説明

離型性フィルムテープ・ロール及びその製造方法

【課題】離型層の欠陥が極めて少ない離型性フィルムテープ・ロール及びその製造方法を提供する。
【解決手段】離型性フィルムテープ・ロールは、巻取リール(4)に離型性のフィルムテープ(製品テープ)(2)を巻回して構成される。フィルムテープは、ポリエステルの基材フィルムから成り且つその少なくとも一面に離型層が設けられた幅1〜5mmのテープであり、離型層は、乾燥後塗布量が0.01〜0.3g/mとなる様に離型性樹脂を塗布して形成されており、巻取リール(4)は、鍔(42),(42)間の内法(W)がフィルムテープの幅(W)よりも0.05〜0.6mm広く設定されている。また、離型性フィルムテープ・ロールの製造においては、フィルムテープ(2)の基材フィルムとして、上記の特定の塗布量となる様に離型性樹脂を塗布して離型層が形成されたフィルムを使用し、巻取リール(4)として、上記の特定のリールを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機能材料のキャリヤーフィルムとして使用される離型性のフィルムテープ・ロール及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等に優れ、コストパフォーマンスにも優れているため、各種の用途において基材フィルムとして使用される。その一例としては、ハードディスクの磁気ヘッド部材の製作においてマウント用のWAX状熱硬化性樹脂機能剤膜を形成する際の粘着性機能剤膜(機能剤層)のキャリヤーとして使用される幅1〜5mmの細幅の離型性フィルムテープが挙げられる。
【0003】
上記のフィルムテープは、使用過程で塗布された機能剤層を電子機器部材などへ転写する際、乾燥・硬化後に剥がすため、機能剤層に対する離型性を発揮させるための離型層が予め設けられる。キャリヤーテープとして離型層上に樹脂機能剤膜が塗布されてその乾燥後に巻き取られる離型性フィルムテープの前記の樹脂機能剤膜のフィルムテープ背面への転移・ブロッキングを防止するため、通常、離型層は、両面に設けられるのが望ましい。また、機能剤層を坦持、転写した場合にその品質を損なうことのない様に、フィルムテープにおいては、傷、シワ、歪み、異物混入などの欠陥を出来る限り少なくすることが望まれる。
【0004】
なお、各種の素材から成るフィルムテープの一般的な製造においては、原反からスリット装置(スリッター)にフィルムを供給し、走行するフィルムに刃物でスリット加工を施し、切り分けられたフィルムテープを巻取リールに巻き取ってフィルムテープのロールを製造する。
【特許文献1】特開平5―70001号公報
【特許文献2】特開平10―329994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
キャリヤー用フィルムテープの製造では、通常、ポリエステルの基材フィルムの表面にシリコーン樹脂などの離型性を有する樹脂が離型層として塗布されるため、加工の際にフィルムが非常に滑り易く、また、塗布形成された離型層が基材フィルムよりも柔らかいため、スリット加工およびフィルムテープの巻取りの際の走行テープの僅かな振れにより、離型層に擦傷、脱落などの欠陥が生じ易いと言う問題がある。更に、スリット加工において発生する離型層の滓などが混入し、品質の低下を惹起する。
【0006】
本発明は、ポリエステル製の離型性の細幅フィルムテープ・ロールの実用性を更に向上すべくなされたものであり、その目的は、離型層に傷、シワ、歪み等の欠陥がなく、異物混入などの欠陥がない離型性フィルムテープ・ロール及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明においては、マイクロスリット加工を利用して基材のポリエステルフィルムから細幅のフィルムテープを精密に切り出し、当該フィルムテープを巻き取ってロールを構成するに当たり、最初に基材フィルム上に離型層として塗布する離型性樹脂の塗布量を規定することにより、マイクロスリット加工時における異物の発生を防止し、そして、フィルムテープを巻取リールに巻き取る際、鍔間の内法が特定の大きさに設定された巻取リールを使用することにより、走行するテープの振れによる離型層の欠陥を防止し且つ高精度に巻き取る様にした。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、巻芯の両端部に鍔をそれぞれ有する巻取リールに離型性のフィルムテープを巻回して構成されたロールであって、フィルムテープは、ポリエステルの基材フィルムから成り且つその少なくとも一面に離型層が設けられた幅1〜5mmのテープであり、離型層は、乾燥後塗布量が0.01〜0.3g/mとなる様に離型性樹脂を塗布して形成されており、巻取リールは、鍔間の内法がフィルムテープの幅よりも0.05〜0.6mm広く設定されていることを特徴とする離型性フィルムテープ・ロールに存する。
