説明

離型フィルム貼合両面粘着シート及びその製造方法

【課題】粘着剤層の厚みが厚い場合でも、紫外線照射による硬化反応が阻害されることがなく良好な粘着特性を示し、光学用途に好適に用いることができる離型フィルム貼合両面粘着シートを提供すること。
【解決手段】上記離型フィルム貼合両面粘着シートは、紫外線硬化型粘着剤の硬化物からなる両面粘着シートの両面に離型フィルムが貼合されてなり、前記離型フィルムは、それぞれ、樹脂からなる基材フィルムの貼合面側の表面に離型層を有するものであり、そして前記両面粘着シートの両面に貼合される離型フィルムのうちの少なくとも1枚の基材フィルムを構成する樹脂がポリオレフィン樹脂であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルム貼合両面粘着シート及びその製造方法に関する。前記離型フィルム貼合両面粘着シートは、紫外線硬化型粘着剤の硬化物からなる両面粘着シートの両面に、離型フィルムが貼合されてなる。該離型フィルム貼合両面粘着シートは、粘着剤層の厚みが厚い場合であっても良好な粘着特性を示し、特に光学部材の接着に好適に用いることができる。前記製造方法は、前記離型フィルム貼合両面粘着シートを製造するための、紫外線硬化型粘着剤の硬化工程(紫外線照射工程)が簡略化された簡易な方法である。
【背景技術】
【0002】
工業用途、特にパソコン、ハードディスク等の電子機器、液晶ディスプレイ、タッチパネル等の光学関連用途では、各部材の接着に両面粘着シートが広く利用されている。
このような両面粘着シートは、通常、それ自体が両面粘着シートである粘着剤層と、その両面に貼合された離型フィルムと、からなる離型フィルム貼合両面粘着シートとして供給される。この離型フィルム貼合両面粘着シートは、その使用前に被着体の形状に合わせて打ち抜いたうえで、両面の離型フィルムを剥がした状態で機能する。離型フィルム貼合両面粘着シートは、例えば片側の離型フィルムの離型面に粘着剤形成用組成物を塗布して塗膜を形成した後、該塗膜を熱又は紫外線によって硬化して粘着剤層とし、次いで反対側の離型フィルムと貼合した後に、ロール状に巻き取る工程を経て製造することができる(特許文献1)。
離型フィルム貼合両面粘着シートを使用する際、例えば液晶ディスプレイの液晶表示ユニットと筐体とを接着する場合には、離型フィルム貼合両面粘着シートを液晶表示ユニットの外枠の形状に合わせて打ち抜き加工をして使用することとなる。一方タッチパネルの場合、透明導電膜(例えばITO膜)と最外層の傷防止フィルム(例えばPETフィルム)とを接着する目的のほか、両者の間にクッション性を付与することを目的として両面粘着シートを使用する例もある。この場合、タッチパネルの表示領域の全面に対して離型フィルム貼合両面粘着シートを使用することとなる。
【0003】
上記のような液晶関連分野における両面粘着シートの需要は、近年において益々増加している。特にタッチパネルへの使用の拡大は著しい。タッチパネルの画面サイズは、年々大型化が進んでいる。このような大型のタッチパネルにおいては、透明導電膜と傷防止フィルムとの間に高いクッション性が要求され、そのため両面粘着シート(粘着剤層)の厚みがより厚くなる傾向にある。
ここで、一回の塗布工程で塗布可能な厚みには限界があるため、粘着剤の厚みがより厚くなると、塗布工程を複数回行う必要が生ずる場合がある。また、塗布された粘着剤層を厚みの全部にわたって完全に硬化することが困難となる場合がある。粘着剤層の硬化の完全を期すためには、熱硬化型粘着剤の場合には加熱温度及び加熱時間を調整する必要があり、一方、紫外線硬化型粘着剤の場合には紫外線照射工程を複数回行う必要がある場合があり、粘着剤層形成工程の煩雑化及びコスト面の問題がある。
離型フィルム貼合両面粘着シートにおける離型フィルムの基材としては、耐熱性及び表面平滑性の観点から、従来からポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好適に用いられている。PETフィルムを熱硬化型粘着剤層を有する離型フィルム貼合両面粘着シートにおける離型フィルムとして使用する場合には、粘着剤層の熱硬化工程における基材フィルムの変形(伸び、皺等)を可及的に低減することができ、特に好適である。
【0004】
しかしながらPETフィルムを、紫外線硬化型粘着剤層を有する離型フィルム貼合両面粘着シートにおける離型フィルムとして使用すると、粘着剤の硬化工程において問題が生ずる場合がある。即ち、PETは波長300nm以下の紫外線を吸収する性質を有しているため、粘着剤の紫外線硬化を阻害するのである。特に粘着剤層の厚みが厚くなると、一回の紫外線照射工程によっては粘着剤層の硬化反応が完結しない場合がある。このような場合、例えば
紫外線照射ラインの搬送速度を遅くして照射時間を長くする方法;
一度紫外線照射工程に供してロール状に巻き取ったものを再度紫外線照射工程に供する方法;
一度紫外線照射を行った面側に離型フィルムを貼合した後、その反対面の離型フィルムを剥がして、その面へ再度紫外線照射を行う方法
等によって硬化の完全を期すこととなる。これらいずれの方法も、工程時間が長く、操作が煩雑であるほか、コスト面からも好ましくない。
ところで、離型フィルム貼合両面粘着シートを使用する際、片面の離型フィルムを剥がし、被着体へ貼り付けた後にもう片面の残りの離型フィルムを剥がす方法で使用されるが、始めの離型フィルムを剥がす際に粘着剤の残存する面が一定せず、あるいは粘着剤層の破壊が発生する場合があった。
この点、特許文献2は、粘着力の異なる2種類の粘着剤を積層し、粘着剤層の表裏の粘着力に差を付けることによって上記の問題点を解決する技術を提案している。しかしながらこの方法は、粘着剤層の塗布工程及び硬化工程を、それぞれ2段階で行うことが必要であり、粘着剤層間への異物混入や層間の乱れ等によって光学的な不具合が生じる場合があった。
以上述べてきたとおり、光学部品用途に好適に使用することのできる離型フィルム貼合両面粘着シート、特に厚みの厚い紫外線硬化型の粘着剤層を有する離型フィルム貼合両面粘着シート及びその製造方法は従来提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−72471号公報
【特許文献2】特開2010−150378号公報
【特許文献3】特開2000−25108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであって、その目的は、
紫外線硬化型粘着剤の硬化物からなる両面粘着シートの両面に離型フィルムが貼合されてなる離型フィルム貼合両面粘着シートにおいて、
