説明

難燃性の金属被覆布帛および金属被覆シート

【課題】 高い難燃性を有するとともに、樹脂材料本来の物性を損なうことなく接着性、耐久性に優れた高品質で、生産効率がよく経済性的に有利な難燃性組成物を、ホットメルトとして用いた難燃性の金属被覆布帛および金属被覆シートを提供すること。
【解決手段】 熱可塑性樹脂100重量部に対し難燃剤として赤リン(Pとして)を10〜80重量部を含み、加えてリン酸エステル20〜150重量部、ポリリン酸化合物20〜150重量部、金属水酸化物30〜200重量部の各々の中から選ばれた1種もしくは複数種を含有する難燃性組成物を、金属被覆布帛または金属被覆シートの少なくとも片面に塗工したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼時に有毒なダイオキシンの発生の原因となるハロゲン化物を含まず、難燃性と接着性に優れた難燃性組成物をホットメルトとして用いた難燃性の金属被覆布帛および金属被覆シートに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用機器、医療用機器、家庭用電化製品等、その他各方面で発生する電磁波による影響、すなわち、EMI対策として筐体等やそれらの開閉機構に電磁波シールドガスケットに代表される各種のシールド材が装着される。一般に電子機器が一層小型化され、筐体等に半密閉状態で収納されることが多いため蓄熱しやすく、安全面から機器本体に関係するすべての部材に対して難燃化が求められ、その指標となるUL規格において、UL94,V−0を満足することが必要となっている。
【0003】
電磁波シールド用のガスケット等を難燃化する方法としては、とりわけ難燃性が良好であることから、ある時期までハロゲン化合物が最も多く使用されてきた。しかし、ハロゲン化合物を含む材料は燃焼時にダイオキシンを含むきわめて有害な物質が発生する可能性があるため、現在ではその使用が制限されている。
【0004】
そこで、電磁波シールド用ガスケットにノンハロゲンで難燃化する材料として、リン系化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、膨張性黒鉛、アンチモン化合物、その他種々の成分が知られている。
【0005】
しかし、これらの材料を単独で使用する場合、満足できる難燃性を得るためには、基材樹脂に対して多量に配合する必要があり、その場合基材樹脂に元々有する成型性、耐熱性、耐湿性、あるいは柔軟性、復元性といった物性を損なうおそれがあり、布帛やシート等にホットメルト材料として塗工した場合に接着性が低下したり耐久性が失われる等、本来の用途に適さなくなる問題があった。また、難燃剤として、ダイオキシンほどの有毒成分を発生しないにしても、アンチモン化合物のように依然毒性に配慮をはらわなければならない成分が使用されており、安全面において必ずしも満足できるものとはいえなかった。
【0006】
そこで、これらの問題を解決するものとして、本出願人が特許文献1で先に提案した樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂に膨張性黒鉛、および赤リンやポリリン酸アンモニウムからなるリン系化合物を配合したもので、難燃性を具備するとともに前記したような有害物質の発生を防止することができる。
【0007】
また特許文献2には、難燃性布帛として、金属を被覆した生地にホスファゼン化合物等のリン化合物、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、リン酸エステルと熱可塑性樹脂を配合した混合物において、難燃性を備えるとともに前記のような有害物質の発生を防止するものが開示されている。
【0008】
しかしながら、前記各文献に記載されているような材料は、いずれも難燃性と安全性については一定の改善がみられるものの、電磁波シールド用ガスケットに用いる材料として、特に布帛やシート状物のホットメルトとして用いる場合に、難燃剤を多量に配合するため、材料樹脂に本来具備されている各々の物性を犠牲にせざるを得ず、接着性や耐久性等が低下し、その結果発泡体と導電性生地との接着性が低下するため品質上好ましくない。
【0009】
