説明

集水桝とこれを用いた舗装道路の排水構造

【課題】 車道側に張り出さない状態で集水桝を道路脇に埋設できるようにして、エプロン部を有しない排水機能付きの境界ブロックと併用することで、車両通行の安全性をよりいっそう向上させる。
【解決手段】 本発明に係る集水桝1は、エプロン部を有しない排水機能付きの境界ブロック2の端部を面一に接続することができる桝上部18と、この桝上部18に設けられた開閉自在な点検蓋19と、地中に埋設される下水管21の接続口22を有しかつ車道側の側面において桝上部18と面一となるように同桝上部18の下方に連結された桝下部20とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集水桝とこれを用いた舗装道路の排水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、境界ブロック(縁石ともいう。)を介して車道と歩道が区分けされている一般道路では、通常、横断方向外側に向かって下方に傾斜した流水表面を有するエプロン部(街渠ともいう。)が車道の道路脇に沿って設けられている。かかるエプロン部には、グレーチング蓋を有する街渠桝が縦断方向に所定間隔おきに設置されており、この各街渠桝はエプロン部の下方に埋設された縦断方向に沿うU字型溝又は断面円形の集水管によって互いに接続されている。
【0003】
従って、かかるエプロン部を有する一般的な舗装道路では、エプロン部の上面を道路縦断方向に流れる雨水を同方向に所定間隔おきに配置された街渠桝を介して地中の下水設備に流下させることにより、車道側の雨水の排水を行うようにしている。
しかるに、このような一般的な舗装道路では、車道の道路脇にコンクリート製のエプロン部を設けているため、その材料費と施工手間のために建設コストが高くなるという欠点がある。また、エプロン部の上面に雨水が滞留しやすいので、タイヤがエプロン部の上面を通過した際に歩行者への水ねやスリップが発生したり、エプロン部の上面と舗装表面との間に生じた段差でハンドルが取られることがあり、車両通行の安全性に劣っているという欠点もある。
【0004】
そこで、エプロン部を設けなくても車道側の雨水を適切に排水することができる排水機能付き境界ブロックが既に提案されている。かかる従来の境界ブロックは、道路縦断方向に貫通する排水路が断面内部に形成された、エプロン部を有しない排水機能付きのコンクリート製のブロック本体より構成され、このブロック本体の車道側側面には排水路に連通する導入孔が形成されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−88707号公報(請求項1、図3及び図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記境界ブロックを使用した従来の舗装道路の排水構造においては、境界ブロック内の雨水を下水設備に排水するために、エプロン部とほぼ同じ幅寸法に設定された大容量の街渠桝に接続するようにしている(特許文献1の図3及び図4参照)。
【0007】
このため、折角、境界ブロックの断面内部に雨水を導くことでエプロン部を省略しているにも拘わらず、街渠桝については車道側に大きく張り出したままの状態になっているので、車道の左側を通行する車両のタイヤが街渠桝の上面を通過することがある。
従って、従来の舗装道路の排水構造では、車両のタイヤが街渠桝の上面を通過してスリップしたり、街渠桝の上面と舗装路面との間に生じた段差でハンドルが取られる恐れが依然として残っており、車両通行の安全性が完全に解消されているとは言い難い。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑み、車道側に張り出さない状態で集水桝を道路脇に埋設できるようにして、エプロン部を有しない排水機能付きの境界ブロックと併用することで、車両通行の安全性をよりいっそう向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明は次の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明に係る集水桝は、エプロン部を有しない排水機能付きの境界ブロックの端部を面一に接続することができる桝上部と、この桝上部に設けられた開閉自在な点検蓋と、地中に埋設される下水管の接続口を有しかつ車道側の側面において前記桝上部と面一となるように同桝上部の下方に連結された桝下部とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る集水桝を用いて舗装道路の排水構造を構成するには、エプロン部を有しない排水機能付きの複数の境界ブロック同士と上記集水桝の桝上部が道路縦断方向に沿って連続的に接続された状態となるように、その複数の境界ブロックと集水桝を舗装道路の道路脇に埋設するようにすればよい。このさい、本発明に係る集水桝によれば、エプロン部を有しない排水機能付きの境界ブロックの端部が桝上部に面一に接続され、しかも、その桝上部の下方に連結された桝下部が車道側の側面において前記桝上部と面一になっている。
【0011】
従って、エプロン部を有しない排水機能付きの境界ブロックから見て、そこから車道側に向けて何も張り出さない状態で舗装道路の排水構造が構成されることになる。このため、従来のように、車両のタイヤが集水桝の上面を通過してスリップしたり、集水枡の上面と舗装路面との間に生じた段差でハンドルが取られたりする恐れがなくなり、車両通行の安全性をよりいっそう向上させることができる。
【0012】
