配置すればルーフバルコニー50が断熱性を発揮することとなり、上記構造例1で示した空調効率改善という観点からも好ましい。同様に、床面41と低天井板10との間に防音材も配置すれば、より断熱性、防音性に優れた構造が得られる。
【0029】
また、上述したルーフバルコニー50における屋根材の更に上層に、人工芝を敷設してユーザ利用時の快適性を高めるとしてもよい。また、ルーフバルコニー50において、軽量土や給排水設備を配備して植栽を実行し、屋上緑化を図るとしてもよい。緑化構造における植栽や土壌は直射日光を遮り、ルーフバルコニー自体の温度上昇を防ぐと共に、ルーフバルコニー下方にある下階4の温度上昇も抑制する。
【0030】
こうした構造によれば、上述した構造例1での空調効率改善の効果に加えて、上階5にルーフバルコニー50というオープンスペースが付加されることによる、上階5の利用効率向上と居住者の満足度向上の促進という効果も実現できる。
【0031】
以上、本実施形態によれば、集合住宅における空調効率を良好に維持し、各室の効率的な利用を図ることが可能となる。
【0032】
以上、本発明の実施の形態について、その実施の形態に基づき具体的に説明したが、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 集合住宅
2 居室
3 サービスルーム
4 下階
5 上階
6 各戸
7 居室天井
8 天井板
9 所定高さ
10 低天井板
11 風呂
12 トイレ
13 キッチン
14 設備室
15 領域
16 上階の壁面
17 棚構造
18 イス
20 空調設備
21 照明施設
25 断熱材
30 防音材
41 床面
50 ルーフバルコニー
55 連絡口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
居室およびサービスルームを備える下階と前記サービスルーム上に配置される上階とを備えた各戸において、下階の居室天井を上階の天井板より所定高さだけ低下させた低天井板を備えることを特徴とする集合住宅。
【請求項2】
請求項1において、
各戸における前記天井板と前記低天井板との間の領域に、上階の壁面の一部が張り出した棚構造を備えることを特徴とする集合住宅。
【請求項3】
請求項1または2において、
各戸における前記天井板と前記低天井板との間の領域に断熱材を配置したことを特徴とする集合住宅。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
各戸における前記天井板と前記低天井板との間の領域に防音材を配置したことを特徴とする集合住宅。
【請求項5】
請求項4において、
各戸における前記サービスルームに、楽器演奏室ないし音楽鑑賞室を設けたことを特徴とする集合住宅。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
建物最上部に位置する各戸において、前記低天井板の上面を床面とし、当該床面上空の前記天井板を外気に開放したルーフバルコニーと、上階の壁面における前記ルーフバルコニーへの連絡口とを備えることを特徴とする集合住宅。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−256521(P2011−256521A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129103(P2010−129103)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(510157502)株式会社シノケンプロデュース (2)
【Fターム(参考)】