【0009】
また、本発明の他の要旨は、少なくとも一面に離型層が設けられたポリエステルの基材フィルムにマイクロスリット加工を施し、得られた幅1〜5mmの離型性のフィルムテープを巻取リールに巻き取ってロールを製造する方法であって、基材フィルムとして、乾燥後塗布量が0.01〜0.3g/mとなる様に離型性樹脂を塗布して離型層が形成されたフィルムを使用し、巻取リールとして、巻芯の両端部に鍔をそれぞれ有し且つこれら鍔間の内法がフィルムテープの幅よりも0.05〜0.6mm広く設定されたリールを使用することを特徴とする離型性フィルムテープ・ロールの製造方法に存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、離型層における傷、シワ、歪み等の欠陥がなく、異物混入の欠陥が極めて少なく、キャリヤーとして使用した際に一層高品質の機能剤層を形成可能な離型性フィルムテープ・ロールが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る離型性フィルムテープ・ロール及びその製造方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、離型性フィルムテープ・ロールを「ロール」と略記する。また、図中に符号(2)で示すフィルムテープを適宜「製品テープ」と言い、符号(3)で示すフィルムテープを適宜「廃棄テープ」と言う。
【0012】
先ず、本発明のロールについて説明する。本発明のロールは、図1に示す様に、巻芯(41)の両端部に鍔(42)をそれぞれ有する巻取リール(4)に離型性のフィルムテープ(製品テープ)(2)を巻回して構成されたロールであり、磁気ヘッド部材の製作などにおいて粘着性機能剤膜のキャリヤーとして使用される。そして、上記のフィルムテープとしては、ポリエステルの基材フィルム(1)(図2参照)から成り且つその少なくとも一面に離型層が設けられた幅(W)が1〜5mmのテープが使用される。
【0013】
本発明において、基材フィルム(1)は、コスト的に安価で、かつ、広く工業用として利用されているポリエステルフィルムから成る。ポリエステルは、例えば、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。コスト的に最も安価で且つ代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が例示される。
【0014】
また、上記のポリエステルは、ホモポリエステル、共重合ポリエステルの何れであってもよい。共重合ポリエステルの場合は、通常30モル%以下の第三成分を含有した共重合体が使用される。更に、ポリエステルは、溶融重合反応で得られたものであってもよいし、また、溶融重合後、チップ化したポリエステルを固相重合したものであってもよい。
【0015】
本発明に使用されるポリエステルの基材フィルム(1)は、単層構造のフィルムであってもよいし、異種のポリエステルを共押出積層した構造を有するフィルムであってもよく、各ポリエステル層の何れかに、帯電防止剤等が配合されてもよい。また、基材フィルム(1)には、表面粗さ、滑り性、透明度などを調整するために、不活性な無機または有機の微粒子などが添加されるが、配合する粒子としては、酸化ケイ素、アルミナ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク、架橋高分子微粉体等を挙げることが出来る。
【0016】
基材フィルム(1)の製造方法の一例として、ポリエチレンテレフタレートフィルムの製造例を示すが、使用するポリエステル、あるいは、添加粒子により製造条件は異なり、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。また、粒子あるいは各種添加剤の添加は、ポリエステル重合段階からポリエステル樹脂の押出機への供給段階までの任意の段階で実施し得る。更に、基材フィルム(1)は、フィルム製膜のライン内で塗布された易接着層、静防層、離型層などを有するインライン塗布基材フィルムであってもよい。
