説明

集積回路装置、電気光学装置及び電子機器

【課題】セグメント信号及びコモン信号の一方の信号の電圧レベルの変化が他方の信号に及ぼす悪影響を低減できる集積回路装置等の提供。
【解決手段】集積回路装置は、複数のセグメント信号出力回路を有するセグメントドライバーと、複数のコモン信号出力回路を有するコモンドライバーと、第1〜第4の電圧レベルの第1〜第4の電源をセグメントドライバー、コモンドライバーに供給する電源回路を含む。各セグメント信号出力回路は、セグメント信号の電圧レベルが第1の電圧レベルに設定される期間から第4の電圧レベルに設定される期間への第1の遷移期間において、セグメント信号の電圧レベルを前記第3の電圧レベルに設定し、セグメント信号の電圧レベルが第4の電圧レベルに設定される期間から第1の電圧レベルに設定される期間への第2の遷移期間において、セグメント信号の電圧レベルを第2の電圧レベルに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路装置、電気光学装置及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、LCD(Liquid Crystal Displayパネル等の電気光学パネルを駆動するための回路を内蔵する集積回路装置(ドライバー)が知られている。コモン線とセグメント線を備える単純マトリックス方式(パッシブ方式)の電気光学パネルを例にとれば、集積回路装置は、コモン信号とセグメント信号を生成して、電気光学パネルに供給する。これにより電気光学パネルには、数字やアルファベットなどの文字が表示される。このような集積回路装置の従来技術としては例えば特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
このような集積回路装置では、液晶素子等の電気光学素子の駆動に使用する電源のラインに対して、平滑用のコンデンサを設ける必要があり、高コスト化や実装面積の大規模化の要因となっていた。また電源を供給するオペアンプ(インピーダンス変換回路)として、例えばAB級のオペアンプを使用すると、低消費電力化の妨げとなったり、オペアンプの面積が原因となって集積回路装置が大規模化するなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−222327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の幾つかの態様によれば、セグメント信号及びコモン信号の一方の信号の電圧レベルの変化が他方の信号に及ぼす悪影響を低減できる集積回路装置、電気光学装置及び電子機器等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、複数のセグメント信号出力回路を有し、複数のセグメント線を駆動するセグメントドライバーと、複数のコモン信号出力回路を有し、複数のコモン線を駆動するコモンドライバーと、第1の電圧レベルである第1の電源と、第2の電圧レベルである第2の電源と、第3の電圧レベルである第3の電源と、第4の電圧レベルである第4の電源を、前記セグメントドライバー、前記コモンドライバーに供給する電源回路とを含み、前記複数のセグメント信号出力回路の各セグメント信号出力回路は、セグメント信号の電圧レベルが前記第1の電圧レベルに設定される期間から前記セグメント信号の電圧レベルが前記第4の電圧レベルに設定される期間への第1の遷移期間において、前記セグメント信号の電圧レベルを前記第3の電圧レベルに設定し、前記セグメント信号の電圧レベルが前記第4の電圧レベルに設定される期間から前記セグメント信号の電圧レベルが前記第1の電圧レベルに設定される期間への第2の遷移期間において、前記セグメント信号の電圧レベルを前記第2の電圧レベルに設定する集積回路装置に関係する。
【0007】
本発明の一態様によれば、セグメント信号の電圧レベルが第1の電圧レベルから第4の電圧レベルに変化する際の第1の遷移期間において、セグメント信号の電圧レベルが第3の電圧レベルに設定される。またセグメント信号の電圧レベルが第4の電圧レベルから第1の電圧レベルに変化する際の第2の遷移期間において、セグメント信号の電圧レベルが第2の電圧レベルに設定される。このようにすることで、セグメント信号及びコモン信号の一方の信号の電圧レベルの変化が他方の信号に及ぼす悪影響を低減できる。
【0008】
また本発明の一態様では、前記複数のコモン信号出力回路の各コモン信号出力回路は、前記第1の遷移期間において、コモン信号の電圧レベルを前記第2の電圧レベルに設定し、前記第2の遷移期間において、前記コモン信号の電圧レベルを前記第3の電圧レベルに設定してもよい。
【0009】
このようにすれば、第1の遷移期間では、セグメント信号、コモン信号に対して、各々、第3の電圧レベル、第2の電圧レベルが設定され、第2の遷移期間では、セグメント信号、コモン信号に対して、各々、第2の電圧レベル、第3の電圧レベルが設定されるようになる。従って、いずれの遷移期間においても、電気光学素子等には第2、第3の電圧レベルの電圧差が印加されるようになる。
【0010】
本発明の他の態様は、複数のセグメント信号出力回路を有し、複数のセグメント線を駆動するセグメントドライバーと、複数のコモン信号出力回路を有し、複数のコモン線を駆動するコモンドライバーと、第1の電圧レベルである第1の電源と、第2の電圧レベルである第2の電源と、第3の電圧レベルである第3の電源と、第4の電圧レベルである第4の電源を、前記セグメントドライバー、前記コモンドライバーに供給する電源回路とを含み、前記複数のセグメント信号出力回路の各セグメント信号出力回路は、セグメント信号の電圧レベルが前記第1の電圧レベルに設定される期間から前記セグメント信号の電圧レベルが前記第2の電圧レベルに設定される期間への第1の遷移期間において、前記セグメント信号の電圧レベルを前記第3の電圧レベルに設定し、前記セグメント信号の電圧レベルが前記第4の電圧レベルに設定される期間から前記セグメント信号の電圧レベルが前記第3の電圧レベルに設定される期間への第2の遷移期間において、前記セグメント信号の電圧レベルを前記第2の電圧レベルに設定する集積回路装置に関係する。
【0011】
本発明の一態様によれば、セグメント信号の電圧レベルが第1の電圧レベルから第2の電圧レベルに変化する際の第1の遷移期間において、セグメント信号の電圧レベルが第3の電圧レベルに設定される。またセグメント信号の電圧レベルが第4の電圧レベルから第3の電圧レベルに変化する際の第2の遷移期間において、セグメント信号の電圧レベルが第2の電圧レベルに設定される。このようにすることで、セグメント信号及びコモン信号の一方の信号の電圧レベルの変化が他方の信号に及ぼす悪影響を低減できる。
【0012】
また本発明の他の態様では、前記各コモン信号出力回路は、前記第1の遷移期間では、コモン信号の電圧レベルを前記第2の電圧レベルに設定し、前記第2の遷移期間では、前記コモン信号の電圧レベルを前記第3の電圧レベルに設定してもよい。
【0013】