粘着剤層の厚みが厚い場合でも、紫外線照射による硬化反応が阻害されることがなく良好な粘着特性を示し、光学用途に好適に用いることのできる離型フィルム貼合両面粘着シート、及び該離型フィルム貼合両面粘着シートを製造するための簡易な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、本発明の上記目的及び利点は、第1に、
紫外線硬化型粘着剤の硬化物からなる両面粘着シートの両面に離型フィルムが貼合されてなり、
前記離型フィルムは、それぞれ、樹脂からなる基材フィルムの貼合面側の表面に離型層を有するものであり、そして
前記両面粘着シートの両面に貼合される離型フィルムのうちの少なくとも1枚の基材フィルムを構成する樹脂がポリオレフィン樹脂であることを特徴とする、離型フィルム貼合両面粘着シートによって達成される。
本発明の上記目的及び利点は、第2に、
上記の離型フィルム貼合両面粘着シートを製造するための方法であって、
ポリオレフィン樹脂からなる基材フィルム上に離型層を有する第1の離型フィルム、
紫外線硬化型粘着剤、及び
樹脂からなる基材フィルム上に離型層を有する第2の離型フィルム
をこの順に積層して積層体とし、そして
前記積層体に対し、少なくとも前記第1の離型フィルムの側から紫外線を照射する紫外線照射工程を経ることを特徴とする前記方法によって達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートは、粘着剤層の厚みが厚い場合でも、紫外線照射による硬化反応が阻害されることがなく良好な粘着特性を示す。従って本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートは、特に光学用途に好適に用いることできる。
本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートを製造するための方法は、上記のような優れた離型フィルム貼合両面粘着シートを簡易な方法で製造することができる。特に粘着剤層の厚みが厚い場合であっても、紫外線照射による粘着剤層の硬化工程を複数回行う必要がなく、優れた性能の離型フィルム貼合両面粘着シートを安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートの製造に好ましく使用される製造装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートの製造に好ましく使用される製造装置の別の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートは、紫外線硬化型粘着剤の硬化物からなる両面粘着シートの両面に離型フィルムが貼合されてなる。上記2枚の離型フィルムは、それぞれ、樹脂からなる基材フィルムの貼合面側の表面に離型層を有する。
本明細書において、「紫外線硬化型粘着剤の硬化物」からなる「粘着剤層」が即ち「両面粘着シート」である。本明細書においては、説明を簡単にするために、文脈に応じてこれらの3つの用語を使い分けるが、これらはいずれも同じものを意味するものである。そして両面粘着シートの両面に離型フィルムを貼合されてなるものが、本明細書における「離型フィルム貼合両面粘着シート」である。
以下、本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートを構成する各部分について、順に説明する。
【0011】
<基材フィルム>
本発明における離型フィルムの基材フィルムは樹脂からなる。
[基材フィルムを構成する樹脂]
本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートにおいて、離型フィルムは2枚存在するが、これらのうち少なくとも1枚の基材フィルムはポリオレフィン樹脂からなる。
本発明における基材フィルムを構成するポリオレフィン樹脂としては、例えばエチレンの単独重合体、プロピレンの単独重合体、エチレンと他のオレフィンとの共重合体、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体、又はこれらの混合物を挙げることができる。上記他のオレフィンとしては、炭素数4以上のα−オレフィンを好ましく例示することができ、その具体例として、例えば1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン等を挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することが好ましい。
上記ポリオレフィン樹脂としては、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)及び線状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)から選択される1種以上であるポリエチレン系樹脂、若しくは
プロピレンの単独重合体及びプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体から選択される1種以上であるポリプロピレン系樹脂、又は
これらの混合物を使用することが好ましく;
更に上記のようなポリプロピレン系樹脂を使用するか、あるいはポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との混合物を使用することがより好ましい。
【0012】
上記ポリプロピレン系樹脂は、JIS K 7210に準拠して230℃において測定したメルトフローレート(MFR)が1〜30g/10分であることが好ましく、3〜10g/10分であることがより好ましい。ポリプロピレン系樹脂の融点としては、125℃以上であることが好ましく、125〜165℃であることが更に好ましい。
このような観点から、上記ポリプロピレン系樹脂における他のα−オレフィンの共重合割合は、単量体としてのプロピレンと他のα−オレフィンとの合計重量に基づいて、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは20重量%以下である。上記ポリプロピレン系樹脂は、特にポリプロピレンの単独重合体であることが、高透明性及び高耐熱性が発現し易いことのほか、フィルムとしたときのフィッシュアイの発生が少ないことから、最も好適である。