【0017】
ポリエチレンテレフタレートの基材フィルム(1)の製造方法について説明すると、先ず、常法に従って、テレフタル酸とエチレングリコールからエステル化し、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールのエステル交換により、ビス−β−ヒドロキシエチルテレフタレート(BHT)を得る。次に、このBHTを減圧下、280℃に加熱して重合反応を進め、ポリエステル原料を得る。
【0018】
上記のポリエステル原料を、押出機を使用して、口金から溶融シートとして押出し、冷却キャスティングドラム上にキャスティングし、冷却固化して未延伸シートを得る。この未延伸シートを、縦延伸ニップロールにより一段目の縦延伸を行う。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は、通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向にテンターで横延伸を行う。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜115℃であり、延伸倍率は、通常3.0〜6倍、好ましくは3.5〜5倍である。引き続き、130℃〜250℃の範囲の温度で30%以内の弛緩下で熱処理を行い、基材フィルム(1)としての二軸延伸ポリエステルフィルムを得る。
【0019】
本発明の用途においては、基材フィルム(1)の厚さは25〜125μmの範囲が好ましい。基材フィルム(1)の厚さを規定する理由は次の通りである。すなわち、基材フィルム(1)の厚さが25μmより薄い場合には、熱硬化性樹脂膜の硬化処理時にフィルムが熱負けし、熱シワ等の歪みが生じ易い。一方、基材フィルム(1)の厚さが125μmより厚い場合には、マイクロスリット加工時のスリット性が悪くなる。
【0020】
上記の基材フィルム(1)には、ポリエステルフィルム製造ライン内あるいはコーターにおいて、市販の各種離型性樹脂塗料あるいはその改質塗料が離型層として塗布される。離型性樹脂としては、シリコーン樹脂、共重合シリコーン樹脂、グラフト重合シリコーン樹脂等のシコーン系樹脂塗料が好ましいが、これらの樹脂には、白金触媒により付加重合させるもの、有機錫触媒により縮重合させるもの、光重合開始剤によりラジカル重合あるいはカチオン重合させるUV架橋型、電子線架橋型のもの等がある。
【0021】
市販されているシリコーン樹脂の例としては、信越化学工業(株)製の商品:KS−772、KS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−847、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、X−62−1387,KNS−3051、KNS−3000、X−62−1256、KS−723A/KS723B、KM3950,KM−768,KM−9739等、ダウ・コーニング・アジア(株)製の商品:DKQ3−202、DKQ3−203、DKQ3−204、DKQ3−205、DKQ3−210等、東芝シリコーン(株)製の商品:YSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721等、旭化成ワッカーシリコーン(株)製の商品;DEHESIVE 39005VP、DEHESIVE 39006VP等が挙げられ、使用に際しては、これらの中から適宜選択することが出来る。
【0022】
基材フィルム(1)に離型層を設ける場合、通常、上記のシリコーン樹脂に硬化触媒を添加し、更に必要に応じて、剥離力調整剤、密着強化剤などを適宜添加し、トルエン、MEK、酢酸エチル等の溶剤(水性タイプにおいては水)で適宜希釈して使用する。
【0023】
基材フィルム(1)への離型用樹脂塗料の塗布方法としては、ロールコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、リバースコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法、ロールブラッシュ法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ダイコート法などが挙げられ、これらの任意の塗布方法を単独、または、適宜組み合わせて適用することが出来る。
【0024】
