説明

離型フィルム

本発明は離型フィルムに関するものであって、さらに詳しくは、ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの一面、又は両面に形成された剥離コーティング層とからなり、前記剥離コーティング層は、シリコーン系バインダー樹脂と、架橋剤としてフェニル基を有する水性シリコーン系樹脂とが含まれた水性コーティング液を塗布して架橋及び硬化させることにより、ポリエステルフィルムとの密着力を向上させた離型フィルムに関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は離型フィルムに関するものであって、さらに詳しくは、シリコーン系樹脂を使用した剥離コーティング層とポリエステルフィルムとの間の密着力を向上させた離型フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
離型フィルムは、紙、又はプラスチックフィルムなどの基材と粘着性物質との間の接着、又は固着を防止することを目的とし、基材面にシリコーン組成物の硬化被膜を形成させて剥離性を付与する。基材面がプラスチックフィルムである場合、通常、離型フィルムと称するが、離型フィルムは、例えばラベルの使用が準備されるまでに粉塵、破片、水分、及びその他の汚染物による汚染から接着製品の粘着性接着面を一時的に保護する。一般的に離型フィルムは、接着製品の使用直前に接着面から分離される。
【0003】
離型フィルムには、基材に剥離性を付与するとともに基材との密着力を付与することができる剥離コーティング層が形成されている。剥離コーティング層は、通常、シリコーン剥離剤を含む。
【0004】
このような離型フィルムの性能は、接着製品の接着層を形成する接着剤、又は剥離コーティング層の形成に使用されたシリコーン剥離剤などによって主に左右される。離型フィルムは、一旦、粘着性接着面に結合されたら、剥離力なしで自発的に剥がれてはいけないが、比較的に少ない剥離力でも容易に除去されなければならなく(離型性)、接着剤の残留粘着力の減少を引き起こしてはいけない。また、接着面から離型フィルムが分離される際に離型フィルム自体の剥離コーティング層がそのまま残ること、即ち、離型フィルムの内部的な密着性もまた重要である。
【0005】
即ち、剥離コーティング層は、反対表面では容易に、且つ完全に離型される反面、ポリエステルフィルムには堅固に結合しなければならないという明らかに矛盾した条件を満たさなければならない。
【0006】
一方、このような離型フィルムは、基材フィルム上に剥離コーティング層を塗布する方法によってオフラインコーティング(off−line coating)とインラインコーティング(in−line coating)フィルムとに区分される。一般的に、オフラインコーティング(off−line coating)とは、完製品形態の基材フィルム上に剥離コーティング層を塗布し、乾燥過程を経て離型フィルムを製造する形態であり、インラインコーティング(in−line coating)とは、一般的に重合体の非晶質溶融物を押出してシート形態に固形化させ、ここに剥離コーティング層を塗布した後、予熱、延伸、熱固定、及び冷却などの過程を経て離型フィルムを製造する形態である。
【0007】
一般的に、離型フィルムにおいて、基材フィルムとしてはポリエステルフィルムが主に使用されるが、ポリエステルフィルムは、安定した化学構造を有しており、機械的強度が高く、耐熱性、耐久性、耐薬品性など、物性の側面で優れた特性を示す。このようなポリエステルのうち、特にポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate)は、低温から高温までの広い温度範囲に亘って物性の安定性に優れており、且つ耐化学特性に優れており、機械的強度、表面特性、厚みの均一性が良好であって、多様な用途の工程条件に優れた適応力を有しているため、産業用、医療用、包装用などの用途で広く使用されている。また、最近提起されている環境汚染問題においても、リサイクル率が高く、産業分野での重要度は段々と大きくなっている。
【0008】
インラインコーティングによる離型フィルムの製造過程は、ポリエステルの非晶質溶融物を冷却鋳造ドラム上に押出させ、溶融物をシート形態に固形化させた後、このシート上に剥離コーティング液を塗布し、フィルムに製造するための加熱及び延伸工程を経り、この過程においてフィルム強度、安定性、及びその他の好ましい物理的特性を付与するようになる。フィルムを一方向、又は両方向に延伸した後、固定化させる。
