難燃及び吸音部材
【課題】難燃性と吸音性に優れ、特に接着剤やバインダーが不要で、環境負荷に優しく安価に製造できる難燃及び吸音部材の提供を目的とする。
【解決手段】パルプモールド中に、質量%で30〜60%の珪藻土を含有していることを特徴とする。
パルプモールド中に珪藻土を含有させたのでパルプ繊維の自己接着性を利用して珪藻土をからませることができるので難燃性が付与され、原材料の全てが天然材料なので環境負荷にも優しい。
【解決手段】パルプモールド中に、質量%で30〜60%の珪藻土を含有していることを特徴とする。
パルプモールド中に珪藻土を含有させたのでパルプ繊維の自己接着性を利用して珪藻土をからませることができるので難燃性が付与され、原材料の全てが天然材料なので環境負荷にも優しい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規難燃及び吸音部材に関し、特にパルプモールドを応用し製造したものである。
【背景技術】
【0002】
パルプモールドは古紙を水に溶かし、金網付きの成形金型にて抄き上げるモールド成型品であり、パルプ繊維同士の自己接着性を利用していることから糊や接着剤が不要であるため古紙のリサイクルのみならずに製造された製品そのものが環境負荷に優しい特徴を有している。
また、原料となる古紙は新聞、雑誌、段ボール紙、OA用紙等種類を選ばずに利用できる利点もある。
しかし、紙を原材料としていることから、燃えやすい欠点があるために、これまで主に梱包材に使用されており、建築材や構造材に使用することはできない。
【0003】
一方、珪藻土は天然材料であり、不燃、耐火性があることから断熱材として利用されている。
しかし、例えば特開2007−153680号公報に開示するように、珪藻土を建材表面に固着させるには接着剤となるバインダーが必要であり、施工性に劣るものである。
【0004】
【特許文献1】特開2007−153680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、難燃性と吸音性に優れ、特に接着剤やバインダーが不要で、環境負荷に優しく安価に製造できる難燃及び吸音部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る難燃及び吸音部材は、パルプモールド中に、質量%で30〜60%の珪藻土を含有していることを特徴とする。
パルプモールド中に多孔質の珪藻土が含有しているので調湿性を有しているだけでなく、吸音性にも優れる。
珪藻土には自然乾燥させたものと、約800℃で焼成したものが知られているが多孔率の高い自然乾燥品の方が好ましい。
パルプモールドは金網付きの金型で減圧吸引等にて抄き上げる工法であるから、成形表面(金型に付着しない面)は凹凸があり、それだけでも吸音性があるが、成形金型に凹凸を形成し、パルプモードの表面部に凹凸を形成してやるとより吸音性が向上する。
凹凸形状は、反射吸音性を考えると、円錐形状や角錐形状に近似したものがよく、モールド成形性を確保する観点から頂部がつぶれた円錐台や角錐台に近い形状が好ましい。
さらには、円錐台、角錐台の頂部に小さな穴を開けてもよい。
【0007】
古紙のみを原料とするパルプモールドでは燃えやすいが、これに珪藻土をからませることで、何ら接着剤やバインダーを用いることなく建築材や構造材に成形できるとともに難燃性が向上する。
従って、紙材料に対して珪藻土の割合が少ないと難燃効果が弱くなり、逆に珪藻土の割合が多いとモールド成形が困難になるため、珪藻土の含有量はモールド成形品全体の質量に対して30〜60%の範囲が好ましい。
なお、要求される難燃レベルが低い場合には珪藻土の混合下限は10%レベルであってもよい。
【0008】
本発明に係る難燃及び吸音部材に適した製造方法としてはパルプモールド中に、質量%で30〜60%の珪藻土が含有するように、古紙を水に溶かしパルプ状にした中に珪藻土を混合し、金網付の金型で抄き上げ、次に乾燥させることを特徴とする。
本発明は、パルプモールド中に珪藻土をからませるのが目的であり、この目的が達成できるものであれば成形方法を限定するものではない。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る難燃及び吸音部材にあっては、パルプモールド中に珪藻土を含有させたのでパルプ繊維の自己接着性を利用して珪藻土をからませることができるので難燃性が付与され、原材料の全てが天然材料なので環境負荷にも優しい。
