説明

難燃性エポキシ樹脂組成物およびこれを用いた積層板

【課題】 ハロゲン系化合物を添加することなく高度な難燃性を有し、且つ硬化物の基本特性(特に耐熱性)を悪化させることのないエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 エポキシ樹脂(A成分)100重量部に対して、硬化剤(B成分)1〜200重量部および下記式(1)で示される有機リン系化合物(C成分)0.1〜200重量部を含有する難燃性エポキシ樹脂組成物。
【化1】


(式中、X、Xは同一もしくは異なり、下記一般式(2)で表される芳香族置換アルキル基である。)
【化2】


(式中、ALは炭素数1〜5の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基であり、Arはその芳香環に置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基である。nは1〜3の整数を示し、ArはAL中の任意の炭素原子に結合することができる。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的にハロゲン系難燃剤を含まず、環境負荷が低く、耐熱性に優れた難燃性エポキシ樹脂組成物、並びにこれを用いた積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、その優れた電気特性、接着性、硬化物強度から、電子電気機器用途に幅広く利用されているが、該用途の多くは、高い難燃性が要求されるため、種々の難燃剤が添加された難燃性エポキシ樹脂組成物が用いられている。
【0003】
従来より、エポキシ樹脂を難燃化する方法は、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂などのハロゲン系化合物を用いるのが一般的であった。しかしながら、近年、製品の燃焼時に発生するハロゲン化水素ガスや、ダイオキシン類似化合物に対する懸念から、ハロゲンを全く含まない難燃剤を用いることが強く望まれている。
【0004】
ハロゲン系化合物を用いずにエポキシ樹脂を難燃化する方法としては、金属水酸化物、リン系化合物、リン系化合物と金属水酸化物の併用等が知られており、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されている。しかしながら、いずれの化合物を用いた場合も、十分な難燃性を得るには多量に添加する必要があり、その結果、硬化性や保存安定性の悪化による作業性の低減、硬化物の耐熱性、機械的特性および電気的特性を著しく低下させるという欠点が生じていた。
【0005】
【特許文献1】特開平10−204260号公報
【特許文献2】特開平10−95898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ハロゲン系化合物を添加することなく高度な難燃性を有し、且つ硬化物の基本特性(特に耐熱性)を悪化させることのないエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、非ハロゲン系難燃剤として特定の有機リン系化合物を用いることにより、難燃性、耐熱性に優れたエポキシ樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明によれば、
1.エポキシ樹脂(A成分)100重量部に対して、硬化剤(B成分)1〜200重量部および下記式(1)で示される有機リン系化合物(C成分)0.1〜200重量部を含有する難燃性エポキシ樹脂組成物。
【化1】