基材フィルム(1)への離型用樹脂塗料の塗布量については、乾燥後塗布量で0.01〜0.3g/mの範囲が適当である。離型用樹脂塗料の塗布量を上記の様に設定する理由は次の通りである。すなわち、乾燥後塗布量が0.01g/mより少ないと、充分な離型性を得られ難く、また、乾燥後塗布量が0.3g/mを超えると、マイクロスリット加工時に切断刃(図2及び図3に符号(52)で示す回転切)に塗膜の滓が蓄積し易く、塗膜成分を含む粘着異物が製品テープ(2)に付着して好ましくない。なお、上記の乾燥後塗布量は次式に基づいて算出される。
【0025】
【数1】

【0026】
本発明では、後述するマイクロスリット加工から巻取リール(4)への巻取において、上記の離型層における傷、シワ、歪み、異物混入などの欠陥の発生を防止するため、図1に示す様に、巻取リール(4)は、その鍔(42),(42)間の内法(W)がフィルムテープの幅(W)よりも0.05〜0.6mm広く設定されていることが重要である。
【0027】
本発明においては、極めて細幅で且つ滑り易いフィルムテープを巻きズレ無く安定して巻き取るため、巻取リール(4)は、プラスチック製の巻取リールが好適である。巻取リール(4)の巻芯(41)の内径は75〜77mm程度、外径は95〜100mm程度、鍔(42)の外形は200〜300mm程度、鍔(42)の厚さは3〜5mm程度である。
【0028】
巻取リール(4)の鍔(42),(42)間の内法(W)を上記の範囲に設定する理由は次の通りである。すなわち、製品テープ(2)の幅(W)対する鍔(42),(42)間の内法(W)の差が0.6mmよりも大きい場合には、巻きズレが発生し易くなる。一方、上記の差が0.05mm未満の場合には、製品テープ(2)の長さ方向に沿った縁が鍔(42)に擦れ易く、テープ端縁の削れ、端縁部におけるシワ等が発生し易い。なお、本発明において、鍔(42),(42)間の内法(W)は、鍔(42)の全周において多少の湾曲等によるバラツキがあるため、全周に亘る平均寸法を指し、その最大値と最小値のバラツキは0.5mm以内とされる。
【0029】
本発明においては、特定の塗布量となる様に離型性樹脂を塗布して基材フィルム(1)の離型層が形成されており、マイクロスリット加工時における塗膜滓などの異物の発生を防止でき、そして、上記の様な巻取リール(4)を使用することにより、製品テープ(2)を高精度に巻き取ることが出来、巻取時のテープの振れによる離型層の欠陥を防止することが出来る。従って、本発明のロールは、離型層の欠陥や異物混入などの欠陥がなく、キャリヤーとして使用した際に一層高品質の機能剤層を形成することが出来る。
【0030】
次に、本発明のロールの製造方法について説明する。上記のロールの製造においては、先ず、原反から送り出され且つ離型層が設けられた前述の基材フィルム(1)に通常のスリット加工を施し、50〜100mm程度の幅に裁断する。この段階のスリット加工においては、通常の細幅スリッター(スリット装置)が使用される。得られた上記の幅の帯状の基材フィルム(1)は、通常、ロールとして巻回されて次工程に供給される。そして、帯状の基材フィルム(1)をマイクロスリッター(マイクロスリット装置)に送り込み、マイクロスリット加工を施し、1〜5mmの範囲で必要とされる幅(W)のフィルムテープ(製品テープ)(2)を切り出す。その際の加工精度は、目標の幅(W)に対する誤差が±0.2mm以下、好ましくは0.1mm以下である。
【0031】
上記のマイクロスリッターとしては、極細のスリットを作成可能な限り、レーザー刃、ロータリーシャー等の各種スリット刃を備えた装置を使用できるが、テープ幅の精度向上、スリット滓の発生低減などの品質確保の観点から、ロータリーシャー(回転刃)を備えたものが望ましい。
【0032】
具体的には、図2に示す様に、マイクロスリッターは、各回転可能な上刃(5)と下刃(6)を組み合せて構成される。上刃(5)は、一方向に回転駆動する回転軸(51)と、スペーサーを介装して回転軸(51)に一定間隔で装着された多数の切断刃(ロータリーシャー)(52)とから構成される。各切断刃(52)は、厚さ方向に漸次直径が縮径された扁平な円錘台状の円板体であり、これらは、刃先として機能する大径縁同士が隣接する状態に2枚を1組として配置される。切断刃(52)の上記の様な配置により、製品テープ(2)の端縁の仕上り精度(切断精度)を高め且つテープの歪みを有効に防止できる。
【0033】