【0009】
フィルム表面にインラインコーティングによって適用するための剥離コーティング組成物は、一般的にフィルム生産率と適合性のために、迅速にセッティング可能であるか、硬化可能でなければならない。さらに、剥離コーティング組成物は強度と透明性において低下を引き起こさないとともに、延伸可能でなければならない。
【0010】
剥離コーティング組成物においてシリコーン剥離剤は、反応性、架橋結合性シリコーン系化合物を含むことができる。このようなシリコーン系化合物としては、水素官能性ポリシロキサン、アルコキシ官能性ポリシロキサン、ヒドロキシ官能性ポリシロキサン、及びビニル官能性ポリシロキサンなどを挙げることができる。このような化合物は全部、一般的に低い粘度の、容易に流動する液体樹脂の形態で市販されている。
【0011】
一般的に、インラインコーティング方式においてシリコーン剥離剤は、水性エマルジョンで使用されることができる。基材表面にシリコーン被膜を形成する方法としては、(1)白金系化合物を触媒として、ビニル官能性ポリシロキサンと水素官能性ポリシロキサンとを付加反応させて剥離性被膜を形成する方法、(2)有機スズ化合物などの有機酸金属塩触媒を使用して、ポリシロキサンを縮合反応させて剥離性被膜を形成する方法などが知られている。
【0012】
一般的に剥離コーティング層を形成するための調液を水性で製造するためには乳化剤を適用するが、乳化剤が含まれた水性コーティング液は、溶剤、及び無溶剤タイプの調液と比べて、剥離コーティング層と基材フィルムとの間の密着力が低下される問題がある。従って、密着力を改善するために接着促進剤を追加し、このような接着促進剤としては、特許文献1に記述されているように、一般的に製造されたアルコキシシロキサンを使用することができる。
【0013】
しかし、殆どの場合、水性コーティング液を製造するために適用した乳化剤が調液状態で接着促進剤と反応することにより、コーティング組成物の貯蔵安定性を急激に落とすため、実際の工程に適用するためには、より根本的な改善が必要であった。従って、接着促進剤を使用することなく、剥離コーティング層と基材フィルムとの間の密着力を向上させることができる方法を開発する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6,020,412号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、インラインコーティング法を使用して剥離コーティング層を形成した離型フィルムを提供しようとするものである。
【0016】
また、本発明は、インラインコーティングに使用するための水性コーティング液において、接着促進剤を使用することなく、ポリエステルフィルムとの密着力を向上させる架橋剤を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は離型フィルムに関するものであって、さらに詳しくは、ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの一面、又は両面に形成された剥離コーティング層とからなり、前記剥離コーティング層は、シリコーン系バインダー樹脂と、架橋剤としてフェニル基を有する水性シリコーン系樹脂とが含まれた水性コーティング液を塗布して架橋及び硬化させた離型フィルムに関するものである。
【0018】
前記水性コーティング液は、シリコーン系バインダー樹脂、架橋剤、触媒、及び水を主要組成で含み、各種機能を付与するための添加剤が含まれることができる。即ち、水性コーティング液は、水を連続相にしたエマルジョン形態、又は分散相形態でポリエステルフィルムに適用され、分散は、ポリエチレングリコール、又はポリビニルアルコールなどの水性高分子と、アルキルフェニルポリグリコールエーテルのような界面活性剤を添加剤として配合攪拌してなることもできる。
【0019】
また、前記水性コーティング液は、離型フィルムを製造するために基材フィルムであるポリエステルフィルムに塗布した後、フィルムを予熱及び延伸する過程で水分が増発し、熱固定をする段階で架橋及び硬化がなされるようになり、最終的な固形分のみ存在するコーティング層に形成される。従って、本発明において 固形分は、添加剤を除いた剥離コーティング層内に存在する主要成分の固形分を意味する。
【0020】
