説明

集積装置及び、該集積装置を搭載したLLC共振コンバータ

【課題】本発明は、変圧器と共に他の受動素子を集積する集積装置及び該集積装置を搭載したLLC共振コンバータを提供することを目的とする。
【解決手段】
受動素子の集積化を前提にして、磁性コア(10)に巻回された、表面に銅層を有する第一のフレキシブル基板(30)と、前記第一のフレキシブル基板(30)の最外周面を囲むように前記磁性コア(10)に巻回された、表面に銅層を有する第二のフレキシブル基板(20)と、前記第一のフレキシブル基板(30)及び前記第二のフレキシブル基板(20)の間に介在させた前記磁性材料の層(40)と、を有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は受動素子を集積する集積装置に関し、特に変圧器と共に他の受動素子を集積する集積装置及び該集積装置により構成されたLLC共振コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年来、民生用電子製品における「軽、薄、小」への発展の趨勢は電子用の電力変換装置についてますます高い出力密度を求めるようになっている。高い出力密度を実現するためには、受動素子の体積を如何に低減するかということが鍵となる。なぜならば電子用の電力変換装置における受動素子は全体積の大部分を占めているからである。高周波化が受動素子の体積を低減する一つの重要な方向である。
【0003】
また別の方向性が受動素子の集積である。これについては、金属箔巻製の小型インダクタ−キャパシタプロセッサを開示して、インダクタとキャパシタの集積を実現している(特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】中国特許ZL02801543.6
【特許文献2】国際出願公開WO02/093593
【特許文献3】特表2004−529574
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子用の電力変換装置は、とりわけ民生用電子製品中に応用される電子用の電力変換装置は、安全性の考慮から、通常は変圧器で絶縁する必要がある。
もし電力変換装置において変圧器、インダクタ及びキャパシタの集積が実現できれば、更に広範囲の受動素子の集積となり、更に有意義なものとなる。しかし、これまで、変圧器と共に他の受動素子が集積されたものはない。そのため、電力変換装置における集積化が進まないという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、変圧器と共に他の受動素子を集積する集積装置及び該集積装置を搭載したLLC共振コンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために以下のように構成する。
本発明の集積装置の態様の一つは、受動素子を集積するものであって、磁性コアに巻回された、表面に銅層を有する第一のフレキシブル基板と、前記第一のフレキシブル基板の最外周面を囲むように前記磁性コアに巻回された、表面に銅層を有する第二のフレキシブル基板と、前記第一のフレキシブル基板及び前記第二のフレキシブル基板の間に介在させた前記磁性材料の層と、を有するように構成する。
【0007】
なお、前記第一のフレキシブル基板については、相互に絶縁された二つ以上の銅層を有するように構成しても良い。
また、前記磁性コアは、前記第一のフレキシブル基板及び第二のフレキシブル基板の巻回面に垂直に錯交する磁束の通過経路に設けられている、ことが好ましい。
【0008】
また、前記磁性コアの一部に励磁インダクタンス値の調整用としてのエアギャップを有する、ことが好ましい。
前記磁性コアは、E形状をなす第一の磁性コアと、同じくE形状をなす第二の磁性コアの結合体で構成されてもよく、U形状をなす第一の磁性コアと、同じくU形状をなす第二の磁性コアの結合体で構成されてもよい。前者の場合、前記第一のフレキシブル基板及び第二のフレキシブル基板は、3個の磁性コア柱体のうち中央の磁性コア柱体に巻装され、後者の場合、磁性コア柱体の一方に巻装される。
【0009】
また、前記第一のフレキシブル基板及び/又は第二のフレキシブル基板にポリイミドフィルムが使用されている、ことが好ましく、前記第一のフレキシブル基板及び前記第二のフレキシブル基板の間に介在する磁性材料にはフェライトポリマが使用されても良い。
【0010】
