説明

難燃剤を含有する微孔質物品;フィルムおよびその多層フィルム

微孔質物品は、熱可塑性ポリマー、難燃剤およびヒンダードアミン相乗剤と組み合わせた希釈剤から固−液相分離によって形成され、新規難燃物品を提供する。こうした物品は、衣類、バリア、電子デバイス(光反射フィルムおよび光分散フィルムなど)中の光学フィルム、印刷基材および電気絶縁において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーおよび希釈剤組成物から形成された難燃微孔質物品(例えば、フィルム、シートまたは膜)であって、希釈剤を熱可塑性ポリマーから相分離させて前記物品が製造される難燃性微孔質物品に関する。
【背景技術】
【0002】
微孔質のフィルム、シートまたは膜は、それらを通して流体が流れることを可能にする構造を有する。有効孔サイズは、流れる分子の平均自由工程の少なくとも数倍、すなわち、数マイクロメートルから約100オングストロームに至る。こうしたシートは、表面および内部構造が可視光を散乱させるので元来透明な材料から製造された時でさえも一般に不透明である。
【0003】
微孔質の膜またはフィルムは、固形物の濾過、コロイド物質の限外濾過、電気化学電池における拡散バリアまたはセパレータ、合成皮革の調製においておよび布地積層物の調製においてなどの様々な用途において用いられてきた。後者の有用物は、靴、レインコート、アウターウェアのような物品およびテントなどのキャンプ装備などを調製する時、膜が水蒸気に対して透過性であるが、液体水には透過性でないことを必要とする。更に、微孔質の膜またはフィルムは、抗生物質、ビール、オイル、細菌液体培地の濾過のため、および空気、微生物サンプル、静脈流体およびワクチンなどの分析のために用いられる。微孔質の膜またはフィルムは、外科用包帯、帯具の調製において、および他の流体透過性医療用途においても用いられる。
【0004】
微孔質の膜またはフィルムは他の物品に積層して、特定の有用性を有する積層物を製造してもよい。こうした積層物は特定の有用な被服材料を提供するために微孔質層および外側シェル層を含んでもよい。更に、微孔質の膜またはフィルムは、蒸気透過性の創傷包帯またはヘアセッティングテープのような製品を提供するためにテープ裏地として用いてもよい。
【0005】
この技術は微孔質材料を製造する種々の方法が整っている。見出された1つの有用な技術は熱誘導相分離(TIPS)である。TIPS法は、高温で希釈剤に可溶性であり、比較的低い温度で希釈剤に不溶性であるポリマーの使用に基づいている。「相分離」は固−液相分離または液−液相分離を含むことが可能である。熱可塑性ポリマーおよび希釈剤が米国特許第4,247,498号明細書および同第4,867,881号明細書に記載されたように液−液相分離によって分離されるこの技術は微孔質材料の調製において用いられてきた。熱可塑性ポリマーが冷却すると晶出する固−液相分離は米国特許第4,539,256号明細書に記載されている。微孔質材料に導入された核剤の使用も米国特許第4,726,989号明細書において固−液相分離法の改善として記載されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、固−液相分離法によって調製された新規単層および多層の難燃微孔質高分子材料であって、必須の難燃剤および難燃相乗剤を含有する難燃性微孔質高分子材料を提供する。微孔性は、好ましくはフィルムを延伸することにより、好ましさでは劣るが希釈剤除去により、または両方の技術の組み合わせにより達成される。
【0007】
従って、本発明は、第1の態様において、結晶性ポリマー成分、難燃添加剤および難燃相乗剤を含有する微孔質材料である。より詳しくは、本発明は、
(a)約20(好ましくは30)〜90重量部のポリマー成分、
(b)固−液相分離温度より高い温度で前記ポリマー成分と混和性であるとともに固−液相分離温度より低く冷却すると結晶化分離を通して前記ポリマー成分から相分離することができる約0.1〜70重量部(好ましくは10重量部を上回る、最も好ましくは15〜70重量部)の希釈剤成分、
(c)約1〜10重量部(好ましくは2〜5重量部)の難燃添加剤および
(d)約0.1〜2重量部(好ましくは0.25〜1重量部)のヒンダードアミン難燃相乗剤を含む微孔質材料である。
【0008】
本発明の第2の態様は、微孔質物品を製造する方法であって、
(a)溶液を形成するために上述した組成物を溶融ブレンドする工程、
(b)前記溶融ブレンドされた溶液の成形物品を形成する工程、
(c)前記成形物品を冷却する工程であって、相転移が前記ポリマー成分の結晶化沈殿を通して前記希釈剤成分と前記ポリマー成分との間で起きる温度に前記成形物品を冷却してポリマードメインの網目を形成する工程および
(d)少なくとも1方向に前記物品を延伸して隣接結晶化ポリマードメインを互いから分離する、および/または前記希釈剤成分の少なくとも1部を除去して、フィブリルによって接続されたポリマー球晶の網目を提供することにより多孔性を作る工程
を含む方法である。
【0009】
微孔質物品は単一微孔質層を含んでもよいか、または上で定義された少なくとも1層の微孔質層を有する多層物品を含んでもよい。多層物品は、用途および要件に応じて追加の微孔質層、または追加の無孔質層あるいは1層以上の多孔質層(不織層など)を含んでもよい。例えば、微孔質物品は、1層以上の非難燃微孔質層、1層以上の無孔質層または1層以上の不織層に積層させたか、接着させたか、または別段に付着させた1層以上の難燃微孔質層を含んでもよい。本発明は、有機ポリマー材料の少なくとも2層、好ましくは3層、より好ましくは少なくとも5層の実質的に隣接している層を含む一体化構造を有する多層フィルムも提供し、その構造は、難燃性ではないフィルムを含む層と互い違いになっている難燃微孔質フィルムを含む層を含む。
【0010】
本発明は難燃多層フィルムを調製する方法も提供する。本方法は、有機高分子材料を溶融加工して、有機高分子材料の少なくとも2層の実質的に隣接するフィルム層の一体化構造を形成させることを含み、前記有機高分子材料の少なくとも1層は微孔質難燃フィルム層を含む。追加の難燃層は微孔質非難燃層と互い違いであることが可能である。好ましくは、すべての層は同時に溶融加工され、より好ましくは、すべての層は同時に共押出される。
【0011】
本発明の更なる態様は、多層フィルムを調製する方法であって、有機高分子材料を溶融加工して有機高分子材料の少なくとも2層の実質的に隣接する層の一体化構造を形成することを含む方法を提供し、前記構造は少なくとも1層の微孔質難燃フィルム層および微孔質非難燃フィルム層を含むフィルム層を含む。
【0012】
本発明の微孔質物品は不燃性が必要とされる多くの用途で用いてもよい。今まで、微孔質フィルムを難燃性にするのは困難であった。多孔質物品は、比較的大きい表面が空気に曝されるので無孔質物品より一般に可燃性である。更に、希釈剤が多孔質構造内に保持される「オイル−イン」微孔質フィルムは、比較的揮発性の燃料源を提供することにより物品の可燃性を一般に強める。意外なことには、微孔質物品の大きな表面積および可燃性希釈剤成分の存在にもかかわらず、本発明の多孔質物品は、着火するのが難しく、炎をゆっくり伝播し、自己消火性であることが可能であるようにすることが可能である。多層微孔質フィルムは、単一層ブレンディングより改善された耐燃性を有し、基材の汚れおよび微孔質フィルム表面からの難燃剤粒子の離層を排除することが可能である無粒子表面を有することが可能である。
【0013】
更に、ヒンダードアミン難燃相乗剤の添加が所定の難燃性レベルを達成するために遥かに少ない難燃添加剤の使用を可能にすることが見出された。例えば、所定の難燃性レベルは1重量%ほどに少ない難燃添加剤を用いて達成することが可能である。今まで、微孔質フィルムは、フィルムを不燃性にするために少なくとも10重量%の難燃剤を必要としてきた。しかし、難燃添加剤のこれらのより多い量は固−液相分離を妨げる場合があり、不均一な微孔質物品または劣った機械的特性を有する微孔質物品をもたらす。更に、ハロゲン化難燃剤などの難燃剤の多い量は、環境に関わる問題または健康に関わる問題を提起する場合がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の微孔質材料は結晶性ポリマー成分および希釈剤成分ならびに1〜10重量部(好ましくは2〜5重量部)の難燃添加剤および0.1〜2重量部(好ましくは0.25〜1重量部)の難燃相乗剤を含む。
【0015】
本明細書で用いられる「ポリマー成分」という用語は、通常の溶融加工下で溶融加工性である従来のポリマーのみを意味する。
【0016】
本明細書で用いられる時、ポリマー成分に対する「結晶性」という用語は、少なくとも部分的に結晶性であり、好ましくは示差走査熱分析(DSC)により測定して20重量%を上回る結晶度を有するポリマーを含む。溶融加工されたポリマー中の結晶ポリマー構造は当業者に知られている。