本発明における基材フィルムを構成するポリオレフィン樹脂としてポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との混合物を使用する場合、ポリエチレン系樹脂の含有割合は、両者の合計重量に基づいて、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下とすることが、高い耐熱性及びフィルムとしたときのフィッシュアイを低減できるとの観点から好適である。
【0013】
本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートにおいて2枚存在する離型フィルムのうち、少なくとも1枚の基材フィルムは上記のようなポリオレフィン樹脂からなる。もう1枚の離型フィルムにおける基材フィルムは、上記のようなポリオレフィン樹脂から構成されていてもよく、あるいはこれ以外の樹脂から構成されていてもよい。ここで使用することのできるポリオレフィン樹脂以外の樹脂としては、公知の離型フィルムにおいて使用されている基材フィルム材料を好ましく例示することができ、例えばPET、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等を挙げることができる。
本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートにおいては、表裏の離型フィルムの基材フィルムを構成する樹脂が、2枚ともポリオレフィン樹脂であることが、紫外線照射による粘着剤層の硬化工程を表裏どちらの面からも行うことができ、あるいは該工程を両面から行うことができる点で、好ましい。
表裏双方の離型フィルムにおける基材フィルムは、同じ種類のポリオレフィン樹脂から構成されていてもよく、相違する種類のポリオレフィン樹脂から構成されていてもよい。しかしながら上記の利点をより有効に発現する観点から、少なくとも1枚は上記のようなポリプロピレン系樹脂で構成されていることが好ましく、表裏の2枚ともが上記のようなポリプロピレン系樹脂で構成されていることがより好ましい。
【0014】
[着色剤]
本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートは、後述するように、両面粘着シートの離型フィルムの離型力がその表裏で異なるようにすることが好ましい。このような場合、離型フィルム貼合両面粘着シートの表裏を容易に判別するようにするため、表裏の離型フィルムのうちの少なくとも1枚を着色フィルムとすることが好ましい。
離型フィルムを着色する方法としては、例えば基材フィルム表面に印刷を施して着色フィルムを得る方法が知られている。しかしながらこの方法によると、フィルムの成型と別の工程において、印刷を行うための複数の工程が必要となって経済性に劣る。また、基材フィルム上に離型剤をコーティングする工程(後述)において、通常は有機溶剤が使用されるため、基材フィルム表面に印刷されたインキが上記有機溶剤に溶出する問題がある。更に、フィルム表面に薄く均一に印刷することが技術的に困難であり、印刷ムラが生じる可能性が高いため、離型フィルムの片方が残存する状態で光学検査を行うことが必要である用途には不適である。
離型フィルムを着色する別法として、特許文献3(特開2000−25108号公報)には、二軸延伸の樹脂フィルム製造時に、縦方向に延伸した後にフィルムに着色剤を含有する塗工液を塗布、乾燥し、その後に横方向へ延伸することにより、一工程によって印刷ムラのない着色フィルムを得る方法が提案されている。しかしこの技術によっても、表面の印刷インキが有機溶剤に溶出する問題は依然として解決されていない。
【0015】
これらに対して、基材フィルムを構成する樹脂に着色剤を配合する方法は、着色ムラがなく、基材フィルム上に離型剤をコーティングする際に使用する有機溶剤への印刷インキ溶出の問題もなく、好適な着色離型フィルムを容易に得ることができる。
本発明において用いられる着色剤としては、退色の問題が少ないとの観点から、顔料を使用することが好ましい。ここで顔料としては、有機顔料及び無機顔料のうち、プラスチック用着色剤として一般的に用いられているものから選択される1種以上を好適に用いることができる。このような有機顔料としては、例えばアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アニン系顔料、キナクリドン系顔料等を;
無機系顔料としては、例えば酸化チタン、ベンガラ、群青、カーボンブラック、コバルトブルー等を、それぞれ挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
これらの顔料のうち、特に有機顔料を使用することが、顔料自体の二次凝集物によるフィッシュアイ等の欠陥の発生が少ないことのほか、樹脂に対する分散性がよいことから好適である。
【0016】
樹脂に対する着色剤の混合割合は、基材フィルムの厚み等によって適宜に決定されるが、最終的な離型フィルムとしての透明性(透光性)を勘案すると、樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部とすることが好ましく、0.05〜3重量部とすることがより好ましい。この混合割合が0.01重量部より少ない場合、色相がはっきりとせず、貼合された離型フィルムが着色されているか否かの識別が困難となる。一方混合割合が5重量部より多い場合、離型フィルムとしての透明性(透光性)が不足するだけでなく、着色剤自体の二次凝集物によるフィッシュアイ等の欠陥の発生が顕著となる場合があり、実用的ではないうえに、着色剤のコスト負担も大きくなるから経済的にも不利となる。
離型フィルムにおける基材フィルムを構成する樹脂に上記のような着色剤を配合する方法としては、例えば樹脂のペレットに直接着色剤を配合する方法、一旦樹脂及び着色剤により着色剤を高濃度で含有するマスターバッチを製造してこれを樹脂のペレットに配合する方法等を挙げることができ、公知の適宜の方法を特に制限なく採用することができる。しかしながら、着色剤の分散状態を良好にすること、成型機への着色剤の付着を可及的に低減するべきこと等を勘案すると、マスターバッチによって配合する方法が好ましい。
【0017】
[表面平滑層]
本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートの離型フィルムにおける基材フィルムは、その表面平滑性が十分に高い。そのため、該基材フィルムの製造後、これに離型層を形成する工程及び粘着剤層を積層する工程を経た後に形成される粘着剤層の表面が、十分に平滑となる。しかしながら、この粘着剤層の表面の平滑性をさらに高度のものとするために、基材フィルムは、その表面に表面平滑層を有していてもよい。