(式中、X、Xは同一もしくは異なり、下記一般式(2)で表される芳香族置換アルキル基である。)
【化2】

(式中、ALは炭素数1〜5の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基であり、Arはその芳香環に置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基である。nは1〜3の整数を示し、ArはAL中の任意の炭素原子に結合することができる。)
【0009】
2.有機リン系化合物(C成分)は、下記一般式(1−a)、(1−b)、(1−c)または(1−d)で表される化合物である請求項1記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【0010】
3.有機リン系化合物(C成分)は、酸価が0.7mgKOH/g以下である前項1記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【0011】
4.エポキシ樹脂(A成分)100重量部に対して、有機リン系化合物(C成分)1〜100重量部を含有する前項1記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【0012】
5.前項1〜4記載のエポキシ樹脂組成物を繊維基材に含浸し、これを積層してなる積層板。
が提供される。
【0013】
<A成分のエポキシ樹脂について>
本発明で使用するエポキシ樹脂(A成分)は、特に制限されないが、本発明がハロゲンフリーであっても優れた難然効果を発現することからハロゲン原子非含有のエポキシ樹脂が好ましい。ただし、エポキシ樹脂を製造する際に混入される塩素分はある程度含んでいてもよく、具体的にはハロゲン原子量1000ppm以下であることが好ましい。
【0014】
この様なエポキシ樹脂(A成分)としては、例えば、ビスフェノールA{(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)型エポキシ樹脂、ビスフェノールF{ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン}型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD{1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン}型エポキシ樹脂、ビスフェノールS(4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン)型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらのエポキシ樹脂は、その使用にあたって1種類のみに限定されるものではなく、2種類以上の併用または、各種変性されたものでも使用可能である。
【0015】
<B成分の硬化剤について>
本発明で用いる硬化剤(B成分)としては、当業者において公知のものはすべて用いることができるが、特に、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC〜C20の直鎖脂肪族ジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジシクロヘキサン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、ジシアノジアミドなどのアミン類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレンなどのポリオキシスチレン、フェノールアラルキル樹脂、ナフトール系アラルキル樹脂などの、ベンゼン環、ナフタリン環その他の芳香族性の環に結合する水素原子が水酸基で置換されたフェノール化合物と、カルボニル化合物の共縮合によって得られるフェノール樹脂や酸無水物などが例示されるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0016】
本発明において、エポキシ樹脂(A成分)に対する硬化剤(B成分)の含有量は、官能基の割合を考慮して配合される。A成分100重量部に対して、B成分は1〜200重量部の範囲であり、3〜100重量部の範囲が好ましい。A成分またはB成分のいずれかの官能基が大過剰になると、耐湿性、成形性、硬化物の電気特性が低下するため好ましくない。
【0017】
<C成分の有機リン系化合物について>
本発明において、C成分として使用する有機リン系化合物は、下記一般式(1)で表される。
【化7】

(式中、X、Xは同一もしくは異なり、下記一般式(2)で表される芳香族置換アルキル基である。)
【化8】

(式中、ALは炭素数1〜5の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基であり、Arは置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基である。nは1〜3の整数を示し、ArはAL中の任意の炭素原子に結合することができる。)
【0018】
前記一般式(1)のなかで、好ましくは下記一般式(3)、(4)、(5)および(6)で表される有機リン系化合物である。
【化9】

【0019】
前記一般式(3)において、式中、R、Rは同一もしくは異なり、その芳香環に置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、そのうちフェニル基が好ましい。RおよびRのフェニル基、ナフチル基またはアントリル基は、その芳香環の水素原子が置換されていてもよく、置換基としてはメチル、エチル、プロピル、ブチルもしくはその芳香環の結合基が、酸素原子、イオウ原子または炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。
【0020】
【化10】

【0021】
前記一般式(4)において、RおよびRは、同一又は異なっていても良く、水素原子または炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基である。好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基であり、特に好ましくは水素原子である。RおよびRは、同一または異なっていても良く、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、好ましくはメチル基またはエチル基である。RおよびRは、同一または異なっていてもよく、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。好ましくはフェニル基を表し、芳香族環に置換基を有していてもよく、メチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香族環への結合基が、酸素、イオウまたは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基である。
【0022】
前記一般式(4)中、RおよびRの好ましい具体例としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、クミル基、ナフチル基、4−ベンジルフェニル基等が挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
【0023】
【化11】

【0024】
前記一般式(5)において、ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。芳香族環に置換基を有していてもよく、メチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香族環への結合基が、酸素、イオウまたは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基である。
【0025】
前記一般式(5)中、ArおよびArの好ましい具体例としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、クミル基、ナフチル基、4−ベンジルフェニル基等が挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
【0026】
前記一般式(5)中、R、R、RおよびRは、同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。好ましくは水素原子である。
【0027】
前記一般式(5)中、ALおよびALは、同一又は異なっていても良く、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基である。好ましくは炭素数1〜3の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基であり、特に好ましくは炭素数1〜2の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基である。
【0028】
前記一般式(5)中、ALおよびALの好ましい具体例としては、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基等が挙げられ、特にメチレン基、エチレン基、およびエチリデン基が好ましい。
【0029】
前記一般式(5)中、ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。好ましくはフェニル基を表し、芳香族環に置換基を有していてもよく、メチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香族環への結合基が、酸素、イオウまたは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基である。
【0030】
前記一般式(5)中、pおよびqは0〜3の整数を示し、ArおよびArはそれぞれALおよびALの任意の炭素原子に結合することができる。pおよびqは、好ましくは0または1であり、特に好ましくは0である。
【0031】
【化12】