【0017】
本明細書で用いられる「溶融温度」という用語は、その温度またはそれより高い温度で単独のポリマー成分または希釈剤成分とブレンドされたポリマー成分が溶融する温度を意味する。
【0018】
本明細書で用いられる「結晶化温度」という用語は、その温度またはそれより低い温度で単独のポリマー成分または希釈剤成分とブレンドされたポリマー成分が結晶化する温度を意味する。
【0019】
本明細書で用いられる「固−液相分離温度」という用語は、その温度またはそれより低い温度でポリマーと希釈剤の相溶性混合物の溶液、すなわち均質ポリマー希釈剤溶液がポリマー成分の結晶化によって相分離する温度を意味する。
【0020】
本明細書で用いられる「希釈剤成分」という用語は、固−液相分離における希釈剤成分を意味する。
【0021】
本明細書で用いられる「相溶性混合物」という用語は、第2のポリマー成分の連続マトリックス中の第1のポリマー成分の微細(粒子サイズ1マイクロメートル未満)分散液または両方のポリマー成分の微細な相互侵入網目に関連する。「相溶性」という用語は、こうした分散液または相互侵入網目を互いに形成できる2種以上のポリマーに関連する。相溶性は、相溶性混合物の少なくとも1種のポリマー成分が他のポリマー成分と少なくとも部分的に混和性であることを必要とする。
【0022】
本明細書で用いられる「オイル−イン」という用語は、希釈剤が除去されていない固−液相分離によって製造された微孔質フィルムに関連する。
【0023】
本明細書で用いられる「オイル−アウト」という用語は、油成分が本質的に除去されている固−液相分離によって製造された微孔質フィルムに関連する。
【0024】
本明細書で用いられる「難燃剤」という用語は、UL94水平燃焼試験、DIN4102垂直燃焼試験またはフェデラル・モータ・ビヒクル・セーフティ・スタンダード(Federal Motor Vehicle Safety Standard)302などの認証された試験方法の1つによって測定した時、基本的燃焼性が幾つかの改良によって低下されているポリマーに関連する。
【0025】
「難燃添加剤」とは、ポリマーに(機械的または化学的に)導入された時に着火または火炎の成長を遅らせるか、または妨げるように機能する化合物または化合物の混合物を意味する。
【0026】
「難燃微孔質物品」とは、難燃添加剤および難燃相乗剤によって難燃性にされた微孔質高分子のフィルム、膜、シートまたは他の形材を意味する。
【0027】
「ヒンダードアミン」とは、窒素原子に対してアルファ位の少なくとも1個、好ましくは2個の第二炭素原子または第三炭素原子を有する第二アミンまたは第三アミンを意味する。
【0028】
「(シクロ)アルコキシアミン」とは、アルコキシ置換アミンまたはシクロアルコキシ置換アミンをそれらの組み合わせを含め意味する。
【0029】
一般に、難燃添加剤は、好ましくは、用いられる加工温度でポリマー成分と希釈剤成分と合わせて均質混合物(分散液または溶液)を形成し、加工温度より上または下で溶融しうる。難燃添加剤が最終物品(フィルムまたはシートなど)の構造を弱めないために、添加剤は、微小構造がフィルムを不利に弱めるほどに大きく成長するように、相分離中にポリマー成分の結晶核形成を抑制しないのがよい。
【0030】
有用な難燃添加剤には、ハロゲン化有機化合物、有機隣含有化合物(有機ホスフェートなど)および無機化合物が挙げられる。これらの添加剤および相乗剤は、アンダーライターズ・ラボラトリー(Underwriters Laboratory)水平燃焼試験(UL94HB)、ドイツ工業規格(Deutsches Institut fuer Normung)垂直燃焼試験(DIN 4102B2)および/またはフェデラル・モータ・ビヒクル・セーフティ・スタンダード(Federal Motor Vehicle Safety Standard)302によって測定した時に、添加しなければ可燃性であるポリマーを難燃性にするのに十分な量で微孔質物品の高分子マトリックスに添加されるか、または高分子マトリックスに導入される。
【0031】
好ましい難燃剤は、ハロゲン化難燃剤および有機燐難燃剤などの、凝縮相においてポリマーと反応し、気相において水素およびヒドロキシ基を除去する難燃剤である。2種以上の個々の難燃添加剤と2種以上の難燃相乗剤の混合物を用いてもよい。例えば、ハロゲン化難燃剤は三酸化アンチモンと組み合わせて用いられることが多い。
【0032】
ハロゲン化有機難燃添加剤は、炎との化学的相互作用によって機能することが考えられる。添加剤はラジカル化学種に解離し、それらは燃焼過程において連鎖伝播工程および分岐工程と競争する。追加の方法は第三炭素によりポリマー中で起きる。脂肪族臭素は鎖の切断を引き起こすことが可能である。これは、速いドリップにつながり、材料が炎から徐々に消えることを可能にする。有用なハロゲン化添加剤は、例えば、「カークオスマー技術エンサイクロペディア(Kirk−Othmer Encyclopedia of Technology)」、第4編、第10巻、頁954〜76、ニューヨーク州ニューヨークのジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons(New York,NY))1993に記載されている。
【0033】
2〜10個のハロゲン原子を含有する、テトラブロモベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、ヘキサブロモベンゼンによって例示される置換ベンゼンおよび2,2’−ジクロロビフェニル、2,4’−ジブロモビフェニル、2,4’−ジクロロビフェニル、ヘキサブロモビフェニル、オクタブロモビフェニル、デカブロモビフェニルなどのビフェニル、デカブロモジフェニルエタンおよびハロゲン化ジフェニルエーテルはハロゲン化有機難燃添加剤の範囲内に含まれる。
【0034】
本発明のために好ましいハロゲン化有機難燃添加剤は、臭化ベンゼン、塩素化ビフェニルまたは二価連結基(共有結合またはアルキレン基など)によって分離された2個のフェニル基を含むとともにフェニル核当たり少なくとも2個の塩素原子または臭素原子を有する化合物、塩素含有芳香族ポリカーボネート、および前述したものの少なくとも2種の混合物などの芳香族ハロゲン化合物である。デカブロモジフェニルオキシド、ペンタブロモジフェニルオキシド、デカブロモジフェニルエタンおよびオクタブロモジフェニルオキシドは特に好ましい。
【0035】
有用な有機燐添加剤の中には、有機燐化合物、燐−窒素化合物およびハロゲン化有機燐化合物がある。しばしば、有機燐化合物は、炎へのポリマー分解生成物の移送を最少化する、および/または熱移動を最少化するために断熱バリアとして機能する保護液またはチャーコールバリアを形成することにより難燃剤として機能する。
【0036】
一般に、好ましいホスフェート化合物は、有機ホスホン酸、ホスオネート、ホスフィネート、ホスホナイト、ホスフィニット、ホスフィンオキシド、ホスフィン、ホスファイトまたはホスフェートから選択される。トリフェニルホスフィンオキシドは実例である。これらは、単独で、またはヘキサブロモベンゼンまたは塩素化ビフェニルおよび任意に酸化アンチモンと混合して用いることが可能である。燐含有難燃添加剤は例えば「カークオスマー(Kirk−Othmer)」(上掲)、頁976−98に記載されている。
【0037】
本発明において用いるために好ましい燐化合物の典型的なものは、一般式O=P(OQ)3を有する化合物およびこうし化合物の窒素類似体である。式中、各Qは、Qの少なくとも1個がアリールであるかぎり、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルキル置換アリールおよびアリール置換アルキルなどの炭化水素基、ハロゲン、水素およびそれらの組み合わせを含む同じかまたは異なる基を表す。適するホスフェートの典型的な例には、フェニルビスドデシルホスフェート、フェニルビスネオペンチルホスフェート、フェニルエチレン水素ホスフェート、フェニル−ビス−3,5,5’−トリメチルヘキシルホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジ(p−トリル)ホスフェート、ジフェニル水素ホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)p−トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)−フェニルホスフェート、トリ(ノニルフェニル)ホスフェート、フェニルメチル水素ホスフェート、ジ(ドデシル)p−トリルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ハロゲン化トリフェニルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2−クロロエチルジフェニルホスフェート、p−トリルビス(2,5,5’−トリメチルヘキシル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートおよびジフェニル水素ホスフェートなどが挙げられる。好ましいホスフェートは各Qがアリールである化合物である。最も好ましいホスフェートはトリフェニルホスフェートである。ヘキサブロモベンゼンおよび任意に酸化アンチモンと組み合わせてトリフェニルホスフェートを用いることも好ましい。
