説明

難燃性材料、それから形成される電線ジャケットおよびLAN用ケーブル

【課題】本発明の目的は、優れた耐熱性・耐薬品性・耐油性を兼ね備え、溶融成形可能であり、優れた柔軟性と難燃性を有する、難燃性材料を提供することである。また、本発明の目的は、該難燃性材料から形成される電線ジャケット、および該電線ジャケットを有するLAN用ケーブルを提供することである。
【解決手段】フッ素樹脂(A)95〜40重量%および架橋フッ素ゴム(B)60〜5重量%を含む難燃性材料であって、フッ素樹脂(A)が、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンからなる共重合体またはテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる共重合体であり、架橋フッ素ゴム(B)のフッ素濃度が、68重量%以上であり、かつその少なくとも一部が架橋されている架橋フッ素ゴムである難燃性材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のフッ素樹脂(A)とフッ素濃度が高い架橋フッ素ゴム(B)を含む難燃性材料に関する。また、該難燃性材料から形成される電線ジャケット、および該電線ジャケットを有するLAN用ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、天井、床下のプレナム部を走る電線、ケーブル被覆材等に起因する火災延焼が問題となっているため、電線ジャケットには、成形性、柔軟性の他に、特に優れた耐熱性が要求されている。このような電線ジャケットの材料として、摺動性、耐熱性、耐薬品性、耐候性、電気的性質などの特性に優れるフッ素樹脂が使用されている。
【0003】
また、LCC(Limited Combustible Cable)用ジャケットは、プレナムケーブルよりも高い難燃性が要求されているため、成形性、柔軟性、機械物性を有し、かつさらに優れた耐熱性を有する材料の開発が望まれている。
【0004】
LCC用ジャケット材料としては、従来、ポリ塩化ビニルが使用されてきたが、近年高まりつつある難燃性向上への要請に対しては、ポリ塩化ビニルでは不充分である。
【0005】
一方、難燃性に優れたLCC用ジャケット材料として、フッ素樹脂に酸化亜鉛を配合した組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、当該組成物は高弾性率のために柔軟性に劣り、また機械物性や成形性も充分とは言えない。
【0006】
したがって、優れた難燃性、柔軟性および機械物性を有する難燃性材料はいまだないのが現状である。
【0007】
【特許文献1】米国特許公開第2005/0187328号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、優れた機械物性を兼ね備え、溶融成形可能であり、優れた柔軟性と難燃性を有する、難燃性材料を提供することである。また、本発明の目的は、該難燃性材料から形成される電線ジャケット、および該電線ジャケットを有するLAN用ケーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、フッ素樹脂(A)95〜40重量%および架橋フッ素ゴム(B)60〜5重量%を含む難燃性材料であって、
フッ素樹脂(A)が、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンからなる共重合体またはテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる共重合体であり、
架橋フッ素ゴム(B)のフッ素濃度が、68重量%以上であり、かつその少なくとも一部が架橋されている架橋フッ素ゴムである
難燃性材料に関する。
【0010】
架橋フッ素ゴム(B)が、フッ素樹脂(A)の存在下、フッ素樹脂(A)の溶融条件下にて、フッ素ゴム(b)を架橋剤(C)と共に、動的に架橋処理したものであることが好ましい。
【0011】
さらに、難燃剤(E)を含むことが好ましい。
【0012】
フッ素樹脂(A)の融点が150℃〜330℃であることが好ましい。
【0013】
フッ素ゴム(b)が、ビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴムであることが好ましい。
【0014】
架橋剤(C)が、ポリヒドロキシ化合物であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、前記難燃性材料から形成される電線ジャケットおよび該電線ジャケットを有するLAN用ケーブルに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の難燃性材料は、特定のフッ素樹脂(A)とフッ素濃度が高い架橋フッ素ゴム(B)を含むことにより、優れた機械物性を兼ね備え、溶融成形可能であり、かつ、優れた柔軟性と難燃性を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、フッ素樹脂(A)95〜40重量%および架橋フッ素ゴム(B)60〜5重量%を含む難燃性材料であって、