このようにすれば、第1の遷移期間では、セグメント信号、コモン信号に対して、各々、第3の電圧レベル、第2の電圧レベルが設定され、第2の遷移期間では、セグメント信号、コモン信号に対して、各々、第2の電圧レベル、第3の電圧レベルが設定されるようになる。従って、いずれの遷移期間においても、電気光学素子等には第2、第3の電圧レベルの電圧差が印加されるようになる。
【0014】
また本発明の一態様又は他の態様では、前記第1の遷移期間の長さは、前記第1の遷移期間の前後の期間の長さの1/2以下に設定され、前記第2の遷移期間の長さは、前記第2の遷移期間の前後の期間の長さの1/2以下に設定されてもよい。
【0015】
このように遷移期間を短くすることで、有効な駆動期間を長くすることが可能になる。なお第1の遷移期間の前後の期間とは、例えば第1の遷移期間の前後(直前、直後)において、セグメント信号の電圧レベルが第1の電圧レベル、第2の電圧レベル又は第4の電圧レベルに設定される期間である。また第2の遷移期間の前後の期間とは、例えば第2の遷移期間の前後(直前、直後)において、セグメント信号の電圧レベルが第1の電圧レベル、第3の電圧レベル又は第4の電圧レベルに設定される期間である。
【0016】
また本発明の一態様又は他の態様では、前記複数のコモン信号出力回路の各コモン信号出力回路は、前記セグメント信号が2つの期間に亘って前記第1の電圧レベルに設定される場合に、前記2つの期間のうちの前半期間と後半期間の間の第3の遷移期間において、前記セグメント信号の電圧レベルを前記第3の電圧レベルに設定し、前記セグメント信号が2つの期間に亘って前記第4の電圧レベルに設定される場合に、前記2つの期間のうちの前半期間と後半期間の間の第4の遷移期間において、前記セグメント信号の電圧レベルを前記第2の電圧レベルに設定してもよい。
【0017】
このようにすれば、電気光学素子等に印加される実効電圧を他の場合と同等にすることが可能になる。
【0018】
また本発明の一態様又は他の態様では、前記各コモン信号出力回路は、前記第3の遷移期間では、コモン信号の電圧レベルを前記第2の電圧レベルに設定し、前記第4の遷移期間では、前記コモン信号の電圧レベルを前記第3の電圧レベルに設定してもよい。
【0019】
このようにすれば、第3の遷移期間では、セグメント信号、コモン信号に対して、各々、第3の電圧レベル、第2の電圧レベルが設定され、第4の遷移期間では、セグメント信号、コモン信号に対して、各々、第2の電圧レベル、第3の電圧レベルが設定されるようになる。従って、いずれの遷移期間においても、電気光学素子等には第2、第3の電圧レベルの電圧差が印加されるようになる。
【0020】
また本発明の一態様又は他の態様では、前記第3の遷移期間の長さは、前記第3の遷移期間の前後の期間の長さの1/2以下に設定され、前記第4の遷移期間の長さは、前記第4の遷移期間の前後の期間の長さの1/2以下に設定されてもよい。
【0021】
このように遷移期間を短くすることで、有効な駆動期間を長くすることが可能になる。なお第3の遷移期間の前後の期間とは、例えば第3の遷移期間の前後(直前、直後)において、セグメント信号の電圧レベルが第1の電圧レベルに設定される期間(前半期間、後半期間)である。また第4の遷移期間の前後の期間とは、例えば第4の遷移期間の前後(直前、直後)において、セグメント信号の電圧レベルが第4の電圧レベルに設定される期間(前半期間、後半期間)である
また本発明の一態様又は他の態様では、前記電源回路は、第1の差動部と第1の出力部を有し、前記第2の電源を供給する第1のインピーダンス変換回路と、第2の差動部と第2の出力部を有し、前記第3の電源を供給する第2のインピーダンス変換回路を含み、前記第1のインピーダンス変換回路の前記第1の出力部は、高電位側電源ノードと第1の出力ノードとの間に設けられた第1の電流源と、前記第1の出力ノードと低電位側電源ノードとの間に設けられ、前記第1の差動部によりゲートが制御される第1の駆動トランジスターを含み、前記第2のインピーダンス変換回路の前記第2の出力部は、前記高電位側電源ノードと第2の出力ノードとの間に設けられ、前記第2の差動部によりゲートが制御される第2の駆動トランジスターと、前記第2の出力ノードと前記低電位側電源ノードとの間に設けられた第2の電流源を含んでもよい。
【0022】
このようにすれば、例えば第1、第2の出力部の第1、第2の電流源に流れる電流を小さくすることで、低消費電力化を図れる。
【0023】
また本発明の一態様又は他の態様では、前記第1の電圧レベルをV1とし、前記第2の電圧レベルをV2とし、前記第3の電圧レベルをV3とし、前記第4の電圧レベルをV4とした場合に、V1<V2<V3<V4であってもよい。
【0024】
また本発明の一態様又は他の態様では、V4−V3=V3−V2=V2−V1であってもよい。
【0025】
また本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の集積回路装置を含む電気光学装置に関係する。
【0026】
また本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の集積回路装置を含む電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態の集積回路装置の構成例。
【図2】電源回路、セグメント信号出力回路、コモン信号出力回路の詳細な構成例。
【図3】図3(A)、図3(B)は電気光学パネルの駆動方法についての説明図。
【図4】図4(A)、図4(B)、図4(C)は比較例の駆動方法の波形例。
【図5】図5(A)、図5(B)は比較例の駆動方法の問題点についての説明図。
【図6】図6(A)、図6(B)も比較例の駆動方法の問題点についての説明図。
【図7】図7(A)、図7(B)は本実施形態の駆動方法の波形例。
【図8】図8(A)、図8(B)は本実施形態の駆動方法の説明図。
【図9】図9(A)、図9(B)も本実施形態の駆動方法の説明図。
【図10】図10(A)、図10(B)も本実施形態の駆動方法の説明図。
【図11】図11(A)、図11(B)は比較例の駆動方法の他の波形例。
【図12】図12(A)、図12(B)は本実施形態の駆動方法の他の波形例。
【図13】電子機器、電気光学装置の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0029】
1.構成
図1に本実施形態の集積回路装置(ドライバー)の構成例を示す。この集積回路装置は、セグメントドライバー10、コモンドライバー20、電源回路30を含む。また表示メモリー50、アドレス制御回路52、コモンカウンター60、タイミングコントローラー62、制御回路90を含むことができる。なおこれらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。例えば集積回路装置は表示メモリー50を内蔵しないタイプのものであってもよい。
【0030】
