説明

難燃光ケーブル

【課題】電気ケーブルとの併設ができ、ノンハロゲン化が可能な防湿層を備えた難燃光ケーブルを提供する。
【解決手段】複数本の光ファイバが収納された集合コア2の外周を防湿層3で覆い、その外側を難燃性ポリエチレンのシース4で被覆した難燃光ケーブルであって、防湿層3の内側の集合コアを引き抜いて、防湿層3とシース4とからなるチューブ状態とした後、40℃の水槽に入れて測定した時のチューブ状態で透湿度が0.15g/m2・day以下であり、防湿層3が非導電性かつ非ハロゲンの材料で形成されている。前記の防湿層3は、プラスチックフィルムの巻き付け、または、防湿性物質をコーティングしたプラスチックフィルムの巻き付けにより形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の光ファイバを収納した集合コアを防湿層で覆い、その外側を難燃シースで被覆した難燃光ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバは水分に弱く、吸湿することで強度の劣化や伝送特性が悪化してファイバ寿命が短くなる。このため、地中管路内に敷設するような光ケーブルは、雨水等に浸されたような場合でも問題がないように防湿機能を備えていることが求められる。従来、吸水テープ(止水テープとも言う)により、ケーブル内に入り込んだ水が、ケーブル長手方向に走らないようにしている。しかし、シース(通常、ポリエチレン)および吸水テープだけでは、大気中の湿気の浸入を阻止することは難しい。
【0003】
このため、例えば、特許文献1にはシース内面にアルミニウムテープを溶着したLAPシースを用いることが開示されている。また、特許文献2には、シースの内側にポリ塩化ビニリデンの押出し成形による防湿層を設けることが開示され、特許文献3には、アルミニウム箔もしくは樹脂フィルムとの積層アルミニウム箔を遮水フィルムとすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−221209号公報
【特許文献2】実開平4−22707号公報
【特許文献3】特開昭62−184411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
難燃光ケーブルは、例えば、シース材としてエチレン−アクリル酸エチル共重合体等のポリオレフィンに、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等を配合したコンパウンドを使用するが、これらのコンパウンドは透湿度が大きく、シースを透過して外部の湿気がケーブル内に浸入しやすい。特許文献1または3に開示のように、シースの内側にアルミニウムの金属箔等を配することで、ケーブル内への湿気の浸入を防止することができる。しかしながら、光ケーブルを電気ケーブルと同じ地中管路に敷設するような場合、アルミニウムの金属箔は電気ケーブルから生じる電界により、光ケーブル内の光ファイバの伝送特性に好ましくない影響を与える。
【0006】
一方、特許文献2に開示されるように、非金属のポリ塩化ビニリデン(PVCD)を用いて防湿層を成形することで電界の影響を回避することができる。しかし、PVCDの使用は、環境汚染対策としてのノンハロゲン化を進めることができないという問題がある。
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、電気ケーブルとの併設ができ、ノンハロゲン化が可能な防湿層を備えた難燃光ケーブルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による難燃光ケーブルは、複数本の光ファイバが収納された集合コアの外周を防湿層で覆い、その外側を難燃性ポリエチレンのシースで被覆した難燃光ケーブルであって、防湿層の内側の集合コアを引き抜いて、防湿層とシースとからなるチューブ状態とした後、40℃の水槽に入れて測定した時のチューブ状態で透湿度が0.15g/m2・day以下であり、防湿層が非導電性かつ非ハロゲンの材料で形成されていることを特徴とする。
【0008】
前記の防湿層は、プラスチックフィルムの巻き付けにより形成され、または、防湿性物質をコーティングしたプラスチックフィルムの巻き付けにより形成することができる。さらには、プラスチックフィルムの巻き付けの重なり部分が、互いに溶着されるようにしてもよい。また、防湿層が、ポリエチレン系樹脂の押出し成形により形成されていてもよい。
【0009】
