説明

難燃剤および難燃性有機高分子組成物

【課題】高度の難燃効果を持った有機りん化合物、これを主成分とする難燃剤および難燃性有機高分子化合物を提供する事であり、難燃性有機高分子化合物の耐熱性の維持と難燃剤の加水分解性の欠点を改善する事である。
【解決手段】構造式1で表される新規な有機りん化合物、これを主成分とする難燃剤およびこれを含有している難燃性有機高分子組成物である。


(式1中、Rはメチル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難燃剤および難燃性有機高分子組成物に関する。さらに詳細には、新規な有機りん化合物、これを主成分とする難燃剤およびこれを含有するハロゲンフリーの難燃性有機高分子組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機高分子化合物の難燃剤としては有機ハロゲン化合物がその大きな難燃効果、適用される有機高分子化合物の範囲の広さ、適用の容易さまたは価格の低廉さなどが魅力的であり、有機ハロゲン化合物は難燃剤として広く有機高分子化合物に適用されてきた。そして、有機ハロゲン化合物としては塩素系または臭素系のものが実用されていて、それぞれ多種類の化合物がその目的に応じて難燃剤として多量に使用されてきた。
【0003】
しかし最近では、有機ハロゲン化合物を難燃剤として含有している有機高分子組成物は火災時に有毒ガスを発生し、人体に対して被害を与える事が問題視されている。さらに、ハロゲン系の難燃剤を含有している高分子組成物はその焼却処分時に焼却炉を腐食する酸性ガスを発生するばかりではなく、環境汚染性の強い有害物質を排出する事などが明らかにされている。故に、難燃剤を使用する業界ではこのようなハロゲン系の難燃剤を使用する事を嫌って、ハロゲン系の難燃剤を他の難燃剤に置換しようとする動きが活発であり、中でも有機りん化合物が最近、特に注目されている。
【0004】
ただし、ハロゲン系の難燃剤が広い範囲の有機高分子化合物に効果的に適用されるのに対して、有機りん化合物が難燃剤として効果的なのはポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂またはセルローズ類などのように燃焼時に炭化物の生成が容易な有機高分子化合物に限られている。そして、有機りん化合物が難燃剤として機能する事の困難なポリスチレン、ポリアミドまたはABS樹脂などは有機りん化合物が難燃剤として効果的なポリフェニレンエーテル樹脂またはポリカーボネート樹脂とのポリマーアロイを形成させてから、有機りん化合物による難燃化が実用されている。
【0005】
しかしながら、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル・ポリスチレンポリマーアロイ、ポリフェニレンエーテル・ポリアミドポリマーアロイまたはポリカーボネート・ABS樹脂ポリマーアロイなどは熱可塑性の有機高分子化合物であって、いずれも高いガラス転移温度がありその耐熱性を保持している。これに難燃剤としての有機りん化合物が添加されるときには通常、有機高分子化合物本来のガラス転移温度が低下してその耐熱性が損なわれる欠点が指摘される。これに対して、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4または特許文献5には高い立体障害を持った一連の有機りん化合物が開示されていて、りん系難燃剤の添加によるガラス転移温度の低下ひいては有機高分子化合物の耐熱性の低下を低減する策がなされている。しかしながら、これら一連の有機りん化合物は比較的に加水分解しやすいと言う欠点のある事が指摘されている。また、特許文献6には類似構造であり、加水分解の耐性のより高い有機りん化合物の開示があるが、原料の一つであるピペラジンが高価なために目下、工業的な採用は一般的でない。
【特許文献1】JPH5−1097A
【特許文献2】JPH6−306277A
【特許文献3】JPH8−277344A
【特許文献4】JPH8−301884A
【特許文献5】JPH11−343382A