セグメントドライバー10は、液晶パネル(広義には電気光学パネル)の複数のセグメント線(セグメント電極)を駆動する。具体的にはセグメントドライバー10は複数のセグメント信号出力回路SQ1〜SQiを含み、これらのセグメント信号出力回路SQ1〜SQiからのセグメント信号(データ信号)SEG1〜SEGiを液晶パネルのセグメント線(データ線)に供給する。
【0031】
コモンドライバー20は、液晶パネルの複数のコモン線(コモン電極)を駆動する。具体的にはコモンドライバー20は複数のコモン信号出力回路CQ1〜CQjを含み、これらのコモン信号出力回路CQ1〜CQjからのコモン信号(走査信号)COM1〜COMjを液晶パネルのコモン線(走査線)に供給する。
【0032】
電源回路30は液晶パネル(広義には電気光学装置)の駆動に必要な複数の電源を生成して、セグメントドライバー10やコモンドライバー20に供給する。具体的には例えば第1、第2、第3、第4の電源VD1、VD2、VD3、VD4を供給する。以下、これらの第1、第2、第3、第4の電源VD1、VD2、VD3、VD4の電圧レベルである第1、第2、第3、第4の電圧レベルを、V1、V2、V3、V4と表す。なお電源回路30は5個以上の電源を供給するようにしてもよい。
【0033】
表示メモリー50(VRAM、画像メモリー)は、表示データ(画像データ)を記憶する。即ち1画面分に対応する表示データを記憶する。表示メモリー50から読み出された表示データ(セグメントデータ)はセグメントドライバー10に供給される。この表示メモリー50は例えばRAMにより構成される。そして、表示メモリー50からの表示データの読み出しや、表示メモリー50への表示データの書き込みは、アドレス制御回路52からのアドレス信号やタイミングコントローラー62からのタイミング制御信号に基づいて行われる。
【0034】
アドレス制御回路52は、表示メモリー50のアドレス制御を行う。即ち表示メモリー50から表示データを読み出したり、表示メモリー50に表示データを書き込むためのアドレス信号を出力する。このアドレス制御回路52は、制御回路90からの各種設定信号や、タイミングコントローラー62からのタイミング制御信号に基づいて動作する。
【0035】
コモンカウンター60は、タイミングコントローラー62からのタイミング制御信号に基づいて、コモン信号を生成するためのカウント処理を行う。コモンドライバー20は、コモンカウンター60からのカウント信号等に基づいてコモン信号を出力する。タイミングコントローラー62は、制御回路90の指示により、各種のタイミング制御信号を生成して出力する。制御回路90は、集積回路装置全体の制御や集積回路装置の各回路ブロックの制御を行う。
【0036】
図2に、セグメントドライバー10、コモンドライバー20、電源回路30の詳細な構成例を示す。なおセグメントドライバー10、コモンドライバー20、電源回路30の構成は図2の構成に限定されず、その一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0037】
図2に示すように、セグメントドライバー10が有するセグメント信号出力回路SQ(SQ1〜SQi)は、複数のスイッチ素子SS1、SS2、SS3、SS4を含む。これらのスイッチ素子SS1〜SS4は、例えばトランスファーゲート等により構成できる。
【0038】
スイッチ素子SS1、SS2、SS3、SS4の一端には電源VD1、VD2、VD3、VD4の電圧レベルV1、V2、V3、V4が供給され、スイッチ素子SS1〜SS4の他端は共通接続される。具体的にはスイッチ素子SS1〜SS4の他端は、セグメント信号SEGのパッドPS(端子)に接続される。これらのスイッチ素子SS1〜SS4は、図示しない制御信号(セグメントデータ)に基づいてオン・オフ制御される。そしてセグメント信号出力回路SQは、V1〜V4のいずれかの電圧レベルをスイッチ素子SS1〜SS4により選択して、セグメント信号SEGとして出力する。
【0039】
コモンドライバー20が有するコモン信号出力回路CQ(CQ1〜CQj)は、複数のスイッチ素子SC1、SC2、SC3、SC4を含む。これらのスイッチ素子SC1〜SC4は、例えばトランスファーゲート等により構成できる。
【0040】
スイッチ素子SC1、SC2、SC3、SC4の一端には電源VD1、VD2、VD3、VD4の電圧レベルV1、V2、V3、V4が供給され、スイッチ素子SC1〜SC4の他端は共通接続される。具体的にはスイッチ素子SC1〜SC4の他端は、コモン信号COMのパッドPC(端子)に接続される。これらのスイッチ素子SC1〜SC4は、図示しない制御信号に基づいてオン・オフ制御される。そしてコモン信号出力回路CQは、V1〜V4のいずれかの電圧レベルをスイッチ素子SC1〜SC4により選択して、コモン信号COMとして出力する。
【0041】
電源回路30は、電圧生成回路40と、第1、第2のインピーダンス変換回路41、44(電圧出力回路)を含む。
【0042】
電圧生成回路40は例えばラダー抵抗回路により構成できる。そして例えばVD4、VD1が、固定の高電位側電源VDD、低電位側電源VSSである場合には、VDD(VD4)とVSS(VD1)をラダー抵抗回路により電圧分割した電圧レベルV3’、V2’を出力する。
【0043】
第1、第2のインピーダンス変換回路41、44は、いわゆるボルテージフォロワ接続のオペアンプである。そして第1のインピーダンス変換回路41は、電圧生成回路40からの電圧レベルV2’を受け、インピーダンス変換後の電圧レベルV2を出力する。第2のインピーダンス変換回路44は、電圧生成回路40からの電圧レベルV3’を受け、インピーダンス変換後の電圧レベルV3を出力する。
【0044】
第1のインピーダンス変換回路41は、第1の差動部42と第1の出力部43を有し、第2のインピーダンス変換回路44は、第2の差動部45と第2の出力部46を有する。
【0045】
第1のインピーダンス変換回路41の出力部43は、第1の電流源IS1と第1の駆動トランジスターTB5を含む。電流源IS1は、高電位側電源VDDのノードと第1の出力ノードNQ1との間に設けられる。この電流源IS1は、例えばバイアス電圧がゲートに印加されたP型のトランジスター或いはドレインとゲートが接続されたP型のトランジスターなどにより実現できる。N型の駆動トランジスターTB5は、出力ノードNQ1と低電位側電源VSSのノードとの間に設けられ、差動部42によりそのゲートが制御される。
【0046】
第1のインピーダンス変換回路41の差動部42は、VDD側に設けられた電流源IS3と、差動対を構成するP型のトランジスターTB1、TB2と、カレントミラー回路を構成するN型のトランジスターTB3、TB4により構成される。
【0047】
第2のインピーダンス変換回路44の出力部46は、第2の駆動トランジスターTA5と第2の電流源IS2とを含む。P型の駆動トランジスターTA5は、VDDのノードと第2の出力ノードNQ2の間に設けられ、差動部45によりそのゲートが制御される。電流源IS2は、出力ノードNQ2とVSSのノードの間に設けられる。この電流源IS2は、例えばバイアス電圧がゲートに印加されたN型のトランジスター或いはドレインとゲートが接続されたN型のトランジスターなどにより実現できる。