【0038】
ホスホニトリルクロリド、燐エステルアミド、燐酸アミド、ホスホン酸アミド、ホスフィン酸アミドなどの燐−窒素結合を含む化合物も本発明のための難燃添加剤として適する。
【0039】
有用な無機難燃添加剤の中には、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンおよびアンチモン酸ナトリウムを含むアンチモン、バリウムメタボレート、硼酸、硼酸ナトリウムおよび硼酸亜鉛などの硼素、アンモニウム三水和物などのアンモニウム、水酸化マグネシウムなどのマグネシウム、酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウムおよびモリブデン酸亜鉛などのモリブデン、燐酸などの燐、錫酸亜鉛などの錫の化合物が挙げられる。作用の方式はしばしば多様であり、不活性ガス希釈(例えば水の遊離による)および熱冷却(添加剤の吸熱分解による)を含むことが可能である。有用な無機添加剤は例えば「カークオスマー(Kirk−Othmer)」(上掲)、頁936−54に記載されている。
【0040】
無機添加剤(または溶融しない有機添加剤)の粒子サイズは、物品の均一な厚さを確保するために、無機添加剤が導入される難燃フィルム層の厚さ未満であるのがよい。好ましくは、粒子サイズは、難燃フィルム層の厚さの半分未満、より好ましくは3分の1未満である。一般に、粒子が小さければ小さいほど、より大きい表面積を粒子が提供し、難燃特性がより効果的である。
【0041】
特に有効な難燃剤をもたらす「アンチモン−ハロゲン」添加剤と表現されるアンチモン添加剤とハロゲン化有機添加剤の混合添加剤は特に有用である。2種の添加剤は火炎温度で相乗的に反応して、ハロゲン化アンチモンまたはオキシハロゲン化アンチモンを生成し、それは(燃焼過程における連鎖伝播工程および分岐工程と競争する)ラジカル化学種をもたらすとともにチャーコールの生成を促進する。
【0042】
難燃添加剤は、フィルムの形成の前に溶融物に添加剤を添加することによって難燃フィルム層に一般に導入される。材料は原液で添加してもよいか、あるいは希釈剤またはポリマーに導入してもよい。ポリマーの溶融温度で安定である添加剤を選択するように注意を払うべきである。
【0043】
難燃添加剤は、微孔質物品を難燃性にするのに十分な量で添加される。典型的には、難燃添加剤は、1〜10重量部の量で添加され、難燃相乗剤は0.1〜2.0重量部の量で添加される。
【0044】
有用なヒンダードアミンには、窒素原子に対してアルファ位の少なくとも1個、好ましくは2個の第二炭素原子または第三炭素原子および窒素原子に結合されたオルガノオキシ基を有する第二アミンまたは第三アミンが挙げられる。ヒンダードアミンは、脂肪族または芳香族、高分子または非高分子および環式または非環式であってもよい。有用なヒンダードアミンは、式R1O−NR23の部分を含むアルコキシアミン、シクロアルコキシアミンおよびアリールオキシアミンである。式中、
1はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはそれらの組み合わせである。アルキル基は、1〜18個の炭素原子を含んでもよく、直鎖または分岐であってもよく、1個以上、好ましくは1個のヒドロキシ基で置換されていてもよい。シクロアルキル基は、1個または2個の環、各環中に5〜8個の炭素原子を有してもよく、1個以上、好ましくは1個のヒドロキシ基で置換されていてもよい。アリール基は1個または2個の環を有してもよく、1個以上のヒドロキシ基によって置換されていてもよい。アルキル置換シクロアルキル基、アルキル置換アリール基、アラルキレン基またはシクロアルキルアルキレン基などのアルキル基、シクロアルキル基およびアリール基の組み合わせも考慮されている。
2およびR3は独立してアルキル基、シクロアルキル基、アリール基であり、1個以上、好ましくは1個のヒドロキシ基で置換されていてもよい。R2およびR3は合一してヘテロ環式の脂肪族環または芳香族環を形成してもよい。R2およびR3の少なくとも1方、好ましくは両方のR2のR3は、窒素原子に対してアルファ位の第二炭素原子または第三炭素原子を有する。アルキル基は1〜18個の炭素原子を含んでもよく、1個以上、好ましくは1個のヒドロキシ基で置換されていてもよい。シクロアルキル基は、1個または2個の環、5〜8個の環炭素原子を有してもよく、1個以上、好ましくは1個のヒドロキシ基で置換されていてもよい。アルキル、アリールおよびシクロアルキル基の組み合わせも考慮されている。
【0045】
上の式は、化合物自体、またはオリゴマー鎖またはポリマー鎖から側鎖の部分を表すことが可能である。従って、R2またはR3の一方は、共有結合または有機連結基によってポリマー鎖に接続されていてもよい。
【0046】
理論によって拘束されることを望まない一方で、ヒンダードアミン相乗剤が切断してラジカル(R1O・および・NR23またはR1・および・ONR23)を形成させ、ラジカルが結晶性ポリマーと反応し、鎖の切断につながることが考えられる。開裂したポリマー鎖は、より容易にドリップする傾向があり、よって熱を除去し、炎の伝播を減少させる。
【0047】
難燃相乗剤として有用な多くのヒンダードアミンは技術上知られている。一般に、最も有用なヒンダードアミンはテロラメチルピペリジンから誘導されたものであり、高分子または非高分子であってもよい。高分子ピペリジニル化合物は、ポリアルキルピペリジン側基を含む高い分子量(すなわち約500より高い)のオリゴマー化合物およびポリマー化合物を含み、ここで、ポリマー鎖は、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリアミン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミノトリアジンおよびそれらのコポリマーであってもよい。好ましいヒンダードアミンは、ヒドロキシピペリジンと適する酸またはトリアジンとの重縮合生成物を含む置換ヒドロキシピペリジン部分(例えば、アルコキシピペリジン、アリールオキシピペリジンおよびシクロアルコキシピペリジン)を有する高分子化合物を含むものである。
【0048】
好ましいヒンダードアミンには、化合物の容易な入手性のゆえに置換N−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物が挙げられる。好ましいヒンダードアミンには、1)1,3−プロパンジアミン、シクロヘキサンとのN,N’’−1,2−エタンジイルビス−反応生成物、および過酸化N−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン反応生成物(チバ・ガイギー(Ciba−Geigy Corp.)製の「フラメスタブ(Flamestab)」NOR116FF)および2)ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−オクチルオキシ−4−ピペリジニルセバケート(チバ・ガイギー(Ciba−Geigy Corp.製の「チヌビン(Tinuvin)」(登録商標)123)が挙げられる。
【0049】
本発明の微孔質材料の調製において用いるために適する結晶性ポリマーは周知されており、商業的に容易に入手できる。有用なポリマーは従来の加工条件下で溶融加工性である。すなわち、加熱すると、結晶性ポリマーは容易に軟化し、および/または溶融して、押出機などの従来の装置内で加工してシートを形成することを可能にする。結晶性ポリマーは、制御された条件下でポリマーの溶融物を冷却すると、幾何学的に規則的で秩序ある化学構造を自然に形成する。本発明において用いるために好ましい結晶性ポリマーは高い結晶度を有するとともに少なくとも約70kg/cm2(1000psi)の引張強度も有する。
【0050】