【0032】
前記一般式(6)において、RおよびRは、同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。好ましくは水素原子、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、または置換基を有しても良いフェニル基である。RおよびRがフェニル基の場合、芳香族環に置換基を有していてもよく、メチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香族環への結合基が、酸素、イオウまたは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基である。
【0033】
前記一般式(6)中、RおよびRの好ましい具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基(異性体を含む)、フェニル基、クレジル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、クミル基、ナフチル基、4−ベンジルフェニル基等が挙げられ、特に水素原子、メチル基、またはフェニル基が好ましい。
【0034】
前記一般式(6)中、R、R、RおよびRは、同一または異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。好ましくは、フェニル基を表し、芳香族環に置換基を有していてもよく、メチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香族環への結合基が、酸素、イオウまたは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基である。
【0035】
前記一般式(6)中、R、R、RおよびRの好ましい具体例としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、クミル基、ナフチル基、4−ベンジルフェニル基等が挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
【0036】
前記一般式(1)のなかで、最も好ましい代表的化合物は下記式(1−a)、(1−b)、(1−c)および(1−d)で示される有機リン系化合物である。
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【0037】
次に本発明における前記有機リン系化合物(C成分)の合成法について説明する。なお、C成分は、以下に説明する方法以外の方法によって製造されたものであってもよい。
C成分は例えばペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、続いて酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属化合物により処理し、次いでアラルキルハライドを反応させる方法、ペンタエリスリトールにアラルキルホスホン酸ジクロリドを反応させる方法、ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させることによって得られた化合物にアラルキルアルコールを反応させ、次いで高温でArbuzov転移を行う方法により得ることができる。
Arbuzov転移を行う方法は、例えば米国特許第3,141,032号明細書、特開昭54−157156号公報、特開昭53−39698号公報に開示されている。
【0038】
C成分の具体的合成法を以下説明するが、この合成法は単に説明のためであって、本発明において使用されるC成分は、これらの合成法のみならず、その改変およびその他の合成法で合成されたものであってもよい。より具体的な合成法は後述する調製例に説明される。
(I)C成分中の前記(1−a)の有機リン系化合物;
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、次いでターシャリーブタノールにより酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシドにより処理し、ベンジルブロマイドを反応させることにより得ることができる。
(II)C成分中の前記(1−b)の有機リン系化合物;
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、次いでターシャリーブタノールにより酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシドにより処理し、1−フェニルエチルブロマイドを反応させることにより得ることができる。
(III)C成分中の前記(1−c)の有機リン系化合物;
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、次いでターシャリーブタノールにより酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシドにより処理し、2−フェニルエチルブロマイドを反応させることにより得ることができる。
(IV)C成分中の前記(1−d)の有機リン系化合物;
ペンタエリスリトールにジフェニルメチルホスホン酸ジクロリドを反応させることにより得ることができる。
【0039】
また別法としては、ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、得られた生成物とジフェニルメチルアルコールの反応生成物を触媒共存下で加熱処理する事により得られる。
【0040】
前述したC成分は、その酸価が好ましくは0.7mgKOH/g以下、より好ましくは0.5mgKOH/g以下であるものが使用される。酸価がこの範囲のC成分を使用することにより、難燃性および耐熱性等諸物性に優れたエポキシ樹脂組成物が得られる。C成分は、その酸価が0.4mgKOH/g以下のものが最も好ましい。ここで酸価とは、サンプル(C成分)1g中の酸成分を中和するのに必要なKOHの量(mg)を意味する。
【0041】
さらに、C成分は、そのHPLC純度が、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%であるものが使用される。かかる高純度のものはエポキシ樹脂組成物の難燃性および耐熱性等諸物性に優れ好ましい。ここでC成分のHPLC純度の測定は、以下の方法を用いることにより効果的に測定が可能となる。
【0042】