【特許文献6】国際公開WO99/028382パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は高度の難燃効果を持った有機りん化合物、これを主成分とする難燃剤および難燃性有機高分子化合物を提供する事であり、従来、両立させる事が困難であった難燃性有機高分子化合物の耐熱性の維持と難燃剤の加水分解性の欠点を改善する事である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従って、構造式1で表される新規な有機りん化合物、これを主成分とする難燃剤およびこれを含有している難燃性有機高分子組成物が提供される。
【0008】
【化2】

(式1中、Rはメチル基を示す。)
【0009】
構造式1で表される有機りん化合物(以下、構造式1と称する。)はその構造からも理解されるように分子中に二個のりん原子を持っていて高いりん含量であり、りん原子を囲んだ4個の2,6−キシレノールはりん原子に大きな立体障害を与えてより剛直な分子構造を形成し、その添加による有機高分子化合物の高い耐熱性の低下を低減しうる特性を持っている。また、前記日本特許公報に開示された有機りん化合物は大きな立体障害を持っていて、同様に有機高分子化合物の高い耐熱性の低下を防止する特性は備えているものの、りん原子を取り囲んでいるすべてが芳香族系のフェノールであって、加水分解への耐性の低さの原因をなしている。一方、構造式1も同様に大きな立体障害を持っていて、有機高分子化合物の耐熱性の低下を防いでいるし、ネオペンチルグリコールと称される二価のアルコールをその構成成分としたために、加水分解に対する高い耐性を備えた特徴を持っている。
【0010】
本発明の構造式1およびこれを主成分とする難燃剤の最も好ましい適用有機高分子化合物としてはポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル・ポリスチレンポリマーアロイ、ポリフェニレンエーテル・ポリアミドポリマーアロイまたはポリカーボネート・ABS樹脂ポリマーアロイなどが挙げられるが、ポリオレフィン類、ポリスチレン、ポリブタジエン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂または不飽和ポリエステル樹脂などにも好ましく適用される。
【0011】
ポリフェニレンエーテル樹脂は2,6−キシレノールを酸化触媒の存在下に酸化重合して得られる耐熱性の高い高分子化合物であって、通常、耐衝撃性のポリスチレンと混合して使用される事が多い。ポリカーボネート樹脂は基本的にはビスフェノール−Aのナトリウム塩とホスゲンとを重縮合させて得られる透明性と耐衝撃性に優れた耐熱性高分子化合物であって、高分子の末端基としてフェノール、パラターシャリブチルフェノール、パラクミルフェノールまたはパラフェニルフェノールが使用されたものである。また、ビスフェノール−Aの一部をビスフェノール−Fまたは4,4’−ビフェノールなどを共重合したものも知られていて変性ポリカーボネート樹脂と称されている。ポリアリレート樹脂はポリカーボネート樹脂におけるホスゲンの一部または全部をテレフタル酸ジクロライドに置き換えて重縮合した高分子化合物に相当して、ポリカーボネート樹脂よりもさらに高い耐熱性と剛性を備えている。ポリフェニレンエーテル・ポリスチレンポリマーアロイはポリフェニレンエーテルとポリスチレンとの混合物であって、通常、両者はそのままで容易に混合する事ができる。本発明の適用に好ましいポリマーアロイはポリフェニレンエーテルが5ないし95重量%の広範囲のものを含んでいる。ポリフェニレンエーテル・ポリアミドポリマーアロイはα,β−不飽和カルボン酸またはその無水物で変性されたポリフェニレンエーテル10〜80重量部とポリアミド類90〜20重量部とを加熱下で混合したものであって、通常、このポリマーアロイはポリアミドを連続相としてポリフェニレンエーテルを分散相としたものが好適に使用される。ここで、α,β−不飽和カルボン酸またはその無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸または無水シトラコン酸などが挙げられるが、通常、無水マレイン酸が使用される。ポリアミド類としては6−ナイロン、12−ナイロン、4,6−ナイロン、6,6−ナイロンまたは共重合ナイロンと称されるものなどがあって、いずれもポリフェニレンエーテルとポリマーアロイを形成する事ができる。