前記バインダー樹脂は、直鎖状(linear)又は枝状(branched)のアルキルビニルポリシロキサンが使用可能であり、具体的には末端、又は側枝にヒドロキシ基、エチレン基、アセチレン基から選択される1種以上の官能基を有するポリジメチルシロキサンを使用する。
【0021】
前記触媒は、シリコーン樹脂バインダーのヒドロシリル化(hydrosilylation)反応を誘導して硬化されるように使用するものであって、4族〜14族の間から選択される1種以上の金属、又は両性元素、即ち、Rh、Pt、Sn、Ti、Pd、Ir、W、Coから選択される何れか一つ以上を使用する。
【0022】
前記架橋剤は、シリコーン系バインダー樹脂とポリエステルフィルムとの密着力を向上させるために、シリコーンポリマー構造にフェニル基が導入された架橋剤を適用した。具体的に前記架橋剤は、下記構造式1のフェニル基が導入されたシリコーン樹脂を単独で使用するか、又は下記構造式1のシリコーン樹脂と下記構造式2、又は構造式3のフェニル基が導入されなかったシリコーン樹脂とを混合して使用する。このようにフェニル基が含まれた架橋剤を適用すると、一般的なアルキル基が含まれた架橋剤を適用する場合と比べて、ポリエステルフィルムとの密着力がよくなり、特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとの密着力がよくなる。
【0023】
[構造式1]
【化1】

(上記式で、mは5〜50から選択される自然数、nは5〜50から選択される自然数、oは5〜50から選択される自然数である。)
【0024】
[構造式2]
【化2】

(上記式で、xは5〜50から選択される自然数である。)
【0025】
[構造式3]
【化3】

(上記式で、aは5〜50から選択される自然数、bは5〜50から選択される自然数である。)
【0026】
架橋剤の含量は、水性コーティング液の全体固形分含量のうち、10〜60重量%、より好ましくは、20〜50重量%で使用する。10重量%未満で使用する場合は、ポリエステルフィルムと剥離コーティング層との密着力が低下し、60重量%を超える場合は、反応されなかった架橋剤が残存する可能性がある。反応されずに残った架橋剤はオリゴマー状態となり、ロール状態で保管する際に反対面に転写されるか、粘着剤との合紙の際に、粘着剤に転写される可能性がある。
【0027】
ポリエステルフィルムは、芳香族ジカルボン酸を主成分とする酸成分と、アルキレングリコールを主成分とするグリコール成分とを縮合重合して、分子内の主な繰り返し単位がエチレンテレフタレートからなるポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を通常の製造方法によりフィルムに製造する。
【0028】
芳香族ジカルボン酸の具体的な例としては、ジメチルテレフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、アントラセンカルボン酸、α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸などがあり、これらのうち、ジメチルテレフタル酸、又はテレフタル酸が特に好ましい。
【0029】
アルキレングリコールの具体的な例としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールなどがあり、これらのうち、特にエチレングリコールが好ましい。
【0030】
本発明による離型フィルムは、インラインコーティング方法、又はオフラインコーティング方法のどちらを使用して製造してもよく、好ましくは、インラインコーティング方法によって製造する。
【0031】
水性コーティング液は、公知されたコーティング方法を用いて適用されることができるが、一例として、ロールコーティング、グラビアロールコーティング、ロールブラシコーティング、噴霧コーティング、エアナイフコーティング、スロットコーティング、浸漬、又はメニスカスコーティングなどが挙げられる。
【0032】
インラインコーティング方法によって製造する場合、ポリエステルフィルムが1軸延伸フィルムである場合には、非結晶シートを製造した後、延伸工程前、又は、延伸工程後熱固定工程前に上述したコーティング方法を用いてコーティングすることができる。
【0033】
2軸延伸フィルムである場合には、非結晶シートを製造した後、延伸工程前、縦方向延伸後横方向延伸前、又は横方向延伸後熱固定工程前にコーティングすることができる。
【0034】