適する結晶性ポリマーの例には、ポリオレフィンなどの付加ポリマーならびにポリエステルおよびポリアミドなどの縮合ポリマーが挙げられる。有用なポリオレフィンは、好ましくはエチレンとプロピレンのポリマーを含むが、メチルペンテン、ブテン、1−オクテンおよびスチレンなど、ならびに結晶質セグメントと非晶質セグメントを含むために重合させてもよい2種以上のこうしたオレフィンのコポリマー、ならびにこうしたポリマーの立体特異変性の混合物、例えば、アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合物、アイソタクチックポリスチレンとアタクチックポリプロピレンの混合物も含んでよい。有用なポリエステルには、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンスクシネートおよびポリエステルコポリマーが挙げられる。有用なポリアミドには、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミドおよびポリカプロラクタムが挙げられる。これらは、例えば、米国特許第4,247,498号明細書、同第4,539,256号明細書、同第4,726,989号明細書、同第4,867,881号明細書および同第4,849,311号明細書に記載されている。
【0051】
必要ならば、β相核剤などの核剤を用いてもよい。本発明において用いられる核剤は、液体状態からポリマーの結晶化を誘発し、ポリマー結晶化サイトの開始を強化してポリマーの結晶化を早める重要な機能を提供することが可能である。核剤がポリマーの結晶化の速度を高めるように機能するので、得られたポリマー粒子またはポリマー球晶のサイズは小さくなる。微孔質材料の調製における核剤の使用は米国特許第4,726,989号明細書(ムロジンスキー(Mrozinski)に記載されている。β相核剤は知られており、例えば、ジョーンス(Jones)ら、Makromol.Chem.vol.75、134−158(1964)およびカーゲルコクシス(J.Karger−Kocsis)著「ポリプロピレン:構造、ブレンドおよび複合材(Polypropylene:Structure,blends and Composites)」、vol.1、130−131(1994)に記載されている。
【0052】
本発明の目的のために有用であることが見出された核剤の幾つかの例には、アリールアルカン酸化合物、安息香酸化合物および特定のジカルボン酸化合物が挙げられる。特に、以下の特定の核剤が有用であることが見出された。ジベンジリデンソルビトール、二酸化チタン(TiO2)、タルク、アジピン酸、安息香酸および微細金属粒子。前述した核剤を例としてのみ示しており、前述したリストは包括的である積もりではないことは言うまでもないであろう。熱可塑性ポリマーと組み合わせて用いてもよいベータ核剤などの他の核剤は周知されており、こうした核剤も本発明による微孔質材料を調製するために用いてよい。1つのこうしたベータ核剤は、N’,−N’,−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドであり、それはNJ−Star NU−100(登録商標)として日本国大阪市中央区の新日本化学(New Japan Chemical Co.)から入手できる。
【0053】
本発明の微孔質材料を製造するために結晶性ポリマーとブレンドするための希釈剤成分として適する化合物は室温で液体または固体であり、その中で結晶性ポリマーは溶解して、結晶性ポリマーの溶融温度で溶液を形成するが、結晶性ポリマーの結晶化温度または結晶化温度より下に冷却すると相分離する。好ましくは、これらの化合物は、少なくとも結晶性ポリマーの溶融温度ほどに高い大気圧での沸点を有する。より低い沸点を有する化合物は、少なくとも結晶性ポリマーの溶融温度ほどに高い温度に化合物の沸点を上げるために過圧を用いてもよい事例において用いてもよい。一般に、適する希釈剤化合物は、結晶性ポリマーのためのパラメータの値の数単位内の溶解度パラメータおよび水素結合パラメータを有する。
【0054】
有用な希釈剤は、高温でポリマー成分と合わせて溶液を形成し、冷却すると相分離するものであり、パラフィン(アルカン)酸および芳香族酸、アルカン、芳香族アルコールおよび環式アルコール、アルデヒド、第一アミンおよび第二アミン、芳香族アミンおよびエトキシル化アミン、ジアミン、アミド、エステルおよびジエステル、エーテル、ケトンおよび種々の炭化水素およびヘテロ環式化合物を含む有機化合物の種々のタイプを含む。特に有用な希釈剤は、例えば、ジオクチル−、ジエチル−およびジブチル−などのフタレート、鉱油、ミネラルスピリット、トリエチレングリコール、メチルノニルケトン、デカン酸およびオレイン酸ならびにデシルアルコールである。
【0055】
本発明による微孔質材料を調製する際に有用である結晶性ポリマーとブレンド用化合物のブレンドの幾つかの例には、ポリプロピレンと鉱油、ジオクチルフタレートまたはミネラルスピリット、ポリプロピレン−ポリエチレンコポリマーと鉱油、ポリエチレンと鉱油またはミネラルスピリット、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートとジエチルフタレート、ポリエステルエラストマーとジオクチルフタレート、およびナイロン6(ポリカプロラクタム)とトリエチレングリコールが挙げられる。
【0056】
ポリマーとブレンド用化合物の特定の組み合わせは、1種を上回るポリマー、すなわち、2種以上のポリマーおよび/または1種を上回るブレンド用化合物の混合物を含んでもよい。鉱油およびミネラルスピリットは、それらが典型的には炭化水素液のブレンドであるのでブレンド用化合物の混合物の例である。液体と固体のブレンドもブレンド用化合物として機能する。本発明の微孔質材料の生成を妨げないように、そして添加剤の好ましくない浸出をもたらさないようにポリマーが限定量の特定の従来の添加剤材料をポリマー中にブレンドされて含んでもよいことは理解されるべきである。
【0057】
ポリプロピレンおよび高密度ポリエチレンは特に有用である。ポリマーの混合物が加熱次第希釈剤と混和性であり、冷却次第相溶性混合物を形成するかぎり、ポリマーの混合物も用いてよい。高密度ポリエチレンフィルムがより低い使用温度を有する一方で、高密度ポリエチレンフィルムが特に「オイルアウト」フィルムにてより良好なハンドソフトさおよび耐引裂性をもたらすのでポリプロピレンフィルムより好ましい場合がある。
【0058】
ポリマーの混和性および相溶性は、熱力学と速度論の両方の考慮によって決定される。非極性ポリマーのための共通混和性予測変数は、溶解度パラメータまたはフローリ−ハギンズ相互作用パラメータの差である。混和性とは異なり、相溶性は厳密な熱力学パラメータの面から定義するのは困難である。溶融加工条件、混合度および拡散速度などの速度論因子が相溶性度も決定できるからである。
【0059】
相溶性ポリオレフィンブレンドの幾つかの例は、低密度ポリエチレンとエチレンプロピレンジエンターポリマー、低密度ポリエチレンとエチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリプロピレンとエチレンプロピレンゴム、ポリプロピレンとエチレンアルファオレフィンコポリマー、ポリプロピレンとポリブチレンである。
【0060】
相溶性は有用なポリマー濃度の範囲に影響を及ぼす。ポリマーが非相溶性である場合、組成のその範囲は非常に狭く、極めて低いポリマー濃度に限定され、そして本発明の物品を製造する際の最低の実際上の効用となりうる。しかし、ポリマーが相溶性である場合、共通溶媒は遥かにより高いポリマー濃度の組成領域にポリマーの混和性を促進することが可能であり、従って、本発明の物品を製造するために押出などの一般的加工技術の使用を可能にする。これらの条件下で、溶融物中のすべての成分は混和性であり、相分離温度より低く冷却すると結晶化沈殿によって相分離する。冷却の速度は非常に迅速であり(好ましくは、溶融ブレンドされた溶液が30秒以下後に相境界より下に冷えるように十分に)、相分離されたミクロドメインのサイズを最小化するとともに顕微鏡レベルでの均一性を提供するプロセス条件によって制御される。
【0061】
相溶性はフィルムの均一性にも影響を及ぼす。ポリマーの相溶性ブレンドから製造されるキャストフィルムは透明であり、それは顕微鏡レベルでの均一性を確認する。この均一性は成功する後加工のために非常に重要である。非相溶性ポリマーから製造されたより劣った均一性度のフィルムは多孔性をもたらすために延伸を用いる時に延伸中に容易に破壊する。短絡がセパレータを横切って発生する時に局地的過熱を防ぐために顕微鏡レベルでの信頼できるシャットダウン性能が必要である熱シャットダウンバッテリーセパレータなどの幾つかの用途においてもフィルムの均一性は重要である。
【0062】
微孔質物品または多層物品中の少なくとも1層の微孔質層は、ポリマーの溶融温度より高い温度で希釈剤成分と合わせた混合物を加熱することによりポリマー成分、すなわち、上述したポリマーまたはポリマー混合物を溶融ブレンドして溶液を形成することにより調製してもよい。
【0063】
本発明の微孔質材料の生成を妨げないように、そして添加剤の好ましくない浸出をもたらさないように微孔質物品は限定量の特定の他の添加剤材料も含んでもよい。こうした添加剤は、帯電防止材料、可塑剤、フルオロケミカル、UV吸収剤、核剤および吸湿性金属塩アルコキシドなどを含んでもよい。全添加剤含有率の量は、ポリマー混合物の重量の典型的には10%未満、好ましくは6重量%未満、より好ましくは2重量%未満である。