また、難燃剤として膨張性黒鉛を使用する場合、黒鉛粒子の粒子径をある程度大きくしなければ有効な難燃性が得られない。さらにこの膨張性黒鉛を使用して難燃性組成物を製造する際、樹脂媒体中で黒鉛を長時間撹拌しなければ均一に分散させることが難しい。またこの黒鉛を配合してホットメルトとして塗工する場合、発泡倍率が小さいものでなければ塗工面に塗工筋が入りやすく、これを補うために塗工厚を厚くする必要があった。それによって生産性が低下し、材料コストが上昇し、ガスケットを構成する弾性発泡体がもつ本来の圧縮残留歪みが低下し、商品価値にも影響をもたらすという問題があった。
【0010】
【特許文献】 特開2005−133054号公報 特開2005−226212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記問題を解決することを目的とするもので、高い難燃性を維持しながら基材樹脂が本来具備する接着性等の物性を損なうことなく高品質で、かつ生産性が高く、経済性の有利な難燃性組成物を、ホットメルトとして用いた金属被覆布帛または金属被覆シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、こうした目的達成のため鋭意研究した結果、基材となる熱可塑性樹脂に難燃剤として赤リン、リン酸エステル、ポリリン酸化合物、及び金属水酸化物を特定の割合で配合することにより良好な難燃性が得られるだけでなく、膨張性黒鉛を用いた場合と比べ、製造時間を短縮して生産性を向上させることができ、また塗工厚を薄くできるため難燃剤使用量を低減して低価格で経済性が有利な樹脂組成物を得られることを見出した。
【0013】
(第1の解決手段)
熱可塑性樹脂100重量部に対し難燃剤として赤リン(Pとして)を10〜80重量部を含み、加えてリン酸エステル20〜150重量部、ポリリン酸化合物20〜150重量部、金属水酸化物30〜200重量部の各々の中から選ばれた1種もしくは複数種を含有する難燃性組成物を、金属被覆布帛または金属被覆シートの少なくとも片面に被覆したことを特徴とする。
【0014】
(第2の解決手段)
前記難燃性組成物に含有する熱可塑性化合物が、ウレタン樹脂、アクリル樹脂から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする。
【0015】
(第3の解決手段)
前記難燃性組成物に含有するリン酸エステルが、縮合型リン酸エステルであることを特徴とする。
【0016】
(第4の解決手段)
前記難燃性組成物に含有するポリリン酸化合物が、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸シアヌレートから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする。
【0017】
(第5の解決手段)
前記難燃性組成物に含有する金属水酸化物が、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする。
【0018】
(第6の解決手段)
前記金属被覆布帛とその生地に塗工された難燃性組成物よりなる乾燥固形物を含む総厚が50〜500μm、もしくは金属被覆シートとその面に塗工された難燃性組成物よりなる乾燥固形物のみの厚さが30〜300μm、となるよう金属被覆布帛もしくは金属被覆シートに対し難燃性組成物を塗工することを特徴とする。
【0019】
(第7の解決手段)
前記難燃性組成物がホットメルトであって、金属被覆布帛に塗工する前に、あらかじめ金属被覆布帛に対し樹脂材料を用いて目止め処理を施すことを特徴とする。
【0020】
(第8の解決手段)
前記難燃性組成物を、金属被覆布帛または金属被覆シートの少なくとも片面に塗工し、この金属被覆布帛または金属被覆シートを、ホットメルトを介し発泡体の外周を包囲して接合することにより、電磁波シールド用ガスケットを形成することを特徴とする。
【本発明の効果】
【0021】
前述した難燃性組成物は、熱可塑性樹脂に、難燃剤として赤リンに加え、リン酸エステル、ポリリン酸化合物、および金属水酸化物を特定の割合で配合することにより、ハロゲン系難燃剤のような燃焼時に有害なダイオキシンを発生することなく安全性が高く、耐久性を有する難燃性組成物を、ホットメルトとして用いた難燃性の金属被覆布帛および金属被覆シートを得ることができる。
【0022】
