説明

難揮散性物質含有乳化組成物

【課題】難揮散性物質を安定に乳化し、高い揮散性を発現する乳化組成物の提供。
【解決手段】(A)多糖類のヒドロキシ基の一部又は全てが、次の置換基(a);(a)下記一般式(1)で表される基(該置換基(a)のヒドロキシ基の水素原子は更に置換基(a)で置換されていてもよい。) −E1−(OA1n−E2―R (1)[式中、E1はヒドロキシ基又はオキソ基が置換していてもよい炭素数1〜6の2価の飽和炭化水素基を示し、nは8〜300の数を示し、n個のA1は同一又は異なって、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示し、E2はエーテル結合又はオキシカルボニル基(−OCO−又は−COO−)を示し、Rは炭素数4〜30のアルキル基を示す。]で置換されている多糖誘導体、(B)ポリオール類、(C)非イオン性界面活性剤、(D)難揮散性物質、(E)油剤、(F)水を含有する水中油型乳化組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難揮散性物質を含有する乳化組成物及びそれを用いる難揮散性物質の揮散方法に関する。
【背景技術】
【0002】
揮散しにくい香気成分、防虫剤等の効果を発揮させるために揮散性を高める技術が不可欠である。従来、揮散性を制御する技術として、特別な素材や加熱等の手段を用いる方法が知られている(特許文献1〜7)。
【0003】
一方、化粧水、乳液、クリーム、美容液、液状ファンデーション等の製剤では、揮散させたい物質が揮散しにくい場合には配合量を多くしたい反面、皮膚塗布時の使用感や製剤の安定性が損なわれる問題から配合量に制限が生じる問題があった。更に揮散させたい物質が難溶解性の場合には、十分な揮散性が得られる量を配合すると、結晶が析出して製剤の安定性のみならず、皮膚塗付時にざらつき感や痛みを与えてしまい、使用者に満足を与える製品開発が困難であるという問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、難溶解性難揮散性物質を微細な結晶として製剤中に最初から分散させて結晶成長を防ぎ、製剤の安定化と揮散性向上を両立させる技術が知られている(特許文献8)。しかしながら、微細な結晶の均一分散を維持するために2000mPa・s以上の粘度を必要とし、低粘度の乳液や、ミスト状に噴霧可能なマイクロエマルション製剤等には適用できない。
【特許文献1】特開2001−158843号公報
【特許文献2】特開平10−17846号公報
【特許文献3】特開2001−172153号公報
【特許文献4】特開2001−279232号公報
【特許文献5】特開平11−286429号公報
【特許文献6】特開平11−286430号公報
【特許文献7】特開平11−286431号公報
【特許文献8】特開2005−187371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、常温で固体の難溶解性の難揮散性物質を安定に乳化して、製剤の安定性や皮膚塗布時の使用感を損なうことなく、高い揮散性を発現する低粘度の乳液や、ミスト状に噴霧可能なマイクロエマルション製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
常温で固体の難溶解性難揮散性物質を、結晶析出させることなく安定に乳化し、高い揮散性を発揮させる製剤について検討した結果、水溶性増粘剤として知られている多糖誘導体(WO00/73351号公報、特開2003−226612号公報)とHLB4〜9の非イオン界面活性剤を用いて、ポリオールとともに難溶解性の難揮散性物質を溶解した油剤を微細乳化することにより、難溶解性の難揮散性物質を細かい乳化粒子として製剤中に分散させることができ、高い揮散性を有する低粘度の乳液やマイクロエマルションが得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の成分(A)〜(F):
(A)多糖類又はその誘導体のヒドロキシ基の水素原子の一部又は全てが、次の置換基(a)
(a)下記一般式(1)で表される基(該置換基(a)のヒドロキシ基の水素原子は更に置換基(a)で置換されていてもよい。)
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、E1はヒドロキシ基又はオキソ基が置換していてもよい炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示し、nは8〜300の数を示し、n個のA1は同一又は異なって、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示し、E2はエーテル結合又はオキシカルボニル基(−OCO−又は−COO−)を示し、Rはヒドロキシ基が置換していてもよい炭素数4〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。]