基材フィルムが表面平滑層を有するものである場合、該基材フィルムは、少なくとも離型層側の面に表面平滑層を有することが好ましく、両側の面にそれぞれ表面平滑層を有することがより好ましい。
この表面平滑層は、基材フィルムの表面に形成される微細な凹凸を埋めて平滑化する機能を有するものであるが、これ以外の他の機能を有していてもよい。ここで、表面平滑層の有する他の機能としては、例えばアンカーコート機能、ハードコート機能、帯電防止機能等を挙げることができる。基材フィルムが、上記のうちの帯電防止機能を有する表面平滑層を有することにより、得られる離型フィルム貼合両面粘着シートを使用する際に、静電気に起因する種々のトラブルを回避できる点で好ましい。
表面平滑層の厚みは、0.1〜5.0μmであることが好ましく、0.5〜3.0μmであることがより好ましい。表面平滑層を上記範囲の厚みとすることにより、基材フィルムの製造時の結晶生成に起因するフィルム表面の微細な凹凸を効果的に埋めることができるとともに、高度の表面平滑性を容易且つ低コストで得ることができる点で好ましい。
【0018】
[基材フィルムの特性]
本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートの離型フィルムにおける基材フィルムは、これに離型剤をコーティングする工程及び紫外線硬化型粘着剤を積層する工程において該基材フィルムに対して加わる熱及び張力に対しての寸法安定性を確保するとの観点から、引張弾性率が縦横それぞれ700MPa以上であることが好ましく、900MPa以上であることがより好ましい。
基材フィルムの厚みは、粘着剤層の厚み、打ち抜き加工後の製品の面積、形状等に応じて適宜に設定されるべきであるが、10〜200μmとすることが好ましく、更に好ましくは20〜150μmであり、特に好ましくは40〜120μmである。ここで、基材フィルムの厚みが薄すぎると、これに離型剤をコーティングする工程及び粘着剤を積層する工程における熱によって、フィルムに「熱負け」によるシワが入り、製品として使用できない場合がある。特に粘着剤層の厚みが厚い場合はこの傾向が顕著である。一方、基材フィルムの厚みが厚すぎると柔軟性に不足するため、巻回体製造の際に皺やコブ等の外観不良が発生し易くなる場合があり、好ましくない。
【0019】
[基材フィルムの製造方法]
本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートの離型フィルムにおける基材フィルムは、上記のような樹脂のフィルムからなり、上記のような特性を有するものである限り、どのような方法によって製造されたものであってもよい。
基材フィルム(樹脂フィルム)の製造方法としては、例えばインフレーション法、キャスト法、一軸以上で延伸される方法等を例示することができる。これらのうち、キャスト法によって得られる無延伸の樹脂フィルムは熱収縮が小さく、離型剤をコーティングする工程及び粘着剤層を積層する工程で熱による寸法変化が小さい事から好適に用いることができる。
本発明における基材フィルムは、単層構造であってもよく、2層以上の多層構造であってもよい。基材フィルムを多層構造とする方法としては、例えばマルチマニホールド法やフィードブロック法に代表される共押出法;インラインラミネート法;各層を単層として製造した後、ドライラミネーション等により接着剤層を介して積層する方法等を挙げることができる。
基材フィルムが着色フィルムである場合には、基材フィルムが少なくとも3層を有する積層体からなるフィルムであり、着色剤を配合した層が、最外層以外の層である態様、即ち、中間層へのみ着色剤を配合する態様が、粘着剤層を積層する際の有機溶剤への着色剤溶出の問題や、成型機、特にダイス内部への着色剤の付着の問題をより確実に防止することができるため、特に好ましい。
【0020】
基材フィルムが表面平滑層を有するものである場合、該基材フィルムは、上記のようにして形成された樹脂フィルムの表面に、好ましくは適当なコーティング剤を塗布し、該コーティング剤のセルフレベリング効果を利用することによって製造することができる。ここで、コーティング剤としては、市販品を使用することができる。コーティング剤の市販品としては、例えば商品名でUVH−D003(出光テクノファイン(株)製)等を挙げることができる。このコーティング剤UVH−D003は、表面を平滑化する機能のほか、帯電防止機能を有するものである。コーティング剤の粘度は、セルフレベリング効果を効果的に発現させるとの観点から、1〜10,000cpに調整することが好ましい。
本発明における基材フィルムは、これにコーティングされる離型剤との密着性をより高くするとの観点から、離型剤をコーティングする側の表面に対してインライン又はオフラインで表面処理を施したうえで、離型剤のコーティングに供することが好ましい。かかる表面処理としては、例えばコロナ放電処理、フレーム(火焔)処理等を挙げることができる。基材フィルムが、離型剤をコーティングする側の表面に表面平滑層を有するものである場合、上記表面処理は、該表面平滑層に対して行われる。
【0021】
<基材フィルム上への離型剤のコーティング>
本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートにおける離型フィルムは、上記のような基材フィルムの片側表面上に、離型剤をコーティングして得られた離型層を有するものである。
基材フィルム上にコーティングする離型剤については特に制限はないが、例えばシリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等の公知の離型剤を挙げることができる。本発明においては、離型力の安定性、基材フィルムとの密着性からシリコーン系離型剤が好適である。
上記シリコーン系離型剤としては、白金触媒を用いた熱硬化型シリコ−ン、紫外線励起型カチオン発生剤を触媒とした紫外線硬化型シリコ−ン等を、代表例として挙げることができる。
白金触媒を用いた熱硬化型シリコ−ンは、少なくとも炭素−炭素二重結合を一個以上有するアルキルシロキサンと、少なくともケイ素−水素結合を一個以上有するアルキルシロキサンと、白金触媒と、から構成される。このような熱硬化型シリコーンとしては、付加型シリコ−ンとして一般に広く販売されているものを用いることができる。
一方、紫外線硬化型シリコ−ンとしては、エポキシベンゼンの有するベンゼン核にアルキルシロキサンが置換された化合物と、紫外線励起型カチオン発生触媒と、からなる混合物を使用することができ、紫外線硬化型シリコ−ンとして一般に広く販売されているものを用いることができる。