本発明に係る集水桝において、点検蓋の構造は特に限定されないが、境界ブロックの縁石部の上面に対応する上板部と、同ブロックの縁石部の車道側側面に対応する側板部とを一体に備えた断面L型の板材よりなるものを採用することができる。そして、かかる断面L型の点検蓋を採用する場合には、前記側板部の下端縁を車道側に向かって傾斜可能となるように桝上部に枢着することが好ましい。
【0013】
この場合、断面L型の点検蓋が車道側に傾斜して開放されるので、点検蓋を開放した後で歩道側から集水桝の内部に向かって清掃用具を挿入することができ、集水桝内の清掃作業がより行いやすくなる。また、上記断面L型の点検蓋を採用する場合には、前記上板部と前記側板部をいずれもグレーチング部材より構成するようにすれば、集水桝への集水効率が向上するとともに、集水桝の内部状態を外部から目視可能な角度が広がって集水桝内の点検作業がより行いやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に係る集水桝1を用いた舗装道路の排水構造を示しており、図2及び図3は同集水桝1の詳細を示している。
図1に示すように、本実施形態の舗装道路は、プレキャストコンクリート製の境界ブロック2を介して歩道部3と車道部4に区分けされている。
【0015】
この境界ブロック2は、エプロン部を有しない排水機能付きのものであり、地中に埋設される断面矩形の基礎部6と、この基礎部6の上方へ突設された縁石部7とから一体に構成されている。基礎部6の内部には断面円形の排水路8が形成され、この排水路8は当該境界ブロック2をその長手方向(道路縦断方向)に貫通している。なお、縁石部7を基礎部6よりも幅狭にすることにより、境界ブロック2の断面中央部に段差が形成されている。
【0016】
上記縁石部7の車道側側面の下部には、排水路8に連通する導入孔9が設けられており、この導入孔9は道路縦断方向に長いスリット状に形成されている。なお、図示していないが、境界ブロック2は路盤10上に現場打ちされた基礎コンクリートの上に敷設されている。また、この境界ブロック2の全部又は一部を透水性の高いポーラスコンクリートで構成するようにすれば、導水孔9以外の部分からも雨水を積極的に集水でき、排水効率を向上することができる。
【0017】
道路の車道部4には通常舗装12が施工されており、この舗装12は、路盤10上に不透水性の基層13を敷設するとともに、この基層13の上に不透水性の表層14を施工することによって構成されている。また、道路の歩道部3は、路盤10上に砂利層15を敷設するとともに、この砂利層15の上に多数の歩道ブロック16を敷き詰めることによって構成されている。
【0018】
本実施形態の集水桝1は、排水機能付きの境界ブロック2に流れ込んだ雨水をいったん集めて地中の下水設備に流下させるためのもので、図2及び図3に示すように、その境界ブロック2の端部を面一に接続することができる桝上部18と、この桝上部18に設けられた開閉自在な点検蓋19と、地中に埋設される下水管21の接続口22を有する桝下部20とから構成されている。
【0019】
このうち、桝上部18は、前記境界ブロック2と同じ断面形状でかつほぼ同じ長さ形成された中空コンクリート製のブロック体よりなり、このブロック体の長手方向両端部には、境界ブロック2の排水路8に対応する連通孔23が形成されている。他方、桝下部20は、桝上部18と同じ幅及び長さ寸法の平面視長方形状に形成された中空コンクリート製のブロック体よりなり、このブロック体の幅方向道路側壁の中央部には、下水設備に通じる前記下水管21の接続口22が形成されている。
【0020】
図2及び図3に示すように、桝上部18の下端部は底なしの状態で開放されており、この開放された下端開口部24に前記桝下部20の上端開口部25が面一に接続されている。このため、境界ブロック2の構成部材である当該桝上部18と桝下部20は、車道側の側面及び歩道側の側面の双方において、互いに面一となるように現場で連結されるようになっている。
【0021】
なお、桝上部18と桝下部20の接続方法は、アンカーボルトによる乾式接続や、接合端面へのモルタル塗りによる湿式接続等、種々の手段を採用することができる。また、本実施形態では、桝下部20の下端部も底なしの状態で開放されており、この開放された桝下部20の下端開口部26はインバートコンクリートを現場打ちすることによって閉塞される。もっとも、底部を一体に有する桝下部20を採用することもできる。
【0022】
本実施形態の集水桝1では、桝上部18における縁石対応部分のうち、長手方向両端部の壁部分以外の大部分が開放されている。この開放部の歩道側(図3の左側)は、金属製のグレーチング部材よりなる蓋壁部27で閉塞され、同開放部の車道側(図3の右側)は、同じく金属製のグレーチング部材よりなる開閉自在な点検蓋19で閉塞されている。なお、歩道部3の表面を縁石上面と同じ高さにする場合には、蓋壁部27としてグレーチング部材を採用する必要はなく、同蓋壁部27をコンクリート壁で構成することにしてもよい。
【0023】
上記点検蓋19は、境界ブロック2の縁石部7の上面に対応する上板部29と、同ブロック2の縁石部7の車道側側面に対応する側板部30とを一体に備えた断面L型の板材により構成され、図3に示すように、側板部30の下端縁をヒンジ31を介して桝上部18の開放部に枢着することより、車道側に向かって傾斜可能に開放できるようになっている。
【0024】
図1に示すように、エプロン部を有しない排水機能付きの複数の境界ブロック2は、その内部の排水路8が一本の管路となるように道路縦断方向に沿って連続的に接続され、この接続状態で舗装道路の道路脇に埋設されている。他方、本実施形態の集水桝1は、任意の境界ブロック2間に桝上部18を介在させるようにして舗装道路の道路脇に埋設され、このさい、境界ブロック2の排水路8が集水桝1の連通孔23に連通するようになっている。