フッ素樹脂(A)が、テトラフルオロエチレン(以下、TFEとする)とヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPとする)からなる共重合体またはTFEとHFPとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(以下、PAVEとする)からなる共重合体であり、
架橋フッ素ゴム(B)のフッ素濃度が、68重量%以上であり、かつその少なくとも一部が架橋されている架橋フッ素ゴムである
難燃性材料に関する。
【0018】
本発明においては、フッ素樹脂(A)として、TFEとHFPからなる共重合体またはTFEとHFPとPAVEからなる共重合体を用いることにより、優れた難燃性および機械物性を有する難燃性材料が得られるものである。
【0019】
TFEとHFPからなる共重合体としては、特に限定されないが、TFE単位70〜99モル%とHFP単位1〜30モル%からなる共重合体であることが好ましく、TFE単位80〜95モル%とHFP単位5〜20モル%からなる共重合体であることがより好ましい。TFE単位が70モル%未満では機械物性が低下する傾向があり、99モル%をこえると成形性が低下する傾向がある。
【0020】
また、TFEおよびHFPからなる共重合体は、第3成分を含有していてもよく、第3成分としてはTFEおよびHFPと共重合可能なものであればその種類は限定されないが、たとえば、クロロトリフルオロエチレン(以下、CTFEとする)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブテン、ビニリデンフルオライド(以下、VdFとする)、フッ化ビニル、一般式(1):
CH2=CX1(CF2n2 (1)
(式中、X1は、水素原子またはフッ素原子であり、X2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり、nは、1〜10の整数である)
で示されるフルオロオレフィンなどをあげることができる。
【0021】
TFE、HFP、上記第3成分モノマーからなる共重合体としては、特に限定されないが、TFE単位67〜98.9モル%、HFP単位1〜30モル%、上記第3成分モノマー単位0.1〜3モル%からなる共重合体であることが好ましく、TFE単位78.5〜94.5モル%、HFP単位5〜20モル%、上記第3成分モノマー単位0.3〜1.5モル%からなる共重合体であることがより好ましい。TFE単位が67モル%未満では機械物性が低下する傾向があり、98.9モル%をこえると成形性が低下する傾向がある。
【0022】
TFE、HFP、PAVEからなる共重合体としては、特に限定されないが、TFE単位67〜98.9モル%、HFP単位1〜30モル%、PAVE単位0.1〜3モル%からなる共重合体であることが好ましく、TFE単位78.5〜94.5モル%、HFP単位5〜20モル%、PAVE単位0.3〜1.5モル%からなる共重合体であることがより好ましい。TFE単位が67モル%未満では機械物性が低下する傾向があり、98.9モル%をこえると成形性が低下する傾向がある。
【0023】
ここで、PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)などの炭素数1〜5のアルキル基を有するPAVEをあげることができる。
【0024】
また、フッ素樹脂(A)の融点は、150〜330℃であることが好ましく、150〜310℃であることがより好ましく、150〜290℃であることがさらに好ましく、170〜270℃であることが特に好ましい。フッ素樹脂(A)の融点が150℃未満であると、得られる難燃性材料の耐熱性が低下する傾向があり、330℃を超えると、フッ素樹脂(A)の存在下、フッ素樹脂(A)の溶融条件下にて、ゴム(b)を動的に架橋する場合、フッ素樹脂(A)の融点以上に溶融温度を設定する必要があるが、その際にフッ素ゴム(b)が熱劣化する傾向がある。
【0025】
本発明で用いる架橋フッ素ゴム(B)としては、フッ素濃度が68重量%以上であり、かつ、その少なくとも一部が架橋されているフッ素ゴムであればよく、とくに制限されるものではない。
【0026】
架橋フッ素ゴム(B)のフッ素濃度は、68重量%以上であり、68〜75重量%であることが好ましく、69〜74重量%であることがより好ましく、70〜73重量%であることがさらに好ましい。フッ素濃度が68重量%未満であると得られる難燃性材料の難燃性および機械物性が低下する傾向がある。
【0027】
架橋フッ素ゴム(B)が、フッ素樹脂(A)の存在下、フッ素樹脂(A)の溶融条件下にて、フッ素ゴム(b)を架橋剤(C)と共に、動的に架橋処理したものであることが得られる難燃性材料の成形性が良好となり、かつ機械物性が向上する点から好ましい。ここで、動的に架橋処理するとは、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、押出機等を使用して、フッ素ゴム(b)を溶融混練と同時に動的に架橋させることをいう。これらの中でも、高剪断力を加えることができる点で、二軸押出機等の押出機を用いることが好ましい。動的に架橋処理することで、フッ素樹脂(A)と架橋フッ素ゴム(B)の相構造および架橋フッ素ゴム(B)の分散を制御することができる。
【0028】
フッ素ゴム(b)としては、たとえば、パーフルオロフッ素ゴム(b1)、非パーフルオロフッ素ゴム(b2)などがあげられる。
【0029】