【0064】
特定の熱安定剤が難燃添加剤/相乗剤の組み合わせの有効性を下げ、よって微孔質物品の可燃性を増すことが見出された。これらの熱安定剤が相乗剤によって生成されたラジカルを捕捉することが考えられる。熱安定剤は好ましくは0.5重量%未満の量であるか、または追加の添加剤/相乗剤を是認してもよい。
【0065】
溶融物溶液は、ポリマー成分、希釈剤成分および難燃添加剤を押出機によって提供される攪拌などの攪拌下で混合し、混合物の温度が固−液相分離温度より高くなるまで加熱することにより調製される。この点で、混合物は溶融物溶液または単一相になる。一旦溶融物溶液を調製すると、その後、成形物品は、例えば押出機を用いる既知の方法によって形成される。
【0066】
本発明による好ましい物品は、シートまたはフィルムの形を取る。但し、他の物品形状は考慮されている。例えば、物品はチューブまたはフィラメントの形を取ってもよい。開示された方法により製造することができる他の形状は開示された発明内である積もりである。
【0067】
成形物品の冷却は押出機吐出のダイまたはダイ付近の押出機内で、あるいは好ましくはキャスティングホイール上に成形材料をキャスティングすることにより行われる。本発明の微孔質フィルムは、典型的には、模様付きドラム上にキャスティングすることにより冷却される。模様の中の突起は金属冷却ドラムと高温溶液(すなわち溶融物)との間のより少ない接触をもたらす。従って、平滑(模様付きでない)ドラムにより観察される冷却と比較した時に冷却を遅らせる。冷却は、希釈剤成分とポリマー成分との間で相転移を起こさせる。これはポリマー成分の結晶化沈殿によって起きて、ポリマードメインの網目を形成させる。
【0068】
成形材料(例えばオイルインキャストフィルム)は、この段階で無孔質であり、配向(延伸)、希釈剤除去またはそれらの組み合わせによって微孔質にされる。延伸は、隣接結晶化ポリマードメインを互いから分離して内部接続微小孔の網目を提供するために少なくとも1方向である。延伸は、長さオリエンタおよび/またはテンタ(すなわち下降ウェブ、交差ウェブまたは両方を配向させる)のいずれかでフィルムを引っ張ることにより達成してもよい。1を上回る方向にフィルムを引っ張る時、延伸度は各方向で同じかまたは異なってもよい。
【0069】
固−液相分離から形成された物品は配向の前に固体であり、一般に透明であり、結晶化された熱可塑性ポリマーの球晶の第1の相および希釈剤成分の第2の相の凝集体を含む。難燃添加剤および難燃相乗剤はポリマー成分および/または希釈剤成分に独立して溶解させてもよいか、または固体または液体としてマトリックスに分散させた難燃添加剤および/または難燃相乗剤の第3の相を形成してもよい。ポリマードメインは、球晶およびポリマーの球晶の凝集体として表現することが可能である。ポリマーの隣接ドメインは別個であるが、ポリマーの隣接ドメインは複数の連続ゾーンを有する。すなわち、ポリマードメインは、一般に希釈剤成分によって囲まれるか、または被覆されているが、完全にではない。相分離が起きていない隣接ポリマードメイン間の接触の領域が存在し、こうした連続ゾーンにおいて1ドメインから次の隣接ドメインまでポリマーの連続体が存在する。
【0070】
配向または延伸させると、ポリマードメインは引き離され、連続ゾーン中のポリマーを永続的に希釈し、よってポリマー球晶を相互接続するフィブリルを形成し、被覆された粒子間に微小空隙を形成し、相互接続微小孔の網目を作り、よって物品を永続的に半透明にする。配向または延伸させると、希釈剤成分は得られた熱可塑性ポリマードメインの表面上に少なくとも部分的に被覆されたままになるか、または得られた熱可塑性ポリマードメインの表面を少なくとも部分的に取り囲む。被覆の度合は、ポリマードメインの表面に向けた希釈剤の親和性、希釈剤が液体または固体であるかどうか、配向が被膜を取り除くか、または被膜を崩壊させるかどうか、および関連しうる他の要素に応じて異なる。ドメインは、配向後に通常は少なくとも部分的に被覆されている。ドメインの実質的にすべてはフィブリルによって接続されるように見える。微小孔のサイズは、延伸度、希釈剤、難燃添加剤および相乗剤成分の%、溶融物−冷却条件、希釈剤除去および熱安定化手順を変えることにより制御される。フィブリルはたいてい延伸によって破壊されるように見えないが、フィブリルはフィブリルの弾性限界を超えて永続的に延伸され、延伸力を解除した時にフィブリルの元の位置に弾性的に戻らないようになる。本明細書で用いられる「配向する」とは、物品の永久歪または永久伸びを導入するような弾性限界を超えるこうした延伸を意味する。引張下の間に物品をアニールするか、または熱固定する場合、弾性限界を下回る延伸も効果的である。
【0071】
上述したような熱相分離プロセスを開始するために、ブローフィルムダイまたはキャストフィルムダイおよびキャストホイールのいずれかを備えた押出機を用いることが可能である。これらの得られたフィルムは、一軸方式または2軸方式のいずれかで洗浄および/または延伸配向して、微孔質フィルムを生じさせることが可能である。更に、配向されたフィルムをアニールするか、または熱固定して、付与された配向を保持してもよい。これらの微孔質フィルムは、25〜1000秒/50ccの範囲内の空気流量/ガレー値および5,000〜6,000g/m2/日の範囲内の水蒸気透過率(MVTR)によって実証されるように多孔質と通気性の両方である。従って、フィルムは、多くの通気性被服用途およびバリアフィルム用途のために適する。
【0072】
プロセスは希釈剤除去工程を更に含んでもよい。これは、所望の多孔度を達成するために延伸フィルムまたは未延伸フィルムを用いて行うことが可能である。希釈剤の除去は、抽出、置換または他の既知法によって行ってもよい。希釈剤成分は、適するあらゆる溶媒、またはポリマー成分、難燃添加剤および難燃相乗剤のための更に非溶媒である置換剤によって除去してもよい。選択された溶媒中の希釈剤の混和度または溶解度は、選択された溶媒の有効性および希釈剤成分を完全にまたは部分的に除去するのに要する時間を決定する。置換剤を用いる場合、置換剤は、好ましくは、希釈剤成分を置換するとともに物品の難燃特性を強化することができる液体難燃添加剤から選択される。
【0073】
好ましくは、希釈剤は、コストの考慮および難燃添加剤および相乗剤を選択する際の融通性のゆえに微孔質物品中に保持される。除去されない場合、「オイルイン」微孔質物品は、好ましくは10重量部を上回る希釈剤(最も好ましくは15〜70重量部)の希釈剤を含有する。オイルアウト微孔質物品は、油除去後に典型的には10重量部未満の希釈剤を含有する。「オイルアウト」微孔質物品が必要な場合、難燃添加剤および難燃相乗剤は、希釈剤除去工程中に保持されるように選択してもよい。加工温度より高い融点を有する難燃添加剤および相乗剤は用いてもよく、油除去工程中に除去しなくてもよい小粒子として微孔質マトリックスに導入される。こうした添加剤は、デカブロモジフェニルオキシドなどの高融点有機化合物を含んでもよい。あるいは、添加剤および相乗剤は、希釈剤を除去するために用いられる溶媒に不溶性であるように選択してもよい。なお別案として、難燃添加剤および相乗剤は、従来の技術によってオイルアウト微孔質フィルムに吸収させてもよい。
【0074】
難燃添加剤または相乗剤が固−液相分離温度より下で溶融する時、難燃添加剤または相乗剤は冷却すると多くの場合希釈剤相中に残る。従って、難燃剤が抽出溶媒に混和性でも可溶性でもない場合でさえ実質的な量の希釈剤が除去される場合に難燃剤が非常に減少しうるので、多孔性は延伸を通して一般に達成するのがよい。しばしば、固−液相分離温度より下で溶融する難燃剤により製造された微孔質フィルムは、ポリマーマトリックス中に難燃剤粒子がないのでより薄いことが可能であり、より均質に見える。逆に、難燃添加剤および/または相乗剤が固−液相分離温度より上で溶融する時、それらは、冷却するとばらばらの粒子としてポリマーマトリックス中に残ることが多く、一般には油除去工程中に除去されない。
【0075】
希釈剤を除去する場合、得られた微孔質物品は様々な特定の機能のいずれかを提供するために種々の充填剤を吸収してもよく、よって独特の物品を提供する。例えば、吸収材料または充填剤は液体、溶媒溶液、溶媒分散液または固体であってもよい。こうした充填剤は、微孔質シートの多孔質構造内にこうした充填剤の分散液をもたらす多くの既知の方法のいずれかによって吸収してもよい。幾つかの吸収材料は、微孔質シート内に物理的に入れられる。場合によって、吸収材料としての2種以上の反応性成分の使用は、微孔質シート構造内での反応を可能にする。吸収材料の例には、難燃添加剤、難燃相乗剤、帯電防止剤、界面活性剤、臭気剤、酸化防止剤、UV安定剤ならびに活性炭、高分子塗料および顔料などの固体粒状材料が挙げられる。帯電防止剤または界面活性剤などの特定の材料は、充填剤のためのキャリアとして用いられる化合物または相溶性液体の除去なしで吸収されてもよい。