【0048】
第2のインピーダンス変換回路44の差動部45は、VSS側に設けられた電流源IS4と、差動対を構成するN型のトランジスターTA1、TA2と、カレントミラー回路を構成するP型のトランジスターTA3、TA4により構成される。
【0049】
図2のように、V2、V3のラインに、各々、第1、第2のインピーダンス変換回路41、44で接続することで、低消費電力化を実現できる。即ち、駆動期間においてインピーダンス変換回路側へと移動させる必要がある電荷量の極性が正極性になるV2のラインには、正の電荷を多く引ける第1のインピーダンス変換回路41を接続する。一方、駆動期間においてインピーダンス変換回路側へと移動させる必要がある電荷量の極性が負極性になるV3のラインには、負の電荷を多く引ける第2のインピーダンス変換回路44を接続する。こうすることで、電流源IS1、IS2に流れる定電流を小さくすることが可能になり、出力部43、46においてVDDからVSSに流れる電流を小さくできるため、低消費電力化を図れる。
【0050】
2.駆動方法
次に本実施形態の駆動方法について説明する。図3(A)に示すように本実施形態では、電圧平均化法等により液晶パネルを駆動する。例えば図3(A)では、電源としてV1、V2、V3、V4の4つの電圧レベルを用いて、液晶パネルを駆動する。V1は、例えば低電位側電源VSSの電圧レベルであり、V4は、例えば高電位側電源VDDの電圧レベルである。
【0051】
例えばコモン信号COMの電圧レベルがV4であり、セグメント信号SEGの電圧レベルがV1である場合には、液晶素子(広義には電気光学素子)には、V4−V1となるオン電圧が印加される。一方、コモン信号COMの電圧レベルがV2であり、セグメント信号SEGの電圧レベルがV3である場合には、液晶素子には、V2−V3となるオフ電圧VOFFが印加される。
【0052】
図3(B)に示すように液晶素子は容量性の素子であるため、セグメント線とコモン線の間には、液晶素子の容量が介在する。このためセグメント信号、コモン信号の一方の信号の電圧レベルが変化すると、その電圧レベルの変化が他方の信号に及ぶことになる。
【0053】
図4(A)、図4(B)に比較例の駆動方法の波形例を示す。図4(A)はコモン信号の波形例であり、図4(B)はセグメント信号の波形例である。図4(A)、図4(B)の信号波形は1/4デューティー、1/3バイアスの例であり、これらの信号波形により図4(C)に示すような表示が可能になる。図4(C)はノーマリホワイトの例であり、液晶素子に印加される実効電圧がオン電圧レベルである場合に各画素は黒表示になり、オフ電圧レベルである場合に各画素は白表示になる。
【0054】
次に図4(A)、図4(B)の比較例の駆動方法の問題点について、図5(A)〜図6(B)を用いて説明する。
【0055】
図5(A)は、図4(B)のA1の部分を拡大した図である。図5(A)に示すように、セグメント信号SEG(SEG4)の電圧レベルは、第1の電源VD1の電圧レベルV1から第4の電源VD4の電圧レベルV4に変化している。このとき、コモン信号COM(COM3)の電圧レベルが、図4(A)のB1に示すように、第2の電源VD2の電圧レベルV2から第3の電源VD3の電圧レベルV3に変化したとする。この場合に、図5(A)は、図4(C)のCOM3とSEG4の交点での非選択時の信号波形に相当する。
【0056】
図5(A)のようにセグメント信号SEGの電圧レベルをV1からV4に変化させる場合には、図2のセグメント信号出力回路SQのスイッチ素子SS1がオン(SS2、SS3、SS4はオフ)になり、次にスイッチ素子SS4がオン(SS1、SS2、SS3はオフ)になる。またコモン信号COMの電圧レベルをV2からV3に変化させる場合には、コモン信号出力回路CQのスイッチ素子SC2がオン(SC1、SC3、SC4はオフ)になり、次にスイッチ素子SC3にオン(SC1、SC2、SC4はオフ)になる。
【0057】
そして電圧レベルV1、V4は、各々、固定の電源VDD、VSS(VD1、VD4)から供給されるため、セグメント信号SEGの波形は図5(B)のE1に示すようにほとんど鈍ることなく変化する。一方、コモン信号COMの波形はE2に示すような波形になってしまう。
【0058】
即ちE3に示す電圧レベルの切り替わり時にセグメント信号SEGは、対向するコモン信号COMを、これらの間に介在する液晶素子の容量(図3(B)参照)により、上側の電圧レベル(電位)に押し上げようとする。そしてコモン信号COMの電圧レベルが上昇すると、図2のオン状態のスイッチ素子SC3を介して、電源VD3の電圧レベルV3も上昇してしまう。
【0059】
このとき、第2のインピーダンス変換回路44は、上昇した電圧レベルV3を、出力部46の電流源IS2に流れる定電流により正常な電圧レベルに戻そうとする。しかしながら、電流源IS2に流れる定電流が小さいと、正常な電圧レベルに戻るまでに時間がかかってしまい、コモン信号COMの波形は図5(B)のE2に示すような波形になってしまう。この場合に、電流源IS2に流れる電流を大きくすれば、正常な電圧レベルに戻るまでの時間を短縮できるが、電流源IS2に流れる電流が大きくなると、消費電流が大きくなってしまう。
【0060】
そしてコモン信号COMが図5(B)のE2に示すような波形になってしまうと、液晶素子に印加される実効電圧も減少してしまい、表示特性が悪化する。例えば図5(B)ではオフ電圧レベルの実効電圧が小さくなってしまい、例えば白表示であるべき画素が黒表示に近づいてしまう。
【0061】
一方、図6(A)は、図4(B)のA2の部分を拡大した図である。図6(A)に示すようにセグメント信号SEG(SEG3)の電圧レベルはV1からV2に変化している。このときコモン信号COM(COM1)の電圧レベルが、図4(A)のB2に示すようにV2からV1に変化したとする。この場合に、図6(A)は、図5(C)のCOM1とSEG3の交点での非選択時の信号波形に相当する。
【0062】
図6(A)のようにセグメント信号SEGの電圧レベルをV1からV2に変化させる場合には、図2のセグメント信号出力回路SQのスイッチ素子SS1がオン(SS2、SS3、SS4はオフ)になり、次にスイッチ素子SS2がオン(SS1、SS3、SS4はオフ)になる。またコモン信号COMの電圧レベルをV2からV1に変化させる場合には、コモン信号出力回路CQのスイッチ素子SC2がオン(SC1、SC3、SC4はオフ)になり、次にスイッチ素子SC1がオン(SC2、SC3、SC4はオフ)になる。
【0063】
そしてコモン信号COMの波形は図6(B)のE4に示すようにほとんど鈍ることなく変化するが、セグメント信号SEGの波形はE5に示すような波形になってしまう。
【0064】
即ちE6に示す電圧レベルの切り替わり時に、コモン信号COMは、対向するセグメント信号SEGを、これらの間に介在する液晶素子の容量により、下側の電圧レベルに押し下げようとする。そしてセグメント信号SEGの電圧レベルが下がると、図2のオン状態のスイッチ素子SS2を介して、電源VD2の電圧レベルV2も下がってしまう。