パーフルオロフッ素ゴム(b1)としては、TFE/PAVE系共重合体、TFE/HFP/PAVE系共重合体などがあげられる。
【0030】
非パーフルオロフッ素ゴム(b2)としては、たとえば、VdF系重合体、TFE/プロピレン系共重合体などがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いることができる。
【0031】
また、前記パーフルオロフッ素ゴムや非パーフルオロフッ素ゴムとして例示したものは主モノマーの構成であり、架橋用モノマーや変性モノマー等を共重合したものも好適に用いることができる。架橋用モノマーや変性モノマーとしては、ヨウ素原子、臭素原子、二重結合を含むものなどの公知の架橋用モノマー、移動剤、公知のエチレン性不飽和化合物などの変性モノマーなどを使用することができる。
【0032】
前記VdF系重合体としては、具体的には、VdF/HFP系共重合体、VdF/TFE/HFP系共重合体、VdF/TFE/プロピレン系共重合体、VdF/エチレン/HFP系共重合体、VdF/TFE/PAVE系共重合体、VdF/PAVE系共重合体、VdF/CTFE系共重合体などをあげることができる。
【0033】
さらに具体的には、VdF25〜85モル%と、VdFと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体75〜15モル%とからなる含フッ素共重合体であることが好ましい。
【0034】
ここで、VdFと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体としては、たとえば、TFE、CTFE、トリフルオロエチレン、HFP、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、PAVE、フッ化ビニルなどの含フッ素単量体、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテルなどの非フッ素単量体があげられる。これらをそれぞれ単独で、または、任意に組み合わせて用いることができる。
【0035】
前記フッ素ゴムの中でも、耐熱性、圧縮永久ひずみ、加工性、コストの点から、VdF単位を含むフッ素ゴムであることが好ましく、VdF単位とHFP単位と有するフッ素ゴムであることがより好ましい。
【0036】
また、圧縮永久ひずみが良好な点から、VdF/HFP系フッ素ゴム、VdF/TFE/HFP系フッ素ゴム、TFE/プロピレン系フッ素ゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴムであることが好ましく、VdF/TFE/HFP系フッ素ゴムであることがより好ましい。
【0037】
本発明に使用されるフッ素ゴム(b)は、通常の乳化重合法により製造することができる。重合時の温度、時間などの重合条件としては、モノマーの種類や目的とするエラストマーにより適宜決定すればよい。
【0038】
本発明で用いる架橋剤(C)としては、架橋するフッ素ゴム(b)の種類や溶融混練条件に応じて、適宜選択することができる。
【0039】
本発明で用いられる架橋系は、フッ素ゴム(b)に架橋性基(キュアサイト)が含まれる場合は、キュアサイトの種類によって、または得られる成形品などの用途により適宜選択すればよい。架橋系としては、ポリオール架橋系、有機過酸化物架橋系およびポリアミン架橋系のいずれも採用できる。
【0040】
ここで、ポリオール架橋系により架橋する場合は、架橋点に炭素−酸素結合を有しており、圧縮永久歪みが小さく、成形性に優れているという特徴がある点で好適である。
【0041】
有機過酸化物架橋系により架橋する場合は、架橋点に炭素−炭素結合を有しているので、架橋点に炭素−酸素結合を有するポリオール架橋系および炭素−窒素二重結合を有するポリアミン架橋系に比べて、耐薬品性および耐スチーム性に優れているという特徴がある。
【0042】
ポリアミン架橋により架橋してなる場合は、架橋点に炭素−窒素二重結合を有しているものであり、動的機械特性に優れているという特徴がある。しかし、ポリオール架橋系または有機過酸化物架橋系架橋剤を用いて架橋する場合に比べて、圧縮永久歪みが大きくなる傾向がある。
【0043】
したがって、本発明では、ポリオール架橋系または有機過酸化物架橋系の架橋剤を用いることが好ましく、ポリオール架橋系の架橋剤を用いることがより好ましい。
【0044】
本発明における架橋剤(C)は、ポリアミン系、ポリオール系、有機過酸化物系の架橋剤を使用することができる。
【0045】
ポリアミン架橋剤としては、たとえば、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ビス(アミノシクロヘキシル)メタンカルバメートなどのポリアミン化合物があげられる。これらの中でも、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミンが好ましい。
【0046】
ポリオール架橋剤としては、従来、フッ素ゴムの架橋剤として知られている化合物を用いることができ、たとえば、ポリヒドロキシ化合物、特に、耐熱性に優れる点からポリヒドロキシ芳香族化合物が好適に用いられる。
【0047】