で置換されている多糖誘導体、
(B)ポリオール類、
(C)HLB4〜9の非イオン性界面活性剤、
(D)融点が30℃以上の難揮散性物質、
(E)成分(D)を溶解するための油剤、
(F)水
を含有する水中油型乳化組成物を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、融点が30℃以上の難揮散性物質(成分(D))を、次の成分(A)、(B)、(C)、(E)及び(F):
(A)多糖類又はその誘導体のヒドロキシ基の水素原子の一部又は全てが、次の置換基(a)
(a)下記一般式(1)で表される基(該置換基(a)のヒドロキシ基の水素原子は更に置換基(a)で置換されていてもよい。)
【0011】
【化2】

【0012】
[式中、E1はヒドロキシ基又はオキソ基が置換していてもよい炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示し、nは8〜300の数を示し、n個のA1は同一又は異なって、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示し、E2はエーテル結合又はオキシカルボニル基(−OCO−又は−COO−)を示し、Rはヒドロキシ基が置換していてもよい炭素数4〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。]
で置換されている多糖誘導体、
(B)ポリオール類、
(C)HLB4〜9の非イオン性界面活性剤、
(E)成分(D)を溶解するための油剤、
(F)水
と混合して乳化する成分(D)の揮散方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
難溶解性で難揮散性の物質、特に25℃における蒸気圧が1.33×10-6kPa以上及びパルミチン酸イソプロピルを溶媒としたときの25℃における溶解度が10質量%以下の難溶解性の難揮散性物質を、その結晶を析出させることなく安定に乳化でき、更に該難揮散性物質の揮散性が改善され、低粘度の乳液やミスト状に噴霧可能なマイクロエマルション製剤等として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
成分(A)の多糖誘導体の一般式(1)で表される置換基(a)におけるE1としては、炭素数2又は3のものが好ましく、具体的にはエチレン、プロピレン、トリメチレン、2−ヒドロキシトリメチレン、1−ヒドロキシメチルエチレン、1−オキソエチレン、1−オキソトリメチレン、1−メチル−2−オキソエチレン等が好ましい。
【0015】
一般式(1)におけるA1としては、炭素数2又は3のものが好ましく、具体的にはエチレン、プロピレン及びトリメチレンが好ましい。nで表される(−OA1−)の重合度としては、増粘効果及び乳化安定性の点から8〜120、特に10〜60が好ましく、n個のA1は同一でも異なってもよい。ここでnは平均付加モル数の意味である。E2は、エーテル結合又はオキシカルボニル基であるが、エーテル結合が好ましい。
【0016】
一般式(1)におけるRとしては、炭素数5〜25が好ましく、特に6〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、また、安定性の点から直鎖アルキル基が好ましい。具体的にはオクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イソステアリル基等が好ましい。
【0017】
成分(A)の多糖誘導体における置換基(a)による置換度は、構成単糖残基当たり0.0001〜1、更に0.0005〜0.5、特に0.001〜0.1の範囲が好ましい。
【0018】
成分(A)の多糖誘導体は、上記置換基(a)に加え、更に以下に示す置換基(b)、(c)及び(d)から選ばれる1以上の基で置換されていてもよい。また、置換基(a)〜(d)のヒドロキシ基の水素原子は、更に置換基(a)〜(d)で置換されていてもよい。
【0019】
(b)ヒドロキシ基が置換していてもよい炭素数1〜5のスルホアルキル基又はその塩 置換基(b)としては、2−スルホエチル基、3−スルホプロピル基、3−スルホ−2−ヒドロキシプロピル基、2−スルホ−1−(ヒドロキシメチル)エチル基等が挙げられ、なかでも安定面や製造面より3−スルホ−2−ヒドロキシプロピル基が好ましい。これら置換基(b)は、その全てあるいは一部がナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の1族又は2族元素、アミン類、アンモニウム等の有機カチオン等との塩となっていてもよい。これら置換基(b)による置換度は、構成単糖残基当たり0〜1、更に0〜0.8、特に0〜0.5の範囲が好ましい。