【0065】
このとき、V2のラインに接続される第1のインピーダンス変換回路41は、下降した電圧レベルV2を、出力部43の電流源IS1に流れる定電流により正常な電圧レベルに戻そうとする。しかしながら、電流源IS1に流れる定電流が小さいと、正常な電圧レベルに戻るまでに時間がかかってしまい、セグメント信号SEGの波形は図6(B)のE5に示すような波形になってしまう。この場合に、電流源IS1に流れる電流を大きくすれば、正常な電圧レベルに戻るまでの時間を短縮できるが、電流源IS1に流れる電流が大きくなると、消費電流が大きくなってしまう。
【0066】
そしてセグメント信号SEGが図6(B)のE5に示すような波形になってしまうと、液晶素子に印加される実効電圧も小さくなってしまい、表示特性が悪化する。例えば図6(B)ではオフ電圧レベルの実効電圧が小さくなってしまい、例えば白表示であるべき画素が黒表示に近づいてしまう。
【0067】
また図5(A)〜図6(B)の問題を解決する手法としてV2のラインやV3のラインに平滑用のコンデンサを設ける手法も考えられる。しかしながら、この手法によると、電子機器の部品点数が多くなって高コスト化を招いたり、実装面積が大面積化するなどの問題がある。また第1、第2のインピーダンス変換回路として例えばAB級のオペアンプを採用すると、消費電力が増加するなどの問題も生じる。
【0068】
以上のような問題を解決する本実施形態の駆動方法の波形例を、図7(A)、図7(B)に示す。図7(A)、図7(B)の信号波形は、図4(A)、図4(B)と同様に1/4デューティー、1/3バイアスの例であり、図4(C)に示すような表示を行う場合の信号波形例である。本実施形態では、電圧レベルの切り替わり時の遷移期間において、液晶素子に対してオフ電圧レベルが印加されるように、セグメント信号やコモン信号の電圧レベルを設定する。
【0069】
図8(A)は、図7(B)のC1の部分を拡大した図である。ここではコモン信号COMの電圧レベルが図7(A)のD1に示すように変化した場合を示している。
【0070】
図8(A)と図5(A)を比較すれば明らかなように、本実施形態では、セグメント信号SEGの電圧レベルが第1の電圧レベルV1に設定される期間T1から第4の電圧レベルV4に設定される期間T2への第1の遷移期間TTにおいて、セグメント信号SEGの電圧レベルを第3の電圧レベルV3に設定している。
【0071】
具体的には図8(A)では、セグメント信号出力回路SQは、期間T1(第1の期間)において、セグメント信号SEGの電圧レベルをV1に設定する。そして期間T1に続く遷移期間TT(第1の遷移期間)において、F1に示すようにセグメント信号SEGの電圧レベルをV3に設定し、遷移期間TTに続く期間T2(第2の期間)において、V4に設定する。即ちV1からV3、V3からV4というように電圧レベルを変化させる。
【0072】
一方、コモン信号出力回路CQは、遷移期間TTにおいて、F2に示すようにコモン信号COMの電圧レベルをV2に設定する。このようにすればF1、F2に示すように、前後の期間での電圧レベルがオン電圧レベルあるかオフ電圧レベルであるかに依存せずに、遷移期間TTにおいて液晶素子に対して常にオフ電圧レベルが印加されるようになり、図5(B)で説明した問題を解決できる。
【0073】
即ち、図8(A)のF1に示すように、セグメント信号SEGの電圧レベルがV1からV3に変化した際に、F2に示すようにコモン信号COMの電圧レベルはV2に維持されている。そして図2に示すようにV2のラインは、第1のインピーダンス変換回路41の出力部43が有するN型の駆動トランジスターTB5に接続されている。
【0074】
従って、F3に示す電圧レベルの切り替わり時に、セグメント信号SEGが、対向するコモン信号COMを、介在する液晶素子の容量により、上側の電圧レベルに押し上げようとした場合にも、これに対処できる。即ちV2のラインに接続されるN型の駆動トランジスターTB5がVSS側に十分な電流(電荷)を流すことで、コモン信号COMの電圧レベルがほとんど上がらないようになる。
【0075】
また遷移期間TTでは、F1に示すようにセグメント信号SEGの電圧レベルはV3に設定される。そして図2に示すようにV3のラインは、第2のインピーダンス変換回路44の出力部46が有するP型の駆動トランジスターTA5に接続されている。従って、V3のラインに接続されるP型の駆動トランジスターTA5がVDD側から十分な電流(電荷)を供給することで、V3の電圧レベルも維持されるようになる。
【0076】
そして図8(A)のF4のタイミングでセグメント信号SEGの電圧レベルがV3からV4に変化すると、液晶素子の容量により、コモン信号COMの電圧レベルがそのまま引き上げられ、V2からV3に変化するようになる。
【0077】
即ち、期間T1では、コモン信号COMの電圧レベルV2の方がセグメント信号SEGの電圧レベルV1よりも高く、遷移期間TTでは、セグメント信号SEGの電圧レベルV3の方がコモン信号COMの電圧レベルV2よりも高い。従って、期間T1から遷移期間TTへの切り替わり時には、液晶素子の容量への印加電圧が例えば正電圧から負電圧に切り替わるため、第1、第2のインピーダンス変換回路41、44に高い電流供給能力が要求される。
【0078】
この点、図8(A)では、上述のようにV3のラインに接続される第2のインピーダンス変換回路44のP型の駆動トランジスターTA5が、高い電流供給能力でセグメント信号SEGをV1からV3に引き上げる。また、セグメント信号SEGがV1からV3に上昇し、液晶素子の容量を介してコモン信号COMの電圧レベルを押し上げようとした場合にも、V2のラインには、第1のインピーダンス変換回路41のN型の駆動トランジスターTB5が接続されている。従って、コモン信号COMの電圧レベルが押し上げられてしまうのを防止できる。
【0079】
一方、遷移期間TTから期間T2への切り替わりの際には、液晶素子の容量の印加電圧の極性は変化しない。このため、液晶素子の容量の印加電圧が正極性から負極性に変化する期間T1から遷移期間TTへの切り替わりの場合とは異なり、セグメント信号SEG、コモン信号COMは、V3−V2の電圧差を維持したまま、各々、V4、V3に変化するようになる。
【0080】
図8(B)は、図7(B)のC2の部分を拡大した図である。ここではコモン信号COMの電圧レベルが図7(A)のD2に示すように変化した場合を示している。図8(B)では、セグメント信号SEGの電圧レベルが第4の電圧レベルV4に設定される期間T1から第1の電圧レベルV1に設定される期間T2への第2の遷移期間TTにおいて、セグメント信号SEGの電圧レベルを第2の電圧レベルV2に設定している。
【0081】
具体的には図8(B)では、セグメント信号出力回路SQは、期間T1(第3の期間)において、セグメント信号SEGの電圧レベルをV4に設定する。そして遷移期間TT(第2の遷移期間)において、F5に示すようにセグメント信号SEGの電圧レベルをV2に設定し、期間T2(第4の期間)において、V1に設定する。即ちV4からV2、V2からV1というように電圧レベルを変化させる。