上記ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、特に限定されず、たとえば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(以下、ビスフェノールAFという)、レゾルシン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシスチルベン、2,6−ジヒドロキシアントラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(以下、ビスフェノールBという)、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’−テトラクロロビスフェノールA、3,3’,5,5’−テトラブロモビスフェノールAなどがあげられる。これらのポリヒドロキシ芳香族化合物は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などであってもよいが、酸を用いて共重合体を凝析した場合は、上記金属塩は用いないことが好ましい。
【0048】
有機過酸化物架橋系の架橋剤としては、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得る有機過酸化物であればよく、具体的には、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどをあげることができる。これらの中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
【0049】
これらの中でも、得られる成形品などの圧縮永久歪みが小さく、成形性に優れているという点から、ポリヒドロキシ化合物が好ましく、耐熱性が優れることからポリヒドロキシ芳香族化合物がより好ましく、ビスフェノールAFがさらに好ましい。
【0050】
また、ポリオール架橋系においては、ポリオール系架橋剤と併用して、通常、架橋促進剤(D)を用いる。架橋促進剤(D)を用いると、フッ素ゴム主鎖の脱フッ酸反応における分子内二重結合の形成を促進することにより架橋反応を促進することができる。
【0051】
ポリオール架橋系の架橋促進剤(D)としては、一般にオニウム化合物が用いられる。オニウム化合物としては特に限定されず、たとえば、第4級アンモニウム塩等のアンモニウム化合物、第4級ホスホニウム塩等のホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、環状アミン、1官能性アミン化合物などがあげられ、これらの中でも第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩が好ましい。
【0052】
第4級アンモニウム塩としては特に限定されず、たとえば、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムアイオダイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムメチルスルフェート、8−エチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−プロピル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−エイコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−テトラコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド(以下、DBU−Bとする)、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−フェネチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリド、8−(3−フェニルプロピル)−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロリドなどがあげられる。これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、DBU−Bが好ましい。
【0053】
また、第4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、たとえば、テトラブチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(以下、BTPPCとする)、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリブチルホスホニウムクロリド、トリブチルアリルホスホニウムクロリド、トリブチル−2−メトキシプロピルホスホニウムクロリド、ベンジルフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロリドなどをあげることができ、これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(BTPPC)が好ましい。
【0054】
また、架橋促進剤(D)として、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩とビスフェノールAFの固溶体、特開平11−147891号公報に開示されている塩素フリー架橋促進剤を用いることもできる。
【0055】