また、パルプモールドは凹凸成形性に優れるので吸音効果も高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
珪藻土を混合した古紙パルプを用いて試作評価したので比較品と対応して、以下説明する。
今回の評価に用いた難燃及び吸音部材の形状を図1に示す。
図1(a)は、表面部に四角錐台状の凹凸形状を有し、図1(b)はこの凸部の頂面に直径約2mmの穴2を4つ開けたものである。
本実施例で示した凹凸形状は略四角錐台形状になっているが、凹凸形状はこれに限定されるものではなく、吸音特性に応じて設計される。
同様に、穴の形状、大きさ、数等も目的に応じて設定できる。
古紙を水に溶かし、これに古紙質量:珪藻土を1.0:0.8の割合になるように自然乾燥珪藻土を混合撹拌した。
これを金網付金型で吸引成形し、乾燥機にて乾燥させて、図1(a)の試験品A1及び穴2を開けて試験品A2を製作した。
比較例として古紙のみで図1(a),(b)の試験品B1,B2をそれぞれ製作した。
【0011】
また、市販されているガラスウール(32kg/m3)も合せて評価した。
(測定方法)
残響室内に試料がない場合(空室状態)と試験片がある場合のそれぞれの残響時間を測定し、吸音率を求めた。
(残響室主要仕様)
室内寸法 W;1,350×D;2,800×H;2,500(mm)
床面積 3.78m2
室容積 9.45m3
室内暗騒音 30dB[A]
(測定サンプル)
A1,A2:本発明品
B1,B2:珪藻土を含有しないパルプモールド
C:ガラスウール品(表面クロス有り)
試験片の大きさはいずれも1,300mm×900mmである。
また、約50mmの高さに支持材で浮かせて測定した。
その測定結果を図2〜図10に示す。
本発明品A1は500ヘルツ付近で残響時間がやや長く、吸音率が低下していたが、頂部に直径2mm穴を4つ開けた本発明品A2は500ヘルツ付近の吸音率が改善されている。
B1(穴なし)、B2(穴あり)の珪藻土を含有しないパルプモールドにおいても同様の吸音特性を示し、珪藻土含有により吸音特性が低下しないことが確認でき、市販のガラスウールCと同レベルであった。
本発明品は市販されているガラスウールよりも安価であり、ガラスウールは切断すると繊維の鋭利な先が出るために取り扱いが大変であるのに対して、本発明品は、切断しやすく、取り扱いも容易である。
次に、防炎性の評価した結果を図11に示す。
試験方法は、消防法施行規則(昭和36年4月1日自治省令第6号)に基づいて、45°エアーミックスバーナー法(温度20℃、湿度50%RH)によった。
この結果、珪藻土の含有率を20%,40%,60%と増大させるとこれに比例して難燃性が向上し、20%のものは「炭化距離」基準をクリアーするものの、「残炎時間」がやや基準未達であったが、40%,60%ものは両方の基準を大きくクリアーしている。
これにより、本発明に係る難燃及び吸音部材は工場における難燃防音壁や建築物における難燃防音パネルとしての応用が可能である。
壁材等にするには、本発明で得られた珪藻土含有パルプモールドを枠組したり、支持材で裏打ちするとよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る難燃及び吸音部材の例を示す。
【図2】本発明品A1の残響時間測定結果を示す。
【図3】本発明品A1の残響室法吸音率を示す。
【図4】本発明品A2の残響時間測定結果を示す。
【図5】本発明品A2の残響室法吸音率を示す。
【図6】珪藻土を含有しないパルプモールドB1の残響時間測定を示す。
【図7】珪藻土を含有しないパルプモールドB1の残響室法吸音率を示す。
【図8】珪藻土を含有しないパルプモールドB2の残響時間測定を示す。
【図9】珪藻土を含有しないパルプモールドB2の残響室法吸音率を示す。
【図10】ガラスウール品の残響時間測定結果を示す。
【図11】防火性試験結果を示す。
【符号の説明】
【0013】
1,1a 難燃及び吸音部材
2 穴
【技術分野】
【0001】
本発明は新規難燃及び吸音部材に関し、特にパルプモールドを応用し製造したものである。
【背景技術】
【0002】
パルプモールドは古紙を水に溶かし、金網付きの成形金型にて抄き上げるモールド成型品であり、パルプ繊維同士の自己接着性を利用していることから糊や接着剤が不要であるため古紙のリサイクルのみならずに製造された製品そのものが環境負荷に優しい特徴を有している。
また、原料となる古紙は新聞、雑誌、段ボール紙、OA用紙等種類を選ばずに利用できる利点もある。