本発明の集積装置においては、第一のフレキシブル基板と第二のフレキシブル基板と磁性コアが変圧器を構成する。そして、第一のフレキシブル基板と第二のフレキシブル基板との間に磁性材料層があることにより第一のフレキシブル基板はコイルとして動作してインダクタを構成する。また、前記第一のフレキシブル基板は、上記銅層として、相互に絶縁された二つ以上の銅層を備える場合に、キャパシタを構成する。
【0011】
本発明のLLC共振コンバータの態様の一つは、上述の集積装置の内の何れか一つに記載の集積装置を搭載するように構成する。
本発明のLLC共振コンバータにおいては、第一のフレキシブル基板と第二のフレキシブル基板の各銅層をそれぞれボンディングパッド等を介して回路に接続することにより、LLC共振コンバータ内の変圧器及び受動素子を集積することができる。特に、上記第一のフレキシブル基板が、相互に絶縁された二つ以上の銅層を備える第一フレキシブル基板である場合は、各銅層のそれぞれをボンディングパッド等を介して回路に接続する等することにより、LLC共振コンバータ内の変圧器と共に受動素子として共振キャパシタ又は共振インダクタ等を集積することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、変圧器と共に他の受動素子を集積することが可能となる。また、LLC共振コンバータの受動素子を変圧器に集積することができるため、体格あたりの出力密度が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明を実施するための最良の形態として、ここでは、LLC共振コンバータにおける受動素子の集積方法及び集積装置の構成について説明する。
【0014】
当該集積装置は、後述する両面フレキシブル基板及び片面フレキシブル基板のようなフレキシブル基板を使用して構成される。この「フレキシブル基板」は「Flexible Printed Circuit」の日本語訳であり、絶縁板の上に金属配線してなるプリント回路基板(Printed Circuit Board)の一種に分類される。フレキシブル基板の特に特徴的な点は、屈曲して巻回することができるほどに柔軟性に優れたもの、例えばアモルファス太陽電池用フィルムの基板に使用されている薄型且つ柔軟なポリイミドフィルム等、が上記絶縁板の代わりに用いられているということである。以下では、絶縁板の代わりに用いられているポリイミドフィルム等を、絶縁板と区別して単に「フレキシブル基板」と呼ぶことにする。また、フレキシブル基板により構成されているものの全体も適宜「フレキシブル基板」と呼ぶことにする。当該フレキシブル基板上には電気的な接続を実現するための様々な金属配線パターンを製作することもできるが、発明者らの応用においては、両面又は全面に銅層を敷設するなどして、この銅層に外部回路へ接続するためのボンディングパッドを設けて使用する。
【0015】
上記両面フレキシブル基板は表面に銅層を有する構造のフレキシブル基板である。ここで上記銅層として、相互に絶縁された二つ以上の銅層がフレキシブル基板の表面に備えられているとするならば、二つの銅層間に介在しているポリイミドフィルム等は絶縁媒体として作用するので、各銅層にそれぞれボンディングパッドを設けてLLC共振コンバータの外部回路(集積化されない電子部品により構成される回路等)に接続することにより、LLC共振コンバータ内の共振キャパシタが構成される。
【0016】
また、上記の両面フレキシブル基板を磁性コアに巻回することにより、上記銅層部分が後述する変圧器の一次巻線となり、LLC共振コンバータ内の並列接続のインダクタ(励磁インダクタ)が構成される。
【0017】
上記片面フレキシブル基板は一つの銅層を表面に有する構造のフレキシブル基板である。当該片面フレキシブル基板を、上記の磁性コアに、上記の両面フレキシブル基板の最外周面を囲むようにして巻回し、その上、片面フレキシブル基板の両端部分にボンディングパッドを設けてLLC共振コンバータの外部回路に接続することにより、片面フレキシブル基板の表面の銅層部分が上記一次巻線に対する二次巻線となり、LLC共振コンバータ内の変圧器が構成される。
【0018】
上記磁性コアは、上記の各銅層の周囲に発生する磁束を通しやすい磁性体からなり、空気よりも低抵抗な磁路を提供する。ここでは、上記一次巻線及び上記二次巻線を結合して、上記の変圧器を構成させている。この磁性コアにエアギャップを設ける等すれば、上記励磁インダクタの大きさの調節も可能になる。
【0019】