有機過酸化物の架橋促進剤(D)としては、たとえば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5−トリス(2,3,3−トリフルオロ−2−プロペニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン)、トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N−ジアリルアクリルアミド、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルフタルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイトなどがあげられる。これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
【0056】
架橋剤(C)の配合量としては、フッ素ゴム(b)100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜5重量部である。架橋剤(C)が、0.1重量部未満であると、フッ素ゴム(b)の架橋が充分に進行せず、得られる難燃性材料の耐熱性および耐油性が低下する傾向があり、10重量部をこえると、得られる難燃性材料の成形加工性が低下する傾向がある。
【0057】
架橋剤(C)および架橋促進剤(D)の添加量としては、動的に架橋処理するときの温度における加硫90%完了時間T90が2〜6分になるように調整された量であることが好ましく、加硫90%完了時間T90が3〜5分になるように調整された量であることがより好ましい。最適加硫時間T90が2分未満となる量であると架橋ゴムの分散が不均一かつ粗大化する傾向があり、6分をこえる量となるとゴムが架橋するのに長時間を要し、かつ完全には架橋しなくなる傾向がある。
【0058】
ここで、加硫90%完了時間T90とは、フッ素ゴム(b)を1次プレス加硫時にJSR型キュラストメータII型、およびV型を用いて、動的加硫時の温度における加硫曲線を求め、最大トルク値の90%の値に達する時間を加硫90%完了時間(T90)とする。
【0059】
溶融条件下とは、フッ素樹脂(A)およびフッ素ゴム(b)が溶融する温度下を意味する。溶融する温度は、それぞれフッ素樹脂(A)およびフッ素ゴム(b)のガラス転移温度および/または融点により異なるが、120〜330℃であることが好ましく、130〜320℃であることがより好ましい。温度が、120℃未満であると、フッ素樹脂(A)とフッ素ゴム(b)の間の分散が粗大化する傾向があり、330℃をこえると、ゴム(b)が熱劣化する傾向がある。
【0060】
得られた難燃性材料は、フッ素樹脂(A)が連続相を形成しかつ架橋フッ素ゴム(B)が分散相を形成する構造、またはフッ素樹脂(A)と架橋フッ素ゴム(B)が共連続を形成する構造を有することができるが、その中でも、フッ素樹脂(A)が連続相を形成しかつ架橋フッ素ゴム(B)が分散相を形成する構造を有することが好ましい。
【0061】
フッ素ゴム(b)が、分散当初マトリックスを形成していた場合でも、架橋反応の進行に伴い、フッ素ゴム(b)が架橋フッ素ゴム(B)となることで溶融粘度が上昇し、架橋フッ素ゴム(B)が分散相になる、またはフッ素樹脂(A)との共連続相を形成するものである。
【0062】
このような構造を形成すると、本発明の難燃性材料は、優れた耐熱性、耐薬品性および耐油性を示すと共に、優れた柔軟性を有することとなる。その際、架橋フッ素ゴム(B)の平均分散粒子径は、0.01〜30μmであることが好ましい。平均分散粒子径が、0.01μm未満であると、流動性が低下する傾向があり、30μmをこえると、得られる難燃性材料の強度が低下する傾向がある。
【0063】
また、本発明の難燃性材料は、その好ましい形態であるフッ素樹脂(A)が連続相を形成し、かつ架橋フッ素ゴム(B)が分散相を形成する構造の一部に、フッ素樹脂(A)と架橋フッ素ゴム(B)との共連続構造を含んでいても良い。
【0064】
また、本発明の難燃性材料は、フッ素樹脂(A)95〜40重量%、架橋フッ素ゴム(B)60〜5重量%からなることが好ましく、フッ素樹脂(A)92〜50重量%、架橋フッ素ゴム(B)50〜8重量%からなることがより好ましく、フッ素樹脂(A)90〜70重量%、架橋フッ素ゴム(B)30〜10重量%からなることがさらに好ましい。フッ素樹脂(A)が40重量%未満であると得られる難燃性材料の流動性が悪化し、成形加工性が低下する傾向があり、95重量%をこえると柔軟性が低下する傾向がある。
【0065】
さらに、本発明の難燃性材料には、難燃性の点から、難燃剤(E)を含むことが好ましい。
【0066】
難燃剤(E)としては、特に限定されず、一般的に用いられるものを任意に用いればよいが、例えば、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物;リン酸系難燃剤;臭素系難燃剤、塩素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤等があげられる。これらの中でも、難燃化能力と環境負荷への影響の点から、リン酸系難燃剤が好ましい。また、三酸化アンチモンやホウ酸亜鉛等の難燃助剤;酸化モリブデン等の発煙防止剤等;シリコーン化合物や無機フィラー等のチャー生成化合物を併用してもよい。ここで、チャー生成化合物とは、燃焼時にチャーを生成する化合物である。