また、前記の防湿層は、複数の異なる種類の防湿層で形成されていてもよい。例えば、防湿層が、ポリエチレン系樹脂の押出し成形による層と防湿性物質をコーティングしたプラスチックフィルムの巻き付けによる層との2層からなる。また、防湿層は、ポリエチレン系樹脂の押出し成形による層の外周に、防湿性物質を直接コーティングして形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、湿気が浸入しやすい難燃光ケーブルにおいて、所定値以下の透湿度を有する防湿層により、ケーブル内への湿気の浸入をケーブル全長にわたって効果的に抑制することができる。また、防湿層は、非導電性かつ非ハロゲンの防湿層で形成しているので、電気ケーブルとの併設ができ、かつノンハロゲン化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による難燃光ケーブルの概略を説明する図である。
【図2】本発明に用いる防湿用フィルムの構造例を説明する図である。
【図3】本発明における防湿層の形態を説明する図である。
【図4】本発明における防湿層の他の形態を説明する図である。
【図5】本発明による難燃光ケーブル内への湿気の浸入状態の調査結果を示す図である。
【図6】本発明における透湿度の測定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1により本発明の実施の形態を説明する。図1(A),図1(B)は難燃光ケーブルの概略を示し、図1(C)はスロット形光ケーブルへの適用例を説明する図である。図中、1,1’は難燃光ケーブル、2は集合コア、3は防湿層、3xはフィルム防湿層、3yは成形防湿層、4は難燃シース、5はスロットロッド、5aはスロット溝、6はテンションメンバ、7は光ファイバ心線、8は押え巻きを示す。
【0013】
本発明による難燃光ケーブル1は、図1(A)に示すように、複数本の光ファイバが収納され束ねられた状態の集合コア2の外側を防湿層3で覆い、その外周を難燃性のシース(外被とも言う)4で被覆した構造の難燃光ケーブルを対象とする。また、防湿層3は、図1(B)に示すように、フィルムの巻き付けで形成されるフィルム防湿層3x、押出し成形による成形防湿層3yの異なる形態の1層または複数層で形成されていてもよい。
なお、本発明における集合コア2とは、複数本の光ファイバ心線を介在等を介して集合させ、その外側を押え巻き(上巻きとも言う)等を用いて束ねた状態のもの、または、次に説明する図1(C)に示すように、スロットロッドに複数枚の光ファイバテープ心線を収納し、押え巻き等により保持した状態のものを言うものとする。
【0014】
図1(C)は、地下管路等に敷設される幹線用の光ケーブルとして多用されているスロット形の難燃光ケーブル1’である。この難燃光ケーブル1’は、中心にテンションメンバ(抗張力体とも言う)6を埋設一体化し、複数のスロット溝5aを設けたプラスチック材からなるスロットロッド(スペーサロッドとも言う)5により構成される。スロットロッド5のスロット溝5aは、螺旋状またはSZ状に形成され、スロット溝5a内には複数本の光ファイバ心線またはテープ状の光ファイバ心線7(以下、テープ心線を含めて光ファイバ心線と言う)が収納される。
【0015】
光ファイバ心線7がスロット溝5a内に収納された状態で、スロットロッド5の外周に押え巻き8が施される。この押え巻き8は、スロット溝5aに収納された光ファイバ心線7が飛び出さないように保持すると共に、シース4の成形時の熱絶縁層、あるいは、光ケーブル内への止水のため吸水剤を付与して吸水層として機能させることもできる。また、押え巻き8は、螺旋状に巻き付ける横巻き、または、長手方向に縦添えして巻き付けるかのいずれかの形態を用いることができ、押え巻き8が施された状態で、上述したように集合コア2とされる。
【0016】
難燃シース4は、例えば、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のポリオレフィンに、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等を配合した難燃ポリエチレン樹脂の押出し成形で形成される。この難燃シース4は、ケーブル内への浸水を抑制することはできても、表面からの湿気の浸入を完全に阻止することまでは難しい。このため、長期間の間には湿気がシースを透過してケーブル内に浸入する。また、押え巻き8によるも、吸水フィルムの使用でケーブル長手方向の走水は阻止することはできても、径方向からの浸入してくる湿気を防止するには十分でない。
【0017】