なお、ポリフェニレンエーテル・ポリアミドポリマーアロイにはトリアリルイソシアヌレートなどのポリファンクショナルモノマー(PFM)を添加しておいて、成型加工後にγ−線照射して架橋構造を形成させる技術も既に確立されている。ポリカーボネート・ABS樹脂ポリマーアロイはポリカーボネート樹脂とABS樹脂とを加熱下で混合したものであり、その混和性は良く、ポリカーボネートが10ないし80重量%、ABS樹脂が90ないし20重量%の比率で容易に混合される。ABS樹脂はアクリロニトリル、アクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルなどのアクリル系のモノマー、ブタジエンおよびスチレンをその構成単位としていてその名称があり、種々の製造方法が知られている。最も一般的な製造方法としては、ポリブタジエンにアクリロニトリルおよびスチレンをグラフト共重合する事が知られている。
【0012】
これらの有機高分子化合物には構造式1が有機高分子化合物に対して1ないし40重量%、より好ましくは2ないし30重量%最も好ましくは4ないし25重量%程度添加されて好ましい難燃性と有機高分子化合物の高い耐熱性が維持される。もしも構造式1の添加量が1重量%未満であれば、他の難燃剤を併用したとしても本発明が期待している優れた特性が発現されない。また、添加量が40重量%を越えてもそれ以上の難燃性の向上が期待されないばかりではなく、高分子化合物の耐熱性を低下させる結果を生じるので好ましくない。
【発明の効果】
【0013】
後述の各実施例および比較例から明らかなように、本発明に係る難燃剤および難燃性有機高分子組成物はハロゲンを全く含有しないで、優れた難燃効果を持っている事が明らかにされると同時に、有機高分子化合物の持っている高い耐熱性を維持する事も知られた。さらに、実施例1では構造式1の製造が工業的な規模で容易に実施され得る事が証明された。なお、参考例の実験結果からも明らかなように、前記日本特許で開示された類似の有機りん化合物に比べて構造式1は加水分解の耐性がより大きな事が示された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
新規な有機りん化合物である構造式1は工業的な規模で容易に製造する事ができる。すなわち、製造工程は反応工程と精製工程とに分ける事ができ、反応工程はさらに二段階に分ける事ができる。反応の第一段階は、2モルの2,6−キシレノールと1モルのオキシ塩化りんとの反応であって、ルイス酸触媒の存在下に加熱縮合が推進される。この時ルイス酸触媒としては塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、四塩化チタン、五塩化アンチモン、塩化亜鉛または塩化塩などを挙げる事ができるが、塩化マグネシウムの使用が最も好ましい。縮合反応によって生成する塩化水素ガスは外部に導いて処理される。なお、2,6−キシレノール2モルはそれよりやや過剰であっても、第三の2,6−キシレノールが反応に関与する事は困難であり、過剰量の2,6−キシレノールを残したままで構造式2で表される中間体を効率的に得る事が可能である。反応の進行は31PNMRで追跡確認する事ができる。反応の第二段階は、第一段階で得られた反応中間体にネオペンチルグリコール0.5モルと第三級アミン1モルとの混合物を滴下しながら、加熱下に縮合反応させる事である。滴下の終了後さらに過剰量の第三級アミンを追加する事は好ましい。第三級アミン類としてはトリエチルアミン、トリプロピルアミンまたはトリブチルアミンなどの使用が推奨される。この時、反応系に不活性な有機溶媒を存在させる事は好ましい。不活性な有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンまたはエチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、クロロベンゼンまたはオルソジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラハイドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルまたはジエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類またはジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはN−メチルピロリドンなどのアミド類の使用が推奨される。なお、ヘキサン、ヘプタン、オクタンまたはノナンなどの脂肪族炭化水素類は貧溶媒ではあるが、上記の良溶媒に混合して使用する事はできる。また、後続の精製工程の利便さを考える時には非水溶性の有機溶媒を使用する事がより好ましい。特に、工業的にはトルエンの使用が最も好ましい。