一般的には、縦方向延伸前にコーティングが行われる場合は、別途の乾燥工程が要求されるため、縦方向(MD)延伸後横方向(TD)延伸前にコーティングすることが好ましい。
【0035】
インラインコーティング方法によって製造される場合には、予熱、延伸過程で水分が蒸発し、高温の熱固定温度で硬化がなされて、延伸によってシリコーン系樹脂がポリエステルフィルムに配向される効果があり、優れた物性のコーティング膜を得ることができる。
【0036】
また、調液をコーティングする前にポリエステルフィルムの表面に電気コロナ放電などの方法で表面処理をする場合、ポリエステルフィルム表面の疎水性特性が減少し、調液が表面をより易く湿潤させるため、ポリエステルフィルム表面に対する剥離コーティング層の接着力を向上させる。
【0037】
前記剥離コーティング層は、乾燥塗布厚みを0.01〜2μmで製造する。0.01μm未満で塗布する場合、十分な離型性を付与することができなく、2μmを超える場合、密着力が低下されることがある。
【0038】
また、前記ポリエステルフィルムは、厚みは制限されないが、4〜500μmであることが十分な離型性及び密着性を達成するのに好適である。
【発明の効果】
【0039】
本発明は、剥離コーティング層を形成するための水性コーティング液で接着促進剤を使用しないため、調液の貯蔵安定性に優れているとともに、特定のフェニル基を有する架橋剤を使用することにより、ポリエステルフィルムとの密着力に優れている離型フィルムを提供することができる。
【0040】
また、本発明は、水性コーティング液を使用してインラインコーティング(in−line coating)方法でコーティングをするため、環境にやさしく、且つ、薄くて均一な膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明すると次のようであるが、本発明が実施例によって限定されるものではない。
【0042】
製造されるフィルムに対し、物性を測定して下記表2に示し、その具体的な測定方法は次のようである。
【0043】
(1)離型力
剥離コーティング層上にNitto 31Bテープを置き、2kgゴムロールを使用して2回往復して擦った後、25mm×20cmのサイズに切ってサンプルを用意した。用意されたサンプルを20g/cm2の荷重を加え、70℃で1日間放置した後、万能試験機(インストロン社、Instron4303)を使用してT型剥離評価を実施した。剥離速度は300mm/分にした。
【0044】
(2)密着力
密着力は、剥離コーティング層を親指を使用して5回往復して力一杯擦った後、コーティング層が剥がれる程度を観察し、次のように評価した。
【0045】
<区分等級>
A等級:スミア現象が全く観察されない。
B等級:スミア現象が観察され始める。
C等級:ラブ−オフ現象が観察され始める。
D等級:ラブ−オフ現象が容易に観察される。
【0046】
(3)背面転写率
実施例及び比較例で製造された離型フィルムの剥離コーティング層とは別途製造されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを接するようにして50g/cm2の荷重を加え、40℃で3日間放置させた後、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの放置前後の転写率を測定した。
【0047】
背面転写率(%)=(放置前ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム離型力 放置後ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム離型力)×100 /放置前ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム離型力
【0048】
<区分等級>
◎等級:背面転写率95%以上。
○等級:背面転写率90〜95%。
△等級:背面転写率80〜90%。
×等級:背面転写率80%未満。
【0049】
(4)調液安定性
コーティング液の全体固形分が1%、10%、25%及び50%となるように調液し、それぞれの調液を2軸延伸された30μmPETフィルムに塗布して、時間によるヘイズ変化を観察することにより可使時間を測定した。ヘイズはASTM D−1003方法で測定した。
【0050】
この際、シリコーン調液の安定性が落ちるほど、コーティングされたフィルムのヘイズが増加するため、初期のヘイズ値が維持される時間を測定した。
【0051】