本発明の特徴とするところは、上記の集合コア2と難燃シース4との間に配される防湿層3の構成にあり、防湿層3は所定値以下の透湿度を有し、外部の湿気が難燃シース4を透過してケーブル内に浸入するのを防止する。防湿層3は、層が厚ければ厚いほど、湿気に対する透湿度を小さくすることができるが、ケーブル外径が太くなり、管路内への収納が難しくなることがある。このため、防湿層の厚さをあまり厚くすることなく、所定の透湿度以下とする必要がある。
【0018】
本発明においては、種々調査の結果、防湿層3の透湿度は、後述する測定方法で、防湿層3の内側の集合コア2を引き抜いて、防湿層3と難燃シース4とからなるチューブ状態とした後、40℃の水槽に入れて測定した時のチューブ状態で透湿度が0.15g/m2・day以下であれば、光ファイバに対して実質的に問題ない状態とすることが確認されている。この透湿度は、防湿層3に金属箔を用いることにより容易に実現することができるが、電気ケーブルとの併設ができなくなるため、本発明は、非金属性(非導電性)の材料で実現することにある。また、ノンハロゲンの難燃光ケーブルを実現するために、非ハロゲン材で形成する。
【0019】
また、防湿層3は、難燃シース4の成形と同様に押出し成形により形成した成形防湿層3yとすることも可能であるが、押出し成形の場合は厚さをあまり薄くすることができない。このため、防湿層を予めフィルム状に形成し、これを集合コア2の外側に巻き付けてフィルム防湿層3xとするようにしてもよい。なお、フィルム防湿層3xは、成形防湿層3yよりは薄い層で防湿層の形成を実現でき、粘着性がなく取り扱い性もよくなる。
【0020】
図2は、本発明の難燃光ケーブルに用いる防湿用フィルムの構成例を説明する図で、図2(A)は1層の防湿コート層を有する例、図2(B)は2層の防湿コート層を有する例である。図中、3x’は防湿用フィルム、3aはベースフィルム層、3bは防湿コート層、3c、3c’はコーティング層を示す。
【0021】
図2(A)に示す防湿用フィルム3x’は、例えば、ベースフィルム層3a、防湿コート層3b、コーティング層3cの順で3層により構成され、幅が15〜60mm程度のテープ状とされる。ベースフィルム層3aは、防湿用フィルムの基材とされるもので、厚さが50μm程度の樹脂フィルムからなり、ポリエチレンテレフタレート(PET)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、非晶質ポリオレフィン(APO)などが用いられる。
【0022】
防湿コート層3bは、湿気の透過を抑制する層となるもので、ベースフィルム層3a上に、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)などの非導電性で非ハロゲンの防湿物質をコーティングして形成される。なお、2種類以上のものを多層にコーティングした多元コート層としてもよい。これらの物質のコーティングには、PVDやCVDによる蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの方法が用いられる。なお、防湿コート層3bは、予め薄い樹脂フィルムにコーティングされ、フィルム状(例えば、厚さ12μm位)にしたものをベースフィルム層3a上に接着積層するようにしてもよい。
【0023】
防湿コート層3bの露出面に形成されるコーティング層3cは、必ずしも必要とするものではないが、防湿コート層3bの保護や防湿性向上や、ヒートシールや難燃シースとの接着ために形成するようにしてもよい。このコーティング層3cは、ベースフィルム層3aと同様な樹脂剤をコーティングして形成することができ、厚さは10μm程度とされる。また、コーティング層3cは、予めフィルム状にしたものを防湿コート層3b上に接着積層するようにしてもよい。
【0024】
図2(B)に示す防湿用フィルム3x’は、図2(A)の防湿用フィルムに、さらにもう1層の防湿コート層3bを加えた、2層の防湿コート層3bを有する構成としたものである。ベースフィルム層3a、防湿コート層3b、コーティング層3cは、図2(A)で説明したのと同様の材料とコーティング方法で形成することができる。なお、中間のコーティング層3cには、上下の防湿コート層3bを接着する機能をもたせることができ、鎖線で示す最上層のコーティング層3c’は、上記と同様にあってもなくてもよい。
【0025】
この他に、防湿コート層3bとして、非ハロゲン系の透湿度の小さい樹脂材を防湿コート層とすることができ、ベースフィルム層3a上に塗布、散布、浸漬などの方法を用いてコーティングすることもできる。また、例えば、延伸ポリプロピレン(OPP)や高密度ポリエチレン(HDPE)をベースとする透湿度の小さいプラスチックフィルムは、積層構造を用いることなく直接巻き付けるようにしてもよい。