【0015】
【化3】

(式1中、Rはメチル基を示す。)
【0016】
精製工程は反応混合物から水溶性の夾雑物を除去する水洗過程と有機溶媒中から目的化合物、すなわち、構造式1を分離する分離過程から成り立っている。水洗工程は弱酸性の条件で行なう事が好ましい。水溶性の夾雑物は使用したルイス酸および反応によって生成した第三級アミンの塩が主である。分離過程は再結晶法を採用する事ができて、最も純度の高い構造式1が採取される。
【0017】
構造式1を主成分とする難燃剤には同時に他の難燃剤を混合する事ができる。他の難燃剤としては、他の有機りん化合物、水酸化マグネシウムまたは水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
【0018】
構造式1を含有する難燃性有機高分子組成物にはさらに種々の添加剤を添加する事ができる。添加剤としては、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、発泡剤または無機充填剤などのような通常、有機高分子に添加されるものが挙げられる。可塑剤としては、アジピン酸エステル類、セバシン酸エステル類、フタル酸エステル類、イソフタル酸エステル類、トリメリット酸エステル類、ジエチレングリコールエステル類、または、高分子量ポリエステル類などのカルボン酸エステル類、りん酸エステル類またはスルホンアミド類が使用される。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール類、硫黄系安定剤またはりん系安定剤などが使用される。紫外線吸収剤としては、サリチル酸系、ベンゾフェノン系またはベンゾトリアゾール系のものが使用される。紫外線安定剤はヒンダードアミン類が使用される。帯電防止剤、着色剤、滑剤または発泡剤などは多種類のものが市販されていて、それぞれの高分子化合物に適合するものを選択して使用する事ができる。無機充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、無水珪酸、クレイ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫または酸化アンチモンなどが使用される。なお、無機充填剤が20重量%以上含有されれば、有機高分子化合物の耐熱性と難燃性が向上する事が知られていて、無機充填剤は殊に重要である。
【実施例】
【0019】
次に本発明をさらに明確にするために、具体的な実施例、比較例および参考例を挙げて説明する。なお、例中、「%」は重量%をそして「部」は重量部を表すものとする。ただし、以下の実施例は本発明を限定するものではない。
【0020】
(実施例1)(構造式1の製造)
(実施例1−1)(構造式2の製造)
かきまぜ機、温度計、還流冷却器およびガス吹き込み口の付いた内容積2,000mlの硬質ガラス製四つ口フラスコに2,6−キシレノール1,282.8g(10.5モル)、オキシ塩化りん(POCl)766.6g(5モル)および無水塩化マグネシウム5gを仕込んだ。還流冷却器には5℃に冷却した冷却水を循環させ、その頂部には発生する塩化水素ガスを外部に導き処理できる装置を付けた。ガス吹き込み口から窒素ガスをゆっくり吹き込みながら、かきまぜ機を動かして、フラスコを加熱した。内容物の温度が110℃で反応による塩化水素ガスが発生して、還流冷却器からオキシ塩化りんが還流された。反応の進行とともに内容物の温度を徐々に上昇させて、約4時間で170℃まで上昇させた。この温度で反応を完結させた。反応の完結は31PNMRによって確認された。反応の完結には約3時間を要した。31PNMRによる分析では構造式1が99%以上であり、トリ(2,6−キシレニル)ホスフェートは1%以下であった。
【0021】
(実施例1−2)(構造式1の製造)