以下の実施例において、別途記載がない限り、バインダー樹脂はジビニルポリジメチルシロキサン(粘度14000、mPa.s)を使用し、また、フェニル基を含む架橋剤は下記[構造式1]を使用し、
[構造式1]
【化4】

(m=10、n=10、o=10)
フェニル基を含まない架橋剤は下記[構造式3]を使用し、
[構造式3]
【化5】

(a=10、b=10)
触媒は、白金触媒(Na2PtCl4・4H2O)、乳化剤はポリビニルアルコール(Hoechst社、Mowiol 4−80)、接着促進剤はγ−アクリルオキシプロピルトリメトキシシランを使用した。
【0052】
<実施例1>
コーティング液(A)の製造
バインダー樹脂が全体固形分含量のうち50重量%、フェニル基を含む架橋剤が全体固形分含量のうち10重量%、フェニル基を含まない架橋剤が全体固形分含量のうち40重量%となるように混合をし、コーティング液のうち、全体固形分含量がそれぞれ1%、10%、25%及び50%となるように水を添加して調液した。このとき、添加剤として、触媒は樹脂含量に対して100ppm、乳化剤はコーティング液の固形分含量100重量部に対して5重量部を使用した。このように製造されたコーティング液の調液安定性を測定して下記表2に示した。
【0053】
離型フィルムの製造
ポリエチレンテレフタレート樹脂を溶融押出した後、急冷却して得られたシートを予熱部で95℃で予熱した後、縦方向(MD)に4倍延伸して冷却した。冷却されたフィルムにグラビアコーターを用いて、全体固形分含量が10%に調製されたコーティング液(A)を8μmとなるように塗布した。130℃で乾燥及び予熱した後、横方向(TD)に4倍延伸をし、230℃で熱固定して、30μm厚みの基材フィルムに乾燥後塗布厚み(Dry Pick−up)が0.2μmであるコーティング層が均一に形成された離型フィルムを製造した。
このように製造されたフィルムの離型力、密着力、背面転写率を測定して下記表2に示した。
【0054】
<実施例2>
コーティング液(B)の製造
バインダー樹脂が全体固形分含量のうち50重量%、フェニル基を含む架橋剤が全体固形分含量のうち20重量%、フェニル基を含まない架橋剤が全体固形分含量のうち30重量%となるように混合をし、コーティング液のうち、全体固形分含量がそれぞれ1%、10%、25%及び50%となるように水を添加して調液した。このとき、添加剤として、触媒は100ppm、乳化剤はコーティング液の固形分含量100重量部に対して5重量部を使用した。このように製造されたコーティング液の調液安定性を測定して下記表2に示した。
【0055】
離型フィルムの製造
ポリエチレンテレフタレート樹脂を溶融押出した後、急冷却して得られたシートを予熱部で95℃で予熱した後、縦方向(MD)に4倍延伸して冷却した。冷却されたフィルムにグラビアコーターを用いて、全体固形分含量が10%に調製されたコーティング液(B)を8μmとなるように塗布した。130℃で乾燥及び予熱した後、横方向(TD)に4倍延伸をし、230℃で熱固定して、30μm厚みの基材フィルムに乾燥後塗布厚み(Dry Pick−up)が0.2μmであるコーティング層が均一に形成された離型フィルムを製造した。
このように製造されたフィルムの離型力、密着力、背面転写率を測定して下記表2に示した。
【0056】
<実施例3>
コーティング液(C)の製造
バインダー樹脂が全体固形分含量のうち50重量%、フェニル基を含む架橋剤が全体固形分含量のうち30重量%、フェニル基を含まない架橋剤が全体固形分含量のうち20重量%となるように混合をし、コーティング液のうち、全体固形分含量がそれぞれ1%、10%、25%及び50%となるように水を添加して調液した。このとき、添加剤として、触媒は100ppm、乳化剤はコーティング液の固形分含量100重量部に対して5重量部を使用した。このように製造されたコーティング液の調液安定性を測定して下記表2に示した。
【0057】
離型フィルムの製造
ポリエチレンテレフタレート樹脂を溶融押出した後、急冷却して得られたシートを予熱部で95℃で予熱した後、縦方向(MD)に4倍延伸して冷却した。冷却されたフィルムにグラビアコーターを用いて、全体固形分含量が10%に調製されたコーティング液(C)を8μmとなるように塗布した。130℃で乾燥及び予熱した後、横方向(TD)に4倍延伸をし、230℃で熱固定して、30μm厚みの基材フィルムに乾燥後塗布厚み(Dry Pick−up)が0.2μmであるコーティング層が均一に形成された離型フィルムを製造した。