【0020】
(c)ヒドロキシ基が置換していてもよい炭素数2〜6のカルボキシアルキル基又はその塩
置換基(c)としては、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、カルボキシブチル基、カルボキシペンチル基等が挙げられ、なかでも安定面や製造面より、カルボキシメチル基が好ましい。これら置換基(c)は、その全てあるいは一部がナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の1族又は2族元素、アミン、アンモニウム等の有機カチオン等との塩となっていてもよい。これら置換基(c)による置換度は、構成単糖残基当たり0〜1、更に0〜0.8、特に0〜0.5の範囲が好ましい。
【0021】
(d)下記一般式(2)で表されるカチオン置換基
【0022】
【化3】

【0023】
〔式中、D1はヒドロキシ基が置換していてもよい炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示し、R1、R2及びR3は同一又は異なって、ヒドロキシ基が置換していてもよい炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、X―はヒドロキシイオン、ハロゲンイオン又は有機酸イオンを示す。〕
【0024】
カチオン性置換基(d)におけるD1としては、炭素数2又は3のものが好ましく、具体的にはエチレン、プロピレン、トリメチレン、2−ヒドロキシトリメチレン、1−ヒドロキシメチルエチレン等が好ましい。
【0025】
カチオン性置換基(d)におけるR1、R2及びR3としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2−ヒドロキシエチル基等が挙げられ、中でもメチル基及びエチル基が好ましい。
【0026】
カチオン性置換基(d)におけるX―で表されるハロゲンイオンとしては塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等が、有機酸イオンとしては、CH3COO−、CH3CH2COO−、CH3(CH22COO−等が挙げられる。X―としては、ヒドロキシイオン、塩素イオン及び臭素イオンが好ましい。
【0027】
これらカチオン性置換基(d)による置換度は、構成単糖残基当たり0〜0.5、特に0〜0.3の範囲が好ましい。
【0028】
成分(A)の多糖誘導体としては、分子量が1万〜1000万、更に1万〜200万、特に3万〜150万の高分子化合物が好ましい。具体的な多糖誘導体としては、式(1)で表される基を有する疎水化多糖、及び式(1)の基が主鎖モノマーに対して0.0001〜0.1、好ましくは0.001〜0.05の割合で付加している分子量1万〜200万、好ましくは3万〜150万の水溶性多糖誘導体が挙げられる。
【0029】
また、式(1)の基が結合している多糖類としては、セルロース、グアーガム、スターチ、プルラン、デキストラン、フルクタン、マンナン、寒天、カラギーナン、キチン、キトサン、ペクチン、アルギン酸、ヒアルロン酸等の多糖類;これらにメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が置換した誘導体が挙げられる。これらの置換基は、構成単糖残基中に単独で又は複数の組合せで置換することができる。多糖類の誘導体の例としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルグアーガム、ヒドロキシエチルスターチ、メチルセルロース、メチルグアーガム、メチルスターチ、エチルセルロース、エチルグアーガム、エチルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルグアーガム、ヒドロキシエチルメチルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルグアーガム、ヒドロキシプロピルメチルスターチ等が挙げられる。これら多糖類又はその誘導体のうち、セルロース、スターチ、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましく、特にヒドロキシエチルセルロースが好ましい。これら多糖類又はその誘導体の重量平均分子量は、1万〜1000万、更に10〜500万、特に20万〜200万の範囲が好ましい。