カラムは野村化学(株)製Develosil ODS−7 300mm×4mmφを用い、カラム温度は40℃とした。溶媒としてはアセトニトリルと水の6:4(容量比)の混合溶液を用い、5μlを注入した。検出器はUV−260nmを用いた。
【0043】
C成分中の不純物を除去する方法としては、特に限定されるものではないが、水、メタノール等の溶剤でリパルプ洗浄(溶剤で洗浄、ろ過を数回繰り返す)を行う方法が最も効果的で、且つコスト的にも有利である。
【0044】
本発明において、エポキシ樹脂(A成分)に対する有機リン系化合物(C成分)の含有量は、A成分100重量部に対して、C成分0.1〜200重量部、好ましくは0.5〜150重量部、より好ましくは1〜100重量部、特に好ましくは5〜50重量部の範囲である。C成分の配合割合は、所望する難燃性レベル、エポキシ樹脂の種類などによりその好適範囲が決定される。さらに他の難燃剤、難燃助剤の使用によってもC成分の配合量を変えることができ、多くの場合、これら他の難燃剤、難燃助剤の使用によりC成分の配合割合を低減することができる。0.1重量部未満では難燃効果が不十分となり、200重量部を超えると耐熱性や成形性に悪影響を及ぼすことがあり、また、コスト的にも不利である。
【0045】
<他の添加剤について>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、有機溶剤(D成分)を使用することにより、積層板用のワニスとすることができる。使用する溶剤は、組成の一部あるいはすべてに対して良好な溶解性を示すことが必要であるが、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を用いることができる。
【0046】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、イソブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどの各種グリコールエーテル系溶剤、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、酢酸エチルなどのエステル系溶剤、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジアルキルグリコールエーテル系溶剤、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶剤、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤があり、これらは何種類かを併用して用いることもできる。
【0047】
有機溶剤(D成分)の使用量は特に制限されるものではないが、プリプレグを作成する場合の基材への含浸性、樹脂付着性に優れる点から、固形分濃度30〜70重量%となる範囲であることが好ましい。
【0048】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記各成分に加え更に硬化促進剤(E成分)を併用できる。使用し得る硬化促進剤(E成分)としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンジルジメチルアミンの如き3級アミン類、2−エチル−4−メチルイミダゾール等の各種イミダゾール類、各種金属化合物などが挙げられ、その配合量は、A成分100重量部に対して、E成分0.01〜1重量部の範囲が好ましい。
【0049】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、前記C成分の他に、C成分以外のリン系難燃剤(燐酸エステル、縮合燐酸エステル等)、無機難燃剤(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等)、ケイ素含有難燃剤、難燃助剤等の難燃性を向上させる化合物を、C成分の使用割合の低減やエポキシ樹脂組成物の難燃性の改善の目的のために配合することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、さらに必要に応じて種々の添加剤、充填剤等を適宜配合することが出来る。
【0050】
<エポキシ樹脂組成物の硬化物について>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、その硬化物が、米国UL規格のUL−94に規定されている垂直燃焼試験によって、V−0相当の難燃性を有する難燃性エポキシ樹脂組成物である。
【0051】
本発明の樹脂組成物を前記有機溶媒に溶解して得られるワニスは、ガラス織布、ガラス不織布、紙あるいはガラス繊維以外を成分とする布などの繊維基材に塗布、含浸させ、乾燥させることによりプリプレグを得ることができる。このプリプレグは所定枚数重ねて加熱加圧成形することにより積層板とすることができる。かかる積層板はプリント基板として好適に使用される。この積層板は、ハロゲン系難燃剤を含むことなく優れた難燃効果を奏すると共に、耐熱性を飛躍的に向上させることができる。
【0052】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、プリント基板等の積層板用途の他、半導体封止材料、電気絶縁材料等の各種電気電子部品、繊維強化複合材料、塗装材料、成型材料、接着剤材料などにも適用できる。
【発明の効果】
【0053】
本発明は、ハロゲン化合物を用いないで、耐熱性など諸物性の優れた難燃性エポキシ樹脂組成物を提供するものであって、このエポキシ樹脂組成物は積層板、電子電気機器等の用途において好適に使用され、その工業的効果は極めて大きい。
【実施例】
【0054】
以下に実施例をあげて本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)難燃性
得られた積層板の銅箔を除去して、これを米国UL規格のUL−94に規定されている垂直燃焼試験に従って評価した。
(2)半田耐熱性
得られた積層板を、JIS C6481に準じ、煮沸2時間の吸湿処理を行った後、260℃の半田槽に180秒浮かべた後、外観異常の有無を調べた。
(3)酸価
調製した有機リン化合物をJIS−K−3504に従って測定した。
【0055】
調製例1
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド(FR−1)の調製