難燃剤として膨張性黒鉛を用いた場合のように粉粒体を分散するための撹拌に長時間を要することがなく、製造時間を短縮し生産性を向上させることができる。
【0023】
また、この難燃性組成物をホットメルトとして使用した場合に、塗工厚を厚くしても塗工筋が発生することなく、導電性生地としての品質が低下することがない。逆に塗工厚を薄くした場合でも難燃性が急に低下することなく、難燃性組成物使用量の低減が可能となることによって材料費を安価に抑え、経済性の高い電磁波シールドガスケットを作製することができる。
【本発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明において、難燃性ならびに接着性を付与するための、難燃性組成物に用いる熱可塑性樹脂としては、ポリエーテル型ポリオールとイソシアネート、またはポリエステル型ポリオールとイソシアネート、を原料とするウレタン樹脂、ポリアクリル酸エステル系のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等があげられる。なかでも本発明で対象とする各難燃剤との相溶性や分散性にすぐれ、樹脂組成物として塗工する際の作業性のよさ等からウレタン樹脂またはアクリル樹脂が好ましく、とりわけウレタン樹脂が好適に使用することができる。後述する難燃剤を配合するにあたって、ウレタン樹脂等の樹脂材料は、塗工に容易な液状であることが求められ、例えば樹脂固形分35〜40%の有機溶剤溶液として、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤により3000mpa・s程度に粘度調整した市販品を使用することができる。この樹脂溶液は、難燃剤を配合することによって、また自然蒸発によって粘度が上昇するため、製造する際に前記有機溶剤を用いて適宜希釈し粘度調整をする。
【0025】
この熱可塑性樹脂に、難燃剤として赤リンを配合するとともに、これらに加えてリン酸エステル、ポリリン酸化合物、及び金属水酸化物等の中から1種、もしくは複数種を選んで配合する。好ましくは複数種を配合することにより、赤リンの難燃性能に対して補完的な相乗効果を得ることができる。
【0026】
赤リンは、表面被覆したものと表面被覆しないものが市販されているが、いずれも使用することができる。しかし何れかとなれば、赤リンが原因となり発生するホスフィンガスによる危険性と環境への影響を防止し、安全性を高めるに表面被覆したものが好ましい。被覆剤としては、それ自体難燃剤としても有効な水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を含むものが市販されているが、なかでも燃焼時に滴下防止作用のある水酸化アルミニウムを含むものが好ましい。配合量としては、樹脂固形分100重量部に対しPとして10〜80重量部程度、なかでも20〜50重量部の範囲が好適である。10重量部以下では難燃性が低下し、80重量部を越えると基材となる樹脂本来の物性に影響を与えるので好ましくない。
【0027】
リン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジホスフェート等の公知の化合物を使用することができるが、より難燃性を高めるためには縮合型リン酸エステルを使用するのが好ましい。また縮合型リン酸エステルは分子量が大きいため、低分子量のリン酸エステルと比べ、特に布帛等の繊維に塗工した場合にブリードし(滲み)難く、経時変化を遅らせる効果がある。これらの代表例としては、オキシ塩化リンと2価のフェノール系化合物との反応生成物、またはオキシ塩化リンとアルキルフェノールとの反応生成物、等があげられる。配合量としては、熱可塑性樹脂(固形物分)100重量部に対して20〜150重量部、好ましくは40〜80重量部である。配合量がこれより少なくなると酸素指数が低下し、多くなると熱可塑性樹脂が軟化の傾向を示し樹脂本来の物性に影響を与え、接着性が低下するので好ましくない。
【0028】
ポリリン酸化合物としては、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸シアヌレート等が代表例としてあげられ、なかでもポリリン酸アンモニウムはリン元素を豊富に含有し、安価であることから好適に使用できる。配合量としては、熱可塑性樹脂(固形物分)100重量部に対して20〜150重量部、好ましくは40〜100重量部である。配合量がこれより少なくなると酸素指数が低下し、多くなると熱可塑性樹脂が脆化の傾向を示し樹脂本来の物性に悪影響を与える。