【0022】
本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートにおいては、両面粘着シートの離型フィルムの離型力がその表裏で異なるようにすることが好ましい。表裏の離型力に差を設けることにより、本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートの使用にあたって離型フィルムを剥離する際、両面粘着シートが、領域ごとに異なる側の離型フィルムに付着して粘着剤層が破壊されることがなく、両面粘着シートの全面が離型力の強い方の離型フィルム上に残存することとなり、好ましい。
表裏における離型力の差は、2倍以上とすることが好ましく、3倍以上とすることがより好ましい。特に、離型力の大きい側の面における離型力が、好ましくは30〜500(mN/25mm)、より好ましくは50〜300(mN/25mm)であり;
離型力の小さい側の面における離型力が、好ましくは10〜300(mN/25mm)、より好ましくは20〜100(mN/25mm)であり;そして
両面の離型力の差を、2倍以上とすることが好ましく、3倍以上とすることがより好ましい。
離型力の調整は、片方の基材フィルム上にコーティングする離型剤に、離型力調整剤を配合して使用することにより、行うことができる。離型力調整剤が配合された離型剤をコーティングした表面は、離型特性が「重く」なり、即ち両面粘着シートがより剥離し難い表面となる。
【0023】
ここで使用することのできる離型力調整剤としては、例えばアルキルシロキサン中にSiO単位と、(CHSiO2/1単位又はCH=CH(CHSiO2/1単位と、を有するレジン構造のもの等を挙げることができる。このような離型力調整剤の市販品としては、例えばKS−3800(信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。
離型力調整剤の配合割合としては、離型剤100重量部に対して、1〜40重量部とすることが好ましく、5〜30重量部とすることが好ましい。
そして、上記のような離型剤、又は該離型剤と離型力調整剤とからなる混合物を、そのまま、あるいは適当な溶剤に希釈したうえで、基材フィルムの表面に塗布する。次いで、離型剤が熱硬化型シリコーンである場合には加熱によって、紫外線硬化型シリコ−ンである場合には紫外線の照射によって、離型剤を硬化することにより、基材フィルム上に離型剤層を形成することができる。
コーティング方法としては特に制限がなく、公知の方法を用いることができる。例えば一般に用いられるコ−ティングヘッドによる塗工方法;例えばグラビヤ、グラビヤリバ−ス、オフセット等の転写方法を基本とする塗工方法;ダイコ−タ−等のダイより所定の厚さで塗膜を押出し積層する方法;バ−、コンマバ−等の掻き取り方法を基本とする塗工方法等の、一般的に普及しているコ−ティング方法を適宜に選択して用いることができる。
加熱又は紫外線照射の条件は、使用する離型剤の種類及び離型層の厚みによって適宜に設定されるべきである。
離型剤の厚みに関しては特に制限がなく、離型フィルムの目標とする離型力に応じて適宜に設定することができる。この厚みは、例えば0.01〜0.5μmとすることができ、離型力の安定性、背面への転写量等を勘案すると0.05〜0.2μmとすることが好ましい。
【0024】
<紫外線硬化型粘着剤>
本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートにおける両面粘着シートは、紫外線硬化型粘着剤の硬化物からなる。
この紫外線硬化型粘着剤としては、例えばスチレン−ブタジエン共重合ラテックス、スチレン−イソプレンブロック共重合体等のゴム系の粘着剤であって紫外線硬化型のもの;アクリル系の粘着剤であって紫外線硬化型のもの;シリコーン系等の粘着剤であって紫外線硬化型のもの等を挙げることができる。
これらの紫外線硬化型粘着剤は、例えば溶剤系、水性エマルジョン系、ホットメルト系等の形態で提供される。粘着剤層の厚みを、例えば50μm以上、特に80μm以上と厚くする場合には、ホットメルト系の粘着剤を使用することが、一回の工程で形成可能な層厚みが厚い点で好適である。
【0025】
<離型フィルム貼合両面粘着シートの製造方法>
本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートは、
ポリオレフィン樹脂からなる基材フィルム上に離型層を有する第1の離型フィルム、
紫外線硬化型粘着剤、及び
樹脂からなる基材フィルム上に離型層を有する第2の離型フィルム
をこの順に積層して積層体とし、そして
前記積層体に対し、少なくとも前記第1の離型フィルムの側から紫外線を照射する紫外線照射工程を経ることにより、製造することができる。上記2枚の離型フィルムは、いずれも離型層を有する面が粘着剤層と接するように配置される。上記2枚の離型フィルムは、上述のように離型力がそれぞれ相違することが好ましいが、どちらの離型フィルムの離型力が高くてもよい。紫外線照射によって離型フィルム上で粘着剤の硬化反応が進行した場合、離型フィルムの本来の離型力よりも実際の離型力が高くなってしまう傾向がある。このような場合には、両面の離型力の差が小さくなってしまう。こうした事態を回避するために、第1の離型フィルムには離型力の高いほうの離型フィルムを用いることが好ましい。上記第2の離型フィルムにおける基材フィルムは、上述のようにポリオレフィン樹脂からなるものであることが好ましい。
紫外線硬化型粘着剤の厚みに関しては、本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートの用途に応じて適宜に設定することができる。ポリオレフィン樹脂からなる基材フィルムを有する離型フィルムが特定波長の紫外線を吸収しないという特徴の優位性を最大限に発揮するために、紫外線硬化型粘着剤の厚みを20μm以上とすることが好ましく、50〜500μmとすることがより好ましく、更に80〜300μmとすることが好ましい。
【0026】
第1の離型フィルム、紫外線硬化型粘着剤及び第2の離型フィルムをこの順に積層して積層体とするには、例えば第1の離型フィルム及び第2の離型フィルムのうちのいずれか一方の離型フィルムの離型層形成面上に紫外線硬化型粘着剤を層状に塗布し、次いで他方の離型フィルムを、その離型層が前記紫外線硬化型粘着剤の層に接するように積層する方法によることができる。