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器にペンタエリスリトール816.9g(6.0モル)、ピリジン19.0g(0.24モル)、トルエン2250.4g(24.4モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に三塩化リン1651.8g(12.0モル)を該滴下ロートを用い添加し、添加終了後、60℃にて加熱攪拌を行った。反応後、室温まで冷却し、得られた反応物に塩化メチレン26.50部を添加し、氷冷しながらターシャリーブタノール889.4g(12.0モル)および塩化メチレン150.2g(1.77モル)を滴下した。得られた結晶をトルエンおよび塩化メチレンにて洗浄しろ過した。得られたろ取物を80℃、1.33×10Paで12時間乾燥し、白色の固体1341.1g(5.88モル)を得た。得られた固体は31P、HNMRスペクトルにより2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイドである事を確認した。
【0056】
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器に得られた2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイド1341.0g(5.88モル)、DMF6534.2g(89.39モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に氷冷下ナトリウムメトキシド648.7g(12.01モル)を添加した。氷冷にて2時間攪拌した後に、室温にて5時間攪拌を行った。さらにDMFを留去した後に、DMF2613.7g(35.76モル)を添加し、該反応混合物に氷冷にてベンジルブロマイド2037.79g(11.91モル)滴下した。氷冷下3時間攪拌した後、DMFを留去し、水8Lを加え、析出した固体を濾取、水2Lで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール4Lをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約2時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール2Lで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×10Paで19時間乾燥し、白色の鱗片状結晶1863.5g(4.56モル)を得た。得られた結晶は31P、HNMRスペクトルおよび元素分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイドである事を確認した。収率は76%、31PNMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.06mgKOH/gであった。
【0057】
H−NMR(DMSO−d,300MHz):δ7.2−7.4(m,10H),4.1−4.5(m,8H),3.5(d,4H)、31P−NMR(DMSO−d,120MHz):δ23.1(S)、融点:255−256℃、元素分析 計算値:C,55.89;H,5.43、測定値:C,56.24;H,5.35
【0058】
調製例2
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド(FR−2)の調製
攪拌機、温度計、コンデンサーを有する反応容器に、3,9−ジベンジロキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン22.55g(0.055モル)、ベンジルブロマイド19.01g(0.11モル)およびキシレン33.54g(0.32モル)を充填し、室温下攪拌しながら、乾燥窒素をフローさせた。次いでオイルバスで加熱を開始し、還流温度(約130℃)で4時間加熱、攪拌した。加熱終了後、室温まで放冷し、キシレン20mLを加え、さらに30分攪拌した。析出した結晶をろ過により分離し、キシレン20mLで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール40mLをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約2時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール20mLで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×10Paで19時間乾燥し、白色の鱗片状結晶を得た。生成物は質量スペクトル分析、H、31P核磁気共鳴スペクトル分析および元素分析でビスベンジルペンタエリスリトールジホスホネートであることを確認した。収量は20.60g、収率は91%、31PNMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.05mgKOH/gであった。
【0059】
H−NMR(DMSO−d,300MHz):δ7.2−7.4(m,10H),4.1−4.5(m,8H),3.5(d,4H)、31P−NMR(DMSO−d,120MHz):δ23.1(S)、融点:257℃
【0060】
調製例3
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジα−メチルベンジル−3,9−ジオキサイド(FR−3)の調製
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器にペンタエリスリトール816.9g(6.0モル)、ピリジン19.0g(0.24モル)、トルエン2250.4g(24.4モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に三塩化リン1651.8g(12.0モル)を該滴下ロートを用い添加し、添加終了後、60℃にて加熱攪拌を行った。反応後、室温まで冷却し、得られた反応物に塩化メチレン5180.7g(61.0モル)を添加し、氷冷しながらターシャリーブタノール889.4g(12.0モル)および塩化メチレン150.2g(1.77モル)を滴下した。得られた結晶をトルエンおよび塩化メチレンにて洗浄しろ過した。得られたろ取物を80℃、1.33×10Paで12時間乾燥し、白色の固体1341.1g(5.88モル)を得た。得られた固体は31P、HNMRスペクトルにより2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイドである事を確認した。
【0061】