【0029】
金属水酸化物としてはカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等の金属元素と、その水酸化物から選択することができる。なかでも難燃性材料として水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムは難燃材料として効果があり、比較的安価であることから好適に使用することができる。配合量は、熱可塑性樹脂(固形物分)100重量部に対して30〜200重量部、好ましくは60〜120重量部である。配合量がこれより少なくなると酸素指数が低下し、多くなると熱可塑性樹脂が脆化の傾向を示し樹脂本来の物性に悪影響を与える。なお、水酸化アルミニウムを被覆した赤リンを用いた場合には、含有量に応じてその配合量を低減する。
【0030】
本発明は、これらの難燃剤を組み合わせたものであり、赤リンに加え、なかでも縮合型リン酸エステルを併用することにより酸素指数を高め、きわめて高い難燃性が得られるとともに、樹脂に配合した場合に樹脂本来の物性を維持することができる。このため塗工厚を薄くして使用量を低減することができる。この難燃性組成物は高い接着力を有するため、ホットメルトとしてとして使用することができる。またホットメルトとして使用した場合は、通常のリン酸エステルを使用した場合のようにブリード(滲み)することなく、長期にわたって安定した状態を維持することができる。
【0031】
難燃性の金属被覆布帛または金属被覆シートを製造する際は、これらの生地を平面に展開してその上に難燃性組成物を載せ、所定厚さに塗工されるよう塗工機の厚さ調整用部具の高さを調整したうえで、生地上にこの部具を走行させて塗工後、加熱乾燥することによって、難燃性組成物で被覆された金属被覆布帛または金属被覆シートが得られる。なお、塗工機は公知のものを使用することができる。難燃性組成物の塗工厚さとして、金属被覆布帛の場合は、金属被覆布帛とその生地に塗工された難燃性組成物よりなる乾燥固形物を含む総厚が50〜500μm、金属被覆シート(繊維状でなく表面が比較的平滑なフィルム状)の場合は、シートとその面に塗工された難燃性組成物よりなる乾燥固形物のみの厚さが30〜300μmとなるよう塗工する。
【0032】
また前記金属被覆布帛または金属被覆シートのうち、繊維状の布帛を用いる場合は、難燃性組成物よりなるホットメルトを塗工する際、ホットメルトが布帛の生地繊維内に浸透することを防止する目的で、あらかじめ布帛に対して目止め加工を施しておくことが好ましい。目止め加工はコンマロール等の塗工機を用い、アクリル樹脂系、ポリウレタン樹脂系等の樹脂材料を10g/m程度塗布する。それによってホットメルトの塗工量を節減するとともに、難燃性ホットメルト層の厚みを均等化し難燃性を向上させるために有効である。なお、その際の目止め用樹脂材料にも、前記難燃性組成物を配合しておくことにより、難燃性が一層向上するためさらに好ましい。
【実施例】
【0033】
次に本発明の実施例を説明する。なお後述する各試験結果は、それぞれ5回行った結果を平均的に表わしたものである。
(実施例)
ここで難燃性組成物の主剤となるポリウレタン樹脂として、MEK(メチルエチルケトン)を溶媒とする固形分が35%重量の溶液(坂井化学工業社製、U−826)を準備した。この樹脂溶液100重量部に対し、縮合型リン酸エステル(旭電化工業社製、FP−700)20重量部、ポリリン酸アンモニウム(クライアント・ジャパン社製、エキソリットAP−462)25重量部、水酸化アルミニウム(昭和電工社製、ハイジライトH−42M)、20重量部を加え、それに赤リン系難燃剤(日本化学工業社製、ヒシガ−ドPM−25を各々段階的に10〜60重量部配合した。ポリウレタン樹脂溶液の粘度は元々3000mpa・s程度であったが、ここに前記した難燃剤を混合することによって粘度が上昇したため、MEKを20重量部(粘度によって通常は10〜30重量部程度)投入して粘度調整した。そしてこれらを均一に混合するまで1時間攪拌して樹脂と難燃剤よりなる混練物を得た。なお、ここに使用した赤リン系難燃剤(ヒシガードPM−25)は、赤リンを水酸化アルミニウムで被覆したもので、赤リンと水酸化アルミニウムとの重量比が1:1、すなわちリン(P)としての含有量は50%である。