【0026】
図3(A)および図3(B)は、上述した防湿用フィルム3x’をテープ状にして、集合コア2の外側に巻き付ける形態を説明する図、図3(C)は押出し成形による防湿用成形層3y’を示す。
図3(A)に示すように、難燃光ケーブル1の集合コア2上に巻き付けられた防湿用フィルム3x’は、ある程度の重なり幅Dをもたせることにより重ね部分の隙間を通しての湿気が浸入するのを抑制することができる。この重なり幅Dは、防湿用フィルムテープ幅の1/5〜1/2幅の重ねピッチで、少なくとも2mm以上の重なり幅が得られるように巻き付けられていることが好ましい。
【0027】
また、図3(B)に示すように、難燃光ケーブル1の集合コア2上に防湿用フィルム3x’を縦添えで巻き付けるようにしてもよく、横巻きと同様に重なり幅Dを持たせて縦添えする。しかし、難燃光ケーブルを小径で曲げたときに防湿層が開くことがあり、実用上は図3(A)に示す横巻きの形態が好ましい。
【0028】
また、防湿用フィルム3x’を上記のようにして巻き付けた場合、重なり部分を互いに溶着させることによりこの部分の密封性を高め、また、ケーブルの曲げにより隙間が生じるのを防止することができる。この、重なり部分の溶着は、防湿用フィルムのベースフィルム層または最上層のコーティング層に、粘着性のある熱可塑性樹脂を用い、シースの押出し成形時の熱により溶着させることができる。
【0029】
また、図3(C)に示すように、非ハロゲン系の透湿度の比較的小さい樹脂材、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を押出し成形により集合コア2上に所定の厚さに直接成形して、防湿用成形層3y’とすることもできる。
【0030】
図4は、防湿層を複数の異なる種類の防湿層で形成する例である。図4(A)は、難燃光ケーブルの集合コア2上に、1層目を押出し成形による防湿用成形層3y’で形成し、その外側に2層目を防湿用フィルム3x’の横巻きで形成した2層の防湿層を備えたものである。図4(B)は、2層目を防湿用フィルム3x’の縦添えで形成した2層の防湿層を備えたものである。図4(C)は難燃光ケーブル1の集合コア2上に、1層目を防湿用フィルム3x’の横巻きで形成し、2層目を押出し成形による防湿用成形層3y’で形成した2層の防湿層を備えたものである。
【0031】
この他、例えば、図4(A)の難燃光ケーブルの集合コア2上に、1層目を押出し成形による防湿用成形層3y’で形成した後、防湿用成形層3y’の表面に、図2で説明した防湿コート層を直接形成してもよい。この場合、防湿コート層は、図2の例で説明したのと同様に、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの方法が用いられる。
また、その他、異なる種類の防湿用フィルムを複数巻き付けてもよく、異なる防湿層の間に、例えば、難燃層を配するようにしてもよい。
【0032】
また、光ケーブルの中間分岐等でケーブル内の光ファイバ心線を取り出す場合がある。この場合は、シースを部分的に除去(ケーブル長で30cm〜50cm位)すると共に、上述した防湿用フィルム3x’で形成された防湿層も部分的に除去される。このため、防湿用フィルム3x’のテープエッジ部分に切裂きの始端となるマジックカットあるいは切れ目を入れておくと引き剥がし易く、中間分岐の作業性をよくすることができる。この他、防湿層の内側に引裂き紐を配して、解体し易いようにしてもよい。
【0033】
図5は、上述した種々の形態の防湿層を備えた難燃光ケーブルの試料1〜10について、その透湿度とケーブル内への水分の浸入状態の調査結果を示したものである。試料とした難燃光ケーブルは、図1(C)に示したスロット形光ケーブルで、スロットロッドの外周に吸水テープを巻き付けた形態の集合コアの外径が15mm、難燃シースを難燃ポリエチレン(エチレン−アクリル酸エチル共重合体に水酸化マグネシウムを配合した難燃コンパウンド)により厚さ1.8mm〜2.0mmで成形し、吸水テープと難燃シースとの間に材料または形状を異ならせた防湿層を配したものである。
【0034】