一方、下刃(6)は、上刃(5)とは逆の他方向に回転駆動する回転軸(61)と、スペーサーを介装して回転軸(61)に一定間隔で装着されるか、或いは、回転軸(61)の溝に嵌合させて当該回転軸に一定間隔で装着された多数の押え刃(62)とから構成される。押え刃(62)は、扁平な円柱状の円板体であり、そして、その外周部は、上刃(5)において大径縁同士が隣接する2枚の切断刃(52),(52)の隙間に僅かに嵌合する様になされている。
【0034】
マイクロスリット加工においては、図2に示す様に、離型層が設けられた帯状の基材フィルム(1)をマイクロスリッターの上刃(5)と下刃(6)の間に一定速度で供給し、上刃(5)の各切断刃(52)によってスリットを形成して製品テープ(2)としてのフィルムテープを切り出す。すなわち、上記のマイクロスリッターにおける加工では、加工すべき基材フィルム(1)を下刃(6)の各押え刃(62)によって上刃(5)の各一対の切断刃(52)に押し付け、基材フィルム(1)に対して各切断刃(52)を相対的に切込ませて多数のテープに切り分ける。
【0035】
次いで、図3に示す様に、切り分けられて隣接するフィルムテープを製品テープ巻取用の巻取リール(4)(図4参照)と廃棄テープ巻取用の巻取リール(図示省略)とにそれぞれ分けて巻き取る。すなわち、切り出されるフィルムテープのうち、製品テープ(2)は、基材フィルム(1)の供給方向に対してマイクロスリッターの例えば上流側に配置された巻取リール(4)によって巻き取り、廃棄テープ(3)は、基材フィルム(1)の供給方向に対してマイクロスリッターの例えば下流側下方に配置された他の巻取リールに巻き取る。なお、巻取リール(4)は、図4に示す様に、回転駆動する製品巻取軸(7)に対し、切り出される製品テープ(2)の数だけ装着される。また、廃棄テープ(3)を巻き取る巻取リールも同様に巻取軸に装着される。
【0036】
上記の様なマイクロスリット加工においては、切断刃(52)の前述の配置により、フィルムテープとして、製品テープ(2)と廃棄テープ(3)とが上刃(5)に沿って互い違い切り出される。従って、材料ロスが発生することにはなるが、品質的に満足でき且つ同品質の製品テープ(2)を安定して採取ことが出来る。また、マイクロスリット加工においては、マイクロスリッターの上刃(5)及び下刃(6)に隣接して吸引ノズルを設置し、当該吸引ノズルによって吸気することにより、スリット加工中に発生・蓄積するスリット滓を除去し、製品テープ(2)への異物の付着を防止することが出来る。
【0037】
本発明の製造方法においては、特定の塗布量となる様に離型性樹脂を塗布して離型層が形成された基材フィルム(1)をマイクロスリット加工し、そして、マイクロスリット加工により基材フィルム(1)から切り出される製品テープ(2)を図1に示す前述の特定の巻取リール(4)によって高精度に巻き取る。従って、異物混入などの欠陥を防止でき、巻取時のテープの振れによる離型層の欠陥を防止することが出来る。従って、本発明によれば、キャリヤーとして使用した際に一層高品質の機能剤層を形成可能なのロールを製造できる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
実施例1:
幅1020mm、厚さ75μmのポリエステルフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製の商品名:「T100−75」)を基材フィルム(1)として使用し、その両面に離型層を形成した。離型層の形成においては、以下の「シリコーン塗布液−1」をワイアーバーコーターで片面づつ両面に塗布し、何れも150℃のドライアーで乾燥した。その際、塗布液の消費量と固形分濃度から各面の離型層における樹脂の塗布量を測定したところ、乾燥後塗布量で0.1g/mであった。
【0040】
【表1】

【0041】
次に、上記の基材フィルム(1)をスリッターで幅60mmにスリットし、これを巻回して長さ1000mのロールを作成した。続いて、このロールから帯状の基材フィルム(1)をマイクロスリッターに供給し、基材フィルム(1)にマイクロスリット加工を施した。マイクロスリッターにおいては、上刃(5)として切断刃(52)を28枚装着し、各切断刃(52)の間隔(切り出す製品テープ(2)の幅(W))を2.0mmに設定した。また、製品巻取軸には、製品テープ(2)の走行位置に相当する箇所に巻取リール(4)を14個装着した。各巻取リール(4)の鍔(42),(42)間の内法(W)は2.2mmであった。
【0042】