離型フィルム上へ紫外線硬化型粘着剤を層状に塗布する方法については特に制限はなく、公知の方法を適宜に選択して用いることができる。この塗布方法としては、例えば一般に用いられるコ−ティングヘッドによる塗工方法;例えばグラビヤ、グラビヤリバ−ス、オフセット等の転写方法を基本とする塗工方法;ダイコ−タ−等のダイより所定の厚さで塗膜を押出し積層する方法;バ−、コンマバ−等の掻き取り方法を基本とする塗工方法等の、一般的に普及しているコ−ティング方法を採用することができる。
硬化されて両面粘着シートとなる紫外線硬化型粘着剤の層は、層中にフィルム状基材を有していても有していなくてもよい。しかしながら製造工程の簡略化及び両面粘着シートの光学特性を維持することを考慮すると、フィルム状基材を有さないことが好ましい。
【0027】
そして前記のような積層体に対し、少なくとも上記第1の離型フィルムの側から紫外線を照射する紫外線照射工程を経ることにより、本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートを得ることができる。
ここで、上記第2の離型フィルムの基材フィルムがポリオレフィン樹脂からなるものである場合には、上記紫外線照射工程における紫外線の照射は、第1の離型フィルムの側からのみならず、両面から行うことができる。従って、この態様によると、紫外線の照射時間を短くすることができ、工程時間をより短縮することができる。
上記の紫外線照射の条件は、使用する紫外線硬化型粘着剤の種類及び厚みに応じて適宜に設定されるべきである。
以下、図面を参照しつつ、本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートの特に好ましい製造方法を説明する。
図1及び図2に、本発明の方法に好ましく使用される製造装置の例を示す概略図を示した。
【0028】
図1の装置は、第1の離型フィルム(離型力の強い離型層を有する離型フィルム)を供給するフィルム繰出し装置、第2の離型フィルム(離型力の弱い離型層を有する離型フィルム)を供給するフィルム繰出し装置、紫外線硬化型粘着剤を供給するダイス、離型フィルム上へ供給された粘着剤を冷却する冷却ロール、積層体の両面から紫外線を照射するための紫外線照射装置、巻き取りロール及び幾つかの支持ロールを有する。ここで使用される離型フィルムの基材フィルムは、いずれもポリオレフィン樹脂からなり、紫外線硬化型粘着剤はホットメルトタイプのものである。
第1の離型フィルムを供給するフィルム繰出し装置から供給された離型力の強い離型層を有する離型フィルムは冷却ロール上に導かれ、その離型層上にダイスから供給された紫外線硬化型粘着剤を積層する。ここでダイスの温度は、紫外線硬化型粘着剤が十分な流動性を有する温度に設定されているから、ダイスからは粘着剤が流動性のある状態で供給される。粘着剤はその後直ちに、冷却ロールによって離型フィルムを介して冷却されて流動性を減少又は喪失し、それと同時に又はその後直ちに、該粘着剤層上に、第2の離型フィルムを供給するフィルム繰出し装置から供給された離型力の弱い離型層を有する離型フィルムが積層されて積層体となる。ここで、第2の離型フィルムを供給するフィルム繰出し装置からの離型フィルムは、該離型フィルムの有する離型層が粘着剤層を接するように供給される。
得られた積層体は、次いで両面から紫外線を照射され、紫外線硬化型粘着剤が硬化されたうえで巻き取りロールに巻き取られることになる。
【0029】
図2の装置は、図1の装置において、ダイスの代わりにメイヤバーを用いるバーコート法によって粘着剤を積層するものとした装置である。図2の装置におけるその他の態様の詳細は、当業者は容易に理解可能であろう。
以上において、第1の離型フィルムを供給するフィルム繰出し装置から供給する離型フィルムと、第2の離型フィルムを供給するフィルム繰出し装置から供給する離型フィルムと、を交換した態様であってもよい。また、紫外線照射はどちらか一方の面からのみ行ってもよい。
【0030】
上記のような本発明の方法においては、紫外線硬化型粘着剤層の両面を離型フィルムで保護した状態で紫外線照射を行うこととなる。この態様によると、紫外線硬化型粘着剤層の片面が製造現場の環境に暴露される時間を極めて短くすることができるから、粘着剤層に環境中のゴミ等の異物が付着する可能性を可及的に低減しうる点で好ましい。
このことは、離型フィルムの基材フィルムにPETを用いる従来法によった場合に対する大きな利点である。つまり、従来法によると、基材フィルムを構成するPETが紫外線を吸収するから、これを回避するために粘着剤層の片面を製造現場の環境に暴露した状態で紫外線照射を行わざるを得ない。従って、従来法は、フィルム業界における通常のコストの許す限りで製造現場をクリーンにしたとしても、粘着剤層に異物が付着する懸念を払拭できない。これに対して本発明の方法は、従来法における上記の懸念を、根本的に解消するものである。
【0031】
<離型フィルム貼合両面粘着シート>
上記のようにして得られた本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートは、粘着剤層の厚みが厚い場合でも、紫外線照射による硬化反応が阻害されることがなく良好な粘着特性を示す。
本発明の離型フィルム貼合両面粘着シートは、特に光学用途に好適に用いることできる。
【実施例】
【0032】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例における各評価は、それぞれ以下の手順によって行った。
(1)引張弾性率
離型フィルムの基材フィルムの剛性の指標として、引張弾性率の測定を行った。
測定装置として(株)島津製作所製、オートグラフ(型番:AG−500D)を用い、JIS K 7127に準拠して、JIS−5号試験片を使用して、引張速度50mm/minにて、MD方向及びTD方向のそれぞれについて測定した。
(2)離型力
離型フィルムの離型面に日東電工(株)製No.31Bテープを5kgロールで圧着し、23℃にて24時間の状態調節を行った後に、前記テープを300mm/分の速度で180°剥離することにより、離型力を測定した。
(3)ヘイズ
離型フィルム貼合両面粘着シートの透明性の指標として、ヘイズの測定を行った。
測定装置としてスガ試験機(株)製、ヘイズメーター(型番:HGM−2DP)を用い、JIS K 7105に準拠して測定した。
【0033】
(4)フィッシュアイ及び異物
離型フィルム貼合両面粘着シートに存在するフィッシュアイ及び異物の有無を目視にて観察した。発見されたフィッシュアイ及び異物について、その長径を、最小単位が0.1mmの目盛り付きのルーペにて測定し、0.2mm以上のサイズの個数を1mあたりの個数に換算して評価した。
(5)粘着剤の硬化状況