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器に得られた2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイド1341.0g(5.88モル)、DMF6534.2g(89.39モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に氷冷下ナトリウムメトキシド648.7g(12.01モル)を添加した。氷冷にて2時間攪拌した後に、室温にて5時間攪拌を行った。さらにDMFを留去した後に、DMF2613.7g(35.76モル)を添加し、該反応混合物に氷冷にて1−フェニルエチルブロマイド2204.06g(11.91モル)滴下した。氷冷下3時間攪拌した後、DMFを留去し、水8Lを加え、析出した固体を濾取、水2Lで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール4Lをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約2時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール2Lで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×10Paで19時間乾燥し、白色の鱗片状結晶1845.9g(4.23モル)を得た。得られた固体は31PNMR、HNMRスペクトルおよび元素分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジα−メチルベンジル−3,9−ジオキサイドである事を確認した。31PNMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.03mgKOH/gであった。
【0062】
H−NMR(CDCl,300MHz):δ7.2−7.4(m,10H),4.0−4.2(m,4H),3.4−3.8(m,4H),3.3(qd,4H),1.6(ddd,6H)、31P−NMR(CDCl,120MHz):δ28.7(S)、融点:190−210℃、元素分析 計算値:C,57.80;H,6.01、測定値:C,57.83;H,5.96
【0063】
調製例4
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジ(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキサイド(FR−4)の調製
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器にペンタエリスリトール816.9g(6.0モル)、ピリジン19.0g(0.24モル)、トルエン2250.4g(24.4モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に三塩化リン1651.8g(12.0モル)を該滴下ロートを用い添加し、添加終了後、60℃にて加熱攪拌を行った。反応後、室温まで冷却し、得られた反応物に塩化メチレン5180.7g(61.0モル)を添加し、氷冷しながらターシャリーブタノール889.4g(12.0モル)および塩化メチレン150.2g(1.77モル)を滴下した。得られた結晶をトルエンおよび塩化メチレンにて洗浄しろ過した。得られたろ取物を80℃、1.33×10Paで12時間乾燥し、白色の固体1341.1g(5.88モル)を得た。得られた固体は31P、HNMRスペクトルにより2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイドである事を確認した。
【0064】
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器に得られた2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイド1341.0g(5.88モル)、DMF6534.2g(89.39モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に氷冷下ナトリウムメトキシド648.7g(12.01モル)を添加した。氷冷にて2時間攪拌した後に、室温にて5時間攪拌を行った。さらにDMFを留去した後に、DMF2613.7g(35.76モル)を添加し、該反応混合物に氷冷にて(2−ブロモエチル)ベンゼン2183.8g(11.8モル)滴下した。氷冷下3時間攪拌した後、DMFを留去し、水8Lを加え、析出した固体を濾取、水2Lで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール4Lをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約2時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール2Lで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×10Paで19時間乾燥し、白色の粉末1924.4g(4.41モル)を得た。得られた固体は31PNMR、HNMRスペクトルおよび元素分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジ(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキサイドである事を確認した。31PNMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.03mgKOH/gであった。
【0065】
H−NMR(CDCl,300MHz):δ7.1−7.4(m,10H),3.85−4.65(m,8H),2.90−3.05(m,4H),2.1−2.3(m,4H)、31P−NMR(CDCl,120MHz):δ31.5(S)、融点:245−246℃、元素分析 計算値:C,57.80;H,6.01、測定値:C,58.00;H,6.07
【0066】
調製例5
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジ(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキサイド(FR−5)の調製