【0076】
本発明の難燃微孔質物品は少なくとも1層の追加の多孔質層または無孔質層と合わせて上述した微孔質材料の少なくとも1層を含んでもよい。例として、3層系において、上述した微孔質層は、好ましくは、追加の多孔質層または無孔質層によって挟まれた中心層である。多層物品の追加の層は、不織布スクリムまたはウェブ、織布またはスクリム、多孔質フィルムおよび無孔質フィルムを含んでもよい。こうした材料は、例えば、平滑ロールと金属ロールに面する材料を軟化させるために十分に加熱された(好ましくは表面上にエンボス模様を有する)第2のロールとの間のニップ内で微孔質フィルムおよびウェブを合わせてプレスすることにより微孔質フィルムに接着するか、積層するか、または別段に付着させてもよい。技術上知られているような他の接着手段も用いてよい。あるいは、材料は、感圧接着剤またはホットメルト接着剤などの接着剤によって接着させてもよい。
【0077】
微孔質物品は単一微孔質層を含んでもよいか、または上で定義された少なくとも1層の微孔質層を有する多層物品を含んでもよい。物品は、用途および要件に応じて追加の微孔質層または追加の無孔質層あるいは1層以上の多孔質層(ノンウーブン層など)を含んでもよい。
【0078】
多層微孔質フィルムは(AB)n構造を含んでもよく、A層および/またはB層のいずれかが最外層である(例えば、(AB)nA、(BA)nBまたは(AB)n)。こうした構造において、B層の各々は、各層において同じかまたは異なってもよい難燃添加剤および相乗剤の導入の結果として難燃特性を有し、A層の各々は、各層において同じかまたは異なってもよい難燃添加剤および相乗剤をもたない。「n」は0〜1000、好ましくは5〜200、最も好ましくは5〜50の整数である。特に好ましい実施形態において、微孔質層はA(BA)nBA多層構造で配列される。
【0079】
特に好ましい実施形態において、微孔質層はA(BA)nBA多層構造で配列される。ここで、Aは難燃添加剤も相乗剤も含まない微孔質層を表し、Bは難燃添加剤および相乗剤を含む微孔質層を表す。あるいは、Aは難燃相乗剤を含む微孔質層を表してもよく、Bは難燃添加剤を含む微孔質層を表す。
【0080】
本発明の多層微孔質フィルムは、例えば、最外層が好ましくは非難燃性で共押出によって直接的に調製することが可能である。最外層の一方または両方に難燃剤を導入すると、しばしば最外層の表面および/または機械的特性を劣化させうる。例えばハロゲン化有機難燃剤は微孔質フィルムの表面に移行する傾向がある場合があり、表面を例えば感圧接着剤による更なる被覆に適さなくする。あるいは、フィルムは、用途に応じて最外層の一方または両方が難燃剤層で製造することが可能である。
【0081】
微孔質フィルムは、押出(または多層物品のための共押出)の後、冷却して相転移を引き起こし、その後、配向させて多孔質フィルム構造を形成させることにより形成させてもよい。温度および他のプロセス条件は、用いられる材料のタイプおよび各層から望まれる特性に応じて異なり、当業者によって知られているか、または容易に決定される。共押出は、押出機吐出でフィードブロックまたはマルチマニホールドダイを用いてもよい。冷却は、好ましくは、多層フィルムをキャスティングホイールまたはドラム上にキャスティングすることにより行われる。更に、多層フィルムは積層手段によって製造することが可能である。少なくとも1層の難燃微孔質層を含む多層フィルムは、技術上周知されている様々な装置および多くの溶融加工技術(典型的には押出技術)を用いて調製してもよい。こうした装置および技術は、例えば、米国特許第3,565,985号明細書(シュレンク(Schrenk)ら)、同第5,427,842号明細書(ブランド(Bland)ら)、同第5,589,122号明細書(レオナルド(Leonard)ら)、同第5,599,602号明細書(レオナルド(Leonard)ら)および同第5,660,922号明細書(ヘリッジ(Herridge)ら)で開示されている。例えば、シングルマニホールドダイまたはマルチマニホールドダイ、フルムーンフィードブロック(ルイス(Lewis)ら)による米国特許第5,389,324号明細書に記載されたものなど)または他のタイプの溶融加工装置を必要な層の数および押し出される材料のタイプに応じて用いることが可能である。
【0082】
例えば、本発明の多層フィルムを製造する1つの技術は、米国特許第5,660,922号明細書(ヘリッジ(Herridge)ら)に記載された技術などの共押出技術を用いることが可能である。共押出技術において、溶融した種々のストリームは、押出ダイ出口に移送され、出口付近で合一する。押出機は溶融したストリームを押出ダイに送出するための事実上「ポンプ」である。特定の押出機は本方法において一般に決定的に重要ではない。多くの有用な押出機は知られており、一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機およびバッチオフ押出機などが挙げられる。従来の押出機は、デービス・スタンダード・エクストルーダーズ(Davis−Standard Extruders,Inc.)(コネチカット州ポーカツク(Pawcatuck,CT))、ブラック・クローソン(Black Clawson Co.)(ニューヨーク州フルトン(Fulton,NY))、ベルシュトッフ(Berstorff Corp.)(ケンタッキー州(KY))、ファレル(Farrel Corp.)(コネチカット州(CT))および森山マニュファクチャリング・ワークス(Moriyama Mfr.Works,Ltd.(日本国大阪(Osaka,Japan))などの様々な販売業者から市販されている。
【0083】
難燃添加剤および相乗剤は多層フィルムを難燃性にするのに十分な量で添加される。一般に、添加剤は各難燃層中で10重量部以下の量で添加され、相乗剤は0.1〜2重量部の量で添加される。好ましくは、添加剤は各難燃層中で少なくとも1〜10重量部の量で添加されるか、または一体化多層物品の1〜10重量部の量で添加される。難燃相乗剤は、一体化多層物品の一般には0.1〜2重量部の量で添加される。有利なことには、こうした多層構造は難燃効率を改善する。同じ難燃特性は単一層構造を基準としてより少ない量の難燃添加剤を用いて得ることが可能である。
【0084】
本発明の微孔質物品は、微孔質構造を用いてもよい様々な状況のいずれにおいても用いてよい。物品は、熱源または着火源に曝される可能性がある用途において特に有用である。微孔質物品に難燃添加剤を導入することにより、着火が困難であるとともに炎を遥かにより遅く伝播し、自己消火性でありうる多孔質フィルムは提供される。こうした用途には、衣類、壁バリア、屋根バリア(水蒸気透過性バリアなど)、電子デバイス(光反射フィルムおよび光分散フィルムなど)中の光学フィルム、印刷基材および電気絶縁が挙げられる。
【0085】
本発明の難燃微孔質フィルムは、屋根または外壁などの建築におけるバリアフィルム(例えば水蒸気バリアフィルム)として特に有用である。これらのフィルムは水蒸気がフィルムを通過することを可能にするが、液体水が通過しないことを可能にすることにより建物(またはその一部)を防湿性にすることが可能である。多くの場所において、建物材料は可燃性に関する益々厳しい制限を受けている。建築に関する法律はバリアフィルムが不燃性または防火性であることを要求しうる。フィルムは建物外部から覆いに、そして屋根の瓦、屋根板などの下に、または外壁の外部サイジング、屋根板またはパネルの下に取り付けられる。微孔質フィルムは単一層または多層であってもよく、好ましくは付加された強度または耐引裂性のためのスクリムまたはウェブを含んでもよい。フィルムは、釘、鋲、ステープルまたは接着剤などの従来のいずれかの手段によって外面に取り付けてもよい。
【0086】
本発明の微孔質物品は拡散反射面などの様々な光管理用途においても有用である。例えば、本発明の微孔質物品は、液晶表示装置(LCD)の後方反射面および発光ダイオード(LED)バックライト構造として用いてもよい。本発明の拡散反射材料は、サインキャビネット、光繊維、光コンジットの輝度を高めるためにも用いてよい。光拡散物品は、静的(グラフィックフィルムまたはトランスペアレンシーなど)またはスイッチ可能(液晶表示装置)のいずれかであってもよい例えば部分的透明画像のような物を照明する光の効率的な使用を高めるために光共振器を部分的に並べるためにも用いてよい。従って、本発明の拡散反射面フィルムに部分的に並べられる光共振器は、液晶表示装置構造(LCD)、照明、複写機、投影システムディスプレー、ファクシミリ装置、電子黒板、拡散光標準、および写真照明などのバックライト装置として、こうしたデバイス中で用いてもよい。光共振器は、サインキャビネットシステム、光コンジットまたは発光ダイオード(LED)を含む装置の一部としても用いてよい。