【0030】
成分(A)の多糖誘導体は、多糖類又はその誘導体としてセルロース類を用いた場合を例に挙げれば、その繰返し単位は次のような一般式で例示される。
【0031】
【化4】

【0032】
〔式中、R4、R5及びR6は同一又は異なって、(1):水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等、(2):ポリオキシアルキレン基を含む置換基、(3):スルホアルキル基、(4):カルボキシアルキル基、(5):カチオン性置換基から選ばれる基を示し、Qは同一又は異なって、炭素数2〜4のアルキレン基を示し、p、q及びrは、同一又は異なって0〜10の数を示す。QO基、R4基、R5基、R6基、p、q及びrは、繰り返し単位内で又は繰り返し単位間で同一でも異なってもよい。〕
【0033】
成分(A)は、本発明の水中油型乳化組成物中に、乳化安定性、粘度、皮膚に塗布したときの使用感の点から、0.001〜10質量%、更に0.01〜5質量%、特に0.1〜2質量%含有するのが好ましい。
【0034】
成分(B)のポリオール類は、分子内に水酸基を2個以上有する多価アルコールであり、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール等のアルキレングリコール;ジプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;グルコース、マルトース、マルチトース、蔗糖、フラクトース、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、マルトトリオース、スレイトール等の糖アルコール;グリセリン、ポリグリセリン及び澱粉分解還元アルコール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。
【0035】
成分(B)は、本発明の水中油型乳化組成物中に、乳化安定性、粘度、皮膚に塗布したときの使用感の点から、0.01〜30質量%、更に0.5〜20質量%、特に1〜10質量%含有するのが好ましい。
【0036】
成分(C)のHLB4〜9の非イオン性界面活性剤は、本発明水中油型乳化組成物において油剤を安定に乳化させるうえで重要である。HLBが4未満の非イオン性界面活性剤を用いた場合には、非イオン性界面活性剤の親油性が高すぎるため、成分(A)の多糖誘導体と、水相と油相の界面への配向性が悪いために油滴が合一して粒径が大きくなる。また、HLBが9を超える場合は、非イオン性界面活性剤の親水性が高すぎて、乳化しようとする油相になじまないため、界面活性剤として機能することができず、その結果、分離に至る。したがって、HLBが4〜9であることが本発明水中油型乳化組成物において重要である。
【0037】
ここで、HLB値は、次の計算式
【0038】
(数式)
HLB=7+(logMw/logMo)
Mw:親水基の分子量、Mo:親油基の分子量
【0039】
により計算された値をいう。好ましいHLBは4〜8であり、更に4〜7が好ましい。
【0040】
成分(C)のHLBが4〜9の非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル、アルキルポリグルコシド等が挙げられる。このうち、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルグリセリルエーテルが更に好ましい。
【0041】
成分(C)は、乳化安定性、油相の安定性の点から、水中油型乳化組成物中に0.001〜10質量%、更に0.01〜5質量%、特に0.1〜1質量%含有するのが好ましい。
【0042】
成分(D)の融点が30℃以上の難揮散性物質としては、25℃における蒸気圧が、1.33×10-6kPa以上であるのが好ましく、更に6.66×10-6kPa以上、特に
1.33×10-5以上であるのが好ましい。
【0043】
また、融点が30℃以上の難揮散性物質としては、パルミチン酸イソピロピルを溶媒としたときの25℃における溶解度が、成分(D)及びパルミチン酸イソプロピルからなる組成物の10質量%以下であるのが好ましい。溶解度は0.00001〜10質量%が好ましく、更に好ましくは0.0001〜10質量%であり、融点は40〜200℃であることが好ましい。
【0044】
成分(D)の融点が30℃以上の難揮散性物質としては、香気成分、防虫剤等が挙げられる。香気成分としては、例えば、モノテルペン類、セスキテルペン類、ジテルペン類、芳香族化合物、これらの脂肪酸エステル等が挙げられる。具体的には、カンフェン、α−テルピネオール、メントール、等のモノテルペンアルコール、セドロール、β−カリオフィレンアルコール等のセスキテルペンアルコール等が挙げられる。香気成分としては、αーテルピネオール、セドロール、βーカリオフィレンアルコール等が好ましい。防虫剤としては、ショウノウ、ナフタレン等が挙げられる。