なお、上記両面フレキシブル基板と上記片面フレキシブル基板との間に更に磁性材料層を配置すれば、上記変圧器における漏れインダクタンスが増加し、LLC共振コンバータ内の直列接続のインダクタ(共振インダクタ)として活用できる。当該共振インダクタの大きさは上記の磁性材料層の厚み、高さ方向の長さ、巻回数等を変えることによって調節することができる。
【0020】
上記集積装置の製造は、両面フレキシブル基板と片面フレキシブル基板とを製作する工程と、磁性コアに両面フレキシブル基板及び片面フレキシブル基板、必要に応じて磁性材料層をそれぞれ巻回して固定する工程と、両面フレキシブル基板の銅層及び片面フレキシブル基板の銅層をボンディングパッドを介して外部回路と接続する工程とを通じて行われる。
(実施例1)
図1は、実施例1による上記集積装置の構造図である。図1(A) には集積装置の全体構造が、図1(B) には磁性コアの下半分に対応する部分の構造が示されている。
【0021】
図1(A) の集積装置1においては、上記磁性コアとして強磁性体からなるEE形状の磁性コア10を用いている。磁性コア10は、共にE形状をなし強磁性体からなる、第一の磁性コア( “上部コア10−1”)と、第二の磁性コア(“下部コア10−2”)の結合体で構成され、上下対称且つ左右位置に貫通孔が形成される配置で結合している。このように結合することにより、図1(A) の磁性コア10において、上下方向に延びた3個の磁性コア柱体即ち中央柱体10−5、側辺柱体10−6R、及び側辺柱体10−6Lを形成し、また、中央柱体10−5と側辺柱体10−6Rとの間及び中央柱体10−5と側辺柱体10−6Lとの間に、それぞれ、上記貫通孔としての開口部10−7R及び開口部10−7Lを形成している。
【0022】
そして、ここでは、表面に銅層を有する第一のフレキシブル基板として、相互に絶縁された二つの銅層(第一の銅層及び第二の銅層とも呼ぶ)を有する両面フレキシブル基板30と、表面に銅層を有する第二のフレキシブル基板として、全面に銅層を有する片面フレキシブル基板20とを、互いの基板間にフェライトポリマ(Ferrite Polymer Composite)等の磁性材料層40を介在させた状態で、上記片面フレキシブル基板20が上記両面フレキシブル基板30の最外周面を囲むように、開口部10−7R及び開口部10−7Lを通して中央柱体10−5に巻回して設けている。
【0023】
図1(B) において明らかであるが、上記の両面フレキシブル基板30は、中央柱体10−5の外周面側に片面を向けた状態で中央柱体10−5の周囲に2回巻きにして設けている。また、片面フレキシブル基板20は、片面を両面フレキシブル基板30の最外周面に沿うようにして中央柱体10−5の周囲に1回巻きにして、つまり最外周面を囲むようにして設けている。磁性材料層40は両面フレキシブル基板30の最外周面と片面フレキシブル基板20の最内周面との間に中央柱体10−5を一周して設けている。
【0024】
なお、磁性コア10と、各種フレキシブル基板20、30及び磁性材料層40とは、振動に耐えるように又は物理的な特性を変えないようにするために粘着テープ等によりしっかり固定することが望ましい。
【0025】
図2は図1(B) の上方側から見たときの両面フレキシブル基板30の厚さ方向の構造図である。
図2に示すように、両面フレキシブル基板30は、厚さ方向において、空白の矩形枠で示した互いに平行する銅層300U及び銅層300Dと、斜線部で示した層間(300U及び300Dの間)の絶縁層302と、これまた斜線部で示した、銅層300U及び銅層300Dの各々の露出面(同図においては銅層300Uの上側の境界線及び銅層300Dの下側の境界線が各々の露出面の一部として示されている)を覆う絶縁材304U及び絶縁材304Dとからなる構造をとっている。この構造は、例えば、ポリイミド(Polyimide)等を材料とするフレキシブル基板の両面、即ち上記厚さ方向に対して直交する表側の面及び裏側の面、に銅箔、絶縁材を順に敷設して構成される。
【0026】
このように、ここでは、両面フレキシブル基板30として、相互に絶縁された二つの銅層をフレキシブル基板の両面に備えたものが使用されている。
なお、フレキシブル基板の厚みは、現在の製造技術では様々な厚みにして実現することができるが、発明者らの設計要求としての柔軟性を考慮すると、例えば1mmオーダー等のような薄い厚さのものが良い。
【0027】
図3は図1(B)の両面フレキシブル基板30を図1(B)の上方向から見た状態である。同図において上記の各々の銅層300U、300Dの両端部を端部38、端部36、及び、端部37、端部35で示している。両面フレキシブル基板30とLLC共振コンバータの不図示の外部回路との接続は、同図に一例として示すように片側の銅層300Uの片側の端部38及びもう片側の銅層300Dの片側の端部35に、それぞれボンディングパッドを設け、不図示のボンディングワイヤを繋ぐ等して行う。