【0087】
従って、例えば、本発明の拡散反射物品は、液晶表示装置のために用いられる商用バックライトにおける後方反射面として特に有益であることが見出された。このタイプの用途において、フィルムは表示装置を照明している光源の直接後方に置かれる。多孔質フィルムは、表示装置および最後に観察者に向けて送られないすべての光を反射し戻すように機能する。多孔質フィルム後方反射面の散乱反射特性または拡散反射特性は、より総合的な拡散光源およびより均一に光る表示装置を提供するのも助け、国際公開第95/17699号パンフレットおよび米国特許第6,111,696号明細書に記載されたように拡散反射面および分極ランダマイザとして適する。本発明の難燃拡散反射材料を含むこうした物品は本発明の更なる態様である。
【0088】
固体/液体プロセスにより製造された拡散反射面から生じる独特のモルホロジは、高い拡散反射および難燃性を有する実用的反射面を製造する際に特に有用である。固体媒体のモルホロジは、溶液からポリマーおよび希釈剤を相分離することにより固体媒体が形成されるので小さい寸法を有する。物品は特定のサイズの固体および空気領域(すなわち空隙空間)を有し、拡散で反射されるべく望まれる波長において放射線を吸収しない材料を含む。従って、可視光380〜730ナノメートルの拡散反射のために、好まれるポリマー材料は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、エチレンと酢酸ビニルのコポリマーまたはそれらの相溶性混合物である。また、希釈剤および難燃剤が様々な量で存在してもよいので、それらは非吸収性であるのもよい。
【0089】
本発明は、自動車の座席区画などの周囲環境内の温度変動および湿度変動を正確に測定する電気センサの能力を大幅に損なわずに実質的に液体不浸透性の環境内に可撓性電極、発泡体基材および他の電気部品を囲う際に用いるために適する難燃性通気性水分バリアも提供する。本発明は、水蒸気がバリアを横切って輸送され、密閉座席センサマットアセンブリ内で迅速に平衡に達することを可能にするとともに、乗員検出器の温度および湿度補償が正確に機能することを可能にするのに十分に高い水蒸気透過率(MVTR)を有する本難燃微孔質フィルムまたは物品を含む。本発明の通気性水分バリアは、自動車をスタートし、エアコンまたはヒーティングのいずれかを利用するとすぐに乗員区画環境条件の急速な変化をより良く追跡するためにセンサーマット内の迅速な温度と湿度の平衡を可能にするのに十分に高いMVTRを提供する。
【0090】
自動車用途において用いるための座席センサマットアセンブリの1例において、アセンブリーは、連続気泡可撓性ポリウレタン発泡体コアの上表面および底表面に接着剤で接着させた多くの導電性センサ細片からなる。各センサ細片は、乗員のサイズおよび存在に基づいてセンサ細片の各々の周りの電場のインピーダンス変化を測定することにより乗員検出器を運転する電子制御装置に接続される。座席センサマットアセンブリは、自動車座席の底クッションのくりぬき部分に導入されるべく設計してもよい。
【0091】
乗員検出器が電場検出技術を用いるので、座席上にこぼれた水または他の液体は適切に機能する検出器の能力を損ないうる。水および他の導電性液は、導電性液が座席センサマットアセンブリ上の隣接導電性細片間で結合および短絡をもたらすのでシステムが正確に乗員変化を検出することを妨げる。
【0092】
この問題の1つの解決策は液体不浸透性高分子フィルム内に座席センサマットアセンブリを完全に囲うことであろう。これは、水を締め出すために無孔質非通気性のポリマーフィルムで座席センサマットアセンブリを包むか、または被覆するのと同じである。しかし、この解決策は、座席センサマットアセンブリ内部および自動車の周囲乗員区画内の非常に困難な環境条件、すなわち温度および湿度によって作られることによる別の問題を提起する。導電性細片を取り巻く環境の材料および気体の誘電特性は温度および湿度に依存する。液体と気体の両方に不浸透性である方式で全体のアセンブリをシールするのは電場データの温度および湿度の補償を大幅により困難にする。この解決策は、座席センサマットアセンブリ内部と外部的に乗員区画内の両方で温度および湿度センサを最終的に必要とする。シール材料内部に閉じ込められている空気が逃げることができず、座席が圧縮されるにつれて空気が圧縮される時に快適性の問題も生じうる。あらゆる水分が座席センサマットアセンブリ内部に閉じ込められることになれば、水分が黴および他の好ましくない状態をアセンブリ内部にもたらすことが全く起きうることも注目に値する。追加の快適性の問題は、乗員に接触している座席トリム内に閉じ込められた汗から生じうる。
【0093】
従って、(本発明の難燃微孔質フィルムまたは物品を含む)通気性水分バリアは乗員検出器において多くの利点を提供する。通気性防湿性布地は、水吸収を防ぐ連続気泡発泡体の確実なシールをもたらすために用いることが可能である。更に、通気性は、座席センサマットアセンブリと乗員区画との間の均一な温度および湿度環境を可能にする。この均一な環境条件は、アセンブリ自体と乗員区画の両方の環境を特性分析するために単一の温度/湿度センサを座席センサマットアセンブリに導入することを可能にする。更に、電場データの温度および湿度の補償は、座席センサマットアセンブリ、座席トリム材料および乗員区画内の材料および気体の一定誘電特性のゆえに、より容易になる。通気性水分バリアは、あらゆる水分が座席センサマットアセンブリ、シートトリム材料またはシートバン中に集まるか、または黴を発生させないように有利に防ぐことが可能である。乗員が座った時に座席センサマットアセンブリから十分な量の空気が逃げることを通気性膜が通常は可能にしないけれども、汗抜きをアセンブリの底面上に容易に導入してもよく、座席バンにセンサマットを接着させるために用いられる転写接着剤は、水分がアセンブリに入るのを防ぐために汗抜きの両端で更に用いてもよい。水分バリアに関する更なる詳細は、譲受人の同時係属特許米国特許出願第10/196,997号明細書において見られる。
【実施例】
【0094】
本発明を以下の実施例により更に例示する。実施例は本発明の範囲を限定する積もりはない。実施例において、すべての部、比および百分率は特に指示がない限り重量による。実施例の難燃フィルムを特性分析するために以下の試験方法を用いた。
【0095】
試験方法
水平燃焼
水平燃焼試験フェデラル・モータ・ビヒクル・セーフティ・スタンダード(Federal Motor Vehicle Safety Standard)571.302、内装材料の燃焼性に準拠してフィルムの燃焼特性を評価した。幅102mm×長さ356mmの細片にフィルムサンプルを切断した。2つの細片をフィルムの機械方向に切断し、試験した。各細片をU字型支持具(幅51mm×長さ330mm、内部寸法)に取り付け、試験片の開放端の底端をブンゼンバーナーチップの中心より19mm上に配置するように水平位置で保持した。バーナーへの空気入口を閉じることでバーナー炎を38mmに設定した。炎を滑らせてサンプルの開放端に入れ、15秒にわたり当てた。炎前線が試験片の開放端から38mmの点に達したなら、タイマーをスタートさせた。試験片のクランプ端から38mmの点に炎が達する時間を記録した。炎が規定終点に達しなかった場合、炎が止まった時の点で時間を記録した。燃焼速度を2つの試験細片の平均から計算した。(a)燃焼速度が102mm/分を超えなかった場合、または(2)材料が燃焼をやめた後、材料が測時のスタートから60秒にわたり燃焼し、測時がスタートした点から51mmを上回って燃焼しなかった場合、材料は571.302規格に合格したとみなした。
【0096】
ガレー空気流量
この試験は、ASTM D−726方法Bに準拠した50cm3の空気がフィルムを通過するのに要する時間(秒)の測定である。試験の開始から100秒後にガレータイマーが開始しない場合、10,000秒/50cm3を上回る値が指定される。
【0097】
用いた材料
DS 5D45:ポリプロピレンホモポリマー、MFI0.7g/分(ASTM D123 8、条件1)(ミシガン州ミッドランドのダウ・ケミカル(Dow Chemical Co.(Midland,MI)))
51S07A:ポリプロピレンホモポリマー、MFI0.8g/分(ASTM D123 8、条件1)(テキサス州ヒューストンのイクイスター・ケミカル(Equistar Chemical Co.(Houston,TX)))
「ミラド(MILLAD)」3988:核剤、3,4−ジメチルベンジリデンソルビトール(サウスカロライナ州インマンのミリケン・ケミカル(Milliken Chemical Co.(Inman,SC)))
鉱油:「スーペラ・ホワイト(Superla White)」No.31、粘度100センチストークス(ASTM D445、40℃で)、比重0.867(アモコ・ケミカル(Amoco Chemical Co.)