【0082】
一方、コモン信号出力回路CQは、遷移期間TTにおいて、F6に示すようにコモン信号COMの電圧レベルをV3に設定する。
【0083】
このようにすればF5、F6に示すように、遷移期間TTにおいて液晶素子に対してオフ電圧レベルが印加されるようになる。そしてV3のラインには、高い駆動能力でVDD側に電位を引っ張ることができるP型のトランジスターTA5が接続されている。従って、セグメント信号SEGの電圧レベルの変化により、コモン信号COMの電圧レベルが引き下げられてしまう事態等を防止できる。
【0084】
図9(A)は、図7(B)のC3の部分を拡大した図である。ここではコモン信号COMの電圧レベルが図7(A)のD3に示すように変化した場合を示している。図9(A)では、セグメント信号SEGの電圧レベルが第1の電圧レベルV1に設定される期間T1から第2の電圧レベルV2に設定される期間T2への第1の遷移期間TTにおいて、セグメント信号SEGの電圧レベルを第3の電圧レベルV3に設定している。
【0085】
具体的には図9(A)では、セグメント信号出力回路SQは、期間T1(第1の期間)において、セグメント信号SEGの電圧レベルをV1に設定する。そして遷移期間TT(第1の遷移期間)において、G1に示すようにセグメント信号SEGの電圧レベルをV3に設定し、期間T2(第2の期間)において、V2に設定する。即ちV1からV3、V3からV2というように電圧レベルを変化させる。
【0086】
一方、コモン信号出力回路CQは、遷移期間TTにおいて、G2に示すようにコモン信号COMの電圧レベルをV2に維持する。このようにすればG1、G2に示すように、遷移期間TTにおいて液晶素子に対してオフ電圧レベルが印加されるようになり、図6(B)で説明した問題を解決できる。
【0087】
即ち、図9(A)のG1に示すようにセグメント信号SEGの電圧レベルがV1からV3から変化した際に、G2に示すようにコモン信号COMの電圧レベルはV2に設定されている。従って、図6(B)のE5のようにセグメント信号SEGの電圧レベルがVSS側に押し下げられることが防止される。またV2のラインには、第1のインピーダンス変換回路41のN型のトランジスターTB5が接続されているため、セグメント信号SEGがV1からV3に変化しても、コモン信号COMの電圧レベルはV2に維持される。
【0088】
そしてG4のタイミングでセグメント信号SEGの電圧レベルがV3からV2に変化すると、液晶素子の容量により、コモン信号COMの電圧レベルもそのまま引き下げられ、V2からV1に変化するようになる。
【0089】
図9(B)は、図7(B)のC4の部分を拡大した図である。ここではコモン信号COMが図7(A)のD2に示すように変化した場合を示している。図9(B)では、セグメント信号SEGの電圧レベルが第4の電圧レベルV4に設定される期間T1から第3の電圧レベルV3に設定される期間T2への第2の遷移期間TTにおいて、セグメント信号SEGの電圧レベルを第2の電圧レベルV2に設定している。
【0090】
具体的には図9(B)では、セグメント信号出力回路SQは、期間T1(第3の期間)において、セグメント信号SEGの電圧レベルをV4に設定する。そして遷移期間TT(第2の遷移期間)において、G5に示すようにセグメント信号SEGの電圧レベルをV2に設定し、期間T2(第4の期間)において、V3に設定する。即ちV4からV2、V2からV3というように電圧レベルを変化させる。
【0091】
一方、コモン信号出力回路CQは、遷移期間TTにおいて、G6に示すようにコモン信号COMの電圧レベルをV3に設定する。
【0092】
このようにすればG5、G6に示すように、遷移期間TTにおいて液晶素子に対してオフ電圧レベルが印加されるようになる。そしてコモン信号COMの電圧レベルの変化により、セグメント信号SEGの電圧レベルが引き上げられてしまう事態等を防止できる。
【0093】
図10(A)は、図7(B)のC5の部分を拡大した図である。ここではコモン信号COMの電圧レベルが図7(A)のD5に示すように変化した場合を示している。図10(A)では、セグメント信号SEGが2つの期間に亘って第1の電圧レベルV1に設定されている。そして、2つの期間のうちの前半期間T1と後半期間T2の間の第3の遷移期間TTにおいて、セグメント信号SEGの電圧レベルを第3の電圧レベルV3に設定している。
【0094】
具体的には図10(A)では、セグメント信号出力回路SQは、期間T1(第5の期間)において、セグメント信号SEGの電圧レベルをV1に設定する。そして遷移期間TT(第3の遷移期間)において、H1に示すようにセグメント信号SEGの電圧レベルをV3に設定し、期間T2(第6の期間)において、V1に設定する。即ちV1からV3、V3からV1というように電圧レベルを変化させる。
【0095】
一方、コモン信号出力回路CQは、遷移期間TTにおいて、H2に示すようにコモン信号COMの電圧レベルをV2に設定する。
【0096】
このようにすればH1、H2に示すように、遷移期間TTにおいて液晶素子に対してオフ電圧レベルが印加されるようになる。そして液晶に印加される実効電圧を、図8(A)〜図9(B)で説明した波形例と同等にすることが可能になる。
【0097】
図10(B)は、図7(B)のC6の部分を拡大した図である。ここではコモン信号COMの電圧レベルが図7(A)のD6に示すように変化した場合を示している。図10(B)では、セグメント信号SEGが2つの期間に亘って第4の電圧レベルV4に設定されている。そして、2つの期間のうちの前半期間T1と後半期間T2の間の第4の遷移期間TTにおいて、セグメント信号SEGの電圧レベルを第2の電圧レベルV2に設定している。
【0098】
具体的には図10(B)では、セグメント信号出力回路SQは、期間T1(第7の期間)において、セグメント信号SEGの電圧レベルをV4に設定する。そして遷移期間TT(第4の遷移期間)において、H5に示すようにセグメント信号SEGの電圧レベルをV2に設定し、期間T2(第8の期間)において、V4に設定する。即ちV4からV2、V2からV4というように電圧レベルを変化させる。
【0099】
一方、コモン信号出力回路CQは、遷移期間TTにおいて、H6に示すようにコモン信号COMの電圧レベルをV3に設定する。
【0100】
このようにすればH5、H6に示すように、遷移期間TTにおいて液晶素子に対してオフ電圧レベルが印加されるようになる。そして液晶に印加される実効電圧を、図8(A)〜図9(B)で説明した波形例と同等にすることが可能になる。
【0101】
以上に説明した本実施形態の手法によれば、セグメント信号及びコモン信号の一方の信号の電圧レベルの変化が他方の信号に及ぼす悪影響を低減できる。従って図5(B)や図6(B)で説明したような問題を解決でき、表示品質の劣化の防止等が可能になる。
【0102】