【0067】
難燃剤(E)の配合量としては、フッ素樹脂(A)と架橋フッ素ゴム(B)の合計100重量部に対して、2〜100重量部であることが好ましく、5〜70重量部であることがより好ましい。2重量部未満であると、難燃剤(E)を添加することによる難燃効果が特にみられず、100重量部を超えると、成形性や柔軟性に劣る傾向がある。
【0068】
また、本発明の難燃性材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタンなどの他の重合体、炭酸カルシウム、タルク、セライト、クレー、酸化チタン、カーボンブラック、硫酸バリウムなどの無機充填材、顔料、難燃剤、滑剤、光安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、発泡剤、香料、オイル、柔軟化剤などを、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で添加することができる。
【0069】
本発明の難燃性材料は、一般の成形加工方法や成形加工装置などを用いて成形加工することができる。成形加工方法としては、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形などの任意の方法を採用することができ、本発明の難燃性材料は、使用目的に応じて任意の形状の成形体に成形される。
【0070】
さらに、本発明には、本発明の難燃性材料を使用して得られた電線ジャケットに関する。
【0071】
上記電線ジャケットとは、一般に、コンピューター等の電子機器用ワイヤーやケーブルにおいて、難燃性付与、機械的損傷の防止等のためのもので、銅線およびその被覆材を納めるチューブ状体である。その成形法としては、特に限定されず、例えば、クロスヘッドおよび単軸押出機にて押出成形する方法等、公知の方法があげられる。
【0072】
電線ジャケットは、上述の構成からなるものであるので、成形性、柔軟性がよく、特に優れた耐熱性を示し、従来よりも高い難燃性が要求されるLCC(Limited Combustible Cable)用ジャケットとしても好適に用いることができる。
【0073】
電線ジャケットとしては、特に限定されないが、例えば、電子機器配線用電線、電気機器用600V絶縁電線、LANケーブル等の通信ケーブル等に用いることができる。上記LANケーブルとは、LANに用いるケーブルのことである。
【実施例】
【0074】
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0075】
<シート状試験片の作製>
実施例、比較例で製造した難燃性材料を金型にセットし、ヒートプレス機により、290℃にて15〜30分保持し、動的架橋組成物を溶融状態にした後、3MPaの負荷を1分間与え圧縮成形し、所定の厚さのシート状試験片を作製する。
【0076】
<硬度の測定>
上記方法で厚さ2mmのシート状試験片を作製し、これらを用いてJIS−K6301に準じてA硬度を測定した。
【0077】
<引張破断強度、引張破断伸びおよび引張弾性率測定>
上記方法で厚さ2mmのシート状試験片を作製し、ASTM V型ダンベルを用いて標線間距離3.18mmのダンベル状試験片を打ち抜く。得られたダンベル状試験片を用いて、オートグラフ((株)島津製作所製 AGS−J 5kN)を使用して、ASTM D638に準じて、50mm/分の条件下で、25℃に引張破断伸び、引張破断強度および引張破断弾性率を測定する。
【0078】
<燃料透過性の測定>
上記方法で厚さ0.5mmのシート状試験片を作製し、20mLの容積を有するSUS製容器(開放部面積1.26×10-32)に模擬燃料であるCE10(トルエン/イソオクタン/エタノール=45/45/10容量%)を18mL入れて、前記シート状試験片を容器開放部にセットして密閉することで、試験体とする。該試験体を恒温装置(60℃)に入れ、試験体の重量を測定し、単位時間あたりの重量減少が一定となったところで下記の式により燃料透過性を求めた。
【0079】
【数1】

【0080】
<難燃性>
上記方法で厚さ2mmのシート状試験片を作製し、それから厚み2mm、縦50mm、横50mmのシート状試験片を切り出した。得られたシート状試験片を用いて、コーンカロリーメーター((株)東洋精機製作所製)を使用して燃焼試験を行い、発熱率および発煙率を求めた。
【0081】
実施例および比較例では、下記のフッ素樹脂(A)、フッ素ゴム(b)、架橋剤(C)、架橋促進剤(D)および難燃剤(E)を使用した。
【0082】
<フッ素樹脂(A1)>
TFE、HFPからなる共重合体(TFE:HFP=91.7:8.3モル%、融点260℃)
【0083】
<フッ素樹脂(A2)>
TFE、HFPおよびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる共重合体(TFE:HFP:パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)=90.5:9.1:0.4モル%、融点255℃)
【0084】
<フッ素ゴム(b1−1)>
VdF、TFEおよびHFPからなる3元系ゴム(VdF:TFE:HFP=50:20:30モル%、フッ素濃度=71重量%)
【0085】