【0034】
なお、前記ポリウレタン樹脂に配合する赤リン系難燃剤以外の、縮合型リン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、水酸化アルミニウムの各配合比率は、難燃性を表わす指標としてUL規格に基づく垂直試験の結果、過去の実験結果から高い難燃性を示した配合比率のものから代表的に選定した。すなわち、赤リン系難燃剤の配合量のみを変化させ、その他の組成については一定に固定し、その実験結果より性能を評価した。
【0035】
(比較例)
前記実施例とともに、比較例としてポリウレタン樹脂溶液(固形分換算)100重量部に対し、赤リン系難燃剤に代えて膨張性黒鉛(三洋貿易社製、SYZR−2002)を20、40および60重量部を配合した。その他の難燃成分の配合比率は実施例と同様である。
【0036】
(導電性生地への塗工)
これらとは別に、ポリエステル繊維糸を平織りした布帛に銅−ニッケルメッキを施した厚さ100μmの導電性生地を準備し、前記実施例と比較例よりなる各難燃性組成物につき、乾燥後の厚み(総厚)が130μmとなるよう塗工機を用いて塗布し、さらに温度90℃で乾燥することによりホットメルト層を形成させた。塗工厚はこの1種類とした。
【0037】
(電磁波シールドガスケットの作製)。
実施例、比較例で述べた各難燃性組成物をホットメルト層として形成させた導電性布帛を、あらかじめ準備した幅13mm、高さ3.5mmのウレタン発泡体を芯材としてその外周面に、ホットメルト塗工面を介して胴巻状に巻きつけて被覆、接着することにより、電磁波シールドガスケットを作製した。そして導電性布帛の巻きつけ両端の重なり部分に沿ってアクリル系両面粘着テープを貼り付けた。
【0038】
(ガスケットの燃焼試験)
前記実施例、比較例の各ガスケットにつき、UL94規格に基づく垂直試験方法(V−0、V−1、V−2)により評価した。V−0相当のものを○、それ以外を×とした。その試験結果を表1に示す。
【0039】
(塗工試験)
塗工機として、テストコーター(株式会社 ヒラノテクシード製作)を用い、ポリウレタン樹脂に前記により各々配合したホットメルト(難燃性組成物)を、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗工し、塗工過程で品質上問題となる塗工筋の確認試験をした。試験方法としては、厚さ25μmのPETフィルムの上面にホットメルト(難燃性組成物)材料を載せ、その上方に150μmの間隙を開けて塗工機の膜厚調整用の部具を走行させ(MEKを含む厚さホットメルトの厚さとして約150μmとなるよう)、幅100mm、長さ50m、ライン速度1m/分で塗工し乾燥させた。ここに、PETフィルムは、本試験の結果を顕著に示すものとして便宜的に用いた。塗工筋が皆無の場合を○、各筋の全長(筋の総和)が1m以内の場合を△、1m以上を×と評価した。その試験結果を表2に示す。ここに難燃剤として、実施例の場合は水酸化アルミニウムで被覆処理した赤リン(Pとして50%)を、また比較例の場合は膨張性黒鉛を単独で用いた。
【0040】
(ホットメルトの接着性試験)
前記[0033]に記載したように、ポリエステル繊維糸を平織りした布帛に銅−ニッケルメッキを施した厚さ100μmの導電性生地に対し、実施例及び比較例に記載した配合によるホットメルトを総厚が130μmとなるよう、塗工機によって塗工し乾燥させた。このホットメルト生地と、厚みが3mmのウレタン発泡体とを重ね合わせ、熱ロール(金属ロールとシリコンゴム)により150℃の設定温度で圧着し、室温にて養生冷却後、接合した試料を強制的に剥し、目視でウレタンスポンジの材料破壊の状態を検証した。この接着性能において、ウレタン発泡体と導電性生地との接着力が大きい場合に材料破壊率が高く、接着力が小さい場合に材料破壊率が低い結果となる。ウレタンスポンジの材料破壊が80%以上を○、50〜80%内の材料破壊を△、50%以下の材料破壊を×と表示する。
【表1】

【表2】

【0041】
(難燃性の検証結果)