【0045】
成分(D)は、乳化安定性、油相の安定性の点から、水中油型乳化組成物中に0.0001〜10質量%、更に0.001〜5質量%、特に0.01〜1質量%含有するのが好ましい。
【0046】
成分(E)の成分(D)を溶解するための油剤は、その溶解度が50℃において成分(D)及び(E)からなる組成物の10質量%以上であり、化粧品、医薬品等の分野で用いられるものであれば特に制限されないが、高級アルコール類、ステロール類、シリコーン類、フッ素系油剤、その他の油性成分等が挙げられる。
【0047】
高級アルコール類としては、例えばベンジルアルコール、イソセチルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、フェニルエチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、2−オクチルドデカノール、バチルアルコール、2−ヘキシルデカノール等が挙げられ、特にセタノール、ステアリルアルコールが好ましい。
【0048】
ステロール類としては、例えばコレステロール、イソステアリン酸コレステリル、プロビタミンD3、カンベステロール、ステグマスタノール、ステグマステロール、5−ジヒドロコレステロール、α−スピナステロール、パリステロール、クリオナステロール、γ−シトステロール、ステグマステノール、サルガステロール、アペナステロール、エルゴスタノール、シトステロール、コルビステロール、コンドリラステロール、ポリフェラステロール、ハリクロナステロール、ネオスボンゴステロール、フコステロール、アプトスタノール、エルゴスタジエノール、エルゴステロール、22−ジヒドロエルゴステロール、ブラシカステロール、24−メチレンコレステロール、5−ジヒドロエルゴステロール、デヒドロエルゴステロール、フンギステロール、コレスタノール、コプロスタノール、ジモステロール、7−ヘトコレステロール、ラトステロール、22−デヒドロコレステロール、β−シトステロール、コレスタトリエン−3β−オール、コプロスタノール、コレスタノール、エルゴステロール、7−デヒドロコレステロール、24−デヒドロコレスタジオン−3β−オール、エキレニン、エキリン、エストロン、17β−エストラジオール、アンドロスト−4−エン−3β,17β−ジオール、デヒドロエビアンドロステロン、アルケニルコハク酸コレステロール(特開平5−294989号公報)等が挙げられる。これらのうち、特にコレステロール、イソステアリン酸コレステリル、アルケニルコハク酸コレステリルが好ましい。
【0049】
シリコーン類としては、通常トイレタリー製品に配合されるもの、例えばオクタメチルポリシロキサン、テトラデカメチルポリシロキサン、メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンのほか、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のメチルポリシクロシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、更には、アルキル変性シリコーン、ポリエーテル・アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン、特開平6−72851号公報記載の変性オルガノポリシロキサン等の変性シリコーン等が挙げられる。
【0050】
フッ素系油剤としては、常温で液体のパーフルオロ有機化合物であるパーフルオロポリエーテル、フッ素変性シリコーンが好ましく、例えばパーフルオロデカリン、パーフルオロアダマンタン、パーフルオロブチルテトラハイドロフラン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロペンタン、パーフルオロデカン、パーフルオロドデカン、パーフルオロポリエーテル、次の一般式(4)で表される含フッ素エーテル化合物
【0051】
【化5】

【0052】
(式中、Rfは直鎖又は分岐の炭素数1〜20のパーフルオロ基を示し、R7は直鎖又は分岐の炭素数3〜9のシクロアルキル基を示す。mは1〜8の数を示す。)等が挙げられる。具体的には、次の(5)式で表される1,3−ジメチルブチル{2−(パーフルオロオクチル)エチル}等が挙げられる。
【0053】
【化6】

【0054】