<フッ素ゴム(b1―2)>
VdF、TFEおよびHFPからなる3元系ゴム(VdF:TFE:HFP=30:40:30モル%、フッ素濃度=73重量%)
【0086】
<フッ素ゴム(b1−3)>
VdFおよびHFPからなる2元系ゴム(VdF:HFP=78:22モル%、フッ素濃度=66重量%)
【0087】
<架橋剤(C)>
ポリオール系架橋剤:2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(ダイキン工業(株)製「ビスフェノールAF」)
【0088】
<架橋促進剤(D)>
ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(BTPPC、北興化学工業(株)製)
【0089】
<難燃剤(E)>
芳香族縮合リン酸エステル(PX−200、大八化学工業(株)製)
【0090】
実施例1〜8
上記したフッ素ゴム(b1−1あるいはb1−2)100重量部に対して、架橋剤(C)2.0重量部および架橋促進剤(D)1.0重量部を2本ロールにて混練し、続いて受酸剤(協和化学工業(株)製 酸化マグネシウム「MA150」)3.0重量部を配合して2本ロールにて混練し、フッ素ゴムのコンパウンド(b2−1あるいはb2−2)を作製した。
【0091】
続いて、上記したフッ素樹脂(A)、フッ素ゴムのコンパウンド(b2−1あるいはb2−2)を、表1に示す割合で予備混合した後、二軸押出機に供給して、シリンダー温度270℃およびスクリュー回転数500rpmの条件下に溶融混練し、難燃性材料のペレットをそれぞれ製造した。得られた難燃性材料のペレットを用いて、上記した方法でシート状試験片を作製し、硬度、引張破断強度、引張破断伸び、引張弾性率、燃料透過性、発熱率および発煙率の測定を行った結果を表1に示す。
【0092】
比較例1、2
上記したフッ素ゴム(b1−3)100重量部に対して、架橋剤(C)2.17重量部および架橋促進剤(D)0.11重量部を2本ロールにて混練し、続いて受酸剤(協和化学工業(株)製 酸化マグネシウム「MA150」)3.0重量部を配合して2本ロールにて混練し、フッ素ゴムのコンパウンド(b2−3)を作製した。
【0093】
続いて、上記したフッ素樹脂(A)、フッ素ゴムのコンパウンド(b2−3)を、表1に示す割合で予備混合した後、二軸押出機に供給して、シリンダー温度270℃およびスクリュー回転数500rpmの条件下に溶融混練し、難燃性材料のペレットをそれぞれ製造した。得られた難燃性材料のペレットを用いて、上記した方法でシート状試験片を作製し、硬度、引張破断強度、引張破断伸び、引張弾性率、燃料透過性、発熱率および発煙率の測定を行った結果を表1に示す。
【0094】
実施例1〜8により得られた難燃性材料は、走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製)によるモルフォロジー観察により、フッ素樹脂(A)が連続相を形成しかつ架橋フッ素ゴム(B)が分散相を形成する構造を有することがわかった。架橋フッ素ゴム(B)の分散粒子径は、実施例1〜8において、全て20μm以下であった。
【0095】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂(A)95〜40重量%および架橋フッ素ゴム(B)60〜5重量%を含む難燃性材料であって、
フッ素樹脂(A)が、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンからなる共重合体またはテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる共重合体であり、
架橋フッ素ゴム(B)のフッ素濃度が、68重量%以上であり、かつその少なくとも一部が架橋されている架橋フッ素ゴムである
難燃性材料。
【請求項2】
架橋フッ素ゴム(B)が、フッ素樹脂(A)の存在下、フッ素樹脂(A)の溶融条件下にて、フッ素ゴム(b)を架橋剤(C)と共に、動的に架橋処理したものである請求項1記載の難燃性材料。
【請求項3】
さらに、難燃剤(E)を含む請求項1または2に記載の難燃性材料。
【請求項4】
フッ素樹脂(A)の融点が150℃〜330℃である請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性材料。
【請求項5】
フッ素ゴム(b)が、ビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴムである請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性材料。
【請求項6】
架橋剤(C)が、ポリヒドロキシ化合物である請求項2〜5のいずれかに記載の難燃性材料。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の難燃性材料から形成される電線ジャケット。
【請求項8】
請求項7記載の電線ジャケットを有するLAN用ケーブル。

【公開番号】特開2007−314639(P2007−314639A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−144552(P2006−144552)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】