このように製造されたフィルムの離型力、密着力、背面転写率を測定して下記表2に示した。
【0058】
<実施例4>
コーティング液(D)の製造
バインダー樹脂が全体固形分含量のうち50重量%、フェニル基を含む架橋剤が全体固形分含量のうち40重量%、フェニル基を含まない架橋剤が全体固形分含量のうち10重量%となるように混合をし、コーティング液のうち、全体固形分含量がそれぞれ1%、10%、25%及び50%となるように水を添加して調液した。このとき、添加剤として、触媒は100ppm、乳化剤はバインダー樹脂の全体固形分含量100重量部に対して5重量部を使用した。このように製造されたコーティング液の調液安定性を測定して下記表2に示した。
【0059】
離型フィルムの製造
ポリエチレンテレフタレート樹脂を溶融押出した後、急冷却して得られたシートを予熱部で95℃で予熱した後、縦方向(MD)に4倍延伸して冷却した。冷却されたフィルムにグラビアコーターを用いて、全体固形分含量が10%に調製されたコーティング液(D)を8μmとなるように塗布した。130℃で乾燥及び予熱した後、横方向(TD)に4倍延伸をし、230℃で熱固定して、30μm厚みの基材フィルムに乾燥後塗布厚み(Dry Pick−up)が0.2μmであるコーティング層が均一に形成された離型フィルムを製造した。
このように製造されたフィルムの離型力、密着力、背面転写率を測定して下記表2に示した。
【0060】
<実施例5>
コーティング液(E)の製造
バインダー樹脂が全体固形分含量のうち50重量%、フェニル基を含む架橋剤が全体固形分含量のうち50重量%となるように混合をし、コーティング液のうち、全体固形分含量がそれぞれ1%、10%、25%及び50%となるように水を添加して調液した。このとき、添加剤として、触媒は100ppm、乳化剤はコーティング液の固形分含量100重量部に対して5重量部を使用した。このように製造されたコーティング液の調液安定性を測定して下記表2に示した。
【0061】
離型フィルムの製造
ポリエチレンテレフタレート樹脂を溶融押出した後、急冷却して得られたシートを予熱部で95℃で予熱した後、縦方向(MD)に4倍延伸して冷却した。冷却されたフィルムにグラビアコーターを用いて、全体固形分含量が10%に調製されたコーティング液(E)を8μmとなるように塗布した。130℃で乾燥及び予熱した後、横方向(TD)に4倍延伸をし、230℃で熱固定して、30μm厚みの基材フィルムに乾燥後塗布厚み(Dry Pick−up)が0.2μmであるコーティング層が均一に形成された離型フィルムを製造した。
このように製造されたフィルムの離型力、密着力、背面転写率を測定して下記表2に示した。
【0062】
<実施例6>
離型フィルムの製造
ポリエチレンテレフタレート樹脂を溶融押出した後、急冷却して得られたシートを予熱部で95℃で予熱した後、縦方向(MD)に4倍延伸して冷却した。冷却されたフィルムにグラビアコーターを用いて、全体固形分含量が5%に調製されたコーティング液(E)を8μmとなるように塗布した。130℃で乾燥及び予熱した後、横方向(TD)に4倍延伸をし、230℃で熱固定して、30μm厚みの基材フィルムに乾燥後塗布厚み(Dry Pick−up)が0.1μmであるコーティング層が均一に形成された離型フィルムを製造した。
このように製造されたフィルムの離型力、密着力、背面転写率を測定して下記表2に示した。
【0063】
<実施例7>
離型フィルムの製造
ポリエチレンテレフタレート樹脂を溶融押出した後、急冷却して得られたシートを予熱部で95℃で予熱した後、縦方向(MD)に4倍延伸して冷却した。冷却されたフィルムにグラビアコーターを用いて、全体固形分含量が25%に調製されたコーティング液(E)を8μmとなるように塗布した。130℃で乾燥及び予熱した後、横方向(TD)に4倍延伸をし、230℃で熱固定して、30μm厚みの基材フィルムに乾燥後塗布厚み(Dry Pick−up)が0.5μmであるコーティング層が均一に形成された離型フィルムを製造した。
このように製造されたフィルムの離型力、密着力、背面転写率を測定して下記表2に示した。
【0064】
<実施例8>
離型フィルムの製造
ポリエチレンテレフタレート樹脂を溶融押出した後、急冷却して得られたシートを予熱部で95℃で予熱した後、縦方向(MD)に4倍延伸して冷却した。冷却されたフィルムにグラビアコーターを用いて、全体固形分含量が50%に調製されたコーティング液(E)を8μmとなるように塗布した。130℃で乾燥及び予熱した後、横方向(TD)に4倍延伸をし、230℃で熱固定して、30μm厚みの基材フィルムに乾燥後塗布厚み(Dry Pick−up)が1.0μmであるコーティング層が均一に形成された離型フィルムを製造した。