離型フィルム貼合両面粘着シートの一方の離型フィルムを剥がし、粘着面に対してPETフィルム(E5100#50:東洋紡績(株)製)のコロナ処理面側を貼合し、25mm幅×150mmの短冊状試験片を作成した。次いでこの試験片の離型フィルムを剥がし、SUS板へ貼り付けた後に試験片を引き剥がした。その際の粘着剤層の状況を目視にて確認した。
Yes:粘着剤層の破壊がなく、粘着剤はすべてPETフィルム側へ残った。
No:粘着剤層とPETフィルムとの密着性が低く、粘着剤層が破壊され、PETフィルム及びSUS板の双方へ粘着剤が残った。
(6)剥離状況
離型フィルム貼合両面粘着シートの一方の離型フィルム(双方の離型力に差がある場合は離型力の小さい側)を剥がした際の粘着剤層の残留状況を目視にて確認した。
Yes:粘着剤層の破壊がなく、粘着剤はすべて一方(双方の離型力に差がある場合は離型力の大きい側)へ残った。
No:粘着剤層が破壊され、領域毎に異なる側の離型フィルムへ残った。
【0034】
実施例1
(離型フィルムの製造)
基材フィルムとして無延伸ポリプロピレンフィルム PP−1(サン・トックス(株)製、品番:R012#60、厚み60μm)を用いて以下の方法で離型フィルムを製造した。
基材フィルムのコロナ処理面側に、熱硬化型シリコーン−1(信越化学工業(株)製、品番:KS−3703)80重量部及び離型力調整剤(信越化学工業(株)製、品番:KS−3800)20重量部の混合物を、塗工量が0.1g/mとなるようにグラビアコーターにて塗工し、第1の離型フィルムを得た。
上記とは別に、基材フィルムのコロナ処理面側に、熱硬化型シリコーン−2(東レ・ダウコーニング(株)製、品番:LTC750A)を、塗工量が0.1g/mとなるようにグラビアコーターにて塗工し、第2の離型フィルムを得た。
これらの離型フィルムを用いて、上記(1)及び(2)の評価を行った。評価結果は表1に示した。
【0035】
(離型フィルム貼合両面粘着シートの製造)
離型フィルム貼合両面粘着シートの製造は、図1に示したような製造装置を用いて行った。ここで、紫外線硬化型粘着剤を供給するダイスの温度は、120℃であり;
冷却ロールの冷却水の温度は5℃であり;
シートの巻き取り速度は4m/sであり;そして
照射される紫外線の量は、下面(第1の離型フィルム側)、上面(第2の離型フィルム側)ともに600J/mとなるように調整した。
上記で得られた第1の離型フィルムを繰り出し装置から供給し、これを冷却ロール上に導き、該冷却ロール上において第1の離型フィルムの離型層上にダイスから紫外線硬化型粘着剤 HM−1(ノーテープ工業(株)製、品番:UV300)を供給し、厚みが175μmとなるように塗工した。その後直ちに、該粘着剤層上に、上記で得られた第2の離型フィルムを繰出し装置から供給して積層して積層体とした。
次いで、得られた積層体に両面から紫外線を照射して紫外線硬化型粘着剤を硬化した後に、巻き取りロールに巻き取ることにより、離型フィルム貼合両面粘着シートを得た。
得られた離型フィルム貼合両面粘着シートを用いて、上記(3)〜(6)の評価を行った。評価結果は表1に示した。
【0036】
実施例2
塗工する紫外線硬化型粘着剤 HM−1の厚みを50μmとしたほかは、上記実施例1と同様にして実施して離型フィルム貼合両面粘着シートを得た。この離型フィルム貼合両面粘着シートを用いて、上記(3)〜(6)の評価を行った。評価結果は表1に示した。なお本実施例においては、上記実施例1と同じ離型フィルム材料を使用したため、上記(1)及び(2)の評価については実施例1における評価結果をそのまま転記した。
【0037】
実施例3
紫外線照射を第2の離型フィルム側(上側)からのみとしたほかは、上記実施例1と同様にして実施して離型フィルム貼合両面粘着シートを得た。この離型フィルム貼合両面粘着シートを用いて、上記(3)〜(6)の評価を行った。評価結果は表1に示した。なお本実施例においては、上記実施例1と同じ離型フィルム材料を使用したため、上記(1)及び(2)の評価については実施例1における評価結果をそのまま転記した。
【0038】
実施例4
離型フィルム貼合両面粘着シートの製造は、図2に示したような製造装置を用いて行った。ここで、紫外線硬化型粘着剤の塗工は粘着剤を加温せずに行い;
シートの巻き取り速度は4m/sであり;そして
照射される紫外線の量は、上面(第1の離型フィルム側)、下面(第2の離型フィルム側)ともに600J/mとなるように調整した。
そして紫外線硬化型粘着剤としてNS−1(日本合成化学工業(株)製、品番:NS−001)を用い、粘着剤の厚みが50μmとなるようにメイヤバーを用いてバー塗工したことのほかは、上記実施例1と同様にして実施して離型フィルム貼合両面粘着シートを得た。
この離型フィルム貼合両面粘着シートを用いて、上記(3)〜(6)の評価を行った。評価結果は表1に示した。なお本実施例においては、上記実施例1と同じ離型フィルム材料を使用したため、上記(1)及び(2)の評価については実施例1における評価結果をそのまま転記した。
【0039】
実施例5
(離型フィルムの製造)
第1の離型フィルムに用いる基材フィルムの製造を、スクリュー径75mmの単軸押出機が1台(中間層用)、スクリュー径50mmの単軸押出機が2台(両外層用)の合計3台の押出機からなる3種3層構成のTダイ方式フィルム製膜装置を用いて行った。
中間層及び両外層の押出機に供給する樹脂をポリエチレン樹脂 PE(宇部丸善ポリエチレン(株)製、品番:F522N、密度=0.922g/cm、融点=110℃、MFR=5.0g/10分;190℃時)とし、樹脂温度250℃、滞留時間1分、Tダイ温度240℃の条件にてTダイより押出し、25℃の冷却ロールを通して、総厚み60μmのポリエチレンフィルムを得た。次いで、このフィルムの粘着剤を積層する側の表面の濡れ指数が42mN/mとなるようにコロナ放電処理を施し、さらに40℃において24時間エージングすることにより、基材フィルムを得た。
この基材フィルムを用いたほかは上記実施例1と同様にして実施して第1の離型フィルムを得た。
第2の離型フィルムは、上記実施例1と同様に、PP−1を基材フィルムとして使用して製造した。
これらの離型フィルムを用いて、上記(1)及び(2)の評価を行った。評価結果は表1に示した。
(離型フィルム貼合両面粘着シートの製造)
上記で製造した第1及び第2の各離型フィルムを用いたほかは、上記実施例1と同様にして実施して離型フィルム貼合両面粘着シートを得た。この離型フィルム貼合両面粘着シートを用いて、上記(3)〜(6)の評価を行った。評価結果は表1に示した。
【0040】
実施例6