透湿度(*1)は、図6に示す方法で測定される。上記各試料の難燃光ケーブルを40cmの長さに切断し、この試料から集合コア部分(スロットロッドに吸水テープを巻き付けたもの)を引き抜く。集合コア部分を引き抜くと、防湿層と難燃シースとからなる2層のチューブ11となるが、その両端に細いチューブ13が接続された金属キャップ12を水密構造で取り付けて、40℃の恒温水槽14に浸す。一方のチューブ13は、ガス供給源15に接続され一定量のキャリアガスが送られるようにされる。他方のチューブ13は、試料採取装置16が接続され、試料チューブ11内に浸透する水蒸気を含むキャリアガスが採取される。
【0035】
試料採取装置16で採取されたキャリアガスに含まれる水蒸気量は、ガスクロマトグラフ17により測定される。この水蒸気量の測定は3時間おきに行なわれ、直前に測定された値に対する差が±5%以内に4回連続しておさまったときに定常状態になったと判断し、測定された水蒸気の量を「一日あたりに試料を透過する水蒸気の量に換算し、試料の表面積(シースの表面積)で割って、単位面積当たりの値を透湿度とした。なお、透湿度の単位は(g/m・day)である。
【0036】
試料1は、集合コア上に防湿層として、高密度ポリエチレン(HDPE)を、厚さ1.0mmの防湿用成形層を押出し成形で形成し、この上に厚さ1.8mmで難燃シースを押出し成形した。この防湿層と難燃シースの2層チューブ状態で、透湿度が0.15g/m2・dayで、水槽浸漬後の集合コア内の水泡は、認められなかった。
【0037】
試料2は、集合コア上に防湿層として、厚さ0.1mm、幅が40mmの延伸ポリプロピレン(OPP)の防湿用フィルムテープを1/5幅の重なり幅で横巻きして形成し、この上に厚さ2.0mmで難燃シースを押出し成形した。この防湿層と難燃シースの2層チューブ状態で、透湿度が0.15g/m2・dayで、水槽浸漬後の集合コア内の水泡は、認められなかった。
【0038】
試料3は、集合コア上に防湿層として、シリカを蒸着した厚さ0.015mmのPETフィルムを、厚さ0.05mmのPETフィルム上に接着積層してなる幅40mmの防湿用フィルムテープを1/5幅の重なり幅で横巻きして形成し、この上に厚さ2.0mmで難燃シースを押出し成形した。この防湿層と難燃シースの2層チューブ状態で、透湿度が0.10g/m2・dayで、水槽浸漬後の集合コア内の水泡は、認められなかった。
【0039】
試料4は、集合コア上に防湿層として、アルミナとシリカを2元蒸着した厚さ0.012mmのPETフィルムを、厚さ0.05mmのPETフィルムに接着積層してなる幅52mmの防湿用フィルムテープを3mmの重なり幅で縦添えして形成し、この上に厚さ2.0mmで難燃シースを押出し成形した。この防湿層と難燃シースの2層チューブ状態で、透湿度が0.08g/m2・dayで、水槽浸漬後の集合コア内の水泡は、認められなかった。
【0040】
試料5は、集合コア上に防湿層を2層で形成してなり、1層目として、厚さ0.05mm、幅が40mmの延伸ポリプロピレン(OPP)の防湿用フィルムテープを1/5幅の重なり幅で横巻きして形成した。その上に2層目として、厚さ0.5mmの高密度ポリエチレン(HDPE)の防湿用成形層を押出し成形で形成し、この上に厚さ2.0mmで難燃シースを押出し成形した。この防湿層と難燃シースの2層チューブ状態で、透湿度が0.14g/m2・dayで、水槽浸漬後の集合コア内の水泡は、認められなかった。
【0041】
試料6は、集合コア上に防湿層を2層で形成してなり、1層目として、厚さ0.5mmの高密度ポリエチレン(HDPE)の防湿用成形層を押出し成形で形成した。その上に2層目として、シリカを蒸着した厚さ0.015mmのPETフィルムを厚さ0.05mmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムに接着積層してなる幅40mmの防湿用フィルムテープを、LLDPE面を外側にしてテープの1/5幅の重なり幅で横巻きして形成し、この上に厚さ2.0mmで難燃シースを押出し成形した。この防湿層と難燃シースの2層チューブ状態で、透湿度が0.08g/m2・dayで、水槽浸漬後の集合コア内の水泡は、認められなかった。
【0042】
試料7は、集合コア上に防湿層を2層で形成してなり、1層目として、厚さ0.5mmの高密度ポリエチレン(HDPE)の防湿用成形層を押出し成形で形成した。その上に2層目として、インライン蒸着装置を用いてシリカ薄膜を直接形成し、この上に厚さ2.0mmで難燃シースを押出し成形した。この防湿層と難燃シースの2層チューブ状態で、透湿度が0.05g/m2・dayで、水槽浸漬後の集合コア内の水泡は、認められなかった。
【0043】