【0025】
このため、本実施形態の舗装道路の排水構造によれば、車道部4の道路脇に流れてきた雨水は、導入孔9を介して境界ブロック2の排水路8に引き込まれ、同排水路8の内部を縦断勾配に沿って下流側に流れたあと、連通孔23を介して集水桝1にいったん集められ、その後、下水管21を介して図外の下水設備に排水されるようになっている。
【0026】
このさい、本実施形態の集水桝1によれば、図1に示すように、エプロン部を有しない排水機能付きの境界ブロック2の端部が桝上部18に面一に接続され、しかも、その桝上部18の下方に連結された桝下部20が車道側の側面において桝上部18と面一になっているので、エプロン部を有しない境界ブロック2から車道側に何も張り出さない状態で舗装道路の排水構造が構成される。
【0027】
従って、車両のタイヤが集水桝の上面を通過してスリップしたり、集水枡の上面と舗装路面との間に生じた段差でハンドルが取られたりする恐れがなくなり、車両通行の安全性をよりいっそう向上させることができる。
また、本実施形態の集水桝1によれば、断面L型の点検蓋19が車道側に傾斜して開放されるので、点検蓋19を開放した後で歩道側から集水桝1の内部に向かって清掃用具を挿入することができ、集水桝1内の清掃作業がより行いやすいという利点がある。
【0028】
更に、本実施形態の集水桝1によれば、上記点検蓋19の上板部29と側板部30がいずれもグレーチング部材より構成されているので、集水桝1への集水効率が向上するとともに、集水桝1の内部状態を外部から目視可能な角度が広がって集水桝1内の点検作業が行いやすいという利点もある。
なお、上記した実施形態はすべて例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、そこに記載された構成と均等の範囲内のすべての変更も本発明に含まれる。
【0029】
例えば、図1では本発明の集水桝1と境界ブロック2よりなる排水構造を通常舗装12を施した道路に適用した場合を例示しているが、同排水構造は排水性舗装を施した道路に適用することもできる。
また、上記した実施形態では、桝上部18と桝下部20に分割構成された集水桝1を例示しているが、本発明の集水桝1はこれら各部を一体に有するものであってもよい。
【0030】
〔発明の効果〕
以上説明したように、本発明によれば、車道側に張り出さない状態で集水桝を道路脇に埋設することができるので、エプロン部を有しない排水機能付きの境界ブロックと併用することで、車両通行の安全性をよりいっそう向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の集水桝を用いた舗装道路の排水構造の斜視図である。
【図2】(a)は本発明の集水桝の平面図であり、(b)は同集水桝を車道側から見た側面図である。
【図3】(a)は本発明の集水桝の桝上部の横断面図であり、(b)は同集水桝を道路縦断方向から見た側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 集水桝
2 境界ブロック
6 基礎部
7 縁石部
8 排水路
18 桝上部
19 点検蓋
20 桝下部
21 下水管
22 接続口
29 上板部
30 側板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エプロン部を有しない排水機能付きの境界ブロック(2)の端部を面一に接続することができる桝上部(18)と、この桝上部(18)に設けられた開閉自在な点検蓋(19)と、地中に埋設される下水管(21)の接続口(22)を有しかつ車道側の側面において前記桝上部(18)と面一となるように同桝上部(18)の下方に連結された桝下部(20)とを備えていることを特徴とする集水桝。
【請求項2】
点検蓋(19)は、境界ブロック(2)の縁石部(7)の上面に対応する上板部(29)と、同ブロック(2)の縁石部(7)の車道側側面に対応する側板部(30)とを一体に備えた断面L型の板材よりなり、前記側板部(30)の下端縁が車道側に向かって傾斜可能となるように桝上部(18)に枢着されている請求項1に記載の集水桝。
【請求項3】
点検蓋(19)は、境界ブロック(2)の縁石部(7)の上面に対応する上板部(29)と、同ブロック(2)の縁石部(7)の車道側側面に対応する側板部(30)とを一体に備えた断面L型の板材よりなり、前記上板部(29)と前記側板部(30)がいずれもグレーチング部材より構成されている請求項1又は2に記載の集水桝。
【請求項4】
エプロン部を有しない排水機能付きの複数の境界ブロック(2)同士と請求項1〜3のいずれかに記載の集水桝(1)の桝上部(18)が道路縦断方向に沿って連続的に接続された状態となるように、その複数の境界ブロック(2)と前記集水桝(1)が舗装道路の道路脇に埋設されていること特徴とする舗装道路の排水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−100506(P2007−100506A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11574(P2007−11574)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【分割の表示】特願2002−360481(P2002−360481)の分割
【原出願日】平成14年12月12日(2002.12.12)
【出願人】(392027900)株式会社イトーヨーギョー (43)
【Fターム(参考)】