【0028】
図4は図1(B) の上方側から見たときの片面フレキシブル基板20の厚さ方向の構造図である。
図4に示すように、片面フレキシブル基板20は、空白の矩形枠で示した銅層200と、斜線部で示した、銅層200の露出面(同図においては銅層200の上側の境界線及び下側の境界線が各々の露出面の一部として示されている)を覆う絶縁材204U及び絶縁材204Dとからなる構造をとっている。
【0029】
この構造は、例えば、ポリイミド(Polyimide)等を材料とするフレキシブル基板の全面に銅箔を被覆し、その上から両面に絶縁材204U、204Dを敷設して構成される。
このように、ここでは、片面フレキシブル基板20として、フレキシブル基板の全面に一つの銅層を有するものが使用されている。
【0030】
なお、フレキシブル基板の厚みは、両面フレキシブル基板30と同様に例えば1mmオーダー等のような薄い厚さのものが良い。
図5は図1(B) の片面フレキシブル基板20を図1(B)の上方向から見た状態である。同図においては、上記の銅層200の長さ方向の両端部を端部23、端部24で示している。片面フレキシブル基板20とLLC共振コンバータの不図示の外部回路との接続は、同図に一例として示すように銅層200の片方の端部23及び他方の端部24に、それぞれボンディングパッドを設け、不図示のボンディングワイヤを繋ぐ等して行う。
【0031】
なお、上述の両面フレキシブル基板30の、端部35及び端部38を外部回路に接続した場合においての集中パラメータの等価回路は、次のようになる。即ち、図6に示すように、コンデンサ(後述する図7の回路図中の共振キャパシタ71に対応する)とインダクタ(後述する図7の回路図中の共振インダクタ72に対応する)を直列接続したものになる。
【0032】
図7は、上述した集積装置を用いて電力変換装置の一つとして構成したLLC共振コンバータの回路図である。ここでは一例としてコンバータの一次側の回路にハーフブリッジを、二次側の整流回路にフルブリッジ整流を適用した例を示している。即ち、同図において、電力デバイス61及びそのボディダイオード63と、電力デバイス62及びそのボディダイオード64とでハーフブリッジインバータ回路を形成している。また、整流ダイオード65−68とキャパシタ69とでフルブリッジインバータ回路を形成している。なお、コンバータの一次側の回路に適用したハーフブリッジをフルブリッジ等に変えても実施は可能である。また、二次側の整流回路に適用したフルブリッジ整流を全波整流等に変えても実施は可能である。
【0033】
さて、本実施例においては、同図の破線C内に示される各受動素子を上述の集積装置1により集積している。ここに示される受動素子には、矩形破線76により囲まれる一次巻線74と二次巻線75からなる変圧器、一次巻線74側に直列に接続された共振キャパシタ71及び共振インダクタ72、及び一次巻線74側に並列に接続された励磁インダクタ73がある。そして、これらは、図3及び図5において説明した各フレキシブル基板20、30の端部23、24、35、38、をボンディングパッド等を介して図7に示す対応関係で外部回路(ここでは破線Cの枠外に示される回路)の端子に接続することにより次のように集積装置に集積される。
【0034】
上記の共振キャパシタ71は、両面フレキシブル基板30に設けた二つの銅層300U、300Dとそれらの間の絶縁媒体302とにより構成される。
上記の変圧器の1次巻線74は、磁性コア10に巻回された上記の両面フレキシブル基板30の銅層部分300U、300Dにより形成される。 両面フレキシブル基板における第一の銅層と第二の銅層と、第一の磁性コアと第二の磁性コアとがLLC共振コンバータ内の並列インダクタ73を構成し、両面フレキシブル基板における第一の銅層と第二の銅層とが同時に変圧器76の一次巻線74を構成する。
【0035】
励磁インダクタ73の値(励磁インダクタンス値)は、上記の磁性コア10の中央柱体10−5や側辺柱体10−6R、10−6Lにエアギャップ(間隙)を設け、その大きさを変えることにより調節する。例えばEEコア10の上部コア10−1及び下部コア10−2の中央柱体10−5が側辺柱体10−6R、10−6Lよりも短いもの選んで互いに接合したり、或いは上部コア10−1と下部コア10−2の接合部を適宜離す等して構成する。なお、エアギャップを設ける位置は磁性コア10内を流れる磁束の通過経路上のエアギャップの距離の和が同じであればどこでも良い。そのため、磁性コア10内を流れる磁束の通過経路上、たとえば中央柱体10−5のみ、中央柱体10−5以外の位置、又は中央柱体10−5を含むさまざまな位置に分ける等して、エアギャップを設けても良い。