本実施例(表1)における試験結果では、ウレタン樹脂100重量部に対し、赤リン系難燃剤(水酸化アルミニウム含有製品)を10重量部以上、好ましくは20重量部以上配合することにより、ホットメルトとしてすぐれた難燃性を示すことが確認された。これに対し、黒鉛系難燃剤を配合した場合は、比較例で示すようにウレタン樹脂100重量部に対し、膨張性黒鉛を60重量部を配合した場合でも、難燃性の評価となるV−0試験の結果から問題があることが判明した。
【0042】
(塗工筋の検証結果)
また本実施例(表2)における試験結果では、この難燃性組成物をホットメルトに使用した場合の塗工筋の確認試験において、上記実施例と比較例から、赤リン系難燃剤を使用した場合は塗工筋がほとんど認められず品質上問題がなかったのに対し、黒鉛系難燃剤(膨張性黒鉛)を使用した場合は20重量部程度配合することにより塗工筋が目立ちはじめ、品質上問題があることが判明した。
【0043】
(接着性の検証結果)
本実施例(表2)における試験結果では、ウレタン樹脂100重量部に対し、赤リン系難燃剤(水酸化アルミニウム含有製品)を40重量部以下配合することにより、ホットメルトとしてすぐれた接着性能を示し、ウレタン発泡体の破壊が多かった。これに対し比較例では膨張性黒鉛を20重量部しか配合しないにもかかわらず、ホットメルトとしての接着性能に好ましい結果が得られず、ウレタン発泡体の破壊が少なかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂100重量部に対し難燃剤として赤リン(Pとして)を10〜80重量部を含み、加えてリン酸エステル20〜150重量部、ポリリン酸化合物20〜150重量部、金属水酸化物30〜200重量部の各々の中から選ばれた1種もしくは複数種を含有する難燃性組成物を、金属被覆布帛または金属被覆シートの少なくとも片面に被覆することを特徴とする難燃性の金属被覆布帛および金属被覆シート。
【請求項2】
前記難燃性組成物に含有する熱可塑性化合物が、ウレタン樹脂、アクリル樹脂から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性の金属被覆布帛および金属被覆シート。
【請求項3】
前記難燃性組成物に含有するリン酸エステルが、縮合型リン酸エステルであることを特徴とする請求項1項、2項に記載の難燃性の金属被覆布帛および金属被覆シート。
【請求項4】
前記難燃性組成物に含有するポリリン酸化合物が、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸シアヌレートから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1項〜3項に記載の難燃性の金属被覆布帛および金属被覆シート。
【請求項5】
前記難燃性組成物に含有する金属水酸化物が、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1項〜4項に記載の難燃性の金属被覆布帛および金属被覆シート。
【請求項6】
前記金属被覆布帛とその生地に塗工された難燃性組成物よりなる乾燥固形物を含む総厚が50〜500μm、もしくは金属被覆シートとその面に塗工された難燃性組成物よりなる乾燥固形物のみの厚さが30〜300μm、となるよう金属被覆布帛もしくは金属被覆シートに対し難燃性組成物を塗工することを特徴とする難燃性の金属被覆布帛および金属被覆シート。
【請求項7】
前記難燃性組成物がホットメルトであって、金属被覆布帛に塗工する前に、あらかじめ金属被覆布帛に対し樹脂材料を用いて目止め処理を施すことを特徴とする請求項1〜6に記載の難燃性の金属布帛および金属被覆シート。
【請求項8】
前記難燃性組成物を、金属被覆布帛または金属被覆シートの少なくとも片面に塗工し、この金属被覆布帛または金属被覆シートを、ホットメルトを介し発泡体の外周を包囲して接合することにより、電磁波シールド用ガスケットを形成することを特徴とする請求項1〜7に記載の難燃性の金属布帛および金属被覆シート。

【公開番号】特開2007−203726(P2007−203726A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55507(P2006−55507)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(391020078)日本ジッパーチュービング株式会社 (13)
【Fターム(参考)】