攪拌機、温度計、コンデンサーを有する反応容器に、3,9−ジ(2−フェニルエトキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン436.4g(1.0mol)および2−フェニルエチルブロマイド370.1g(2.0mol)を充填し、室温下攪拌しながら、乾燥窒素をフローさせた。次いでオイルバスで加熱を開始し、オイルバス温度180℃で10時間保持した。その後オイルバスを取り除き室温まで冷却した。得られた白色固体状の反応物にメタノール2000mlを加えて攪拌洗浄後、グラスフィルターを用いて白色粉末を濾別した。次いで濾別した白色粉末をとメタノール4000mlをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約2時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール2000mLで洗浄した。得られた白色粉末を100Pa、120℃で8時間乾燥させて、2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジ(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキサイド362.3gを得た。生成物は質量スペクトル分析、H、31P核磁気共鳴スペクトル分析および元素分析でビス2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジ(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキサイドであることを確認した。収率83%、HPLC純度99.3%、酸価0.41KOHmg/gであった。
【0067】
H−NMR(CDCl,300MHz):δ7.1−7.4(m,10H),3.85−4.65(m,8H),2.90−3.05(m,4H),2.1−2.3(m,4H)、31P−NMR(CDCl,120MHz):δ31.5(S)、融点:245−246℃
【0068】
調製例6
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド(FR−6)の調製
攪拌装置、攪拌翼、還流冷却管、温度計を備えた10リットル三つ口フラスコに、ジフェニルメチルホスホン酸ジクロリドを2058.5g(7.22モル)とペンタエリスリトール468.3g(3.44モル)、ピリジン1169.4g(14.8モル)、クロロホルム8200gを仕込み、窒素気流下、60℃まで加熱し、6時間攪拌させた。反応終了後、クロロホルムを塩化メチレンで置換し、当該反応混合物に蒸留水6Lを加え攪拌し、白色粉末を析出させた。これを吸引濾過により濾取し、得られた白色物をメタノールを用いて洗浄した後、100℃、1.33×10Paで10時間乾燥し、白色の固体1156.2gを得た。得られた固体は31P−NMR、H−NMRスペクトルおよび元素分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイドである事を確認した。31P−NMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.3mgKOH/gであった。
【0069】
H−NMR(DMSO−d6,300MHz):δ7.20−7.60(m,20H),5.25(d,2H),4.15−4.55(m,8H)、31P−NMR(DMSO−d6,120MHz):δ20.9、融点:265℃、元素分析 計算値:C,66.43;H,5.39、測定値:C,66.14;H,5.41
【0070】
調製例7
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド(FR−7)の調製
3口フラスコに攪拌機、温度計、およびコンデンサーを取り付け、窒素気流下、このフラスコに3,9−ビス(ジフェニルメトキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン40.4g(0.072モル)、ジフェニルメチルブロマイド35.5g(0.14モル)、キシレン48.0g(0.45モル)を入れ、還流温度(約130℃)で3時間加熱、攪拌した。加熱終了後、室温まで放冷し、キシレン30mLを加え、さらに30分攪拌した。析出した結晶をろ過により分離し、キシレン30mLで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール100mLをナス型フラスコにいれ、コンデンサーを取り付け、約1時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール50mLで2回洗浄した後、120℃にて減圧乾燥した。得られた固体は31P−NMR、H−NMRスペクトルおよび元素分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイドである事を確認した。得られた固体は白色の粉末であり、収量は36.8g、収率は91%であった。31PNMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.07mgKOH/gであった。
【0071】
H−NMR(DMSO−d,300MHz):δ7.2−7.6(m,20H),6.23(d,J=9Hz、2H),3.89−4.36(m,6H),3.38−3.46(m,2H)、31P−NMR(CDCl,120MHz):δ20.9(S)、融点:265℃、元素分析 計算値:C,66.43;H,5.39、測定値:C,66.14;H,5.41
【0072】
[実施例1]
フェノールノボラック型エポキシ樹脂EPICLON N−770(大日本インキ工業(株)製、エポキシ当量190g/eq)100重量部、ジシアンジアミド5.5重量部、有機リン系化合物(FR−1)30重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.1部に、メチルエチルケトンを加え、不揮発分濃度50重量%となるようにワニスを調整した。この樹脂ワニスを用いて、ガラスクロス(厚さ0.18mm、日東紡績(株)製)100部にワニス固形分で80部含浸させて、150℃の乾燥機炉で4分乾燥させ、樹脂含有量44.4%のプリプレグを作製した。得られたプリプレグ8枚を重ね、その上下に厚さ35μmの電解銅箔を重ねて、圧力3.9×10Pa、温度170℃で120分加熱加圧成形を行い、厚さ1.6mmの両面銅張り積層板を得た。得られた積層板について、難燃性、半田耐熱性を測定した。その評価結果を表1に示した。
【0073】
[実施例2〜42及び比較例1〜6]
表1〜5に示した組成で、実施例1と同様に両面銅張り積層板を作成し、得られた積層板について、難燃性、半田耐熱性を測定した。その評価結果を表1〜5に示した。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
【表4】