試料8は、集合コア上に防湿層として、シリカを蒸着した厚さ0.015mmのPETフィルムを、厚さ0.05mmのPETフィルムに接着積層し、厚さ0.01mmの低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムをヒートシール用のコーティング層として接着積層してなる幅40mmの防湿用フィルムテープを1/5幅の重なり幅で横巻きして形成し、この上に厚さ2.0mmで難燃シースを押出し成形した。この防湿層と難燃シースの2層チューブ状態で、透湿度が0.09g/m2・dayで、水槽浸漬後の集合コア内の水泡は、認められなかった。また、防湿用フィルムテープの重なり部分で、ヒートシール用のコーティング層が溶着されていた。
【0044】
試料9は、集合コア上に防湿層として、高密度ポリエチレン(HDPE)を、被覆厚さ0.2mmの防湿用成形層を押出し成形で形成し、この上に厚さ1.8mmで難燃シースを押出し成形した。この防湿層と難燃シースの2層チューブ状態で、透湿度が0.35g/m2・dayで、水槽浸漬後の集合コア内に水泡が存在していることが認められた。
【0045】
試料10は、集合コア上に上述した防湿層を用いることなく、厚さ2.0mmで難燃シースを押出し成形した。この難燃シースのチューブ状態で、透湿度が0.50g/m2・dayで、水槽浸漬後の集合コア内に水泡が存在していることが認められた。
【0046】
図5の調査結果によれば、試料1〜8は、集合コア上に形成された防湿層の透湿度がいずれも、防湿層3の内側の集合コア2を抜いて、防湿層3と難燃シース4とからなるチューブ状態とした後、40℃の水槽に入れて測定した時のチューブ状態で透湿度が0.15g/m2・day以下で、水槽浸漬後のケーブル内への水分の透湿は認められず、本発明の実施に用いることが可能であった。試料9〜10は、ケーブル内への水分の透湿があり、本発明の実施には不適とされた。
【符号の説明】
【0047】
1,1’…難燃光ケーブル、2…集合コア、3…防湿層、3x…フィルム防湿層、3y…成形防湿層、3x’…防湿用フィルム、3y’…防湿用成形層、3a…ベースフィルム層、3b…防湿コート層、3c,3c’…コーティング層、4…難燃シース、5…スロットロッド、5a…スロット溝、6…テンションメンバ、7…光ファイバ心線、8…押え巻き。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の光ファイバが収納された集合コアの外周を防湿層で覆い、その外側を難燃性ポリエチレンのシースで被覆した難燃光ケーブルであって、
前記防湿層の内側の集合コアを引き抜いて、前記防湿層と前記シースとからなるチューブ状態とした後、40℃の水槽に入れて測定した時の前記チューブ状態で透湿度が0.15g/m・day以下であり、
前記防湿層が非導電性かつ非ハロゲンの材料で形成されていることを特徴とする難燃光ケーブル。
【請求項2】
前記防湿層が、プラスチックフィルムの巻き付けにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の難燃光ケーブル。
【請求項3】
前記防湿層が、防湿性物質をコーティングしたプラスチックフィルムの巻き付けにより形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃光ケーブル。
【請求項4】
前記プラスチックフィルムの巻き付けの重なり部分が、互いに溶着されていることを特徴とする請求項2または3に記載の難燃光ケーブル。
【請求項5】
前記防湿層が、ポリエチレン系樹脂の押出し成形により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の難燃光ケーブル。
【請求項6】
前記防湿層が、複数の異なる種類の防湿層からなることを特徴とする請求項1に記載の難燃光ケーブル。
【請求項7】
前記防湿層が、ポリエチレン系樹脂の押出し成形による層と防湿性物質をコーティングしたプラスチックフィルムの巻き付けによる層との2層からなることを特徴とする請求項6に記載の難燃光ケーブル。
【請求項8】
前記防湿層が、ポリエチレン系樹脂の押出し成形による層の外周に、防湿性物質を直接コーティングして形成されていることを特徴とする請求項6に記載の難燃光ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−118353(P2011−118353A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168376(P2010−168376)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】