【0036】
上記の変圧器の2次巻線75は、磁性コア10に巻回された上記の片面フレキシブル基板20の銅層部分200により形成される。本実施例において、磁性コア10は、図1における両面フレキシブル基板30のコイル面(巻回面)を垂直に錯交する、上記両面フレキシブル基板30よりなる一次巻線74及び上記片面フレキシブル基板20よりなる二次巻線75の磁束の通過経路に設けられている。このため、磁性コア10内の磁束により一次巻線74と二次巻線75は結合し、それにより変圧器が構成される。
【0037】
上記共振インダクタ72は、上記両面フレキシブル基板30と上記片面フレキシブル基板20との間に磁性材料層40を配置したことにより形成される。
すなわち、両面フレキシブル基板と片面フレキシブル基板と上部及び下部の磁性コアとが形成する変圧器の漏れインダクタンスがLLC共振コンバータ内の共振インダクタ72となり、磁性材料層の肉厚を調整することでLLC共振コンバータ内の共振インダクタ72のインダクタンスが調整できる。磁性材料層40により両面フレキシブル基板30から一次巻線としての磁束が二次巻線としての片面フレキシブル基板20に錯交せずに戻り、上記変圧器における漏れインダクタンスが増加する。それにより、両面フレキシブル基板30はコイルとして動作し、インダクタとして活用できるレベルのインダクタンスが得られるようになる。当該共振インダクタ72の値(共振インダクタンス値)は上記の磁性材料層40の厚み、高さ方向の長さ、巻回数等を変えることによって調節する。
【0038】
図中、符号35,38はそれぞれ両面フレキシブル基板における第一の銅層の先端と第二の銅層の尾端に溶着した外部回路接続用のパッドであり、23,24はそれぞれ片面フレキシブル基板における銅層の両端に溶着した外部回路接続用のパッドである。
【0039】
なお、本実施例では、磁性コア10としてEE形状のものを示したが、この形状に限らず任意の適した形状としても良い。例えばEI、EQ、ETD、PQ、RM、又はPOT等のような形状が使用できる。或いは、磁性コアは図8に示すように、共にU形状をなし二つの磁性コア柱体を有する第一の磁性コア60−1と第二の磁性コア60−2とで構成することもでき、両面フレキシブル基板30と磁性材料層40と片面フレキシブル基板20とを磁性コア柱体の一方に巻装する。ここで、磁性材料層40は、フェライトポリマとすることができる。なお、両面フレキシブル基板30と磁性材料層40と片面フレキシブル基板20の各構成及び磁性コア柱体の一方へそれらを巻装する方法については、上述のEE形状の例を参照されたい。
【0040】
また、両面フレキシブル基板30及び片面フレキシブル基板20の幅(図1Aの上下方向の幅)と、磁性コア10に形成される開口部10-7R、10−7Lの高さとの関係は、磁性コア10の開口部10-7R、10−7Lの高さ以内に上記各フレキシブル基板20、30の幅が収まるようになっていれば良い。
【0041】
また、本実施例では、磁性コア10の中央柱体10−5に対して各フレキシブル基板20、30を直接巻回したが、巻き取りの利便性をあげるためにフレームを介して巻回するようにしても良い。
【0042】
また、本実施例では、一次側及び二次側の巻線即ち両面フレキシブル基板30及び片面フレキシブル基板20の巻き数をそれぞれ2回巻及び1回巻としたが、ニーズに応じて、1回巻き又は複数回巻きを適宜選び、両面フレキシブル基板30及び片面フレキシブル基板20を同軸上に巻回するようにして集積装置を構成しても良い。
【0043】
また、本実施例では、1組の一次巻線及び二次巻線を示したが、ニーズに応じて複数組にしても良い。
また、本実施例では、漏れインダクタンスを増加させるために両面フレキシブル基板30及び片面フレキシブル基板20の間に磁性材料層40を設けたが、両面フレキシブル基板30及び片面フレキシブル基板20の相互距離を引き離すことにより漏れインダクタンスを増加させるようにしても良い。
【0044】
以上のように、本実施例の集積装置においては、LLC共振コンバータ内の変圧器に共振インダクタ、共振キャパシタ、及び励磁インダクタを集積することができる。そのため、LLC共振コンバータにおける体格あたりの出力密度が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例1による集積装置の構造図である。