第1の離型フィルムに用いる基材フィルムをPETフィルム(東洋紡績(株)製、品番:E5100)としたほかは、上記実施例1と同様にして実施して離型フィルムを得た。この離型フィルムを用いて、上記(1)及び(2)の評価を行った。評価結果は表1に示した。
次いでこれらの第1及び第2の各離型フィルムを用いたほかは、上記実施例1と同様にして実施して離型フィルム貼合両面粘着シートを得た。この離型フィルム貼合両面粘着シートを用いて、上記(3)〜(6)の評価を行った。評価結果は表1に示した。
【0041】
実施例7
第1の離型フィルムに用いる基材フィルムを無延伸ポリプロピレンフィルム PP−2(サン・トックス(株)製、品番:MK12#40、厚み40μm)としたほかは、上記実施例1と同様にして実施して離型フィルムを得た。この離型フィルムを用いて、上記(1)及び(2)の評価を行った。評価結果は表1に示した。
次いでこの離型フィルムを用いたほかは、上記実施例1と同様にして実施して離型フィルム貼合両面粘着シートを得た。この離型フィルム貼合両面粘着シートを用いて、上記(3)〜(6)の評価を行った。評価結果は表1に示した。
【0042】
実施例8
(離型フィルムの製造)
第1の離型フィルムに用いる基材フィルムの製造を、実施例5と同じ装置を用いて行った。
中間層及び両外層の押出機に供給する樹脂をホモポリプロピレン PP−3(住友化学(株)製、品番:FLX80E4、融点=163℃、MFR=7g/10分;230℃時)100重量部とし、さらに中間層の押出機に供給する樹脂 100重量部に対して、着色剤マスターバッチ(DIC(株)製、品番:PEONY HP BLUE L−83285M、ベース樹脂=ポリプロピレン、顔料濃度=約5%)を5重量部混合したほかは、上記実施例5と同様にして実施して基材フィルムを得た。
この基材フィルムを用いたほかは上記実施例1と同様にして実施して第1の離型フィルムを得た。
第2の離型フィルムは、上記実施例1と同様に、PP−1を基材フィルムとして使用して製造した。
これらの離型フィルムを用いて、上記(1)及び(2)の評価を行った。評価結果は表1に示した。
(離型フィルム貼合両面粘着シートの製造)
上記で製造した第1及び第2の各離型フィルムを用いたほかは、上記実施例1と同様にして実施して離型フィルム貼合両面粘着シートを得た。この離型フィルム貼合両面粘着シートを用いて、上記(3)〜(6)の評価を行った。評価結果は表1に示した。
【0043】
比較例1
第1及び第2の離型フィルムに用いる基材フィルムを、双方ともPETフィルム(東洋紡績(株)製、品番:E5100)としたほかは、上記実施例1と同様にして実施して離型フィルムを得た。この離型フィルムを用いて、上記(1)及び(2)の評価を行った。評価結果は表1に示した。
次いでこの離型フィルムを用いたほかは、上記実施例1と同様にして実施して離型フィルム貼合両面粘着シートを得た。この離型フィルム貼合両面粘着シートを用いて、上記(3)〜(6)の評価を行った。評価結果は表1に示した。
【0044】
比較例2
第1及び第2の離型フィルムに用いる基材フィルムをPETフィルム(東洋紡績(株)製、品番:E5100)としたほかは、上記実施例2と同様にして実施して離型フィルムを得た。この離型フィルムを用いて、上記(1)及び(2)の評価を行った。評価結果は表1に示した。次いでこの離型フィルムを用いたほかは、上記実施例1と同様にして実施して離型フィルム貼合両面粘着シートを得た。この離型フィルム貼合両面粘着シートを用いて、上記(3)〜(6)の評価を行った。評価結果は表1に示した。
【0045】
参考例1
上記比較例1において、一度紫外線を照射して巻き取りロールに巻き取った離型フィルム貼合両面粘着シートにつき、以下のようにして更に2回の紫外線照射を行った。
上記離型フィルム貼合両面粘着シートをロールから繰り出して、第2の離型フィルムを剥離した状態でシートの両面から紫外線を照射した後に、新たな第2の離型フィルムを貼合し、積層体として巻き取った。
この第2の離型フィルムの剥離及び紫外線照射の操作をもう一回繰り返して行うことにより、離型フィルム貼合両面粘着シートを得た。
この離型フィルム貼合両面粘着シートを用いて、上記(3)〜(6)の評価を行った。評価結果は表1に示した。なお本参考例においては、上記比較例1と同じ離型フィルム材料を使用したため、上記(1)及び(2)の評価については比較例1における評価結果をそのまま転記した。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化型粘着剤の硬化物からなる両面粘着シートの両面に離型フィルムが貼合されてなり、
前記離型フィルムは、それぞれ、樹脂からなる基材フィルムの貼合面側の表面に離型層を有するものであり、そして
前記両面粘着シートの両面に貼合される離型フィルムのうちの少なくとも1枚の基材フィルムを構成する樹脂がポリオレフィン樹脂であることを特徴とする、離型フィルム貼合両面粘着シート。
【請求項2】
前記基材フィルムを構成するポリオレフィン樹脂がポリプロピレン系樹脂である、請求項1に記載の離型フィルム貼合両面粘着シート。
【請求項3】
前記ポリプロピレン系樹脂からなる基材フィルムが無延伸ポリプロピレンフィルムである、請求項2の記載の離型フィルム貼合両面粘着シート。
【請求項4】
前記離型フィルムの双方ともの基材フィルムを構成する樹脂がポリオレフィン樹脂である、請求項1の記載の離型フィルム貼合両面粘着シート。
【請求項5】
請求項1に記載の離型フィルム貼合両面粘着シートを製造するための方法であって、
ポリオレフィン樹脂からなる基材フィルム上に離型層を有する第1の離型フィルム、
紫外線硬化型粘着剤、及び
樹脂からなる基材フィルム上に離型層を有する第2の離型フィルム
をこの順に積層して積層体とし、そして
前記積層体に対し、少なくとも前記第1の離型フィルムの側から紫外線を照射する紫外線照射工程を経ることを特徴とする、前記方法。
【請求項6】
前記第2の離型フィルムの基材フィルムを構成する樹脂がポリオレフィン樹脂であり、そして
紫外線照射工程における紫外線の照射を前記積層体の両面から行う、請求項5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−167255(P2012−167255A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−5761(P2012−5761)
【出願日】平成24年1月16日(2012.1.16)
【出願人】(596104050)サン・トックス株式会社 (16)
【Fターム(参考)】