このように製造されたフィルムの離型力、密着力、背面転写率を測定して下記表2に示した。
【0065】
<実施例9>
離型フィルムの製造
ポリエチレンテレフタレート樹脂を溶融押出した後、急冷却して得られたシートを予熱部で95℃で予熱した後、縦方向(MD)に4倍延伸して冷却した。冷却されたフィルムにグラビアコーターを用いて、全体固形分含量が10%に調製されたコーティング液(E)を8μmとなるように塗布した。130℃で乾燥及び予熱した後、横方向(TD)に4倍延伸をし、230℃で熱固定して、12μm厚みの基材フィルムに乾燥後塗布厚み(Dry Pick−up)が0.2μmであるコーティング層が均一に形成された離型フィルムを製造した。
このように製造されたフィルムの離型力、密着力、背面転写率を測定して下記表2に示した。
【0066】
<実施例10>
離型フィルムの製造
ポリエチレンテレフタレート樹脂を溶融押出した後、急冷却して得られたシートを予熱部で95℃で予熱した後、縦方向(MD)に4倍延伸して冷却した。冷却されたフィルムにグラビアコーターを用いて、全体固形分含量が10%に調製されたコーティング液(E)を8μmとなるように塗布した。130℃で乾燥及び予熱した後、横方向(TD)に4倍延伸をし、230℃で熱固定して、100μm厚みの基材フィルムに乾燥後塗布厚み(Dry Pick−up)が0.2μmであるコーティング層が均一に形成された離型フィルムを製造した。
このように製造されたフィルムの離型力、密着力、背面転写率を測定して下記表2に示した。
【0067】
<実施例11>
離型フィルムの製造
ポリエチレンテレフタレート樹脂を溶融押出した後、急冷却して得られたシートを予熱部で95℃で予熱した後、縦方向(MD)に4倍延伸して冷却した。冷却されたフィルムにグラビアコーターを用いて、全体固形分含量が10%に調製されたコーティング液(E)を8μmとなるように塗布した。130℃で乾燥及び予熱した後、横方向(TD)に4倍延伸をし、230℃で熱固定して、250μm厚みの基材フィルムに乾燥後塗布厚み(Dry Pick−up)が0.2μmであるコーティング層が均一に形成された離型フィルムを製造した。
このように製造されたフィルムの離型力、密着力、背面転写率を測定して下記表2に示した。
【0068】
<比較例1>
コーティング液(F)の製造
バインダー樹脂が全体固形分含量のうち50重量%、フェニル基を含まない架橋剤が全体固形分含量のうち50重量%となるように混合をし、コーティング液のうち、全体固形分含量がそれぞれ1%、10%、25%及び50%となるように水を添加して調液した。このとき、添加剤として、触媒は100ppm、乳化剤はコーティング液の固形分含量100重量部に対して5重量部を使用した。このように製造されたコーティング液の調液安定性を測定して下記表2に示した。
【0069】
離型フィルムの製造
ポリエチレンテレフタレート樹脂を溶融押出した後、急冷却して得られたシートを予熱部で95℃で予熱した後、縦方向(MD)に4倍延伸して冷却した。冷却されたフィルムにグラビアコーターを用いて、全体固形分含量が10%に調製されたコーティング液(F)を8μmとなるように塗布した。130℃で乾燥及び予熱した後、横方向(TD)に4倍延伸をし、230℃で熱固定して、30μm厚みの基材フィルムに乾燥後塗布厚み(Dry Pick−up)が0.2μmであるコーティング層が均一に形成された離型フィルムを製造した。
このように製造されたフィルムの離型力、密着力、背面転写率を測定して下記表2に示した。
【0070】
<比較例2>
コーティング液(G)の製造
バインダー樹脂が全体固形分含量のうち50重量%、フェニル基を含まない架橋剤が全体固形分含量のうち49.8重量%、接着促進剤が全体固形分含量のうち0.2重量%となるように混合をし、コーティング液のうち、全体固形分含量がそれぞれ1%、10%、25%及び50%となるように水を添加して調液した。このとき、添加剤として、触媒は100ppm、乳化剤はコーティング液の固形分含量100重量部に対して5重量部を使用した。このように製造されたコーティング液の調液安定性を測定して下記表2に示した。
【0071】
離型フィルムの製造