【0078】
【表5】

【0079】
表中に示す各成分は以下のものである。
(I)エポキシ樹脂(A成分)
(i)フェノールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製EPICLON N−770、エポキシ当量190g/eq)
(ii)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製EPICLON N−690、エポキシ当量210g/eq)
(iii)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製エピコート1001、エポキシ当量460g/eq)
【0080】
(II)硬化剤(B成分)
(i)ジシアンジアミド(DICY)
(ii)フェノールノボラック樹脂(住友デュレズ(株)製PR−53195、水酸基当量110g/eq)
【0081】
(III)有機リン系化合物(C成分)
(i)調製例1で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド{前記一般式(1−a)のリン系化合物(FR−1)}
(ii)調製例2で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド{前記一般式(1−a)のリン系化合物(FR−2)}
(iii)調製例3で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジα−メチルベンジル−3,9−ジオキサイド{前記一般式(1−b)のリン系化合物(FR−3)}
(iv)調製例4で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジ(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキサイド{前記一般式(1−c)のリン系化合物(FR−4)}
(v)調製例5で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジ(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキサイド{前記一般式(1−c)のリン系化合物(FR−5)}
(vi)調製例6で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド{前記一般式(1−d)のリン系化合物(FR−6)}
(vii)調製例7で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド{前記一般式(1−d)のリン系化合物(FR−7)}
<C成分以外の有機リン系難燃剤>
(i)トリフェニルホスフェート(大八化学工業(株)製TPP)
【0082】
(IV)硬化促進剤(E成分)
2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A成分)100重量部に対して、硬化剤(B成分)1〜200重量部および下記式(1)で示される有機リン系化合物(C成分)0.1〜200重量部を含有する難燃性エポキシ樹脂組成物。
【化1】

(式中、X、Xは同一もしくは異なり、下記一般式(2)で表される芳香族置換アルキル基である。)
【化2】

(式中、ALは炭素数1〜5の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基であり、Arはその芳香環に置換基を有してもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基である。nは1〜3の整数を示し、ArはAL中の任意の炭素原子に結合することができる。)
【請求項2】
有機リン系化合物(C成分)は、下記一般式(1−a)、(1−b)、(1−c)または(1−d)で表される化合物である請求項1記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【請求項3】
有機リン系化合物(C成分)は、酸価が0.7mgKOH/g以下である請求項1記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
エポキシ樹脂(A成分)100重量部に対して、有機リン系化合物(C成分)1〜100重量部を含有する請求項1記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4記載のエポキシ樹脂組成物を繊維基材に含浸し、これを積層してなる積層板。

【公開番号】特開2006−193548(P2006−193548A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3637(P2005−3637)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】