マイクロスリット加工では、フィルムの走行速度を30m/min、テンションを2kgf/幅60mmに設定してスリット加工を行い、同時に14巻の巻取リール(4)にそれぞれ長さ約300mの製品テープ(2)を巻き取った。そして、3回のマイクロスリット加工により、合計42巻のロールを製造した。一方、マイクロスリット加工において切り分けた廃棄テープ(3)は、他方の巻取軸の巻取リールに回収し、その後廃棄した。また、上刃(5)及び下刃(6)に近接させて吸引ノズルを設置し、発生する異物を吸引除去した。その結果、マイクロスリット加工においては、トラブルは全く無く、また、得られたロールを構成する製品テープ(2)は、品質的に満足できるものであった。
【0043】
実施例2:
実施例1と同様の両面離型性のポリエステルの基材フィルム(1)を使用し、帯状の基材フィルム(1)を作成してこれをマイクロスリッターに供給し、マイクロスリット加工を施した。その際、マイクロスリッターにおいては、上刃(5)の切断刃(52)を38枚装着し、各切断刃(52)の間隔(切り出す製品テープ(2)の幅(W))を1.5mmに設定した。
【0044】
また、製品巻取軸には、製品テープ(2)の走行位置に相当する箇所に巻取リール(4)を19個装着した。各巻取リール(4)の鍔(42),(42)間の内法(W)は2.0mmであった。マイクロスリッターの運転条件は、実施例1と同様の条件とし、同時に19巻の巻取リール(4)にそれぞれ長さ約300mの製品テープ(2)を巻き取り、そして、3回のマイクロスリット加工により、合計57巻のロールを製造した。その結果、マイクロスリット加工においては、トラブルは全く無く、また、得られたロールについては、僅かな、巻き乱れが見られたものの、製品テープ(2)は、全て品質的に許容できるものであった。
【0045】
実施例3:
幅1020mm、厚さ50μmのポリエステルフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製の商品名:「T100−50」)を基材フィルム(1)として使用し、その両面に離型層を形成した。離型層の形成においては、以下の「シリコーン塗布液−2」をワイアーバーコーターで片面づつ両面に塗布し、何れも150℃のドライアーで乾燥した。その際、塗布液の消費量と固形分濃度から各面の離型層における樹脂の塗布量を測定したところ、乾燥後塗布量で0.07g/mであった。
【0046】
【表2】

【0047】
次に、上記の基材フィルム(1)を実施例1と同様に帯状にスリットし、帯状の基材フィルム(1)に実施例1と同様にマイクロスリット加工を施すことにより、同時に14巻の巻取リール(4)にそれぞれ長さ約300mの製品テープ(2)を巻き取り、そして、3回のマイクロスリット加工により、合計42巻のロールを製造した。その結果、上記のマイクロスリット加工においては、トラブルは全く無く、また、得られたロールを構成する製品テープ(2)は、品質的に満足できるものであった。
【0048】
比較例1:
実施例1と同様にして得られた幅60mmの帯状の基材フィルム(1)をマイクロスリッターに供給し、基材フィルム(1)にマイクロスリット加工を施した。そして、巻取リール(4)を使用することなく、巻取軸に製品テープ(2)を直接巻き取った。すなわち、巻取リール(4)を使用しなかった点が実施例1と相違していた。その結果、製品テープ(2)の巻回途中で巻きズレが発生し、製品として満足できるロールが得られなかった。
【0049】
比較例2:
実施例1と同様にして得られた幅60mmの帯状の基材フィルム(1)をマイクロスリッターに供給し、基材フィルム(1)にマイクロスリット加工を施して巻取リール(4)に巻き取った。その際、巻取リール(4)として、鍔(42),(42)間の内法(W)が4.0mmのリールを使用した。すなわち、巻取リール(4)の内法(W)が異なっていた点が実施例1と相違していた。その結果、製品テープ(2)の巻回途中でズレが発生し、製品として満足できるロールが得られなかった。また、この状況は、マイクロスリット加工におけるフィルムの走行速度を10m/minに落としても改善されなかった。
【0050】
比較例3:
実施例1と同様にして得られた幅60mmの帯状の基材フィルム(1)をマイクロスリッターに供給し、基材フィルム(1)にマイクロスリット加工を施し、そして、実施例1と同様の巻取リール(4)に巻き取った。その際、マイクロスリッターの上刃(5)において、各切断刃(52)の取付け方向をランダムに設定した。そして、切り分けたフィルムテープの全てを2つの巻取軸に各装着した巻取リール(4)に巻き取った。すなわち、各切断刃(52)の大径の刃先が互いに隣接する様に2枚を1組として配置しなかった点が実施例1と相違していた。その結果、マイクロスリット後のフィルムテープの蛇行により、隣接するフィルムテープが重なり合って端縁部の塗膜(離型層)が損傷する等のトラブルが発生し、安定性したマイクロスリット加工が出来なかった。また、得られたロールにおいては、製品テープ(2)の長さ方向に沿った片側あるいは両側の端縁にいわゆる耳上がりと呼ばれる仕上り不良の発生しており、巻き歪みが見られた。
【0051】
比較例4:
実施例1において、基材フィルム(1)の両面に対し、乾燥後塗布量が0.5g/mとなる様に離型層を塗布形成した点を除き、実施例1と同様にして製品テープ(2)を作成し、これを巻き取ってロールを製造した。その結果、上刃(5)と下刃(6)の歯合箇所において塗膜滓の発生が多く且つこれを充分に除去できず、製品テープ(2)に塗膜滓の一部が混入しているのが確認された。
【0052】
上記の様に、実施例1〜3においては、安定してマイクロスリット加工が実施でき、かつ、品質的にも満足できる離型性の製品テープ(2)及びロールが得られた。これに対し、比較例1〜4においては、マイクロスリット加工で何らかのトラブルが発生し、満足が得られる製品テープ(2)及びロールが得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の離型性フィルムテープ・ロールに使用される巻取リールの外形を示す正面図である。
【図2】本発明に係る離型性フィルムテープ・ロールの製造方法を示す図であり、基材フィルムにマイクロスリット加工を施すスリット装置の主要部を示す正面図である。
【図3】本発明に係る離型性フィルムテープ・ロールの製造方法を示す図であり、図2のスリット装置による製品テープ(フィルムテープ)の切り分け操作を示す平面図である。
【図4】本発明に係る離型性フィルムテープ・ロールの製造方法を示す図であり、巻取リールへの製品テープ(フィルムテープ)の巻き取り操作を示す平面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 :基材フィルム(ポリエステルフィルム)
2 :製品テープ(フィルムテープ)
3 :廃棄テープ(フィルムテープ)
4 :巻取リール
41:巻芯
42:鍔
5 :上刃(ロータリーシャー)
51:回転軸
52:切断刃
6 :下刃
61:回転軸
62:押え刃
7 :製品巻取軸
:フィルムテープの幅
:巻取リールの鍔間の内法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯の両端部に鍔をそれぞれ有する巻取リールに離型性のフィルムテープを巻回して構成されたロールであって、フィルムテープは、ポリエステルの基材フィルムから成り且つその少なくとも一面に離型層が設けられた幅1〜5mmのテープであり、離型層は、乾燥後塗布量が0.01〜0.3g/mとなる様に離型性樹脂を塗布して形成されており、巻取リールは、鍔間の内法がフィルムテープの幅よりも0.05〜0.6mm広く設定されていることを特徴とする離型性フィルムテープ・ロール。
【請求項2】
少なくとも一面に離型層が設けられたポリエステルの基材フィルムにマイクロスリット加工を施し、得られた幅1〜5mmの離型性のフィルムテープを巻取リールに巻き取ってロールを製造する方法であって、基材フィルムとして、乾燥後塗布量が0.01〜0.3g/mとなる様に離型性樹脂を塗布して離型層が形成されたフィルムを使用し、巻取リールとして、巻芯の両端部に鍔をそれぞれ有し且つこれら鍔間の内法がフィルムテープの幅よりも0.05〜0.6mm広く設定されたリールを使用することを特徴とする離型性フィルムテープ・ロールの製造方法。
【請求項3】
巻取リールにフィルムテープを巻き取る当たり、マイクロスリット加工により切り分けられて隣接するフィルムテープを製品テープ巻取用の巻取リールと廃棄テープ巻取用の巻取リールとにそれぞれ分けて巻き取る請求項2に記載の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−214513(P2009−214513A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63573(P2008−63573)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】