ポリエチレンテレフタレート樹脂を溶融押出した後、急冷却して得られたシートを予熱部で95℃で予熱した後、縦方向(MD)に4倍延伸して冷却した。冷却されたフィルムにグラビアコーターを用いて、全体固形分含量が10%に調製されたコーティング液(G)を8μmとなるように塗布した。130℃で乾燥及び予熱した後、横方向(TD)に4倍延伸をし、230℃で熱固定して、30μm厚みの基材フィルムに乾燥後塗布厚み(Dry Pick−up)が0.2μmであるコーティング層が均一に形成された離型フィルムを製造した。
このように製造されたフィルムの離型力、密着力、背面転写率を測定して下記表2に示した。
【0072】
[表1]
【表1】

【0073】
[表2]
【表2】

(上記表において、24↑は24時間以上安定性があることを意味する。)
【0074】
上記結果から分かるように、<比較例1>においてフェニル基を含まない架橋剤のみを適用する場合、密着力が良くなく、<実施例1>の場合、フェニル基が含まれない架橋剤を40%、フェニル基が含まれた架橋剤を10%適用する場合、フェニル基が含まれた架橋剤の含量が増加した場合と比べてスミア現象が観察され始めた。また、<比較例2>から分かるように、密着力を改善するために接着促進剤を適用する場合、密着力は改善されるが、調液安定性が著しく落ちることが分かる。一般的に現場に適用するためには、最小10時間以上の調液安定性が確保されなければならないが、接着促進剤を適用する場合、濃度が低いときにも3時間以下であるため、別途設備や条件の調整などが必要であることが分かる。<実施例2〜5>において、製造上、調液安定性に優れており、製品上、密着力に優れている離型フィルムを製造するために、フェニル基が含まれた架橋剤を適用することが有利であり、その量は固形分に対し20〜50%であるとき、その効果が高いことが分かる。これは<実施例6〜8>から分かるように、コーティング層の厚みが薄いか、厚いときにもその効果があり、<実施例9〜11>から分かるように、フィルムの厚みと関係なくその効果があった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムと、
前記ポリエステルフィルムの一面、又は両面に形成された剥離コーティング層とからなり、前記剥離コーティング層は、シリコーン系バインダー樹脂と、架橋剤としてフェニル基を有する水性シリコーン系樹脂とが含まれた水性コーティング液を塗布して架橋及び硬化させた離型フィルム。
【請求項2】
前記架橋剤は、下記構造式1のシリコーン系樹脂を単独で使用するか、又は下記構造式1のシリコーン系樹脂と下記構造式2又は構造式3のシリコーン系樹脂とを混合して使用する、請求項1に記載の離型フィルム。
[構造式1]
【化1】

(上記式で、mは5〜50から選択される自然数、nは5〜50から選択される自然数、oは5〜50から選択される自然数である。)
[構造式2]
【化2】

(上記式で、xは5〜50から選択される自然数である。)
[構造式3]
【化3】

(上記式で、aは5〜50から選択される自然数、bは5〜50から選択される自然数である。)
【請求項3】
前記バインダー樹脂は、末端、又は側枝にヒドロキシ基、エチレン基、アセチレン基から選択される1種以上の官能基を有するポリジメチルシロキサンである、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記フェニル基を有する水性シリコーン系樹脂は、水性コーティング液の全体固形分含量のうち、10〜60%である、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項5】
前記剥離コーティング層の厚みが0.01〜2μmである、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項6】
前記ポリエステルフィルムの厚みが4〜500μmである、請求項5に記載の離型フィルム。

【公表番号】特表2011−509323(P2011−509323A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540582(P2010−540582)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【国際出願番号】PCT/KR2008/007715
【国際公開番号】WO2009/104865
【国際公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(597114649)コーロン インダストリーズ インク (99)
【Fターム(参考)】