DE83R:デカブロモジフェニルオキシド、平均粒子サイズ4マイクロメートル(インジアナ州ウェストラファイテのグレート・レークス・ケミカル(Great Lakes Chemical(West Lafayette,IN)))
DE79:オクタブロモジフェニルオキシド(インジアナ州ウェストラファイテのグレート・レークス・ケミカル(Great Lakes Chemical(West Lafayette,IN)))
NOR−116:低分子量n−アルコキシヒンダードアミン、融点110〜125℃、沸点260℃、密度1.10(ニューヨーク州タリータウンのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown,NY)))
FR−370:トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、脂肪族臭素化難燃剤、臭素含有率79%、融点181℃、密度2.30(イスラエル国ビールシバのデッド・シー・ブロミン(Dead Sea Bromine Group(Beer Shiva(Israel)))
「フィレブロック(FYREBLOC)」203:80.75%のDE−79、15%のパラフィンワックスおよび4.25%の「アノックス(Anox)」20からなるマスターバッチコンセントレート(インジアナ州ウェストラファイテのグレート・レークス・ケミカル(Great Lakes Chemical(West Lafayette,IN)))
「ファイアマスター(FIREMASTER)」2100:デカブロモジフェニルエタン(インジアナ州ウェストラファイテのグレート・レークス・ケミカル(Great Lakes Chemical(West Lafayette,IN)))
「イルガノックス(IRGANOX)」1010:ペンタエリトリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(ニューヨーク州タリータウンのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown,NY)))
「アノックス(ANOX)」20:ステリックヒンダードフェノール酸化防止剤(インジアナ州ウェストラファイテのグレート・レークス・ケミカル(Great Lakes Chemical(West Lafayette,IN)))
【0098】
比較例C1
DS 5D45ポリプロピレンをポリプロピレン/核剤コンセントレート(PP97.5%、MILLAD3988・2.5%)と混合し、40mm二軸スクリュー押出機のホッパーにフィードした。62.5重量%のポリプロピレン、37.5重量%の鉱油および800パーツパーミリオンの核剤の組成物を提供する比率で注入口を通して鉱油希釈剤を押出機に導入した。難燃剤を用いなかった。成分を溶融させるために組成物を押出機内で271℃に迅速に加熱し、その後、バレルの残りを通して温度を204℃に冷却し204℃で維持した。メルトポンプを用いて溶融した組成物を押出機から100マイクロメートルのフィルターを通してネックチューブを経由して、その後、コートハンガースリットダイに送った。その後、メルトカーテンをクロムロール(65℃)上にキャスティングし、その後、フィルム一巻きに巻き取った。後続工程において、「キリオン(Killion)」長さオリエンタ(52℃)および「セリア(Cellier)」テンタ(115℃〜130℃)を用いて、キャスティングしたフィルムを機械方向と交差方向の両方に1.7対1で逐次延伸して、厚さ約44マイクロメートルの不透明微孔質フィルムを形成させた。
【0099】
実施例1〜12
難燃剤および他の添加剤を種々の百分率で添加したことを除き、上の比較例C1のように微孔質フィルムを調製した。添加剤を鉱油に分散させて、適切な重量%を提供した。フィルムの厚さは40マイクロメートル〜48マイクロメートルの範囲であった。フィルムの組成を以下の表1に示している。物理的特性および燃焼試験データを表2に示している。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
実施例13〜20
類似のプロセス条件を用いて成分を溶融混合するために25mm二軸スクリュー押出機を用いたことを除き、上の実施例1〜12のように微孔質フィルムを調製した。固体非溶融性難燃剤をNOR−116相乗剤と合わせて種々の百分率で用いた。添加剤を鉱油に分散させて、適切な重量%を提供した。酸化防止剤を組成物に添加しなかった。フィルムの厚さは40マイクロメートル〜48マイクロメートルの範囲であった。フィルムの組成を以下の表3に示している。燃焼試験データを表4に示している。
【0103】
比較例C6〜C9
相乗剤を用いなかったことを除き、実施例13〜20のように微孔質フィルムを調製した。
【0104】
【表3】

【0105】
【表4】

【0106】
実施例21、比較例C10
FR−370難燃剤をNOR−116相乗剤と合わせて、およびNOR−116相乗剤なしで用いたことを除き、上の実施例13〜20のように微孔質フィルムを調製した。酸化防止剤を組成物に添加しなかった。フィルムの組成を以下の表5に示している。燃焼試験データを表6に示している。
【0107】
【表5】

【0108】
【表6】

【0109】
実施例22〜23、比較例C11〜C15
DE−79難燃剤をNOR−116相乗剤ありとNOR−116相乗剤なしで種々組み合わせて、上の実施例13〜20のように微孔質フィルムを調製した。酸化防止剤を組成物に添加しなかった。フィルムの組成を以下の表7に示している。物理的特性および燃焼試験データを表8に示している。
【0110】
【表7】

【0111】
【表8】

【0112】
実施例24〜29、比較例C16〜C19
FYREBLOC203コンセントレートおよび相乗剤を種々の百分率で添加したことを除き、上の実施例1〜12のように微孔質フィルムを調製した。MILLAD3988核剤の濃度は0.08%であった。フィルムの厚さは40マイクロメートル〜48マイクロメートルの範囲であった。フィルムの組成を以下の表9に示している。燃焼試験データを表10に示している。
【0113】
【表9】

【0114】
【表10】

【0115】
実施例30
本発明の難燃フィルムを積層構造中で使用できることを実証するために、PAM600スプレーメルトガン(ノースカロライナ州シャーロットのファースニング・テク(Fastening Tech Inc.(Charlotte,NC)))で被着させる汎用3M6111ホットメルト接着剤(ミネソタ州セントポールのスリーエム(3M Company(St.Paul,MN)))を用いて20グラム/平方メートルのポリプロピレンスパンボンドノンウーブン(ニューヨーク州グレートネックのファースト・クォリティ・ノンウーブン(Great Neck,NY11020)))に実施例5のフィルムを接着剤で積層した。最初に接着剤を176度に加熱し、次に、ノンウーブン上に円形模様に噴霧した。その後、難燃微孔質フィルムを直ちにノンウーブン上に置き、手持ち式ロールでロール掛けした。6つのサンプルを用いて積層体の燃焼速度を試験した。5つのサンプルは着火しなかった。6番目のサンプルは自己消火した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)20〜90重量部の結晶性熱可塑性ポリマー成分、
(b)固−液相分離温度より高い温度で前記ポリマー成分と混和性であるとともに前記固−液相分離温度より低く冷却すると結晶化分離を通して前記ポリマー成分から相分離することができる0.1〜70重量部の希釈剤成分、
(c)1〜10重量部の難燃添加剤および
(d)0.1〜2重量部のヒンダード(シクロ)アルコキシアミン相乗剤
を含む微孔質物品。
【請求項2】
前記ヒンダードアミン相乗剤は式R1O−NR23
(式中、R1は、1個以上のヒドロキシ基で置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはそれらの組み合わせであり、
2およびR3は独立してアルキル基、シクロアルキル基、芳香族基であり、1個以上のヒドロキシ基で置換されていてもよく、R2およびR3は合一して複素環を形成してもよく、R2およびR3の少なくとも1個は窒素原子に対してアルファ位の第二炭素原子または第三炭素原子を有する)
の部分を含む、請求項1に記載の微孔質物品。
【請求項3】
前記ヒンダードアミン相乗剤は窒素原子に対してアルファ位の2個の第二炭素原子または第三炭素原子を有する第二アミンまたは第三アミンである、請求項1に記載の微孔質物品。
【請求項4】
前記ヒンダードアミンはテトラアルキルピペリジニル部分を含む、請求項3に記載の微孔質物品。
【請求項5】
前記ヒンダードアミンはテトラアルキルピペリジニル側基を有するポリマーである、請求項3に記載の微孔質物品。
【請求項6】
10重量部を上回る希釈剤を含む、請求項1に記載の微孔質物品。
【請求項7】
15〜70重量部の希釈剤を含む、請求項1に記載の微孔質物品。
【請求項8】
前記ポリマー成分は、ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー、ポリオレフィンブレンドまたはそれらの混合物である、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記ポリオレフィンは、ポリプロピレンまたは高密度ポリエチレンである、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
前記難燃添加剤は、ハロゲン化有機難燃剤および有機燐含有難燃剤の群から選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項11】
請求項1に記載の微孔質材料の少なくとも1層の層を含む多層微孔質フィルム。
【請求項12】
不織布、織布、多孔質フィルムおよび無孔質フィルムからなる群から選択された少なくとも1層の追加の層を更に含む、請求項11に記載の多層フィルム。
【請求項13】
(AB)nA構造
(式中、各A層は非難燃層であり、各B層は難燃層であり、nは2〜50の整数である)
を有する、請求項11に記載の多層フィルム。
【請求項14】
微孔質物品を製造する方法であって、
(a)20〜90重量部のポリマー成分、固−液相分離温度より高い温度で前記ポリマー成分と混和性である15〜70重量部の希釈剤成分、1〜10重量部の難燃添加剤および0.1〜2重量部のヒンダードアミン相乗剤を含む溶液を形成するために溶融ブレンドする工程、
(b)前記溶融ブレンドされた溶液の成形物品を形成する工程、
(c)前記成形物品を冷却する工程であって、相転移が前記ポリマー成分の結晶化沈殿を通して前記希釈剤成分と前記ポリマー成分との間で起きる固−液相分離温度より低い温度に前記成形物品を冷却してポリマードメインの網目を形成する工程、
(d)前記希釈剤の少なくとも1部を除去することおよび少なくとも1方向に前記物品を配向させて隣接結晶化ポリマードメインを互いから分離して、前記ポリマードメイン間に相互接続された微小孔の網目を提供することから選択された方法によって多孔性を作る工程
を含む方法。
【請求項15】
不織布、織布、多孔質フィルムおよび無孔質フィルムからなる群から選択されたウェブに前記微孔質ポリマーフィルムを接着する工程を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
不織布、織布、多孔質フィルムおよび無孔質フィルムからなる群から選択されたウェブに微孔質ポリマーフィルムを接着する工程を更に含む方法であって、平滑ロールと、その表面上にエンボス模様を有し、エンボスロールに面する材料を軟化させるために十分に加熱されたロールとの間のニップ内で前記微孔質フィルムおよび前記ウェブを合わせてプレスすることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記形成工程は、溶融加工性有機高分子材料を同時に共押出して、少なくとも1層は微孔質難燃フィルム層を含む有機高分子材料の少なくとも2層の実質的に隣接する層の一体化構造を形成することを更に含む、請求項14に記載の多層微孔質フィルムを調製する方法。

【公表番号】特表2007−518832(P2007−518832A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517146(P2006−517146)
【出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/016564
【国際公開番号】WO2005/005526
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】