しかし、紙を原材料としていることから、燃えやすい欠点があるために、これまで主に梱包材に使用されており、建築材や構造材に使用することはできない。
【0003】
一方、珪藻土は天然材料であり、不燃、耐火性があることから断熱材として利用されている。
しかし、例えば特開2007−153680号公報に開示するように、珪藻土を建材表面に固着させるには接着剤となるバインダーが必要であり、施工性に劣るものである。
【0004】
【特許文献1】特開2007−153680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、難燃性と吸音性に優れ、特に接着剤やバインダーが不要で、環境負荷に優しく安価に製造できる難燃及び吸音部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る難燃及び吸音部材は、パルプモールド中に、質量%で30〜60%の珪藻土を含有していることを特徴とする。
パルプモールド中に多孔質の珪藻土が含有しているので調湿性を有しているだけでなく、吸音性にも優れる。
珪藻土には自然乾燥させたものと、約800℃で焼成したものが知られているが多孔率の高い自然乾燥品の方が好ましい。
パルプモールドは金網付きの金型で減圧吸引等にて抄き上げる工法であるから、成形表面(金型に付着しない面)は凹凸があり、それだけでも吸音性があるが、成形金型に凹凸を形成し、パルプモードの表面部に凹凸を形成してやるとより吸音性が向上する。
凹凸形状は、反射吸音性を考えると、円錐形状や角錐形状に近似したものがよく、モールド成形性を確保する観点から頂部がつぶれた円錐台や角錐台に近い形状が好ましい。
さらには、円錐台、角錐台の頂部に小さな穴を開けてもよい。
【0007】
古紙のみを原料とするパルプモールドでは燃えやすいが、これに珪藻土をからませることで、何ら接着剤やバインダーを用いることなく建築材や構造材に成形できるとともに難燃性が向上する。
従って、紙材料に対して珪藻土の割合が少ないと難燃効果が弱くなり、逆に珪藻土の割合が多いとモールド成形が困難になるため、珪藻土の含有量はモールド成形品全体の質量に対して30〜60%の範囲が好ましい。
なお、要求される難燃レベルが低い場合には珪藻土の混合下限は10%レベルであってもよい。
【0008】
本発明に係る難燃及び吸音部材に適した製造方法としてはパルプモールド中に、質量%で30〜60%の珪藻土が含有するように、古紙を水に溶かしパルプ状にした中に珪藻土を混合し、金網付の金型で抄き上げ、次に乾燥させることを特徴とする。
本発明は、パルプモールド中に珪藻土をからませるのが目的であり、この目的が達成できるものであれば成形方法を限定するものではない。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る難燃及び吸音部材にあっては、パルプモールド中に珪藻土を含有させたのでパルプ繊維の自己接着性を利用して珪藻土をからませることができるので難燃性が付与され、原材料の全てが天然材料なので環境負荷にも優しい。
また、パルプモールドは凹凸成形性に優れるので吸音効果も高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
珪藻土を混合した古紙パルプを用いて試作評価したので比較品と対応して、以下説明する。
今回の評価に用いた難燃及び吸音部材の形状を図1に示す。
図1(a)は、表面部に四角錐台状の凹凸形状を有し、図1(b)はこの凸部の頂面に直径約2mmの穴2を4つ開けたものである。
本実施例で示した凹凸形状は略四角錐台形状になっているが、凹凸形状はこれに限定されるものではなく、吸音特性に応じて設計される。
同様に、穴の形状、大きさ、数等も目的に応じて設定できる。
古紙を水に溶かし、これに古紙質量:珪藻土を1.0:0.8の割合になるように自然乾燥珪藻土を混合撹拌した。
これを金網付金型で吸引成形し、乾燥機にて乾燥させて、図1(a)の試験品A1及び穴2を開けて試験品A2を製作した。
比較例として古紙のみで図1(a),(b)の試験品B1,B2をそれぞれ製作した。
【0011】
また、市販されているガラスウール(32kg/m3)も合せて評価した。
(測定方法)
残響室内に試料がない場合(空室状態)と試験片がある場合のそれぞれの残響時間を測定し、吸音率を求めた。
(残響室主要仕様)
室内寸法 W;1,350×D;2,800×H;2,500(mm)
床面積 3.78m2