かきまぜ機、温度計、滴下ロート、還流冷却器およびガス吹き込み口の付いた内容積10,000mlの硬質ガラス製五つ口フラスコに実施例1−1で得られた反応混合物の全量とトルエン1,000mlを仕込んだ。ガス吹き込み口から窒素ガスをゆっくり吹き込み、かきまぜ機を動かしながらフラスコを加熱して内容物の温度を70℃に保った。この条件で滴下ロートから、ネオペンチルグリコール248.4g(2.48モル)、トリエチルアミン496g(4.9モル)およびトルエン3,000mlの混合物を滴下した。滴下には5時間を要した。滴下終了後さらにトリエチルアミン50g(0.5モル)を加えて100℃で反応を完結させた。反応の完結は31PNMRによって追跡確認され5時間を要した。その後、メタノール16g(0.5モル)を加えて1時間で残余の構造式2を反応させた。この反応混合物に2.5%希硫酸1,500mlを加えて70℃で30分間激しくかきまぜてから、30分間静置した。下方に分離した水層を除去してからさらに水1,500mlを加えて75℃で30分間かきまぜてから30分間静置して、下方に分離した水層を除去した。この操作をもう一度繰り返してから、共沸的に水を除去し、さらにトルエン1,000mlを蒸留除去して、熱時濾過した。濾液をかきまぜながら、ゆっくりと、5℃迄冷却して結晶を析出させた。結晶を濾過採取してから、さらに冷却したトルエン500mlで洗浄した。これを乾燥して融点が96℃の白色結晶1,390gが得られた。この結晶の赤外吸収スペクトルは図1そしてHNMRは図2の通りであり、元素分析の結果は炭素が65.4%(理論値:65.29%)、水素が6.80%(理論値:6.812%)そしてりんが9.12%(理論値:9.10%)であった。以上の分析結果から、この結晶が構造式1である事が確認された。
【0022】
(実施例2)
日本国、旭化成株式会社製のポリフェニレンエーテル樹脂の粉末100部に実施例1で得られた構造式1を20部およびガラス短繊維を30部を混合して、押し出し成型して、厚さ1/16インチのUL−94の燃焼試験に適合する試験片を作成した。この試験片をUL−94の燃焼試験方法に従って試験した。その結果を表−1に示す。なお、試験結果の表示は全てUL−94に従った。
【0023】
(実施例3)
日本国、三菱ガス化学株式会社製のポリカーボネート樹脂ペレット100部に構造式1を20部およびガラス短繊維を30部を混合し、実施例2と同様に押し出し成型して、厚さ1/16インチのUL−94の燃焼試験に適合する試験片を作成した。この試験片をUL−94の燃焼試験方法に従って試験した。その結果を表−1に示す。
【0024】
(実施例4)
日本国、ユニチカ社製のアリレート樹脂(U−ポリマー)ペレット100部に構造式1を20部およびガラス短繊維を30部を混合し、実施例2と同様に押し出し成型して、厚さ1/16インチのUL−94の燃焼試験に適合する試験片を作成した。この試験片をUL−94の燃焼試験方法に従って試験した。その結果を表−1に示す。
【0025】
(実施例5)
実施例2で使用したポリフェニレンエーテル樹脂の粉末50部を押し出し成型機の第一投入口から投入し、旭化成株式会社製のハイインパクトポリスチレンペレット50部を第二投入口から投入して、ポリフェニレンエーテル・ポリスチレンポリマーアロイのペレットを作成した。このペレット100部に実施例2と同様に、構造式1を20部およびガラス短繊維を30部を混合し、押し出し成型して、厚さ1/16インチのUL−94の燃焼試験に適合する試験片を作成した。この試験片をUL−94の燃焼試験方法に従って試験した。その結果を表−1に示す。
【0026】
(実施例6)
実施例2で使用したポリフェニレンエーテル樹脂の粉末50部および無水マレイン酸0.3部を押し出し成型機の第一投入口から投入し、旭化成株式会社製の6,6−ナイロン50部を第二投入口から投入してポリフェニレンエーテル・ポリアミドポリマーアロイのペレットを作成した。このペレット100部に実施例2と同様にして構造式1を20部およびガラス短繊維を30部を混合し、押し出し成型して厚さ1/16インチのUL−94の燃焼試験に適合する試験片を作成した。この試験片をUL−94の燃焼試験方法に従って試験した。その結果を表−1に示す。
【0027】
(実施例7)