また図5(B)、図6(B)の問題を解決する手法として、V2、V3のライン等に平滑用のコンデンサを設ける手法が考えられるが、この手法では、外部コンデンサが必要になり、高コスト化を招く。この点、本実施形態の手法によれば、このようなコンデンサを不要にすることができ、低コスト化や装置の小規模化を図れる。
【0103】
また図5(B)、図6(B)の問題を解決する手法として、第1、第2のインピーダンス変換回路の出力部の電流源に流れる電流を大きくする手法も考えられるが、この手法を採用すると、低消費電力化を実現することが難しくなる。この点、本実施形態の手法によれば、第1、第2のインピーダンス変換回路の出力部の電流源に流れる電流を大きくしなくても済むため、低消費電力化の実現が容易になる。また電源回路の単純化、小規模化も可能になる。
【0104】
なお図8(A)〜図10(B)において、遷移期間TTの長さは、例えば遷移期間TTの前後の期間T1、T2の長さの1/2以下に設定されている。望ましくは、遷移期間TTの長さは、例えば期間T1、T2の長さの1/4以下に設定され、更に望ましくは、遷移期間TTの長さは、T1、T2の1/8以下や1/16以下や1/32以下に設定される。このようにすることで、遷移期間TTが短くなった分だけ、有効な駆動期間を長くできる。
【0105】
また本実施形態では、第1の電圧レベルをV1とし、第2の電圧レベルをV2とし、第3の電圧レベルをV3とし、第4の電圧レベルをV4とした場合に、例えばV1<V2<V3<V4の関係が成り立つ。また例えばV4−V3=V3−V2=V2−V1の関係が成り立つ。即ち各電圧レベル間の電位差は等しくなる。但し、これらの関係が成り立たない変形実施も可能である。また以上では第1〜第4の電圧レベルを用いる4レベルの駆動方法に本実施形態を適用した場合について説明したが、本実施形態はこれに限定されず、例えば6レベルの駆動方法等にも適用可能である。
【0106】
3.駆動方法の変形例
図11(A)、図11(B)に比較例の駆動方法の他の波形例を示す。この比較例の駆動方法では、例えばI1、I2に示すように、各選択期間内において、液晶素子の印加電圧の極性反転を行っている。即ち図7(A)、図7(B)では、D7、C7に示すように、各選択期間内においては液晶素子の印加電圧の極性は反転させていないが、図11(A)、図11(B)では、各選択期間内において液晶素子の印加電圧の極性を反転している。
【0107】
図12(A)、図12(B)は、図11(A)、図11(B)の駆動方法に本実施形態の手法を適用した場合の波形例である。図12(A)、図12(B)では、各遷移期間において液晶素子に対してオフ電圧レベルが印加されている。
【0108】
具体的には例えば図12(B)のJ1では、図8(A)と同様に、セグメント信号SEGの電圧レベルをV1からV3、V3からV4というように変化させている。そしてセグメント信号SEGの電圧レベルがV3になる遷移期間において、例えば図12(A)のK1に示すように、コモン信号COMの電圧レベルをV2に設定する。
【0109】
また図12(B)のJ2では、図8(B)と同様に、セグメント信号SEGの電圧レベルをV4からV2、V2からV1というように変化させている。そしてセグメント信号SEGの電圧レベルがV2になる遷移期間において、例えば図12(A)のK2に示すように、コモン信号COMの電圧レベルをV3に設定する。
【0110】
また図12(B)のJ3では、図9(A)と同様に、セグメント信号SEGの電圧レベルをV1からV3、V3からV2というように変化させている。そしてセグメント信号SEGの電圧レベルがV3になる遷移期間において、例えば図12(A)のK3に示すように、コモン信号COMの電圧レベルをV2に設定する。
【0111】
また図12(B)のJ4では、図9(B)と同様に、セグメント信号SEGの電圧レベルをV4からV2、V2からV3というように変化させている。そしてセグメント信号SEGの電圧レベルがV2になる遷移期間において、例えば図12(A)のK4に示すように、コモン信号COMの電圧レベルをV3に設定する。
【0112】
以上のようにすることで図7(A)〜図10(B)等と同様に、セグメント信号SEGやコモン信号COMの電圧レベルが、液晶素子の容量を介して押し上げられたり、押し下げられたりする事態を防止できる。これにより、オフ電圧レベル等の実効電圧が変動して表示品質が悪化してしまう事態を効果的に防止できる。
【0113】
なお本実施形態の駆動方法は図7(A)、図7(B)や図12(A)、図12(B)等に限定されず、これらと同等な種々の駆動方法を採用できる。
【0114】
4.電子機器
図13に本実施形態の集積回路装置100を含む電子機器の構成例を示す。この電子機器は、集積回路装置100、電気光学パネル110、操作部120、処理部130、記憶部140を含む。なおこれらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。また本実施形態の電気光学装置は、例えば電気光学パネル110と集積回路装置100などにより実現できる。
【0115】
集積回路装置100は、電気光学パネル110を駆動するドライバーである。なお集積回路装置100はドライバー以外の機能を有していてもよく、例えばドライバーを内蔵するマイクロコンピューター等であってもよい。
【0116】
電気光学パネル110は、各種画像を表示するためのものであり、例えば液晶パネル等により実現できる。なお電気光学パネル110は液晶パネルに限定されず、例えば電気泳動パネル(EPD:Electrophoretic Display)等であってもよい。
【0117】
操作部120は、ユーザーが各種情報を入力するためのものであり、各種ボタン、キーボード等により実現できる。処理部130は、電子機器の動作等に必要な各種の制御処理や演算処理を行う。この処理部130は例えばCPU等のプロセッサーにより実現できる。記憶部140は、各種データを記憶するものであり、RAMやROM等により実現できる。
【0118】
なお本実施形態により実現される電子機器としては、例えば、車載用機器、携帯電話機、電子ペーパ、時計、リモコン、液晶テレビ、カーナビゲーション装置、電卓、携帯型情報端末、各種家電機器等の種々の機器を想定できる。
【0119】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。また集積回路装置、電気光学装置、電子機器の構成・動作や、駆動方法等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0120】
VD1〜VD4 第1〜第4の電源、V1〜V4 第1〜第4の電圧レベル、
SQ1〜SQi セグメント信号出力回路、CQ1〜CQj コモン信号出力回路、
SEG1〜SEGi セグメント信号、COM1〜COMi コモン信号、
10 セグメントドライバー、20 コモンドライバー、30 電源回路、
40 電圧生成回路、41 第1のインピーダンス変換回路、42 差動部、
43 出力部、44 第2のインピーダンス変換回路、45 差動部、46 出力部、
50 表示メモリー、52 アドレス制御回路、60 コモンカウンター、