また、上記その他の油性成分としては、揮散性、不揮散性いずれでもよく、例えば固体状又は液体状パラフィン、ワセリン、クリスタルオイル、セレシン、オゾケライト、モンタンロウ、スクワラン、スクワレン等の炭化水素類;ユーカリ油、ハッカ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、アボガド油、牛脂、豚脂、馬脂、卵黄油、オリーブ油、カルナウバロウ、ラノリン、ホホバ油;グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンジステアリン酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、フタル酸ジエチル、乳酸ミリスチル、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸セチル、乳酸ミリスチル、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸セチル、乳酸セチル、1−イソステアロイル−3−ミリストイルグリセロール、2−エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸−2−オクチルドデシル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、オレイン酸−2−オクチルドデシル、トリイソステアリン酸グリセロール、ジ−パラメトキシケイヒ酸−モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル等のエステル油;ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;及びローズマリー、ルイボス、ローヤルゼリー、ハマメリス等の天然精油、リグナン、ビタミンE、油溶性ビタミンC、ビタミンA誘導体等が挙げられる。
【0055】
成分(E)は、本発明の水中油型乳化組成物中に、0.01〜30質量%、更に0.05〜20質量%、特に0.5〜10質量%含有するのが好ましい。
【0056】
成分(D)の融点が30℃以上の難揮散性物質は、成分(E)の油剤中に0.01〜30質量%、更に0.05〜20質量%、特に0.1〜15質量%含有する場合であっても、当該難揮散性物質を油滴中に溶解状態で安定に保持できる。
【0057】
成分(F)の水は、本発明の水中油型乳化組成物中に、50〜90質量%、更に70〜90質量%が好ましい。
【0058】
本発明の水中油型乳化組成物は、B型粘度計による25℃にける粘度が、2000mPa・s以下、好ましくは1000mPa・s以下、更に好ましくは1〜500mPa・s、特に1〜50mPa・sの範囲にあるのが、乳化安定性、成分(D)の揮散性、のびのよさやべたつきのなさの点で好ましい。
【0059】
本発明の水中油型乳化組成物の製造法は、一部の成分(F)、成分(A)及び(B)の溶液又は分散液中に成分(C)を添加、混合した後、残余の成分(F)で希釈することにより製造することが好ましい。更に、(1)成分(F)の一部、成分(A)及び(B)の溶液又は分散液中に成分(C)、(D)及び(E)を添加、混合した後、残余の成分(F)で希釈する方法;及び(2)成分(F)の一部、成分(A)、(B)、(D)及び(E)を溶解又は分散した液に成分(C)を添加、混合した後、残余の成分(F)で希釈する方法により製造するのがより好ましい。
【0060】
一部の成分(F)、成分(A)及び(B)を含む溶液又は分散液中に成分(C)を添加
、混合した組成物と残余の成分(F)の重量比は、1/99〜99/1、更に1/99〜
65/35、特に1/99〜50/50の範囲であることが好ましい。
【0061】
得られる本発明の乳化組成物中の油滴の粒子径は、10μm以下、更に0.1〜10μm、特に0.1〜5μmとするのが好ましい。このような微粒子油滴にした場合に特に安定性が良好である。ここで油滴の粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(例えば、HORIBA LA−910)によって測定できる。
【0062】
本発明の乳化組成物は、油滴中に難溶性難揮散性物質を含んでいても安定であり、当該難溶性難揮散性物質の揮散性を向上させることができる。また、組成物の形態も、ミスト状、乳液状、化粧水状等とすることができる。また、ミスト状噴霧可能なマイクロエマルション製剤(例えば、アロマミスト、体臭防止ミスト、ルームミスト、防虫ミスト用)、化粧水、乳液、クリーム、入浴剤、香り付与剤等として使用することができる。
【実施例】
【0063】
実施例1〜3
表1に記載の成分(A)、(B)及び水の一部を30〜60℃で分散させ、これに30〜80℃で溶解した成分(C)、(D)及び(E)を添加し、ついで30〜60℃で30〜60分混合した後、水の残部で希釈して水中油型乳化組成物を製造した。
【0064】
製造直後のエマルションの粒子径は、動的光散乱式粒径分布測定装置で測定した。