日本国、東レ株式会社製のポリカーボネート・ABS樹脂ポリマーアロイ(ポリカーボネート:ABS樹脂=1:1)のペレット100部に実施例2と同様に実施例1で得られた構造式1を20部およびガラス短繊維を30部を混合し、押し出し成型して厚さ1/16インチのUL−94の燃焼試験に適合する試験片を作成した。この試験片をUL−94の燃焼試験方法に従って試験した。その結果を表−1に示す。
【0028】
(比較例1)
実施例5で使用した構造式1をトリフェニルホスフェート20部に代えた以外は実施例5と同様にして試験片を作成した。この試験片をUL−94の燃焼試験方法に従って試験した。その結果を表−1に示す。なお、この試験片のガラス転移温度は実施例5で製造した試験片よりも約8℃低かった。
【0029】
(比較例2)
実施例2で使用した構造式1を構造式3で表される有機りん化合物(以下、構造式3と称する。)20部に代えた以外は実施例2と同様にして試験片を作成した。この試験片をUL−94の燃焼試験方法に従って試験した。その結果を表−1に示す。なお、この試験片のガラス転移温度は実施例2で製造した試験片と同じであった。
【0030】
【化4】

(式1中、Rはメチル基を示す。)
【0031】
(比較例3)
実施例3で使用した構造式1を構造式3に代えた以外は実施例3と同様にして試験片を作成し、試験した。試験結果を表−1に示す。
【0032】
(比較例4)
実施例4で使用した構造式1を構造式3に代えた以外は実施例4と同様にして試験片を作成し、試験した。試験結果を表−1に示す。
【0033】
(比較例5)
実施例5で使用した構造式1を構造式3に代えた以外は実施例5と同様にして試験片を作成し、試験した。試験結果を表−1に示す。
【0034】
(比較例6)
実施例6で使用した構造式1を構造式3に代えた以外は実施例6と同様にして試験片を作成し、試験した。試験結果を表−1に示す。
【0035】
(比較例7)
実施例7で使用した構造式1を構造式3に代えた以外は実施例7と同様にして試験片を作成し、試験した。試験結果を表−1に示す。
【0036】
(参考例1)
内容積100mlの三角フラスコに還流冷却器を付けて、その中に構造式1を1g、イソプロパノールを30gおよび水を1g仕込んだ。別の同じフラスコに構造式3を1g、イソプロパノールを30gおよび水を1g仕込んだ。この二つのフラスコを70℃の湯浴の中に48時間浸漬した。それぞれのフラスコ内容物をフェノールフタレインを指示薬として、1/20ノルマルのアルコール性水酸化カリウムで滴定した。構造式1のフラスコの水酸化カリウム溶液の消費は0.15mlであり、構造式3のフラスコの水酸化カリウム溶液の消費は0.48mlであった。この結果から、構造式1は構造式3よりも加水分解の耐性が大きいと判断された。
【0037】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1で得られた化合物の赤外吸収スペクトル図である。
【図2】実施例1で得られた化合物のHNMR図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式1で表される事を特徴とする有機りん化合物。
【化1】

(式1中、Rはメチル基を示す。)
【請求項2】
構造式1で表される有機りん化合物が主成分である事を特徴とする難燃剤。
【請求項3】
構造式1を含有する事を特徴とする難燃性有機高分子組成物。
【請求項4】
有機高分子化合物がポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル・ポリスチレンポリマーアロイ、ポリフェニレンエーテル・ポリアミドポリマーアロイまたはポリカーボネート・ABS樹脂ポリマーアロイである事を特徴とする難燃性有機高分子組成物。
【請求項5】
構造式1を有機高分子化合物に対して1ないし40重量%含有している事を特徴とする難燃性有機高分子組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−238461(P2007−238461A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59205(P2006−59205)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(504233720)松原産業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】