【図2】図1(B) の上方側から見たときの両面フレキシブル基板30の厚さ方向の構造図である。
【図3】図1(B) の両面フレキシブル基板30を図1(B)の上方向から見た状態である。
【図4】図1(B) の上方側から見たときの片面フレキシブル基板20の厚さ方向の構造図である。
【図5】図1(B) の片面フレキシブル基板20を図1(B)の上方向から見た状態である。
【図6】両面フレキシブル基板30の集中パラメータの等価回路である。
【図7】実施例1による集積装置を用いて構成したLLC共振コンバータの回路図である。
【図8】集積装置の他の実施例を示し、磁性コアをU形状で構成した集積装置の構造図である。
【符号の説明】
【0046】
1 集積装置
10 磁性コア
10−1 上部コア
10−2 下部コア
10−5 中央柱体
10−6R、10−6L 側辺柱体
10−7R、10−7L 開口部
20 片面フレキシブル基板
30 両面フレキシブル基板
40 磁性材料層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受動素子を集積する集積装置であって、
磁性コアに巻回された、表面に銅層を有する第一のフレキシブル基板と、
前記第一のフレキシブル基板の最外周面を囲むように前記磁性コアに巻回された、表面に銅層を有する第二のフレキシブル基板と
前記第一のフレキシブル基板及び前記第二のフレキシブル基板の間に介在させた前記磁性材料の層と、
を有することを特徴とする集積装置。
【請求項2】
前記第一のフレキシブル基板は、相互に絶縁された二つ以上の銅層を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の集積装置。
【請求項3】
前記磁性コアは、前記第一のフレキシブル基板及び第二のフレキシブル基板の巻回面に垂直に錯交する磁束の通過経路に設けられている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の集積装置。
【請求項4】
前記磁性コアの一部に励磁インダクタンス値の調整用としてのエアギャップを有する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の内の何れか一つに記載の集積装置。
【請求項5】
前記磁性コアは、共にE形状をなす第一の磁性コアと第二の磁性コアの結合体で構成され、
前記第一のフレキシブル基板、前記磁性材料層、及び前記第二のフレキシブル基板は、共に、前記結合体に含まれる3個の磁性コア柱体の内の中央の磁性コア柱体に巻装されている、
ことを特徴とする請求項1乃至4の内の何れか一つに記載の集積装置。
【請求項6】
前記磁性コアは、共にU形状をなす第一の磁性コアと第二の磁性コアの結合体で構成され、
前記第一のフレキシブル基板、前記磁性材料層、及び前記第二のフレキシブル基板は、共に、前記結合体に含まれる2個の磁性コア柱体の内の一方に巻装されている、
ことを特徴とする請求項1乃至4の内の何れか一つに記載の集積装置。
【請求項7】
前記第一のフレキシブル基板及び第二のフレキシブル基板は、それぞれ、1回巻きで又は複数回巻きで同軸上に巻回されている、
ことを特徴とする請求項5又は6の内の何れか一つに記載の集積装置。
【請求項8】
前記第一のフレキシブル基板及び/又は第二のフレキシブル基板にポリイミドフィルムが使用されている、
ことを特徴とする請求項1乃至7の内の何れか一つに記載の集積装置。
【請求項9】
前記第一のフレキシブル基板及び前記第二のフレキシブル基板の間に介在させた前記磁性材料にフェライトポリマが使用されている、
ことを特徴とする請求項1乃至8の内の何れか一つに記載の集積装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一つに記載の集積装置を搭載したLLC共振コンバータ。

【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−193977(P2009−193977A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28106(P2008−28106)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(505072650)浙江大学 (10)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】