揮散量は、ろ紙上に製剤を20mg/cm2 塗布後、10分間乾燥させてガラス瓶に入れ、0.5L/min、60分間通気し、揮散した物質をジクロロメタンで捕捉、ガスクロマトグラフィーを用いて内部標準法により測定した。粘度は、BL型粘度計(東機産業)により25℃にて測定した。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
実施例1〜3ともに低粘度の水中油型乳化組成物であった。
比較例1は、実施例1〜3で用いた非イオン活性剤に代わり、HLB2.1の非イオン活性剤を用いたものであり、製造直後のエマルション粒子径が25μmと大きく、7日後には完全に分離した。比較例2と比較例3は、それぞれ難揮散性物質を微細結晶として均一分散させた水性製剤と油製剤で、粘度が実施例1〜3の水中油型乳化組成物よりも高粘度とならざるを得ないもので、結晶によるざらつきや、高粘度であるがゆえのべたつき感があった。
【0070】
実施例1〜3の揮散量は、比較例2,3の揮散量に匹敵又はそれ以上であり、粘度も非常に低いマイクロエマルションで、ミスト型製剤にも応用可能なものであった。難揮散性物質の析出もないため安定な製剤でかつざらつきもなく、低粘度であるがゆえにべたつきがない優れた使用感を有する製剤であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(F):
(A)多糖類又はその誘導体のヒドロキシ基の水素原子の一部又は全てが、次の置換基(a)
(a)下記一般式(1)で表される基(該置換基(a)のヒドロキシ基の水素原子は更に置換基(a)で置換されていてもよい。)
【化1】

[式中、E1はヒドロキシ基又はオキソ基が置換していてもよい炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示し、nは8〜300の数を示し、n個のA1は同一又は異なって、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示し、E2はエーテル結合又はオキシカルボニル基(−OCO−又は−COO−)を示し、Rはヒドロキシ基が置換していてもよい炭素数4〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。]
で置換されている多糖誘導体、
(B)ポリオール類、
(C)HLB4〜9の非イオン性界面活性剤、
(D)融点が30℃以上の難揮散性物質、
(E)成分(D)を溶解するための油剤、
(F)水
を含有する水中油型乳化組成物。
【請求項2】
成分(D)の25℃における蒸気圧が、1.33×10-6kPa以上である請求項1記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
成分(D)が、パルミチン酸イソプロピルに対する溶解度(25℃)が、10質量%以下である請求項1又は2記載の水中油型乳化組成物。
【請求項4】
水中油型乳化組成物の粘度が、2000mPa・s以下である請求項1〜3のいずれか1項記載の水中油型乳化組成物。
【請求項5】
融点が30℃以上の難揮散性物質(成分(D))を、次の成分(A)、(B)、(C)、(E)及び(F):
(A)多糖類又はその誘導体のヒドロキシ基の水素原子の一部又は全てが、次の置換基(a)
(a)下記一般式(1)で表される基(該置換基(a)のヒドロキシ基の水素原子は更に置換基(a)で置換されていてもよい。)
【化2】

[式中、E1はヒドロキシ基又はオキソ基が置換していてもよい炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示し、nは8〜300の数を示し、n個のA1は同一又は異なって、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示し、E2はエーテル結合又はオキシカルボニル基(−OCO−又は−COO−)を示し、Rはヒドロキシ基が置換していてもよい炭素数4〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。]
で置換されている多糖誘導体、
(B)ポリオール類、
(C)HLB4〜9の非イオン性界面活性剤、
(E)成分(D)を溶解するための油剤、
(F)水
と混合して乳化する成分(D)の揮散方法。

【公開番号】特開2007−126364(P2007−126364A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318205(P2005−318205)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】