室容積 9.45m3
室内暗騒音 30dB[A]
(測定サンプル)
A1,A2:本発明品
B1,B2:珪藻土を含有しないパルプモールド
C:ガラスウール品(表面クロス有り)
試験片の大きさはいずれも1,300mm×900mmである。
また、約50mmの高さに支持材で浮かせて測定した。
その測定結果を図2〜図10に示す。
本発明品A1は500ヘルツ付近で残響時間がやや長く、吸音率が低下していたが、頂部に直径2mm穴を4つ開けた本発明品A2は500ヘルツ付近の吸音率が改善されている。
B1(穴なし)、B2(穴あり)の珪藻土を含有しないパルプモールドにおいても同様の吸音特性を示し、珪藻土含有により吸音特性が低下しないことが確認でき、市販のガラスウールCと同レベルであった。
本発明品は市販されているガラスウールよりも安価であり、ガラスウールは切断すると繊維の鋭利な先が出るために取り扱いが大変であるのに対して、本発明品は、切断しやすく、取り扱いも容易である。
次に、防炎性の評価した結果を図11に示す。
試験方法は、消防法施行規則(昭和36年4月1日自治省令第6号)に基づいて、45°エアーミックスバーナー法(温度20℃、湿度50%RH)によった。
この結果、珪藻土の含有率を20%,40%,60%と増大させるとこれに比例して難燃性が向上し、20%のものは「炭化距離」基準をクリアーするものの、「残炎時間」がやや基準未達であったが、40%,60%ものは両方の基準を大きくクリアーしている。
これにより、本発明に係る難燃及び吸音部材は工場における難燃防音壁や建築物における難燃防音パネルとしての応用が可能である。
壁材等にするには、本発明で得られた珪藻土含有パルプモールドを枠組したり、支持材で裏打ちするとよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る難燃及び吸音部材の例を示す。
【図2】本発明品A1の残響時間測定結果を示す。
【図3】本発明品A1の残響室法吸音率を示す。
【図4】本発明品A2の残響時間測定結果を示す。
【図5】本発明品A2の残響室法吸音率を示す。
【図6】珪藻土を含有しないパルプモールドB1の残響時間測定を示す。
【図7】珪藻土を含有しないパルプモールドB1の残響室法吸音率を示す。
【図8】珪藻土を含有しないパルプモールドB2の残響時間測定を示す。
【図9】珪藻土を含有しないパルプモールドB2の残響室法吸音率を示す。
【図10】ガラスウール品の残響時間測定結果を示す。
【図11】防火性試験結果を示す。
【符号の説明】
【0013】
1,1a 難燃及び吸音部材
2 穴
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプモールド中に、質量%で30〜60%の珪藻土を含有していることを特徴とする難燃及び吸音部材。
【請求項2】
表面部に凹凸形状を形成してあることを特徴とする請求項1記載の難燃及び吸音部材。
【請求項3】
パルプモールド中に、質量%で30〜60%の珪藻土が含有するように、
古紙を水に溶かしパルプ状にした中に珪藻土を混合し、金網付の金型で抄き上げ、次に乾燥させることを特徴とする難燃及び吸音部材の製造方法。
【請求項1】
パルプモールド中に、質量%で30〜60%の珪藻土を含有していることを特徴とする難燃及び吸音部材。
【請求項2】
表面部に凹凸形状を形成してあることを特徴とする請求項1記載の難燃及び吸音部材。
【請求項3】
パルプモールド中に、質量%で30〜60%の珪藻土が含有するように、
古紙を水に溶かしパルプ状にした中に珪藻土を混合し、金網付の金型で抄き上げ、次に乾燥させることを特徴とする難燃及び吸音部材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−31136(P2010−31136A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194372(P2008−194372)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(508229437)
【出願人】(508229781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(508229437)
【出願人】(508229781)
【Fターム(参考)】
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