90 制御回路、100 集積回路装置、110 電気光学パネル、120 操作部、
130 処理部、140 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセグメント信号出力回路を有し、複数のセグメント線を駆動するセグメントドライバーと、
複数のコモン信号出力回路を有し、複数のコモン線を駆動するコモンドライバーと、
第1の電圧レベルである第1の電源と、第2の電圧レベルである第2の電源と、第3の電圧レベルである第3の電源と、第4の電圧レベルである第4の電源を、前記セグメントドライバー、前記コモンドライバーに供給する電源回路とを含み、
前記複数のセグメント信号出力回路の各セグメント信号出力回路は、
セグメント信号の電圧レベルが前記第1の電圧レベルに設定される期間から前記セグメント信号の電圧レベルが前記第4の電圧レベルに設定される期間への第1の遷移期間において、前記セグメント信号の電圧レベルを前記第3の電圧レベルに設定し、
前記セグメント信号の電圧レベルが前記第4の電圧レベルに設定される期間から前記セグメント信号の電圧レベルが前記第1の電圧レベルに設定される期間への第2の遷移期間において、前記セグメント信号の電圧レベルを前記第2の電圧レベルに設定することを特徴とする集積回路装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数のコモン信号出力回路の各コモン信号出力回路は、
前記第1の遷移期間において、コモン信号の電圧レベルを前記第2の電圧レベルに設定し、前記第2の遷移期間において、前記コモン信号の電圧レベルを前記第3の電圧レベルに設定することを特徴とする集積回路装置。
【請求項3】
複数のセグメント信号出力回路を有し、複数のセグメント線を駆動するセグメントドライバーと、
複数のコモン信号出力回路を有し、複数のコモン線を駆動するコモンドライバーと、
第1の電圧レベルである第1の電源と、第2の電圧レベルである第2の電源と、第3の電圧レベルである第3の電源と、第4の電圧レベルである第4の電源を、前記セグメントドライバー、前記コモンドライバーに供給する電源回路とを含み、
前記複数のセグメント信号出力回路の各セグメント信号出力回路は、
セグメント信号の電圧レベルが前記第1の電圧レベルに設定される期間から前記セグメント信号の電圧レベルが前記第2の電圧レベルに設定される期間への第1の遷移期間において、前記セグメント信号の電圧レベルを前記第3の電圧レベルに設定し、
前記セグメント信号の電圧レベルが前記第4の電圧レベルに設定される期間から前記セグメント信号の電圧レベルが前記第3の電圧レベルに設定される期間への第2の遷移期間において、前記セグメント信号の電圧レベルを前記第2の電圧レベルに設定することを特徴とする集積回路装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記各コモン信号出力回路は、
前記第1の遷移期間では、コモン信号の電圧レベルを前記第2の電圧レベルに設定し、前記第2の遷移期間では、前記コモン信号の電圧レベルを前記第3の電圧レベルに設定することを特徴とする集積回路装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記第1の遷移期間の長さは、前記第1の遷移期間の前後の期間の長さの1/2以下に設定され、前記第2の遷移期間の長さは、前記第2の遷移期間の前後の期間の長さの1/2以下に設定されることを特徴とする集積回路装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記複数のコモン信号出力回路の各コモン信号出力回路は、
前記セグメント信号が2つの期間に亘って前記第1の電圧レベルに設定される場合に、前記2つの期間のうちの前半期間と後半期間の間の第3の遷移期間において、前記セグメント信号の電圧レベルを前記第3の電圧レベルに設定し、
前記セグメント信号が2つの期間に亘って前記第4の電圧レベルに設定される場合に、前記2つの期間のうちの前半期間と後半期間の間の第4の遷移期間において、前記セグメント信号の電圧レベルを前記第2の電圧レベルに設定することを特徴とする集積回路装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記各コモン信号出力回路は、
前記第3の遷移期間では、コモン信号の電圧レベルを前記第2の電圧レベルに設定し、前記第4の遷移期間では、前記コモン信号の電圧レベルを前記第3の電圧レベルに設定することを特徴とする集積回路装置。
【請求項8】
請求項6又は7において、
前記第3の遷移期間の長さは、前記第3の遷移期間の前後の期間の長さの1/2以下に設定され、前記第4の遷移期間の長さは、前記第4の遷移期間の前後の期間の長さの1/2以下に設定されることを特徴とする集積回路装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかにおいて、
前記電源回路は、
第1の差動部と第1の出力部を有し、前記第2の電源を供給する第1のインピーダンス変換回路と、
第2の差動部と第2の出力部を有し、前記第3の電源を供給する第2のインピーダンス変換回路を含み、
前記第1のインピーダンス変換回路の前記第1の出力部は、
高電位側電源ノードと第1の出力ノードとの間に設けられた第1の電流源と、
前記第1の出力ノードと低電位側電源ノードとの間に設けられ、前記第1の差動部によりゲートが制御される第1の駆動トランジスターを含み、
前記第2のインピーダンス変換回路の前記第2の出力部は、
前記高電位側電源ノードと第2の出力ノードとの間に設けられ、前記第2の差動部によりゲートが制御される第2の駆動トランジスターと、
前記第2の出力ノードと前記低電位側電源ノードとの間に設けられた第2の電流源を含むことを特徴とする集積回路装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかにおいて、
前記第1の電圧レベルをV1とし、前記第2の電圧レベルをV2とし、前記第3の電圧レベルをV3とし、前記第4の電圧レベルをV4とした場合に、V1<V2<V3<V4であることを特徴とする集積回路装置。
【請求項11】
請求項10において、
V4−V3=V3−V2=V2−V1であることを特徴とする集積回路装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の集積回路装置を含むことを特徴とする電気光学装置。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれかに記載の集積回路装置を含むことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−204592(P2010−204592A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52880(P2009−52880)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】